(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記担持板(11)に対して垂直に見た時に、前記複合体(10)が前記液体容器(19)を少なくとも部分的に覆い隠すことを特徴とする、請求項1に記載の吸入器コンポーネント。
【背景技術】
【0002】
概念の定義:
この特許出願明細書において、「吸入器」という概念は、医療用の吸入器にも、医療用ではない吸入器にも関するものである。この概念は更に、医薬品、及び医薬品としては指定されないような物質を投与するための吸入器をも含んでいる。それ以外にもこの概念は、例えば欧州特許分類A24F47/00Bに包摂されるような喫煙具及びタバコ代用品にも、それらが蒸気-空気混合物又は/及び凝縮エアロゾルを利用者に投与するためのものであると指定されている限りは、含むことになる。他にも「吸入器」という概念は、生成される蒸気-空気混合物又は/及び凝縮エアロゾルが、どのように利用者若しくはその身体に供給されるかについて、何ら条件を課すものでもない。蒸気-空気混合物又は/及び凝縮エアロゾルは、肺の中に吸入されるものであっても、--肺の中への吸入を伴わずに--口腔だけに供給されるものであってもかまわない。
【0003】
「毛管間隙」として、境界壁の毛管作用だけに基づき液体の輸送を引き起こす、ありとあらゆる間隙が看做される。芯、被覆が施された芯、又は芯材量で充填された管路は、毛管間隙ではない。
【0004】
単数形の「複合体」は、複数の複合体が存在する可能性を排除するものではない。ここに明示しておくが、本発明には、複数の複合体を有する配列も包摂されている。
【0005】
国際特許出願第2010/045671号明細書(ヘルムート・ブッホベルガー(Helmut Buchberger))には、蒸気-空気混合物又は/及び凝縮エアロゾルを、吸入又は吸込みと同期で間欠的に生成するための吸入器コンポーネントであって、一つのケース3と、このケース3内に配置される一つのチャンバ21と、このチャンバ21内に周辺から空気を供給するための一つの吸気口26と、一定量の液状材料16を気化させるための一つの電気式発熱体(
図9〜12及び
図17〜18)とから成っており、生成される蒸気が、吸気口26を通り供給される空気とチャンバ21内で混合されて、蒸気-空気混合物又は/及び凝縮エアロゾルを生成するようになっている、吸入器コンポーネントが説明されている。この吸入器コンポーネントは、他にも更に毛管構造を持つ一つの芯を有しているが、この芯は、発熱体と共に一つの面状の複合体22を形成しており、また一回の気化工程が終了すると、新たな液状材料16が発熱体に自動的に供給されるようになっている。この面状複合体22は、二つの末端部分により二つの導電性の板状接点23の上に横たわっており、発熱体はこれらの板状接点23の上で同時に電気接触されている。或いはその代わりに、これらの板状接点が、複数のプリント基板又は一つの共通プリント基板により形成されるようにしてもよい。面状複合体22の少なくとも一つの加熱される部分は、チャンバ21内に無接触方式で配置されており、またこの部分に位置する芯の毛管構造は、少なくとも面状複合体の片面24で実質的に露出している。面状複合体22若しくはその芯の一方の端部は、一つの毛管間隙41の内部に突出しており、またこの毛管間隙41自体は、液状材料16を収容した一つの液体容器4と毛管連結されている、若しくは毛管連結できるようになっている。この液体容器4は、使用前にはまだ封緘されている一つの開封可能な封緘部18を有している。この開封可能な封緘部18は、利用者が手で開封することができるが、それを受けて液状材料16は、一つのリザーバ45の内部に一気に流れ込んで、毛管間隙41を濡らすようになっている。毛管間隙41は、液体容器4若しくはリザーバ45から液状材料16を吸い上げて、複合体22へと輸送する。この毛管間隙41は、基本的に両方の板状接点23の内の一方と、その上に面状に載置されている上側部材42との間に形成される。それ以外にもこの板状接点23には、リザーバ45若しくは液体容器4をチャンバ21に連通する一つの通気通路52が作り込まれている。この通気通路52は、毛管間隙41に入り込む液状材料16の夫々の量を同体積の量の空気と直接入れ替えることによって、圧力補償をもたらすようになっている。
