特許第5778823号(P5778823)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5778823多セグメント型アブレーション電極を有する灌注式アブレーションカテーテル
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5778823
(24)【登録日】2015年7月17日
(45)【発行日】2015年9月16日
(54)【発明の名称】多セグメント型アブレーション電極を有する灌注式アブレーションカテーテル
(51)【国際特許分類】
   A61B 18/12 20060101AFI20150827BHJP
【FI】
   A61B17/39 310
【請求項の数】21
【外国語出願】
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2014-93635(P2014-93635)
(22)【出願日】2014年4月30日
(62)【分割の表示】特願2012-509944(P2012-509944)の分割
【原出願日】2010年5月5日
(65)【公開番号】特開2014-158957(P2014-158957A)
(43)【公開日】2014年9月4日
【審査請求日】2014年5月27日
(31)【優先権主張番号】12/436,977
(32)【優先日】2009年5月7日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】592011550
【氏名又は名称】セント・ジュード・メディカル・インコーポレーテッド
【氏名又は名称原語表記】ST JUDE MEDICAL INCORPORATED
(74)【代理人】
【識別番号】110000110
【氏名又は名称】特許業務法人快友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ハタ キャリー
(72)【発明者】
【氏名】トラン シュー シュアン
(72)【発明者】
【氏名】デ ラ ラマ アラン
(72)【発明者】
【氏名】グエン タオ ホアン
(72)【発明者】
【氏名】ナルシソ アーヴィン ジョン
(72)【発明者】
【氏名】チェン ピーター シー.
(72)【発明者】
【氏名】ド ハン ンゴッ
【審査官】 毛利 大輔
(56)【参考文献】
【文献】 特表平10−507373(JP,A)
【文献】 特表2005−512609(JP,A)
【文献】 特表2009−508589(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2008/0294158(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 18/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
遠位端を有する遠位部分と、近位端とを備える細長本体と、
前記細長本体の前記近位端に接続されたハンドルと、
前記遠位部分に配置された複数の電極セグメントと、
少なくとも一の中間セグメントと、を備えており、
前記複数の電極セグメントのうち、隣り合う前記電極セグメントは前記少なくとも一の中間セグメントによってそれぞれ互いに離間しており、
前記複数の電極セグメントのそれぞれは側壁を有しており、
前記側壁は、少なくとも部分的に前記側壁内に伸びる少なくとも一の開口を有しており、
前記遠位部分はループ状に予成形されており、
前記ハンドルは前記遠位部分のループのサイズを変更可能に構成されていることを特徴とするカテーテル装置。
【請求項2】
前記遠位部分は、前記遠位端に設けられるとともに、少なくとも一の開口を有する先端電極をさらに備えていることを特徴とする請求項1に記載のカテーテル装置。
【請求項3】
前記先端電極は、前記少なくとも一の中間セグメントに含まれる1つの中間セグメントによって前記複数の電極セグメントから離間していることを特徴とする請求項2に記載のカテーテル装置。
【請求項4】
遠位端を有する遠位部分と、近位端とを備える細長本体と、
前記細長本体の前記近位端に接続されたハンドルと、
前記遠位端に設けられる先端電極と、
前記遠位部分に配置された少なくとも一の電極セグメントと、
少なくとも一の中間セグメントと、を備えており、
前記少なくとも一の電極セグメントは前記少なくとも一の中間セグメントによって前記遠位端から離間しており、
前記少なくとも一の電極セグメントと前記先端電極は側壁を有しており、
前記側壁は、少なくとも部分的に前記側壁内に伸びる少なくとも一の開口を有しており、
前記遠位部分はループ状に予成形されており、
前記ハンドルは前記遠位部分のループのサイズを変更可能に構成されていることを特徴とするカテーテル装置。
【請求項5】
前記少なくとも一の電極セグメントは、複数の電極セグメントであることを特徴とする請求項4に記載のカテーテル装置。
【請求項6】
前記複数の電極セグメントのうち、隣り合う前記電極セグメントは前記少なくとも一の中間セグメントによってそれぞれ互いに離間していることを特徴とする請求項5に記載のカテーテル装置。
【請求項7】
前記少なくとも一の中間セグメントは非導電性部を有することを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載のカテーテル装置。
【請求項8】
前記側壁の前記少なくとも一の開口は、少なくとも一の細長い間隙であり、
前記少なくとも一の細長い間隙は、前記側壁の外周の一部に沿った環状の間隙、前記側壁にらせんパターンを形成するらせん状の間隙、及び互い違いに配置されるインターロックブロックにより画定される間隙からなる群より選ばれた1種以上の間隙であることを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載のカテーテル装置。
【請求項9】
前記遠位部分は、少なくとも一の予成形ワイヤを備えることを特徴とする請求項1〜8のいずれか一項に記載のカテーテル装置。
【請求項10】
前記遠位部分のループは、実質的に閉じたループ状であることを特徴とする請求項1〜9のいずれか一項に記載のカテーテル装置。
【請求項11】
前記電極セグメントと前記先端電極は柔軟であることを特徴とする請求項2〜10のいずれか一項に記載のカテーテル装置。
