特許第5778858号(P5778858)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5778858改善された明度を有するパルプ工場廃棄物由来の沈降炭酸カルシウム、この製造方法および使用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5778858
(24)【登録日】2015年7月17日
(45)【発行日】2015年9月16日
(54)【発明の名称】改善された明度を有するパルプ工場廃棄物由来の沈降炭酸カルシウム、この製造方法および使用
(51)【国際特許分類】
   C01F 11/18 20060101AFI20150827BHJP
   D21H 17/63 20060101ALI20150827BHJP
【FI】
   C01F11/18 D
   D21H17/63
【請求項の数】14
【全頁数】23
(21)【出願番号】特願2014-510729(P2014-510729)
(86)(22)【出願日】2012年5月8日
(65)【公表番号】特表2014-523839(P2014-523839A)
(43)【公表日】2014年9月18日
(86)【国際出願番号】EP2012058432
(87)【国際公開番号】WO2012156231
(87)【国際公開日】20121122
【審査請求日】2014年1月14日
(31)【優先権主張番号】11166216.9
(32)【優先日】2011年5月16日
(33)【優先権主張国】EP
(31)【優先権主張番号】61/490,128
(32)【優先日】2011年5月26日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】505018120
【氏名又は名称】オムヤ インターナショナル アーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】特許業務法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ポール,ミヒヤエル
(72)【発明者】
【氏名】シユメルツアー,トーマス
【審査官】 森坂 英昭
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2008/013180(WO,A1)
【文献】 特開2000−178024(JP,A)
【文献】 特開平06−041892(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01F 11/00 − 11/48
D21H 17/63
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
廃棄物から回収された二価金属イオンカーボネートからの沈降二価金属イオンカーボネート生成物の製造のための方法であって、前記沈降二価金属イオンカーボネート生成物が改善された明度を有するものであり、以下の工程:
(a)低純度の二価金属イオンカーボネート材料を準備する工程、前記二価金属イオンカーボネート材料は廃棄物から回収されたものである;
(b)二価金属イオン酸化物を得るために工程(a)の前記二価金属イオンカーボネート材料を焼成させる工程;
(c)二価金属イオン水酸化物の水性懸濁液を得るために工程(b)で得られた前記二価金属イオン酸化物を消化させる工程;
(d)沈降二価金属イオンカーボネート微粒子を得るために、二酸化炭素含有化合物を用いて、工程(c)で得られた前記二価金属イオン水酸化物の水性懸濁液を炭酸化する工程;
(e)離散型沈降二価金属イオンカーボネート微粒子を得るために、工程(d)で得られた前記沈降二価金属イオンカーボネート微粒子を後処理する工程;
(f)生成される反応混合物を得るために、工程(e)で得られた前記離散型沈降二価金属イオンカーボネート微粒子を、高純度の二価金属イオン酸化物を消化させることによって得られた二価金属イオン水酸化物の水性懸濁液と混合する工程;および
(g)工程(d)で得られた前記沈降二価金属イオンカーボネート粒子と比べて改善された明度を有する沈降二価金属イオンカーボネート生成物を得るために、工程(f)の得られた前記反応混合物を炭酸化する工程
を含む、方法。
【請求項2】
工程(g)で得られた沈降二価金属イオンカーボネート生成物の少なくとも一部を、少なくとも1回のさらなる炭酸化工程に供し、このとき、工程(g)で得られた沈降二価金属イオンカーボネート生成物の少なくとも一部を、まず、高純度の二価金属イオン酸化物を消化させることによって得られた二価金属イオン水酸化物の水性懸濁液と混合し、生成される反応混合物を得、次いで、得られた反応混合物を炭酸化に供することを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
工程(a)の低純度の二価金属イオンカーボネート材料が、式M2+CO2−を有する物質であり、式中、M2+は、Be2+、Mg2+、Ca2+、Sr2+およびBa2+を含む群より選択される二価金属イオンであることを特徴とする、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
工程(e)の後処理が、機械的デアグロメレーションによって、または工程(d)で得られた沈降二価金属イオンカーボネート微粒子の再結晶によって行われることを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
工程(e)で得られた離散型沈降二価金属イオンカーボネート微粒子が、>10から500nmの範囲の粒径、および5から>15mgの範囲の比表面積を有することを特徴とする、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
工程(g)で得られた沈降二価金属イオンカーボネート粒子が、ISO 2469に従って測定したとき、88から94%の範囲のISO明度R457を有することを特徴とする、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
工程(g)で得られた沈降二価金属イオンカーボネート粒子が、ISO 9277を用いてBET法に従って測定したとき、3から30m/gの範囲の比表面積を有することを特徴とする、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
工程(g)で得られた沈降二価金属イオンカーボネート粒子が、0.5から7μmの範囲の重量中央粒子直径d50を有することを特徴とする、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
工程(a)の低純度の二価金属イオンカーボネート材料が、炭酸カルシウム材料であり、工程(g)の沈降二価金属イオンカーボネート生成物が、沈降炭酸カルシウムであることを特徴とする、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
沈降炭酸カーボネートが、犬牙状沈降炭酸カルシウムであることを特徴とする、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
沈降二価金属イオンカーボネートを濃縮して、50%以上の固形分を有する沈降二価金属イオンカーボネートの水性スラリーを形成することを特徴とする、請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
沈降二価金属イオンカーボネートを乾燥させて、乾燥沈降二価金属イオンカーボネートを形成することを特徴とする、請求項1から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
コーティング配合物中の顔料としての、または製紙、プラスチックおよび塗料工業における充填剤としての、請求項1から11のいずれか一項に記載の方法により製造された沈降二価金属イオンカーボネート生成物を含んだ水性懸濁液または請求項12に記載の方法により製造された乾燥沈降二価金属イオンカーボネートの使用。
【請求項14】
