【文献】
デジタル簡易無線局の無線設備 標準規格,ARIB STD-T98 1.4版,日本,一般社団法人 電波産業会,2014年12月16日,第1編 第1章−第3章 3.5.2
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
デジタル簡易無線は、1995年(平成20年)に制度化され、電波法改正により、登録局であれば誰でも(例えば、レンタルでも)利用可能となった。
また、デジタル簡易無線は、業務用無線と異なり、全国での使用が可能である。
【0003】
このため、測量/情報化施工/広域農業機械分野などの幅広い分野で、適用エリアが拡大して来ており、需要増に伴い、高速化、並びに、より安定した通信の要求が増大して来ている。
【0004】
従来の変調方式として、通信速度が4800bpsのFSK変調方式(Frequency Shift Keying:周波数偏移変調方式)が知られている。
近年、高速化要求に応える技術のひとつにπ/4シフトQPSK変調方式がある。
【0005】
π/4シフトQPSK変調方式は、毎回45度(π/4rad:45度)位相シフトしたQPSK変調方式で、振幅変動に強く、QPSK変調方式により、2bit/Hzの高速伝送が可能である。
このため、QPSK変調方式によれば、FSK変調方式の4800bpsに比べて倍の9600bpsの高速伝送が可能となっている。
【0006】
例えば、デジタル簡易無線の適用用途のひとつに、RTK−GPS測量(Real Time Kinematic- Global Positioning System 測量:リアルタイムキネマティックGPS測量)がある。
【0007】
RTK−GPS測量は、既知点からの補正観測情報を携帯電話や無線を利用して移動局に送信し、移動局の位置をリアルタイムで測量する方法であるが、広野等の見通しのよい場所では、最大20個程度の衛星情報受信が可能である。
【0008】
しかしながら、4800bpsの低速モデムを用いた測量では、既知点からの衛星情報伝送が10個程度と、最大20個程度の半分となっており、移動局側での安定した測量が困難である。
【0009】
ここで、FSK変調方式等を用いた通信速度が4800bpsの低速モデム(以下、単に低速モデムと言う)をπ/4シフトQPSK変調方式等を用いた通信速度が9600bpsの高速モデム(以下、単に高速モデムと言う)に高速化するには、高速の信号処理が可能なデバイス等を追加する方法が考えられる。
【0010】
このため、メーカ各社は、CPUの外部に専用のDSP−LSI(Digital Signal Processor-Large Scale Integration:デジタル信号処理用LSI)を外付けするか、あるいは、専用のDSPを搭載したASIC−LSI(Application Specific Integrated Circuit-Large Scale Integration:特定用途向け集積回路)を開発することで、高速化に対応している。
図1は、モデムの一例を示すブロック図である。
【0011】
DTE(Data Terminal Equipment:データ端末装置)010は、送信データを生成し、RS232C(Recommended Standard 232C)経由、送信データを送信UART(Universal Asynchronous Receiver Transmitter)部011へ出力する。
【0012】
送信UART部011は、DTE010からのデータを受信し、スタートストップビット付きの調歩同期式シリアルデータをパラレルデータに変換し、送信符号化部012へ出力する。
送信符号化部012は、スクランブラ/誤り訂正/インターリーバ等の処理を行い、送信データを信号点発生部013へパラレルデータとして出力する。
図2は、
図1に示す信号点発生部を示すブロック図である。
【0013】
信号点発生部013は、グレイ/ナチュラル変換、QPSK信号点発生、差動符号化、および、π/4シフトの4つの機能を、信号点発生部060とタップ遅延線061により実現している。
図2中、二重線は、パラレル信号やベクトル信号を示す。
【0014】
信号点発生部060は、例えば、ROM(Read Only Memory:ロム)等で実現されており、送信する8値の送信信号点データ(例えば、16ビット*2)および、8値の送信信号点情報(3ビット)を出力すると共に、3ビット情報は、タップ遅延線061により、アドレス情報として信号点発生部060にフィードバックする。
【0015】
信号点発生部060は、アドレス情報5ビット(送信符号化部012の出力データ2ビット+タップ遅延線061の情報3ビット)により、ROM内部で、グレイ/ナチュラル変換、QPSK信号点発生、差動符号化、および、π/4シフトの4つの機能の等価演算を実施し、所望の出力データを信号点発生部060で変換出力する。
それでは、
図1に戻り、従来の送信動作を引き続き説明する。
【0016】
送信ROF部014は、送信ROF(RollOff Filter:ロールオフフィルタ)のフィルタ演算を例えば、
図12に示すトランスバーサルフィルタ120等で行い、信号点発生部013の出力スペクトルを波形整形し、IPL部015(Interpolation:インタポレーション)へ出力する。
また、同時に入力信号のサンプリング速度4.8kHzを例えば、4倍インタポレーションし、19.2kHzサンプリング出力とする。
【0017】
IPL部015は、送信ROF部014の19.2kHzサンプリング出力信号をさらに、3倍インタポレーションし、例えば、57.6kHzサンプリング出力を得、送信D/A部016(Digital/Analog:デジタル/アナログ[変換]部)に出力する。
【0018】
送信D/A部016は、デジタル/アナログ変換器であり、入力されたデジタル信号(リアル信号とイマジナル信号)をアナログ信号に変換し、送信LPF(Low Pass Filter:ローパスフィルタ)部017に出力する。
【0019】
送信LPF部017は、リアル信号とイマジナル信号の不要な高調波成分をフィルタにより除去し、MOD(Modulation:変調)部019に出力する。
【0020】
MOD部019は、LO部(Local Oscillator:ローカル発振器)018から出力されたローカルな変調周波数により、入力された送信LPF部017の出力信号を変調し、パスバンドの変調信号を得、これを送信BPF(Band Pass Filter:バンドパスフィルタ)部020に出力する。
【0021】
送信BPF部020は、変調時に発生した不要な高調波成分をフィルタにより除去し、PA(Power Amplifier:パワーアンプ)部021に出力する。
PA部021は、パワーアンプであり、入力された信号を所望の送信電力に増幅し、送受切替部022に出力する。
【0022】
送受切替部022では、送受切替のみならず、アンテナとの結合回路を含み、信号を切り替え後、送信信号をアンテナ023に出力する。無線信号は、アンテナ023より電波となって空間へ出力される。
送信制御部024は、後述する標準仕様に従い、周知技術であるフレーム制御等、その他一式の個々のブロックの制御を行う。
続いて、
図1の受信側について、説明する。
【0023】
まず、アンテナ023で受信された信号は、送受切替部022に入力され、受信信号は、GSW(Gain SWitch:ゲインスイッチ)部030へ出力される。
【0024】
図1に示す受信部は、最大5W(約144dBμV)送信時の近傍受信から、標準仕様で規定されている最低受信レベル(約0dBμV)の遠傍受信まで、最大約144dB程度の受信ダイナミックレンジに耐えるのが好ましい。
実際には、近傍受信時にはロスがあるため、ここまでの範囲は必要としない。
【0025】
このため、GSW部030では、所定のレベルを超えた信号を受信した場合には、GSW部030のゲインを変更(ロス)し、所望の受信レベルとなるように制御し、制御した受信信号を受信BPF部031に出力する。
【0026】
受信BPF部031は、帯域外雑音をBPFにより、除去し、受信信号をLNA(Low Noise Amplifier:ローノイズアンプ)部032に出力する。
LNA部032は、低い受信レベルの信号を増幅し、DEM(Demodulator:復調部)034に出力する。
【0027】
尚、GSW部030で高い受信レベルの信号を受信したと判定した場合には、このLNA部032に通知し、LNA部032の回路をバイパスするようにしても良い。
【0028】
DEM部034は、VCXO(Voltage Controlled Crystal Oscillator:電圧制御型発振器)部033の発振周波数を元に、受信信号を復調し、復調結果を受信LPF部035に出力する。
【0029】
受信LPF部035は、復調信号から、不要な高調波成分をローパスフィルタで除去し、受信信号をA/D部(Analog/Digital:アナログ/デジタル[変換]部)036へ出力する。
【0030】
A/D部036は、アナログ/デジタル変換器により、受信アナログ信号をデジタル信号に変換し、DCM(DeCiMation:デシメーション)部037に出力する。
尚、A/D部036のサンプリング周波数は、実施例では、例えば、28.8kHzに設定している。
【0031】
DCM部037は、28.8kHzのサンプリング信号をデシメーションフィルタにより、1/3デシメーションし、サンプリング周波数を9.6kHzに低減し、受信ROF部038に出力する。
受信ROF部038は、受信側の波形整形フィルタであり、波形整形を行い、AGC部039へ出力する。
【0032】
AGC部039は、不要な帯域外雑音を除去した信号に対して、所望の受信レベルとなるように、利得制御を行い、結果を受信差動部042およびTIM部040(Timing:タイミング部)に出力する。
【0033】
TIM部040は、受信信号からタイミング信号を抽出し、PLL(Phase Locked Loop:位相同期)回路により、VCXO部033の発振周波数をD/A部041経由制御し、送信タイミングとの周波数および位相同期を確立する。
