特許第5778863号(P5778863)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5778863セリウムをドープしたタングステン酸バリウム・マグネシウム発光薄膜及びその製造方法、並びに電界発光デバイス
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5778863
(24)【登録日】2015年7月17日
(45)【発行日】2015年9月16日
(54)【発明の名称】セリウムをドープしたタングステン酸バリウム・マグネシウム発光薄膜及びその製造方法、並びに電界発光デバイス
(51)【国際特許分類】
   C09K 11/68 20060101AFI20150827BHJP
   C09K 11/00 20060101ALI20150827BHJP
   C09K 11/08 20060101ALI20150827BHJP
   H05B 33/14 20060101ALI20150827BHJP
   H05B 33/10 20060101ALI20150827BHJP
   C23C 14/34 20060101ALI20150827BHJP
【FI】
   C09K11/68CQC
   C09K11/00 A
   C09K11/08 B
   H05B33/14 Z
   H05B33/10
   C23C14/34 A
【請求項の数】10
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-517373(P2014-517373)
(86)(22)【出願日】2011年6月28日
(65)【公表番号】特表2014-528004(P2014-528004A)
(43)【公表日】2014年10月23日
(86)【国際出願番号】CN2011076467
(87)【国際公開番号】WO2013000117
(87)【国際公開日】20130103
【審査請求日】2013年12月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】512226860
【氏名又は名称】▲海▼洋王照明科技股▲ふん▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100091214
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 進介
(72)【発明者】
【氏名】周明杰
(72)【発明者】
【氏名】王平
(72)【発明者】
【氏名】▲陳▼吉星
(72)【発明者】
【氏名】黄▲輝▼
【審査官】 内藤 康彰
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−220299(JP,A)
【文献】 特開平05−320639(JP,A)
【文献】 特開2006−004658(JP,A)
【文献】 特開平01−263188(JP,A)
【文献】 特開平08−092553(JP,A)
【文献】 特開昭58−021477(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09K11/00−11/89
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
セリウムをドープしたタングステン酸バリウム・マグネシウム発光薄膜であって、
MgBa1−xCe3+からなる組成式を有し、
式において、xが0.13〜0.96で、が0.0002〜0.0124である、セリウムをドープしたタングステン酸バリウム・マグネシウム発光薄膜。
【請求項2】
前記xが0.43で、が0.0023である、ことを特徴とする請求項1に記載のセリウムをドープしたタングステン酸バリウム・マグネシウム発光薄膜。
【請求項3】
セリウムをドープしたタングステン酸バリウム・マグネシウム発光薄膜の製造方法であって、