塗料、ゴム、プラスチック、建築材料およびインクの分野における請求項12に記載の方法により製造された乾燥沈降二価金属イオンカーボネートの使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、廃石灰からの沈降炭酸カルシウム(PCC)の製造のための方法、この方法によって得られる沈降炭酸カルシウム種(PCC)の鉱物顔料、およびこのような鉱物顔料の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
炭酸カルシウムは、製紙業において紙の充填剤成分として広く使用されている。これは、用紙の明度と不透明度を増大させるために使用される低コストで高い明度の充填剤である。この使用は、ここ数十年間で、製紙工場において酸性抄紙からアルカリ抄紙への変換のため劇的に増大している。製紙業では、天然および合成のどちらの炭酸カルシウムも使用される。天然のカーボネート、例えば石灰石、大理石または白亜は、紙において使用する前に小粒径に磨砕するが、合成炭酸カルシウムは沈降反応によって製造し、従って沈降炭酸カルシウム(PCC)と称される。
【0003】
通常、PCCは、COを水酸化カルシウムの水性懸濁液、いわゆる石灰乳に導入することにより調製される。
【0004】
Ca(OH)+CO→CaCO+H
この方法は、卓越した不透明化特性を有するPCCが製造可能であることが示されている。PCCは、典型的には、磨砕炭酸カルシウム(いわゆるGCC)と比べて用紙の不透明化および増白において卓越している。ロゼット様凝集構造を有する犬牙状(scalenohedral)形態の沈降炭酸カルシウムは、高い用紙不透明度を付与することがわかっている。また、炭酸化過程は、紙用充填剤として、および紙用コーティングにおいてのどちらでも、種々の用途のための種々の粒子形状および粒径の製造の柔軟性が示されている。
【0005】
製紙工業における使用の他に、沈降炭酸カルシウムは、種々の他の目的にも、例えば、塗料工業において充填剤または顔料として、およびプラスチック材料、プラスチゾル、シーリング化合物、印刷用インク、ゴム、歯磨き粉、化粧品などの製造のための機能性充填剤として使用される。
【0006】
現在、エコロジーを考えて、加工に由来する未使用物質の回収、または生成物もしくは加工の使用済み物質の回収、および回収した物質の再利用が着目されている。
【0007】
例えば、クラフトパルプ工場の化学薬品回収システムでは、低い化学薬品純度の大量の炭酸カルシウムが固形廃棄物として排出され、従って、炭酸カルシウム充填剤および/またはコーティング用顔料の製造のための安価な原料供給源として容易に入手可能であり得る。
【0008】
しかしながら、この「パルプ工場廃棄物炭酸カルシウム」は粒径が粗く、変色性不純物が存在し、明度が低いため、かかる物質の使用は、最終炭酸カルシウム生成物の明度を充分に高いレベルに維持し、適用性能を、白亜、石灰石または大理石製の炭酸カルシウム充填剤またはコーティング用顔料などの高品質原料から製造された製品のレベルに達するようにした場合であっても禁止されるか、または非常に少量に限定される。
【0009】
従って、廃棄物から、特にパルプ工場廃棄物から回収された炭酸カルシウムが含有された炭酸カルシウム生成物の明度を増大させるための方法、ならびに回収された物質を、典型的な用途に使用され得る炭酸カルシウムの鉱物充填剤および/またはコーティング用顔料に変換させるための方法は、非常に望ましいものであり得る。
【0010】
先行技術の方法は、パルプ工場廃棄物から回収された炭酸カルシウム材料の加工に基づいたものである。例えば、ブラジル特許出願PI0903782−9には、セルロース工業の苛性化過程で回収された炭酸カルシウム材料を、前記炭酸カルシウム材料の等級を上げ、精製するためにリン酸で処理する方法が記載されている。
【0011】
JP6073690Aには、少なくとも6m/gの比表面積を有する沈降炭酸カルシウムの調製が開示されている。紙製造工場で生じる排気二酸化炭素および廃石灰がこのPCCの調製に利用され得る。一例では、三価金属酸化物の不純物を含む石灰を50℃で1時間反応させ、反応生成物をスクリーンに通し、石灰乳を得た。次いで、この石灰乳を湿式破砕に供し、希釈し、8重量%の濃度を有する石灰乳を調製した。次いで、これを炭酸化に供し、沈降炭酸カルシウムを得るために再度スクリーンに通した。
【0012】
WO96/32354A1は、古紙に含有された、もしくは古紙から生じる固形物含有物質または紙もしくは古紙を処理するためのプラントからの排出液の処理方法に関するものであり、該固形物含有物質としては有機物質および無機粒状物質が挙げられる。この方法によって処理される固形物含有物質としては、焼成させて酸化カルシウムを形成させる炭酸カルシウム、および、水性懸濁液中で酸化カルシウムが形成される場合は水酸化カルシウムに変換させる酸化カルシウムが挙げられ得る。次いで、石灰乳を沈降炭酸カルシウムに二酸化炭素を吹き込むことによって変換させる。次いで、この沈降炭酸カルシウムを紙用コーティング組成物の調製に使用する。沈降炭酸カルシウムならびにカオリンクレイなどの他の鉱物を含む物質の例は、70.6または75.5%のISO明度を示すものであった。
【0013】
WO97/11030A1は、純粋でない酸化カルシウムまたは水酸化カルシウムの供給源を水と合わせて水性懸濁液を形成することによる、高純度炭酸カルシウムの製造方法に関するものである。懸濁液中の固形物を、水酸化カルシウムの透明な飽和溶液が形成されるように沈降させる。次いで、この溶液を、高純度沈降炭酸カルシウムを得るために二酸化炭素とさらに反応させる。しかしながら、この文献には、形成された石灰乳が、この石灰乳に含有されたいかなる不純物も除去する必要なく、さらなる炭酸化工程に使用され得ることはどこにも記載されていない。
【0014】
また、US2010/0000444A1には、酸化カルシウムまたは水酸化カルシウムなどの金属酸化物の廃棄物供給源を利用することを含む、カーボネートを含む組成物の製造方法が記載されている。金属酸化物の廃棄物供給源由来の二価カチオンの水溶液を二酸化炭素と接触させ、炭酸カルシウムなどのカーボネートを含む組成物を得るために沈降条件に供する。得られた生成物はセメントなどの建築材料に使用され得る。得られた炭酸カルシウムのISO明度、比表面積または重量中央粒子直径に関する情報は示されていない。
【0015】
また、EP0946417B1およびEP0815175B1には、廃棄物物質からの、または天然の石灰質物質に混入しているカルシウムの回収のための方法であって、基本的に、酸化カルシウムおよび炭酸カルシウムなどの酸可溶性形態のカルシウム化合物を準備する工程、該カルシウム化合物材料の水性懸濁液を調製する工程、ならびに沈降炭酸カルシウムを得るために該カルシウム化合物材料の水性懸濁液を炭酸化する工程を含む方法が開示されている。EP0815175B1のリサイクル炭酸カルシウムは、紙におけるこの性能について試験された。
【0016】
また、本出願人は、EP0604095B1およびEP1052227B1に、凝集混合状態の物質が得られることに鑑みた工業的方法の副生成物の回収のための方法が開示されていることを承知している。
【0017】
最後に、EP2070578A1は、利用可能な酸化カルシウムおよび/または水酸化カルシウムを含有しているアルカリ性固形廃棄物との反応による二酸化炭素の隔離に関するものである。この発明の着眼点は二酸化炭素の隔離であったため、この文献には、得られた沈降炭酸カルシウムの性質には触れられていない。
【0018】
良好な明度を有する炭酸カルシウムを得るための炭酸カルシウム、酸化カルシウムまたは水酸化カルシウムのリサイクルが記載された先行技術文献が数多く存在しているが、改善された明度を有し、例えば製紙、塗料、プラスチックなどの工業において使用され得る高品質炭酸カルシウムの製造の必要性が依然として存在している。
【0019】
特に、廃棄物から、特にパルプ工場廃棄物から幾つかの工程にて得られた沈降炭酸カルシウムをさらに処理し、廃棄物資源から得られた低品質基材上に高品質沈降炭酸カルシウムの鉱物性物質を堆積させるための種として使用され得る微粒子を製造することに関する教示はなんら存在していない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0020】
【特許文献1】ブラジル特許出願公開第PI0903782−9号明細書