なお、このタイミング位相同期回路に関しては、周知技術であるため、詳細な説明は割愛する。
【0034】
受信差動部042では、タイミング位相同期が確立された信号に対して、−π/4(―45度)位相回転を行い、送信側で実施した+π/4の位相回転を除去し、8値の受信信号を4値の受信信号に変換する。
【0035】
ただし、この時点では、まだ、位相が不定であるため、次は、位相差分回路により、受信信号の位相差分を計算し、送信側で送信した信号点を再生し、信号点判定部043へ出力する。
信号点判定部043では、4値の受信信号を領域判定し、元のデジタルデータ2ビットを受信符号化部044に出力する。
【0036】
また、信号点判定部043では、受信データを出力する際に、送信側で実施したグレイ/ナチュラル変換の逆のナチュラル/グレイ変換をここで、実施しておく。
【0037】
受信符号化部044は、送信側とは逆の、デインターリーバ/誤り訂正/デスクランブラ等を実施し、元のデジタルデータを再生し、結果を受信UART部045へ出力する。
【0038】
受信UART部045は、受信データを、UARTおよびRS232CのDV(Driver:ドライバ)経由、DTE(Data Terminal Equipment:データ端末装置)050に出力する。
DTE050は、受信データを処理する。
受信制御部046は、後述する標準仕様に従い、周知技術である、フレーム制御等(フレーム同期回路等を含む)、その他一式の個々のブロックの制御を行う。
【0039】
ここで、送信D/A部016のサンプリング速度をできるだけ高速で出力できれば、アナログの送信LPF部017の回路規模を小型化できるが、フィルタ演算の処理量が増大し、汎用の1チップCPU等への処理搭載が困難となる。
【0040】
一方、送信D/A部016のサンプリング速度を低速とすれば、フィルタ演算の処理量を低減できるが、アナログの送信LPF部017の回路規模は飛躍的に増大していく。
従って、送信D/A部016の出力サンプリング速度にはある最適値がある。
しかしながら、送信側のフィルタ演算の処理量を低減し、高速サンプリングを実現し、アナログの送信LPF部017の回路規模を小型化するのが好ましい。
ここで、従来技術を使用した場合の送信側フィルタの処理量を以下に示す。
【0041】
送信フィルタでは、低速4.8kHzサンプリングを高速、例えば、57.6kHzサンプリングに増大させる処理を行うが、この場合に使用する技術は、インタポレーション技術である。
具体的には、
57.6kHz/4.8kHz=12倍・・・・・・・・・・・(式1)
にインタポレーションを行うが、12を因数分解すると、2*2*3となる。
【0042】
従って、送信ROF部014とIPL部015のインタポレーションに関する可能な組み合わせは、2*6倍、3*4倍、4*3倍、6*2倍、12*1倍の5通りとなる。
【0043】
図3は、従来技術による、送信フィルタの処理量を示す図である。
因みにフィルタ処理量は、使用するCPUの演算能力のみならず、ソフトの作り方、コンパイラによる最適化結果にも依存するため、ここでは、仮に、
図3の第1項に示す、送信ROF部014の処理時間を50μs/4800baudsと設定している。
この値は、CPUの処理速度120MHzを多少低減した現実的な値となっている。
汎用1チップCPUのクロック周波数、例えば、120MHzをその分、低減することで、装置の低消費電力化も実現可能となる。
【0044】
図3中の処理tの欄065に示すように、送信ROF部014の処理時間は、IPL率を増大するにつれ、50μsの処理時間から294μsの処理時間に増大している。
同様に、
図3中の処理tの欄066に示すように、IPL部015の処理時間は、IPL率を減少するにつれ、224μsの処理時間から0μs(IPLなし)の処理時間に減少している。
図3中の時間計の欄067に示すように、
図3における処理時間の最適値は、第3項の送信ROF部014のIPL率を4倍、IPL部015のIPL率を3倍にした場合であることがわかる。
【0045】
しかしながら、この場合でも、フィルタ演算で210μsの処理時間長がかかっている。
変調速度は4800Baudsであるため、許容される処理時間は、
1/4800≒208μs・・・・・・・・・・・・・・・・・(式2)
となり、送信フィルタの処理量だけをみても、汎用の1チップCPUにフィルタの搭載が困難であることが分かる。
フィルタの演算量を決定する重要なパラメータにタップ数があるが、これは、要求されるフィルタ特性に依存する。
【0046】
図4は、送信フィルタの要求特性を示す図である。
図4の横軸は周波数kHz、縦軸はレベルを示している。
図4には、後述する標準仕様に準拠した場合の、個々のIPL率に対応した送信フィルタの要求特性を示している。
これらの要求特性の算出は、周知技術であるため、詳細説明は割愛するが、
図4の(a)〜(d)の特性は、
図3の第1項〜第4項のIPL率に対応している。
続いて、受信側のフィルタ処理量の低減策について、説明する。
【0047】
図5は、従来技術による、受信フィルタの処理量低減例を示す。
図5中のDCM率は、1/nデシメーションの整数値nを示している。
また、受信側のサンプリング周波数は、妨害波に対する特性向上のため、アナログの受信LPF部035のフィルタの特性を強化し、A/D部036のサンプリング周波数を送信側57.6kHzの半分の28.8kHzに設定している。
【0048】
因みにフィルタ処理量は、使用するCPUの演算能力のみならず、ソフトの作り方、コンパイラによる最適化結果にも依存するため、ここでは、仮に、送信側で定義したと同じ基準(
図3の表中、第1項の送信ROF部014の処理時間を50μs/4800baudsと設定)を使用している。
【0049】
図5中の処理tの欄070に示すように、DCM部037の処理時間は、DCM率が1.0(1/1)〜3.0(1/3)に増大するにつれ、0μsの処理時間から73μsの処理時間に増大している。
DCM率2.0(1/2)に関しては、フィルタ係数のゼロ点の発生確率が多いため、処理量はその分、低減した結果となっている。(フィルタ係数がゼロの部分に関しては演算する必要がないため、演算を省略している)
同様に、
図5中の処理tの欄071に示すように、受信ROF部038の処理時間は、DCM率を3.0(1/3)〜1.0(1/1)に減少するにつれ、269μsから91μsの処理時間に減少している。
【0050】
図5中の時間計の欄072に示すように、
図5に示す処理時間の最適値は、第4項のDCM部037のDCM率を3.0(1/3)、受信ROF部038のDCM率を1.0(1/1)にあることがわかる。
しかしながら、この場合でも、フィルタ演算で164μsの処理時間長がかかっている。
変調速度は4800Baudsであるため、許容される処理時間は、
1/4800≒208μs・・・・・・・・・・・・・・・・・(式3)
となるが、受信側は、タイミング同期関係の処理もあり、少なくとも、目標仕様は、変調速度時間の半分以下程度であるのが好ましい。
このため、受信フィルタの処理は、A/D部036のサンプリング周波数を送信側の半分に設定した場合においても、汎用の1チップCPUに搭載は困難であることが分かる。
フィルタの演算量を決定する重要なパラメータにタップ数があるが、これは、要求されるフィルタ特性に依存する。
【0051】
図6は、受信フィルタの要求特性を示す図である。
図6の横軸は周波数kHz、縦軸はレベルを示している。
図6には、後述する標準仕様に準拠した場合の、個々のDCM率に対応した受信フィルタの要求特性を示している。
これらの要求特性の算出は、周知技術であるため、詳細説明は割愛するが、
図6の(a)〜(d)の特性は、
図5の第1項〜第4項のDCM率に対応している。
【0052】
図7は、受信フィルタの更なる要求特性を示す図である。
図7の横軸は周波数、縦軸はレベルを示す。
図7は、受信側の妨害波に対する要求特性を明確化し、要求特性を満足するための限界仕様を検討したものである。
図7の(a)は、送受切替部022の入力点での受信側要求特性を検討したものである。
【0053】
周波数12.5kHz以上では、妨害波に対して、BTER(BiT Error Rate:ビットエラーレイト)で、1*10E―2以上を確保するため、マージン込みで必要なS/Nを13.5dBとすると、要求特性は
53.0dB+13.5dB=66.5dB以上・・・・・・・(式4)
となる。
同様に4.35kHz点は、隣接CH選択度を42dB確保のため、同様に、
42.0dB+13.5dB=55.5dB以上・・・・・・・(式5)
が要求特性となる。
【0054】
図7(a)では、太線で示す部分が最終的な要求特性となる。
図7(b)は、受信LPF部035の要求特性を示す。
これらは、従来技術の範囲のため、詳細説明は割愛するが、太線が、最終的な受信LPF部035の要求特性となる。
図7(c)は、A/D部036の要求特性を示す。
A/D部036の要求特性は、
図7(a)の要求特性から、
図7(b)の要求特性を差し引いたものである。
受信LPF部035の9.6kHz点以上のロスは11dBである。
最終的な要求特性は同様に
図7(c)の太線の特性となっている。
【発明を実施するための形態】
【0067】
以下、実施の形態の通信装置を、図面を参照して詳細に説明する。図中、同一符号番号は、同一または相当の「機能/内容/部分」を示す。
<実施の形態>
【0068】
図8は、実施の形態の通信装置をRTK−GPS測量に適用した場合の比較例との比較を示す図である。
図8の上半分は、通信速度が4800bpsのモデム90を使用したシステム(比較例)であり、
図8の下半分は、本実施の形態のモデム(通信装置)1を適用したシステムである。
【0069】
図8に示すように、例えば、見通しの良い広野等では、最大20個程度の衛星004、005が見えており、既知点600側および移動局002、003側ではこれらの衛星004、005の情報受信が可能である。
【0070】
