(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5778890
(24)【登録日】2015年7月17日
(45)【発行日】2015年9月16日
(54)【発明の名称】コンクリート管理方法及びシステム
(51)【国際特許分類】
B28C 7/02 20060101AFI20150827BHJP
C04B 40/00 20060101ALI20150827BHJP
E04G 21/02 20060101ALI20150827BHJP
【FI】
B28C7/02
C04B40/00
E04G21/02 101
【請求項の数】8
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2010-2095(P2010-2095)
(22)【出願日】2010年1月7日
(65)【公開番号】特開2011-140164(P2011-140164A)
(43)【公開日】2011年7月21日
【審査請求日】2012年12月19日
【審判番号】不服2014-9669(P2014-9669/J1)
【審判請求日】2014年5月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】303057365
【氏名又は名称】株式会社安藤・間
(73)【特許権者】
【識別番号】399052431
【氏名又は名称】株式会社ライフビジネスウェザー
(74)【代理人】
【識別番号】100081514
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 一
(74)【代理人】
【識別番号】100082692
【弁理士】
【氏名又は名称】蔵合 正博
(72)【発明者】
【氏名】黒台 昌弘
(72)【発明者】
【氏名】谷口 裕史
(72)【発明者】
【氏名】坂本 守
(72)【発明者】
【氏名】笠 博義
(72)【発明者】
【氏名】石井 伸幸
【合議体】
【審判長】
河原 英雄
【審判官】
真々田 忠博
【審判官】
大橋 賢一
(56)【参考文献】
【文献】
特開平8−127020(JP,A)
【文献】
特開平7−1440(JP,A)
【文献】
特開2008−36970(JP,A)
【文献】
特開平8−245282(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B28C 1/00-9/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
気温変化を考慮すべき条件下で、コンクリートの各種材料を貯蔵する貯蔵部から前記各種材料を混練部へ供給し、前記各種材料を前記混練部で練り混ぜるコンクリートの製造工程を管理するコンクリート管理方法であって、
前記各種材料の練り混ぜ前の、前記貯蔵部周囲の気温、前記各種材料の温度、及び前記混練部内部の温度を実測し、これら気温、各種材料の温度、混練部内温度の実測値の組み合わせと、前記コンクリートの製造完了時点の前記コンクリートの温度の実測値との関係から、前記コンクリートの製造完了時点の温度を予測するための予測式を作成するステップと、
任意の地点及び時点の気象予測情報を所定の時間毎に又は所定の時刻毎に通知する気象予測情報通知手段により得る、前記コンクリートの製造完了予定時点の前記貯蔵部周囲の予測気温値と、前記各種材料の練り混ぜ前の、前記各種材料の温度、及び前記混練部内温度の実測値との組み合わせにより、前記予測式に基づいて、前記コンクリートの製造完了時点の予測温度を計算するステップと、
を有し、
前記各種材料の練り混ぜ前の、前記予測式と気象予測情報による前記コンクリートの製造完了予定時点の前記貯蔵部周囲の予測気温値に基づく前記コンクリートの製造完了時点の予測温度から、前記コンクリートの製造可否を判断する、
ことを特徴とするコンクリート管理方法。
【請求項2】
コンクリートの製造完了時点の予測温度を計算するステップに続いて、各実測値を蓄積し分析するステップ、及び/又はコンクリートの製造完了時点の予測温度を各実測値とともに記録保管するステップを有する請求項1に記載のコンクリート管理方法。
【請求項3】
気温変化を考慮すべき条件下で、コンクリートの製造完了後、前記コンクリートを前記コンクリートの打設場所へ運搬し、前記コンクリートの打設場所に打設するコンクリートの打設工程を管理するコンクリート管理方法であって、
前記コンクリートの製造完了時点の温度と、前記コンクリートの打設前の、前記コンクリートの製造場所、前記コンクリートの運搬ルート、及び前記コンクリートの打設場所での所定の計測時点及び地点の気温を実測し、前記コンクリートの製造完了時点の温度、前記コンクリートの製造場所、運搬ルート、及び打設場所の各気温の実測値の組み合わせと、前記コンクリートの打設完了時点の前記コンクリートの温度の実測値との関係から、前記コンクリートの打設完了時点の温度を予測するための予測式を作成するステップと、