【0006】
液体容器4は、
図9の図面においては、複合体22を担持している板状接点23の上方に配置されている。この配置方式は、際立って多くの場所を取ることが判明しており、その結果、吸入器コンポーネントの寸法諸元は比較的大型となっている。また、毛管間隙が直立姿勢を取る場合は、その内部に作用する液柱の重量により、リザーバ45の内部に負圧を生じ、通気通路52の毛管現象によってこれを補償してやる必要が生じるが、しかしながら通気通路52の毛管現象が、平衡状態を保つには最早不十分なものとなると、液体容器4内の全ての液状材料16が毛管間隙41を通り今にも流れ出してしまうことになる、という意味で、毛管間隙41がその面状の広がり方において大きく限定されている点も、更にもう一つの短所である。何よりも特に複数の複合体を左右に並べて配置しなくはてはならない場合(
図29を参照)、又は/及び、相互に離間して配置される二つの末端部分を介して芯を浸潤させなければならない場合は、毛管間隙の面状の広がりを相応に拡大することが要求されるが、上記で説明した国際特許出願第2010/045671号に従った配置方式によっては、指摘した諸効果のために、それを実現するのは殆ど不可能となっている。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1には、本発明に従った吸入器が示されるが、その形状及びサイズは、利用者がこれを簡単かつ快適に取り扱うことができるようにデザインされている。この吸入器は、容積については、タバコの箱の略半分の大きさしかない。具体例として描かれているこの吸入器は、基本的には二つの部品から、詳細には一つの吸入器部品1と一つの吸入器コンポーネント2とから成っている。
【0015】
吸入器コンポーネント2は、一つのケース3から成り、その一方の端面にはタバコのパイプのような一つのマウスピース4が構成されている。このケース3は、プラスチック製であると好適である。吸入器コンポーネント2には液状材料が収められ、これがケース3の内部で電気的に気化されて、吸入可能な蒸気-空気混合物又は/及び凝縮エアロゾルに変換されるようになっている。生成された蒸気-空気混合物又は/及び凝縮エアロゾルは、マウスピース4を介して利用者に投与される。液状材料としては、基本的に、雰囲気条件下で実質的に残滓無しで気化することができる、ありとあらゆる物質及び調剤が検討対象となる。この条件は、その時々の物質又はその時々の調剤が、希釈されて、例えば水又は/及びエタノール中に溶けて存在しており、この溶液が実質的に残滓無しで気化する場合は、既に満たされていることになる。水又は/及びエタノールのような易揮発性溶剤中の希釈率を十分に高くすることによって、そうでなければ気化することが困難である物質についても、上述の条件を満たすことが可能となり、液状材料の熱分解を回避又は大幅に低減できるようになる。
【0016】
凝縮により発生されるエアロゾル粒子の空気動力学的質量中央径(MMAD)は通例2μm未満であり、それにより肺胞にも達することになる。本発明に従った吸入器は特に、系統的に作用する物質--特に主たる効果が中枢神経系で発揮されるような作用物質--の投与に適したものとなっている。その例としては、沸点が246℃であるニコチンを挙げられよう。ニコチンを含有したエアロゾル粒子は、主として気管支及び肺胞内に沈積するが、作用物質はそこで、瞬く間に血液循環系に受け継がれることになる。ニコチンは、遅くとも数秒後にはかなりの濃度で脳に到達して、そこで公然周知の効果を発揮する。
【0017】
吸入器部品1は一つのメインケース5から成るが、これはプラスチック製であると好適である。このメインケース5には、(
図1に破線で示されている)少なくとも一つのバッテリ6と一つの電気回路7とが、スイッチ7a共々内蔵されている。このバッテリ6と電気回路7により、液状材料の気化に必要なエネルギが提供される。バッテリ6は、例えばパナソニック社(www.industrial.panasonic.com)製の型番CGR18650Kの充電式蓄電池から成ると好適である。これは、蓄電容量が1,650 mAh、電流容量が最大30 Aの、18650サイズの円筒形リチウムイオン電池である。これに匹敵する電池は、中でも特にソニー、サムスン(Samsung)、LG化学(LG Chem)等、他のメーカによっても大量生産されている。
