(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0016】
A.第1実施形態
A−1.スパークプラグの構成
図1は、スパークプラグ10の部分断面を示す説明図である。
図1には、スパークプラグ10の軸心である軸線CLを境界として、軸線CLより紙面左側にスパークプラグ10の外観形状が図示され、軸線CLより紙面右側にスパークプラグ10の断面形状が図示されている。本実施形態の説明では、スパークプラグ10における
図1の紙面下側を「先端側」といい、
図1の紙面上側を「後端側」という。
【0017】
スパークプラグ10は、中心電極100と、絶縁体200と、主体金具300と、接地電極400と、板パッキン500とを備える。本実施形態では、スパークプラグ10の軸線CLは、中心電極100、絶縁体200および主体金具300の各部材における軸心でもある。
【0018】
スパークプラグ10は、中心電極100と接地電極400との間に形成された間隙SGを先端側に有する。スパークプラグ10の間隙SGは、火花ギャップとも呼ばれる。スパークプラグ10は、間隙SGが形成された先端側を燃焼室920の内壁910から突出させた状態で内燃機関90に取り付け可能に構成されている。スパークプラグ10を内燃機関90に取り付けた状態で高電圧(例えば、1万〜3万ボルト)を中心電極100に印加した場合、間隙SGに火花放電が発生する。間隙SGに発生した火花放電は、燃焼室920における混合気に対する着火を実現する。
【0019】
図1には、相互に直交するXYZ軸が図示されている。
図1のXYZ軸は、後述する他の図におけるXYZ軸に対応する。
【0020】
図1のXYZ軸のうち、X軸は、Y軸およびZ軸に直交する軸である。X軸に沿ったX軸方向のうち、+X軸方向は、
図1の紙面奥から紙面手前に向かう方向であり、−X軸方向は、+X軸方向の逆方向である。
【0021】
図1のXYZ軸のうち、Y軸は、X軸およびZ軸に直交する軸である。Y軸に沿ったY軸方向のうち、+Y軸方向は、
図1の紙面右から紙面左に向かう方向であり、−Y軸方向は、+Y軸方向の逆方向である。
【0022】
図1のXYZ軸のうち、Z軸は、軸線CLに沿った軸である。Z軸に沿ったZ軸方向(軸線方向)のうち、+Z軸方向は、スパークプラグ10の後端側から先端側に向かう方向であり、−Z軸方向は、+Z軸方向の逆方向である。
【0023】
スパークプラグ10の中心電極100は、導電性を有する電極である。中心電極100は、軸線CLを中心に延びた棒状を成す。本実施形態では、中心電極100の材質は、ニッケル(Ni)を主成分とするニッケル合金(例えば、インコネル600(「INCONEL」は登録商標))である。中心電極100の外側面は、絶縁体200によって外部から電気的に絶縁されている。中心電極100の先端側は、絶縁体200の先端側から突出している。中心電極100の後端側は、絶縁体200の後端側へと電気的に接続されている。本実施形態では、中心電極100の後端側は、端子金具190を介して絶縁体200の後端側へと電気的に接続されている。
【0024】
スパークプラグ10の接地電極400は、導電性を有する電極である。接地電極400は、主体金具300から+Z軸方向に延びた後に軸線CLに向けて屈曲した形状を成す。接地電極400の後端側は、主体金具300に接合されている。接地電極400の先端側は、中心電極100との間に間隙SGを形成する。本実施形態では、電極母材410の材質は、中心電極100と同様に、ニッケル(Ni)を主成分とするニッケル合金である。
【0025】
スパークプラグ10の絶縁体200は、電気絶縁性を有する碍子である。絶縁体200は、軸線CLを中心に延びた筒状を成す。本実施形態では、絶縁体200は、絶縁性セラミックス材料(例えば、アルミナ)を焼成することによって作製される。絶縁体200は、軸線CLを中心に延びた貫通孔である軸孔290を有する。絶縁体200の軸孔290には、中心電極100を絶縁体200の先端側から突出させた状態で、中心電極100が軸線CL上に保持されている。
【0026】
絶縁体200は、先胴部210と、段部220と、中胴部230とを有する。絶縁体200の先胴部210は、後端側から先端側に向かうに従って外径が小さくなる筒状の部位である。先胴部210の先端側からは、中心電極100が突出している。絶縁体200の段部220は、先胴部210の後端側に位置し、先胴部210と中胴部230との間を繋ぐ部位である。段部220の外径は、先胴部210から中胴部230に向かうに従って大きくなる。絶縁体200の中胴部230は、段部220の後端側に位置する筒状の部位である。中胴部230の外径は、先胴部210の外径より大きい。絶縁体200の詳細構成については後述する。
