(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
高分子樹脂溶液をガラス基板に塗布し、ポリイミド、ポリアクリレート、ポリエチレンエーテルフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリエーテルイミド、ポリエーテルスルホン、トリ酢酸セルロース、ポリ塩化ビニリデン、ポリフッ化ビニリデン、エチレン−ビニルアルコール共重合体、またはこれらの組み合わせからなる高分子基板を準備する段階と、
前記高分子基板を150〜380℃で熱処理する段階と、
前記熱処理された高分子基板上に350℃より高い温度で電子素子を形成する段階と、
前記電子素子を形成した後、前記高分子基板から前記ガラス基板を除去する段階と、
を含み、
前記高分子基板の熱処理は、150℃で30分間、350℃で30分間、及び380℃で30分間行い、
前記電子素子を形成する段階は、前記高分子基板上に薄膜トランジスタを形成する段階、及び前記薄膜トランジスタと電気的に連結されている有機発光素子を形成する段階を含む、表示装置の製造方法。
【背景技術】
【0002】
有機発光表示装置(Organic light emitting diode display、OLED)等の平板表示装置は、薄膜トランジスタ及び有機発光素子等の電子素子を含み、このような電子素子は、基板上に形成されている。
【0003】
このような基板としてはガラス基板が主に使用されるが、ガラス基板は重量が重くて損傷されやすいため、携帯性及び大画面表示に限界があるだけでなく、外部圧力に対して柔軟性に欠けるので、フレキシブル表示装置に使用することができない。
【0004】
近来では、重量が軽くて外部衝撃に強いだけでなく、フレキシブル特性を有する高分子基板を使用する平板表示装置が研究されている。
【0005】
高分子基板は、柔軟性のあるプラスチック素材で製造されることによって、ガラス基板に比べて携帯性、安全性、及び軽量化など多くの利点を有する。また、高分子基板は、工程的な側面でも、蒸着またはプリンティングによって製造することができるので、製造費用を安くすることができ、既存のシート単位の工程とは異なってロール−トゥ−ロール(roll−to−roll)工程で表示装置を製造することができるので、大量生産により費用が削減された表示装置を製造することができる。
【0006】
しかし、高分子基板は、プラスチック素材そのものの特性によって、高温で多量の脱ガス(outgassing)が発生する。このような脱ガスは、高分子基板上に積層される薄膜に影響を与え、素子の性能を低下させることがあり、脱ガスされた残余物が工程中にチャンバーなどに残留して汚染を起こすことがある。そのため、高分子基板上に素子を形成する時には温度に制約があり、十分に高くない温度で素子を製造すると素子の特性が低下することがある。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、添付した図面を参照して、本発明の実施態様について、本発明が属する技術分野における通常の知識を有する者が容易に実施できるように詳しく説明する。しかし、本発明は多様な異なる形態に実現され、ここで説明する実施態様に限られない。
【0037】
図面では、多くの層及び領域を明確に表現するために、厚さを拡大して示した。明細書全体にわたって類似した部分については、同一な図面符号を付けた。層、膜、領域、板などの部分がある部分の「上に」あるとする時、これは他の部分の「直ぐ上に」ある場合だけでなく、その中間にまた他の部分がある場合も含む。逆に、ある部分が他の部分の「直ぐ上に」あるとする時、これはその中間に他の部分がないことを意味する。
【0038】
先ず、本発明の一実施態様による表示装置用高分子基板について説明する。
【0039】
本発明の一実施態様による表示装置用高分子基板は、約420乃至600℃の温度で重量損失が初期重量に対して1%より小さい。ここで、重量損失とは、熱処理前の高分子基板の初期重量に対する、熱処理前の高分子基板及び熱処理後の高分子基板の重量差の百分率を意味する。
【0040】
重量損失が1%より小さいということは、脱ガスによって消失される重量が初期重量に対して1%より小さいことを意味するもので、脱ガスする量が少ないことを示す。
【0041】
