(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
一端側に被処理物の供給口を、他端側に被処理物の排出口を有し、軸心周りに回転自在な回転筒と、加熱媒体が通る加熱管群を前記回転筒内に設け、前記回転筒の回転に伴って前記加熱管群により被処理物が回転方向に掻き上げられる構成の横型回転式乾燥機を用いて、
被処理物を前記回転筒の一端側に供給して他端側から排出する過程で、前記加熱管群により被処理物を間接加熱して乾燥させる、被処理物の乾燥方法であって、
下記式1、式2で定められる臨界速度比αが30〜100%未満となるように、前記回転筒を回転して、被処理物を乾燥させることを特徴とする被処理物の乾燥方法。
Vc=2.21D1/2 ・・・式1
α=V/Vc・100 ・・・式2
ここに、Vcは臨界速度(m/s)、Dは回転筒の内径(m)、αは臨界速度比(%)、Vは回転速度(m/s)である。
前記被処理物が中位径50mm以下の石炭であるとき、内径が1〜6mの回転筒を用いて、前記臨界速度比αが40〜100%未満となるように前記回転筒を回転して、被処理物を乾燥させる請求項1または2記載の被処理物の乾燥方法。
前記被処理物が中位径200μm以下の樹脂系物質であるとき、内径が1〜6mの回転筒を用いて、前記臨界速度比αが30〜70%となるように前記回転筒を回転して、被処理物を乾燥させる請求項1または2記載の被処理物の乾燥方法。
前記加熱管を放射状または同心円上に複数配置しており、隣り合う加熱管の間の離間距離が80〜150mmである請求項1〜4のいずれか1項に記載の被処理物の乾燥方法。
一端側に被処理物の供給口を、他端側に被処理物の排出口を有し、軸心周りに回転自在な回転筒と、加熱媒体が通る加熱管群を前記回転筒内に設け、前記回転筒の回転に伴って前記加熱管群により被処理物が回転方向に掻き上げられる構成とされ、
被処理物を前記回転筒の一端側に供給して他端側から排出する過程で、前記加熱管群により被処理物を間接加熱して乾燥させる横型回転式乾燥機であって、
下記式1、式2で定められる臨界速度比αが30〜100%未満となるように運転できる構成であることを特徴とする横型回転式乾燥機。
Vc=2.21D1/2 ・・・式1
α=V/Vc・100 ・・・式2
ここに、Vcは臨界速度(m/s)、Dは回転筒の内径(m)、αは臨界速度比(%)、Vは回転速度(m/s)である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
近年は、被処理物の大量乾燥処理の要求が強く、その要求に応えるため、乾燥機の大型化が進んでいる。STDの大型化を例に挙げると、シェル径が4mで、本体長が30m以上のものも作られている。
【0008】
しかし、乾燥機の大型化は、設置面積が増えてしまうという問題が生じるほか、製造や輸送に問題が生じる。具体的には、強度を保持するために各部材の板厚が増加し、シェル径が4m、本体長が30mの前記STDでは、本体重量が400tonにも達する。そのため、完成までに多くの時間かかるという問題がある。また、製造に特別な設備を要するという問題もある。
【0009】
さらに、大型化に伴って製品輸送の際に、その重量に耐えられる特殊車両が必要になり、輸送路が狭い場合には、分割して輸送し、現場で接合し、組立てる必要があり、工事が非常に繁雑であるという問題もある。
【0010】
そこで、このように装置の大型化には限界があることを踏まえ、むしろ、被処理物の乾燥速度を向上させることを指向するべきであるとの課題を見出した。
【0011】
したがって、本発明の課題は、乾燥機による被処理物の乾燥速度を向上させることにある。
また、乾燥機の大きさ(シェル径)当たりの乾燥処理量を増大できる本発明により装置の大型化に伴う前記問題を極力回避できるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決した本発明は次記のとおりである。
<請求項1記載の発明>
一端側に被処理物の供給口を、他端側に被処理物の排出口を有し、軸心周りに回転自在な回転筒と、加熱媒体が通る加熱管群を前記回転筒内に設け、前記回転筒の回転に伴って前記加熱管群により被処理物が回転方向に掻き上げられる構成の横型回転式乾燥機を用いて、
被処理物を前記回転筒の一端側に供給して他端側から排出する過程で、前記加熱管群により被処理物を間接加熱して乾燥させる、被処理物の乾燥方法であって、
下記式1、式2で定められる臨界速度比αが30〜100%未満となるように、前記回転筒を回転して、被処理物を乾燥させることを特徴とする被処理物の乾燥方法。
Vc=2.21D
1/2 ・・・式1
α=V/Vc・100 ・・・式2
ここに、Vcは臨界速度(m/s)、Dは回転筒の内径(m)、αは臨界速度比(%)、Vは回転速度(m/s)である。
【0013】
(作用効果)
STDの回転筒の回転数について、従来は理論的な検証も行われないまま、以下の値で運転されている。すなわち、回転筒の内径が4mの場合は回転数の上限を2〜4.5rpmに、前記内径が3mの場合は回転数の上限を2〜5rpmに、前記内径が2mの場合は回転数の上限を2〜6rpmに、前記内径が1mの場合は回転数の上限を3〜10rpmに設定して運転を行っている。
【0014】
他方、本発明者らの知見によれば、STDの大きさ(回転筒の内径)を変えると、同じ回転数で回転しても、被処理物の乾燥速度が変わるとともに、その速度の予測が難しいという問題がある。特に大型のSTDになるほど乾燥速度の予測が困難であるため、伝熱面積を大きめに設計して乾燥能力に余裕を持たせていた。
【0015】
かかる理由により、従来例では、テスト機から実機にスケールアップする際に、所望する乾燥能力を引き出すことが困難であったのに対し、本発明に係る被処理物の乾燥方法を用いて回転速度を決定することで、スケールアップの際に、所望する乾燥能力を発揮させることが容易となる。
【0016】
また、本発明の被処理物の乾燥方法においては、乾燥機の回転速度を高速化することにより、従来よりも乾燥能力を飛躍的に向上させることができ、被処理物の大量処理が可能となる。
【0017】
<請求項2記載の発明>
下記式3で定められる被処理物の充填率ηが20〜40%となるように、前記回転筒内に被処理物を供給する請求項1記載の被処理物の乾燥方法。
η=Ap/Af・100 ・・・式3
ここに、ηは充填率(%)、Apは自由断面積に対して被処理物の占める断面積(m
2)、Afは回転筒の全断面積から全加熱管の断面積を減算した自由断面積(m
2)である。
【0018】
(作用効果)