しかしながら、通信速度が4800bpsのモデム90を用いた場合には、10個程度の衛星情報しか伝送できないため、既知点600側のモデム送信側で、移動局002側へ十分な衛星情報を送信できず、オーバーフロー状態となる。
【0071】
すると、移動局002側では、移動局002側で見えている最大20個程度の衛星004、005の情報と既知点600側で見えている衛星004、005の情報と十分な照合ができず、結果として、移動局002側で安定した測量が困難である。
【0072】
一方、
図8に示す本実施の形態のモデム1を使用したシステムでは、安定した測量を実現するために十分な9600bpsの実効速度を実現している。このため、モデム90の倍程度の情報伝送が可能であり、移動局003側での安定した測量が実現できる。
【0073】
具体的には、モデム1は、第1に「オーバーヘッドを必要最小限化」および「端末とモデム間の速度偏差吸収」により9600bpsの実効速度を実現している。第2に「タイミング位相同期回路のデジタル化」により、アナログ回路を小型化している。第3、第4に「送受フィルタリング処理量の低減」により、ベースバンド処理の最小化を図っている。
【0074】
以上により、主要ベースバンド機能の全てを汎用1チップCPUに搭載可能とし、実効速度実現と共に、装置の小型/軽量/低消費電力化を実現することができる。
【0075】
図9は、本実施の形態のモデムの仕様比較を示す図である。
図9に示すように、モデム1は、アナログ回路を小型化できるばかりでなく、フィルタリング処理量を大幅に低減できるため、主要ベースバンド機能の全てを汎用の1チップCPUに搭載可能となる。
このため、モデム1は、9600bpsの高速伝送を実現しながら、従来の4800bpsモデムと同等以上に、小型/軽量/低消費電力化できる。
これにより、今後、測量分野のみならず、情報化施工分野や、広域農業機械分野など、幅広い分野で、適用エリアを拡大することが可能となる。
本実施の形態のモデム1は、デジタル簡易無線π/4シフトQPSKモデムである。モデム1の主要仕様に関して、以下に説明しておく。
【0076】
「デジタル簡易無線π/4シフトQPSKモデム」の主要仕様は、日本国内の標準仕様書「デジタル簡易無線局の無線設備ARIB STD−T98(Association of Radio Industries and Businesses Standard−T98:一般社団法人電波産業会 標準規格T−98)1.2版 平成22年7月15日改定」に詳細に記載されている。モデム1の主要仕様は、これらの標準仕様に準拠している。
詳細は割愛するが、モデム1に関係する主な仕様は以下に示すとおりである。
電波の周波数 :351MHz帯、467MHz帯
チャネル間隔 :6.25kHz
変調方式 :π/4シフトQPSK方式
伝送速度 :9600bps
変調速度 :4800Bauds(ボー:symbol/s)
ロールオフ率 :20%
占有周波数帯幅:5.8kHz以下
送信スプリアス:60dB以下
受信感度 :0dBμV以下
無変調妨害波 :53dB以上
隣接CH選択度:42dB以上
相互変調特性 :53dB以上
【0077】
(全体ブロック図)
図10は、実施の形態の全体ブロック図を示す図である。
図1と同一の機能については、同一の符号を付し、説明を割愛する。
図10に示すモデム1が
図1に示すモデム90と異なる部分は、送信符号化部100、信号点発生部101、送信ROF部102、送信制御部103、TIM部104、DCM部105、受信ROF部106、受信差動部107、受信符号化部108、および受信制御部109である。
尚、個々の詳細な相違点は、以降に示す個々の実施例の細部にて詳述する。
【0078】
(汎用1チップCPUの基本構成)
前述したように、安定した測量の実現と共に、移動局の小型/軽量/低消費電力化を実現するための1つの手法として、主要ベースバンド機能の全てを汎用の1チップCPUに搭載可能とすることが挙げられる。
ここでは、まず、基本となる、汎用の1チップのCPU部の基本構成について、以下に述べる。
【0079】
図11は、実施の形態のモデムのCPU部を示すブロック図である。
図11に示す汎用1チップのCPU部110は、演算処理を行うCPU113と、演算用のプログラムやデータを格納するROM114と、各種データを格納するRAM115とを有している。
処理対象の情報の入出力に関して説明する。
まず、DTE側は、送信側UART111および受信側UART112、その他I/O116により、各種デジタル情報を入出力できる。
また、回線側は、D/A117および、A/D118により、各種アナログ情報を入出力できる。
【0080】
以上により、今回発明で使用する汎用の1チップCPU110では、CPU110外部のデジタル情報やアナログ情報をCPU113に取り込み、各種信号処理を行い、結果をデジタル情報およびアナログ情報としてCPU110外部に出力できる。
【0081】
汎用1チップCPUは、一般的に、豊富なメモリの元で、各種判断や、論理処理等は得意であるが、乗算等を伴う高速の信号処理に関しては、比較的処理に時間がかかる。
<発明の着眼点:送信側フィルタ処理量の低減>
まず、一般的な(モデム1以外の)送信側フィルタを説明する。
【0082】
図12は、送信側フィルタの一般的な等価回路を示す図である。
図12に示すように、送信側のトランスバーサルフィルタ120は、タップ遅延線121〜123と、複数の乗算器125〜128、加算部129とを有しており、高速信号処理を伴った等価回路となっている。
【0083】
一方、モデム1が備えるCPU部110は、前述したように、高速乗算処理は苦手であるが、豊富なROM容量(例えば、ROM114は2Mbyte)を備え、高速論理処理が可能である。
以上から、処理量低減の1つのポイントは、如何に、送信側フィルタでの乗算/加算をなくし、ROM114内で乗算/加算を実現するか、にある。
【0084】
例えば、フィルタ演算の主要部分である、タップデータA*フィルタ係数BをROM114内で実現しようとすれば、ROM114のアドレス空間にタップデータAとフィルタ係数Bをそのままアサインすれば良い。そうすれば、ROM114内でタップデータAとフィルタ係数Bの乗算が可能となり、瞬時に乗算結果を得ることができる。
しかしながら、タップデータAを16ビット、フィルタ係数Bを16ビットとすると、アドレスとして32ビットが必要となり、現実的でない。
以上を考察すると、ポイントは、如何にタップデータAとフィルタ係数Bの情報を減らし、アドレス空間を少なくするかである。
【0085】
タップデータAに関しては、幸いにして、信号点数が
図15(a)に示すように、計9値(信号点8値+原点信号1値)と限定されているため、4ビットの情報があれば、十分となる。
【0086】
さらに考えるならば、この4ビットの情報は、後述する
図16の入力側に示すように、3ビットの情報から生成しているため、タップデータAの情報は、16ビットから3ビットまで低減可能となる。
【0087】
フィルタ係数Bであるが、フィルタ係数Bそのものは、16ビットが必要であるが、このフィルタ係数Bを決定しているものは、
図12のタップ係数ナンバーC1〜Cnである。具体的には、
図3に示すように、45タップから265タップのタップ数のタップナンバー情報があれば良い。
従って、最大9ビット程度あれば、16ビットのタップ係数情報BをROM114内で生成可能となる。
トータル的には、タップデータA(3ビット)+タップ係数B(9ビット)の計12ビットで実現可能となり、現実的なビット数となる。
【0088】
これにより、タップデータA*フィルタ係数Bの乗算はROM内で演算可能となるが、これらの演算を仮に、乗算器125〜128個々で行い、さらに、これらの出力を
図12の加算部129で加算すると、それだけ処理に時間がかかる。できれば、これらの加算処理も削減としたい。
即ち、更なる処理時間の短縮を図ることに着目するならば、そもそもの乗算をする理由は、タップデータAの値が、9値の情報を持っていることにある。
従って、この9値の情報を信号点ありとなしの1ビットの情報、即ち、論理1または論理0に変換できれば、乗算は不要となり、加算器のみで実現可能となる。
【0089】
すなわち、送信信号点を
図15(b)および(c)に示すように、信号点「A、−A、B、−B、C、−C、D、−D」の計8点の信号点のあり/なし情報に分解し、分解した情報で個々のフィルタ演算を行うこととした。これを実現した一例が送信ROF部102である。
【0090】
(送信側フィルタ処理量の低減)
図13は、実施の形態の送信ROF部を示すブロック図である。
図13に示すように、送信ROF部102は、送信信号点情報をフィルタリングする機能を備えている。
具体的には、送信ROF部102は、信号点変換部130と、タップ遅延線部131〜134と、ROM部135〜142と、第1加算部145〜148と、乗算部150〜153と、第2加算部155、156と、送信ROF制御部157とを備えている。
信号点変換部130は、送信信号点の情報を1以上の複数の信号点あり、または信号点なしのビット情報に変換する。
【0091】
具体的には、送信ROF部102に入力される信号点情報は、
図18(a)および
図18(b)の入力側に示すように、3ビット情報を想定しており、この3ビット情報から、
図18(a)および
図18(b)の出力、即ち、
図17のhexの欄189の情報(信号点有無情報出力:8bit情報)を得る。
具体的には、この8ビット情報は、
図15の(b)および
図15(c)に示す、±A、±B、±C、±Dの8点の論理情報1、0となる。
【0092】
例えば、変調方式をπ/4シフトQPSKから、16値QAMに変更した場合、アイパターンは
図15(d)に示すように16点+原点となるが、これを同様にReal軸、Imag軸に分離した場合には、
図15(e)および
図15(f)に示すようになる。
変調方式を同様に、64値QAMや、256値QAM、さらに、1024値QAMに変更した場合でも同様に展開可能である。
これらの論理情報が、
図13に示す信号点変換部130より出力される。