このように高分子基板から脱ガスされる量を減少させるために、本実施形態にかかる高分子基板は、約350℃より高い温度で予め熱処理される。熱処理は、例えば約350乃至500℃で行うことができる。
【0042】
このように高分子基板を予め熱処理することによって、高分子基板上に薄膜を形成する後続高温工程で高分子基板から脱ガスする量を減少させることができる。
【0043】
以下、前述した表示装置用高分子基板の製造方法について図面を参考にして説明する。
【0044】
図1乃至
図3は表示装置用高分子基板の製造方法を示した断面図である。
【0045】
先ず、ガラス板50上に高分子膜110aを形成する。
【0046】
高分子膜110aは、例えばポリイミド、ポリアクリレート、ポリエチレンエーテルフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリエーテルイミド、ポリエーテルスルホン、トリ酢酸セルロース、ポリ塩化ビニリデン、ポリフッ化ビニリデン、エチレン−ビニルアルコール共重合体、またはこれらの組み合わせから形成される。
【0047】
高分子膜110aは、例えばガラス板50上に高分子樹脂溶液を塗布する方式により形成される。
【0048】
次に、
図2を参照すれば、高分子膜110aを約350℃以上、例えば約350乃至500℃で熱処理(annealing)して、高分子基板110を形成する。この時、熱処理は、前記温度範囲内の単一温度で行ったり、前記温度範囲で温度を変化させながら行うことができる。例えば、約380℃で1分乃至5時間行うことができ、約350℃、約380℃、約400℃、及び約420℃に温度を変化させながら1分乃至5時間行うこともできる。
【0049】
次に、
図3を参照すれば、高分子基板110からガラス板50を除去する。しかし、高分子基板110上に薄膜を含む素子を形成する場合には、工程中に高分子基板が損傷されるのを防止するために、ガラス板50を支持体として使用することができ、この場合、素子を形成する工程が完了した後に、高分子基板110からガラス板50を除去することができる。
【0050】
前記のように熱処理された高分子基板110は、熱膨張係数が約1乃至50ppm/℃で、熱膨張係数が比較的低い。従って、熱処理された高分子基板110は、後続工程で熱による変形が小さいので、後続工程を高温雰囲気で行っても、熱による高分子基板の変形が大きくない。
【0051】
前記熱処理された高分子基板110の重量損失は、初期重量に対して約420乃至600℃の温度で1%より小さい。従って、後続工程で高分子基板110の脱ガスによる影響を減少させることができる。
【0052】
これについて、
図4及び
図5を参照して説明する。
【0053】
図4は本発明の一実施態様による高分子基板の温度による重量損失を示したグラフであり、
図5は比較例による高分子基板の温度による重量損失を示したグラフである。
【0054】
本発明の一実施態様による高分子基板は、高分子溶液をガラス基板上に塗布した後、常温(約25℃)から約620℃まで段階的に熱処理して製造した。具体的に、高分子溶液が塗布されたガラス基板を常温(約25℃)から150℃まで5℃/分の速度で昇温させた後、150℃で30分間熱処理した。続いて、350℃まで温度を昇温させて350℃で30分間熱処理した後、380℃まで昇温させて380℃で30分間熱処理した。前記熱処理されたポリイミド基板を使用して、常温(約25℃)から約620℃まで昇温させながら、脱ガスによって消失される重量、つまり高分子基板の重量損失を測定した。
【0055】
図4を参照すれば、本発明の一実施態様によって熱処理された高分子基板は、約550℃になるまで殆ど重量損失を示さず、約600℃になるまで重量損失が1%より小さいことが分かる。
【0056】
これに反して、
図5を参考にすれば、比較例によって熱処理されないポリイミド基板を使用して、常温(約25℃)から約550℃まで昇温させながら、脱ガスによって消失される重量、つまり高分子基板の重量損失を測定した。
【0057】
図5で、B1は温度による重量損失率を示し、B2は単位時間当たりの重量損失変化率を示す。
【0058】
図5を参照すれば、比較例として熱処理されない高分子基板は、約350℃、400℃、及び500℃で高分子基板の重量損失が各々約4.822%、5.931%、及び6.709%と測定された。
【0059】