充填率ηが20〜40%であると、単位断面積当たりの処理量が多くなり、かつ、乾燥速度も速いものとなる。また、充填率ηの上限が過度に大きくないので、良好な乾燥速度を示す。より好ましい充填率ηは25〜30%である。なお、回転筒の全断面積Afとは、回転筒の任意の横断面における回転筒内部の断面積のことをいい、回転筒の肉厚部分の面積は含まない。すなわち、回転筒の内径に基づいて計算する断面積をいう。
【0019】
<請求項3記載の発明>
前記被処理物が中位径50mm以下の石炭であるとき、内径が1〜6mの回転筒を用いて、前記臨界速度比αが40〜100%未満となるように前記回転筒を回転して、被処理物を乾燥させる請求項1または2記載の被処理物の乾燥方法。
【0020】
(作用効果)
被乾燥物が石炭であるとき、臨界速度比αが40〜100%未満であるのが、処理量及び乾燥速度の観点から最適である。より好ましい臨界速度比αは60〜90%である。
【0021】
<請求項4記載の発明>
前記被処理物が中位径200μm以下の樹脂系物質であるとき、内径が1〜6mの回転筒を用いて、前記臨界速度比αが30〜70%となるように前記回転筒を回転して、被処理物を乾燥させる請求項1または2記載の被処理物の乾燥方法。
【0022】
(作用効果)
被乾燥物が中位径200μm以下の樹脂系物質であるとき、臨界速度比αが30〜70%であるのが、処理量及び乾燥速度の観点から最適である。より好ましい臨界速度比αは40〜60%である。
【0023】
<請求項5記載の発明>
前記加熱管を放射状または同心円上に複数配置しており、隣り合う加熱管の間の離間距離が80〜150mmである請求項1〜4のいずれか1項に記載の被処理物の乾燥方法。
【0024】
(作用効果)
隣り合う加熱管の間の離間距離は、回転筒の回転に伴って、被乾燥物を掬い上げる量、掬い上げた被乾燥物が落下し、伝熱管の間に戻る量と関係し、かつ、これらは回転筒の回転速度とも関連するところ、前記離間距離は、80〜150mmが適していることが知見された。
【0025】
<請求項6記載の発明>
一端側に被処理物の供給口を、他端側に被処理物の排出口を有し、軸心周りに回転自在な回転筒と、加熱媒体が通る加熱管群を前記回転筒内に設け、前記回転筒の回転に伴って前記加熱管群により被処理物が回転方向に掻き上げられる構成とされ、
被処理物を前記回転筒の一端側に供給して他端側から排出する過程で、前記加熱管群により被処理物を間接加熱して乾燥させる横型回転式乾燥機であって、
下記式1、式2で定められる臨界速度比αが30〜100%未満となるように運転できる構成であることを特徴とする横型回転式乾燥機。
Vc=2.21D
1/2 ・・・式1
α=V/Vc・100 ・・・式2
ここに、Vcは臨界速度(m/s)、Dは回転筒の内径(m)、αは臨界速度比(%)、Vは回転速度(m/s)である。
【0026】
(作用効果)
装置の観点から、請求項1と同様の作用効果を奏する。
【0027】
<請求項7記載の発明>
前記加熱管を放射状または同心円上に複数配置しており、隣り合う加熱管の間の離間距離が80〜150mmである請求項6記載の横型回転式乾燥機。
【0028】
(作用効果)
装置の観点から、請求項5と同様の作用効果を奏する。
【0029】
<
その他の発明>
一端側に被処理物の供給口を、他端側に被処理物の排出口を有し、軸心周りに回転自在な回転筒と、加熱媒体が通る加熱管群を前記回転筒内に設け、前記回転筒の回転に伴って前記加熱管群により被処理物が回転方向に掻き上げられる構成の横型回転式乾燥機を用いて、
被処理物を前記回転筒の一端側に供給して他端側から排出する過程で、前記加熱管群により被処理物を間接加熱して乾燥させる際の被処理物の乾燥速度を評価する方法であって、
下記式1、式2で定められる臨界速度比αをもって、乾燥速度を評価することを特徴とする被処理物の乾燥速度評価方法。
Vc=2.21D
1/2 ・・・式1
α=V/Vc・100 ・・・式2
ここに、Vcは臨界速度(m/s)、Dは回転筒の内径(m)、αは臨界速度比(%)、Vは回転速度(m/s)である。
【0030】
(作用効果)
請求項1と同様の作用効果を奏する。そして、本請求項に係る乾燥速度の評価方法により、実機レベルでの適確な間接加熱横型回転式乾燥機を得ることができる。
【発明の効果】
【0031】
以上のように、本発明によれば、乾燥機による被処理物の乾燥速度を向上させることができる。また、乾燥速度が向上する結果、乾燥機の大きさ(シェル径)当たりの乾燥処理量を増大できる。逆からいえば、処理量当たりの装置の大きさを小さくできる。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、本発明の好適な実施形態について、図を用いて更に説明する。なお、以下の説明及び図面は、本発明の実施形態の一例を示したものにすぎず、本発明の内容をこの実施形態に限定して解釈すべきでない。
【0034】
(発明の骨子)
一般に、乾燥機の乾燥速度は、下記の式4のように表すことができる。
Q= Uoa×Aef×Tln ・・・式4
ここに、Qは伝熱量(W)であり、Uoaは総括伝熱係数(W/m
2−K)であり、Aefは有効接触伝熱面積(m
2)であり、Tlnは温度差(℃)である。
【0035】
乾燥速度は伝熱量Qと同義であり、前記の式4の左辺の伝熱量Qを高めるには、右辺の総括伝熱係数Uoa、有効接触伝熱面積Aef、温度差Tlnのいずれか、または全てを高めるような方策を取ればよい。
本発明者は、総括伝熱係数Uoa及び有効接触伝熱面積Aefに着目し、これらを高めるために、伝熱面と被乾燥物との相対的接触速度をより速くすること、および被処理物の分散を良くして伝熱面と被乾燥物との有効接触伝熱面積をより増大させることを考えた。実際に各種の実験・検討を行ったところ、本発明の手法の有効性を明確に確認できた。
【0036】
更に、本発明に従う高速回転化技術を詳細に分析した結果、乾燥機の回転筒10の直径が異なる場合においても、本発明の思想が適用できることを知見した。
【0037】
(被処理物W)
まず、乾燥対象物としての被処理物Wについて限定はなく、その具体例として、石炭、銅鉱石、鉄粉、亜鉛粉等の鉱石、金属系物質、テレフタル酸、ポリエチレン、ポリアセタール、塩化ビニール等の樹脂系物質、メチオニン、グルテンミール、大豆加工粉、コーンファイバー、コーンジャーム等の加工食品系物質、石膏、アルミナ、ソーダ灰等の無機系物質、脱水汚泥等を挙げることができる。
【0038】
被処理物Wは、物質表面がべたべたとしておらず、付着性の低いものが好ましい。
図30に、日本粉体工業技術協会規格 SAP15−13、2013 解説書17頁 解説
図5より引用した表を示す。本発明では、