【0018】
図2に示されるように、吸入器部品1及び吸入器コンポーネント2は、この具体的な実施例においては、相互に切り離し自在な仕様となっている。この配置構成により、吸入器部品1は再利用が可能となっているが、これは、第一に、吸入器部品1が液状材料と接触しない点、即ち液状材料により汚染されない点、第二に、吸入器コンポーネント2の各構成部品よりも長寿命であるコンポーネントがこれに内蔵される点を鑑みると、基本的に有意である。利用者は、液状材料を使い切った後には、吸入器コンポーネント2を丸ごと適切な方法で廃棄して、新品の吸入器コンポーネント2と入れ替える。その限りにおいて、この吸入器コンポーネント2は、交換式の使い捨て商品となっている。中でも特に液状材料に医薬品又はニコチン等の毒物が含有される場合は、廃棄処分が適切に行われるようにした方が賢明である。当然ながら基本的には、吸入器部品1と吸入器コンポーネント2とを、一体型仕様、即ち相互に切り離し自在な仕様とすることも考えられよう。しかしながらその場合には、吸入器の各部品及びコンポーネントが全て、即ち吸入器が丸ごと、一回限りの使用のための使い捨て商品として構成されることになるために、この実施形態は経済的では無いと言えるだろう。当然ながらこの実施形態も本発明の対象に包摂されるが、この場合は吸入器全体が、吸入器コンポーネントとして捉えられることになる。
【0019】
交換式吸入器コンポーネント2と再利用可能な吸入器部品1間の機械的な連結は、再利用可能な吸入器部品1のメインケース5を貫通して形成されている、夫々が対応する受け口8b及びガイド溝9bの中に嵌まり込むようになっている、複数の差込み用舌片8a及びケース3により形成された複数のガイド突起9aを利用して行われる。これらの差込み用舌片8a及び受け口8bは、下記で更に詳しく説明するように、電気エネルギを交換式吸入器コンポーネント2に導入して液状材料を気化させるためにも同時に利用されるようになっている。
【0020】
図3a及び
図3bには、交換式吸入器コンポーネント2を異なる角度から見た図が示されている。
図4〜9には、この吸入器コンポーネント2のそれ以外の内部構造が明らかにされている。そこに示されるように、吸入器コンポーネント2のケース3は、実質的に直方体状の形状を有している。この直方体状のケース3の内部には、蒸気-空気混合物又は/及び凝縮エアロゾルを生成するための重要コンポーネントが配置されている。これに数えられるのは特に、液状材料の気化を引き起こすようになっている複合体10である。図示の具体的な実施例においては、六つの複合体10が左右に並べて配置されており、夫々の複合体は同じ一つの面状の形状を有している。これらの面状複合体10はいずれも、面状に相互接合された、又は入れ子式に面状に一体化された、一つの芯と一つの電気式発熱体とから成っている。面状複合体10は、例えば一つの金属フォイルと、その表面に焼結被覆された一つの金属クロス層とにより形成されるとよい。この金属クロスの代わりに、開放孔を有する金属フォームが使用されてもかまわない。芯は、金属フォイルの表面に焼結被覆されたクロス層の、若しくは金属フォームの、開放孔を有する毛管構造により形成され、また発熱体は、金属の電気抵抗により形成される。適切な金属性の抵抗材料は、例えばAISI規格304品質クラス又はAISI 規格316品質クラス等の特殊鋼、並びに伝熱合金、特にNiCr合金である。そのような面状複合体10の製造は、従来技術に数えられるものであり、例えば既に引用済みの国際特許出願第2010/045671号(ヘルムート・ブッホベルガー(Helmut Buchberger))明細書に詳細に開示されている。
【0021】
図4a及び
