(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記制御信号は、前記電極に提供されるパルス幅変調(PWM)電流信号として構成され、前記加速度制御器は、PWM電流信号が、前記電極に印加される持続期間を第1の持続期間と第2の持続期間との間で変化させることに基づいて、前記第1のスケール・ファクタの範囲と前記第2のスケール・ファクタの範囲の間で前記センサと関連するスケール・ファクタの範囲を変化させるように構成されている、請求項1に記載のシステム。
前記較正構成要素は、前記範囲依存バイアス・エラーに関して前記加速度計センサ・システムをリアルタイムで実質的に連続的に較正するように構成されている、請求項1に記載のシステム。
前記較正構成要素は、前記アルゴリズムを連続的に実行して、前記範囲依存バイアス・エラーをほぼゼロの状態に実質的に連続的に維持するように構成されている、請求項5に記載のシステム。
前記較正構成要素は、前記第1のスケール・ファクタの範囲と前記第2のスケール・ファクタの範囲のそれぞれと関連する持続期間を周期的に疑似ランダム的に変化させるように信号発生器に命令することに基づき、前記アルゴリズムを周期的に実行するように構成され、かつ該持続期間の周期的な疑似ランダム的な変化に基づき、前記入力加速度の測定値に重みファクタを付加するようにさらに構成されている、請求項8に記載のシステム。
前記較正構成要素は、前記第1のスケール・ファクタの範囲、前記第2のスケール・ファクタの範囲、および少なくとも1つの追加のスケール・ファクタの範囲の間で周期的に疑似ランダム的に変化させるように信号発生器に命令することに基づき、前記アルゴリズムを周期的に実行するように構成され、かつ前記第1のスケール・ファクタの範囲、前記第2のスケール・ファクタの範囲、および該少なくとも1つの追加のスケール・ファクタの範囲の間における周期的な疑似ランダム的な変化に基づき、前記入力加速度の測定値に重みファクタを付加するようにさらに構成されている、請求項8に記載のシステム。
前記アルゴリズムを実行することは、個々の第1のスケール・ファクタの範囲および第2のスケール・ファクタの範囲におおける前記入力加速度を連続的に再測定すること、および前記範囲依存バイアス・エラーの連続的な推定に基づき、前記アルゴリズムを繰り返して実行して、前記推定された範囲依存バイアス・エラーの大きさを実質的にゼロの状態に維持することを含む、請求項14に記載の方法。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本開示は、一般にセンサ・システムに関し、詳細には加速度計センサ・システムの範囲依存バイアス較正に関する。加速度計センサ・システムは、振り子式のプルーフマスと、(たとえば、プルーフマスの両側における)一セットの電極とを含むセンサを含む。センサは、入力加速度に応答してプルーフマスおよび電極のうちのいずれか一方に提供される制御信号に応答して加速度フィードバック信号を提供する。また、加速度計センサ・システムは、加速度フィードバック信号に基づき、かつ推定されたスケール・ファクタに依存するバイアス・エラーに基づき、加速度計システムに作用する入力加速度の大きさを計算するように構成されている加速度構成要素を含む。一例として、加速度構成要素は、計算された入力加速度から推定されたスケール・ファクタに依存するバイアス・エラーを減算し、計算された入力加速度からバイアス・エラー分だけ実質的に軽減するように構成されている。加速度計センサ・システムは、センサと関連する第1のスケール・ファクタの範囲および第2のスケール・ファクタの範囲において、制御信号を発生するように構成されている加速度計制御器をさらに含み、第1のスケール・ファクタの範囲および第2のスケール・ファクタの範囲において、測定された入力加速度間の差に基づき、加速度計センサ・システムを較正するように構成されている較正構成要素を含む。
【0011】