図30の点線で囲った領域にあるもの、詳しくはドライ(乾燥)、ペンジュラー域(懸垂域)、ファニキュラー域1(索状域1)、ファニキュラー域2(索状域2)、キャピラリー域(毛管域)の物質を被処理物Wとして用いることが好ましい。スラリー(泥しょう)は、付着性が極めて高い傾向にあるため、本発明の被処理物Wとして適さない。
【0039】
(中位径)
本発明の中位径(「メジアン径」ともいう。)は、例えば以下の方法を用いて定める。詳述すると、被処理物の粒径が500ミクロン以上の場合は、JIS M 8801 石炭試験方法に記載された方法でふるい分けをし、ふるい分け結果をロジンラムラー分布で表し、積算質量(ふるい上)が50%に相当する時の粒子径を中位径(D
50)として定める。また、被処理物の粒径が500ミクロン未満の場合は、レーザー回折式粒度分布測定装置(例えば、商品名SALD−3100、島津製作所社製)を用いて粒度分布を測定し、累積体積が50%に相当する時の粒子径を中位径(D
50)として定める。
【0040】
(間接加熱横型回転式乾燥機)
次に、本発明に係る横型回転式乾燥機(以下、「STD(Steam Tube Dryerの略称)」ともいう。)について説明する。この横型回転式乾燥機の構造は、
図1に例示するように、円筒状の回転筒10を有し、この回転筒10の軸心が水平面に対して若干傾くようにして設置されており、回転筒10の一端が他端よりも高く位置している。回転筒10の下方には、2台の支持ユニット20及びモーターユニット30が回転筒10を支持するようにして設置されており、回転筒10は、モーターユニット30によって、自身の軸心回りに回転自在とされている。この回転筒10は、一方向に回転するようになっている。その方向は任意に定めることができ、例えば、
図5に示すように、他端側(被処理物Wの排出口側)から一端側(被処理物Wの供給口側)を見て、反時計回り(矢印R方向)に回転させることができる。
【0041】
回転筒10の内部には、金属製のパイプであるスチームチューブ(加熱管)11が、被乾燥物との伝熱管として、回転筒10の軸心に沿って延在して多数取り付けられている。このスチームチューブ11は、例えば回転筒10の軸心に対して同心円を成すように周方向及び径方向に複数本ずつ配列されている。この配置形態については、後に詳説する。なお、この加熱管11は、加熱媒体である蒸気等が加熱管11の内部を流通することで加温される。
【0042】
また、スクリューフィーダ42の近傍には、ガス吹込み口でもある供給口41からキャリアガスAとして空気、不活性ガス等を回転筒10の内部に吹き込むガス吹込み手段(図示しない)が設けられており、このガス吹込み手段によって吹き込まれたキャリアガスAは、回転筒10の他端側に向かって回転筒10の内部を流通する。
【0043】
図1、
図3に示すように、回転筒10の他端側における周壁には、複数の排出口50が貫通して形成されている。排出口50は、回転筒10の周方向に沿って複数形成され、
図1、
図3の例では、2つの列を成すように相互に離間して形成されている。また、複数の排出口50は、全て同形とされているが、異形とすることもできる。
【0044】
また、回転筒10の他端側には、ガス管72が備えられ、スチームチューブ11内に蒸気を供給する供給管70とドレン管71とが設けられている。
【0045】
(変形例)
なお、
図4に示すように、前記回転筒10の他端側に、被処理物Wを撹拌する撹拌手段65を設けても良い。
【0046】
また、
図4、
図5に示すように、回転筒10には、複数の排出口50を有する他端側を覆うように、被処理物W及びキャリアガスAを排出可能な分級フード55を設けても良い。この分級フード55は、肉厚な金属から形成されており、底面に、乾燥及び分級をされた被処理物W、つまり処理物Eを排出する固定排出口57を、天面にキャリアガスAを排気する固定排気口56を、それぞれ有する。
【0047】
(乾燥過程)
次に、
図1〜
図3を参照しながら、横型回転式乾燥機で被処理物Wを乾燥する過程を説明する。
【0048】
被処理物Wは、供給口41からスクリューフィーダ42内に供給され、このスクリューフィーダ42内部に設置されたスクリュー44を図示しない駆動手段によって回動させることによって、回転筒10の内部に供給される。供給口41から供給された被処理物Wは、蒸気によって加熱されたスチームチューブ(加熱管)11に接触して乾燥されつつ、回転筒10の他端側に移動し、排出口50から排出される。
【0049】
他方、回転筒10の一端側に設けられた吹込み手段によって、供給口41から吹き込まれたキャリアガスAは、回転筒10内を通過して、被処理物Wの排出口でもある排出口50から回転筒10外に排気される。
【0050】
また、前記供給管70から加熱管11内に供給した蒸気は、被処理物Wと加熱管11が接触して熱交換することにより、加熱管11内を流れる過程で冷却されて液体Dになり、ドレン管71から排出される。
【0051】
(変形例)
次に、
図4、
図5を参照しながら、撹拌手段65及び分級フード55を備えた横型回転式乾燥機を用いる場合についても説明する。この場合において、前記説明と重複する部分は、省略する。
【0052】
回転筒10内に供給された被処理物Wは、撹拌手段65を設けた位置まで到達すると、撹拌手段65によって撹拌され、続いて、
図5に示すように、回転筒10の回転に伴って回動する掻上板60によって掻き上げられる。掻き上げられた被処理物Wは、掻上板60が回転筒10の上側に位置すると、自然に落下し、その際に被処理物Wに含まれる微粒子Cが回転筒10内に分散する(いわゆるフライトアクション)。なお、撹拌手段65の形状は、回転筒の中心方向に向けて突出した板状等、回転筒の回転に伴い被処理物Wを掻き上げられる構造であれば良い。たとえば掻上板60と同様の形状をとることができる。
【0053】
他方、回転筒10の一端側に設けられた吹込み手段によって、供給口41から吹き込まれたキャリアガスAは、回転筒10内を通過して、被処理物Wの排出口でもある排出口50から回転筒10外に排気される。この際、キャリアガスAは、掻上板60によって回転筒10内に分散された微粒子Cを伴って排出口50から排気される。排出口50から排気されたキャリアガスAは、固定排気口56を介して分級フード55から排気される。
【0054】
被処理物Wのうち、粒子径が大きく重量が重い粒子は、回転筒10内において落下し、キャリアガスAによって固定排気口56から排出されることもなく、下側に位置した排出口50から自然落下する。この自然落下した粒子(被処理物W)は、固定排出口57から処理物Eとして外部に排出される。
【0055】
(供給方式変形例)
本発明に係る横型回転式乾燥機の変形例を説明する。
横型回転式乾燥機へ被処理物を供給する方式には、前記スクリュー式(
図2)のほか、シュート式(
図6)や振動トラフ式(