図7に最も良く示されるように、夫々の面状複合体10は、二つの末端部分10a、10bにより、一つの担持板11の上に横たわっている。この担持板11は、一つの大きな切取り部12を有しており、各複合体10はこの切取り部12の上に、何物とも接触することなく、掛け渡されるようになっている。担持板11は、図示の具体的な実施例においては、プリント基板として、特に多層プリント基板として実施されている。プラント基板11用の材料としては、基本的にありとあらゆる公知のプリント基板素材、特にFR-1グレードからFR-5グレードまでの素材が適している。面状複合体10は、夫々の末端部分10a、10bの領域内で、プリント基板11のランドパターン13の上で電気接触されている。
図7には、このランドパターン13が黒色の面として描かれている。上記で説明した金属フォイル複合体の場合は、場合によっては適切なフラックスを用いて前処理を施した後、フォイル側のろう接により、電気接触が行われるようになっている。AISI規格304品質クラス及びAISE規格316品質クラスの特殊鋼は、例えばシュタノル有限会社(Stannol GmbH, www.stannol.de)製の「5050S-Nirosta」という商品名の半田めっき濃縮液を使用して、問題なくろう接することができる。或いはその代わりに電気接触部は、導電性の接着剤を利用した、例えばエポキシ化合物をベースとする銀を含有した接着剤を利用した接着部から成っていてもかまわない。プリント基板11への各面状複合体10の実装、並びにそれらの接触は全自動で行われ、またその際にはプリント基板業界の方案を適用可能であるが、因みにこれらの方案は、大量生産にも適したものとなっている。
【0022】
プリント基板11は、ケース3から、上記で既に言及済みの差込み式舌片8aの形状となって突出している。差込み式舌片8aは両方とも、吸入器コンポーネント2に電気エネルギを導入するために利用される。電気エネルギは、夫々の複合体10にランドパターン13を介して供給される。
図7に示されるように、ランドパターン13はプリント基板11の表側11aにも裏側11bにも配置されているが、そこでは表側11aが、実装側--夫々の複合体10が接触される側--となっている。オプションとして更に別のランドパターンが、幾つかの中間層にも配置されるようにしてもよい。個々のランドパターン層は、従来技術に従って、所謂圧接部を利用して、相互接続されていると有用である。
図7には他にも更に電流フローが描かれている。そこに示されるように、この具体的な例においては、夫々三つの複合体10が相互に直列接続されている。それにより、その結果として得られる抵抗式発熱体に、ひいては加熱容量及び気化率に、ある程度の影響を与えられるようにしている。他にも、例えば金属フォイルの厚さを相応に変化させることによって、六つの複合体10の個々の電気抵抗の大きさが異なるようにしてもよい。この対策により、気化プロセスに、タバコの気化プロセスと同様に、場所依存性を持たせることができる。
【0023】
プリント基板11の表側11aには、実質的に板状の、プラスチック製であると好適である一つの上側部材14が被せられている(
図4c及び
図8〜10を参照)。この上側部材14は、サイズ及び配置方式に関してプリント基板11に設けられた切取り部12との相関性を示す一つの切欠き部15を有している。この上側部材14は、最も簡単なケースにおいては、夫々の面状複合体10の末端部分10a、10bの上に直接横たわっている。それにより上側部材14は、プリント基板11と一緒に、各面状複合体10の板厚と実質的に等しい内径若しくは間隙幅を持つ一つの毛管間隙16を形成している(
図9及び
図10を参照)。その間隙幅は、類型的に0.2 mmとなっている。
図4dには、面状に広がっている毛管間隙16が、黒色の面で描かれている。上側部材14は、接着部により、詳しく言うと二つの突起14a、14b及び一つのアングルブラケット17を利用して、プリント基板11上に取り付けられている。
【0024】
プリント基板11は、その裏側11bを下にして、液状材料18を収容した一つの液体容器19の上に横たわっている(
図4a/4b、
図8及び