酸化マグネシウム、酸化バリウム、三酸化タングステン、及び三酸化二セリウムを混合して焼結を行い、スパッタ・ターゲット材を形成し、その中、前記酸化マグネシウムの含有量が質量百分率で0.1%〜15%であり、前記酸化バリウムの含有量が質量百分率で0.1%〜40%であり、前記三酸化二セリウムの含有量が質量百分率で0.01%〜0.8%であり、残量が三酸化タングステンである工程と、
前記スパッタ・ターゲット材に対してマグネトロンスパッタリングを行い、セリウムをドープしたタングステン酸バリウム・マグネシウム発光薄膜の前駆体を形成する工程と、
前記セリウムをドープしたタングステン酸バリウム・マグネシウム発光薄膜の前駆体に対してアニール処理を行って、セリウムをドープしたタングステン酸バリウム・マグネシウム発光薄膜を得る工程と、
を備え、前記セリウムをドープしたタングステン酸バリウム・マグネシウム発光薄膜はMgBa1−x:yCe3+からなる組成式を有する、セリウムをドープしたタングステン酸バリウム・マグネシウム発光薄膜の製造方法。
【請求項4】
前記酸化マグネシウムの含有量は質量百分率で0.2%〜10%であり、前記酸化バリウムの含有量は質量百分率で0.2%〜30%であり、前記三酸化二セリウムの含有量は質量百分率で0.02%〜0.6%であり、残量は三酸化タングステンである、ことを特徴とする請求項3に記載のセリウムをドープしたタングステン酸バリウム・マグネシウム発光薄膜の製造方法。
【請求項5】
前記酸化マグネシウムの含有量は質量百分率で6%であり、前記酸化バリウムの含有量は質量百分率で30%であり、前記三酸化二セリウムの含有量は質量百分率で0.15%であり、残量は三酸化タングステンである、ことを特徴とする請求項3に記載のセリウムをドープしたタングステン酸バリウム・マグネシウム発光薄膜の製造方法。
【請求項6】
前記焼結工程における温度は900〜1300℃である、ことを特徴とする請求項3に記載のセリウムをドープしたタングステン酸バリウム・マグネシウム発光薄膜の製造方法。
【請求項7】
前記のスパッタリングの工程を行う条件は、基板とターゲット材との距離が50〜100mmであり、基板温度を250℃〜750℃とし、水素ガスと不活性ガスとの混合ガスを作動ガスとし、ガス流量を15〜30sccmとし、圧力を0.2〜4.5Paとする、ことを特徴とする請求項3に記載のセリウムをドープしたタングステン酸バリウム・マグネシウム発光薄膜の製造方法。
【請求項8】
前記混合ガスにおける水素ガスの含有量は、体積百分率で1%〜15%である、ことを特徴とする請求項7に記載のセリウムをドープしたタングステン酸バリウム・マグネシウム発光薄膜の製造方法。
【請求項9】
前記アニール処理の温度は500℃〜800℃で、時間は1〜3時間である、ことを特徴とする請求項3に記載のセリウムをドープしたタングステン酸バリウム・マグネシウム発光薄膜の製造方法。
【請求項10】
請求項1〜2のいずれか1項に記載のセリウムをドープしたタングステン酸バリウム・マグネシウム発光薄膜を有する、電界発光デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体光電材料の技術分野に属し、特にセリウムをドープしたタングステン酸バリウム・マグネシウム発光薄膜及びその製造方法、並びにセリウムをドープしたタングステン酸バリウム・マグネシウム発光薄膜を有する電界発光デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
灰重石の構造を有するAWO(A=Ca、Sr、Ba)は、重要なレーザー材料の一つである。これらは、常温で四方相の構造を示し、紫外線で励起すると青色光を発光する。タングステン酸バリウムは、室温から融点(1820K)までの間でずっと四方相の構造を維持し、優れた構造的安定性を有する。タングステン酸バリウムは、これらの優れる性能を有しているため、発光及び表示技術や、レーザー及び光電子技術や、探測技術などの分野において、魅力的な応用見通しを持っている。現在、タングステン酸バリウムは、蛍光粉に応用されている。しかしながら、セリウムをドープしたタングステン酸バリウム・マグネシウム発光薄膜の分野において、タングステン酸バリウムの関与度は比較的に少なく、且つ形成された膜の発光効率が高くなく、その製造プロセスも複雑である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