【請求項12】
前記電極セグメントのそれぞれは、複数の溶出孔を有することを特徴とする請求項1〜11のいずれか一項に記載のカテーテル装置。
【請求項13】
遠位端と、
少なくとも一の予成形ワイヤと、
複数の電極セグメントと、
少なくとも一の中間セグメントと、を備えており、
前記複数の電極セグメントのうち、隣り合う前記電極セグメントは前記少なくとも一の中間セグメントによってそれぞれ互いに離間しており、
前記複数の電極セグメントのうちの少なくとも一の電極セグメントは側壁を有しており、
前記側壁は、少なくとも部分的に前記側壁上に伸びる少なくとも一の開口を有しており、
ループ状に予成形されており、
前記少なくとも一の予成形ワイヤは、前記遠位部分のループのサイズを変化させるように構成されていることを特徴とするカテーテル用遠位部分。
【請求項14】
前記遠位端に設けられるとともに、少なくとも一の開口を有する先端電極をさらに備えていることを特徴とする請求項13に記載の遠位部分。
【請求項15】
前記先端電極は、前記少なくとも一の中間セグメントによって前記複数の電極セグメントそれぞれから離間していることを特徴とする請求項14に記載の遠位部分。
【請求項16】
前記少なくとも一の中間セグメントは非導電性部を有することを特徴とする請求項13〜15のいずれか一項に記載の遠位部分。
【請求項17】
前記側壁の前記少なくとも一の開口は、少なくとも一の細長い間隙であり、
前記少なくとも一の細長い間隙は、前記側壁の外周の一部に沿った環状の間隙、前記側壁にらせんパターンを形成するらせん状の間隙、及び互い違いに配置されるインターロックブロックにより画定される間隙からなる群より選ばれた1種以上の間隙であることを特徴とする請求項13〜16のいずれか一項に記載の遠位部分。
【請求項18】
前記少なくとも一の予成形ワイヤは、前記遠位部分を曲げるよう構成されることを特徴とする請求項13〜17のいずれか一項に記載の遠位部分。
【請求項19】
前記予成形されたループは、実質的に閉じたループ状であることを特徴とする請求項13〜18のいずれか一項にに記載の遠位部分。
【請求項20】
前記複数の電極セグメントと前記先端電極は柔軟であることを特徴とする請求項14〜19のいずれか一項にに記載の遠位部分。
【請求項21】
前記複数の電極セグメントのそれぞれは、複数の溶出孔を有することを特徴とする請求項13〜20のいずれか一項にに記載の遠位部分。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概してカテーテル器具に関し、より具体的には多セグメント型アブレーションセグメントを有する灌注式カテーテル器具に関する。
【背景技術】
【0002】
カテーテルは可撓性の管状器具であり、身体の内部領域にアクセスを得るため医療手技を実施する医師により広く用いられている。ある種のカテーテルは一般に灌注式カテーテルと称され、身体の内部領域における標的部位に流体を送達する。かかる灌注式カテーテルは、例えば、薬物、治療流体、及びさらには身体の標的範囲内で熱が発生する特定の手技に対する冷却用流体を含め、様々な種類の流体を患者に送達し得る。
【0003】
例えば、患者の特定の病態を治療するため、アブレーションカテーテルを使用してアブレーション手技が行われることがある。例えば不整脈に罹患している患者には、心臓組織で発生する催不整脈性の電気信号により引き起こされる不規則な心拍動の防止に、アブレーションが有効であり得る。かかる意図的ではない電気信号を発生する心臓組織をアブレーションし、又は変化させることにより、不規則な心拍動が抑制され得る。アブレーションカテーテルは公知であり、標的組織にRF(高周波)エネルギーを供給する1つ又は複数のアブレーション電極を備え得る。電気生理学技師は、同様に公知の検知及びマッピングツールを用いることで、身体内の組織、例えば心臓組織のうちアブレーションが有効となり得る領域を決定することができる。
【0004】
アブレーションの標的となる組織が定まると、1つ又は複数のアブレーション電極を有するカテーテル先端が標的組織上に位置決めされ得る。アブレーション電極が、例えば発生器から供給されるRFエネルギーを送達し、標的組織を損傷させるのに十分な熱をもたらし得る。標的組織を損傷して瘢痕化させることにより、異常な電気信号の発生又は伝達が遮断され得る。ある場合には、アブレーションカテーテルに灌注機能が提供されてもよく、それによりアブレーション電極の近傍に冷却用流体が供給され、組織及び/又はアブレーション電極の過熱が防止される。典型的には2種類の灌注式カテーテル器具、すなわち開放型及び閉鎖型アブレーションカテーテルがある。閉鎖型アブレーションカテーテルでは、典型的にはアブレーションカテーテル先端の内側キャビティ内で冷却用流体が循環する。他方で開放型アブレーションカテーテルは、アブレーションカテーテル先端の内側キャビティがマニホルドとして用いられ、生理食塩水又は当業者に公知の他の灌注流体がオリフィスに至る1つ又は複数の通路に分配される。これによりアブレーション電極の外表面が冷温の灌注流体と接触してアブレーションカテーテル先端の温度が降下し、且つ電極周囲の血液が希釈され、血液凝固が防止される。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の例示的実施形態は、多セグメント型アブレーションセグメントを有する灌注式カテーテルアブレーション装置を提供する。
【0006】
本発明のある態様において、灌注式カテーテルアブレーション装置は、遠位端と、近位端と、内部に長手方向に延在する少なくとも1つの流体ルーメンとを有する細長本体と;細長本体の遠位部分にある複数のセグメント型アブレーション電極とを含む。複数のセグメント型アブレーション電極は細長本体の近位端から、及び遠位端から、非導電性セグメントによって離間されている。複数のセグメント型アブレーション電極は、非導電性セグメントによって互いに長手方向に離間している。非導電性セグメントのうちの1つに隣接して長手方向に配置された各セグメント型アブレーション電極に対し、セグメント型アブレーション電極の電極端と非導電性セグメントの非導体セグメント端との間にエッジが形成される。セグメント型アブレーション電極の電極端と非導電性セグメントの非導体セグメント端との間にあるエッジに隣接して複数の溶出孔が配置される。複数の管路が溶出孔と少なくとも1つの流体ルーメンとの間に流体連通を確立する。