図10を参照)。この液体容器19若しくはその壁面は、ケース3により形成されており、直方体状の形状を有している。プリント基板11は、接着部を利用して、この液体容器壁面に取り付けられていると好適である。液体容器19への液状材料18の充填は、工場側で、製造工程の最後に、好適には容器壁面に設けられた一つの小さな穴(不図示)を介して、一つのカニューレ及び一つの計量ユニットを利用して全自動で行われる。この穴は充填の後例えば溶融によって封止される。吸入器コンポーネント2全体が気密式に梱包されるようになっている。
【0025】
液体容器19は、その下側の端部に、密接して並べて配置される二つの開口部--供給口20及び通気口21(
図5、
図6及び
図9を参照)--を有している。供給口20は、プリント基板11の縁部と液体容器壁面の一つの突出部23とにより形成される一つの貫通口22に対応したものとなっている(
図6及び
図9を参照)。この突出部23は同時に、上側部材14のための一つのストッパを形成している。突出部23は、補強のために一つのウェブ24を介してケース3に支持されている。毛管間隙16への液状材料18の供給は、この供給口20と貫通口22とを介して行われ、毛管間隙16内に作用する毛管引力により推進される。そのような毛管引力がそもそも作用できるようになるためには、液状材料18により、これが当たる表面全体が良好に濡れていることが要求される。それを保証するためには、組付け工程に入る前の段階で、適切なプロセスにおいて、夫々の当該構成部品--即ち液体容器19、各複合体10を含めたプリント基板11、及び上側部材14--に親水化処理を施してやらなければならない。適切なプロセスは、酸素プラズマ中の親水化処理、並びにプラズマ重合を利用した親水化処理である。そのいずれのプロセスとも、例えばディーナー・エレクトロニック有限合資会社(Diener electronic GmbH u. Co. KG, www.plasma.de)により、委託発注の枠内で提供されている。他にもこの会社は、大量生産にも向いた相応の顧客固有のプラントを企画設計し施工することができる立場にある。
【0026】
通気口21は、プリント基板11に作り込まれた一つの通気溝25に対応したものとなっており、またこの通気溝25は、切取り部12を介して雰囲気圧力下にある一つの内部空間と連通している。通気口21及び通気溝25は、毛管間隙16に入り込む液状材料18の夫々の量を同体積の量の空気と直接置き換えることによって、圧力補償をもたらすようになっている。
【0027】
プリント基板11と液体容器19とが重なり合う配置方式、並びに上記で説明した供給口20、貫通口22、及び通気口21の配置方式により、左右に並べて配置された複数の複合体10に液状材料18を供給しなければならない場合に要求される、比較的大きな毛管間隙面積を備えることが可能となる。重量の作用によりいずれかの地点から液状材料18が漏れ出る怖れを十二分に回避できるようになる。吸入器コンポーネント2が
図8に示す垂直な姿勢(重力の作用を矢印の一つにより表示している)を取る時には、毛管間隙16が、貫通口22との位置関係において、それ以上下側に向かって延びることはないために、通気口21内の支配的な圧力は近似的に雰囲気圧となっている(
図4dを参照)。吸入器コンポーネント2が(マウスピース4が下方を指す)倒立姿勢を取る時には、確かに毛管間隙16内の液柱に誘発されて一定の負圧を生じるものの、しかしながら液体容器19内のエアクッションにより毛管連結が途絶されているために、この負圧は液体容器19内の液状材料18に逆作用を及ぼし得ないようになっている。液体容器19の充填が工場側で行われる場合は、容器内にこのエアクッションを生成するための小さな空気容積26が残されるようにする点だけに、注意が必要である。
【0028】
次に、本発明に従った吸入器の作動方式を詳しく説明する前に、吸入器コンポーネント2の更に別の構成要素について説明する。これらの構成要素が、直接的には本発明にとって重要なものではないかもしれないとはいえ、それらに関する以下の説明は、本発明に従った吸入器コンポーネントの機能全体に対する理解を更に深めると同時に、本発明の実施可能性をより確実に保証するのに資するものである。上側部材14とケース3との間には、開放孔を持つ、吸取り能力のある二つのスポンジ27a、27b(
図4e及び
図10を参照)が配置されている。これらのスポンジに挟まれた空間は、切欠き部15と共に一つのチャンバ28(他にも