任意の地点及び時点の気象予測情報を所定の時間毎に又は所定の時刻毎に通知する気象予測情報通知手段により得る、前記コンクリートの打設前の、前記コンクリートの製造場所、運搬ルート、打設場所での前記所定の計測時点及び地点の予測気温値と、前記コンクリートの製造完了時点の温度との組み合わせにより、前記予測式に基づいて、前記コンクリートの打設完了時点の予測温度を計算するステップと、
を有し、
前記コンクリートの打設前の、前記予測式と気象予測情報による前記コンクリートの製造場所、運搬ルート、打設場所での前記所定の計測時点及び地点の予測気温値に基づく前記コンクリートの打設完了時点の予測温度から、前記コンクリートの打設可否を判断する、
ことを特徴とするコンクリート管理方法。
【請求項4】
コンクリートの製造完了時点の温度に、請求項1に記載のコンクリート管理方法において計算されるコンクリートの製造完了時点の予測温度を用いる請求項3に記載のコンクリート管理方法。
【請求項5】
コンクリートの製造完了時点の温度に、実測値を用いる請求項3に記載のコンクリート管理方法。
【請求項6】
コンクリートの打設完了時点の予測温度を計算するステップに続いて、各実測値を蓄積し分析するステップ、及び/又はコンクリートの打設完了時点の予測温度を各実測値とともに記録保管するステップを有する請求項3乃至5のいずれかに記載のコンクリート管理方法。
【請求項7】
気温変化を考慮すべき条件下で、コンクリートの各種材料を貯蔵する貯蔵部から前記各種材料を混練部へ供給し、前記各種材料を前記混練部で練り混ぜるコンクリートの製造工程を管理するコンクリート管理システムであって、
前記各種材料の練り混ぜ前の、前記貯蔵部周囲の気温、前記各種材料の温度、及び前記混練部内部の温度を実測し、これら気温、各種材料の温度、混練部内温度の実測値の組み合わせと、前記コンクリートの製造完了時点の前記コンクリートの温度の実測値との関係から、前記コンクリートの製造完了時点の温度を予測するための予測式を作成する手段と、
任意の地点及び時点の気象予測情報を所定の時間毎に又は所定の時刻毎に通知する気象予測情報通知手段により得る、前記コンクリートの製造完了予定時点の前記貯蔵部周囲の予測気温値と、前記各種材料の練り混ぜ前の、前記各種材料の温度、及び前記混練部内温度の実測値との組み合わせにより、前記予測式に基づいて、前記コンクリートの製造完了時点の予測温度を計算する手段と、
を備え、
前記各種材料の練り混ぜ前の、前記予測式と気象予測情報による前記コンクリートの製造完了予定時点の前記貯蔵部周囲の予測気温値に基づく前記コンクリートの製造完了時点の予測温度から、前記コンクリートの製造可否を判断する、
ことを特徴とするコンクリート管理システム。
【請求項8】
気温変化を考慮すべき条件下で、コンクリートの製造完了後、前記コンクリートを前記コンクリートの打設場所へ運搬し、前記コンクリートの打設場所に打設するコンクリートの打設工程を管理するコンクリート管理システムであって、
前記コンクリートの製造完了時点の温度と、前記コンクリートの打設前の、前記コンクリートの製造場所、前記コンクリートの運搬ルート、及び前記コンクリートの打設場所での所定の計測時点及び地点の気温を実測し、前記コンクリートの製造完了時点の温度、前記コンクリートの製造場所、運搬ルート、及び打設場所の各気温の実測値の組み合わせと、前記コンクリートの打設完了時点の前記コンクリートの温度の実測値との関係から、前記コンクリートの打設完了時点の温度を予測するための予測式を作成する手段と、
任意の地点及び時点の気象予測情報を所定の時間毎に又は所定の時刻毎に通知する気象予測情報通知手段により得る、前記コンクリートの打設前の、前記コンクリートの製造場所、運搬ルート、打設場所での前記所定の計測時点及び地点の予測気温値と、前記コンクリートの製造完了時点の温度との組み合わせにより、前記予測式に基づいて、前記コンクリートの打設完了時点の予測温度を計算する手段と、
を備え、
前記コンクリートの打設前の、前記予測式と気象予測情報による前記コンクリートの製造場所、運搬ルート、打設場所での前記所定の計測時点及び地点の予測気温値に基づく前記コンクリートの打設完了時点の予測温度から、前記コンクリートの打設可否を判断する、
ことを特徴とするコンクリート管理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンクリートの製造時の温度や打設時の温度を予測し、コンクリートの製造可否や打設可否の判断を行うのに用いるコンクリート管理方法及びシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
