(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の技術的思想及び範囲を逸脱しない範囲内で本発明の様々な変更及び変形が可能であるということは当業者にとって自明である。したがって、本発明は、特許請求の範囲に記載された発明、及びその均等物の範囲内に含まれる変形を全て含む。
【0014】
本明細書において、“縮合芳香族化合物(fused aromatic compound)”は、縮合多環芳香族化合物(fused polycyclic aromatic compound)及び縮合複素多環芳香族化合物(fused heteropolycyclic aromatic compound)を含むものと理解しなければならない。縮合多環芳香族化合物は、縮合された環が炭素原子のみで構成された縮合芳香族化合物のことをいい、縮合複素多環芳香族化合物は、縮合された環を構成する炭素原子のうち少なくとも一つが異なる原子で置換された縮合芳香族化合物のことをいう。
【0015】
以下、本発明の一実施例に係るアラミド用組成物、及びそれを用いて製造されたアラミド製品について詳細に説明する。
【0016】
本発明のアラミド用組成物は芳香族ポリアミドを含む。前記芳香族ポリアミドは、次のような工程を通じて製造することができる。
【0017】
まず、有機溶媒に無機塩を添加して、重合溶媒を製造する。
【0018】
次に、前記製造された重合溶媒に芳香族ジアミンを溶解させて、混合溶液を製造する。前記芳香族ジアミンは、置換基がない芳香族ジアミンまたは置換基がある芳香族ジアミンであってもよい。
【0019】
前記置換基がない芳香族ジアミンは、パラ−フェニレンジアミン、4,4’−ジアミノビフェニル、2,6−ナフタレンジアミン、1,5−ナフタレンジアミン、または4,4’−ジアミノベンズアニリドなどを例に挙げることができる。置換基がある芳香族ジアミンにおいて、前記置換基は、CN、Cl、Br、I、NO
2、及び/または1〜10の炭素数を有するアルキル基またはアルコキシ基であってもよい。
【0020】
次に、前記混合溶液に芳香族ジアシドハライドを添加して、予備重合体を製造する。すなわち、前記芳香族ジアミンが混合された混合溶液を撹拌しながら、芳香族ジアシドハライドを所定量添加して反応させて、予備重合体を製造することができる。
【0021】
一方、予備重合体の製造工程で用いられる芳香族ジアシドハライドは、芳香族ポリアミド重合体の製造に必要な芳香族ジアシドハライドの全体量において、20〜50モル%のみを予備重合工程中に添加することが好ましい。
【0022】
前記芳香族ジアシドハライドは、置換基がある芳香族ジアシドハライドまたは置換基がない芳香族ジアシドハライドであってもよい。
【0023】
前記置換基がない芳香族ジアシドハライドは、テレフタロイルジクロライド、4,4’−ベンゾイルジクロライド、2,6−ナフタレンジカルボン酸ジクロライド、または1,5−ナフタレンジカルボン酸ジクロライドなどであってもよい。
【0024】
次に、0〜30℃の温度条件下で、予備重合体に芳香族ジアシドハライドをさらに添加することによって、芳香族ポリアミドが得られる。
【0025】
重合工程により得られる芳香族ポリアミドは、例えば、ポリパラフェニレンテレフタルアミド(PPDT)、ポリ(4,4’−ベンズアニリドテレフタルアミド)、ポリ(パラフェニレン−4,4’−ビフェニレン−ジカルボン酸アミド)、またはポリ(パラフェニレン−2,6−ナフタレンジカルボン酸アミド)であってもよい。
【0026】
次に、重合反応中に生成された酸をアルカリ化合物を用いて中和させた後、抽出、洗浄、粉砕及び乾燥工程を通じて最終的に芳香族ポリアミドを完成する。このように製造された芳香族ポリアミドは、剛直な分子構造からなることによって、高強度及び高耐熱性を有するようになる。
【0027】
本発明のアラミド用組成物は、上記のように製造された芳香族ポリアミド以外に、前記芳香族ポリアミドと相互作用を良くすることができる縮合芳香族化合物をさらに含む。
【0028】
縮合芳香族化合物は、多数の芳香族環を有するので、前記芳香族ポリアミドを構成する芳香族環と容易に相互作用をすることができる。すなわち、前記縮合芳香族化合物の芳香族環と前記芳香族ポリアミドの芳香族環は類似の構造を有するので、π−π相互作用が容易に起こり得るようになる。π−π相互作用による結合力自体は弱いが、前記π−π相互作用が増大する場合、結合力が大きくなる。
【0029】