加速度計センサ・システムの動作の間、加速度計は、リアルタイムで自己較正を実質的に連続的に実施する。一例として、自己較正は、2つのスケール・ファクタの範囲の間で周期的に交互に行うことを含む。それらスケール・ファクタの範囲のそれぞれでは、加速度計センサ・システムは、入力加速度を測定することができ、較正構成要素は、測定された入力加速度に基づいて、推定される範囲依存バイアス・エラーを計算するアルゴリズムを実行する。それゆえ、推定される範囲依存バイアス・エラーは、入力加速度のその後の測定において用いることができ、較正構成要素によって推定される範囲依存バイアス・エラーを連続的に更新して、推定される範囲依存バイアス・エラーの大きさを、ほぼゼロの状態に実質的に維持することができる。従って、入力加速度の測定は、実質的にエラーが範囲依存バイアス・エラーから生じない状態で、かつ加速度計センサ・システムのリアルタイムの機能が中断されることなく実施することができる。
【0012】
図1は、本発明の態様による加速度計センサ・システム10の一例を示す。加速度計センサ・システム10は、ナビゲーションおよび誘導のシステムのうちの少なくとも一方などについて、様々な用途のいずれでも実現することができる。一例として、加速度計センサ・システム10は、単一の集積パッケージ中に、または集積パッケージの一部として配置することができる。加速度計センサ・システム10は、
図1の例で信号ACCとして示す、加速度計センサ・システム10に作用する外部からの入力加速度を測定するように校正される。本明細書に述べるように、外部からの加速度または入力加速度は、加速度計センサ・システム10に印加される外力から生じる、加速度計センサ・システム10の加速度として定義され、それは、重力、さらにまた他の外力から生じる加速度を含むことができる。本明細書に述べるように、加速度計センサ・システム10は、スケール・ファクタの範囲依存バイアス・エラー分だけ実質的に軽減するように構成され、計算された加速度ACCは、範囲依存バイアスによって引き起こされるエラーが実質的にない。
【0013】
加速度計センサ・システム10は、センサ12を含む。センサ12は、プルーフマス14と、対応する一セットの電極16とを含む。プルーフマス14は、プルーフマス14が外部からの加速度に対して反対の方向に押しやられるように構成される。また、加速度計センサ・システム10は、加速度計制御器18を含む。加速度計制御器18は、信号発生器20とプロセッサ22とを含む。信号発生器20は、力による再平衡化(force rebalance)を行うようにしてプルーフマス14を実質的な電気的ヌル位置に維持するように、一セットの電極16のそれぞれに提供される制御信号SIGを発生するように構成されている。それゆえ、プロセッサ22は、力による再平衡化の実施に基づき、制御信号SIGの振幅、極性、継続期間およびデューティ・サイクルの1つまたは複数を調節することなどよって、プルーフマス14の力による再平衡化を実施するように信号発生器20を制御する。したがって、プロセッサ22は、プルーフマス14をヌル位置に戻す力による再平衡化に基づき、プルーフマス14に対して作用する力に応答して加速度計センサ・システム10の入力加速度を計算するように構成される。一例として、センサ12および加速度計制御器18が付属電子部を構成し、静電気の加速度計システムとして本明細書に示され。しかし、センサ12および加速度計制御器18の付属電子部は、静電気の加速度計システムに限定することを意図しておらず、電磁気の加速度計システムなど、様々な他のタイプの加速度計システムとして実現することができることを理解すべきである。
【0014】
本明細書に述べるように、ヌル位置は、プルーフマス14がほぼゼロの変位であるプルーフマス14と関連する静止位置(rest position)を表すことができる。一例として、機械的ヌルは、プルーフマス14をセンサ12の付随フレームに保持するたわみ部が、どちらの方向にも力を印加していないプルーフマス14の位置に対応しており、電気的ヌルは、プルーフマス14の上および下に在るそれぞれの電極16が、互いに関してプルーフマス14に対してほぼゼロの真の力を印加しているプルーフマス14の位置に対応している。公称的に、機械的ヌルおよび電気的ヌルは、プルーフマス14の同じ場所に対応している。しかし、スケール・ファクタの範囲依存バイアスの不確定性の1つの原因は、本明細書に述べるように、組み立て公差およびエラーの他の原因から生じる可能性がある、機械的ヌルと電気的ヌルとの間の差に基づく。さらに、スケール・ファクタの範囲依存バイアスの不確定性は、組み立て公差から生じるものなど、プルーフマス14の上方および下方の電極16の間の実質的な不整合から起こり得る。
【0015】