タップ遅延線部131〜134は、例えばシフトレジスタであり、ぞれぞれビット情報を入力する。
【0093】
送信ROF制御部157は、タップ遅延線部131〜134の各タップのビット情報を1以上の複数のグループに分割し、分割した分割情報を生成し、出力する。
【0094】
また、送信ROF制御部157は、フィルタリング時のサンプリングフェーズ情報を生成出力すると共に、分割情報とフェーズ情報と、各タップのビット情報を元にROM部135〜142をアクセスし、ROM部135〜142の1以上の複数の出力を得る。
第1の加算部145〜148は、ROM部135〜142の出力を加算する。
乗算部150〜153は、第1加算部145〜148の出力に所定の係数を乗算する。
第2加算部155は、乗算部150、151の乗算結果を加算する。第2加算部156は、乗算部152、153の乗算結果を加算する。
送信ROF部102は、第2加算部155〜156の結果をフィルタリングの出力とし、処理量の低減を実現している。
以下、送信ROF部102の動作を簡単に説明する。
【0095】
信号点変換部130から出力された論理情報は、タップ遅延線131〜134に入力され、タップ遅延線131〜134内タップデータAは、ROM部135〜142のアドレス情報として入力される。
【0096】
ROM部135〜142では、前述したタップデータA以外に、前述したタップデータAを複数のグループに分割(例えば、ROM部135〜136)しているため、これらの分割情報、さらに、フィルタ出力の出力フェーズ情報(後述する)を加えて、例えば、ROM部135をアクセスし、ROM部135内で、複数のタップデータAと複数のフィルタ係数Bの演算(乗算と加算)を行い、複数のタップデータA分のフィルタ出力を得る。
【0097】
このフィルタ出力は、第1加算部145で加算され、加算結果に乗算部150にて、信号点を論理情報に変換した際の個々の信号点の極性情報付き振幅情報(例えば、±A、±B、±C、±Dのいずれかひとつ)を乗算し、個々の信号点のフィルタ出力を得、これをさらに、第2加算部155で加算することで、最終フィルタ出力を得る。
より具体的な実施例は後述する。
【0098】
図14は、
図13に示す送信ROF部のさらなる詳細な等価回路例を示す図である。
尚、
図14で
図13と同一の番号は、
図13と同一の内容を示している。
図14において、信号点情報が信号点変換部130に入力され、複数の信号点あり/なしの情報に分解され、個々の1ビット情報は、対応する個々のタップ遅延線部131に出力される。
信号点変換部130の入力信号例を
図15の(a)または
図15(d)に示す。
【0099】
図15の(a)または
図15(d)に示すように、信号点変換部130の入力信号例は、信号点の座標情報でなく、個々の座標点の位置を示す番号情報のみである。
例えば、
図15の(a)は8値と原点情報なので、計9値となり、即ち、4ビットの情報が、信号点変換部130に入力される。
また、
図15(d)に示す場合には、16値と原点情報となるため、計17値となり、即ち、5ビットの情報が、信号点変換部130に入力される。
図16は、
図15(a)の場合の信号点発生部101の詳細を説明する図である。
信号点発生部101は、信号点発生部180と、WR制御部181と、タップ遅延線182とを有している。
【0100】
図16に示すように、信号点発生部101の入力信号は、送信data2ビットと送信なし(原点情報)を示す1ビットの情報の計3ビットの情報(以下、3ビット情報と言う)である。
この3ビット情報は、信号点発生部180にROMのアドレス情報として入力され、ROMの出力として、4ビットの信号点発生部出力を得る。
【0101】
同時に信号点発生部180の出力4ビットは、WR制御部181(WRight:書き込み)に入力される。WR制御部181は、4ビットの内、原点を除く3ビットの情報をタップ遅延線182に書き込むかどうかを制御する。
【0102】
WR制御部181は、原点情報を出力するときには、タップ遅延線182に書き込みを行わず、原点情報以外を出力するときには、原点情報を除く3ビット情報をタップ遅延線182に書き込む。
【0103】
このタップ遅延線情報は、1シンボル分(本実施の形態では、4800Hzの時間長分)、遅延し、信号点発生部180のアドレス情報として使用される。このことで、送信側の差動符号化を実現している。
【0104】
図17は、信号点発生部101が備える信号点発生部180のROM内容を示す図である。
図17の入力情報の欄185は、信号点発生部180の入力情報を示しており、送信なし情報1ビット(1:送信あり、0:送信なし)と、送信data情報2ビット(00、01、11、10)と、参考に信号点の角度情報(0度、90度、180度、270度)を示している。
【0105】
過去情報の欄186は、
図16に示すタップ遅延線182よりフィードバックされた情報であり、8値(3ビット:0度、45度、90度、135度、180度、225度、270度、315度)からなり、過去に送信された3ビットの信号点情報を示している。
これにより、ROM内で差動符号化が行われ、差動符号化の結果が、出力情報187に出力される。
出力情報の欄187は、原点情報を含む4ビットの角度情報を示している。
図14に示す信号点変換部130は、入力された4ビット情報を元に、信号点あり/なしの8ビット情報にROMを用いて変換出力する。
図15(b)および
図15(c)の信号点情報(±A、±B、±C、±D)は、信号点変換部130の出力のイメージを示したものである。
図17の出力bit情報の欄188に記載された値は、個々の信号点あり/なしを示す信号点情報(±A、±B、±C、±D)のビット情報を示している。
次に、信号点変換部130の変形例を説明する。
【0106】
<変形例>
前述した実施の形態では、
図16に示す信号点発生部101と、信号点変換部130とが独立して接続された構成となっているが、中身は、ROM変換であるため、信号点発生部180と信号点変換部130が備えるROMを合体して、ひとつのROMとしても良い。
図18は、信号点変換部130の変形例を示す図である。
【0107】
図18(b)に示す信号点変換部130aは、
図18(a)に示すように、信号点変換部130が備える信号点変換部183と信号点発生部101が結合したものである。信号点発生変換部184は、入力信号3ビットの入力に対し、8ビットの信号を出力する。WR制御部181およびタップ遅延線182は、
図16と同じである。
また、最終的なROM内容は、
図17にて説明した通りである。
【0108】
以上により、信号点変換部130に入力された4ビット情報または、信号点変換部130aに入力された3ビット情報は、
図17に示すROMにより、8ビットの信号点あり/なし情報に変換され、個々のタップ遅延線131に出力される。
【0109】
信号点あり/なし情報は、1ビットの情報であるため、即ち、信号点あり:1、信号点なし:0、であるため、これにフィルタ係数Bを乗算しても、1*B=Bであり、0*B=0であるため、乗算が不要となる。
従って、ROM部135〜136では、ROM内で乗算が不要であり、いきなり、乗算後の累積加算が可能となる。
【0110】
ただし、ROMのアドレスビット数は有限であるため、
図3に示したように、ROFでは、45〜265タップ、あるいは、IPLでは、25〜121タップとなっており、フィルタのタップ数も大きな値となっている。
一方、送信ROF部102の入力信号点のサンプリング速度は、本実施の形態では、4800Baudsであり、4800Hzとなっている。
【0111】
また、送信D/A部016の出力は、本実施の形態では、57.6kHzサンプリングとなっており、送信ROF部102を含めて、送信D/A部016まで、12倍のインタポレーションとなっている。
【0112】
このため、一般的に、フィルタの入力側でゼロ点挿入が行われ、フィルタ演算が行われるが、本実施の形態では、ゼロ点挿入が行われたデータ列をフェーズ情報に変換し、タップ遅延線内のデータは4800Hz単位としている。
従って、このタップ数は、9600Hz時に45タップのタップ数は、半分の23タップ程度あれば十分となる。
【0113】
本実施の形態では、フィルタ出力を57.6kHzとする場合、12倍のインタポレーションを実現するため、出力フェーズをPH0:フェーズ0〜PH11:フェーズ11までの12通り(計4ビットの出力フェーズ情報)の出力フェーズを定義している。
これでも、タップ数は23タップあるため、このまま、この23ビット情報をROM部135〜136のアドレス情報としてアクセスすることは現実的でない。
【0114】
このため、本実施の形態では、送信ROF制御部157で、タップデータもグループ化し、複数のグループに分割することで、ROM部135〜136へのアドレスビット数を許容範囲内とした。
具体的には、例えば、4つのグループに分割(分割情報2ビット)し、タップデータによる、ROM部135〜136へのアクセスを6ビットに抑えている。
【0115】
以上により、ROM部135〜136へのアクセスビット数は、タップ遅延線部131内のタップデータ160〜165内の6ビットと、タップデータの分割情報2ビットと、フィルタの出力フェーズ情報4ビットの計12ビットとなり、現実的な値となる。
これらのROMのアドレス制御は、送信ROF制御部157により、CPUをソフトウェアで動作させることにより実現している。
【0116】
以上により、ROM部135〜136にて、タップデータAとフィルタ係数Bとの乗算と累積加算がグループ単位/フェーズ単位で実施され、同一信号点に関しては、第1加算部145にて、加算され、フィルタの累積加算結果を得る。
【0117】
ただし、このフィルタ結果は、信号点あり/なしによる、論理情報によるフィルタ出力結果であるため、個々の信号点の大きさや極性情報(±A、±B、±C、±D)は反映されていない。
このため、乗算器150により、これらの振幅情報や極性情報を反映すべく、所定の係数(±A、±B、±C、±D)を乗算する。
【0118】