このように、π−π相互作用を良くすることができる縮合芳香族化合物が含まれたアラミド製品は、π−π相互作用によって非結晶領域の欠陥が減少するので、物性が大きく向上することができる。
【0030】
十分なπ−π相互作用を担保するために、縮合芳香族化合物の含量は、前記芳香族ポリアミド100重量部に対して0.01重量部以上でなければならない。
【0031】
一方、本発明によれば、前記縮合芳香族化合物の含量は、前記芳香族ポリアミド100重量部に対して10重量部以下であることが望ましい。縮合芳香族化合物が10重量部を超える場合には、縮合芳香族化合物の相分離によってアラミド製品の強度がむしろ低下するためである。
【0032】
前記縮合芳香族化合物は、2〜10個の芳香族環を有することができる。もし、前記縮合芳香族化合物が2個未満の芳香族環を有する場合、前記芳香族ポリアミドと相互作用が弱くなることがある。反面、前記縮合芳香族化合物が10個を超える芳香族環を有する場合、前記縮合芳香族化合物同士間に自体的に相互作用をするため、前記芳香族ポリアミドと相互作用が弱くなることがあり、前記縮合芳香族化合物が芳香族ポリアミドの非結晶領域に均一に分散されないため、欠陥の画期的な減少を期待できなくなる。
【0033】
本発明の縮合芳香族化合物は、縮合多環芳香族化合物(fused polycyclic aromatic compound)及び縮合複素多環芳香族化合物(fused heteropolycyclic aromatic compound)のうち少なくとも一つである。
【0034】
前記縮合多環芳香族化合物は、ナフタレン(naphthalene)、アントラセン(anthracene)、フェナントレン(Phenanthrene)、及びこれらの誘導体のうち少なくとも一つであってもよく、前記縮合複素多環芳香族化合物は、キノリン(quinoline)、イソキノリン(isoquinoline)、インドール(indole)、プリン(purine)、ポルフィリン(porphyrin)、及びこれらの誘導体のうち少なくとも一つであってもよい。
【0035】
本発明の縮合芳香族化合物は、前記芳香族ポリアミドと水素結合をすることができる官能基を含むことができる。すなわち、本発明の縮合芳香族化合物は、芳香族ポリアミドのアミド結合を構成する酸素及び窒素と水素結合をすることができる官能基を有することができる。水素結合による結合力自体はあまり大きくないが、このような水素結合が多くなる場合、相互作用が大きくなる。
【0036】
芳香族ポリアミドと水素結合をすることができる縮合芳香族化合物を含む本発明のアラミド製品は、水素結合を通じて芳香族ポリアミドと縮合芳香族化合物との間に優れた相互作用がなされるので、非結晶領域の欠陥が減少することによって引張強度のような物性が大きく向上することができる。
【0037】
前記官能基は、−COOH、−NH
2、−OH、−SO
3H、−SO
2NH
2、−CONH
2、−SH、及び‘−O−、−NH−、または−S−を含む芳香族または脂肪族誘導体’からなる群より選択することができる。このような官能基を含む縮合芳香族化合物は、前記芳香族ポリアミドと水素結合またはイオン結合をすることによって、アラミド製品の非結晶領域の欠陥を大きく減少させることができる。
【0038】
本発明の一実施例によれば、前記縮合芳香族化合物は、下記化学式で表されるジオキソアントラセン(dioxoanthracene)誘導体を含むことができる。
【0040】
前記R
1乃至R
8のそれぞれは、互いに独立に、水素原子、置換または無置換のアルキル基(alkyl group)、置換または無置換のアリール基(aryl group)、置換または無置換の複素環基(heterocyclic group)、または前記芳香族ポリアミドと水素結合をすることができる官能基であってもよい。
【0041】
好ましくは、前記R
1乃至R
8のうち少なくとも一つは、芳香族ポリアミドと水素結合をすることができる官能基であり、前記官能基は、−COOH、−NH
2、−OH、−SO
3H、−SO
2NH
2、−CONH
2、−SH、及び‘−O−、−NH−、または−S−を含む芳香族または脂肪族誘導体’からなる群より選択することができる。
【0042】
このようなジオキソアントラセン誘導体は、3個の縮合された環のみを有しているので、自体的に相互作用することよりも、芳香族ポリアミドと相互作用を良くすることができ、アラミド製品の非結晶領域に容易に浸透できるようになる。また、前記ジオキソアントラセン誘導体は、芳香族ポリアミドと十分なπ−π相互作用をすることができるので、アラミド製品の非結晶領域での欠陥を減少させるようになる。