一例として、信号発生器20は、大きさおよび極性が実質的に等しい電荷パルス(たとえば電流パルス)を発生することができ、プロセッサ22は、一セットの電極16に所定のシーケンスで電荷パルスを提供し、それによってプルーフマス14をそれぞれのヌル位置に向けて加速する(すなわちプルーフマス14を再平衡化する)静電力が発生するように構成されている。たとえば、プロセッサ22は、信号発生器20によって発生される電荷パルスを少なくとも1つのセットの電極16に、次いで別の少なくとも1つのセットの電極16に交互に提供することができ、それによって極性が反対の交番静電力が発生する。その結果として、プルーフマス14は、第1の方向および第2の方向に交互に加速され、それによってプルーフマス14が、電荷パルスの印加毎に、ヌル位置に向けて位置付けられる。プロセッサ22は、外力に応答して、制御信号SIGに対応する、それぞれのプルーフマス14の一方側により大きい再平衡化の力を印加するようなパルス幅変調(PWM:pulse-width modulation)法で電流パルスのデューティ・サイクルを変化させるように構成される。
【0016】
別の例として、信号発生器20およびプロセッサ22は、プルーフマス14の力による再平衡化を実施する電圧制御スキームを実施することができる。たとえば、信号発生器20は、電圧バイアス信号をプルーフマス14に印加することができ、一セットの電極16のそれぞれに制御電圧を提供することができる(たとえば制御信号SIGを介して)。それゆえ、プルーフマス14は、一セットの電極16における電圧バイアス信号と制御電圧の間の差に基づき、ヌル位置に実質的に保持することができる。あるいは、プルーフマス14は、実質的に電気的に接地することができ、したがって信号発生器20は、制御電圧を一セットの電極16に印加するように構成することができる。その結果として、プロセッサ22は、それぞれのプルーフマス14を力で再平衡化するために、一セットの電極16における制御電圧の大きさおよびそれぞれの極性を設定することができる。
【0017】
一セットの電極16とプルーフマス14との間の容量性結合の結果として、加速度フィードバック信号が一セットの電極16で発生され、その信号は、プルーフマス14の相対的な変位を表すものである。
図1の例では、加速度フィードバック信号は、信号FBとして示す。それゆえ、加速度フィードバック信号FBは、一セットの電極16に対するプルーフマス14の変位(すなわち容量性のギャップ)に比例させることができる。それによって、加速度フィードバック信号FBは、プルーフマス14の相対的な変位の大きさの指示値を提供する。また、プロセッサ22は、外部加速度から生じるものなど、プルーフマス14の変位およびプルーフマス14の変位の時間積分のうちの少なくとも一方に対応する加速度フィードバック信号FBに基づき、一セットの出力信号PMを発生するように構成される。
図1の例では、出力信号PMは、加速度構成要素24に提供される。一例として、加速度構成要素24は、カルマン・フィルター(Kalman filter)として構成することができる。加速度構成要素24は、出力信号PMに基づき、外部加速度の大きさを計算するように構成する。計算された外部加速度は、
図1の例に信号ACCとして示す。
【0018】
信号発生器20は、信号発生器20によって発生される制御信号SIGに基づき、入力加速度の計算と関連付けてスケール・ファクタの範囲を設定するように構成される。スケール・ファクタの範囲は、本明細書に述べるように、最小加速度と最大加速度(たとえば絶対値が最大)の間の加速度フィードバック信号FBの値の範囲を表し、スケール・ファクタは、加速度フィードバック信号FBのその範囲中の値に基づき入力加速度を測定するために決定することができる。それゆえ、スケール・ファクタの範囲またはフル・スケールの範囲は、本明細書に述べるように、センサ12の感知軸に平行および逆平行の両方である最大の測定可能な加速度の加速度フィードバック信号FBの値に対応している。その結果として、スケール・ファクタの範囲のスケール・ファクタは、最大の測定可能な加速度の加速度フィードバック信号FBの値に基づき設定することができ、入力加速度の大きさは、その測定を可能にするように補間することができる。しかし、入力加速度の測定に不確定性をもたらす恐れがあるバイアス・エラーの少なくとも一部分は、範囲依存可能性であり、その点で、バイアス・エラーは、範囲(たとえば、フル・スケール範囲)の関数である。そのようなバイアス・エラーは、組み立ての不整合および一セットの電極16の電極の公差のうちの少なくとも一方など様々な原因から、プルーフマス14から、または加速度計制御器18中の電子部から生じる可能性がある。