乗算器150のフィルタ出力は、複数の信号点(±A、±B、±C、±D)の内の1点のフィルタ出力情報であるため、これを集約すべく、第2加算部155にて、所定の信号点出力166〜169(±A、±B、±C、±D)を加算し、最終的なフィルタ出力を得る。
【0119】
このフィルタ出力は例えば、Real側のフィルタ出力であるため、Imag側も同様に、
図14のROF部176にて演算を行い、Imag側のフィルタ出力を得る。
これらのフィルタ出力の演算制御は、送信ROF制御部157内の複数のアドレス制御部170〜174内のCPUをソフトウェアで動作させることにより、実現される。
次に、
図13に示す送信ROF部102のROM部135〜142の演算例を説明する。
【0120】
図19は、送信ROF部のROM部に記憶される値の一例を示す図である。
図19のフィルタ係数の欄190は、12倍インタポレーション実現時のROFのフィルタ係数例を示す。
タップ数は、
図3より、265タップであるが、ROM部のビット数の切れが良いところで、0〜287タップの計288タップに拡大して計算している。
【0121】
tap_data(PH0〜PH11)の欄191は、タップデータを4.8kHz単位で12フェーズにデータシフトした場合を示しており、表中、PH0:0、〜PH11:11の数値で示している。
欄191中の1が「信号点あり」、0が「信号点なし」を示す。
フェーズに従い、仮想的なタップデータがタップ遅延線内をシフトし、対象となるフィルタ係数を選定する。
【0122】
ROM部出力の欄192は、4gr(4group:4つのグループ情報)の欄とPhaseの欄193(12のフェーズ情報)と、タップデータ情報の欄194(6ビットのため、64パターンの情報)より、ROM内で演算し、フィルタ出力結果を得る。
以上により、送信ROF部102の出力を得る。
ところで、肝心な送信側フィルタ演算量の低減であるが、各種パラメータの最適化を行う。
具体的には、
図3に示した従来例の5パターンに加えて、新たに、グループの分割情報とフェーズ情報の2つの情報がパラメータとして加わっている。
このため、これらのパラメータを加味した最適化を行う。
次に、送信ROF部102により実現される送信側フィルタによる処理量の低減結果を説明する。
【0123】
図20は、実施の形態の送信側フィルタの処理量の低減結果を説明する図である。
図20は、本実施形態を適用した送信ROF部102に、従来例のIPL部015の処理を従属接続した場合の処理結果を示している。
ROFの欄195は、ROFのIPL率を設定しており、これは、
図3に示す通り、2倍/3倍/4倍/6倍/12倍インタポレーションの5パターンとなる。
【0124】
必要アドレスbit数の欄196であるが、ここには、tap数に伴い、groupの分割数(ビット数:例えば、4分割では2ビットとなる)、phase数(ビット数:例えば、12フェーズでは、4ビットとなる)のパラメータの組み合わせを示している。
トータルビット数は合計欄に示されている。
処理量の欄197は、前述した条件下での処理時間長(μs)を示している。
IPLの欄198は、従来技術そのままであるため、
図3の値を採用している。
合計の欄199は、処理用の欄197の値と、IPLの欄198の値をトータルした処理時間長(μs)を示している。
tap数の低減と、処理量とのバランスを踏まえると、以上の結果から、最適値は、第36項の組み合わせとなる。
具体的には、IPL部015を設けずに送信ROF部102のみの処理とし、12倍インタポレーションを実施し、D/A出力する。
具体的なパラメータは、4グループ、12フェーズで6タップ分データでROM部135〜136をアクセスし、フィルタ出力を得る。
【0125】
以上により、
図3に示した210μsかかった処理時間を、本実施の形態では、56μsまで短くできたことになる。これは、約73%の処理量削減が実現できたこととなる。
(受信側フィルタ処理量の低減)
<発明の着眼点:受信側フィルタ処理量の低減>
受信側は、送信側と異なり、信号点が限定されてはいないため、送信側の低減技術をそのまま、受信側に適用することはできない。
図12に示すように、受信側フィルタのポイントの1つは、送信側と同様に、如何にして、乗算を加算に変えるかである。
リニア乗算(タップデータA*フィルタ係数B)を加算に変えることは、信号の対数変換により、具体化できる。
即ち、
log(A*B)=log(A)+log(B)・・・・・・・(式6)
ただし、この時の条件は、A>0、B>0、即ち、A、Bを正の数値とすることである。
しかしながら、タップデータAもフィルタ係数Bも共に、正負の値を持つ数値である。
従って、まずは、この点を解決する方法を考える。
タップデータAであるが、正負の極性を持った受信信号に予め決められた所定のDCオフセットを加算することで、正の数値に変換することが可能である。
例えば、±2.00の受信信号に+3.00のDCオフセットを加算することで、±2.00を+1.00〜+5.00の範囲の正の数値に変換可能である。
加算したDCオフセットは、フィルタ出力結果を得た後に、対応するDCオフセット値を出力から減算すれば良い。
以上により、タップデータAを対数変換することができる。
フィルタ係数Bは、同様に正負の極性を持った数値であるが、タップデータA同様にDCオフセットを加算することはできない。
このため、フィルタ係数Bに関しては、フィルタ係数情報を絶対値情報と符号ビット情報に分離し、絶対値情報を対数加算することとする。
分離した符号ビット情報は、タップデータAとフィルタ係数Bの乗算後(対数加算後)、この後の対数逆変換後に、元に戻すこととする。
以上により、受信側フィルタ演算量の低減が可能であるが、ひとつ問題がある。それは、対数逆変換に伴う、必要ビット数の確保である。
【0126】
受信側フィルタの等価回路は、
図12に示すように、多数のタップデータAより成り立っており、フィルタ出力を得るためには、加算部129により、対数逆変換後のデータを累積加算する。
累積加算により、量子化雑音も一緒に累積加算されるため、対数逆変換時には、フィルタ出力S/Nを行うための最低限のS/Nを確保する。
一般的に、累積加算時に必要なビット数は、タップ数に依存した十分なビット精度が必要であり、対数逆変換時のビット数もその分を十分に確保する必要がある。
この結果、対数逆変換に伴うROM容量が膨大となり、現実的でない値となる。
従って、この対数逆変換時のROM容量を低減するのが好ましい。
対数逆変換前のビット数の圧縮は、フィルタ係数そのもののビット数の圧縮が効果的である。
【0127】
このため、フィルタ係数を絶対値情報と符号ビット情報とに分離し、絶対値情報をさらに、仮数部と指数部に分解し、仮数部を対数変換することで、タップデータAに対数加算するフィルタ係数Bの範囲を低減する。
そして、フィルタ係数を対数加算後に、出力信号を対数逆変換し、対数逆変換後のデータに符号ビット情報ならびに、指数部情報を反映し、最終のフィルタ出力を得る。
以上により、対数逆変換時のビット数を低減することができる。尚、具体的な等価回路のビット数および等価回路の詳細については、後述する。
【0128】
図21は、実施の形態の受信フィルタ部を説明するブロック図である。
図21に示す受信フィルタ部228は、DCM部105と受信ROF部106の等価回路である。なお、受信フィルタ部228は、Real部のみを示しているが、Imagも同様の回路構成となる。
【0129】
受信フィルタ部228は、受信信号に仮想的にDCオフセットを加算し、対数変換する対数変換ROM1部200と、対数変換ROM1部200の出力信号を時間シフトするタップ遅延線部205と、フィルタ装置のフィルタ係数を、仮想的に、符号ビットと、絶対値情報に分離し、かつ、絶対値情報を、仮数部と指数部に分離し、さらに、仮数部を対数変換し、符号ビットと、対数変換後の仮数情報と、指数情報とを出力する対数変換ROM2部206と、タップ遅延線205の各タップデータと各タップデータ201〜204に対応する対数変換後の仮数情報を加算する複数の第1加算器210〜213と、第1加算器210〜213の結果を対数逆変換する対数逆変換ROM3部215〜218と、対数逆変換ROM3部215〜218の出力を指数情報と符号ビットにより、リニア情報を得る複数のbitシフタ/極性制御部220〜223と、複数のbitシフタ/極性制御部220〜223の出力信号を加算する加算部225と、仮想的に加算したDCオフセットに対応する値を加算部225の出力より減算する第2加算器226を備え、第2加算器226の結果をフィルタの出力とし、処理量の低減を実現している。
【0130】
A/D部036は、アナログ信号をアナログ/デジタル変換により、デジタル信号に変換し、DCM部105に出力する。
DCM部105は、デシメーション演算を行い、サンプリング速度を低下させ、受信ROF部106に出力する。
受信ROF部106は、ROFにより波形整形を行い、結果をAGC部039に出力する。
ここでのポイントは、如何に、DCM部105および、受信ROF部106の演算量を低減するか、である。
以下に受信フィルタ部228の処理の詳細を示す。
対数変換ROM1部200は、12ビットのA/D変換情報にDCオフセットを加算し、±2.00のデジタル情報を正の数値に変換する。
具体的には、+3.00のDCオフセットを加算し、+1.00〜+5.00の値に変換し、加算結果を対数変換し、出力する。
尚、DCオフセット加算により、A/D変換後の情報欠落がないように、対数変換後のビット数を16ビットとし、タップ遅延線201へ出力する。
図22は、実施の形態の対数変換ROM1部のROMに記憶される内容の一例を示す図である。
ROM1入力の欄230は、A/D部036の12ビットのhex出力を示している。
hex[800]〜[000]〜[7FF]は、実数値で−2.00〜0.00〜+1.99である。
これに+3.00のDCオフセットを加算し、対数変換する。
【0131】
内部処理内容の欄231には、A/D_数値(−2.00〜+1.99)とDC加算(DC加算後の結果、1.00〜4.99)、対数変換(DC加算後の結果を対数変換:0.00〜0.699)を示している。