これに鑑み、本発明の実施例は、セリウムをドープしたタングステン酸バリウム・マグネシウム発光薄膜、及びその製造方法、並びセリウムをドープしたタングステン酸バリウム・マグネシウム発光薄膜を有する電界発光デバイスを提供するものである。これにより、従来技術におけるタングステン酸バリウム・セリウムをドープしたタングステン酸バリウム・マグネシウム発光薄膜の製造ポロセスが複雑で、コストが高く、タングステン酸塩セリウムをドープしたタングステン酸バリウム・マグネシウム発光薄膜の発光効率が低いという課題を解決することができる。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、以下の通りに実現される。
セリウムをドープしたタングステン酸バリウム・マグネシウム発光薄膜であって、MgBa1−xCe3+のような分子式を有し、式の中で、xが0.13〜0.96で、が0.0002〜0.0124である。
【0005】
さらに、セリウムをドープしたタングステン酸バリウム・マグネシウム発光薄膜の製造方法であって、
酸化マグネシウムの含有量は質量百分率で0.1%〜15%であり、酸化バリウムの含有量は質量百分率で0.1%〜40%であり、三酸化二セリウムの含有量は質量百分率で0.01%〜0.8%であり、残量は三酸化タングステンであるように、酸化マグネシウム、酸化バリウム、三酸化タングステン、及び三酸化二セリウムを混合して、焼結を行ってスパッタ・ターゲット材を形成する工程と、
当該スパッタ・ターゲット材に対してマグネトロンスパッタリングを行って、セリウムをドープしたタングステン酸バリウム・マグネシウム発光薄膜の前駆体を形成する工程と、
当該セリウムをドープしたタングステン酸バリウム・マグネシウム発光薄膜の前駆体に対してアニール処理を行って、セリウムをドープしたタングステン酸バリウム・マグネシウム発光薄膜を得る工程と、を備える。
【0006】
本発明の実施例は、さらに、上記のセリウムをドープしたタングステン酸バリウム・マグネシウムを有する電界発光デバイスを提供する。
【発明の効果】
【0007】
本発明の実施例に係るセリウムをドープしたタングステン酸バリウム・マグネシウム発光薄膜は、セリウムとタングステン酸バリウム・マグネシウムとの配合作用により、比較的に強い発光効率を得ることができ、さらに赤色光区域及び青色光区域のいずれにおいても、比較的に強い発光ピークを有し、例えば、470nm及び670nmにおいて発光ピークを有する。本発明の実施例に係るセリウムをドープしたタングステン酸バリウム・マグネシウム発光薄膜の製造方法は、その操作が簡単で、コストが低廉で、工業化生産に適している。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の実施例に係るセリウムをドープしたタングステン酸バリウム・マグネシウム発光薄膜の製造方法のフローチャートである。
図2】実施例1で得られたセリウムをドープしたタングステン酸バリウム・マグネシウム発光薄膜のXRDスペクトルである。
図3】本発明の実施例に係るセリウムをドープしたタングステン酸バリウム・マグネシウム発光薄膜のELスペクトルである。
図4】本発明の実施例に係るセリウムをドープしたタングステン酸バリウム・マグネシウム発光薄膜の発光強度と、発光ピーク値と、酸化マグネシウ含有量との関係を示すグラフである。
