【課題を解決するための手段】
【0010】
導電率が高く、ワイヤーハーネスに望まれる特性、特に耐衝撃性や端子部との固着力を十分に具えた電線用導体に適したアルミニウム合金線を検討した結果、本発明者らは、伸線後(直後でなくてもよい)に軟化処理を施した軟材を利用することが好ましい、との知見を得た。軟化処理を行うと、線材の伸びを向上できるだけでなく、伸線などの塑性加工に伴う歪を除去して、導電率も向上することができる。かつ、本発明者らは、軟化処理を行うことに加えて、特定の組成のアルミニウム合金とする、具体的には特定量のFeを含有するアルミニウム合金とすることで、耐衝撃性や端子部との固着力を向上できる上に、強度にも優れるアルミニウム合金線が得られる、との知見を得た。本発明は、これらの知見に基づくものである。
【0011】
本発明アルミニウム合金線の製造方法は、以下の工程を具える。
1. Feを0.005質量%以上2.2質量%以下含有し、残部がAlからなるアルミニウム合金の溶湯を鋳造して鋳造材を形成する工程。
2. 上記鋳造材に圧延を施して圧延材を形成する工程。
3. 上記圧延材に伸線加工を施して伸線材を形成する工程。
4. 上記伸線材に軟化処理を施して軟材を形成する工程。
そして、本発明製造方法は、軟化処理後の線材の伸びが10%以上となるように伸線材に軟化処理を施す。得られたアルミニウム合金線は、導体に利用される。
【0012】
上記製造方法により、本発明アルミニウム合金線が得られる。本発明アルミニウム合金線は、導体に利用されるものであり、Feを0.005質量%以上2.2質量%以下含有し、残部がAl及び不純物からなる。そして、このアルミニウム合金線(以下、Al合金線と呼ぶ)は、導電率が58%IACS以上、伸びが10%以上である。
【0013】
本発明Al合金線は、軟化処理が施された軟材であるため、導電率及び靭性の双方に優れる上に、端子部との接続強度も高い。また、本発明Al合金線は、特定の組成であるため、強度も高い。従って、本発明Al合金線は、ワイヤーハーネスに望まれる導電率や耐衝撃性、強度、端子部との接続性を十分に具え、ワイヤーハーネスの電線用導体に好適に利用できる。以下、本発明をより詳細に説明する。なお、元素の含有量は、質量%を示す。
【0014】
[Al合金線]
《組成》
本発明Al合金線を構成する本発明Al合金は、Feを0.005%以上2.2%以下含有するAl-Fe系合金である。Feを0.005%以上含有することで、強度に優れるAl合金線が得られる。Feの含有量が高いほどAl合金の強度が高まるが、導電率や靭性が低下する上に、伸線加工時などで断線が生じ易くなるため、Fe:2.2%以下とする。Feは、導電率の低下をあまり招くことなく強度を向上することができるが、Feを添加し過ぎると、伸線加工などの加工性の低下を招く。Feのより好ましい含有量は、0.9%以上2.0%以下である。
【0015】
Feに加えて、Mg、Si、Cu、Zn、Ni、Mn、Ag、Cr、及びZrから選択される1種以上の添加元素を含有することで、強度や靭性、耐衝撃性の向上を図ることができる。Mn,Ni,Zr,Crは、導電率の低下が大きいものの、強度の向上効果が高い元素である。Ag,Znは、導電率の低下が少なく、強度の向上効果をある程度有する。Cuは、導電率の低下が少なく、強度を向上することができる。Mgは、導電率の低下が大きいものの、強度の向上効果が高く、特にSiと同時に含有することで、強度をより向上できる。これらの添加元素は、1種でも2種以上を組み合わせて含有していてもよく、合計含有量が0.005質量%以上1.0質量%以下であることが好ましい。好ましい含有量は、Mg:0.05%以上0.5%以下、Mn,Ni,Zr,Zn,Cr及びAg:合計で0.005%以上0.2%以下、Cu:0.05%以上0.5%以下、Si:0.05%以上0.3%以下であり、より好ましい含有量は、Mg:0.05%以上0.4%以下、特に、Mg:0.1%以上0.4%以下、Mn,Ni,Zr,Zn,Cr及びAg:合計で0.005%以上0.15%以下、Cu:0.05%以上0.4%以下、Si:0.05%以上0.2%以下である。Mgが0.5%超、Mn,Ni,Zr,Zn,Cr及びAgの合計が0.2%超、Cuが0.5%超であると、Al合金の強度が高まるが、導電率や靭性が低下する上に、伸線加工時などで断線が生じ易くなる。Siが0.3%超であると、導電率及び靭性の低下を招く。