【特許文献2】特開平6−073690号公報
【特許文献3】国際公開第96/32354号
【特許文献4】国際公開第97/11030号
【特許文献5】米国特許出願公開第2010/0000444号明細書
【特許文献6】欧州特許出願公開第0946417号明細書
【特許文献7】欧州特許出願公開第0815175号明細書
【特許文献8】欧州特許出願公開第0604095号明細書
【特許文献9】欧州特許出願公開第1052227号明細書
【特許文献10】欧州特許出願公開第2070578号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0021】
従って、本発明の目的は、廃棄物から回収された二価金属イオンカーボネートからの沈降二価金属イオンカーボネート生成物の製造のための新しい方法であって、該沈降二価金属イオンカーボネート生成物が、廃棄物資源から得られ、先行技術の方法によって製造される他の沈降二価金属イオンカーボネート生成物と比べて同等またはさらに改善された明度を有する、方法を提供することである。
【0022】
本発明のさらなる目的は、本発明の方法によって得られる種々の沈降二価金属イオンカーボネート生成物を提供することである。
【0023】
また、本発明のさらなる目的は、この種々の沈降二価金属イオンカーボネート生成物の使用を提供することである。
【0024】
また、本発明のさらなる目的は、廃棄物から回収された二価金属イオンカーボネートからの沈降二価金属イオンカーボネート生成物の製造方法であって、先行技術において報告された方法と比べてより経済的な方法を提供することである。
【0025】
これらおよびさらなる目的および利点は、以下の詳細説明に鑑みるとさらに理解されよう。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】クラフトパルプ工場の化学薬品回収過程で排出された廃棄物炭酸カルシウムのSEM顕微鏡写真である。
図2】ロゼット様凝集構造を有し、比較例1に記載の先行技術の炭酸化過程に従って調製した犬牙状形態のPCCのSEM顕微鏡写真である。
図3】ロゼット様凝集構造を有し、実施例2に記載の方法によって本発明に従って調製した犬牙状形態のPCCのSEM顕微鏡写真である。
図4】実施例5に記載の方法によって本発明に従って調製し、コーティングに使用した犬牙状形態のPCCのSEM顕微鏡写真である。
図5】本出願人が承知している先行技術の方法による方法の工程経路を示す図である。
図6】本発明による方法の工程経路を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本明細書で用いる部、パーセンテージおよび比率はすべて、特に指定のない限り、乾燥物の重量で示している。本明細書において挙げた文献はすべて引用により組み込まれる。
【0028】
本発明は、廃棄物から回収された二価金属イオンカーボネートからの沈降二価金属イオンカーボネート生成物の製造のための方法であって、該沈降二価金属イオンカーボネート生成物が、廃棄物資源から得られ、先行技術の方法によって製造される他の沈降二価金属イオンカーボネート生成物と比べて同等またはさらに改善された明度を有するものであり、本発明において説明し、特許請求の範囲において規定される方法を提供することにより、上記に概略を示した課題を解決することを目的としている。
【0029】
前述のことに鑑み、本発明の発明者らは、驚くべきことに、廃棄物資源から回収された二価金属イオンカーボネートの鉱物充填剤および/またはコーティング用顔料の明度が、
(a)低純度の二価金属イオンカーボネート材料を準備する工程、該二価金属イオンカーボネート材料は廃棄物から回収されたものである;
(b)二価金属イオン酸化物を得るために工程(a)の二価金属イオンカーボネート材料を焼成させる工程;
(c)二価金属イオン水酸化物の水性懸濁液を得るために工程(b)で得られた二価金属イオン酸化物を消化させる工程;
(d)沈降二価金属イオンカーボネート微粒子を得るために、二酸化炭素含有化合物を用いて、工程(c)で得られた二価金属イオン水酸化物の水性懸濁液を炭酸化する工程;
(e)離散型沈降二価金属イオンカーボネート微粒子を得るために、工程(d)で得られた沈降二価金属イオンカーボネート微粒子を後処理する工程
(f)生成される反応混合物を得るために、工程(e)で得られた離散型沈降二価金属イオンカーボネート微粒子を、高純度の二価金属イオン酸化物を消化させることによって得られた二価金属イオン水酸化物の水性懸濁液と混合する工程;および
(g)工程(d)で得られた沈降二価金属イオンカーボネート粒子と比べて改善された明度を有する沈降二価金属イオンカーボネート生成物を得るために、工程(f)の得られた反応混合物を炭酸化する工程
を含む方法によって実質的に改善され得ることを見出した。
【0030】
また、さらに本発明者らは驚くべきことに、本発明による方法により、最終の沈降生成物中の低純度の二価金属イオンカーボネートの量を、得られる最終生成物の良好な明度を損なうことなくほぼ2倍にできることを見出した。最終生成物の明度は、先行技術で知られた同等の生成物よりも低純度の二価金属イオンカーボネートをほぼ2倍多く含有しているが、さらに改善されると言える。
【0031】
本発明の解釈上、用語「廃棄物」は、製造過程で残留した無機物質であるか、またはかかる無機物質が含有された生成物のリサイクルにより得られた物質、例えば、紙のリサイクルにより得られた無機物質などであると定義する。廃棄物の一部の成分は経済的価値を有し、正しく回収されるとリサイクルすることができる。本発明において、経済的価値を有する成分は、二価金属イオンカーボネート材料、例えば、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸ベリリウム、炭酸ストロンチウムまたは炭酸バリウム材料など、特に、天然形態、磨砕(もしくは天然)炭酸カルシウム(GCC)および/または、合成炭酸カルシウムとしても知られている沈降炭酸カルシウム(PCC)のいずれかの炭酸カルシウム材料である。廃棄物は、廃棄物毎に必須量の二価金属イオンカーボネート材料、特に炭酸カルシウム材料を含むものであり得、例えば、パルプ工業および/または製紙工業により得られる廃棄物である。
【0032】
「スラリー」は、本発明の意味において、懸濁液(本質的に不溶性の固形物と水、場合によりさらなる添加剤を含むもの)であり、通常、このスラリーを形成している無固形物の液体より高い密度を有する。
【0033】
「比表面積」(SSA)または「BET比表面積」は、本発明の意味において、本明細書の以下の実施例のセクションに示した方法によって測定される比表面積に関するものである。
【0034】
「磨砕炭酸カルシウム」(GCC)は、本発明の意味において、天然供給源、例えば、大理石、白亜または石灰石から得られ、湿式および/または乾式条件下での磨砕、ふるい分けおよび/または分画などの処理(例えば、サイクロン)によって加工された炭酸カルシウムである。
【0035】
「沈降炭酸カルシウム」(PCC)は、本発明の意味において、一般的に、水性環境中での二酸化炭素と水酸化カルシウム(消石灰)の反応後の沈降によって、または水中でのカルシウム供給源とカーボネート供給源の沈降によって得られる合成物質である。また、さらに沈降炭酸カルシウムは、カルシウムおよび炭酸塩、塩化カルシウムならびに炭酸ナトリウムを例えば水性環境中に導入された生成物であってもよい。
【0036】
用語「明度」は、本発明との関連において用いる場合、紙の表面または顔料で製造した粉末タブレットから反射した散光のパーセンテージの測定値である。明度の高い用紙または顔料ほど多くの散光を反射する。本明細書で用いる場合、紙または顔料の明度は、457nmの波長の光で測定され得るものであり(R457)、パーセントで明示される。
【0037】
「低純度の二価金属イオンカーボネート材料」は、本発明の意味において、ISO 2469に従って測定したとき約90%未満のISO明度R457を有する、炭酸カルシウムまたは炭酸マグネシウムなどの二価金属イオンカーボネートである。
【0038】
「高純度の二価金属イオンカーボネート材料」は、本発明の意味において、ISO 2469に従って測定したとき少なくとも約94%のISO明度R457を有する、炭酸カルシウムまたは炭酸マグネシウムなどの二価金属イオンカーボネートである。