【0043】
一方、前記ジオキソアントラセン誘導体は、芳香族ポリアミドと水素結合をすることができる官能基1〜8個を含むことによって、前記芳香族ポリアミドと十分な水素結合をすることができるので、芳香族ポリアミドと大きな相互作用をすることができ、これによって、アラミド製品の非結晶領域の欠陥を減少させることができる。
【0044】
本発明のアラミド用組成物を用いてアラミド製品を製造するために、前記アラミド用組成物が溶媒に溶解する必要がある。前記溶媒は、前記芳香族ポリアミドと前記縮合芳香族化合物を全て溶解させることができなければならない。
【0045】
前記芳香族ポリアミドがパラ構造を有する場合、95%以上の濃硫酸を溶媒として使用することができる。すなわち、剛直な芳香族構造を有する芳香族ポリアミドは、N−メチル−2−ピロリデンのような通常の有機溶媒によく溶けないため、濃硫酸やクロロ硫酸またはフルオロ硫酸のような溶媒を使用しなければならない。
【0046】
反面、前記芳香族ポリアミドがメタ構造を有したり、柔軟な単位体を含む共重合物である場合、通常の有機溶媒を使用することができる。このような有機溶媒として、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)、N,N’−ジメチルアセトアミド(DMAc)、ヘキサメチルリン酸アミド(HMPA)、N,N,N’,N’−テトラメチルウレア(TMU)、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、またはこれらの混合物を使用することができる。
【0047】
縮合芳香族化合物と芳香族ポリアミドが溶媒に均一に溶解するので、この溶液から製造されたアラミド製品は、芳香族ポリアミドに均一に分散された縮合芳香族化合物を有するようになる。その結果、芳香族ポリアミドと縮合芳香族化合物が優れた相互作用をするようになり、引張強度のようなアラミド製品の物性が大きく向上する。
【0048】
次に、本発明の実施例に係るアラミド製品について詳細に説明する。
【0049】
本発明のアラミド製品は、上述したアラミド用組成物を用いて製造される。すなわち、上述したアラミド用組成物を適切な溶媒に溶解させることによって得られた溶液を、モールド、紡糸口金、押出機、または引取機のような成形装置を用いて所定の形状を有するように固化させることによって、アラミド製品が製造される。
【0050】
したがって、本発明のアラミド製品は、芳香族ポリアミドと、前記芳香族ポリアミドの間に分散された縮合芳香族化合物とを含む。
【0051】
前記芳香族ポリアミドは、パラタイプの芳香族ポリアミドであってもよい。パラタイプの芳香族ポリアミドは、直線形態で配列された芳香族環を有するので、前記縮合芳香族化合物と最大のπ−π相互作用をすることができ、芳香族環がアミド基を通じて互いに連結されているので、縮合芳香族化合物と水素結合をすることができる。したがって、芳香族ポリアミドとしてパラタイプを用いることによって、アラミド製品の物性をより向上させることができる。
【0052】
前記芳香族ポリアミドは、メタタイプの芳香族ポリアミドであってもよい。メタタイプの芳香族ポリアミドも、芳香族環を含み、前記芳香族環がアミド基を通じて連結されているので、縮合芳香族化合物と相互作用を良くすることができ、結果的にアラミド製品の物性を向上させることができる。
【0053】
本発明のアラミド製品は、芳香族ポリアミド及び縮合芳香族化合物が溶媒に均一に溶解することによって得られた溶液を用いて製造されるので、前記アラミド製品は、芳香族ポリアミドに均一に分散された縮合芳香族化合物を有するようになる。その結果、非結晶領域での欠陥がかなり減少し、アラミド製品は向上した物性を有することができる。
【0054】
本発明のアラミド製品は、適用される分野に応じて、フィルム状、板状、棒状、または球状を有することができるが、以下では、繊維状を有するアラミド製品、すなわち、アラミド繊維を例に挙げて本発明を具体的に説明する。
【0055】
本発明の一実施例に係るアラミド繊維は、次のような工程を通じて製造することができる。
【0056】
まず、本発明のアラミド用組成物を濃硫酸に溶解させることによって紡糸ドープを製造する。次いで、前記紡糸ドープを紡糸口金(spinneret)を用いて紡糸(spinning)する。紡糸口金から押出された(squeezed out)紡糸ドープは、エアーギャップ(air gap)及び凝固液(congealed liquid)を順次通過しながら凝固してフィラメント(filament)となる。