【0016】
本発明Al合金線を構成するAl合金において、Feに加えて上記添加元素を含有する場合の具体的な組成として、例えば、以下の(1)〜(4)が挙げられる。
(1) 質量%で、Feを0.90%以上1.20%以下、Mgを0.10%以上0.25%以下含有し、残部がAl及び不純物。
(2) 質量%で、Feを1.01%以上2.2%以下、Mgを0.05%以上0.5%以下、Mn,Ni,Zr,Zn,Cr,及びAgから選択される1種以上の元素を合計で0.005%以上0.2%以下含有し、残部がAl及び不純物。
(3) 質量%で、Feを1.01%以上2.2%以下、Cuを0.05%以上0.5%以下含有し、残部がAl及び不純物。
(4) 質量%で、Feを1.01%以上2.2%以下、Cuを0.05%以上0.5%以下含有し、更にMgを0.1%以上0.5%以下及びSiを0.05%以上0.3%以下の少なくとも1種を含有し、残部がAl及び不純物。
【0017】
更に、上記Al合金は、Ti及びBの少なくとも一方を含有すると、強度をより向上することができる。TiやBは、鋳造時のAl合金の結晶組織を微細にする効果がある。結晶組織が微細であると、強度を向上することができる。B単独の含有でもよいが、Ti単独、特に双方を含有すると、結晶組織の微細化効果が更に向上する。この微細化効果を十分に得るには、質量割合で、Tiを100ppm以上500ppm以下(0.01%以上0.05%以下)、Bを10ppm以上50ppm以下(0.001%以上0.005%以下)含有することが好ましい。Ti:500ppm超、B:50ppm超では、上記微細化効果が飽和したり、導電率の低下を招く。
【0018】
《特性》
本発明Al合金線は、特定の組成の本発明Al合金から構成されると共に軟材であるため、導電性及び靭性に優れ、導電率:58%IACS以上、伸び:10%以上である。添加元素の種類や量、軟化条件にもよるが、本発明Al合金線は、導電率:59%IACS以上、伸び:25%以上を満たすこともできる。
【0019】
また、本発明者らが検討したところ、軟化条件(方式)によって、導電率や靭性を高めたり、耐食性を向上できるとの知見を得た。具体的には、軟化処理として、後述するバッチ処理(光輝処理)を行うと、導電率や伸びが高い傾向にあり、後述する連続処理を行うと、耐食性に優れる傾向にある。各軟化処理を施したAl合金線を調べたところ、析出物の存在状態に差異が見られ、連続軟化処理を行った場合、100nm以下といった非常に微細な析出物が少なく、バッチ軟化処理を行った場合、連続軟化処理を行った場合よりも上記析出物が多く存在していた。即ち、以下のAl合金線が得られた。
【0020】
(連続軟化処理):導体に利用されるAl合金線であって、Feを0.005質量%以上2.2質量%以下含有し、残部がAl及び不純物からなり、このAl合金線の断面において2400nm×2600nmの観察視野をとったとき、この観察視野中に存在する析出物であって、円相当径が100nm以下の析出物の数が10個以下である。
(バッチ軟化処理):導体に利用されるAl合金線であって、Feを0.005質量%以上2.2質量%以下含有し、残部がAl及び不純物からなり、このAl合金線の断面において2400nm×2600nmの観察視野をとったとき、この観察視野中に存在する析出物であって、円相当径が100nm以下の析出物の数が10個超である。
Feに加えて、上述した範囲で上記添加元素(Mg,Si,Cu,Zn,Ni,Mn,Ag,Cr,Zr)を含有していてもよいし、更に、TiやBを含有していてもよい。
【0021】