このように、高分子基板を約350℃以上の温度で予め熱処理する場合に、後続高温工程で熱に対して安定して、高分子基板から脱ガスされる量が減少することが分かる。
【0060】
以下、本発明の他の実施態様による表示装置について、図面を参照して説明する。
【0061】
ここでは、表示装置のうちの有機発光表示装置を例示して説明するが、高分子基板が利用される全ての表示装置に適用することができる。
【0062】
図6は本発明の一実施態様による有機発光表示装置を示した断面図である。
【0063】
有機発光表示装置は、複数の信号線、及びこれらに連結されて、ほぼ行列(matrix)形態に配列された複数の画素を含む。
【0064】
信号線は、ゲート信号(または走査信号)を伝達する複数のゲート線、データ信号を伝達する複数のデータ線、及び駆動電圧を伝達する複数の駆動電圧線を含む。
【0065】
各画素は、スイッチングトランジスタ(TR
s)、駆動トランジスタ(TR
D)、及び有機発光素子(LD)を含む。
【0066】
スイッチングトランジスタ(TR
s)は、制御端子、入力端子、及び出力端子を含み、制御端子はゲート線に連結されており、入力端子はデータ線に連結されており、出力端子は駆動トランジスタ(TR
D)に連結されている。スイッチングトランジスタ(TR
s)は、ゲート線に印加される走査信号に応答して、データ線に印加されるデータ信号を駆動トランジスタ(TR
D)に伝達する。
【0067】
駆動トランジスタ(TR
D)も、また、制御端子、入力端子、及び出力端子を含み、制御端子はスイッチングトランジスタ(TR
s)に連結されており、入力端子は駆動電圧線に連結されており、出力端子は有機発光ダイオード(LD)に連結されている。駆動トランジスタ(TR
D)は、制御端子と出力端子との間にかかる電圧によってその大きさが変化する出力電流を流す。
【0068】
有機発光ダイオード(LD)は、駆動トランジスタ(TR
D)の出力端子に連結されているアノード及び共通電圧に連結されているカソードを含む。有機発光ダイオード(LD)は、駆動トランジスタ(TR
D)の出力電流によって異なる強さで発光することによって、映像を表示する。
【0069】
図6を参照して有機発光表示装置の構造を説明する。
【0070】
高分子基板110上に基板保護膜111が形成されている。
【0071】
高分子基板110は、前述のように約350℃より高い温度で予め熱処理されている。熱処理された高分子基板110は、約350℃より高い温度で脱ガスする量が少なく、例えば約350乃至500℃で重量損失が初期重量に対して1%より小さい。熱処理された高分子基板110は、熱膨張係数が約1乃至50ppm/℃である。
【0072】
基板保護膜111は、無機物質、有機物質、またはこれらの組合せからなり、例えば酸化ケイ素(SiO
2)、窒化ケイ素(SiN
x)、またはこれらの組合せなどから形成される。
【0073】
基板保護膜111上には、第1制御電極124aを含むゲート線(図示せず)及び第2制御電極124bを含むゲート導電体が形成されている。
【0074】
ゲート導電体上にはゲート絶縁膜140が形成されている。ゲート絶縁膜140は、シリコン系絶縁物質から形成される。
【0075】
ゲート絶縁膜140上には水素化非晶質シリコンまたは多結晶シリコン等から形成された、第1半導体154a及び第2半導体154bが形成されている。第1半導体154a及び第2半導体154bは、各々第1制御電極124a及び第2制御電極124b上に位置している。
【0076】
第1半導体154a上には第1抵抗性接触部材163a,165aが対をなして形成されており、第2半導体154b上には第2抵抗性接触部材163b,165bが対をなして形成されている。
【0077】
抵抗性接触部材163a,163b,165a,165b及びゲート絶縁膜140上には複数の第1、第2入力電極173a,173b及び第1、第2出力電極175a,175bを含むデータ導電体が形成されている。第1入力電極173aはデータ線(図示せず)と連結されており、第2入力電極173bは駆動電圧線(図示せず)と連結されている。
【0078】
データ導電体上には、保護膜180が形成されている。保護膜180は、複数の接触孔183,184,185を有する。
【0079】
保護膜180上には、画素電極191及び連結部材85が形成されている。
【0080】