【0057】
前記凝固液を含んでいる凝固槽は、前記紡糸口金の下部に位置する。前記凝固槽の下部には凝固チューブが提供されており、フィラメントは前記凝固チューブを通過するようになる。
【0058】
次に、得られたフィラメントに残存する硫酸を除去する。紡糸ドープの製造に濃硫酸が用いられるので、上述した紡糸工程により製造されたフィラメントには硫酸が残存し得る。フィラメントに残存する硫酸は、水、または水とアルカリ溶液との混合溶液を用いた水洗工程を通じて除去することができる。
【0059】
次いで、乾燥工程を通じて前記フィラメントの水分含量を調節し、フィラメントの内部構造を安定化させるために熱処理工程を行う。
【0060】
次に、熱処理されたフィラメントをワインダに装着された紙管に巻き取ってアラミド繊維を完成する。
【0061】
本発明の一実施例に係るアラミド繊維は、芳香族ポリアミド及び縮合芳香族化合物を含み、前記縮合芳香族化合物の含量は、前記芳香族ポリアミド100重量部に対して0.01〜10重量部である。もし、前記縮合芳香族化合物の含量が0.01重量部未満の場合、アラミド繊維の非結晶領域に存在する欠陥を十分に減少させることができないため、引張強度の向上を期待できなくなる。反面、前記縮合芳香族化合物の含量が10重量部を超える場合、縮合芳香族化合物の含量が過度になることで、結晶領域が大きく減少するようになる。そのため、結晶領域の減少という否定的な効果が非結晶領域での欠陥減少という肯定的な効果をしのぐようになり、結果的にアラミド繊維の引張強度の減少をもたらすことになる。
【0062】
本発明のアラミド繊維に含まれた芳香族ポリアミドは、パラ芳香族ポリアミドであってもよい。この場合、アラミド繊維は、28〜35g/dの引張強度(従来のパラ芳香族ポリアミド繊維に比べて8%以上高い)及び3.5〜4.0%の伸度(従来のパラ芳香族ポリアミド繊維に比べて3%以上高い)を有するようになる。このように、優れた引張強度及び伸度を有する本発明のアラミド繊維は、防弾服、防弾ヘルメット、航空機などの様々な分野に用いることができる。
【実施例】
【0063】
以下、実施例及び比較例を通じて本発明を具体的に説明する。ただし、下記の実施例は本発明の理解を助けるためのものに過ぎず、これによって本発明の権利範囲が制限されてはならない。
【0064】
実施例1
N−メチル−2−ピロリドン(NMP)にCaCl
2を添加して重合溶媒を製造した後、パラフェニレンジアミンを前記重合溶媒に溶解させて、混合溶液を製造した。
【0065】
その後、前記混合溶液を撹拌しながら、前記混合溶液に前記パラフェニレンジアミンと同一のモルのテレフタロイルジクロライドを2回に分けて添加して、ポリ(パラフェニレンテレフタルアミド)重合体を生成させた。その後、前記重合体を含んだ重合溶液に水とNaOHを添加して酸を中和させた。その後、重合体を粉砕した後、水を用いて芳香族ポリアミド重合体に含有された重合溶媒を抽出し、脱水及び乾燥工程を通じて最終的に芳香族ポリアミドを得た。
【0066】
このように得られた芳香族ポリアミドにN−(4−アミノ−3−メトキシ−9,10−ジオキソアントラセン−1−イル)−4−メチルベンゼンスルホアミド(N−(4−amino−3−methoxy−9,10−dioxoanthracen−1−yl)−4−methylbenzenesulfoamide)を添加することによって、アラミド用組成物を製造した。前記N−(4−アミノ−3−メトキシ−9,10−ジオキソアントラセン−1−イル)−4−メチルベンゼンスルホアミドの含量は、前記芳香族ポリアミド対比1重量%であった。製造されたアラミド用組成物を99%の濃度の硫酸に溶解させて、20重量%の紡糸ドープを製造した。次いで、前記紡糸ドープを紡糸口金を通じて紡糸した後、エアーギャップを通過させ、硫酸水溶液が含まれている凝固槽及び前記凝固槽の下部の凝固チューブを通過させながら凝固させて、フィラメントを製造した。
【0067】
フィラメントを水洗して、残存する硫酸を除去し、フィラメントの水分率が5重量%となるようにフィラメントを乾燥ロールに巻いて乾燥させた。その後、前記乾燥したフィラメントをワインダの紙管に巻き取って最終的にアラミド繊維を製造した。
【0068】
実施例2
【0069】