図5】本発明の実施例に係るセリウムをドープしたタングステン酸バリウム・マグネシウム発光薄膜を用いた電界発光デバイスの構造を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の目的、技術手段及び利点をより明らかにするために、図面と実施例に基づいて、本発明をさらに詳細に説明する。ただし、ここで具体的に記載された実施例は、本発明を解釈するためのものに過ぎず、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0010】
本発明の実施例は、セリウムをドープしたタングステン酸バリウム・マグネシウム発光薄膜を提供する。当該セリウムをドープしたタングステン酸バリウム・マグネシウム発光薄膜は、下記のような分子式を有する。
MgBa1−xCe3+
式中、xが0.13〜0.96であり、好ましくは0.43であり、が0.0002〜0.0124であり、好ましくは0.0023である。
【0011】
本発明の実施例に係るセリウムをドープしたタングステン酸バリウム・マグネシウム発光薄膜は、タングステン酸バリウム・マグネシウムを発光薄膜の発光基質とし、セリウム元素を発光中心として、タングステン酸バリウム・マグネシウムとセリウムとの配合作用により、本発明の実施例に係るセリウムをドープしたタングステン酸バリウム・マグネシウム発光薄膜は、より強い発光効率を有することができる。発光基質であるタングステン酸バリウム・マグネシウムにおけるマグネシウム及びバリウムの含有量の変化により、セリウムをドープしたタングステン酸バリウム・マグネシウム発光薄膜の発光強度を調整する。
【0012】
図3は本発明の実施例に係るセリウムをドープしたタングステン酸バリウム・マグネシウム発光薄膜のELスペクトルを示す図である。図3に示すように、本発明の実施例に係るセリウムをドープしたタングステン酸バリウム・マグネシウム発光薄膜は、470nmと、670nmとの二つの箇所において、発光ピークを有することが分かる。図4は、本発明の実施例に係るセリウムをドープしたタングステン酸バリウム・マグネシウム発光薄膜の発光強度及び発光ピーク値が酸化マグネシウムの含有量による変化を示す変化図である。曲線1は、薄膜の発光強度の変化状況を示し、曲線2は、薄膜の発光ピーク値の変化状況を示す。図4に示すように、セリウムをドープしたタングステン酸バリウム・マグネシウム発光薄膜の発光強度は、酸化マグネシウムの含有量の向上に伴って、先ずは増加しており、その後は低下していった。製造方法で用いられた酸化マグネシウムの含有量が質量百分率で6%とする場合、発光の相対強度が最も強かった。酸化マグネシウムの含有量の増加に伴って、セリウムをドープしたタングステン酸バリウム・マグネシウム発光薄膜の発光ピーク値の波長は、次第に短くなる。
【0013】
図1は、本発明の実施例に係るセリウムをドープしたタングステン酸バリウム・マグネシウム発光薄膜の製造方法を示すフローチャートであり、図1に示すように、下記のような工程S01〜工程S03を備える。
【0014】
S01: スパッタ・ターゲット材を製造する。
酸化マグネシウム、酸化バリウム、三酸化タングステン、及び三酸化二セリウムを混合して、焼結を行ってスパッタ・ターゲット材を形成する。この場合、当該酸化マグネシウムの含有量は質量百分率で0.1%〜15%であり、当該酸化バリウムの含有量は質量百分率で0.1%〜40%であり、当該三酸化二セリウムの含有量は質量百分率で0.01%〜0.8%であり、残量は三酸化タングステンでる。
【0015】
S02: マグネトロンスパッタリングを行う。
当該スパッタ・ターゲット材に対してマグネトロンスパッタリングを行って、セリウムをドープしたタングステン酸バリウム・マグネシウム発光薄膜の前駆体を形成する。
【0016】
S03: アニール処理を行う。
当該セリウムをドープしたタングステン酸バリウム・マグネシウム発光薄膜の前駆体に対してアニール処理を行って、セリウムをドープしたタングステン酸バリウム・マグネシウム発光薄膜を得る。
【0017】