【0019】
図1の例では、また、加速度計制御器18は、較正構成要素26とメモリ28とを含む。較正構成要素26は、少なくとも2つの別のスケール・ファクタの範囲のそれぞれにおいて、計算された入力加速度中の差に基づき、範囲依存バイアス・エラーの影響を実質的に軽減するように構成されている。たとえば、範囲依存バイアス・エラーは、センサ12のスケール・ファクタの範囲についての変化に基づいて観測することができる。したがって、較正構成要素26は、センサ12のスケール・ファクタの範囲を変化させるようにする制御信号SIGをセンサ12に提供するように信号発生器20に命令して、範囲依存バイアス・エラーを計算し、入力加速度の測定から実質的に削除することができる。たとえば、較正構成要素26は、センサ12のスケール・ファクタの変化と関連するタイミングを指示するように構成され、較正構成要素26は、リアルタイムで加速度計センサ・システム10を周期的に較正するように具体化することができる。
【0020】
スケール・ファクタは、たとえば第1のスケール・ファクタの範囲と関連するスケール・ファクタから第2のスケール・ファクタの範囲と関連する所定のスケール・ファクタに変化させることができる。それゆえ、スケール・ファクタは、メモリ28中に保存することができる。加速度構成要素24が第1のスケール・ファクタの範囲でセンサ12に作用する入力加速度ACCを測定したとき、較正構成要素26は、センサ12に対する制御信号SIGを変化させるように信号発生器20に命令して、第1のスケール・ファクタの範囲から第2のスケール・ファクタの範囲に切り替える。そして、加速度構成要素24は、第2のスケール・ファクタの範囲で入力加速度ACCを測定する。
図1の例では、加速度計制御器18は、信号SFとして示すスケール・ファクタを加速度構成要素24に提供し、加速度構成要素24は、その対応するスケール・ファクタに基づき、入力加速度ACCを測定する。較正構成要素26は、スケール・ファクタの範囲のそれぞれにおいて測定された入力加速度ACCに基づき、推定される範囲依存バイアス・エラーB
Eを計算する。一例として、較正構成要素26は、推定される範囲依存バイアス・エラーB
Eを計算するアルゴリズムを実行する。推定される範囲依存バイアス・エラーB
Eは、加速度構成要素24に提供され、推定される範囲依存バイアス・エラーは、入力加速度ACCのその後の計算から実質的に削除される。
【0021】
一例として、較正構成要素26は、スケール・ファクタの範囲の周期的な変化に基づくアルゴリズムを周期的に実行して、加速度計センサ・システム10の較正を、リアルタイムで実質的に連続的に実施することができる。たとえば、スケール・ファクタの範囲の周期的な切替えおよび対応するアルゴリズムの周期的な実行は、範囲依存バイアス・エラーの推定が、実質的に連続的に計算され、入力加速度の実質的に連続的な測定値から推定値を削除することができるのに十分に高い頻度で行うことができる。したがって、加速度計センサ・システム10は、公称動作中にリアルタイムで自己較正を実施することができる。
【0022】
第2の例として、較正構成要素26は、スケール・ファクタの範囲の疑似ランダム的な周期的変化に基づくアルゴリズムを周期的に実行して、加速度計センサ・システム10の較正を、入力加速度がより大きな動態を示す状態で、リアルタイムで実質的に連続的に実施することができる。たとえば、スケール・ファクタの範囲の周期的な切替えおよびそれに対応するアルゴリズムの周期的な実行は、各スケール・ファクタの範囲と関連する疑似ランダム的な無調の時間周期によって行なわれ、範囲依存バイアス・エラーの推定は、実質的に連続的に計算され、加速度がより大きな動態を示す状態で、入力加速度の実質的に連続的な測定値から範囲依存バイアス・エラーの推定値を削除することができる。この場合、アルゴリズムは、それぞれの測定期間に基づいて各測定値および範囲依存バイアス・エラーの推定の対応する変更値に重みを付加するように変更されてもよい。したがって、加速度計センサ・システム10は、公称動作の間に、リアルタイムで自己較正を実施することができる。
【0023】