ROM1出力の欄232は、対数変換後の数値を16ビットのhex情報に変換した値を示している。
タップ遅延線201〜204は、対数変換ROM1部出力を入力し、タップデータを所定のサンプリングクロックでシフトする。
【0132】
対数変換ROM2部206は、フィルタ係数を符号ビットと絶対値情報に分離する。また、対数変換ROM2部206は、絶対値情報を仮数部と指数部に分解する。さらに、対数変換ROM2部206は、仮数部を対数変換し、対数変換値と符号ビット情報と指数情報とを出力する。
図23は、実施の形態の受信フィルタ係数の時間応答波形例を示す図である。
図23に示すように、フィルタ係数は、プラスマイナスの極性を伴った、微小係数を多数含んでいる。
図24は、実施の形態の対数変換ROM2部のROMに記憶される内容の一例を示す図である。
図24は、受信ROF部106において、9.6kHzサンプリングで、41タップのフィルタを構築した場合の例を示している。
ROM2入力の欄235は、全41タップのそれぞれの具体的なフィルタ係数における、仮数部、指数部の値を示している。
ROM2出力の欄236は、各フィルタ係数に対する、符号/仮数(対数変換値)/指数のhex情報を示している。
このROMテーブルの内容を用いて、フィルタ係数情報を所望の値に変換する。
【0133】
図25は、実施の形態(デジタルタイミング位相同期に適用)による、対数変換ROM2部のROMテーブル内容の一例を示す図である。
本ROMテーブルでは、フィルタ位相の変更が可能なように、フィルタ係数のより細かいテーブル内容をサポートしている。
詳細は後述する。
加算器210〜213は、タップ遅延線部205の各タップデータA値と、フィルタ係数B値(フィルタ係数の仮数部の対数変換値)を対数加算し、結果を対数逆変換ROM3部215〜218に出力する。
【0134】
対数逆変換ROM3部215〜218は、入力情報を
図26に示すROMにより対数値をリニア情報に変換し、bitシフタ/極性制御部220〜223へ出力する。
図26は、実施の形態の、対数逆変換ROM3部のROMに記憶される内容の一例を示す図である。
図26のROM3入力hexの欄245は、入力信号のhex情報[0000]〜[3FFF]を示す。
対数逆変換/8の欄246は、入力情報を対数逆変換し、結果を1/8倍したものである。
ROM3出力hexの欄247は、対数逆変換/8_246の値をhex情報に変換し、ROM出力としたものである。
出力の値は、hexで[0800]〜[4FFD]の範囲の値となっている。
【0135】
bitシフタ/極性制御部220〜223は、対数逆変換ROM3部215〜218の出力を、対数変換ROM2部206の指数部と符号の情報(
図24のROM2出力236)に従い、ビットシフト(算術シフトで2のべき乗シフトを行う)および、極性付与を行い、対数逆変換後のリニア情報を得る。
これらの処理はCPU113により実現し、結果を加算部225に出力する。
加算部225は、複数のbitシフタ/極性制御部220〜223の出力値を加算し、結果を第2加算器226に出力する。
第2加算器226は、対数変換ROM1部200内で加算したDCオフセット値に対応するDCオフセット値を減算し、最終的なフィルタ出力を得る。
以上の処理は、受信フィルタ制御部227に搭載されたソフトにより、CPU113にて実施される。
ここで、対数逆変換ROM3部215〜218における必要ビット数について、以下に考察する。
【0136】
まず、受信信号に対する帯域外雑音に対する要求仕様であるが、これは、ARIBの標準仕様の要求仕様から算出すると、帯域外雑音は42dB以上、要求S/Nは13.5dB以上のため、本具体例では、加算して55.5dB以上が必要である。
ビット数に換算すると、
ビット数≒(55.5−1.8)/6.02≒8.92bit・・(式07)
【0137】
対数変換ROM1部200内部では、正負の極性を持った信号の対数変換を可能とすべく、DCオフセットを加算しているが、このDCオフセット加算により、ビット数が増大する。
具体的には、信号±2.0(PAR6dB、実効+1.00)に対し、DCオフセット+3.00を加算しているため、
20*log(3/1)=9.54dB・・・・・・・・・・・(式8)
ビット数に換算すると、
9.54/6.02=1.59bit・・・・・・・・・・・・(式9)
従って、
8.92bit+1.59bit=10.51bit・・・・・(式10)
となる。
対数加算時には、対数仮数を加算しているため、加算値は、0.00〜0.30、即ち、実数で1.00〜2.00の範囲となる。
従って、考慮すべきbit数は+1.00bitとなる。
以上により、ビット数は、
8.92+1.59+1.00=min.11.51bit・・(式11)
となる。
所要タップ数は、DCM:49tap/ROF:41tapであるため、逆算すると、5.6bitとなる。
従って、対数加算後のビット数は、
8.92+1.59+1.0+5.6=17.11bit・・・(式12)
となる。
しかしながら、実際には、bitシフタ/極性制御部220〜223により、指数制御しているため、この指数制御の範囲を考慮が必要である。
具体的な指数制御範囲は、−1bit〜−11bitであるが、平均は、−7.5bitとなる。
そもそもビットシフトのオフセットが−1bitあるため、実効的な指数平均は、−6.5bitとなり、前記5.6bitを十分に満足している。
従って、累積加算時のビット数増+5.6bit分は、対数逆変換ROM3部215〜218に考慮は不要である。
以上から、本具体例の対数逆変換時に最低限必要なビット数は、
8.92+1.59+1.00=11.51bit・・・・・・(式13)
∴約12bitあれば、最低限十分と言える。
【0138】
マージンを+2bit(12dB)分見込めば、約14bitとなり、A/D12bitのフルサポート版となる。
図26は、対数逆変換を14bitとした場合の変換テーブルの内容を示している。
尚、これらのビット数は、要求仕様に従い、システム個々に最適化する。
図27は、実施の形態の受信フィルタ部によるフィルタリングの処理量の低減結果を示す図である。
図27のDCMの欄250に示す値は、DCM部105の処理量の例を示したものである。
DCM率を1.00倍(1/1倍)〜3.00倍(1/3倍)に増大させることで、処理t(処理時間長)は、0〜43μsまで増大する。
一方、ROFの欄251に示す値は、受信ROF部106部の処理量の例を示したものである。
DCM率を3.00倍(1/3倍)〜1.00倍(1/1倍)に減少させることで、処理t(処理時間長)は、159〜54μsまで減少する。
【0139】
合計の欄252に示す値は、前述した処理時間長の合計であるが、最終的な最適値は、第4項のDCM部105にて、1/3倍デシメーションにより、28.8kHzサンプリングを9.6kHzサンプリングに変換し、受信ROF部106にて、1/1倍デシメーションにより、9.6kHzサンプリングを維持し、フィルタリングにより、波形整形と後述するタイミング位相同期回路のデジタル制御を実施する。
【0140】
以上から、本実施の形態により、
図5に示した164μsかかっていたフィルタの処理時間を、
図27に示すように、97μs(約40%の処理量低減)とすることができる。これは、約40%の処理量低減が実現できたことになる。
【0141】
(実効速度の実現)
<発明の着眼点:実効速度の実現>
実効速度の実現は、まずは、標準仕様で規定された、オーバーヘッドをなるべく小さくすることが挙げられる。
また、送信データは、スタートストップ付きのデータに限定されているため、送信時に伝送に不要なスタートビットとストップビットを削除して伝送し、送信データそのものを必要最小限とする。
一方、送信データはスタートストップ付きの調歩データであるため、キャラクタ速度が、モデム側の伝送速度と合致していない。
このための速度偏差を吸収する。
【0142】
モデム側でスタートストップビットを削除することで、例えば、スタートビット1ビット、ユーザデータ8ビット、ストップビット1ビットの計10ビット構成の場合には、実効速度を10/8倍に拡大できるため、DTE側の速度がモデムの伝送速度より早い場合には、速度偏差の吸収が可能である。
逆に、DTE側速度がモデムの伝送速度より遅い場合には、モデム側は、送信すべきデータがなくなるため、何らかの方法で受信側にこれを通知する。
【0143】
本実施の形態では、送信すべきデータがない場合には、原点信号を送信し、受信側では、原点信号を検出することで、送信データなしと判断し、DTE050に対し、スタートストップビットなしのオールZ信号(オール1:オールマーク信号)を出力する。
以上により、実効速度実現が可能となる。なお、詳細動作は後述する。
図28〜
図37に関連図面を示す。
【0144】
スタートストップビット付きの調歩データを送受信するモデム1は、スタートストップビットを削除した送信データを生成すると共に、送信データがない場合に、送信なし信号を生成するST/SPbit削除部300と、送信データを符号化する送信符号化部301と、送信符号化部301と送信なし信号より、原点を含んだ信号点情報を生成する信号点発生部101と、信号点情報を受信し、原点信号を検出する原点検出部321と、原点検出部321の検出結果から、原点信号を除去する原点除去部322と、原点除去部322の出力信号を元に、送信符号化部301とは逆の受信の符号化を行う受信符号化部323と、受信符号化部323の出力に、送信側で削除されたスタートストップビットを付加すると共に、原点信号が検出された場合には、受信符号化部323の出力データをマークホールドするST/SPbit付加部324を備えている。これにより、調歩データの実効速度を維持することができる。
【0145】
<送信UART部の許容偏差>
図10の送信UART部011は、スタートストップ付きの調歩データをDTE010より、受信する。