図7)を例示できる。シュート式では、供給シュート46が吸気ボックス45と結合しており、供給口41から供給した被処理物Wが、供給シュート46内を落下し、回転筒10内へ移動する。吸気ボックス45がシールパッキン47を介して回転筒10に接続しており、回転筒10と吸気ボックス45間のシールを維持しながら、回転筒10が回転する構造になっている。振動トラフ式では、吸気ボックス45がトラフ(断面形状が凹状)であり、その吸気ボックス45の下端に振動モータ48とばね49が結合している。供給口41から供給した被処理物Wは、トラフの上に落下する。そして、振動モータ48により吸気ボックス45が振動することにより、被処理物Wが回転筒10内へと移動する。吸気ボックス45を取り付ける際は、被処理物Wが移動しやすいように、回転筒へ向かって下る傾斜を持たせると良い。
【0056】
(回転筒変形例)
回転筒10の断面形状は、後述する円形のほか、矩形にしても良い。矩形の例として、六角形の回転筒10を
図8に示す。矩形の回転筒10を回転すると、回転筒10の角部15により被処理物Wが持ち上がるため、被処理物Wの混合が良くなる。一方で、円形の場合に比べて、回転筒10の断面積が狭くなるため、配置する加熱管の数が減るというデメリットも存在する。なお、矩形の角部の数(辺の数)は変更でき、より詳しくは、角部の数を3つ以上の任意の数にすることができる。
【0057】
図9に示すように、回転筒10を囲むジャケット12を設けても良い。この場合、回転筒10の外壁とジャケット12の内壁の間に加熱媒体Sを流し、回転筒10の外側からも加熱を行う。その結果、ジャケット12を設けない場合と比べて、被処理物Wの乾燥速度を上げることができる。この加熱媒体Sの例として、200〜400℃の高温ガス、200〜400℃のホットオイル等を挙げることができる。そのほか、前記ジャケット12の代わりに、回転筒10を囲むようにトレース配管(図示しない)を複数設けても良い。
【0058】
(排出方式変形例)
横型回転式乾燥機から処理物Eを排出する方式としては、
図10のような形態も採用できる。かかる形態において、キャリアガスAは、ケーシング80の上部のキャリアガス供給口33から隔壁23の内側へ送り込まれる。このキャリアガスAが再利用ガスである場合は、キャリアガスA中に粉塵等が含まれているが、隔壁23の内側、すなわちガス通路U2には、リボンスクリューZが配されているため、ガスに混入している粉塵等は、このリボンスクリューZによって捕捉される。捕捉された粉塵等は、リボンスクリューZの送り作用により開口部22へ向かって送られ、ケーシング80内へ排出される。排出された粉塵等は、自由落下によりケーシング下方の排出口32から排出される。一方、キャリアガスAの粉塵等以外の気体は、リボンスクリューZによって妨げられることなく、回転筒10内へ送られる。
【0059】
また、回転筒10の回転に伴って、スクリュー羽根24も回転する。従って、被処理物Wが乾燥した乾燥物Eは、送り出し通路U1内を、開口部21へ向かってスクリュー羽根24の送り作用により送られ、開口部21から排出される。排出された乾燥物Eは、自重により排出ケーシング下方の排出口32から排出される。
【0060】
他方、ケーシング80を貫き、隔壁23内へ延在する蒸気経路(内部蒸気供給管61及び内部ドレン排出管62)が、回転筒10と一体で設けられている。内部蒸気供給管61は、端板部17における加熱管11の入口ヘッダ部に、内部ドレン排出管62は端板部17における加熱管11の出口ヘッダ部に連通している。また、蒸気供給管70及びドレン排出管71は、回転継手63を介して、内部蒸気供給管61及び内部ドレン排出管62にそれぞれ連結している。
【0061】
(ガス流通方式変形例)
図1、
図4における横型回転式乾燥機は、被処理物Wの移動する方向とキャリアガスAの流れる方向が同じである「並流」を採用していた。そのほか、被処理物Wの移動する方向とキャリアガスAの流れる方向を逆にした「向流」を採用しても良い。
【0062】
図11に「向流」を採用した横型回転式乾燥機の一例を示す。スクリューフィーダ42の上方に被処理物Wの供給口31を設け、フード35の下端に処理物Eの排出口32を設ける。そして、供給口31から被処理物Wを供給し、被処理物Wを回転筒10の一端側から他端側へ向かって移動させ、その移動過程で加熱管により加熱して乾燥させ、乾燥した処理物Eを排出口32から排出する。一方、フード35の上端にキャリアガスAの供給口33を設け、スクリューフィーダ42の上方にキャリアガスAの排出口34を設ける。そして、供給口33からキャリアガスAを供給し、前記キャリアガスAを回転筒10の他端側から一端側へ向かって流し、その過程で被処理物Wから蒸発した蒸気を搬送し、蒸気を伴うキャリアガスAを排出口34から排出する。
【0063】
そのほか、
図12に示すような、ガス吹き込み管式の横型回転式乾燥機を用いても良い。ガス吹き込み管36は、回転筒10の内部に軸方向に延在して設けられ、回転筒10や加熱管11と共に回転する。例えば、複数の加熱管11、11の間や、最も内側に位置する加熱管11よりも更に内側に設けることができる。なお、
図12では、ガス吹き込み管36を分かり易くするために、加熱管11の表示を省いている。このガス吹き込み管36の壁面には、複数のガス吹き出し口37が開いている。
図12の例では、ガス吹き込み管36の上部に、ガス吹き込み口37を軸方向に2列設けている。
【0064】
前記ガス吹き込み管式乾燥機を運転する際は、回転筒10の他端側からガス吹き込み管36内へキャリアガスAを供給する。供給されたキャリアガスAは、ガス吹き込み口37から回転筒内へ噴き出し、被処理物Wの蒸気を伴って、回転筒10の一端側から流れ出る。そのほか、回転筒10の一端側からガス吹き込み管36内にキャリアガスAを供給し、回転筒10の他端側から排気する構成にしても良い。
【0065】
(回転筒支持構造変形例)
そのほか、回転筒10の支持構造は、回転筒10の外周に2つのタイヤ部材20、20を取り付ける前記支持構造のほか、一端側に設けたスクリューケーシング42と、他端側に設けたガス管72の外周にベアリング(図示しない)を取り付け、このベアリングを支持する構造や、前記タイヤ部材25とベアリングを組み合わせる支持構造にしても良い。
【0066】
(回転速度)
本発明は、被処理物Wの乾燥速度を上げるため、従来の横型回転式乾燥機よりも、回転筒10を高速で回転させる。この回転速度の決定方法について、以下に説明する。
【0067】
(工程1)
横型回転式乾燥機の処理負荷PLを決定する。具体的には、被処理物Wの種類、含水率(%)、目標の処理量(kg/h)等を基に、負荷PLを算出する。
【0068】