【0007】
いくつかの実施形態において、複数の溶出孔は複数の非導電性セグメントに配置されてもよい。複数の溶出孔は複数のセグメント型アブレーション電極に配置されてもよい。複数のセグメント型アブレーション電極は、流体の通過を可能にするようコイルに間隙を有するコイルリング電極、又は流体の通過を可能にするよう切り込まれた間隙を有するリング電極の少なくとも一方を含み得る。エッジの各々について、溶出孔の少なくとも1つがエッジに隣接して配置される。エッジの各々について、溶出孔の2つ以上が、エッジに隣接する外周の周りに離間される。
【0008】
特定の実施形態において、細長本体の遠位端に先端電極が配置される。先端電極は、先端電極エッジで非導電性セグメントのうちの一つの非導体セグメント端と合致する近位端を有する。少なくとも1つの先端電極エッジ溶出孔が、先端電極エッジに隣接して、且つ少なくとも1つの流体ルーメンと流体連通して配置される。先端電極はアブレーション先端電極であってもよい。少なくとも1つの先端電極エッジ溶出孔は先端電極に配置される。管路の少なくとも一部は、少なくとも1つの流体ルーメンと実質的に垂直である。細長本体の遠位部分は、複数の長手方向に離間されたセグメント型アブレーション電極と非導電性セグメントとを有する実質的に閉じたループ状にプリフォームされた材料である。
【0009】
いくつかの実施形態において、1つ又は複数の導電ワイヤが複数のセグメント型アブレーション電極と結合されてそれにRFエネルギーを供給し、RFエネルギーはユニポーラRFエネルギー又はバイポーラRFエネルギーの一方である。1つ又は複数の導電ワイヤは複数のセグメント型アブレーション電極と結合される。エネルギー供給源が、1つ又は複数の導電ワイヤを介して複数のセグメント型アブレーション電極にエネルギーを供給する。制御器が、エネルギー供給源を制御することにより、独立した方法、逐次的な方法、又は同時的な方法のうちの一つでエネルギーを複数のセグメント型アブレーション電極に供給するように構成される。
【0010】
特定の実施形態において、複数の温度センサが複数のセグメント型アブレーション電極に、それと電極端で接触して配置される。温度センサは各々、セグメント型アブレーション電極の電極端の一つと非導電性セグメントの非導体セグメント端の一つとの間のエッジに実質的に当接する。別の実施形態では、複数の温度センサの各々がそれぞれのセグメント型アブレーション電極に、それと電極端間にある位置で接触して配置される。制御器が、エネルギー供給源を制御することにより、複数の温度センサから受け取る信号に基づきエネルギーを複数のセグメント型アブレーション電極に供給し、それにより複数のセグメント型アブレーション電極の温度を制御するように構成される。
【0011】
本発明の別の態様において、灌注式カテーテルで組織をアブレーションする方法が、セグメント型アブレーション電極の電極端と非導電性セグメントの非導体セグメント端との間にあるエッジに隣接して配置された複数の溶出孔を通じて流体を送り込むステップと;複数のセグメント型アブレーション電極にエネルギーを供給して組織をアブレーションするステップとを含む。
【0012】
いくつかの実施形態において、細長本体の遠位部分は、複数の長手方向に離間されたセグメント型アブレーション電極と非導電性セグメントとを有する実質的に閉じたループ状にプリフォームされた材料を含む。実質的に閉じたループは患者の室腔内の少なくとも1つの血管口の周囲に置かれ、それにより少なくとも1つの血管口を囲む室腔の室壁における組織がアブレーションされる。少なくとも1つの血管口は少なくとも1つの肺静脈を含む。実質的に閉じたループは患者の血管内部に置かれ、血管の内部及びその血管壁の周囲にある神経を除神経してもよい。除神経は、本明細書では神経伝導の部分的又は完全な遮断として定義される。除神経は、神経を刺激するか、又は過度に刺激するか、又はアブレーションすることにより達成され得る。血管は腎動脈又は腎静脈を含む。
【0013】
当業者には、以下の特定の実施形態の詳細な説明を考慮することで、本発明のこれらの及び他の特徴及び利点が明らかとなるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明のある実施形態に係る灌注式アブレーションカテーテルの遠位部分の立面図である。
図2】本発明のある実施形態に係る灌注式アブレーションカテーテルの遠位部分の立面図である。
図3】本発明のある実施形態に係る灌注式アブレーションカテーテルの遠位部分の立面図である。
図4】本発明のある実施形態に係る灌注式アブレーションカテーテルの遠位部分の立面図である。
図5】本発明のある実施形態に係る灌注式アブレーションカテーテルの遠位部分の立面図である。
図6】本発明のある実施形態に係る灌注式アブレーションカテーテルの遠位部分の立面図である。
図7】本発明のある実施形態に係る灌注式アブレーションカテーテルの遠位部分の立面図である。
図8】本発明のある実施形態に係る灌注式アブレーションカテーテルの遠位部分の横断面図である。
図9】本発明のある実施形態に係る灌注式アブレーションカテーテルの遠位部分の長手方向断面図である。
図10】本発明のある実施形態に係る電極のエッジに位置する温度センサを示す灌注式アブレーションカテーテルの遠位部分の長手方向断面図である。
図11】プリフォームされたループ形状を有する灌注式アブレーションカテーテルの遠位部分の斜視図である。
図12】カテーテルの遠位部分の形状を操作するためのハンドルを示す灌注式アブレーションカテーテルの立面図である。
図13図12の灌注式アブレーションカテーテルの別の立面図である。
図14】灌注式アブレーションカテーテルを含むRFアブレーションシステムのシステム説明図である。
図15図14のRFアブレーションシステムのブロック図である。
図16図14のRFアブレーションシステム用のソフトウェアプログラムのフロー図である。