上述のように析出物の存在状態に差異が生じた理由は、以下のように考えられる。連続軟化処理の場合、軟化処理時に処理対象が高温になり易いことから、鋳造時や鋳造後の圧延時などに析出したFeが再固溶したり、軟化処理後の降温速度(冷却速度)が速い、即ち、急冷され易いことから固溶しているFeが析出し難いためであると考えられる。一方、バッチ軟化処理の場合、連続軟化処理の場合と比較して、軟化処理時に処理対象が高温になり難いことから、Feの再固溶が発生し難かったり、軟化処理後に徐冷されることから(降温速度が遅いことから)連続軟化処理の場合よりもFeが析出し易いためであると考えられる。
【0022】
なお、主として鋳造時に晶析出物が生成され、伸線後に連続軟化処理を行うことで、微細な析出物が低減される。従って、連続軟化処理を行うと、母材に十分にFeが固溶されていることで強度に優れる上に、耐食性にも優れるAl合金線が得られる。一方、バッチ軟化処理を行うと、連続軟化処理を行った場合よりも微細な析出物が多く存在するが、各析出物の大きさは100nm以下であり、その存在量もせいぜい100個/上記観察視野である。この微細な析出物の大きさや存在量は、軟化条件を調整することで変化させられる。例えば、軟化処理時の加熱温度を高く、降温速度(冷却速度)を速くすることで、析出物の大きさを小さく、存在量も少なくできる。従って、バッチ軟化処理の条件によっては、例えば、析出物の大きさが80nm以下、更に50nm以下であり、存在量が50個以下、更に20個以下のAl合金線が得られる。バッチ軟化処理を行った場合でも、母材にFeが固溶されていることから強度が高く、かつ上記微細な析出物が均一的に分散した組織を有することで靭性に優れると共に、連続軟化処理の場合と比較してFeの固溶量が少なくなることで導電率が高いAl合金線が得られる。
【0023】
本発明Al合金線は、引張強さが110MPa以上200MPa以下であることが好ましい。本発明者らは、単に高強度なだけで、靭性に劣る電線用導体ではワイヤーハーネスに適さないとの知見を得た。一般に、強度の向上は靭性の低下を招く。引張強さが上記範囲を満たすことで、高い靭性と高い強度とを両立することができる。また、本発明Al合金線は、0.2%耐力が40MPa以上であることが好ましい。同じ引張強さである場合、0.2%耐力が高い方が端子部との固着力が高くなる傾向にある。
【0024】
添加元素(種類や含有量)、製造条件(軟化条件など)を適宜調整することで、導電率、伸び、引張強さ、0.2%耐力が上記特定の範囲を満たすAl合金線が得られる。添加元素を少なくしたり、軟化処理時の加熱温度を高くした後に降温速度を遅くすると、導電率及び靭性が高くなる傾向にあり、添加元素を多くしたり、軟化処理時の加熱温度を低くすると、強度や0.2%耐力が高くなる傾向にあり、例えば、引張強さを120MPa以上とすることができる。
【0025】
《形状》
本発明Al合金線は、伸線加工時の加工度(断面減少率)を適宜調整することで、種々の線径(直径)を有することができる。例えば、自動車用ワイヤーハーネスの電線用導体に利用する場合、線径は0.2mm以上1.5mm以下が好ましい。
【0026】
また、本発明Al合金線は、伸線加工時のダイス形状によって種々の断面形状を有することができる。断面円形状が代表的であり、その他、楕円形状、矩形や六角形などの多角形状などの断面形状が挙げられる。形状は特に問わない。
【0027】
[Al合金撚り線]
上記本発明Al合金線は、複数の線材を撚り合わせた撚り線とすることができる。細径の線材であっても撚り合わせることで、強度の高い線材(撚り線)とすることができる。撚り合わせ本数は、特に問わない。例えば、7,11,19,37本が挙げられる。また、本発明Al合金撚り線は、撚り合わせた後、圧縮成形した圧縮線材とすると、撚り合わせた状態よりも線径を小さくすることができる。
【0028】
[被覆電線]