(工程2)
小型の横型回転式乾燥機を実験機として用いて、単位負荷当たりの乾燥速度Rdを調査する。
【0069】
(工程3)
前記工程2で調査した乾燥速度Rdを基にして、回転筒10のサイズを決定する。
【0070】
(工程4)
回転筒10の回転数を決定する。従来の回転数決定法は、重要な基準として回転筒10の回転速度(本発明では、「回転速度」を「周速」ともいう。)を用いており、具体的には、下記式5を用いて回転数を決定していた。なお、回転速度Vの値は、約0.1〜1[m/s]の範囲内で経験則に基づいて決定していた。
N=(V×60)/(D×π) ・・・式5
ここに、Nは回転数(r.p.m.)であり、Vは回転速度(m/s)であり、Dは回転筒10の内径(m)である。
【0071】
本発明は、前記式5とは異なり、臨界速度比を基準に回転数を決定するものであり、具体的には、下記式6を用いて決定する。
N=V/Vc×Nc ・・・式6
ここに、Nは回転数(r.p.m.)であり、Vは回転速度(m/s)であり、Vcは臨界速度(m/s)であり、Ncは臨界回転数(r.p.m.)である。
【0072】
(臨界速度、臨界速度比)
前記式6の「臨界速度」と「臨界回転数」について詳述する。
図13を参照すると、「臨界速度」は、横型回転式乾燥機内で、被処理物Wの重力と被処理物Wに作用する遠心力がつり合う回転速度であり、理論上、被処理物Wが回転筒10と共廻りする回転筒10の回転速度をいう。なお、rωは速度を表す。また、「臨界速度比」とは、前記臨界速度に対する実際の回転速度の比をいう。
【0073】
(臨界速度)
臨界速度について、詳述する。臨界速度は、被処理物Wの重力(mg)と遠心力(mrω
2)が同じであるため、下記の式7が成り立つ。
mg=mrω
2 ・・・式7
ここに、mは被処理物Wの質量(kg)、gは重力加速度(m/s
2)、rは回転筒10の半径(m)、ωは角速度(rad/s)である。
【0074】
そして、上記式7から下記の式8を導くことができる。
g=r(Vc/r)
2 ・・・式8
ここに、gは重力加速度(m/s
2)であり、rは回転筒10の半径(m)であり、Vcは臨界速度(m/s)である。
【0075】
従って、上記式8から下記式1を導き、臨界速度(m/s)を求めることができる。
Vc=(rg)
1/2=(D/2・g)
1/2=2.21D
1/2
Vc=2.21D
1/2 ・・・式1
ここに、Vcは臨界速度(m/s)、Dは回転筒10の内径(m)である。
【0076】
(臨界速度比)
次に、臨界速度比について説明する。臨界速度比αは、臨界速度(Vc)に対する実際の回転速度Vの比を指すため、下記式2によって表すことができる。
α=V/Vc・100 ・・・式2
ここに、αは臨界速度比(%)、Vは回転速度(m/s)、Vcは臨界速度(m/s)である。
【0077】
(臨界回転数)
なお、臨界速度における回転筒10の回転数を「臨界回転数」といい、下記式9により求めることができる。
Nc=Vc・60/(πD)=2.21D
1/2・60/(πD)=42.2/D
1/2
Nc=42.2/D
1/2 ・・・式9
ここに、Ncは臨界回転数(r.p.m.)、Vcは臨界速度(m/s)、Dは回転筒10の内径(m)である。
【0078】
(スケールアップ)
回転筒10の内径D(m)をX軸に、回転数N(r.p.m.)をY軸にとり、臨界速度比α(%)の変化を
図14に示した。P1は従来の回転筒の回転数であり、P2は本発明の回転筒の回転数である。
図14によれば、本発明の運転条件(臨界速度比α=30〜100%未満)が、従来例と異なることが一目で判明する。
【0079】
(実験例1)
内径が異なる3台の横型回転式乾燥機を用いて、臨界速度比α(%)と乾燥速度Rdの関係について実験を行った。各STDの回転筒10の直径は、320mm、900mm、1830mmである。また、各回転筒10内に配置する加熱管11の隙間Kは100mmである。
各STDに石炭(被処理物W)をバッチ式で投入した。その投入量は、直径320mmのSTDには4kg、直径900mmのSTDには50kg、直径1830mmのSTDには250kgである。また、この石炭の中位径は2.2mmである。なお、回転筒10内に設置された加熱管11の中に流すスチームの圧力は、それぞれ0.6MPa(ゲージ圧)とした。
【0080】
図15に、STDの回転筒10の直径が320mmの場合における臨界速度比と乾燥速度の関係を示したグラフを示す。この
図15の乾燥速度の値は、相対数値である。詳しくは、STDの回転筒10の直径が320mmであって、かつ臨界速度比が20%のときの乾燥速度の値を1と定め、その値を基準にした相対数値で表している。
【0081】
また、臨界速度比と回転筒10の直径を任意に変えながら回転筒10を運転し、回転筒10内部の被処理物Wの分散状態を写真に撮り、それをトレースした図を
図16に示す。すなわち、各横型回転式乾燥機は被乾燥物の挙動を目視できるように、横断面に透明板を設け、この透明板を通して内部の被処理物Wの分散状態を写真に撮像し、それをトレースしたものである。なお、
図16における回転筒10の回転方向は、
図5と同様に反時計回りである。
【0082】
臨界速度比を20%にして運転した時には、被乾燥物Wが、回転筒10の右側の領域でキルンアクションしているが、回転筒10の内壁に塊状に残存し、移動量も少なく、被処理物Wはあまり分散していない。これは、回転筒10の伝熱面と被乾燥物W(石炭)が十分に接触していないことを示している。
【0083】
一方、臨界速度比を50%にして運転した時に、回転筒10の内部を確認したところ、回転筒10の広い範囲で被処理物Wが分散していることが分かった。また、臨界速度比を70%に上げて運転し、回転筒10内を確認したところ、被処理物Wがさらに広い範囲に分散していた。
【0084】
また、臨界速度比を100%にして運転した時に、回転筒10の内部を確認したところ、途中から落下する被処理物Wも若干あったが、ほとんどの被処理物Wが共廻りしており、伝熱面と被処理物Wが接触せずに熱の授受が行われていないことが分かった。
なお、
図16で回転筒10内に記載した矢印は、被処理物Wが落下する方向を表している。
【0085】
実際に、
図17に示すように、臨界速度比の上昇に伴って乾燥速度が高まることを確認した。また、回転筒10の直径が変わっても、臨界速度比に対する乾燥速度の上昇傾向に変りはない。なお、
図17の乾燥速度の値は、相対数値である。詳しくは、STDの回転筒10の直径が320mmであって、かつ臨界速度比が20%のときの乾燥速度の値を1と定め、その値を基準にした相対数値で表している。
【0086】
(充填率)