【0039】
「PCC/廃棄物CaCO複合生成物」は、本発明の意味において、本発明の方法の2回目の炭酸化工程(工程(g))後に得られる沈降炭酸カルシウム生成物と定義する。両方の表現を同義的に用いている。
【0040】
「後処理」は、本発明の意味において、所望の離散型沈降二価金属イオンカーボネート粒子を生成させるための工程と定義する。後処理は、特に、メディアミルもしくは同様のものでのクラスターもしくは塊状物の機械的デアグロメレーション、または加熱−熟成工程もしくは同様のものでの再結晶、または高圧式機械的脱水後、濾過ケークの再分散である。
【0041】
図5は、本発明者らが承知している先行技術の方法に従って、パルプ工場廃棄物カーボネートから炭酸カルシウム生成物を製造するための工程系統図を示す。第1工程では、パルプ工場廃棄物炭酸カルシウム10を水と接触させ、炭酸カルシウムの水性懸濁液12を形成した後、この炭酸カルシウムを湿式磨砕14する。このようにして加工された「廃棄物炭酸カルシウム」は、ISO 2469に従って測定したとき67.2%の明度、および14.9m/gのBET比表面積(SSA)を有する。並行して、沈降炭酸カルシウムの製造のための高純度生石灰(CaO)18を、生成される水酸化カルシウムのスラリー(いわゆる「石灰乳」)20を得るために水と消化させる。次いで、水酸化カルシウムのスラリー20を16で、湿式磨砕14によって得られた「廃棄物炭酸カルシウム」と合わせ、次いで、「廃棄物炭酸カルシウム」と水酸化カルシウムスラリーの合わせた混合物16を、二酸化炭素または二酸化炭素含有ガスなど(such)の二酸化炭素含有化合物を使用する炭酸化工程17に供する。この炭酸化工程後に得られる最終生成物は、15重量%までの「廃棄物炭酸カルシウム」(最終炭酸カルシウム生成物の乾燥重量に対して)を含有している炭酸カルシウム生成物22である。最終炭酸カルシウム生成物は、ISO 2469に従って測定したとき83.8%の明度、13.9m/gのBET比表面積(SSA)、およびSedigraph 5100による1.7μmの重量中央粒子直径d50を有する。
【0042】
これに対して、図6は、本発明の方法に従って、廃棄物から回収された二価金属イオンカーボネートから二価金属イオンカーボネート生成物を製造するための工程系統図を示す。
【0043】
まず最初に、廃棄物から回収された低純度の二価金属イオンカーボネート材料10(以下、本明細書において「廃棄物カーボネート材料」10と称する。)を準備する。低純度の二価金属イオンカーボネート材料10は、式M2+CO2−(即ち、MCO)を有する物質であり、式中、M2+は、Be2+、Mg2+、Ca2+、Sr2+およびBa2+を含む群より選択される二価金属イオンであり、好ましくはMg2+およびCa2+であり、最も好ましくはCa2+である。
【0044】
第1工程では、廃棄物カーボネート材料10を、対応する二価金属イオン酸化物を得るための焼成工程24に供する。これに関連して、廃棄物カーボネート材料10は窯または炉内に、場合により酸素含有ガスの供給を伴って導入し、窯または炉は、廃棄物カーボネート材料10が対応する二価金属イオン酸化物に変換されるのに充分な温度まで加熱する。炭酸カルシウム(CaCO)の焼成では、典型的な温度は900から1300℃の範囲であり、炭酸マグネシウム(MgCO)では、典型的な温度は800から1200℃の範囲である。二価金属イオン酸化物は式M2+2−(即ち、MO)を有する物質であり、式中、M2+は、Be2+、Mg2+、Ca2+、Sr2+およびBa2+を含む群より選択される二価金属イオンであり、好ましくはMg2+およびCa2+であり、最も好ましくはCa2+である。
【0045】
得られた対応する二価金属イオン酸化物を、次いで消化工程26に供する。これに関連して、二価金属イオン酸化物は攪拌反応器内で水に添加する。しかしながら、二価金属イオン酸化物の添加前に水温を30から90℃、好ましくは70℃の範囲に調整し、場合によりクエン酸ナトリウム塩などの添加剤を添加してもよい。次いで、二価金属イオン酸化物の水性懸濁液を、対応する二価金属イオン水酸化物の水性懸濁液を得るために連続攪拌下で消化させ、該水酸化物が水酸化カルシウムである場合、この懸濁液はいわゆる「石灰乳」である。二価金属イオン水酸化物は式M2+(OH(即ち、M(OH))を有する物質であり、式中、M2+は、Be2+、Mg2+、Ca2+、Sr2+およびBa2+を含む群より選択される二価金属イオンであり、好ましくはMg2+およびCa2+であり、最も好ましくはCa2+である。得られた二価金属イオン水酸化物の水性懸濁液は、好ましくは、二価金属イオン水酸化物の乾燥重量に対して5から30重量%の範囲の固形分を有するものである。
【0046】
場合によりふるい分けされ得る二価金属イオン水酸化物の水性懸濁液を、次いで、二酸化炭素含有化合物での炭酸化工程28に供する。本発明で使用される二酸化炭素含有化合物は、気体二酸化炭素、液体二酸化炭素、固体二酸化炭素および二酸化炭素含有ガスの中から選択され、好ましくは、二酸化炭素含有化合物は、二酸化炭素と、燃焼過程もしくは焼成過程などの工業的過程で排出された二酸化炭素含有排ガスなどの他のガスの気体混合物である。二酸化炭素と他のガスの気体混合物が使用される場合は、二酸化炭素を8から約99容量%の範囲、好ましくは10から25容量%の範囲、例えば20容量%で存在させる。二酸化炭素含有化合物の導入前、二価金属イオン水酸化物の水性懸濁液の温度を10から70℃の範囲、より好ましくは10から30℃の範囲、例えば20℃に調整する。さらに、場合によりスクロース、糖アルコールまたはクエン酸などの添加剤を反応混合物に添加してもよい。次いで、二酸化炭素含有化合物を二価金属イオン水酸化物の水性懸濁液に、0.05から2kgのCO/時/kgの乾燥Ca(OH)、好ましくは0.2から0.8kgのCO/時/kgの乾燥Ca(OH)の速度で、反応混合物の同時攪拌下で導入する。炭酸化反応の終了は、反応混合物の電気伝導度が最低レベルになり、通常pH10から13の範囲である二価金属イオン水酸化物の水性懸濁液のpHが6から8の値に低下した(実質的にすべての二価金属イオン水酸化物が対応する二価金属イオンカーボネートに変換されたことを示す。)ときに達する。
【0047】
微粒子のクラスターまたは塊状物からなる得られた沈降二価金属イオンカーボネート粒子の懸濁液を、次いで、後処理工程30でさらに加工または処理し、離散型沈降二価金属イオンカーボネート微粒子の懸濁液を得る。当業者に知られたデアグロメレーションのための任意の種類の後処理、例えば、メディアミルもしくは同様のものでの機械的デアグロメレーションまたは加熱−熟成工程もしくは同様のものでの再結晶(オストワルド成長)または高圧式機械的脱水後、濾過ケークの再分散などが、所望の離散型沈降二価金属イオンカーボネート微粒子の製造に適用され得る。
【0048】
離散型粒子により、本出願人は、クラスターでなく、凝集粒子でもなく、塊状粒子でもない粒子を意図する。
【0049】
離散型沈降二価金属イオンカーボネート微粒子は式M2+CO2−(即ち、MCO)を有するものであり、式中、M2+は、Be2+、Mg2+、Ca2+、Sr2+およびBa2+を含む群より選択される二価金属イオンであり、好ましくはMg2+およびCa2+であり、最も好ましくはCa2+である。得られた離散型沈降二価金属イオンカーボネート微粒子が離散型沈降炭酸カルシウム微粒子である場合、ISO 2469に従って測定したとき前記粒子は約70%の明度、および約30m/gのBET比表面積(SSA)を示すものである。
【0050】
離散型沈降二価金属イオンカーボネート微粒子は、本発明の意味において、>10から500nm、好ましくは50から200nmの範囲の粒径、および5から>15m/g、好ましくは20から50m/gの範囲の比表面積を有するものである。
【0051】