具体的には、上記の工程S01において、当該酸化マグネシウム(MgO)、酸化バリウム(BaO)、三酸化タングステン(WO)、及び三酸化二セリウム(Ce)は、純度99.99%以上の粉体である。当該酸化マグネシウムの含有量は、質量百分率で0.1%〜15%であり、好ましくは2%〜10%であり、例えば6%である。当該酸化バリウムの含有量は、質量百分率で0.1%〜40%であり、好ましくは0.2%〜30%であり、例えば30%である。当該三酸化二セリウムの含有量は、質量百分率で0.01%〜0.8%であり、好ましくは0.02%〜0.6%であり、例えば0.15%である。
【0018】
上記の工程S01において、酸化マグネシウム、酸化バリウム、三酸化タングステン、及び三酸化二セリウムを均一に混合させた後、900〜1300℃の温度で焼結を行って、Φ50×2mmのスパッタ・ターゲット材を形成する。当該焼結温度は、1250℃であることが好ましい。
【0019】
具体的には、工程S02において、ITO基板及び当該スパッタ・ターゲット材を、メッキ膜設備のチャンバーに入れ、機械ポンプや分子ポンプを用いてチャンバーの真空度が1.0×10−3Pa〜1.0×10−5Pa、好ましくは5.0×10−4Paになるように真空引きを行い、基板とターゲット材との距離が50〜100mmであり、基板温度が250℃〜750℃であり、水素ガスと不活性ガスとの混合ガスを作動ガスとし、ガス流量が15〜30sccmであり、圧力が0.2〜4.5Paである条件下で、スパッタリング処理を行い、セリウムをドープしたタングステン酸バリウム・マグネシウム発光薄膜の前駆体を得る。
【0020】
工程S02において、当該不活性ガスは特に限定されるものでなく、例えば、窒素ガス、ヘリウムガス、アルゴンガス、ネオンガスなどであってもよい。当該水素ガスと不活性ガスとの混合ガスにおいて、混合ガスにおける水素ガスの含有量は、体積百分率で1〜15%であり、好ましくは10%である。その中で、当該基板とターゲット材との距離は70mmであるのが好ましく、当該基板温度は600℃であるのが好ましく、ガス流量は25sccmであるのが好ましく、当該圧力は2.0Paであることが好ましい。
【0021】
具体的には、工程S03において、当該セリウムをドープしたタングステン酸バリウム・マグネシウム発光薄膜の前駆体を、圧力が0.01Paである真空炉でアニール処理を1〜3h、好ましくは2h行い、アニール温度が500℃〜800℃、好ましくは700℃であり、これにより、セリウムをドープしたタングステン酸バリウム・マグネシウム発光薄膜を得る。
【0022】
本発明の実施例に係るセリウムをドープしたタングステン酸バリウム・マグネシウム発光薄膜の製造方法では、酸化マグネシウム、酸化バリウム、三酸化タングステン、及び三酸化二セリウムを混合して焼結を行い、スパッタ・ターゲット材を形成し、更にスパッタにより成膜して、セリウムをドープしたタングステン酸バリウム・マグネシウム発光薄膜を得る。当該セリウムをドープしたタングステン酸バリウム・マグネシウム発光薄膜は、より強い発光効率を有する。本発明の実施例に係るセリウムをドープしたタングステン酸バリウム・マグネシウム発光薄膜の製造方法は、その操作が簡単で、コストが低廉であるため、工業化生産に適している。
【0023】
また、本発明の実施例は、さらに上記のセリウムをドープしたタングステン酸バリウム・マグネシウム発光薄膜の電界発光デバイスにおける応用を提供する。図5は、本発明の実施例に係るセリウムをドープしたタングステン酸バリウム・マグネシウム発光薄膜を用いた電界発光デバイスの構造を示す図である。図5に示すように、当該電界発光デバイスには、陽極1、発光層2及び陰極3を含む。当該陽極1の材質はITOガラスであり、当該発光層2の材質は本発明の実施例に係るセリウムをドープしたタングステン酸バリウム・マグネシウム発光薄膜であり、当該陰極3の材質は銀である。
【0024】
以下、具体的な実施例に基づき、上記のセリウムをドープしたタングステン酸バリウム・マグネシウム発光薄膜の製造方法を、より詳細に説明する。
【0025】
(実施例1)
酸化マグネシウム、酸化バリウム、三酸化二セリウム、及び三酸化タングステンを、均一に混合させて混合物を得る。その中、MgOの含有量は質量百分率で6%であり、BaOの含有量は質量百分率で30%であり、Ceの含有量は質量百分率で0.15%であり、残量はWOである(質量比)。