【0027】
スパークプラグ10の主体金具300は、導電性を有する金属体である。本実施形態では、主体金具300の材質は、約0.25%の炭素を含有する炭素鋼である。他の実施形態では、主体金具300の材質は、0.25%より少ない炭素を含有する炭素鋼であってもよいし、0.25%より多い炭素を含有する炭素鋼であってもよい。本実施形態では、主体金具300の外周側の表面には、ニッケルめっきが施されている。他の実施形態では、主体金具300外周側の表面には、亜鉛めっきが施されていてもよいし、めっきが施されていなくてもよい。
【0028】
主体金具300は、軸線CLを中心に延びた筒状を成す。主体金具300は、中心電極100から電気的に絶縁された状態で絶縁体200の外側にカシメによって固定されている。主体金具300は、端面310と、ネジ部320と、先孔部360と、棚部370と、中孔部380とを有する。
【0029】
主体金具300の端面310は、先端側を向いた円環状の面である。端面310の中央からは、中心電極100とともに絶縁体200が先端側に向けて突出している。端面310には、接地電極400が接合されている。
【0030】
主体金具300のネジ部320は、先孔部360、棚部370および中孔部380の外側に位置し、主体金具300の外周に雄ネジが形成された部位である。本実施形態では、ネジ部320に形成された雄ネジの呼び径は、M10である。他の実施形態では、ネジ部320に形成された雄ネジの呼び径は、M10より小さくてもよいし(例えば、M8)、M10より大きくてもよい(例えば、M12、M14)。
【0031】
主体金具300の先孔部360は、軸線CLを中心に絶縁体200の先胴部210との間に間隙を形成する孔を形成する。主体金具300の棚部370は、先孔部360の後端側に位置し、先孔部360と中孔部380との間を繋ぐ部位である。棚部370は、先孔部360および中孔部380より内側へと環状に突出している。これによって、棚部370は、板パッキン500を介して絶縁体200の段部220を支持する。主体金具300の中孔部380は、棚部370の後端側に位置し、絶縁体200の中胴部230との間に間隙を形成する孔を形成する。主体金具300の詳細構成については後述する。
【0032】
スパークプラグ10の板パッキン500は、絶縁体200の段部220と主体金具300の棚部370との間に挟まれた部材である。板パッキン500は、段部220と棚部370との間で押し潰された円環状を成す。本実施形態では、板パッキン500の材質は、約0.15%の炭素を含有する炭素鋼である。他の実施形態では、板パッキン500の材質は、0.15%より少ない炭素を含有する炭素鋼であってもよいし、0.15%より多い炭素を含有する炭素鋼であってもよい。他の実施形態では、板パッキン500の材質は、銅であってもよいし、ステンレス鋼であってもよい。
【0033】
図2は、段部220および棚部370を中心にスパークプラグ10を示す部分拡大図である。
図2には、絶縁体200の外観と、主体金具300の断面と、板パッキン500の断面とが図示されている。
図2に示す主体金具300および板パッキン500の断面は、軸線CLを通る仮想平面上に位置する。
【0034】
絶縁体200は、外面212と、外面222と、外面232とを有する。外面212は、先胴部210を構成する面である。外面222は、先端側を向いた面であり、段部220を構成する。外面232は、軸線CLに沿った面であり、中胴部230を構成する。本実施形態では、外面212と外面222との間は滑らかに繋がっている。本実施形態では、外面222と外面232との間は滑らかに繋がっている。
【0035】
主体金具300は、内面362と、内面372と、内面374と、内面376と、内面382とを有する。内面362は、軸線CLに沿った面であり、先孔部360を構成する。内面372,374,376は、棚部370を構成する面である。内面372は、先端側を向いた面であり、内面362の後端側に繋がる。内面374は、軸線CLに沿った面であり、内面372の後端側に繋がる。内面376は、後端側を向いた面であり、内面374の後端側に繋がる。内面382は、軸線CLに沿った面であり、中孔部380を構成する。内面382は第1の面であり、内面374は第2の面であり、内面376は第3の面である。
【0036】