図8を参照)を形成しており、その内部で、蒸気-空気混合物又は/及び凝縮エアロゾルの本来の生成が行われるようになっている。これらのスポンジ27a、27bは、夫々の細孔の中に、蒸気相から生成される凝縮堆積物を吸収して、吸入器コンポーネント2の内部に、吸入器コンポーネントの機能を阻害しかねない浮遊性の凝塊が生成されるのを防止する。そのような凝塊は、特にそれらがマウスピース4を通り利用者の口腔内に入り込む場合は、衛生上の観点からも問題である。フィルトローナ・ファイバーテック有限会社(Filtrona Fibertec GmbH, www.filtronafibertec.com)は、そのような繊維複合体の製造を専門とする会社であるが、そこでは、トリアセチンを用いて結合したセルロースアセテート繊維の加工も、また熱を加えて結合したポリオレフィン繊維及びポリエステル繊維の加工も行っている。
【0029】
これらのスポンジ27a、27bは、一つのU字形のブラケット29により形成されている夫々のアングル部29a、29bの上に横たわっている(
図4e及び
図10を参照)。このブラケット29は、接着部により上側部材14に接合されている。このブラケット29は、アングル部29a、29b共々、疎水性プラスチック製であると好適である。この疎水性材料は、一種の液体バリアのように作用して、液状材料18が毛管効果により夫々のスポンジ27a、27bに到達可能であることを保証する。夫々のアングル部29a、29bを接続している辺部29cの上側部材14と向き合った側には、一つの凹所30が作り込まれており、これが、上側部材14と一緒に、一つのエアノズル31を形成している(
図9及び
図10を参照)。このエアノズル31は、後程更に詳しく説明するように、雰囲気空気をチャンバ28の内部に取り入れるために利用される。このエアノズル31が凝縮堆積物により閉塞しないようにするために、薄い疎水性の接着テープ(不図示)を、エアノズル31の領域に位置する上側部材14の表面に貼り付けることが推奨される。
【0030】
蒸気-空気混合物又は/及び凝縮エアロゾルを生成するための、吸入器コンポーネント2への雰囲気空気の供給は、ケース3により形成された一つの吸込みシュノーケル32(
図3a/3b及び
図8を参照)を介して行われる。この吸込みシュノーケル32は、吸入コンポーネント2のマウスピース4とは反対側に配置されている。この位置は、雨水の浸入から最も容易に守られる位置でもある。吸入器コンポーネント2の吸込みシュノーケル32は、連結された状態においては、吸入器部品1のメインケース5を貫通して形成された一つの穴33(
図2を参照)を通り突出している。この吸込みシュノーケル32の内部には、一つの流れ絞り部34が配置されている。この流れ絞り部34は、タバコの流れ抵抗に類似した流れ抵抗を発生することによって、利用者が吸い込む間に、タバコを一服する時と同じ感触を得られるようにすることを、その目的としている。この流れ抵抗は、具体的には、毎分1.05 Lの質量流量で8〜16 mbarの範囲内に位置すると共に、可能な限り線形の特性を示さなければならない。この流れ絞り部34は、生成された蒸気-空気混合物又は/及び凝縮エアロゾルが、タバコの場合のように、即ち口腔内への一服(吸込み量: 20〜80 mL)として、場合によっては更にそれに続く肺の中への吸入も含めて、供給されるようにすべきである場合に、必要となるものである。このような運用方式は、何よりも特に液状材料18にニコチンが含まれる場合に推奨されるものである。しかしながら、例えば医療用吸入器の場合がそうであるように、吸入器を、一回のステップだけで肺の中への直接吸入を可能とするものとすべきである場合は、この流れ絞り部34は不要となる。流れ絞り部34は、タバコのフィルタに類似した一つの繊維複合体から成ると好適であるが、その際には材料の厚さを、上記で指摘した質量流量特性に適合するように調整しなければならない。この材料もまた、フィルトローナ・ファイバーテック有限会社(Filtrona Fibertec GmbH, www.filtronafibertec.com)から取り寄せることができる。
【0031】