図17】少なくとも1つの血管口を囲むアブレーションパターンの概略図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下の本発明の詳細な説明では、本開示の一部をなす添付の図面が参照され、図面には本発明を実施し得る例示的実施形態が、例示として、且つ限定としてではなく示される。図面では、いくつかの図にわたり類似の符号が実質的に同様の構成要素を示す。さらに、詳細な説明は、以下に記載されるとおりの、及び図面中に図示されるとおりの様々な例示的実施形態を提供するが、本発明は本明細書に記載及び図示される実施形態に限定されず、当業者に公知であろうとおりの、又は公知となるであろうとおりの他の実施形態に拡張できることに留意しなければならない。本明細書中で「一実施形態」、「この実施形態」、又は「これらの実施形態」と言うとき、それはその実施形態との関連において記載される特定の機能、構造、又は特徴が本発明の少なくとも1つの実施形態に含まれることを意味し、本明細書中の様々な箇所にこれらの語句が現れたからといって、全てが同じ実施形態を参照するとは限らない。加えて、以下の詳細な説明では、本発明の完全な理解を提供するため数多くの具体的な詳細が示される。しかしながら当業者には、それらの具体的な詳細の全てが本発明の実施に必要であるとは限らないことは明らかであろう。他の状況では、本発明が不必要に明瞭さを欠くことのないよう、周知の構造、材料、回路、処理及びインタフェースは詳細には記載しておらず、及び/又はブロック図の形式で示していることもある。
【0016】
以下の説明では、相対的な向き及び位置の用語法、例えば、水平、垂直、左、右、上及び下といった用語を使用する。これらの用語は、二次元配置図における、配置図の所与の向きに対する相対的な方向及び位置を指すことは理解されるであろう。向きが異なる配置図に対しては、同じ物体又は操作が異なる相対的な向き及び位置の用語を使用して説明され得る。
【0017】
本発明の例示的実施形態は、以下にさらに詳細に記載するとおり、多セグメント型アブレーションセグメントを有する灌注式カテーテル器具を使用してアブレーション又は除神経を行うための装置、方法及びコンピュータプログラムを提供する。
【0018】
図1は、本発明のある実施形態に係る灌注式アブレーションカテーテル10の遠位部分の立面図である。カテーテル10は、近位端124(図12を参照)と、遠位端12と、内部に長手方向に延在する少なくとも1つの流体ルーメン13とを有する細長本体を有する。遠位端12には先端電極14が配置される。先端電極14はアブレーション先端電極であってもよい。先端電極14は、流体ルーメン13と流体連通する灌注孔15を有する。遠位部分において、複数のセグメント型アブレーション電極16が非導電性セグメント18によって近位端及び遠位端12から離間され、及び非導電性セグメント18によって互いに長手方向に離間している。非導電性セグメント18は熱可塑性材料から作製されてもよい。セグメント型アブレーション電極16は、細長本体の周りに圧嵌めされる白金などの導電性材料の間隙のないリングであってもよい。非導電性セグメント18のうちの1つに隣接して長手方向に配置される各セグメント型アブレーション電極16に対して、セグメント型アブレーション電極16の電極端と非導電性セグメント18の非導体セグメント端との間にエッジ20が形成される。エッジ20に隣接して複数の溶出孔22が配置される。本明細書で使用されるとき、エッジ20に「隣接する」とは、エッジ20に極めて近いか、又は実質的に当接し、従って特定の溶出孔22とそれが「隣接する」エッジ20との間の距離が、少なくとも当該の溶出孔22と次のエッジ20又は細長本体の遠位端12若しくは近位端との間の距離より小さい程度であることを意味する。複数の管路24が溶出孔22と流体ルーメン13との間の流体連通を確立する。先端電極14は、先端電極エッジ30において非導電性セグメント18のうちの一つの非導体セグメント端と合致する近位端を有する。組織に沿ってアブレーション先端を動かす、又は引き摺ることと比較して、組織にアブレーションラインを設けるのに必要な時間が短縮されるように、複数の灌注式電極16及び先端電極14によりアブレーション可能であることが有利である。
【0019】
図1では、溶出孔22は非導電性セグメント18に配置される。エッジ20の各々について、溶出孔22の少なくとも1つがエッジ20に隣接して配置される。図1では、複数(例えば4個)の溶出孔22が、エッジ20に隣接する外周の周りに離間される。管路24は、図1に見られるとおり、流体ルーメン13と実質的に垂直であってもよい。代替的実施形態では、複数の溶出孔はセグメント型アブレーション電極16に、又はセグメント型アブレーション電極16及び非導電性セグメント18の双方に配置される。
【0020】
図2は、図1のカテーテル10と同様の、別の灌注式アブレーションカテーテル28の遠位部分を示す。図2では、先端電極29は、先端電極エッジ30において非導電性セグメント18のうちの一つの非導体セグメント端と合致する近位端を有する。少なくとも1つの先端電極エッジ溶出孔32が先端電極エッジ30に隣接して配置され、流体ルーメン13(図1を参照)と流体連通する。図2では、先端電極エッジ溶出孔32は、先端電極エッジ30に隣接する外周の周りに離間され、先端電極29に配置される。代替的実施形態では、先端電極エッジ溶出孔32は非導電性セグメント18に配置されてもよい。
【0021】
図3は、図1のカテーテル10と同様であるが、遠位端12に先端電極を有しない、別の灌注式アブレーションカテーテル36の遠位部分を示す。
【0022】
図4は、図1のカテーテル10と同様の、別の灌注式アブレーションカテーテル40の遠位部分を示す。先端電極14が遠位端12に配置され、灌注孔15を有する。図4におけるセグメント型アブレーション電極は非導電性セグメント44によって近位端及び遠位端12から離間されるコイルリング電極42であり、電極42は非導電性セグメント44によって互いに長手方向に離間している。セグメント型アブレーション電極42の電極端と非導電性セグメント44の非導体セグメント端との間にエッジ46が形成される。コイルリング電極42には複数の溶出孔が配置され、コイルリング電極42は流体の流出を可能にする間隙をコイルに有する。例えば、流体ルーメン13と管路24を介して流体連通する溶出孔(図1を参照)が、細長本体のなかでコイルリング電極42の下側にある部分に提供され、溶出孔及びコイルの間隙を通じて流体が流れる。
【0023】