点P1aは、軸線CLで分断される2つの片側断面のうち+Y軸方向に位置する一方の片側断面における内面374の延長線と内面376の延長線との交点である。点P2aは、+Y軸方向側の片側断面における内面376の延長線と内面382の延長線との交点である。点P1bは、軸線CLで分断される2つの片側断面のうち−Y軸方向に位置する他方の片側断面における内面374の延長線と内面376の延長線との交点である。点P2bは、−Y軸方向側の片側断面における内面376の延長線と内面382の延長線との交点である。
【0037】
主体金具300における中孔部380の内径Cは、点P2aと点P2bとの間におけるY軸に沿った距離に等しい。主体金具300における棚部370の内径Dは、点P1aと点P2bとの間におけるY軸に沿った距離に等しい。絶縁体200における中胴部230の外径Jは、中孔部380の内径Cより小さく、棚部370の内径Dより大きい。
【0038】
板パッキン500の先端側は、絶縁体200において、段部220に形成されていてもよいし、先胴部210にまで形成されていてもよい。板パッキン500の先端側は、主体金具300において、棚部370の内面376に形成されていてもよいし、棚部370の内面374にまで形成されていてもよい。板パッキン500の後端側は、絶縁体200において、段部220に形成されていてもよいし、中胴部230にまで形成されていてもよい。板パッキン500の後端側は、主体金具300において中孔部380にまで形成されている。
【0039】
図3は、板パッキン500を中心に+Y軸方向に位置する一方の片側断面を示す部分拡大図である。点P3aは、主体金具300が板パッキン500と接触する先端側の端を示す。点P4aは、主体金具300が板パッキン500と接触する後端側の端を示す。点P5aは、絶縁体200が板パッキン500と接触する先端側の端を示す。点P6aは、絶縁体200が板パッキン500と接触する後端側の端を示す。
【0040】
長さA1は、
図3の片側断面において主体金具300と板パッキン500とが接触する長さである。言い換えると、長さA1は、主体金具300の表面に沿って点P3aから点P1aおよび点P2aを経由して点P4aに至るまでの長さである。
【0041】
長さA2は、
図3の片側断面において絶縁体200と板パッキン500とが接触する長さである。言い換えると、長さA2は、絶縁体200の表面に沿って点P5aから点P6aに至るまでの長さである。
【0042】
図4は、板パッキン500を中心に−Y軸方向に位置する他方の片側断面を示す部分拡大図である。点P3bは、主体金具300が板パッキン500と接触する先端側の端を示す。点P4bは、主体金具300が板パッキン500と接触する後端側の端を示す。点P5bは、絶縁体200が板パッキン500と接触する先端側の端を示す。点P6bは、絶縁体200が板パッキン500と接触する後端側の端を示す。
【0043】
長さB1は、
図4の片側断面において主体金具300と板パッキン500とが接触する長さである。言い換えると、長さB1は、主体金具300の表面に沿って点P3bから点P1bおよび点P2bを経由して点P4bに至るまでの長さである。
【0044】
長さB2は、
図4の片側断面において絶縁体200と板パッキン500とが接触する長さである。言い換えると、長さB2は、絶縁体200の表面に沿って点P5bから点P6bに至るまでの長さである。
【0045】
絶縁体200から板パッキン500を経て主体金具300に至る経路を通じた熱発散性を向上させる観点から、長さA1(mm)と長さA2(mm)とを加算した長さA(mm)と、長さB1(mm)と長さB2(mm)とを加算した長さB(mm)と、中孔部380の内径C(mm)から棚部370の内径D(mm)を減算して差分M(mm)とに関し、値(A+B)/Mは、2.8以上であることが好ましく、2.9以上であることがいっそう好ましい。値(A+B)/Mは、大きいほど熱発散性の向上に効果的であり、例えば、3.0であってもよいし、4.0であってもよいし、5.0であってもよい。すなわち、値(A+B)/Mは、2.8以上であれば、5.0以下であってもよい。値(A+B)/Mの評価値については後述する。
【0046】
図5は、板パッキン500を中心に+Y軸方向に位置する一方の片側断面を示す部分拡大図である。点Mfは、主体金具300のビッカース硬さを測定するための測定点を示す。点Mpは、板パッキン500のビッカース硬さを測定するための測定点を示す。点P7aは、板パッキン500における先端側の界面502の中点である。点P8aは、板パッキン500における後端側の界面504の中点である。中心線CPは、点P7aから点P8aへと板パッキン500の中心を通る線である。