さらなる工程で、得られた離散型沈降二価金属イオンカーボネート微粒子の懸濁液を、生成される反応混合物を得るために高純度の二価金属イオン酸化物16の消化18によって得られた二価金属イオン水酸化物の水性懸濁液と混合32する。任意の高純度の二価金属イオン酸化物が使用され得る。好ましくは、高純度の二価金属イオン酸化物は、乾燥形態、例えば、乾燥CaOまたは乾燥MgOで使用される。懸濁液中の離散型沈降二価金属イオンカーボネート微粒子の固形分は、通常、炭酸化工程28後に得られた微細沈降二価金属イオンカーボネートの後処理に選択した方法(例えば、機械的デアグロメレーションまたは加熱−熟成工程での再結晶)に依存するが、通常、懸濁液の総重量に対して5から60重量%の範囲、好ましくは10から40重量%の範囲である。
【0052】
次の工程では、得られた二価金属イオン水酸化物の水性懸濁液と微細沈降二価金属イオンカーボネートの反応混合物を、二酸化炭素含有化合物でのさらなる炭酸化工程34に供する。本発明で使用される二酸化炭素含有化合物は、気体二酸化炭素、液体二酸化炭素、固体二酸化炭素および二酸化炭素含有ガスの中から選択され、好ましくは、二酸化炭素含有化合物は、二酸化炭素と、燃焼過程もしくは焼成過程などの工業的過程で排出された二酸化炭素含有排ガスなどの他のガスとの気体混合物である。二酸化炭素と他のガスの気体混合物が使用される場合は、二酸化炭素を8から約99容量%の範囲、好ましくは10から25容量%の範囲、例えば20容量%で存在させる。二酸化炭素含有化合物の導入前、得られた二価金属イオン水酸化物の水性懸濁液と微細または超微細沈降二価金属イオンカーボネートの反応混合物の温度を、10から70℃の範囲、より好ましくは15から60℃の範囲、例えば50℃に調整する。さらに、場合によりスクロース、糖アルコールまたはクエン酸などの添加剤を反応混合物に添加してもよい。次いで、二酸化炭素含有化合物を、得られた二価金属イオン水酸化物の水性懸濁液と微細または超微細離散型沈降二価金属イオンカーボネートの反応混合物に、0.05から2kgのCO/時/kgの乾燥Ca(OH)、好ましくは0.2から0.8kgのCO/時/kgの乾燥Ca(OH)の速度で、反応混合物の同時攪拌下で導入する。炭酸化反応の終了は、反応混合物の電気伝導度が最低レベルになり、通常pH10から13の範囲である二価金属イオン水酸化物の水性懸濁液のpHが6から8の値に低下した(実質的にすべての二価金属イオン水酸化物が対応する二価金属イオンカーボネート36に変換されたことを示す。)ときに達する。沈降二価金属イオンカーボネート36は式M2+CO2−(即ち、MCO)を有するものであり、式中、M2+は、Be2+、Mg2+、Ca2+、Sr2+およびBa2+を含む群より選択される二価金属イオンであり、好ましくはMg2+およびCa2+であり、最も好ましくはCa2+である。
【0053】
本発明の一実施形態では、工程(g)で得られた沈降二価金属イオンカーボネート生成物の少なくとも一部は少なくとも1回のさらなる炭酸化工程に供され得、このとき、工程(g)で得られた沈降二価金属イオンカーボネート生成物の該少なくとも一部を、まず、高純度の二価金属イオン酸化物を消化させることによって得られた二価金属イオン水酸化物の水性懸濁液と混合し、生成される反応混合物を得、次いで、得られた反応混合物を炭酸化に供する。従って、生成物のさらなる適用により最終生成物の明度を調整することが可能である。換言すると、工程(g)で得られた沈降二価金属イオンカーボネート生成物を少なくとも1回のさらなる炭酸化工程に供する(ここで、工程(g)で得られた沈降二価金属イオンカーボネート生成物の該少なくとも一部を、まず、高純度の二価金属イオン酸化物を消化させることによって得られた二価金属イオン水酸化物の水性懸濁液と混合し、生成される反応混合物を得、次いで、得られた反応混合物を炭酸化に供する。)ことにより、工程(g)で得られた沈降二価金属イオンカーボネート生成物より高い明度を有する最終生成物を得ることが可能である。
【0054】
また、後処理工程(e)を続ける前に、炭酸化工程(d)を少なくとも1回繰り返すことも可能である。
【0055】
本発明による好ましい一実施形態では、本発明の方法の工程(g)で得られた沈降二価金属イオンカーボネート粒子は、ISO 2469に従って測定したとき88から94%の範囲のISO明度R457を有するものである。
【0056】
本発明によるさらに好ましい一実施形態では、工程(g)で得られた沈降二価金属イオンカーボネート粒子は、ISO 9277を用いてBET法に従って測定したとき3から30m/gの範囲、好ましくは5から20m/gの範囲の比表面積(SSA)を有するものである。
【0057】
さらに、工程(g)で得られた沈降二価金属イオンカーボネート粒子は、Sedigraph(商標)(MICROMERITICS社によって販売)を用いて測定したときの重量中央粒子直径d50は、0.5から7μmの範囲、好ましくは0.8から5μmの範囲、より好ましくは1から3μmの範囲を有するものであることが好ましい。
【0058】
本発明のさらなる実施形態では、工程(a)の低純度の二価金属イオンカーボネート材料は好ましくは炭酸カルシウム材料であり、工程(g)の沈降二価金属イオンカーボネート生成物は沈降炭酸カルシウムである。この場合、得られる最終生成物は、最終炭酸カルシウム生成物の乾燥重量に対して50重量%までの「廃棄物炭酸カルシウム」を含有している炭酸カルシウム生成物36である。最終炭酸カルシウム生成物36は、ISO 2469に従って測定したとき90.0%のISO明度R457、17.0m/gのBET比表面積(SSA)、および約1.5μmの重量中央粒子直径d50を有するものである。
【0059】
最終生成物に含有される「廃棄物炭酸カルシウム」の重量%は、最終生成物の所望の明度および「廃棄物炭酸カルシウム」の純度に依存性があることに注意されたい。非常に低い純度の「廃棄物炭酸カルシウム」を使用した本発明の場合、ISO 2469による90%の指定最低明度R457のためには、炭酸カルシウム生成物36に含有されていてもよい前記「廃棄物炭酸カルシウム」はわずか25重量%までである。
【0060】
理論に拘束されることを一切望まないが、このさらなる炭酸化工程34では、離散型沈降二価金属イオンカーボネート微粒子が、このさらなる炭酸化工程において二酸化炭素含有化合物と高純度の二価水酸化物との反応によって形成される沈降二価金属イオンカーボネート生成物36の沈降のための種物質としての機能を果たしていると考えられる。高純度の二価金属イオン水酸化物に由来する沈降二価金属イオンカーボネートは「殻」として、低純度および低明度を有する沈降二価金属イオンカーボネート粒子(「コア」)の周囲で成長する。このように、本発明者らは、最初の炭酸化工程28で得られた沈降二価金属イオンカーボネート粒子と比べて、および先行技術の方法でカルシウム化合物含有廃棄物から得られる沈降炭酸カルシウム生成物と比べて改善された明度を有する沈降二価金属イオンカーボネート生成物を得た。
【0061】
必要であれば、工程(g)の沈降二価金属イオンカーボネート生成物を含む(または工程(g)後の少なくとも1回のさらなる炭酸化工程の沈降二価金属イオンカーボネート生成物を含む。)水性懸濁液を、乾燥沈降炭酸カルシウムを得るために、とりわけ分離、濾過、濃縮および乾燥を含むさらなる後処理工程38に供してもよい。特に、濃縮工程は、この様式で水性懸濁液の総重量に対して40から80重量%の範囲の固形分の最終の沈降二価金属イオンカーボネート生成物を有する、紙−または板紙コーティング用途などのさらなる用途に好ましくは使用される水性懸濁液が得られ得るため、非常に有用なものであることに注意されたい。
【0062】
また、本発明は、本発明による方法によって得られる沈降二価金属イオンカーボネートを含む水性懸濁液、ならびに本発明による方法によって得られる乾燥沈降二価金属イオンカーボネートに関する。本発明において、用語「乾燥」は、好ましくは、最終の沈降二価金属イオンカーボネート生成物が有する含水量が10重量%未満、より好ましくは5重量%未満、さらにより好ましくは2重量%未満であることをいう。
【0063】
さらに、本発明は、本発明による乾燥沈降二価金属イオンカーボネートの水性懸濁液のコーティング配合物における使用、または製紙−、プラスチック−および塗料工業における充填剤としての使用に関する。
【0064】
また、本発明は、塗料、ゴム、プラスチック、建築材料およびインクの分野における本発明による乾燥沈降二価金属イオンカーボネートの使用に関する。
【実施例】
【0065】