本発明は、回転筒10を高速回転させる場合に、被処理物Wの充填率を20〜40%にすることが好ましい。好ましくは、充填率を25〜30%にすることが好ましい。
なお、前記充填率は、以下の式3によって求めることができる。
η=Ap/Af・100 ・・・式3
ここに、ηは充填率(%)、Apは自由断面積に対して被処理物の占める断面積(m
2)、Afは回転筒の全断面積から全加熱管の断面積を減算した自由断面積(m
2)である。
【0087】
(実験例2)
直径450mmのSTDに石炭(被処理物W)を200kg/h投入して実験を行った。回転筒10に配置する加熱管11の隙間Kは100mmである。また、この石炭の中位径は2.2mmである。なお、回転筒10内に設置された加熱管11の中に流すスチームの圧力は、0.6MPa(ゲージ圧)とした。
【0088】
図18に、充填率を変えた場合の臨界速度比と乾燥速度のグラフを示す。この
図18の乾燥速度の値は、相対数値である。詳しくは、充填率が15%であって、かつ臨界速度比が20%のときの乾燥速度の値を1と定め、その値を基準にした相対数値で表している。被処理物Wの充填率を15%にして運転したときは、被処理物Wと加熱管11の接触面積が狭いため、乾燥速度が上がらなかった。一方、被処理物Wの充填率を25%にして運転したとき、被処理物Wと加熱管11の接触面積が増え、乾燥速度が上昇した。さらに、被処理物Wの充填率を35%にして運転したとき、粉体層(粉体の被処理物Wの層)の上層で上滑りが発生し、伝熱面と接触しない被処理物Wが増えた。その結果、充填率25%で運転したときよりも、乾燥速度が上がらなかった。しかし、充填率15%で運転したときよりは、乾燥速度が速かった。なお、いずれの充填率においても、臨界速度比が高くなるにつれて、乾燥速度が上昇した。
【0089】
以上の実験により、被処理物Wの乾燥速度が顕著に上昇する充填率20〜40%を採用することが好ましいことと分かった。
【0090】
(加熱管11の隙間)
図19に加熱管11の隙間Kを示す。この例においては、隙間Kは4つの同心円列ですべて同一の例が示されている。このために、加熱管11の径を外側ほど大きくしてある。隣接する加熱管11の間(隙間)Kの距離は80〜150mmにすることが好ましい。もちろん、加熱管11の径は同一径とする、隙間Kはたとえば外側ほど大きくするなど、適宜の変形が可能である。また、後述する第1の配置形態又は第2の配置形態を採ることもできる。
【0091】
(実験例3)
直径1830mmのSTDに、バッチ方式で石炭(被処理物W)250kgを投入して実験を行った。この石炭の中位径は2.2mmである。なお、回転筒10内に設置された加熱管11の中に流すスチームの圧力は、0.6MPa(ゲージ圧)とした。
【0092】
図20に、臨界速度比と乾燥速度のグラフを示す。この
図20の乾燥速度の値は、相対数値である。詳しくは、加熱管11の隙間Kが50mmであって、かつ臨界速度比が20%のときの乾燥速度の値を1と定め、その値を基準にした相対数値で表している。
【0093】
また、
図20のグラフを作成した際の加熱管11の配置は、
図19と同様にした。すなわち、回転筒の中心から外側へ向かって放射線状に加熱管11を配置し、加熱管11の径を内側から外側へ向かって次第に大きくした。それにより、第1列目〜第n列目にある加熱管11の隙間Kを全て同じにした。例えば、加熱管11の隙間Kが50mmの場合は、第1列目〜第n列目にある加熱管11の隙間Kがすべて50mmである。なお、この加熱管11の配置については、下記
図21においても同様である。
【0094】
加熱管11の隙間Kを50mmにして運転したところ、隙間Kを流れる被処理物Wの量が少なく、被処理物Wがあまり混合せず、乾燥速度が遅かった。その後、加熱管11の隙間Kを80mm、100mm、150mmと長くするにつれて、乾燥速度が次第に早くなった。これは隙間Kを流れる被処理物Wの量が次第に多くなり、被処理物Wが良く混合することが一因と推測される。一方、加熱管11の隙間Kを200mmにして運転したところ、隙間を流れる被処理物Wの量が多くなった。しかし、隙間Kの長さが150mmの場合と比べて、被処理物Wと加熱管11の接触面積はあまり変わらなかった。その結果、乾燥速度も150mmの時とそれほど変わらなかった。なお、いずれの充填率においても、臨界速度比が高くなるにつれて、乾燥速度が上昇した。
【0095】
以上の実験により、隣接する加熱管11の間(隙間)の距離を80〜150mmにすることが好ましいことと分かった。
【0096】
(実験例4(樹脂系物質))
直径1830mmのSTDに樹脂系物質をバッチ式で投入した。その投入量は、250kgである。また、この樹脂系物質の中位径は0.1mmである。また、回転筒内の加熱管11の中に流すスチームの圧力は、0.45MPa(ゲージ圧)とした。
【0097】
図21に、樹脂系物質を被処理物Wに用いて、加熱管11の隙間Kの長さを変えた場合の臨界速度比と乾燥速度の関係を示したグラフを示す。この
図21の乾燥速度の値は、相対数値である。詳しくは、加熱管11の隙間Kが50mmであって、かつ臨界速度比が20%のときの乾燥速度の値を1と定め、その値を基準にした相対数値で表している。
【0098】
図21のとおり、臨界速度比αが50%前後のときに、乾燥速度のピークが現れる山型となっている。したがって、臨界速度比αが30〜70%であるのが好ましいことが分かる。また、加熱管11の隙間Kを50mm、80mm、100mmと次第に広くすると、乾燥速度も次第に速くなっている。
【0099】
以上の結果からも予測できるように、最適な臨界速度比は、被処理物の種類、含水率、乾燥機のサイズなどによって相違するが、臨界速度比は40〜90%を採用することが好ましい。
【0100】
(外径と内径の関係性)
前記の各説明や各式においては、回転筒10の内径Dを用いており、外径は用いなかった。しかし、前記各式を補正して、外径を用いても良い。この点について、以下に詳述する。
【0101】
前記各式において、Dは内径であるが、内径の代わりとして外径を用いるための補正式を記述する。回転筒10の外径をDo、回転筒10の板厚(肉厚)をt、内径をDとすると、これらの関係は、下記式10のようになる。
D=Do−(2×t) ・・・式10
【0102】
従って、前記各式のDに、式10の右辺を代入すれば良い。例えば、臨界速度比の式は以下のように記述できる。
Vc=2.21D
1/2 ・・・式1
Vc=2.21×(Do−2×t)
1/2
【0103】
なお、参考として、STDなどの回転筒10の肉厚tの一般的な数値を示す。回転筒10が大径化するほど、これの強度を保持するために肉厚tは増す傾向があり、実際としては概ね以下の数値で設計されている。回転筒10の内径Dが0.3〜6mの場合で、肉厚tが3〜100mmとなる。