【0047】
点Mfは、主体金具300の部分のうち板パッキン500に接触する界面P4a−P2a−P1a−P3aから0.2mmの深さに位置する部分に対して、後端側から0.1mm間隔で設定した点である。本実施形態では、点Mfは、−Y軸方向に位置する他方の片側断面においても同様に設定される。主体金具300の平均ビッカース硬さEは、複数の点Mfにおいて測定されたビッカース硬さを平均した値である。
【0048】
点Mpは、板パッキン500の部分のうち中心線CP上で、点P8aより0.2mm離れた部分から、0.1mm間隔で、点P7aより0.2mmの範囲内になる手前まで設定した点である。本実施形態では、点Mpは、−Y軸方向に位置する他方の片側断面においても同様に設定される。板パッキン500の平均ビッカース硬さFは、複数の点Mpにおいて測定されたビッカース硬さを平均した値である。
【0049】
主体金具300および板パッキン500の各ビッカース硬さは、日本工業規格JIS−Z−2244:2009に準じて測定され、その測定条件は次のとおりである。
・試験分類:マイクロビッカース硬さ試験
・試験力:980.7mN(ミリニュートン)
・試験力の保持時間:15秒
・圧子の接近速度:60μm/s(マイクロメートル毎秒)
【0050】
板パッキン500が潰れ過ぎることによって主体金具300に対する絶縁体200の位置が先端側へと過剰にずれることを防止する観点から、板パッキン500の平均ビッカース硬さFは、100HV以上であることが好ましい。絶縁体200から板パッキン500を経て主体金具300に至る経路を通じた熱発散性を向上させる観点から、主体金具300の平均ビッカース硬さEは、240HV以上であるとともに、板パッキン500の平均ビッカース硬さFは、主体金具300の平均ビッカース硬さEより小さいことが好ましい。平均ビッカース硬さE,Fについての評価値については後述する。
【0051】
図6は、板パッキン500を中心に+Y軸方向に位置する一方の片側断面を示す部分拡大図である。点P9aは、+Y軸方向に位置する一方の片側断面における内面376の中点、すなわち、点P1aと点P2aとを繋ぐ線分の中点を示す。厚みTPaは、点P9aにおける板パッキン500の厚みである。
【0052】
垂線PL1は、点P9aを通るとともに内面376に対して直交する線である。長さAOは、垂線PL1より外周側で絶縁体200と板パッキン500とが接触する長さを示す。長さAIは、垂線PL1より内周側で絶縁体200と板パッキン500とが接触する長さを示す。
【0053】
図7は、板パッキン500を中心に−Y軸方向に位置する他方の片側断面を示す部分拡大図である。点P9bは、−Y軸方向に位置する他方の片側断面における内面376の中点、すなわち、点P1bと点P2bとを繋ぐ線分の中点を示す。厚みTPbは、点P9bにおける板パッキン500の厚みである。
【0054】
垂線PL2は、点P9bを通るとともに内面376に対して直交する線である。長さBOは、垂線PL2より外周側で絶縁体200と板パッキン500とが接触する長さを示す。長さBIは、垂線PL2より内周側で絶縁体200と板パッキン500とが接触する長さを示す。
【0055】
板パッキン500に十分な潰れ代を確保することによって絶縁体200を主体金具300に組み付ける精度を維持する観点から、板パッキン500の厚みTPは、0.15mm以上であることが好ましい。絶縁体200から板パッキン500を経て主体金具300に至る経路を通じた熱発散性をいっそう向上させる観点から、板パッキン500の厚みTPは、0.30mm以下であることが好ましく、0.20mm以下であることがいっそう好ましい。本実施形態では、板パッキン500の厚みTPは、厚みTPaと厚みTPbとの平均値である。厚みTPの評価値については後述する。
【0056】
絶縁体200から板パッキン500を経て主体金具300に至る経路を通じた熱発散性を効果的に向上させる観点から、値(AI+BI)/(AO+BO)は、0.9以上であることが好ましく、1.1以上であることがいっそう好ましい。値(AI+BI)/(AO+BO)の評価値については後述する。
【0057】
A−2.評価試験
図8は、値(A+B)/Mを評価した結果を示す表である。
図8の評価試験では、試験者は、ネジ部320の呼び径M10,M12,M14ごとに、値(A+B)/Mが異なる複数のスパークプラグ10を、試料A1〜A9として評価した。
【0058】