第3の例として、較正構成要素26は、3つ以上のスケール・ファクタの範囲の間における疑似ランダム的な周期的変化に基づくアルゴリズムを周期的に実行して、加速度計センサ・システム10の較正を、入力加速度がより大きな動態を示す状態で、リアルタイムで実質的に連続的に実施することができる。たとえば、スケール・ファクタの範囲の周期的な切替えおよびそれに対応するアルゴリズムの周期的な実行は、各スケール・ファクタの範囲と関連する疑似ランダム的な無調の時間周期によって行われ、利用できるスケール・ファクタの範囲が疑似ランダム的に切り替えられ、範囲依存バイアス・エラーの推定を、実質的に連続的に計算し、加速度が実質的に動態を示す状態で、入力加速度の実質的に連続的な測定値から範囲依存バイアス・エラーの推定値を削除することができる。この場合、アルゴリズムは、それぞれの測定期間および測定毎のそれぞれのスケール・ファクタの範囲に基づいて各測定値、および範囲依存バイアス・エラーの推定値の対応する変更値に重みを付けるように変更されてもよい。したがって、加速度計センサ・システム10は、公称動作の間に、リアルタイムで自己較正を実施することができる。
【0024】
以前に述べたように、センサ12のスケール・ファクタの範囲の変化は、センサ12に提供される制御信号SIGに基づき実施することができる。スケール・ファクタの範囲を調節することができる方法には、センサ12の力による再平衡化の実施のタイプに基づくものがある。
図2は、センサ52の一例の図形50を示す。本明細書に述べるように、図形50は、電圧制御の力による再平衡化を実施する場合に関して、スケール・ファクタの範囲を調節することができる第1の例を示す。
【0025】
センサ52は、
図1の例のセンサ12に対応している。センサ52は、振り子式のプルーフマス54、第1の電極56および第2の電極58を含む。第1の電極56および第2の電極58は、プルーフマス54と対向する表面上に配置され、それぞれ、単一の電極または一セットの電極として配置することができる。プルーフマス54は、センサ52のフレーム60に、一セットのたわみ部62を介して結合される。たわみ部62は、
図2の例では、互いに上と下に配置されるペアのたわみ部として構成されている。したがって、入力軸64に沿った上下のプルーフマス54の動きは、フレーム60に対して実質的に平面状の動きとして維持され、電極56および58に対するプルーフマス54の角度は、公称ゼロであり、スケール・ファクタおよびセンサのバイアスのうちの少なくとも一方に影響を及ぼす可能性があるくさび効果(wedge−effect)を実質的に避けるように、実質的に一定の状態に維持される。しかし、センサ52は、複数のたわみ部62に限定されるものと意図せず、プルーフマス54のために単一のたわみ部62のみを含むことができることを理解すべきである。一例として、加速度計センサ・システム10は、3つのウェハー層として組み立てることができ、1つの層はプルーフマス54を含み、1つの層は第1の電極56を含み、1つの層は第2の電極58を含む。したがって、プルーフマス54、第1の電極56および第2の電極58は、実質的に工程で互いに整合する構成要素として組み立てることができる。また、フレーム60は、それぞれのウェハーの一部として組み立てられ、フレーム60の部分がそれぞれの層に結合されている。
【0026】
また、図形50は、電圧V
1を発生する第1の電圧源66および電圧V
2を発生する第2の電圧源68を示す。電圧源66および68は、スイッチ70に基づき互いに対して排他的にプルーフマス54に結合され、所与の時間において電圧V
1および電圧V
2の1つをプルーフマス54に供給する。一例として、電圧源66および68は、信号発生器20と関連付けることができ、電圧V
1およびV
2は、電極56および58に提供される他の制御信号とともに、制御信号SIGの一部とすることができる。電圧V
1およびV
2は、互いに対して異なる値を取ることができ、電圧V
1は、第1のスケール・ファクタの範囲と関連付けられ、電圧V
2は、第2のスケール・ファクタの範囲と関連付けられ。スイッチ70は、信号SWを介して制御され、その信号は、較正構成要素26によって設定される切替え頻度に基づきアサートおよびデアサートされる。したがって、スイッチ70は、センサ52の第1のスケール・ファクタの範囲を設定する電圧V
1の電位と、センサ52の第2のスケール・ファクタの範囲を設定する電圧V
2の電位との間でプルーフマス54を交互に切り替えることができる。プルーフマス54をそれぞれの電圧V
1およびV