上記本発明Al合金線や本発明Al合金撚り線、圧縮線材は、電線用導体に好適に利用することができる。用途に応じて、このまま導体として使用することもできるし、この導体の外周に絶縁材料により形成した絶縁被覆層を具える被覆電線として使用することもできる。絶縁材料は、適宜選択することができる。例えば、ポリ塩化ビニル(PVC)やノンハロゲン樹脂、難燃性に優れる材料などが挙げられる。絶縁被覆層の厚さは、所望の絶縁強度を考慮して適宜選択することができ、特に限定されない。
【0029】
[ワイヤーハーネス]
上記被覆電線は、ワイヤーハーネスに好適に利用することができる。このとき、被覆電線の端部には、機器などの接続対象に接続できるように端子部が装着される。このワイヤーハーネスは、複数の被覆電線に対して一つの端子部を共有するような電線群を含んでいてもよい。また、このワイヤーハーネスに具える複数の被覆電線は、結束具などにより一纏まりに束ねることで、ハンドリング性に優れる。このワイヤーハーネスは、軽量化が望まれている種々の分野、特に、燃費の向上のために更なる軽量化が望まれている自動車に好適に利用することができる。
【0030】
[製造方法]
《鋳造工程》
本発明製造方法は、まず、上記特定の組成のAl合金からなる鋳造材を形成する。鋳造は、可動鋳型又は枠状の固定鋳型を用いる連続鋳造、箱状の固定鋳型を用いる金型鋳造(以下、ビレット鋳造と呼ぶ)のいずれも利用することができる。連続鋳造は、溶湯を急冷凝固できるため、微細な結晶組織を有する鋳造材が得られる。また、急冷凝固により、晶析出物を微細にできる上に、この微細な晶析出物が均一的に分散した組織を有する鋳造材が得られる。このような鋳造材を素材にすると、微細な結晶組織を有するAl合金線を製造し易く、結晶の微細化による強度の向上や、微細な晶析出物の分散による靭性の向上を図ることができる。冷却速度は、適宜選択することができるが、1℃/sec以上が好ましく、4℃/sec以上がより好ましい。また、溶湯の固液共存温度域である600〜700℃において冷却速度が20℃/sec以上であることが更に好ましい。例えば、水冷銅鋳型や強制水冷機構などを有する連続鋳造機を用いると、上述のような冷却速度による急冷凝固を実現できる。連続鋳造において上記冷却速度を調整して急冷凝固を行うことで、鋳造後に得られた鋳造材のDAS(Dendrite Arm Spacing)を小さくすることができる。DASは、50μm以下が好ましく、40μm以下がより好ましい。
【0031】
TiやBを添加する場合、溶湯を鋳型に注湯する直前に添加すると、Tiなどの局所的な沈降を抑制して、Tiなどが均等に混合された鋳造材を製造することができて好ましい。
【0032】
《圧延工程》
次に、上記鋳造材に(熱間)圧延を施し、圧延材を形成する。特に、ビレット鋳造材を用いた場合、鋳造後に均質化処理を行うことが好ましい。
【0033】
上記鋳造工程と圧延工程とは、連続的に行うと、鋳造材に蓄積される熱を利用して熱間圧延を容易に行えて、エネルギー効率がよい上に、バッチ式の鋳造方法と比較して、鋳造圧延材の生産性に優れる。
【0034】
《伸線工程》
次に、上記圧延材又は連続鋳造圧延材に(冷間)伸線加工を施し、伸線材を形成する。伸線加工度は、所望の線径に応じて適宜選択することができる。得られた伸線材は、所望の本数を用意して撚り合わせ、撚り線とすることもできる。
【0035】
《軟化処理(最終熱処理)工程》
次に、上記伸線材又は撚り線に軟化処理を施す。軟化処理は、軟化処理後の線材(単線材又は撚り線)の伸びが10%以上となるような条件により行う。伸線後及び撚り合わせ後の双方に軟化処理を施して、最終的な撚り線の伸びが10%以上となるようにしてもよい。この軟化処理は、結晶組織の微細化、及び加工硬化によって高めた線材の強度を極端に低下させることなく軟化して、線材の靭性を高めるために行う。
【0036】
軟化処理は、連続処理又はバッチ処理が利用できる。軟化処理中の雰囲気は、処理中の熱により線材の表面に酸化膜が生成されることを抑制するために、酸素含有量が少ない雰囲気、例えば、大気雰囲気や非酸化性雰囲気が好ましい。非酸化性雰囲気は、例えば、真空雰囲気(減圧雰囲気)、窒素(N
2)やアルゴン(Ar)などの不活性ガス雰囲気、水素含有ガス(例えば、水素(H