以下の実施例は、本発明の一部の特定の実施形態の実例を示すことを意図したものであり、本発明に対していかなる様式でも非限定的であると理解されたい。
【0066】
本発明の解釈上、パラメータd50(%)の値は、50質量%の粒子のそれぞれがこの値以下の直径を有する粒径の測定値によって得られるものである。
【0067】
w/wという用語は、物質の質量分率を示し、全混合物の質量mtotに対する質量mmatを有する物質の割合と定義する。
【0068】
測定方法:
懸濁液のpHの測定
懸濁液のpHは、25℃で、Mettler Toledo Seven Easy pHメータおよびMettler Toledo InLab(登録商標)Expert Pro pH電極を用いて測定した。
【0069】
最初に、機器の3点較正(セグメント法による。)を、4、7および10のpH値を有する市販のバッファー溶液(Aldrich製)を用いて20℃で行った。
【0070】
報告したpH値は機器によって検出された終点の値である(終点は、測定されたシグナルと最後の6秒間(6秒前から)の平均との差が0.1mV未満である時点である。)。
【0071】
BET比表面積
BET比表面積(SSAとも表示される。)は、ISO 9277に従い、Tristar II 3020(MICROMERITICS(商標)社によって販売)を用いて測定した。
【0072】
粒径分布(<Xμmの直径を有する粒子の質量%)および粒状物質の重量中央粒子直径(d50)(d50(μm))
Sedigraph(商標)5100
粒状物質の重量中央粒子直径および粒子直径質量分布は沈降法、即ち、重量測定分野での沈降挙動の解析によって測定した。測定は、Sedigraph(商標) 5100(MICROMERITICS(商標)社によって販売)により行う。
【0073】
該方法および機器は当業者に知られており、充填剤および顔料の粒径を測定するために一般的に使用されているものである。4gの乾燥PCCに相当する量の生成物を60mlの0.1重量%Na水溶液に添加することにより試料を調製した。試料を、高速攪拌機(Polytron PT 3000/3100,15000rpm)を用いて3分間分散させた。次いで、これを、超音波浴を用いて超音波に15分間供し、この後、Sedigraphの混合チャンバに添加した。
【0074】
粘度の測定
1分間の攪拌後のブルックフィールド粘度を、RVT型Brookfield(商標)粘度計の使用により20℃の温度および100rpm(毎分回転数)回転速度で、適切なディスクスピンドル2、3または4を伴って測定した。
【0075】
懸濁液中の物質の固形物の重量(重量%)
固形物の重量(物質の固形分とも称する。)は、固形物質の重量を水性懸濁液の総重量で除算することにより求めた。
【0076】
固形物質の重量は、懸濁液の水相を蒸発させ、得られた物質を一定重量になるまで乾燥させることにより得られた固形物質の重量測定によって測定した。
【0077】
明度の測定および黄色度指数
得られた粒子の顔料明度および黄色度指数は、ELREPHO 450x(Datacolor社製)を使用し、それぞれISO 2469およびDIN 6167に従って測定した。
【0078】
試料を105℃の炉内で残留含水率が<0.5重量%になるまで乾燥させ、得られた粉末を処理して該粉末粒子のデアグロメレーションを行った。12gの前記粉末から、15秒間の4バールの圧力の適用によってタブレットをプレス成形した。45mmの直径を有する得られた粉末タブレットを、次いで測定に供した。
【0079】
本発明の測定において、黄色度指数は、得られた沈降炭酸カルシウム生成物の反射率を測定することによって測定し、使用した標準光はD65とし、標準観測者ファンクションは10°とした。
【0080】
DIN 6167による黄色度指数は以下のとおりに計算される:
【0081】
【数1】
式中、X、YおよびZはCIE三刺激値であり、係数は、以下の表に示す標準光と観測者ファンクションに依存する:
【0082】
【表1】
【0083】
PPS−粗さの測定
パーカプリントサーフ粗さはISO 8791−4:2007に従って測定した。単位:μmで明示される。pps−粗さは、紙シートの表面上、即ちxy面における空気流を測定することによって得られる。測定は規定の測定デバイスにより、紙表面に対して測定設備の規定の圧力で、紙の反対側には規定のゴムプレートを伴って行い、得られる値は圧力差から計算したものであり、空気が測定設備と紙表面間を通過することを可能にするスリットの幅を示す。
【0084】
A.パルプ工場廃棄物からの沈降炭酸カルシウムの製造
【0085】
比較例1
この比較例には、パルプ工場廃棄物から得られた炭酸カルシウムを出発物質とし、パルプ工場廃棄物から得られた炭酸カルシウムを湿式磨砕し、次いで、高純度水酸化カルシウムの水性スラリーと一緒に炭酸化反応に使用する、炭酸カルシウム生成物の製造のための先行技術の方法を記載する。
【0086】
クラフトパルプ工場の化学薬品回収過程で排出された低純度廃棄物CaCOは、Klabin Papeis S.A.,Telemaco Borba工場(ブラジル)から入手した。75.9質量%の乾燥物を含む845kgの前記廃棄物CaCOを、溶解機プレートを備えている700リットル容攪拌メイクダウン(make−down)槽に入れた300リットルの20℃の水道水に添加した。廃棄物CaCOの添加前、20.7kgの当業者によく知られた適切な分散化剤を、この水道水に分散助剤として添加した。廃棄物CaCOを、この湿潤ケークを激しい攪拌下にて導入することによって廃棄物CaCOの水性スラリーに変換させた(メイクダウンした。)。廃棄物CaCOの水性スラリーは56.2重量%の固形分を有するものであった。
【0087】
得られた廃棄物CaCOのスラリーを、次いで2回通過で、それぞれ1.0mm直径(通過1回目)および0.45mm直径(通過2回目)の96kgのセリア(ceria)含有酸化ジルコニウム磨砕ビーズを充填した50リットル容縦型ビーズミルにて湿式磨砕した。粒子の約83%が<1μmの重量中央粒径を有する(Sedigraph 5100を用いて測定したとき)という最終目標微細度を得るためには、156kWh/DMT(DMT=ドライメトリックトン)の全比磨砕エネルギーが必要であった。湿式磨砕前に、さらに12.4kgの当業者によく知られた適切な分散化剤をミル供給物に添加した。
【0088】
200kgのPCC等級高純度生石灰CaO(Kalkwerk LEUBE,Golling/Austria)を、攪拌消化反応器内の1.700リットルの50℃の水道水に添加した。消化前、この消化用の水に0.66kgの30質量%のクエン酸ナトリウム水溶液を添加した。生石灰を連続攪拌下で30分間消化させ、得られた水酸化カルシウムのスラリー(「石灰乳」)を、60℃の水でのこの石灰乳の希釈によって13.7%の固形分に調整し、次いで200μmスクリーンでふるい分けし、粗粒を除去した。
【0089】
炭酸化は、ガス供給(gasing)攪拌器、二酸化炭素/空気ガス流をインペラに指向するステンレス鋼炭酸化チューブ、ならびに、懸濁液のpHおよび導電率のモニタリング用プローブを備えた2000リットル容バッフル付き円筒型ステンレス鋼反応器で行った。55.9質量%の乾燥物の廃棄物CaCOを含む71リットルの前記湿式磨砕廃棄物CaCOスラリーを炭酸化装置に添加し、上記の消化工程で得られた水酸化カルシウムの1679リットルの13.7質量%の水性懸濁液と混合した。反応混合物の温度を50℃に調整した。次いで、空気中20容量%のCOのガスを反応混合物中で、200m/時の標準体積流量(DIN 1343で定義される標準体積流量、0℃(273.15K)の温度、101.325kPa、相対湿度0%)で激しい攪拌下にて上方に起泡させた。炭酸化中、反応混合物の温度を制御せず、発熱性沈降反応で発生した熱により昇温させた。炭酸化は、電気伝導度が急に下がり、炭酸化が実質的に終了したことを示す最低値になるまで維持した。CO含有ガスの導入をさらに10分間継続した後、ガスの導入を停止した。ガスの導入の開始から最低導電率の時点までで計算される炭酸化時間は97分間であった。次いで、反応混合物を45μmスクリーンでふるい分けし、ふるい分けされた生成物をCaCOの水性スラリーとして回収した。得られたPCC/廃棄物CaCO複合生成物中の全CaCO乾燥物に対する低純度のパルプ工場廃棄物CaCOの割合は15.6質量%であった。得られたPCC/廃棄物CaCO複合生成物のISO明度R457は83.8%であった。