【0026】
当該混合物に対して1250℃で焼結を行って、Φ50×2mmのセラミックスパッタ・ターゲット材を形成する。
【0027】
ターゲット材を真空チャンバー内に入れ、その後、先ず、アセトン、無水エタノール及び脱イオン水を用いて、ITOを有するガラス基板に対して超声波洗浄を行い、次に、それに対して酸素プラズマ処理を行い、そして真空チャンバーに入れ、ターゲット材と基板との距離を75mmとし、機械ポンプや分子ポンプを用いてチャンバーの真空度を5.0×10−4Paに真空引きを行い、作動ガスとして水素ガスの体積含有率が10%であるアルゴン・水素混合ガスを流し込み、ガス流量を25sccmとし、圧力を2.0Paに調整し、基板温度を600℃とし、スパッタリング処理を行うことにより、セリウムをドープしたタングステン酸バリウム・マグネシウム発光薄膜の前駆体を得る。
【0028】
セリウムをドープしたタングステン酸バリウム・マグネシウム発光薄膜の前駆体を、0.01Paの真空炉において温度700℃の条件で2h(時間)のアニール処理を行うことにより、セリウムをドープしたタングステン酸バリウム・マグネシウム発光薄膜を得る。
【0029】
得られたセリウムをドープしたタングステン酸バリウム・マグネシウム発光薄膜の分子式は、Mg0.43Ba0.57:0.0023Ce3+である。
【0030】
その後、セリウムをドープしたタングステン酸バリウム・マグネシウム発光薄膜の上面に、陰極としてAg層を蒸着し、本発明の実施例に係るセリウムをドープしたタングステン酸バリウム・マグネシウム発光薄膜を有する電界発光デバイスを得る。
【0031】
図2は、実施例1で得られたセリウムをドープしたタングステン酸バリウム・マグネシウム発光薄膜のXRDスペクトルである。図2に示すように、標準PDFカードを対照することにより、タングステン酸バリウムの結晶化ピークは確定されたが、ドーピング元素及びその他の不純物の回折ピークは現れてなかった。
【0032】
(実施例2)
酸化マグネシウム、酸化バリウム、三酸化二セリウム、及び三酸化タングステンを、均一に混合させて混合物を得る。その中、MgOの含有量は質量百分率で0.1%であり、BaOの含有量は質量百分率で40%であり、Ceの含有量は質量百分率で0.01%であり、残量はWOである(質量比)。
当該混合物に対して900℃で焼結を行って、Φ50×2mmのセラミックスパッタ・ターゲット材を形成する。
【0033】
ターゲット材を真空チャンバー内に入れ、その後、先ず、アセトン、無水エタノール及び脱イオン水を用いて、ITOを有するガラス基板に対して超声波洗浄を行い、次に、それに対して酸素プラズマ処理を行い、そして真空チャンバーに入れ、ターゲット材と基板との距離を50mmとし、機械ポンプや分子ポンプを用いてチャンバーの真空度を1.0×10−5Paになるように真空引きを行い、作動ガスとして水素ガスの体積含有率が1%のアルゴン・水素混合ガスを流し込み、ガス流量を15sccmとし、圧力を0.2Paに調整し、基板温度を600℃とし、スパッタリング処理を行うことにより、セリウムをドープしたタングステン酸バリウム・マグネシウム発光薄膜の前駆体を得る。
【0034】
セリウムをドープしたタングステン酸バリウム・マグネシウム発光薄膜の前駆体を、0.01Paの真空炉において温度500℃の条件下で1hのアニール処理を行うことにより、セリウムをドープしたタングステン酸バリウム・マグネシウム発光薄膜を得る。
【0035】
得られたセリウムをドープしたタングステン酸バリウム・マグネシウム発光薄膜の分子式は、Mg0.13Ba0.87:0.0002Ce3+である。
【0036】
その後、セリウムをドープしたタングステン酸バリウム・マグネシウム発光薄膜の上面に、陰極としてAg層を蒸着し、本発明の実施例に係るセリウムをドープしたタングステン酸バリウム・マグネシウム発光薄膜を有する電界発光デバイスを得る。