図5は、図4のカテーテル40と同様の、別の灌注式アブレーションカテーテル50の遠位部分を示す。図5では、先端電極52が、先端電極エッジ54において非導電性セグメント44のうちの一つの非導体セグメント端と合致する近位端を有する。少なくとも1つの先端電極エッジ溶出孔56が先端電極エッジ54に隣接して配置され、流体ルーメン13(図1を参照)と流体連通する。図5では、先端電極エッジ溶出孔56は先端電極エッジ54に隣接する外周の周りに離間され、先端電極52に配置される。代替的実施形態では、先端電極エッジ溶出孔56は非導電性セグメント44に配置されてもよい。
【0024】
図6は、図4のカテーテル40と同様であるが、遠位端12に先端電極を有しない、別の灌注式アブレーションカテーテル58の遠位部分を示す。
【0025】
図7は、図6のカテーテル58と同様であるが、遠位端12に先端電極61を有する、別の灌注式アブレーションカテーテル60の遠位部分を示す。カテーテル60は、コイルリング電極42ではなく、流体の流出を可能にするようシリンダ形シートに切り込まれた間隙を有する可撓性リング電極62を備える。可撓性リング電極62の一つは、同時に先端電極61を形成する。例えば、流体ルーメン13と管路24を介して流体連通する溶出孔(図1を参照)が、細長本体のなかで可撓性リング電極62の下側にある部分に提供され、溶出孔及び電極62の間隙を通じて流体が流れる。間隙は電極62のシリンダ形シートにレーザー切断されてもよい。可撓性リング電極62は非導電性セグメント64によって細長本体の近位端から離間され、及び電極62は非導電性セグメント64によって互いに長手方向に離間している。セグメント型アブレーション電極62の電極端と非導電性セグメント64の非導体セグメント端との間にエッジ66が形成される。
【0026】
図7では、間隙はコルゲート状パターンの細長い間隙である。本明細書で使用されるとき、細長い間隙は、好ましくは長さが間隙の幅の少なくとも約3倍、より好ましくは少なくとも約5倍、及び最も好ましくは少なくとも約10倍である。様々な間隙パターンが可能である。間隙はコルゲート状ではなく、直線状又は曲線状であってもよい。間隙は、長手方向にらせんパターンで延在するスパイラル状の間隙であっても、又は互いに長手方向に離間された横方向の間隙であってもよい。横方向の間隙は360度未満に延在してもよく、又は完全に360度にわたり延在してもよい。完全に360度にわたり延在する横方向の間隙については、分断された部品を一体に接続するためのある種の追加的な支持構造が必要となる。例えば、内側コイルなどのバイアス要素が細長本体内に提供されてもよい。細長い間隙を有する可撓性リング電極の例は、例えば米国特許出願公開第2008/0294158号明細書及び国際公開第2008/147599号パンフレットに見ることができ、これらの文献の開示全体は参照により本明細書に援用される。
【0027】
図8は、図1図7に示されるカテーテルのいずれであってもよい灌注式アブレーションカテーテルの遠位部分の横断面図である。図8は、流体ルーメン13に接続した4つの管路24を示す。電極にエネルギーを供給するための導電ワイヤ70、ニチノールなどの材料から作製された、カテーテルの遠位部分にプリフォーム形状を提供する1つ又は複数の予成形用ワイヤ72、遠位部分を操作する(例えば、双方向に屈曲させる、及び/又はループサイズを調整する)ための1つ又は複数の駆動ワイヤ74、及び複数の温度センサライン76のための追加的なルーメンが提供される。複数のルーメンを単一の押出しチューブ材内に形成して、上記の様々な構成要素を収容する他のルーメンを流体ルーメン13と分離することができる。
【0028】
図9は、流体ルーメン13、導電ワイヤ70、予成形用ワイヤ72、駆動ワイヤ74、及び温度センサライン76を示す灌注式アブレーションカテーテルの遠位部分の長手方向断面図である。
【0029】
図10は、電極100のエッジ102、104に位置する温度センサ80を示す灌注式アブレーションカテーテルの遠位部分の長手方向断面図である。明確にするため、図10では溶出孔及び対応する管路は省略している。エッジ102、104は、電極100が下に重なる非導電性支持本体106に当接するところである。温度センサ80は、セグメント型アブレーション電極100に、それと電極端で接触して、エッジ102、104に実質的に当接して配置される。RFアブレーションについては、導電性がエッジ102、104で途絶するため、エッジ102、104のRF電流密度が高い。結果として生じる電極エッジ102、104における電流密度の上昇により、出力密度が増加した局在領域、ひいてはより高温の領域が生じる。従って、エッジ102、104で温度を検知し、灌注流体で冷却することが望ましい。別の実施形態において、アブレーション電極100に単一の温度センサ80が用いられる場合、その単一の温度センサ80は、アブレーション電極100に、エッジ102と104との間にある位置でそれと接触して配置される。温度センサはまた、図1図2図4図5、又は図7のカテーテル(10、28、40、50、60)では、先端電極エッジ(30、54、66)に隣接して先端電極(14、29、52、61)に提供されてもよい。
【0030】
図11は、プリフォームされたループ形状を有する灌注式アブレーションカテーテルの遠位部分の斜視図である。例えば、1つ又は複数の予成形用ワイヤ72がニチノールなどの材料を含み、それにより遠位部分が、複数の長手方向に離間されたセグメント型アブレーション電極112と非導電性セグメント114とを有する遠位先端110を含む実質的に閉じたループ状にプリフォームされる。
【0031】
図12及び図13は、遠位端126の近傍にあるカテーテル120の遠位部分の形状を操作するための、細長本体125の近位端124に接続したハンドル122を示す灌注式アブレーションカテーテル120の立面図である。図12では、カテーテル120の遠位部分はセグメント型アブレーション電極を有するループ128を含む(図11を参照)。ハンドル122は、ループ128のサイズを変更するための第1のローラ130と、細長本体125を双方向に屈曲させるための第2の一組のローラ又はスライダ132とを含む。
【0032】