【0104】
<加熱管について>
本発明において加熱管11にサイズ及び配置は適宜選択できるものの、本発明者らの高速回転化を指向する過程の中で、主に接触効率を高め、もって乾燥速度を高めるためには、次述する手段が有効であるとの知見を得た。
【0105】
(加熱管の配置)
従来は、
図29に示すように、回転筒10内に加熱管11を放射状に配置していた。回転筒10内では、被処理物W(粉粒体)が回転筒10下部に移行した複数の加熱管11の隙間に入り込み、回転筒10の回転に伴って、複数の加熱管11により回転方向に掻き上げられる。安息角まで掻き上げられた被処理物Wは、主に安息角を越えた時点から崩落し始め、落下運動に転じる。より詳しくは、安息角限を超えて、より上方に位置する複数の加熱管11の間から雪崩のように落下し、回転筒10下部に位置する加熱管11に衝突する。
【0106】
落下した被処理物Wは、回転筒10下部の複数の加熱管11、11の隙間に再び入り込む。被処理物Wが落下する角度と加熱管11、11の隙間に入り込む角度が異なるため、加熱管11、11の隙間に被処理物Wが速やかに入り込まず、加熱管11、11の外側(回転筒10の中心側)に滞留してしまい、被処理物Wと加熱管11の接触効率が悪いことが判明した。接触効率が悪いと、被処理物の乾燥速度が低下するという問題があった。
【0107】
また、被処理物Wが落下する方向と複数の加熱管11、11の間に入り込む方向が異なるため、落下した被処理物Wは最内列(回転筒10の最も中心側の列)の加熱管11、11に衝突して、運動エネルギーが一旦、ゼロになってしまう(リセットされてしまう)という問題があった。
【0108】
本発明は、前記問題を解決するために加熱管の配置を改良した。
すなわち、一端側に被処理物Wの供給口を、他端側に被処理物Wの排出口を有し、軸心周りに回転自在な回転筒10と、加熱媒体が通る多数の加熱管11、11…を前記回転筒10内に設け、被処理物Wを前記回転筒10の一端側に供給して他端側から排出する過程で、前記加熱管11、11…により被処理物Wを加熱して乾燥させる横型回転式乾燥機において、加熱管11、11…の配置は、次の配置形態が望ましいのである。
前記加熱管11、11…群が、前記回転筒10の中心を中心とする実質的に同心円状に配置され、その中心側円上の第1基準加熱管S1芯から、第2基準加熱管S2芯までを繋ぐ繋ぎ線が、次記(1)または(2)の配置形態の一つ又はこれらを組み合わせた配置形態から選択されるものである。
【0109】
<
図24参照:斜め直線状形態>
(1)各加熱管11、11…芯が、第1基準加熱管S1芯と第2基準加熱管S2芯とを直接繋ぐ直線L1上に位置しており、さらに、第1基準加熱管S1芯を通る半径放射線J1に対して、前記第2基準加熱管S2芯が、回転筒10の回転方向後方に位置している第1配置形態。
【0110】
<
図22参照:曲線状形態>
(2)各加熱管11、11…芯が、第1基準加熱管S1芯と第2基準加熱管S2芯とを繋ぐ曲線L2上に位置しており、かつ、第2基準加熱管S2芯に向かうほど回転筒10の回転方向後方に位置しており、さらに、第1基準加熱管S1芯を通る半径放射線J1に対して、第2基準加熱管S2芯が、回転筒10の回転方向後方に位置している第2配置形態。
【0111】
すなわち、
図22及び
図24に示すように、加熱管11、11…は、回転筒10の中心Fを中心にして同心円状に配置され、中心側円上の第1基準加熱管S1の同心円r1、第2基準加熱管S2の同心円r2、回転筒10の最も外側に位置する最外加熱管11の同心円r3を含めた各同心円上に配置されている。
【0112】
第1基準加熱管S1芯(
図22及び
図24参照)は、回転筒10の最も中心側に位置する加熱管11群の列(「列1」:
図23参照。)の中から任意に選んだ加熱管11の芯(加熱管の中心)である。
【0113】
また、第2基準加熱管S2芯は、複数加熱管の「列」において(
図23参照)、回転筒10の最も中心側に位置する加熱管11(第1基準加熱管S1)から、同一の「行」に沿って外側へ向かって数えて、所望の列数の加熱管S2の芯(加熱管の中心)を指称する。
【0114】
第2基準加熱管S2芯の位置は、被処理物の流動挙動(この流動挙動は、被処理物の物性(形状、大きさ、粘性、材料種など)に由来する要因と、乾燥機の運転条件に由来する要因などに左右される)に応じて適宜選択できる。
【0115】
このとき、配置比ε=h2(第2基準加熱管S2の同心円r2−第1基準(最内)加熱管S1の同心円r1)/h1(回転筒内面−第1基準(最内)加熱管S1の同心円r1)を、1/2超とするのが望ましい。
【0116】
また、本発明においては、少なくとも、第1基準加熱管S1から第2基準加熱管S2までの区間については、前述の第1配置形態か第2配置形態の加熱管配置とするのが望ましい。
【0117】
さらに、本発明においては、第2基準加熱管S2芯の位置が、最外加熱管11の同心円r3上にある場合も含むものである。
【0118】
このように、第1配置形態又は第2配置形態を採る領域は、適宜選択でき、
図24に示す例では、加熱管11の列数が全7列であり、第2基準加熱管S2の芯が4列目にある例を示した。
【0119】
図24の例は第1の配置形態の例であり、
図22及び
図23の例は第2の配置形態である。
【0120】
図24の例は、全7列のすべてが第1の配置形態である。すなわち、第1基準加熱管S1芯と第2基準加熱管S2芯とを直接繋ぐ直線L1上に位置しており、さらに、第1基準加熱管S1芯を通る半径放射線J1に対して、第2基準加熱管S2芯が、回転筒10の回転方向後方に位置している。
【0121】
図22及び
図23の例では、全9列のすべてが第2の配置形態である。すなわち、各加熱管11,11…の芯が、第1基準加熱管S1芯と第2基準加熱管S2芯とを繋ぐ曲線L2上に位置しており、かつ、第2基準加熱管S2芯に向かうほど回転筒の回転方向後方に位置しており、さらに、第1基準加熱管S1芯を通る半径放射線J1に対して、第2基準加熱管S2芯が、回転筒10の回転方向後方に位置している。
【0122】
なお、
図22及び
図24において、回転筒10の中心点Fを始点として、第1基準加熱管S1芯を通る線を半径放射線J1として、第2基準加熱管S2芯を通る線を半径放射線J2として、それぞれ示した。前記h1及びh2の各距離は、半径放射線J2上の距離から求めると良い。
【0123】
(加熱管の他の曲線状または直線状配置)
そのほか、本発明の別の好適な形態の下では、回転筒10の回転軸の同心円上において、中心側から外側に位置するに従って、隣り合う加熱管11の隙間を大きくした配置とすることもできる。
図22〜