【0037】
(実施例3)
酸化マグネシウム、酸化バリウム、三酸化二セリウム、及び三酸化タングステンを、均一に混合させて混合物を得る。その中、MgOの含有量は質量百分率で15%であり、BaOの含有量は質量百分率で0.1%であり、Ceの含有量は質量百分率で0.8%であり、残量はWOである(質量比)。
当該混合物に対して1300℃で焼結を行って、Φ50×2mmのセラミックスパッタ・ターゲット材を形成する。
【0038】
ターゲット材を真空チャンバー内に入れ、その後、先ず、アセトン、無水エタノール及び脱イオン水を用いて、ITOを有するガラス基板に対して超声波洗浄を行い、次に、それに対して酸素プラズマ処理を行い、そして真空チャンバーに入れ、ターゲット材と基板との距離を100mmとし、機械ポンプや分子ポンプを用いてチャンバーの真空度を1.0×10−3Paになるように真空引きを行い、作動ガスとして水素ガスの体積含有率が15%であるアルゴン・水素混合ガスを流し込み、ガス流量を30sccmとし、圧力を4.5Paに調整し、基板温度を600℃とし、スパッタリング処理を行うことにより、セリウムをドープしたタングステン酸バリウム・マグネシウム発光薄膜の前駆体を得る。
【0039】
セリウムをドープしたタングステン酸バリウム・マグネシウム発光薄膜の前駆体を、0.01Paの真空炉において温度800℃の条件で3hのアニール処理を行うことにより、セリウムをドープしたタングステン酸バリウム・マグネシウム発光薄膜を得る。
【0040】
得られたセリウムをドープしたタングステン酸バリウム・マグネシウム発光薄膜の分子式は、Mg0.96Ba0.04:0.0124Ce3+である。
【0041】
その後、セリウムをドープしたタングステン酸バリウム・マグネシウム発光薄膜の上面に、陰極としてAg層を蒸着し、本発明の実施例に係るセリウムをドープしたタングステン酸バリウム・マグネシウム発光薄膜を有する電界発光デバイスを得る。
【0042】
(実施例4)
酸化マグネシウム、酸化バリウム、三酸化二セリウム、及び三酸化タングステンを、均一に混合させて混合物を得る。その中、MgOの含有量は質量百分率で0.2%であり、BaOの含有量は質量百分率で30%であり、Ceの含有量は質量百分率で0.6%であり、残量はWOである(質量比)。
当該混合物に対して900℃で焼結を行って、Φ50×2mmのセラミックスパッタ・ターゲット材を形成する。
【0043】
ターゲット材を真空チャンバー内に入れ、その後、先ず、アセトン、無水エタノール及び脱イオン水を用いて、ITOを有するガラス基板に対して超声波洗浄を行い、次に、それに対して酸素プラズマ処理を行い、そして真空チャンバーに入れ、ターゲット材と基板との距離を50mmとし、機械ポンプや分子ポンプを用いてチャンバーの真空度を5.0×10−4Paになるように真空引きを行い、作動ガスとして水素ガスの体積含有率が8%であるアルゴン・水素混合ガスを流し込み、ガス流量を20sccmとし、圧力を0.2Paに調整し、基板温度を600℃とし、スパッタリング処理を行うことにより、セリウムをドープしたタングステン酸バリウム・マグネシウム発光薄膜の前駆体を得る。
【0044】
セリウムをドープしたタングステン酸バリウム・マグネシウム発光薄膜の前駆体を、0.01Paの真空炉において温度500℃の条件下で2hのアニール処理を行うことにより、セリウムをドープしたタングステン酸バリウム・マグネシウム発光薄膜を得る。
【0045】
得られたセリウムをドープしたタングステン酸バリウム・マグネシウム発光薄膜の分子式は、Mg0.026Ba0.974:0.0093Ce3+である。
【0046】
その後、セリウムをドープしたタングステン酸バリウム・マグネシウム発光薄膜の上面に、陰極としてAg層を蒸着し、本発明の実施例に係るセリウムをドープしたタングステン酸バリウム・マグネシウム発光薄膜を有する電界発光デバイスを得る。
【0047】
(実施例5)