以下では、吸入器の機能について詳しく説明するものとする。利用者は、新品の吸入器コンポーネント2を再利用可能な吸入器部品1と連結する。電気回路7は、この連結を感知すると、それを受けて場合により所定の準備操作、例えば、各複合体10への新鮮な液状材料18の供給、又は/及び定常条件の整備を目的とした、一回又は複数回の気化サイクルを実行させる。この操作が完了すると直ちに電気回路7は、例えば一つの発光ダイオードを介して、吸入器がスタンバイ状態に入ったことを知らせるようになっている。利用者は吸入器のマウスピース4を口まで持って行き、スイッチ7aを操作する。利用者はそれと同時にマウスピース4をくわえて吸込みを開始する。それにより発生される負圧の結果、空気が周辺から吸込みシュノーケル32の中へと流れ込む。この空気が流れ絞り部34を通り抜けた後には、流れが直角に曲がり(
図8及び
図9の矢印を参照)一つのプレナムチャンバ35の内部に合流するが、空気はそこに蓄えられ、続いてスリット状のエアノズル31に均一に供給される。気流は、このエアノズル31の内部で加速されて、一段と高い合流速度でチャンバ28の内部に入り込む。
【0032】
スイッチ7aの操作を受けて、回路7は加熱用電流のスイッチをオンにする。この加熱用電流は、パワーMSFETを利用して切り換えられるようにすると好適であるが、その場合は供給される電力を、動作周期(デューティーサイクル)を通じて、その時々の要件に適合するように調整することができる。この適合化は、利用者によっても、何からのインタフェースを介して所定の限度内で行うことができるようになっており、それにより、発生されるエアロゾル若しくは煙の量に利用者が影響を与えることを可能としている。この加熱用電流への切換えは、予め定められたある一定の時間(「加熱時間」)、類型的には1.0〜1.8秒にわたり行われるようになっている。加熱用電流は、プリント基板11の夫々の差込み式舌片8a及びランドパターン13を介して各複合体10に供給され、夫々の複合体10及び芯の内部に蓄えられた液状材料18の瞬時の加熱をもたらすが、液状材料18はそれにより気化される。この蒸気はチャンバ28の内部に放出され、蒸気はそこで、エアノズル31を通り流れ込む空気と混合される。このエアノズル31の配置方式と寸法諸元により、夫々の複合体10に沿って均一で急速な流れが引き起こされるようにしている。それにより、夫々の複合体10から放出される蒸気の周囲のいたる所に概ね等しい混合条件が存在して、蒸気と空気とが完全に混和されることを保証している。他にも、空気により蒸気の冷却がもたらされるために、気化した液状材料18に蒸気圧が十分に低い物質--所謂エアロゾル生成物質--が含まれている限り、凝縮エアロゾルを生成することができる。グリセロールは、そのようなエアロゾル生成物質の典型的な例である。
【0033】
チャンバ28内で生成された蒸気-空気混合物又は/及び凝縮エアロゾルは、図示の実施例においては、吸入のためにマウスピース4を介して利用者に投与される前に、最後に更に一つの放熱器36を通り流れるようになっている(
図4e及び
図8を参照)。この放熱器36は、例えば、生成された蒸気-空気混合物又は/及び凝縮エアロゾルが通って流れるようになっている細孔を有する一つの多孔質充填材料、一つのフリース状の繊維材料、又は一つの開放孔を持つ発泡材料から成るとよい。放熱器36を多段式の仕様に構成することもできるが、その場合は個々の放熱段が異なる特性を示すことになる。気化対象の材料にニコチンが含まれる場合は、少なくとも一つの放熱段の放熱器材料を、ある一つの適切な吸収剤、例えばクエン酸で被覆すると有利であるかもしれない。この吸収剤により、通って流れる凝縮エアロゾルから易揮発性のニコチンの留分が取り去られるようになっているが、そうでない場合は、この液揮発性ニコチン留分が口腔内及び咽頭内に沈積しかねないことになり、またそうなると、薬動力学面でも感覚刺激面でも望ましくないと言える。放熱器材料には、他にも更にメンソール等の芳香剤が添加されてもかまわない。
【0034】