図24は、中心側から外側へ向かうに従って、隣り合う加熱管11の隙間を次第に大きくする配置とした例である。
【0124】
また、第1基準加熱管S1芯と、第2基準加熱管S2芯とを繋ぐ曲線L2としては、サイクロイド(粒子が最速で降下する場合に描く線)、コルニュの螺旋(滑らかに降下する場合に描く線)若しくは対数曲線、円弧線またはそれらの線と近似する線などとすることができる。
【0125】
図28には、加熱管11、11…の内側を第2配置形態に従う曲線状に配置し、外側部分については半径方向(放射方向)に沿う形態の例を示した。
【0126】
図25には、加熱管11、11…の内側を第2配置形態に従う曲線状に配置し、外側部分については半径方向(放射方向)に沿う形態の例を示した。
【0127】
図27には、加熱管11,11…を第1配置形態に従う斜め直線状に配置し、外側部分については、中間の同心円上から最も外側の同心円にかけて、斜め直線状の加熱管の行を介装した例を示している。
【0128】
他方、これらの例から推測できるように、図面に具体例を示さないが、第1配置形態と第2配置形態とを組み合せて配置することも可能である。
【0129】
全列について、第1配置形態や第2配置形態を採用しないで、それらの配置形態を途中まで採用する場合も、前述のように、配置比ε=h2(第2基準加熱管S2の同心円r2−第1基準(最内)加熱管S1の同心円r1)/h1(回転筒内面−第1基準(最内)加熱管S1の同心円r1)を、1/2超とするのが望ましい。
【0130】
(作用効果)
前記のように加熱管11を曲線状または斜め直線状に配置することで、被処理物Wが落下する方向と被処理物Wが複数の加熱管11の間に入り込む方向が近似し、落下した被処理物Wはその運動方向を大きく変えずに複数の加熱管11、11の隙間に入り込む。加熱管11、11の隙間に入り込んだ被処理物Wは、回転筒10の内側から外側へと流れ、回転筒10の筒壁に到達する。加熱管11の配置を選定することで、加熱管11の隙間に被処理物Wが速やかに入り込み、加熱管11の外側(回転筒10の中心側)に滞留せず、被処理物Wと加熱管11の接触が良くなるため、乾燥効率を向上させることができる。また、被処理物Wと加熱管11の接触面積が増大し、両者の接触時間も増えるため、この点からも乾燥効率を向上させることができる。
【0131】
また、被処理物Wが加熱管11、11の隙間に滑らかに入り込むため、被処理物Wから加熱管11が受ける衝撃が小さくなる。そのため、従来のように加熱管11を配置した場合と比べて、加熱管11の直径を小さくすることができ、加熱管11の本数を増やすことができる。その結果、全体として加熱管11の伝熱面積が増え、乾燥効率を向上させることができる。
【0132】
そのほか、従来の装置では、落下する被処理物Wと加熱管11とが衝突することにより、被処理物W(粉粒体)の破砕が生じていたが、前述の好適な形態によれば、破砕を防ぐ又は抑制できる。その結果、最終製品(乾燥製品)の粒度分布が安定するとともに、微粉が減少して排気処理設備の負荷を下げることもできる。
【0133】
なお、各加熱管11、11…の直径や肉厚は適宜選択できる。
【0134】
(加熱管11の本数)
同心円上にある加熱管11の本数を全て同じにしても良いが、加熱管11を直線状に設けた場合には、
図27に示すように、回転筒10の最外周から中間付近までの加熱管11の本数を、回転筒10の中間付近から最内周までの加熱管11の本数より多くした方が良い。このように、中間付近から最外周までの加熱管11の本数を増やすことで、隣り合う加熱管11、11の間の距離を最内周から最外周までほぼ同じにすることができる。そして、加熱管11の本数を増やすことで、加熱管11の伝熱面積が増え、回転筒10の外周側へ移動した被処理物Wの乾燥効率を向上させることができる。
【0135】
(加熱管11の直径)
加熱管11の直径を全て同じにしても良いが、
図23に示すように、回転筒10の内周側から外周側へ向かうに連れて、次第に直径を大きくすることもできる。このように、加熱管11の直径を変えることで、隣り合う加熱管11の間の距離を内周から外周までほぼ同じにすることができる。このように加熱管11の直径を大きくすることで、加熱管11の伝熱面積が増え、回転筒10の外周側へ移動した被処理物Wの乾燥効率を向上させることができる。
【0136】
(加熱管11の配列の決め方)
加熱管11の配列の決定方法について、
図23を参照しながら説明する。なお、加熱管11の配列を「行列」で表し、回転筒10の径方向(回転筒10の中心側から外側へ向かう方向)の配列を「列」とし、円周方向の配列を「行」とする。
【0137】
隣接する行間の距離(例えば、行1と行2の間の距離)及び隣接する列間の距離(例えば、列1と列2の間の距離)を変えることにより、被処理物Wの分散性や流動性を変えることができる。
【0138】
例えば、
図23のハッチングを施した加熱管11(以下、「基準加熱管11」という。)を基準にして考えると、行間距離として、(1)の加熱管11と基準加熱管11の距離、(5)の加熱管11と基準加熱管11の距離のほか、(2)の加熱管11と基準加熱管11の距離、(8)の加熱管11と基準加熱管11の距離、(4)の加熱管11と基準加熱管11の距離、(6)の加熱管11と基準加熱管11の距離が考えられ、これらが前記一定値以上になるようにする。また、列間距離として、(3)の加熱管11と基準加熱管11の距離、(7)の加熱管11と基準加熱管11の距離が考えられ、これらも前記一定値以上になるようにする。なお、隣接する加熱管11の距離は80〜150mmにすることが好ましい。
【0139】
以上のように、行間距離及び列間距離が、加熱管11の配列を決定する際の拘束条件となる。この拘束条件に従いつつ、出来る限り伝熱面積が広くなり、かつ流動性が良くなるように、加熱管11の径、行数及び列数を変えて様々なバリエーションを試し、最も伝熱面積が広くなり、かつ流動性が良くなる配列を採用し、製品を設計する。なお、実際に加熱管11の配列を検討した結果、行の曲率を次第に大きくした場合は、加熱管11の径を次第に小さくし、列数を次第に多くすることで、伝熱面積を最も広くすることができた。逆に、行の曲率を次第に小さくした場合は、加熱管11の径を次第に大きくし、列数を次第に少なくすることで、伝熱面積を最も広くすることができた。
【課題】乾燥機の乾燥能力を向上させて、被処理物の大量処理を容易にするとともに、小型化を可能にする被処理物の乾燥方法、横型回転式乾燥機、および被処理物の乾燥速度評価方法を提供すること。
【解決手段】横型回転式乾燥機を用いて、被処理物を乾燥させる方法であって、式1、式2で定められる臨界速度比αが30〜100%未満となるように、回転筒を回転して、被処理物を乾燥させる。