2)のみ、N
2,Ar,ヘリウム(He)といった不活性ガスと水素(H
2)との混合ガスなど)や炭酸ガス含有ガス(例えば、一酸化炭素(CO)と二酸化炭素(CO
2)との混合ガスなど)といった還元ガス雰囲気が挙げられる。
【0037】
<バッチ処理>
バッチ処理(光輝軟化処理)は、加熱用容器(雰囲気炉、例えば、箱型炉)内に加熱対象を封入した状態で加熱する処理方法であり、一度の処理量が限られるものの、加熱対象全体の加熱状態を管理し易い処理方法である。バッチ処理では、加熱温度を250℃以上とすることで、線材の伸びを10%以上にすることができる。好ましい条件は、加熱温度:300℃以上500℃以下、保持時間:0.5時間以上6時間以下である。加熱温度が250℃未満では靭性及び導電率が向上し難く、加熱温度が500℃超、又は保持時間が6時間超では、強度が低下する。また、バッチ処理では、加熱温度からの冷却する際の速度、即ち、加熱後の降温速度が50℃/sec以下であることが好ましい。降温速度を比較的遅くして徐冷することで、微細な析出物を比較的多く析出することができる。上記降温速度は、例えば、加熱後直ちに炉内から出すのではなく、加熱後に引き続いて炉内に保存した状態とすることで達成することができる。
【0038】
<連続処理>
連続処理は、加熱用容器内に加熱対象を連続的に供給して、加熱対象を連続的に加熱する処理方法であり、1.連続的に加熱できるため作業性に優れる、2.線材の長手方向に均一的に加熱できるため線材の長手方向における特性のばらつきを抑制できる、といった利点がある。特に、電線用導体に利用されるような長尺な線材に軟化処理を施す場合、連続処理が好適に利用できる。連続処理は、加熱対象を抵抗加熱により加熱する直接通電方式(通電連続軟化処理)、加熱対象を高周波数の電磁誘導により加熱する間接通電方式(高周波誘導加熱連続軟化処理)、加熱雰囲気とした加熱用容器(パイプ軟化炉)内に加熱対象を導入して熱伝導により加熱する炉式が挙げられる。連続処理により伸びが10%以上である線材を得るには、例えば、以下のようにする。所望の特性(ここでは、伸び)に関与し得る制御パラメータを適宜変化させて試料に軟化処理を行い、そのときの試料の特性(伸び)を測定し、パラメータ値と測定データとの相関データを予め作成する。この相関データに基づいて、所望の特性(伸び)が得られるようにパラメータを調整する。通電方式の制御パラメータは、容器内への供給速度(線速)、加熱対象の大きさ(線径)、電流値などが挙げられる。炉式の制御パラメータは、容器内への供給速度(線速)、加熱対象の大きさ(線径)、炉の大きさ(パイプ軟化炉の直径)などが挙げられる。伸線機における伸線材の排出側に軟化装置を配置させる場合、線速を数百m/min以上、例えば、400m/min以上とすることで、伸びが10%以上の線材が得られる。また、連続処理では、加熱後の降温速度が50℃/sec以上であることが好ましい。降温速度を比較的速くすることで、微細な析出物の析出を抑制し、当該析出物を比較的少なくすることができる。降温速度の調整は、上述のように線速などを調整することで行える。
【0039】
《その他の工程》
本発明製造方法は、更に、複数の上記伸線材又は軟材を撚り合わせて撚り線を形成する工程と、上記撚り線を圧縮成形して所定の線径の圧縮線材を形成する工程とを具えることで、圧縮線材を製造することができる。このとき、軟化処理は、撚り合わせ前の伸線材のみに施してもよいし、撚り合わせ前後の双方で行ってもよいし、撚り合わせ前の伸線材に施さず、撚り線や圧縮線材にのみ施してもよい。撚り合わせ前に所定の伸びを有する軟材を作製し、この軟材により圧縮線材を形成する場合や撚り合せた後に所定の伸びを有する撚り線(軟材)により圧縮線材を形成する場合、圧縮後に軟化処理を施さなくてもよい。得られた圧縮線材に上述の絶縁被覆層を形成することで、被覆電線を製造することができる。得られた被覆電線の端部に端子部を装着し、複数の端子部付きの被覆電線を束ねることで、ワイヤーハーネスを製造することができる。