適切なフリース状の繊維材料は、例えばフロイデンベルク・フリース材合資会社(Freudenberg Vliesstoffe KG、www.freudenberg-filter.com)から取り寄せることができる。Viledon(登録商標)フィルタマットという名称で販売される、ポリオレフィン繊維製のこの材料は、顧客が指定する明細に基づき仕立てられ、またその際には、発生される凝縮エアロゾルの微粒子に対して最終製品が十二分な透過性を示すように、材料特性を調整できるようになっている。適切な発泡材料は、例えばダンロップ・エクイップメント社(Dunlop Equipment, www.dunlop-equipment.com)から取り寄せることができる。ここで引き合いに出したこのサプライヤは、間隙率が90〜95%、細孔直径が約300μmの、板厚15 mm迄のボード形状をしたNiフォーム及びNiCrフォームを、Retimet(登録商標)(グレード80)という商品名で提供している。同社代理人が口頭で伝えたところによると、技術的な見地からはそれよりも更に若干微孔質のフォームの製造も可能であるという。他にも金属フォームは、更にそれに追加して、圧延により高密度化することができる。これらのボードは、レーザ切断加工又はワイヤカット放電加工により更に加工されるとよい。Niフォーム及び特にNiCrフォームは、高強度と並び、優れた熱安定性及び耐酸化性を特色としている。これらの特性は、吸入器コンポーネント2の寿命が尽きた後の、比較的高価な金属フォームのリサイクル及び再利用を容易なものとする。基本的に液状材料18にニコチンが含まれる場合は、吸入器コンポーネント2を消費者に引き渡すのは、適正な金額のデポジットが価格に上乗せされる場合に限られるべきである。そうすることによって、ニコチンの残滓によって汚染された放熱器36、スポンジ27a、27b、及び液体容器19の大半が、環境保護の観点からも適切な方法で廃棄処理されて、場合によっては再生されることが保証されることになる。
【0035】
加熱時間の最後には、回路7によりスイッチ7aは数秒間不動化される。この不動化は、例えば一つの発光ダイオードにより利用者に表示されるが、これは、各複合体10の冷却を可能にすると共に、夫々の芯が新たに液状材料18を完全に吸い込むことができるようにするためにも必要である。この流体伝達は元来各複合体10の毛管現象若しくはその芯によって誘発される。芯は、各複合体の末端部分10a、10bを介して、毛管間隙の枝路16a、16b(
図4b及び
図10を参照)から液状材料18を吸い上げる。即ち芯の浸潤は両側から行われるようになっている。毛管間隙の枝路16a、16bから液状材料18が吸い取られることにより、毛管間隙16内には一定の毛管圧力が誘発されるが、これが液体容器19の内部に迄、逆作用を及ぼすことによって、液状材料18が液体容器19から供給口20及び貫通口22を通り毛管間隙16の内部へと再び流れるようにしている(
図4bの矢印を参照)。液体容器19から取り出される液状材料18の量は、圧力補償の過程で等価量の空気により置換される。この圧力補償は、通気溝25及び通気口21を介して行われる。各複合体10若しくは芯が液状材料18によって完全に浸潤され次第、再度の気化サイクルに備え、吸入器の準備が整ったことになる。
【0036】
最後に更に液状材料18のニコチンを含有した調剤を例示的に開示するものとするが、この調剤の気化試験を、吸入器の量産用試作品を使用して行った(表1を参照)。その際に生成され投与された凝縮エアロゾルは、薬理学作用、薬動力学作用、並びに感覚刺激作用に関して、旧来のタバコの煙に極めて近接していた。表に列記される各成分は、タバコの煙の中にも再度見出された。
【表1】
【0037】
更に付言しておくが、当然ながら本発明は、今しがた説明したばかりの実施例に従った一つの又は複数の面状複合体10に限定されるものではない。複合体10は、線状若しくは糸状に構成されたものであっても全くかまわない。複合体10は、必ずしも平坦若しくは直線状である必要はなく、それどころかむしろありとあらゆる任意の形状をこれに持たせることができる。更に複合体は、任意の方式により相互に電気的に接続されたものであるとよい。最後に本発明には、液体容器19が空になり次第、これを新品の液体容器と入れ替えることができるように、ケース3からの切離しを可能として液体容器19が配置されている装置も包含される。