2に設定する毎に、入力加速度は、感知軸64に沿って測定され、推定される範囲依存バイアス・エラーは、個々の電圧V
1およびV
2によって設定される第1および第2のスケール・ファクタの範囲のそれぞれにおける入力加速度の個々の値に基づき、計算される。
図2の例が2つの別の電圧源66および68を示しているが、電圧V
1およびV
2は、単一の電圧源によって発生するようにしてもよく、単一の電圧源を分圧器に、および分圧器から切り替えて、対応する個々のスケール・ファクタの範囲に対する個々の電圧が供給されることを理解すべきである。
【0027】
図3は、センサ52の一例の図形100を示す。本明細書に述べるように、図形100は、電荷が制御される力による再平衡化を実施する場合、スケール・ファクタの範囲を調節することができる第2の例を示す。
図3の例では、センサ52は、
図2の例におけるセンサ52と実質的に同じように組み立てて配置することができる。それゆえ、
図2の例の説明で付与されたのと同様の参照番号を、
図3の例の説明でも与えている。
【0028】
図形100は、PWM制御器102と、電流I
1を発生する第1の電流源104と、電流I
2を発生する第2の電流源106とを含む。電流源104および106は、PWM制御器102に基づき、それぞれの電流I
1およびI
2を電極54および56に印加する。電流I
1およびI
2は、PWM制御器102によって制御されて、個々の電極56および58において電荷パルスが発生して、プルーフマス54の力による再平衡化が実施される。一例として、PWM制御器102は、信号発生器20によって制御することができる。信号発生器20は、第1のスケール・ファクタの範囲と第2のスケール・ファクタの範囲との間にセンサ52を設定して、個々の電極56および58に印加されるときの電流I
1およびI
2の大きさまたは持続期間などに基づき、PWM制御器102を介して電流I
1およびI
2を制御する。それによって、第1のスケール・ファクタの範囲および第2のスケール・ファクタの範囲の各設定に関して、入力加速度を感知軸64に沿って測定することができ、電流I
1およびI
2によって設定される第1のスケール・ファクタの範囲および第2のスケール・ファクタの範囲のそれぞれにおける入力加速度の個々の値に基づき、推定される範囲依存バイアス・エラーを計算することができる。
【0029】
図4は、加速度計の較正アルゴリズム150の一例を示す。
図4の例の較正アルゴリズム150は、
図1の例の加速度計センサ・システム10に対して、推定されるスケール・ファクタの範囲依存バイアス・エラーをリアルタイムで計算するように実行する。したがって、
図4の例の次の説明では、
図1の例を参照されたい。より詳細に本明細書に説明するように、加速度計の較正アルゴリズム150は、加速度計センサ・システム10の公称動作の間、リアルタイムで繰り返し実行され、推定される範囲依存バイアス・エラーの大きさをほぼゼロの状態に維持する。さらに、加速度計の較正アルゴリズム150は、
図4の例では、時間が経過するにつれて左側から右側に流れ、他のステップより後に残されるステップは、時間でその順に実施され、
図4の例では左側から右側へ実質的に整列されたステップは、実質的に同時に実施される。
【0030】
ステップ152で、センサ10のスケール・ファクタの範囲SFR
Sが、第1のスケール・ファクタの範囲SFR
1のために設定される。一例として、第1のスケール・ファクタの範囲SFR
1は、
図2の例で述べたように、プルーフマス14に印加される電圧を変化させることに基づき、あるいは
図3の例で述べたように、電極16に電流を印加している持続期間を変化させることに基づき設定することができる。実質的にそれと同時に、ステップ154で、切替え率R
Sが、較正構成要素26によって設定される。たとえば、切替え率R
Sは、入力加速度の連続的なリアルタイムの測定および推定される範囲依存バイアス・エラーの連続的なリアルタイムの計算を容易にするために、実質的に高い頻度に設定することができる。
【0031】
ステップ156で、入力加速度が、第1のスケール・ファクタの範囲SFR
1で測定される。
図4の例では、第1のスケール・ファクタの範囲SFR
1で測定された入力加速度は、ACC
1として示される。入力加速度ACC
1の測定は、推定される範囲依存バイアス・エラーB
Eおよび第1のスケール・ファクタの範囲SFR
1と関連するスケール・ファクタSF