前述した実施例1において、前記N−(4−アミノ−3−メトキシ−9,10−ジオキソアントラセン−1−イル)−4−メチルベンゼンスルホアミドの代わりに、9−ヒドロキシアントラセン(9−hydroxyanthracene)を使用することを除いては、実施例1と同様の方法によりアラミド繊維を製造した。
【0070】
実施例3
【0071】
前述した実施例1において、前記N−(4−アミノ−3−メトキシ−9,10−ジオキソアントラセン−1−イル)−4−メチルベンゼンスルホアミドの代わりに、2−ヒドロキシナフタレン(2−hydroxynaphthalene)を使用することを除いては、実施例1と同様の方法によりアラミド繊維を製造した。
【0072】
実施例4
【0073】
前述した実施例1において、前記N−(4−アミノ−3−メトキシ−9,10−ジオキソアントラセン−1−イル)−4−メチルベンゼンスルホアミドの代わりに、インドール(indole)を使用することを除いては、実施例1と同様の方法により芳香族ポリアミド繊維を製造した。
【0074】
実施例5
【0075】
前述した実施例1において、前記N−(4−アミノ−3−メトキシ−9,10−ジオキソアントラセン−1−イル)−4−メチルベンゼンスルホアミドの代わりに、2−アミノ−6−オキソプリン(2−amino−6−oxypurine)を使用することを除いては、実施例1と同様の方法によりアラミド繊維を製造した。
【0076】
実施例6及び7
【0077】
前述した実施例1において、前記N−(4−アミノ−3−メトキシ−9,10−ジオキソアントラセン−1−イル)−4−メチルベンゼンスルホアミドの含量を、前記芳香族ポリアミド対比それぞれ0.01重量%及び10重量%に変更したことを除いては、実施例1と同様の方法によりアラミド繊維を製造した。
【0078】
比較例1及び2
【0079】
前述した実施例1において、前記N−(4−アミノ−3−メトキシ−9,10−ジオキソアントラセン−1−イル)−4−メチルベンゼンスルホアミドの含量を、前記芳香族ポリアミド対比それぞれ0.005重量%及び15重量%に変更したことを除いては、実施例1と同様の方法によりアラミド繊維を製造した。
【0080】
比較例3
【0081】
前述した実施例1において、前記N−(4−アミノ−3−メトキシ−9,10−ジオキソアントラセン−1−イル)−4−メチルベンゼンスルホアミドを添加していない紡糸ドープを使用したことを除いては、実施例1と同様の方法によりアラミド繊維を製造した。
【0082】
比較例4
【0083】
前述した実施例1において、前記N−(4−アミノ−3−メトキシ−9,10−ジオキソアントラセン−1−イル)−4−メチルベンゼンスルホアミドの代わりに、重量平均分子量が50,000〜80,000であるポリビニルアルコールを使用したことを除いては、実施例1と同様の方法によりアラミド繊維を製造した。
【0084】
上述した実施例及び比較例に係るアラミド繊維の引張強度及び伸度は、次のような方法を通じて測定された。その測定結果を表1に示した。
【0085】
アラミド繊維の引張強度
【0086】
ASTM D885試験方法に準拠して、アラミド繊維の引張強度及び伸度を測定した。具体的には、インストロン試験機(Instron Engineering Corp、Canton、Mass)で長さが25cmであるアラミド繊維が破断されるまで引っ張って、アラミド繊維の引張強度及び伸度を求めた。このとき、引張速度は300
mm/分とし、初荷重は繊度×1/30gとした。前記引張強度及び伸度は5個のサンプルをテストした後、その平均値で求めた。
【0087】
【表1】
【0088】
上記表1のように、芳香族ポリアミドに縮合芳香族化合物が添加されることによって得られたアラミド用組成物を用いて製造されたアラミド繊維は、縮合芳香族化合物を含まない比較例3及び比較例4の繊維に比べて、さらに高い引張強度及び伸度を有することがわかる。
【0089】
ただし、実施例1、実施例6、実施例7、比較例1、及び比較例2を参照して、縮合芳香族化合物の含量による芳香族ポリアミド繊維の引張強度及び伸度を説明すると、縮合芳香族化合物の含量が増加するほどアラミド繊維の引張強度及び伸度が増加し、その縮合芳香族化合物の含量が一定量を超えると、アラミド繊維の引張強度及び伸度が再び減少することがわかる。すなわち、アラミド繊維が28g/d以上の引張強度及び3.5%以上の伸度を有するためには、縮合芳香族化合物の含量が芳香族ポリアミド対比0.01〜10重量%でなければならないことがわかる。言い換えると、縮合芳香族化合物の含量は、芳香族ポリアミド100重量部に対して0.01〜10重量部でなければならない。