本実施の形態のモデム1の伝送速度は、9600bpsであるが、調歩データ式の非同期データであるため、DTE010から送信される実効速度と、
図10、11に示すCPU部110が持っている伝送速度では、同じ9600bpsでも異なった通信速度となっている。
このため、送信UART部011は、この速度偏差を吸収する。
【0146】
送信UART部011のUARTにおいては、一般的にデータ通信速度の16倍のサンプリングクロックで入力信号をサンプリングしており、スタートビット検出により、内部トリガが発生し、所定のタイミングでストップビットが50%ビット幅点で検出された場合に、入力されたデータの取り込みを実行する。
【0147】
これらは、モデム側のクロック速度を中心に実行されるため、以上のデータ取り込み手順から、送信UART部011における、速度偏差吸収の許容値を算出できる。
これらは、周知技術であるため、詳細は、割愛するが、算出結果によれば、モデム側での許容偏差は、±4.375%程度となる。
また、過去の経験から、モデム側での速度偏差吸収の許容偏差仕様は、本発明では、±3.00%と設定した。
受信側は、同様に、受信データをDTE050に出力するが、送信側と同様の速度で処理した場合には、出力不可の現象が発生する。
【0148】
従って、本実施の形態では、送信UART部011では、入力データを9600bpsの速度で受け取り、受信UART部045側では、19.2kbpsの速度でDTE050にデータを出力し、速度偏差を吸収する。
<送信オーバーヘッドの削減>
送信データは、10ビット構成のデータから、スタートビットおよびストップビットを削除して受信側へ伝送する。
このため、回線側に必要とする実効速度は、以下に示すようになる。
9600bps*1.03*8/10=7910.4bps・・・(式14)
従って、回線側は、少なくとも7911bpsの実効速度確保は必須となる。
図28は、従来例および実施の形態による、フレーム構造例を示す図である。
現行ARIBの標準仕様書T98によれば、フレームフォーマットは、
図28(a)、
図28(b)に示すようになっている。
【0149】
これによれば、回線側の実効速度は、SB0(Synchronous Burst0:同期バースト)を除いたとしても、6400bpsとなっており、所望の実効速度を得ることは
困難である。
【0150】
一方、SC(Service Channel:通信用チャネル)の中で、RICH(Radio Information Channel:無線情報チャネル)は、標準仕様書T98の中で、「必要に応じてユーザ情報を転送するためにも使用される」と記載されているため、この部分を一部、通信用チャネルに使用することを考える。
【0151】
この部分をフルに通信用チャネルにアサインした場合には、
図28(c)に示すように、実効速度は8300bpsまで実現可能であり、従って、目標の7911bps以上を実現可能となる。
不足ビット数は以下により算出する。
9600bps/384*X=7911bps・・・・・・・・(式15)
X=316.44bit・・・・・・・・・・・・・・・・・・(式16)
不足ビット数Yは、
Y=316.44−96−160=60.44ビット・・・・・(式17)
【0152】
となる。従って、本実施の形態では、通信用チャネルの中で、RICHの70ビットおよび、未定義の6ビットの計76ビットの内で61ビット分を送信データにアサインすることで、実効速度の実現を図る。
図28(c)は、これらをフルに送信データにアサインした場合を示しており、最大、8300bps、即ち、
8300bps/8*10=10375bps・・・・・・・・(式18)
10375bps=約9600bps+8%・・・・・・・・・(式19)
の実効速度まで対応可能となる。
<送信側スタートストップビットの削減>
図29は、実施の形態の送信側速度偏差吸収回路の例を示す図である。
送信UART部011は、DTE010より、送信dataを受信し、スタートストップビット付きのデータをST/SPbit削除部300に出力する。
【0153】
ST/SPbit削除部300では、入力された送信data10ビットを入力Buff部303に格納し、入出力Buff監視制御部304に従い、出力Buff部305に出力する。
【0154】
入出力Buff監視制御部304は、スタートストップ付きデータが入力されていない場合、送信なし信号(1bit情報)を送信符号化部301および信号点発生部101に出力する。
【0155】
尚、入出力Buff監視制御部304は、送信なし信号出力時(原点信号出力時)図示しないカウンタを用いて、4シンボル間(8ビット時間長間)、送信なし信号を出力する。
これは、受信側で送信信号なし(原点信号)を検出する際に、雑音等で誤検出しないように、8ビット単位での送信制御を実現している。
即ち、送信dataは、常に、送信なし信号時にも、8ビット単位での伝送が行われる。
出力Buff部305は、入出力Buff監視制御部304に従い、2bit/Baudsの単位で送信dataを送信符号化部301に出力する。
【0156】
送信符号化部301では、入力された送信data2ビットについて、ARIB標準仕様書T98に規定されている仕様に従い、スクランブラ/誤り訂正/インターリーバ等の処理を行い、2ビットの送信data情報を信号点発生部101へ出力する。
スクランブラ/誤り訂正/インターリーバ等の詳細は、ARIBの標準仕様書T98に詳細に記載されており、周知技術であるため、説明は割愛する。
送信符号化部301は、送信なし信号受信時には、前述した処理を停止とする。
これらは、CPU113をソフトウェアで動作させることにより、実現する。
図30は、実施の形態の送信側速度偏差吸収回路のタイムチャートを示す図である。
図30では、入力dataの途中で送信dataがない場合を示しており、送信dataはマークホールドされている。
この場合には、入出力Buff監視制御部304にて、入力dataの監視が行われ、送信dataなし信号を出力する。
図31は、実施の形態の送信側の信号点を示す図である。
図31(a)は、信号点発生部101の出力4ビット情報の内、原点を除く信号点3ビット情報の具体的な信号点配置を示したものである。
図31(b)は、信号点発生部101の出力4ビット情報の内、原点情報の具体的な信号点配置を示したものである。
図31(c)は、信号点発生部101の出力4ビット情報(原点を含む)の具体的な信号点配置を示したものである。
<送信なし信号(原点信号)の検出>
図32は、実施の形態の受信側の速度偏差吸収回路を示す図である。
図10に示すAGC部039は、受信レベルを所望のレベルに調整後、受信信号を受信差動部107(受信位相回転部320)に出力する。
図33は、実施の形態の受信側の信号点例を示す図である。
【0157】
受信位相回転部320は、
図33(a)に示す9値(8値+原点信号)の信号点を受信し、送信側で実施したπ/4シフトによる、45度の位相回転に対して、逆の−45度の位相回転、即ち、0度、−45度、−90度、−135度、−180度、−225度、−270度、−315度、の位相回転を行い、
図33(b)に示す5値(4値+原点信号)の信号点を得、結果を原点検出部321および原点除去部322に出力する。
図34は、実施の形態の原点検出部の回路例を示す図である。
【0158】
原点検出部321では、入力された信号(
図33(b))をタップ遅延線330〜332に入力し、PWR部335〜338にて、PWR(パワー)を計算し、4シンボル単位に、4シンボル間のPWRの合計を加算部339にて計算する。
【0159】
その後、加算器340にて、TH値(マイナスのスレショールド値)を加算し、極性判定部341にて、
図33(b)の点線円内の領域内の信号か否かを判定し、結果を原点検出信号とし、各部へ出力する。
図35は、実施の形態の原点除去部の回路例を示す図である。
原点除去部322は、受信信号をタップ遅延線352に入力し、4シンボル遅延後に、原点検出部出力信号に従い、受信信号をタップ遅延線354に書き込む。
具体的には、送信側と同様にWR制御部353により、原点検出部321の出力信号に従い、WR制御部353(書き込み制御部)によりWR制御し書き込む。
原点信号検出なし時には、乗算器355により、過去の受信信号点との位相差分が計算され、結果を差動出力(
図33(c)に示す4値)として出力する。
以上により、送信側で送信された原点信号を除去し、結果を信号点判定部043に出力する。
信号点判定部043では、入力信号(
図33の(c))を45度位相シフトし、
図33(d)に示す信号点を生成する。
【0160】
これにより、信号点判定部043では、象限情報から、受信信号点を判定し、送信側と逆のナチュラル/グレイ変換を行い、送信dataを再生し、結果を
図32の受信符号化部323に出力する。
【0161】
受信符号化部323は、送信側と逆の周知技術である、デインターリーバ、誤り訂正、デスクランブラを行い、元の送信dataをST/SPbit付加部324に出力する。
図36は、実施の形態のST/SPbit付加部の回路例を示す図である。
ST/SPbit付加部360では、入力された信号にスタートストップビットを付加し、選択部361に出力する。
【0162】
選択部361は、mark信号も入力されており、原点検出部321の出力結果に従い、原点信号受信時には、mark信号を選択し、受信UART部045に出力する。
図37は、本実施の形態のST/SPbit付加部の回路の動作を示すタイムチャートである。
図37に示すように、原点検出信号受信時には、受信data信号をmarkホールドする。
受信UART部045は、マークホールドされた受信信号を含み、受信信号を例えば、19.2kbpsの速度で、DTE050に出力する。
以上により、DTE010とモデム側の速度偏差を吸収し、9600bpsの実効速度を実現する。
(タイミング位相同期回路のデジタル化)
<発明の着眼点:タイミング位相同期回路のデジタル化>
タイミング位相同期回路のデジタル化に関しての着眼点は、以下の2点である。
第1は、受信側フィルタのサンプリング周波数を従来例の半分で実現することである。