画素電極191は接触孔185を通して第2出力電極175bと電気的に連結されており、連結部材85は接触孔183,184を通して、第1出力電極175a及び第2制御電極124bを電気的に連結する。
【0081】
保護膜180、画素電極191、及び連結部材85上には隔壁361が形成されており、隔壁361は、画素電極191の上部周辺を囲んで開口部365を定義する。
【0082】
開口部365には有機発光層370が形成されている。有機発光層370の下部及び/または上部には、一つ以上の補助層(図示せず)が形成されてもよい。
【0083】
有機発光層370上には共通電極270が形成されている。画素電極191及び共通電極270のうちの一つはアノードであり、他方はカソードである。
【0084】
以下、前述した有機発光表示装置の製造方法について、
図1乃至
図3及び
図6を参照して説明する。
【0085】
先ず、ガラス板50上に高分子膜110aを形成する。
【0086】
高分子膜110aは、例えばポリイミド、ポリアクリレート、ポリエチレンエーテルフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリエーテルイミド、ポリエーテルスルホン、トリ酢酸セルロース、ポリ塩化ビニリデン、ポリフッ化ビニリデン、エチレン−ビニルアルコール共重合体、またはこれらの組み合わせから形成される。
【0087】
高分子膜110aは、例えばガラス板50上に高分子樹脂溶液を塗布する方式により形成される。
【0088】
次に、高分子膜110aを常温から多段階に渡って徐々に昇温させた後、350℃以上、例えば約350乃至500℃で熱処理して、高分子基板110を形成する。この時、熱処理は、前記温度範囲で単一温度で行ったり、前記温度範囲で温度を変化させながら行うことができる。例えば、約380℃で1分乃至5時間行うことができ、約350℃、約380℃、約400℃、及び約420℃に温度を変化させながら1分乃至5時間行うこともできる。
【0089】
続いて、熱処理された高分子基板110上に基板保護膜111を形成する。基板保護膜111は、例えば化学気相蒸着またはスパッタリング等の方法で形成することができ、スピンコーティング等の溶液工程で形成することもできる。
【0090】
基板保護膜111上に導電体を積層してパターニングし、第1及び第2制御電極124a,124bを形成する。
【0091】
続いて、第1、第2制御電極124a,124b及び基板保護膜111上にゲート絶縁膜140を形成する。ゲート絶縁膜140は、シリコン系絶縁物質から形成され、シリコン系絶縁物質の前駆体としてテトラエチルオルトシリケート(tetraethylorthosilicate:TEOS)を使用することができる。テトラエチルオルトシリケートは、シリコン系絶縁物質の前駆体としてシラン(silane)を使用する場合に比べて、薄膜トランジスタの性能が改善されて、安全性を向上させることができる。
【0092】
テトラエチルオルトシリケートは、約350℃以上、例えば約350乃至550℃の比較的高い温度で蒸着される。前述のように熱処理された高分子基板110は、約350℃以上の高温でも脱ガスする量が少なく、熱膨張率が低いので、ゲート絶縁膜のソース気体として高温工程が必要なテトラエチルオルトシリケートを使用することができる。従って、ゲート絶縁膜による素子の性能を改善すると同時に、高分子基板の変形を防止し、脱ガスする量を減少させて、素子の安定性を確保することができる。
【0093】
続いて、ゲート絶縁膜140上に非晶質シリコンまたは多結晶シリコンを積層して、第1及び第2半導体154a,154b及び第1及び第2抵抗性接触部材163a,165a,163b,165bを形成する。
【0094】
続いて、保護膜180を積層してパターニングして、複数の接触孔183,184,185を形成する。
【0095】
続いて、保護膜180上に画素電極191を形成し、画素電極191上に隔壁361を積層する。
【0096】
続いて、隔壁361によって定義された開口部365に有機発光層370を形成し、隔壁361及び有機発光層370上に共通電極270を形成する。
【0097】
以上で、本発明の望ましい実施例について詳細に説明したが、本発明の権利範囲はこれに限定されず、請求の範囲で定義している本発明の基本概念を利用した当業者による多様な変形及び改良形態もまた本発明の権利範囲に属するものである。