図14は、灌注式アブレーションカテーテルを含むRFアブレーションシステムのシステム説明図である。このシステムは、複数の電極を有するカテーテル201と、接続ケーブル202と、RF発生器203と、EKG接続ケーブル204と、絶縁された患者コネクタ208を介してRF発生器203に接続されたDIP(分散型不関パッチ)電極デバイス205とを含む。DIP電極デバイス205は、アブレーション手技中は患者の下に置かれ、閉ループ回路のRFエネルギー送達系を提供する。カテーテル201は複数の電極206と複数の温度検知素子を有する。各温度検知素子は電極206の各々に近接して位置する。カテーテル201は接続ケーブル202を介してRF発生器203に接続される。カテーテル201の断熱された温度ワイヤ及び導電ワイヤの各々は、カテーテル201のコネクタ207接続ピンに固定される。従って、複数の電極の各々からの計測された温度データは、RF発生器203のCPUボード214(図15)に位置する制御機構にリレーされる。その間、RFエネルギー出力が導電ワイヤの各々を通じてカテーテル201上のそれぞれの個別電極に送達される。CPUボード214の制御機構はまた、灌注流体を灌注式カテーテル201に圧送するために使用される灌注ポンプ215の動作も制御する。
【0033】
EKG接続ケーブル204を用いて心臓内の電気信号が外部EKGモニタ220(図15)に伝送されることにより、電極206の各々により検知されて返される心臓内の電気信号が表示される。RF発生器203のバックパネルには、電源ポート209と、データ出力ポート210と、ポンプポート199とがある。使用者の利便性のため、任意選択の足踏みスイッチ211が提供される。足踏みスイッチ211又はRF発生器203のフロントパネルにあるボタン238のいずれかを使用して、RFエネルギー送達を開始及び停止させることができる。
【0034】
図15は、RFスプリッタを介してアブレーションカテーテル201の複数の電極の各々にRFエネルギー送達を提供する図14のRFアブレーションシステムのブロック図である。電源212は、RFボード213とCPUボード214とを有するRF発生器203に接続される。ソフトウェアプログラムはCPUボード214の統合部分となる。複数の電極を有するカテーテル201は、複数の温度検知素子216を有する。各温度検知素子216が電極206の一つと連係する。計測された温度データはCPUボード214内部のソフトウェアプログラムにリレーされる。パワー、温度、インピーダンス、及び時間などのCPUボード214からのデータは、次に表示ボード221によって表示される。コマンド又は命令がCPUボード214からRFボード213に出され、RFエネルギー出力が制御される。RFスプリッタ222を用いてRFエネルギーが分配されて導電ワイヤの1つ又は複数に送達され、その後RFエネルギー出力は、ワイヤから対応する1つ又は複数の電極にリレーされる。CPUボード214からRFスプリッタ222へのデジタル制御信号217により、1つ又は複数の導電ワイヤへのRFエネルギーの送達方法が制御される。RFエネルギーは、独立した方法、又は逐次的な方法、又は同時的な方法で送達され得る。カテーテル201の複数の電極にRFエネルギーを送達する導電ワイヤはまた、複数の電極の各々により検知されて返される低周波EKG信号も伝送する。リアルタイム表示のためEKG信号のみをEKGモニタ220に通過可能とするため、ローパスフィルタ219が使用される。カテーテルシステムの制御機構は、カテーテルがなお適切な位置にあることがリアルタイム心臓電気信号によって保証されるときにのみ、アブレーション又は除神経を可能にする。データはCPU214に格納され得るか、又はデータ分析のためRS232ポート210を介して外部コンピュータ198に出力され得る。データはまた、アナログ出力ポート218に出力されてもよい。CPUボード214はポンプポート199を介してポンプ215に制御信号を送り、例えば、ポンプ215によって灌注式カテーテル201に送り込まれる流体の流量などの、ポンプ215の動作を制御する。
【0035】
図16は、図14のRFアブレーションシステムについてのソフトウェアプログラムのフロー図である。このソフトウェアプログラムの主なステップには、以下が含まれる:「アブレーションモードを設定する」ブロック223、「パラメータを設定する」ブロック224、「ポンプをオンにする」ブロック226、「アブレーションを開始する」ブロック228、「温度は限界範囲内か?」ブロック230及び「時間切れになるまでアブレーションを行う」ブロック232。アブレーションモード223は以下のモードのうちの一つを含む:同時モード、逐次モード、ランダム順序モード、又は上記の組み合わせ。「パラメータを設定する」ブロック224は、限界パワー、限界温度、限界インピーダンス、及び制限時間の設定を含む。限界パワー224は、安全上の理由から、最初は比較的低い値に設定される。例として、初期限界パワーは15ワットに設定され得る。限界パワーは、RF発生器の最終限界パワーに達するまで、適切な増分で上昇させることができる。最終限界パワーの一例は150ワットであり得る。限界温度は、アブレーションする病変部に適切なある範囲に設定される。一例として、アブレーション限界温度は67.5℃±2.5℃に設定され得る。「時間切れになる」は、電極のいずれかについての所定のアブレーション継続時間である。一例として、第1の電極の制限時間は30秒間に設定され得る。システムの動作についてのさらなる詳細は、全体として参照により本明細書に援用される米国特許第5,954,719号明細書に見ることができる。ポンプをオンにするとき(ブロック226)、ポンプ流量はローに設定される。アブレーションを開始すると(ブロック228)、ポンプ流量は自動的にハイに切り換わる。アブレーションが完了すると、ポンプ流量は自動的にローに切り換わる。
【0036】
RFエネルギーは、構成に応じてユニポーラRFエネルギー又はバイポーラRFエネルギーであってよい。RF発生器203のCPUボード214上の制御機構又は制御器は、エネルギー供給源を制御することによりエネルギーを複数のセグメント型アブレーション電極に、独立した方法で(各電極に対するエネルギーを独立に制御する)、逐次的な方法で(電極に対するエネルギーを予め設定された順序で制御する)、又は同時的な方法で(電極に対するエネルギーを同時に制御する)供給するように構成される。制御器は、エネルギー供給源を制御することにより、温度センサから受け取った信号に基づきエネルギーをセグメント型アブレーション電極に供給し、それによりセグメント型アブレーション電極の温度を制御するように構成されてもよい。電極に対するエネルギーの供給を調整することによる電極の温度の制御については、例えば、全体として参照により本明細書に援用される米国特許第6,346,104号明細書にも記載がある。