【0090】
比較例1に記載の方法で得られた生成物の物性を以下の表1に示す。
【0091】
実施例2
この本発明の実施例には、パルプ工場廃棄物から得られた炭酸カルシウムを出発物質とし、パルプ工場廃棄物から得られた炭酸カルシウムを焼成させてパルプ工場廃棄物石灰(CaO)を得、消化させ、続いて、得られた石灰乳を炭酸化させ、加工し、離散型超微粒子を特色とする特定のパルプ工場廃棄物沈降炭酸カルシウム(PCC)を得る、炭酸カルシウム生成物の製造のための本発明の方法を示す。次いで、得られた物質を、高純度水酸化カルシウムの水性スラリー(いわゆる「石灰乳」)と一緒に炭酸化反応に供する。
【0092】
比較例1の低純度廃棄物CaCO(これは、典型的には、Klabin Papeis S.A.,Telemaco Borba Millのクラフトパルプ工場の化学薬品回収過程で排出されたものである。)を900から1300℃の範囲の温度にて回転式の窯で焼成させ、ハンマーミルで予備破砕し、低純度のパルプ工場廃棄物CaOを得た。200kgのこの廃棄物CaO(生石灰)を、攪拌消化反応器内の1800リットルの70℃の水道水に添加した。生石灰を連続攪拌下で30分間消化させ、得られたスラリーを水酸化カルシウムの水性懸濁液(「廃棄物石灰乳」)として回収した。1800リットルの前記廃棄物石灰乳を炭酸化装置に添加し、廃棄物石灰乳の温度を20℃に調整した。炭酸化の前に、糖アルコール(ソルビトール80%,Brenntag CEE GmbH)の1.3リットルの70質量%水溶液を添加した。
【0093】
炭酸化は、比較例1に記載のものと同様にして行った。ガスの導入の開始から最低導電率の時点までで計算される炭酸化時間は54分間であった。次いで、反応混合物を45μmスクリーンでふるい分けし、デカンタ型遠心分離機(KHD Humboldt Wedag AG,Type SC 01)で機械的に脱水した。次いで、遠心分離機から排出された濾過ケークを水で再分散させ、30.4質量%の乾燥物の「パルプ工場廃棄物PCC」を含む水性スラリーに変換させた(メイクダウンした。)。スラリーのメイクダウン中、充分な量の当業者によく知られた適切な分散化剤を添加した。この30.4質量%の固形物を含有している「パルプ工場廃棄物PCC」スラリーを、次いで、デアグロメレーション用の0.4から0.7mmのセリア含有酸化ジルコニウム磨砕ビーズを備えた縦型メディアミルに通した。メディアミル内での加工中の比エネルギー導入量は74kWh/DMT CaCO(DMT=ドライメトリックトン)であった。メディアミルから排出され、29.7質量%の乾燥物のCaCOを含む水性スラリーを、後述する炭酸化のための種用物質として使用する「加工済みパルプ工場廃棄物PCC」の水性スラリーとして回収した。この物質の構造(SEM顕微鏡写真で調べた。)は、約50から200nmの一次粒径(SEMで測定)を有する離散型沈降炭酸カルシウム(PCC)超微粒子であった。
【0094】
200kgのPCC等級高純度生石灰CaO(Kalkwerk LEUBE,Golling/Austria)を、攪拌消化反応器内の1700リットルの50℃の水道水に添加した。消化前、この消化用の水に0.66kgの30質量%のクエン酸ナトリウム水溶液を添加した。生石灰を連続攪拌下で30分間消化させ、得られた水酸化カルシウムのスラリー(「石灰乳」)を、60℃の水でのこの石灰乳の希釈によって13.3%の固形分に調整し、次いで200μmスクリーンでふるい分けし、粗粒を除去した。
【0095】
炭酸化は、ガス供給攪拌器、二酸化炭素/空気ガス流をインペラに指向するステンレス鋼炭酸化チューブ、ならびに、懸濁液のpHおよび導電率のモニタリング用プローブを備えた2000リットル容バッフル付き円筒型ステンレス鋼反応器で行った。29.7質量%の固形物を含み、上記の方法で得られた250リットルの「加工済みパルプ工場廃棄物PCC」スラリーを炭酸化装置に添加し、上記の消化工程で得られた水酸化カルシウムの1550リットルの13.3質量%の水性懸濁液と混合した。反応混合物の温度を50℃に調整した。次いで、空気中20容量%のCOのガスを反応混合物中で、200m/時の標準体積流量(DIN 1343で定義される標準体積流量、0℃(273.15K)の温度、101.325kPa、相対湿度0%)で激しい攪拌下にて上方に起泡させた。炭酸化中、反応混合物の温度を制御せず、発熱性沈降反応で発生した熱により昇温させた。炭酸化は、電気伝導度が急に下がり、炭酸化が実質的に終了したことを示す最低値になるまで維持した。CO含有ガスの導入をさらに10分間継続した後、ガスの導入を停止した。ガスの導入の開始から最低導電率の時点までで計算される炭酸化時間は86分間であった。次いで、反応混合物を45μmスクリーンでふるい分けし、ふるい分けされた生成物をCaCOの水性スラリーとして回収した。得られたPCC/廃棄物CaCO複合生成物中の全CaCO乾燥物に対する元の低純度のパルプ工場廃棄物CaCOの割合は23.5質量%であった。得られたPCC/廃棄物CaCO複合生成物のISO明度R457は90.0%であった。
【0096】
上記の本発明による方法によって得られる生成物の物性を表1に示す。
【0097】
比較例3
この比較例には、パルプ工場廃棄物から得られた炭酸カルシウムを出発物質とし、パルプ工場廃棄物から得られた炭酸カルシウムを焼成させてパルプ工場廃棄物石灰(CaO)を得る、炭酸カルシウム生成物の製造のための先行技術の方法を示す。パルプ工場廃棄物石灰は、次いでPCC等級高純度生石灰と混合し、消化させ、得られた石灰乳混合物は、次いで炭酸化反応に使用する。
【0098】
比較例1の低純度廃棄物CaCO(これは、典型的には、Klabin Papeis S.A.,Telemaco Borba Millのクラフトパルプ工場の化学薬品回収過程で排出されたものである。)を回転式の窯で900から1300℃の範囲の温度にて焼成させ、ハンマーミルで予備破砕し、低純度のパルプ工場廃棄物CaOを得た。30kgのこの廃棄物CaOを170kgのPCC等級高純度生石灰CaO(Lhoist Belocal,Arcos MG/Brazil)と混合し、この石灰混合物を、攪拌消化反応器内の1700リットルの60℃の水道水に添加した。消化前、この消化用の水に0.80kgの30質量%のクエン酸ナトリウム水溶液を添加した。生石灰を連続攪拌下で30分間消化させ、得られた水酸化カルシウムのスラリー(「石灰乳」)を、60℃の水でのこの石灰乳の希釈によって13.6%の固形分に調整し、次いで200μmスクリーンでふるい分けし、粗粒を除去した。1800リットルの前記石灰乳を炭酸化装置に添加し、石灰乳の温度を50℃に調整した。
【0099】
炭酸化は、ガス供給攪拌器、二酸化炭素/空気ガス流をインペラに指向するステンレス鋼炭酸化チューブ、ならびに、懸濁液のpHおよび導電率のモニタリング用プローブを備えた2000リットル容バッフル付き円筒型ステンレス鋼反応器で行った。次いで、空気中20容量%のCOのガスを反応混合物中で、200m/時の標準体積流量(DIN 1343で定義される標準体積流量、0℃(273.15K)の温度、101.325kPa、相対湿度0%)で激しい攪拌下にて上方に起泡させた。炭酸化中、反応混合物の温度を制御せず、発熱性沈降反応で発生した熱により昇温させた。炭酸化は、電気伝導度が急に下がり、炭酸化が実質的に終了したことを示す最低値になるまで維持した。CO含有ガスの導入をさらに10分間継続した後、ガスの導入を停止した。ガスの導入の開始から最低導電率の時点までで計算される炭酸化時間は84分間であった。次いで、反応混合物を45μmスクリーンでふるい分けし、ふるい分けされた生成物をCaCOの水性スラリーとして回収した。得られたPCC複合生成物中の全CaCO乾燥物に対する元の低純度のパルプ工場廃棄物CaCOの割合は15.0質量%であった。得られたPCC複合生成物のISO明度R457は90.6%であった。
【0100】
比較例3に記載の方法によって得られた生成物の物性を表1に示す。
【0101】
B.得られた沈降炭酸カルシウムのコーティング試験での使用
以下の比較例と実施例に、本発明の方法に従って得られた沈降二価金属イオンカーボネート生成物の、プレコーティング配合物中の顔料としての使用を示す。