1に基づき、加速度構成要素24によって実施される。推定される範囲依存バイアス・エラーB
Eは、加速度計の較正アルゴリズム150の前の反復などから推定される範囲依存バイアス・エラーB
Eの以前の計算に基づくか、あるいは最初の所定の推定に基づくものである。スケール・ファクタSF
1は、加速度計センサ・システム10のテスト・フェーズの間になど、過剰温度でモデル化することができる。たとえば、センサ12は、較正前処置の間にタンブル・テストを受けることができる。一例として、較正前処置は、それぞれ所定の範囲の温度(たとえば、ほぼ−55℃乃至ほぼ+85℃の間)において所定の期間の間に複数の別個の間隔で、+1gおよび−1gの力にセンサ12を晒すことを含む。それゆえ、過剰温度でモデル化されたスケール・ファクタは、メモリ28に格納され、較正アルゴリズム150の間、過剰温度でモデル化されたスケール・ファクタにアクセスすることができる。
【0032】
ステップ158で、測定された入力加速度ACC
1が切替え率R
Sにより平均化されて、平均加速度ACC
AVG1が生成される。ステップ160で、センサ10のスケール・ファクタの範囲SFR
Sが、第1のスケール・ファクタの範囲SFR
1から第2のスケール・ファクタの範囲SFR
2に切り替えられる。一例として、第2のスケール・ファクタの範囲SFR
2は、
図2の例で述べたように、プルーフマス14に印加される電圧を変化させることに基づくか、あるいは
図3の例で述べたように、電極16に電流を印加している持続期間を変化させることに基づき設定することができる。
【0033】
ステップ162で、較正構成要素26によって推定される範囲依存バイアス・エラーB
Eが平均の加速度ACC
AVG1に基づいて計算される。ステップ162を、ステップ160の後に実施するように示しているが、ステップ162は、ステップ160の前に、またはそれと同時に実施することができることを理解すべきである。推定される範囲依存バイアス・エラーB
Eの計算は、あるアルゴリズムに基づくことができる。たとえば、電荷が制御される力による再平衡化が実施される場合、推定される範囲依存バイアス・エラーB
Eは、次のように計算することができ、
【0034】
【数1】
ただし、ACC
AVG2は、第2のスケール・ファクタの範囲SFR
2で計算された平均加速度であり、
SF
1は、第1のスケール・ファクタの範囲SFR
1と関連するスケール・ファクタであり、
SF
2は、第2のスケール・ファクタの範囲SFR
2と関連する第2のスケール・ファクタであり、
G
1は、第1の調節可能な利得定数であり、
G
2は、第2の調節可能な利得定数である。
【0035】
別の例として、電圧が制御される力による再平衡化を実施する場合、推定される範囲依存バイアス・エラーB
Eは、次のように計算することができ、
【0036】
【数2】
ただし、cは、電荷定数である。
【0037】
利得定数G
1およびG
2は、方程式1および方程式2の応答性を変更するために、切替え率R
Sに従って調節することができる。たとえば、第1の利得定数G
1は、積分利得を変更し、第1の利得定数G
1の値がより大きいと、範囲依存バイアス・エラーの変化に対する方程式1および2の応答性を高めることができる。別の例として、第2の利得定数G
2は、積分時間を変更し、第2の利得定数G
2の値がより大きいと、ノイズの影響および加速度の動態を平均化するための積分時間を増加させることができる。
【0038】
ステップ164で、入力加速度は、第2のスケール・ファクタの範囲SFR
2で測定される。
図4の例では、第2のスケール・ファクタの範囲SFR
2で測定された入力加速度は、ACC
2として示される。入力加速度ACC
2の測定は、第2のスケール・ファクタの範囲SFR
2と関連するスケール・ファクタSF
2に基づき、かつステップ162で計算された推定された範囲依存バイアス・エラーB
Eに基づき、加速度構成要素24によって実施される。ステップ166で、測定された入力加速度ACC
2を切替え率R
Sにより平均化して、平均加速度ACC
AVG2が生成される。
【0039】
ステップ168で、推定される範囲依存バイアス・エラーB
Eは、平均加速度ACC
AVG1およびACC
AVG2に基づき、かつ以前に計算された推定された範囲依存バイアス・エラーB
Eに基づき較正構成要素26によって再び計算される。ステップ170で、センサ10のスケール・ファクタの範囲SFR