【0037】
図17は、少なくとも1つの血管口300を囲むアブレーションパターンの概略図を示す。少なくとも1つの血管口を囲む室腔の室壁における組織をアブレーションするため、図12のカテーテルのループ128が患者の室腔内の少なくとも1つの血管口の周囲に置かれ得る。図17(a)は各血管口300を囲むアブレーションパターンを示す。図17(b)は2つの血管口300を囲むアブレーションパターンを示す。図17(c)は4つの血管口300を囲むアブレーションパターンを示す。各血管口は肺静脈隔離法に対する肺静脈であってもよい。例えば、全体として参照により本明細書に援用される米国特許第6,325,797号明細書を参照のこと。別の適用は、高血圧症及びその進行に関連する腎交感神経の活動亢進を患う患者において血圧の低下を実現するための、治療的な腎交感神経除去における腎交感神経のアブレーションである。例えば、2009年3月30日にwww.thelancet.comにてオンライン刊行されたHenry Krumら、「Catheter−Based Renal Sympathetic Denervation for Resistant Hypertension:A Multicentre Safety and Proof−of−Principle Cohort Study」を参照のこと。異なる血管及び壁の内部及び周囲に位置する神経のアブレーション又は除神経に対しては、カテーテルのサイズは異なり得る。例えば、腎交感神経をアブレーションするためのカテーテルのサイズは、典型的には肺静脈の周囲をアブレーションするためのものより小さい。
【0038】
本記載において数値の詳細は、本発明の完全な理解を提供するための説明を目的として示される。しかしながら、当業者は、それらの具体的な詳細の全てが本発明の実施に必要なわけではないことを理解するであろう。また、本発明は、通常はフローチャート、フロー図、構造図、又はブロック図として表される方法として記載され得ることも注記される。フローチャートは逐次的なプロセスとして動作を記載し得るが、それらの動作の多くは並行して又は同時に実行することができる。加えて、動作の順序は並べ替えられてもよい。
【0039】
以上から、本発明は、多セグメント型アブレーションセグメントを有する灌注式カテーテル器具を使用したアブレーションのための方法、装置及びコンピュータ可読媒体に格納されたプログラムを提供することは明らかであろう。加えて、本明細書には特定の実施形態が例示及び説明されているが、当業者は、開示される特定の実施形態に代えて、同じ目的を実現するよう計算される任意の構成が用いられ得ることを理解するであろう。本開示は本発明のいかなる適合又は変形も包含するよう意図され、及び以下の特許請求の範囲において使用される用語が、本明細書中に開示される特定の実施形態に本発明を限定するものとして解釈されてはならないことが理解されるべきである。むしろ、本発明の範囲は全体として以下の特許請求の範囲により決定されるべきであり、特許請求の範囲は、クレーム解釈の確立された原則に従い、かかるクレームが権利を有する均等物の全範囲を併せて解釈されるべきである。
以下の項目は、国際出願時の特許請求の範囲に記載の要素である。
(項目1)
遠位端と、近位端と、内部に長手方向に延在する少なくとも1つの流体ルーメンとを有する細長本体と、
前記細長本体の遠位部分にある複数のセグメント型アブレーション電極であって、前記複数のセグメント型アブレーション電極が、記細長本体の前記近位端と前記遠位端とから、非導電性セグメントによって離間され、前記複数のセグメント型アブレーション電極が非導電性セグメントによって互いに長手方向に離間し、それにより前記非導電性セグメントのうちの1つに隣接して長手方向に配置された各セグメント型アブレーション電極に対し、前記セグメント型アブレーション電極の電極端と前記非導電性セグメントの非導体セグメント端との間にエッジが形成される、複数のセグメント型アブレーション電極と、
前記セグメント型アブレーション電極の前記電極端と前記非導電性セグメントの前記非導体セグメント端との間にある前記エッジに隣接して配置された複数の溶出孔と、
前記溶出孔と前記少なくとも1つの流体ルーメンとの間に流体連通を確立する複数の管路と、
を含む灌注式カテーテルアブレーション装置。
(項目2)
前記複数の溶出孔が前記複数の非導電性セグメントに配置される、
項目1に記載の灌注式カテーテルアブレーション装置。
(項目3)
前記複数の溶出孔が前記複数のセグメント型アブレーション電極に配置される、
項目1に記載の灌注式カテーテルアブレーション装置。
(項目4)
前記複数のセグメント型アブレーション電極が、流体の通過を可能にするようコイルに間隙を有するコイルリング電極、又はリング電極であって、流体の通過を可能にするよう前記リング電極に切り込まれた間隙を有するリング電極の少なくとも一方を含む、
項目3に記載の灌注式カテーテルアブレーション装置。
(項目5)
前記エッジの各々について、前記溶出孔の少なくとも1つが前記エッジに隣接して配置される、
項目1に記載の灌注式カテーテルアブレーション装置。
(項目6)
前記エッジの各々について、前記溶出孔の2つ以上が前記エッジに隣接する外周の周りに離間される、
項目5に記載の灌注式カテーテルアブレーション装置。
(項目7)
前記細長本体の前記遠位端に配置される先端電極であって、先端電極エッジで前記非導電性セグメントのうちの一つの非導体セグメント端と合致する近位端を有する先端電極と、
前記先端電極エッジに隣接して、且つ前記少なくとも1つの流体ルーメンと流体連通して配置される少なくとも1つの先端電極エッジ溶出孔と、
をさらに含む、項目1に記載の灌注式カテーテルアブレーション装置。
(項目8)
前記先端電極がアブレーション先端電極である、項目7に記載の灌注式カテーテルアブレーション装置。
(項目9)
前記少なくとも1つの先端電極エッジ溶出孔が前記先端電極に配置される、