試料A1〜A9に共通する仕様は次のとおりである。
・主体金具300の材質:約0.25%の炭素を含有する炭素鋼
・板パッキン500の材質:約0.15%の炭素を含有する炭素鋼
【0059】
試料A1〜A3に共通する仕様は次のとおりである。
・ネジ部320の呼び径:M10
・差分M(=C−D):1.3mm
・内径C:6.5mm
・内径D:5.2mm
・外径J:6.3mm
【0060】
試料A4〜A6に共通する仕様は次のとおりである。
・ネジ部320の呼び径:M12
・差分M(=C−D):1.3mm
・内径C:7.5mm
・内径D:6.2mm
・外径J:7.3mm
【0061】
試料A7〜A9に共通する仕様は次のとおりである。
・ネジ部320の呼び径:M14
・差分M(=C−D):1.6mm
・内径C:9.5mm
・内径D:7.9mm
・外径J:9.2mm
【0062】
図8の評価試験では、試験者は、負荷試験用エンジンに試料を取り付けた後、負荷試験用エンジンをスロットル全開で6000rpmに維持しつつ5分間運転し、その運転中に発生したノッキングの回数を測定した。その後、試験者は、負荷試験用エンジンから取り外した試料を軸線CL上で切断し、各部の寸法を測定した。
【0063】
試験者は、次の評価基準に従って各試料の熱発散性を評価した。プレイグニッションに起因してノッキングが発生するため、スパークプラグ10の熱発散性が優れているほど、ノッキングが少なくなる。
・◎(優):ノッキングなし
・○(可):1〜4回のノッキング
・△(劣):5〜10回のノッキング
・×(不可):11回以上のノッキング
【0064】
図8の評価試験によれば、ネジ部320の呼び径がいずれの値であっても、スパークプラグ10の熱発散性を向上させるためには、値(A+B)/Mは、2.8以上であることが好ましく、2.9以上であることがいっそう好ましい。
【0065】
図9は、値(A+B)/Mを評価した結果を示す表である。
図9の評価試験では、試験者は、板パッキン500の材質ごとに、値(A+B)/Mが異なる複数のスパークプラグ10を、試料A11〜A19として評価した。
図9の評価試験は、
図8の評価試験と同様である。
図9の評価基準は、
図8の評価基準と同様である。
【0066】
試料A11〜A19に共通する仕様は次のとおりである。
・主体金具300の材質:約0.25%の炭素を含有する炭素鋼
・ネジ部320の呼び径:M10
・差分M(=C−D):1.3mm
・内径C:6.5mm
・内径D:5.2mm
・外径J:6.3mm
【0067】
試料A11〜A13に共通する仕様は次のとおりである。
・板パッキン500の材質:約0.10%の炭素を含有する炭素鋼
【0068】
試料A14〜A16に共通する仕様は次のとおりである。
・板パッキン500の材質:約0.25%の炭素を含有する炭素鋼
【0069】
試料A17〜A19に共通する仕様は次のとおりである。
・板パッキン500の材質:約0.45%の炭素を含有する炭素鋼
【0070】
図9の評価試験によれば、板パッキン500がいずれの材質であっても、スパークプラグ10の熱発散性を向上させるためには、値(A+B)/Mは、2.8以上であることが好ましく、2.9以上であることがいっそう好ましい。
【0071】
図10および
図11は、主体金具300の平均ビッカース硬さEと絶縁体200の平均ビッカース硬さFとを評価した結果を示す表である。
図10および
図11の評価試験では、試験者は、平均ビッカース硬さE,Fが異なる複数のスパークプラグ10を、試料B1〜B16として評価した。試験者は、主体金具300を塑性加工による変形量を調整することによって、主体金具300の平均ビッカース硬さEを変化させた。試験者は、板パッキン500の材質(炭素含有量:0.10〜0.45%)を調整することによって、絶縁体200の平均ビッカース硬さFを変化させた。
図10および
図11の評価試験は、
図8の評価試験と同様である。
図10および
図11の評価基準は、
図8の評価基準と同様である。
【0072】
試料B1〜B16に共通する仕様は次のとおりである。
・主体金具300の材質:約0.25%の炭素を含有する炭素鋼
・板パッキン500の材質:約0.15%の炭素を含有する炭素鋼
・ネジ部320の呼び径:M10
・差分M(=C−D):1.3mm
・内径C:6.5mm
・内径D:5.2mm
・外径J:6.3mm
【0073】
図10および
図11の評価試験によれば、主体金具300の平均ビッカース硬さEは、240HV以上であるとともに、板パッキン500の平均ビッカース硬さFは、主体金具300の平均ビッカース硬さEより小さいことが好ましい。