Sは、第1のスケール・ファクタの範囲SFR
1に戻して設定され、較正処置では、ステップ152〜ステップ168を繰り返すことに基づき、較正処置自体が反復されて繰り返される。このようにして推定される範囲依存バイアス・エラーB
Eの値は、推定される範囲依存バイアス・エラーB
Eの値が入力加速度ACCのその後の測定値から減算されつつ、リアルタイムで連続的に計算される。その結果、推定される範囲依存バイアス・エラーB
Eの値は、入力加速度ACCが定常状態でほぼゼロに収束する。それによって、較正構成要素26によって較正処置をリアルタイムで連続的に実施すると、スケール・ファクタの範囲依存バイアス・エラーを入力加速度ACCの測定から実質的に連続的に取り除くことができて、加速度計センサ・システム10の正確さがより高められる。
【0040】
本明細書に述べた較正および自己較正の処置は、様々な加速度計システムのために実施することができる。その加速度計システムは、加速度を両方向で測定し、付随のエレクトロニック・システムを含み、そのエレクトロニック・システムは、物理的な感知要素(たとえばセンサ12)を用いた電子部の実装(すなわち機械化(mechanization))の相互作用に応じて、器具中でバイアス・エラーを発生するような方法で、それぞれの加速度計システムの動作を機械的に行う。加速度計センサ・システム10の適切な機械化の例は、電圧パルス幅変調、電気電荷パルス幅変調、電流パルス幅変調、および電圧、電荷または電流のパルス密度変調を含むことができる。それゆえ、加速度計センサ・システム10は、制御された繰り返し可能な、かつレシオメトリックな(ratiometric)方式で機械化を変更する能力に基づき、本明細書で説明した較正および自己較正の処置を実施することができる。一例として、電流のパルス幅変調の場合、電子部は、繰り返し可能な比によってその電流を分割することが可能である。本明細書で説明した較正および自己較正の処置をもたらすように較正構成要素26を実現する加速度計制御器18の能力に基づき、加速度計センサ・システム10は、本明細書で説明した較正および自己較正の処置を行うために、様々な標準的なセンサ(たとえばセンサ12)のいずれも利用することができる。
【0041】
上記に説明した構造上および機能的な特徴を考慮し、
図5を参照すると、本発明の様々な態様による方法をより良く認識するはずである。説明を簡単にする目的で、
図5の方法は、直列で連続的に実施するものとして示し述べているが、本発明は、例示した順序に限定されない、というのは、いくつかの態様は、本発明に従って、本明細書で示し説明した順序と異なる順序で、および/または他の態様と同時に行うことができることを理解し認識すべきである。さらに、例示する特徴のすべてが、本発明の態様による方法を実施するために求められない場合がある。
【0042】
図5は、加速度計センサ・システムを較正するための方法200の一例を示す。202で、加速度計センサ・システム(たとえば加速度計センサ・システム10)と関連するセンサ(たとえばセンサ12)に作用する入力加速度は、第1のスケール・ファクタの範囲(たとえばスケール・ファクタの範囲SFR
1)で測定される(たとえば加速度構成要素24によって)。204で、加速度計センサ・システムのスケール・ファクタの範囲は、第1のスケール・ファクタの範囲から第2のスケール・ファクタの範囲(たとえばスケール・ファクタの範囲SFR
2)に調節される。206で、センサに作用する入力加速度は、第2のスケール・ファクタの範囲で測定される。208で、アルゴリズム(たとえば方程式1または方程式2)は、第1のスケール・ファクタの範囲および第2のスケール・ファクタの範囲に基づき実行され、それによって、推定される範囲依存バイアス・エラー(たとえば推定される範囲依存バイアス・エラーB
E)が計算され、ここで、測定された入力加速度が推定される範囲依存バイアス・エラーに基づく。
【0043】
上記に述べてきた事項は、本発明の例である。もちろん、本発明を述べる目的で、構成要素または方法論のすべてのあり得る組合せを述べることは可能でないが、しかし、当業者は、本発明について多くのさらなる組合せおよび置換が可能であることを認識されるはずである。したがって、本発明は、添付の特許請求の範囲の趣旨および範囲内に含まれる、そのような変更形態、変更形態および変形形態のすべてを包含するものと意図する。