【0163】
第2は、フィルタ位相をアナログのVCXO(電圧制御水晶発振器)を用いたハードウェアで実現するのではなく、フィルタ係数の時間移動により、デジタル処理で実現することである。
以下、従来例を説明しながら、タイミング位相同期回路のデジタル化のポイントを説明する。
図38は、従来例による、TIM−PLL部の回路ブロック図である。
図38に示すように、DCM部105は、受信信号を受信ROF部402に出力する。
量子化部443は、位相情報Δθをフィルタ係数制御部400に出力する。
フィルタ係数制御部400は、制御結果をフィルタ係数ROM部401に出力する。
フィルタ係数ROM部401は、所望のフィルタ係数を受信ROF部402に出力する。
受信ROF部402は、所望の位相情報に従った、フィルタ出力をAGC部039に出力する。
【0164】
AGC部039は、受信信号を所望の受信レベルに調整し、BPF部411、412に出力する。BPF部411は、1/2ナイキスト周波数抽出用のBPF(Real側)であり、BPF部412は、1/2ナイキスト周波数抽出用のBPF(Imag側)である。
図39は、従来例による、1/2ナイキスト周波数成分の抽出図である。
図中の点線425は、1/2ナイキスト周波数を示す。また、実線426は、1/2ナイキスト周波数抽出用BPF特性例を示す。
【0165】
BPF部411、412は、入力された受信信号から、1/2ナイキスト周波数成分をBPF(
図39の426にBPFの特性例を示す)により、抽出し、結果をそれぞれReal側のPWR部413、およびImag側のPWR部414に出力する。
図40は、従来例による、PWR合成後の時間波形例である。
受信信号は、基本的に、送受フィルタの時間応答波形として入力される。
この受信信号のキャリア位相は、伝送路に従い、キャリア位相が回転された信号となっており、基本的にキャリア位相は不定である。
【0166】
この受信信号から、タイミング信号を抽出するため、PWR部により、パワーを計算し、Real側とImag側を加算器415により加算することで、
図40に示す太線情報から、タイミング位相に同期した信号をBPF部416により抽出する。
ここで、重要なのは、例えば、BPF部416を通過する信号はナイキスト周波数であり、例えば、実施の形態では4800Hzである。
このため、ベクトル変換部420により、容易にベクトル変換を実現するためには、BPF部416をナイキスト周波数の4倍で実現することが必要である。
【0167】
即ち、A/D部036〜BPF部416までをナイキスト周波数の4倍のサンプリング速度で実現すると、受信側の処理量としては、極めて負荷の重い回路ブロックとなっている。
一方、サンプリング定理から、サンプリング周波数は、ナイキスト周波数の倍のサンプリング速度であれば良い。
このため、本実施の形態では、タイミング抽出をナイキスト周波数の倍のサンプリング周波数に限定することで、受信のフィルタ処理を従来の半分で実現する。
本件は後述する。
【0168】
加算器415は、Real側とImag側のタイミング信号を加算し、キャリア位相成分を除去すると共に、ナイキスト周波数成分抽出のため、結果をBPF部416に出力する。
BPF部416は、ナイキスト周波数成分をBPFにより抽出し、結果をベクトル変換部420に出力する。
【0169】
ベクトル変換部420は、タップ遅延線421により、ナイキスト時間長の1/4だけ時間シフトした信号(即ち、90度位相の異なった信号)により、スカラー信号をベクトル信号に変換し、結果をθ変換部422に出力する。
【0170】
θ変換部422は、tan−1の関数を用いた処理か、あるいは、簡単なROMにより、ベクトル信号を位相情報(タイミング位相情報を示すスカラー情報)に変換し、結果を第1積分器430に出力する。
【0171】
第1積分器430は、乗算器431、加算器432、タップ遅延線433、乗算器434、加算器435、により構成され、周知技術である第1積分回路の演算を行い、結果を第2積分回路440に出力する。
【0172】
第2積分回路は、加算器441、タップ遅延線442、量子化部443、加算器444を備え、周知技術である第2積分回路の演算を行い、結果をフィルタ係数制御部400に出力する。
【0173】
尚、第1積分回路および第2積分回路は周知技術であるため、詳細の説明は割愛するが、量子化部443は、受信ROF部038の位相分解能に合わせて、量子化を行う。例えば、8ビットの量子化であれば、8ビットで量子化を行い、残存成分を加算器444で計算し、結果をタップ遅延線442にフィードバックする。
次に、本実施の形態のTIM−PLL部の回路ブロックを説明する。
図41は、実施の形態のTIM−PLL部の回路ブロックを示す図である。
図41で
図38と同一番号で示すものは、
図38と同一内容を示している。
【0174】
図41で
図38と異なるブロックは、受信ROF部500、−22.5度位相回転部501、カウンタ部502、M22.5度位相回転部503、乗算器504、BPF部511、512、ベクトル変換部513、514、(a+jb)二乗部515、516、加算器517、である。BPF部511、ベクトル変換部513、および(a+jb)二乗部515は、Real側の信号を処理する。BPF部512、ベクトル変換部514および(a+jb)二乗部516は、Imag側の信号を処理する。
図42(a)(b)は、実施の形態のタイミング位相抽出ベクトル例である。
受信ROF部106は、
図21に示した受信フィルタ部228のブロック図でフィルタ演算を実施している。
また、フィルタ係数は、
図25に示すフィルタ係数を使用している。
【0175】
−22.5度位相回転部501は、9600Hzのサンプリング速度で、送信側と逆の位相回転、即ち、0度/―22.5度/−45度/−67.5度/−90度/−112.5度/−135度/−157.5度/−180度/−202.5度/−225度/−247.5度/−270度/−292.5度/−315度/−337.5度/−360度=0度/・・・の半径1.0の回転信号となっている。
これにより、送信側でのπ/4シフトを元に戻し、タイミング位相抽出を容易なものとしている。
カウンタ部502は、4ビット(16位相)の繰り返しのカウンタとなっており、結果をM22.5度位相回転部503に出力する。
M22.5度位相回転部503は、カウンタ部502の結果により、選択された半径1.0の位相情報を乗算器504に出力する。
乗算器504は、AGC部039の信号の位相回転を行い、結果をBPF部511、512に出力する。
BPF部511、512は、BPF部411、412と機能は同等であるが、サンプリング周波数は、BPF部411、412の半分となっている。
具体的には、BPF部511、512は、ナイキスト周波数4800Hzの倍の9600Hzのサンプリング周波数となっている。
図42は、タイミング位相抽出をナイキスト周波数の倍のサンプリング速度で実現するための、説明図である。
図42の(a)は、BPF部511、512の出力信号イメージである。
【0176】
BPF部511、512では、
図39に示すように、1/2ナイキスト周波数成分を抽出しているため、ベクトル空間では、
図42(a)に示すように、180度位相が異なった2値の信号点遷移情報となっている。
このベクトル信号は、キャリア位相θcを伴っている。
【0177】
このキャリア位相情報は、タイミング位相同期には、不要な信号であるため、何らかの形で除去するのが好ましい。このため、本実施の形態では、ベクトル変換部513、514により、bBPF部511、512の出力信号をベクトル変換部420と同様に、位相を90度ずらした信号(即ち、T/2遅延情報)により、スカラー信号をベクトル信号に変換する。
(a+jb)二乗部515、516は、このベクトル変換された情報(
図42の(a))をベクトル信号の二乗計算を行う。
ベクトルの二乗計算は、位相情報は加算、振幅情報は掛け算となるため、同一信号時には、位相情報は2倍の情報となり、振幅は二乗情報となる。
図42(b)は、(a+jb)二乗部515、516の入力信号と出力信号の一例を示す図である。
即ち、キャリア位相θcは倍の2θcとなり、振幅は、二乗値となって、振幅が変化したベクトル信号となっている。
【0178】
この信号をそれぞれ、Real成分とImag成分と分離してみた場合には、キャリア位相情報は、タイミング位相情報のReal側振幅情報(二乗値)とImag側振幅情報(二乗値)となっており、これを加算器517で加算することで、
[COS(2θc)]**2+[SIN(2θc)]**2=一定・・・(式20)
となり、キャリア位相成分θcは消えることとなる。
残った信号は、タイミング位相情報のみとなるため、タイミング位相抽出部510により、タイミング位相情報が抽出できることとなる。
以降の第1積分回路430、第2積分回路440は、従来技術と同じであるため、説明は割愛する。
【0179】
本実施の形態のモデム1によれば、TIM部104のサンプリング速度を従来の半分とすることができ、結果として、A/D部036から受信ROF部106、AGC部039までのサンプリング速度も従来の半分で済ませることができ、受信側の処理量を大幅に低減可能となる。
【0180】
さらに、実施例では、DCM部105および、受信ROF部106の両方で、
図21の実施例を適用しているため、さらに、処理量の低減が可能な構造となっている。
【解決手段】ST/SPbit削除部300は、送信UART部011より入力された送信データ10ビットを入力Buff部303に格納する。入出力Buff監視制御部304は、スタートストップ付きデータが入力されていない場合、送信なし信号を送信符号化部301および信号点発生部101に出力すると共に、出力Buff部305にて、スタートストップビットを削除した送信データを生成し、送信符号化部301に出力する。信号点発生部101は、送信符号化部301にて符号化されたデータとST/SPbit削除部300にて生成された送信なし信号を元に、原点を含んだ信号点情報を生成する。