【0074】
図12は、板パッキン500の厚みTPを評価した結果を示す表である。
図12の評価試験では、試験者は、板パッキン500の厚みTPが異なる複数のスパークプラグ10を、試料C1〜C5として評価した。試料C5は、試料B11に相当する。
【0075】
図12の評価試験では、試験者は、負荷試験用エンジンに試料を取り付けた後、
図8の評価試験より厳しい条件として、負荷試験用エンジンをスロットル全開で7000rpmに維持しつつ5分間運転し、その運転中に発生したノッキングの回数を測定した。その後、試験者は、負荷試験用エンジンから取り外した試料を軸線CL上で切断し、各部の寸法を測定した。
図12の評価基準は、
図8の評価基準と同様である。
【0076】
図12の評価試験によれば、板パッキン500の厚みTPは、0.30mm以下であることが好ましく、0.20mm以下であることがいっそう好ましい。
【0077】
図13は、値(AI+BI)/(AO+BO)を評価した結果を示す表である。
図13の評価試験では、値(AI+BI)/(AO+BO)が異なる複数のスパークプラグ10を、試料D1〜D4として評価した。試料D2は、試料B11に相当する。
【0078】
図13の評価試験では、試験者は、負荷試験用エンジンに試料を取り付けた後、
図12の評価試験よりさらに厳しい条件として、負荷試験用エンジンをスロットル全開で7500rpmに維持しつつ30分間運転し、その運転中に発生したノッキングの回数を測定した。その後、試験者は、負荷試験用エンジンから取り外した試料を軸線CL上で切断し、各部の寸法を測定した。
図13の評価基準は、
図8の評価基準と同様である。
【0079】
図13の評価試験によれば、値(AI+BI)/(AO+BO)は、0.9以上であることが好ましく、1.1以上であることがいっそう好ましい。
【0080】
A−3.効果
以上説明した実施形態によれば、2.8≦(A+B)/Mを満たすため、絶縁体200と板パッキン500とが接触する面積と、板パッキン500と主体金具300とが接触する面積とを十分に確保できるため、絶縁体200から板パッキン500を経て主体金具300に至る経路を通じた熱発散性を向上させることができる。
【0081】
また、主体金具300の平均ビッカース硬さEは、240HV以上であり、板パッキン500の平均ビッカース硬さFは、100HV以上、かつ、主体金具300の平均ビッカース硬さEより小さい。そのため、板パッキン500が潰れ過ぎることによって主体金具300に対する絶縁体200の位置が先端側へと過剰にずれることを防止しつつ、絶縁体200から板パッキン500を経て主体金具300に至る経路を通じた熱発散性を向上させることができる。
【0082】
また、板パッキン500の厚みTPは、0.15mm以上0.20mm以下であるため、板パッキン500に十分な潰れ代を確保することによって絶縁体200を主体金具300に組み付ける精度を維持しつつ、絶縁体200から板パッキン500を経て主体金具300に至る経路を通じた熱発散性をいっそう向上させることができる。
【0083】
また、1.1≦(AI+BI)/(AO+BO)を満たすことによって、板パッキン500が後端側より先端側に偏って絶縁体200に接触するため、絶縁体200から板パッキン500を経て主体金具300に至る経路を通じた熱発散性を効果的に向上させることができる。
【0084】
B.他の実施形態
本発明は、上述の実施形態や実施例、変形例に限られるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の構成で実現することができる。例えば、発明の概要の欄に記載した各形態中の技術的特徴に対応する実施形態、実施例、変形例中の技術的特徴は、上述の課題の一部または全部を解決するために、あるいは、上述の効果の一部または全部を達成するために、適宜、差し替えや、組み合わせを行うことが可能である。また、その技術的特徴が本明細書中に必須なものとして説明されていなければ、適宜、削除することが可能である。
【解決手段】スパークプラグにおいて、一方の片側断面で板パッキンと主体金具とが接触する長さA1と、一方の片側断面で板パッキンと絶縁体とが接触する長さA2と、を加算した長さAと;他方の片側断面で板パッキンと主体金具とが接触する長さB1と、他方の片側断面で板パッキンと絶縁体とが接触する長さB2と、を加算した長さBと;中孔部の内径Cから棚部の内径Dを減算した差分Mと、の関係は、2.8≦(A+B)/Mを満たす。