酸化マグネシウム、酸化バリウム、三酸化二セリウム、及び三酸化タングステンを、均一に混合させて混合物を得る。その中、MgOの含有量は質量百分率で10%であり、BaOの含有量は質量百分率で0.2%であり、Ceの含有量は質量百分率で0.4%であり、残量はWOである。
当該混合物に対して1300℃で焼結を行って、Φ50×2mmのセラミックスパッタ・ターゲット材を形成する。
【0048】
ターゲット材を真空チャンバー内に入れ、その後、先ず、アセトン、無水エタノール及び脱イオン水を用いて、ITOを有するガラス基板に対して超声波洗浄を行い、次に、それに対して酸素プラズマ処理を行い、そして真空チャンバーに入れ、ターゲット材と基板との距離を80mmとし、機械ポンプや分子ポンプを用いてチャンバーの真空度を5.0×10−4Paになるように真空引きを行い、作動ガスとして水素ガスの体積含有率が11%のアルゴン・水素混合ガスを流し込み、ガス流量を23sccmとし、圧力を2.0Paに調整し、基板温度を600℃とし、スパッタリング処理を行うことにより、セリウムをドープしたタングステン酸バリウム・マグネシウム発光薄膜の前駆体を得る。
【0049】
セリウムをドープしたタングステン酸バリウム・マグネシウム発光薄膜の前駆体を、0.01Paの真空炉において温度650℃の条件下で2hのアニール処理を行うことにより、セリウムをドープしたタングステン酸バリウム・マグネシウム発光薄膜を得る。
【0050】
得られたセリウムをドープしたタングステン酸バリウム・マグネシウム発光薄膜の分子式は、Mg0.995Ba0.005:0.0062Ce3+である。
【0051】
その後、セリウムをドープしたタングステン酸バリウム・マグネシウム発光薄膜の上面に、陰極としてAg層を蒸着し、本発明の実施例に係るセリウムをドープしたタングステン酸バリウム・マグネシウム発光薄膜を有する電界発光デバイスを得る。
【0052】
(実施例6)
酸化マグネシウム、酸化バリウム、三酸化二セリウム、及び三酸化タングステンを、均一に混合させて混合物を得る。その中、MgOの含有量は質量百分率で15%であり、BaOの含有量は質量百分率で20%であり、Ceの含有量は質量百分率で0.8%であり、残量はWOである(質量比)。
当該混合物に対して1000℃で焼結を行って、Φ50×2mmのセラミックスパッタ・ターゲット材を形成する。
【0053】
ターゲット材を真空チャンバー内に入れ、その後、先ず、アセトン、無水エタノール及び脱イオン水を用いて、ITOを有するガラス基板に対して超声波洗浄を行い、次に、それに対して酸素プラズマ処理を行い、そして真空チャンバーに入れ、ターゲット材と基板との距離を95mmとし、機械ポンプや分子ポンプを用いてチャンバーの真空度を5.0×10−4Paになるように真空引きを行い、作動ガスとして水素ガスの体積含有率が9%であるアルゴン・水素混合ガスを流し込み、ガス流量を20sccmとし、圧力を2.0Paに調整し、基板温度を600℃とし、スパッタリング処理を行うことにより、セリウムをドープしたタングステン酸バリウム・マグネシウム発光薄膜の前駆体を得る。
【0054】
セリウムをドープしたタングステン酸バリウム・マグネシウム発光薄膜の前駆体を、0.01Paの真空炉において温度750℃の条件下で2.5hのアニール処理を行うことにより、セリウムをドープしたタングステン酸バリウム・マグネシウム発光薄膜を得る。
【0055】
得られたセリウムをドープしたタングステン酸バリウム・マグネシウム発光薄膜の分子式は、Mg0.74Ba0.26:0.0124Ce3+である。
【0056】
その後、セリウムをドープしたタングステン酸バリウム・マグネシウム発光薄膜の上面に、陰極としてAg層を蒸着し、本発明の実施例に係るセリウムをドープしたタングステン酸バリウム・マグネシウム発光薄膜を有する電界発光デバイスを得る。
【0057】
以上は、本発明の好ましい実施例に過ぎず、本発明はこれらに限定されるものではない。本発明の要旨を逸脱しない範囲内で行なった任意の変更・同等の入替・改良などは、すべて本発明の保護範囲に含まれるべきである。
図1
図2
図3
図4
図5