【0102】
まず最初に、水性懸濁液の総重量に対して10から30重量%の範囲の固形分を有する沈降二価金属イオンカーボネート生成物の水性懸濁液を、40から80重量%の範囲、好ましくは50から75重量%の範囲、より好ましくは60から75重量%の範囲の最終固形分を有するように濃縮する。濃縮は、当業者に知られた任意の方法、例えば、熱濃縮、部分脱水などによって行われ得る。しかしながら、水性懸濁液の総重量に対して40から80重量%の範囲の固形分を有する沈降二価金属イオンカーボネート生成物の懸濁液を得るための択一的な方法は、10から30重量%の範囲の固形分を有する沈降二価金属イオンカーボネート生成物の水性懸濁液をフィルタープレスまたは同様の手段の使用によって脱水し、得られた沈降二価金属イオンカーボネート生成物の脱水残渣を、40から80重量%の範囲の固形分を有する沈降二価金属イオンカーボネート生成物の水性懸濁液が生成されるのに充分な量の液体に再分散させることである。
【0103】
これを、それぞれ実施例2および比較例3で得られた生成物について、以下に比較例4および実施例5に詳細に記載する。
【0104】
比較例4
比較例3に記載の先行技術の方法で得られたPCC/廃棄物CaCO複合生成物をフィルタープレスで機械的に脱水し、排出された濾過ケークを、充分な量の当業者によく知られた適切な分散化剤の存在下、ハイシェアミキサー内で再分散させ、コーティング用顔料として使用され得る高固形物スラリーを得た。変換(メイクダウン)後の生成物を、72.8%乾燥物のPCC/廃棄物CaCO複合生成物を含む水性スラリー(即ち、高固形物スラリー)として回収した。
【0105】
比較例4に記載の方法で得られた生成物の物性を表1に示す。
【0106】
実施例5
本発明の実施例2に記載の本発明の方法で得られたPCC/廃棄物CaCO複合生成物をフィルタープレスで機械的に脱水し、排出された濾過ケークをハイシェアミキサー内で再分散させ、コーティング用顔料として使用され得る高固形物スラリーを得た。濾過ケークをスラリーに変換(スラリーメイクダウン)中、充分な量の当業者によく知られた適切な分散化剤を添加した。変換(メイクダウン)後の生成物を、66.8%の乾燥物のPCC/廃棄物CaCO複合生成物を含む水性スラリーとして回収した。
【0107】
実施例5に記載の方法で得られた生成物の物性を表1に示し、SEM顕微鏡写真を図4に開示する。
【0108】
コーティングパイロット試験では、比較例4(先行技術)および実施例5(本発明)で得られたPCC/廃棄物CaCO複合コーティング用顔料を、液体包装用板紙(Liquid Packaging Board)(LPB)プレコーティング配合物で評価し、該用途に典型的に使用されている当該分野の技術水準のコーティング用顔料と比較した。
【0109】
上記の比較例4(先行技術)および実施例5(本発明)で得られた生成物を使用し、第1および第2プレコーティング配合物を調製した(試験M8およびM9)。さらに、比較する理由のため(試験番号1)、廃棄物PCCを全く含有していない第1および第2プレコーティング配合物も調製した。
【0110】
試験番号2(本発明)および試験番号3(先行技術)では、どの第1プレコーティング配合物にも具体的な廃棄物PCCに加えて、ラテックス、合成増粘剤および架橋剤も含有させた。また、第2プレコーティング配合物には具体的な廃棄物PCCに加えて、ラテックス、カルボキシメチルセルロース(CMC)、架橋剤およびステアリン酸カルシウム(Ca−ステアレート)を含有させた。
【0111】
第1および第2プレコーティング配合物の組成を表2に示す。
【0112】
コーティングのコンセプト
コーターパイロット試験を400m/分で、ダブルプレコート包装用板紙の性質に対する種々のコーティング配合物の影響を評価する目的で行った。
【0113】
定量サイズプレスを使用し、298g/mの坪量、76.5%の明度および5.8μmのPPS粗さを有する包装用板紙原紙をコーティングし、第1プレコートは4g/mのコーティング重量を有していた。使用したロッドは溝付きで12mmの直径を有するものとした。
【0114】
次の工程では、第2プレコーティングを第1プレコーティング上に、0.38mm厚の屈曲ブレードによる噴流適用を用いて適用した。適用されたコーティング重量は10g/mであった。
【0115】
屈曲ブレードならびに定量サイズプレスを使用することにより、良好な被覆率および良好な印刷適性のための平滑な表面が得られる。屈曲ブレードは潤滑性計量ユニットとして機能し、また、適用対象のコーティングより下方に表面を圧迫することにより、平滑な表面が得られるようにコンツーア包装用(contour)コーティングを促進させ、一方、定量サイズプレスは、被覆率の向上のために典型的なコンツーア包装用コーティングに適用される。
【0116】
使用した配合、方法および条件ならびに結果を表2に示す。
【0117】
表1から、本発明による方法によって得られる沈降炭酸カルシウム生成物では、先行技術の方法によって得られた沈降炭酸カルシウムと同等の明度(比較例1と比べて)またはさらにより良好な明度(比較例3と比べて)が示されることが明らかである。
【0118】
表1:先行技術の方法および本発明に従って得られた沈降炭酸カルシウムの物性
【0119】
【表2】
【0120】
表2:先行技術の方法(M1,M9)および本発明(M8)により得られた炭酸カルシウム生成物を含有している配合物を含むコーティングパイロット試験のデータおよび結果
【0121】
【表3】
【0122】
試験番号2(本発明)および試験番号3(先行技術)においてわかるように、実施例5で得られた本発明の生成物では、比較例4で得られた先行技術の生成物と比べて、低純度のパルプ工場廃棄物CaCOの割合がずっと高い(即ち、15%に対して23.5%)にもかかわらず、第2プレコートの後、板紙において同様の明度およびPPS粗さが得られた。
【0123】
低純度廃棄物物質が全く含まれていない当該分野の技術水準の「バージン」GCC(磨砕炭酸カルシウム)顔料を含有している液体包装用板紙(LPB)プレコーティング配合物と比較すると、明度は同様のレベルに維持され、PPS粗さはさらに改善された(対照試験番号1を本発明による試験番号2と比較して参照のこと)。
【0124】
要約すると、本発明の発明者らは、廃棄物から回収された材料である二価金属イオンカーボネートから、先行技術の方法によって得られた沈降二価金属イオンカーボネート生成物と比べて同等またはさらに改善された明度を有する沈降二価金属イオンカーボネート生成物を製造させることができた。
【0125】
また、本発明者らは、本発明の沈降二価金属イオンカーボネート生成物、特に沈降炭酸カルシウム生成物が、包装用板紙のためのプレコーティング配合物中のコーティング用顔料として使用され得、この板紙が、先行技術の方法によって得られ、含有された低純度パルプ工場廃棄物CaCOの割合がより少ない沈降二価金属イオンカーボネート生成物を含むプレコーティング配合物で処理した板紙と比べて同様の明度およびPPS粗さを有することを示すことができた。
【0126】
低純度廃棄物物質が全く含まれていない当該分野の技術水準の「バージン」GCC(磨砕炭酸カルシウム)顔料を含有している液体包装用板紙(LPB)プレコーティング配合物と比較すると、明度は同様のレベルに維持され、PPS粗さはさらに改善された。
【0127】
最後に大切なことは、本発明は、製紙およびセルロース工業において二価金属イオンカーボネート残留物のコスト効率の悪い貯蔵と廃棄が回避されるため、環境保護に寄与する。また、さらに本発明は、前記二価金属イオンカーボネート残留物のコスト効率の悪い貯蔵と廃棄がもはや必要でなくなるため、該工業においてコストが削減されるという利点を有する。
【0128】
前述の説明および実施例は、本発明の例示のために示したにすぎず、限定を意図するものでないことに注意されたい。本発明の精神および本質が組み込まれた記載の実施形態の変形例は当業者に思い付くであろうことから、本発明は、以下の特許請求の範囲およびこの均等物の範囲に含まれるあらゆる異型形態が包含されるように広く解釈すべきである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6