項目7に記載の灌注式カテーテルアブレーション装置。
(項目10)
前記管路の少なくとも一部が前記少なくとも1つの流体ルーメンと実質的に垂直である、
項目1に記載の灌注式カテーテルアブレーション装置。
(項目11)
前記細長本体の前記遠位部分が、前記複数の長手方向に離間されたセグメント型アブレーション電極と前記非導電性セグメントとを有する実質的に閉じたループ状にプリフォームされた材料を含む、
項目1に記載の灌注式カテーテルアブレーション装置。
(項目12)
前記複数のセグメント型アブレーション電極と結合され、それにRFエネルギーを供給する1つ又は複数の導電ワイヤであって、前記RFエネルギーがユニポーラRFエネルギー又はバイポーラRFエネルギーの一方である、導電ワイヤ、
をさらに含む、項目1に記載の灌注式カテーテルアブレーション装置。
(項目13)
前記複数のセグメント型アブレーション電極と結合された1つ又は複数の導電ワイヤと、
前記1つ又は複数の導電ワイヤを介して前記複数のセグメント型アブレーション電極にエネルギーを供給するエネルギー供給源と、
前記エネルギー供給源を制御することにより、独立した方法、逐次的な方法、又は同時的な方法のうちの一つでエネルギーを前記複数のセグメント型アブレーション電極に供給するように構成される制御器と、
をさらに含む、項目1に記載の灌注式カテーテルアブレーション装置。
(項目14)
前記複数のセグメント型アブレーション電極に、それと前記電極端で接触して配置される複数の温度センサであって、各々が、前記セグメント型アブレーション電極の前記電極端の一つと前記非導電性セグメントの前記非導体セグメント端の一つとの間の前記エッジに実質的に当接する温度センサ、
をさらに含む、項目1に記載の灌注式カテーテルアブレーション装置。
(項目15)
前記複数のセグメント型アブレーション電極と結合された1つ又は複数の導電ワイヤと、
前記1つ又は複数の導電ワイヤを介して前記複数のセグメント型アブレーション電極にエネルギーを供給するエネルギー供給源と、
前記エネルギー供給源を制御することにより、前記複数の温度センサから受け取る信号に基づきエネルギーを前記複数のセグメント型アブレーション電極に供給し、それにより前記複数のセグメント型アブレーション電極の温度を制御するように構成される制御器と、
をさらに含む、項目13に記載の灌注式カテーテルアブレーション装置。
(項目16)
遠位端と、近位端と、内部に長手方向に延在する少なくとも1つの流体ルーメンとを有する細長本体と;前記細長本体の遠位部分にある複数のセグメント型アブレーション電極であって、前記複数のセグメント型アブレーション電極が前記細長本体の前記近位端から、及び前記遠位端から、非導電性セグメントによって離間され、前記複数のセグメント型アブレーション電極が非導電性セグメントによって互いに長手方向に離間し、それにより前記非導電性セグメントのうちの1つに隣接して長手方向に配置された各セグメント型アブレーション電極に対し、前記セグメント型アブレーション電極の電極端と前記非導電性セグメントの非導体セグメント端との間にエッジが形成される、複数のセグメント型アブレーション電極とを含む灌注式カテーテルで組織をアブレーションする、又は神経を除神経する方法であって、
前記セグメント型アブレーション電極の前記電極端と前記非導電性セグメントの前記非導体セグメント端との間にある前記エッジに隣接して配置された複数の溶出孔を通じて流体を送り込むステップと、
前記複数のセグメント型アブレーション電極にエネルギーを供給して組織をアブレーションする、又は神経を除神経するステップと、
を含む方法。
(項目17)
前記流体が、前記複数の非導電性セグメントに配置される前記複数の溶出孔を通じて送り込まれる、
項目16に記載の方法。
(項目18)
前記流体が、前記複数のセグメント型アブレーション電極に配置される前記複数の溶出孔を通じて送り込まれる、
項目16に記載の方法。
(項目19)
前記エッジの各々について、前記流体が、前記エッジに隣接して配置された前記溶出孔の少なくとも1つを通じて送り込まれる、
項目16に記載の方法。
(項目20)
前記エッジの各々について、前記流体が、前記エッジに隣接する前記細長本体の外周の周りに配置された複数の溶出孔を通じて送り込まれる、
項目16に記載の方法。
(項目21)
前記セグメント型アブレーション電極の前記電極端の一つと前記非導電性セグメントの前記非導体セグメント端の一つとの間の前記エッジに各々が実質的に当接する位置において前記複数のセグメント型アブレーション電極の温度を計測するステップと、
前記計測された温度に基づき前記複数のセグメント型アブレーション電極に供給されるエネルギーを制御するステップであって、それにより前記複数のセグメント型アブレーション電極の温度を制御するステップと、
をさらに含む、項目16に記載の方法。
(項目22)
独立した方法、逐次的な方法、又は同時的な方法のうちの一つで前記複数のセグメント型アブレーション電極に供給されるエネルギーを制御するステップ、
をさらに含む、項目16に記載の方法。
(項目23)
前記細長本体の前記遠位部分が、前記複数の長手方向に離間されたセグメント型アブレーション電極と前記非導電性セグメントとを有する実質的に閉じたループ状にプリフォームされた材料を含み、前記方法が、
前記実質的に閉じたループを患者の室腔内の少なくとも1つの血管口の周囲に置くステップであって、それにより前記少なくとも1つの血管口を囲む前記室腔の室壁における組織をアブレーションするステップ、
をさらに含む、項目16に記載の方法。
(項目24)
前記少なくとも1つの血管口が少なくとも1つの肺静脈を含む、
項目23に記載の方法。
(項目25)
前記細長本体の前記遠位部分が、前記複数の長手方向に離間されたセグメント型アブレーション電極と前記非導電性セグメントとを有する実質的に閉じたループ状にプリフォームされた材料を含み、前記方法が、
前記実質的に閉じたループを患者の血管内部に置くステップであって、それにより前記血管の内部及びその血管壁の周囲にある神経を除神経するステップ、
をさらに含む、項目16に記載の方法。
(項目26)
前記血管が腎動脈又は腎静脈を含む、項目25に記載の方法。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17