コンクリートの施工時の重要な要素の一つにコンクリートの温度があり、このコンクリートの温度は、施工上の品質に影響を与えたり、運搬上の条件にも影響を与える。特に、コンクリートの温度が高くなると、水和反応が早くなって長期強度が低下しやすく、硬化温度が高いために外気が急激に低下するとひび割れを生じやすくなり、また、運搬時や打ち込みまでの間にスランプロスが生じやすいといった現象を起こしやすい。これに対処するため、従来においては、コンクリート製造プラントでコンクリートを製造する場合に、練り上がりのコンクリートの温度を推測してコンクリートの温度管理を行う方法が提案されている。このコンクリートの温度管理方法が特許文献1に記載されている。
【0003】
この文献1のコンクリートの温度管理方法では、コンクリートを製造する時に、コンクリートの各種材料を計量する計量槽にそれぞれ温度センサを配設し、これらの温度センサを温度管理装置に接続して、この温度管理装置に予めコンクリートの各種材料の比熱を入力して記憶させる。各計量槽により材料を計量した時点で計量した各材料の温度と計量値を検出し、この温度と計量値を温度管理装置に送り込む。温度管理装置では予め記憶させた各種材料の比熱と送り込まれた各材料の温度及び重量とよりコンクリートの練り上がり温度を演算し、コンクリートの練り上がり温度を推定する。そして、この推定されたコンクリートの練り上がり温度を出力装置により出力して、コンクリートの練り上がり温度の管理情報を提供する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平8−127020号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、この種のコンクリートの製造では、一般に、コンクリートの各種材料の練り混ぜ開始以前の各種材料の周囲の気温、各種材料の温度、練り混ぜ室の室温を実測して、その結果から人為的にコンクリートの製造完了時の温度を予測し、製造可否の判断を行っているため、この製造完了時の温度の予測を誤ると、規定上使用できないコンクリートを製造することになり、コンクリートは廃棄処分となって、施工ロス、すなわち時間とコストのロスが生じる、という問題がある。また、コンクリートの打設完了時の温度は経験的に知られた数式により計算されて打設可否の判断に使用されているのが通常で、この場合、コンクリートの運搬時や打設中の熱損失に留意する必要があるところ、この運搬時や打設中の熱損失が経験値から求められており、天候に左右されるはずの気温変化が考慮されていないため、コンクリートの打設完了時の温度の予測を適確に行うことが困難で、この温度の予測が誤れば、コンクリートの打設作業は無駄になり、施工ロス、すなわち時間とコストのロスが生じる、という問題がある。
【0006】
本発明は、このような従来の問題を解決するものであり、コンクリートの各種材料を貯蔵する貯蔵部から各種材料を混練部へ供給し、各種材料を混練部で練り混ぜるコンクリートの製造工程において、コンクリートの製造完了時の温度を可及的に適確に予測し、コンクリートの製造可否の判断を適切に行い得るコンクリート管理方法及びシステムを提供すること、及び、コンクリートの製造完了後、コンクリートをコンクリートの打設場所へ運搬し、コンクリートの打設場所に打設するコンクリートの打設工程において、コンクリートの打設完了時の温度を可及的に適確に予測し、コンクリートの打設可否の判断を適切に行い得るコンクリート管理方法及びシステムを提供すること、を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明は、
気温変化を考慮すべき条件下で、コンクリートの各種材料を貯蔵する貯蔵部から前記各種材料を混練部へ供給し、前記各種材料を前記混練部で練り混ぜるコンクリートの製造工程を管理するコンクリート管理方法であって、前記各種材料の練り混ぜ前の、前記貯蔵部周囲の気温、前記各種材料の温度、及び前記混練部内部の温度を実測し、これら気温、各種材料の温度、混練部内温度の実測値の組み合わせと、前記コンクリートの製造完了時点の前記コンクリートの温度の実測値との関係から、前記コンクリートの製造完了時点の温度を予測するための予測式を作成するステップと、任意の地点及び時点の気象予測情報を所定の時間毎に又は所定の時刻毎に通知する気象予測情報通知手段により得る、前記コンクリートの製造完了予定時点の前記貯蔵部周囲の予測気温値と、前記各種材料の練り混ぜ前の、前記各種材料の温度、及び前記混練部内温度の実測値との組み合わせにより、前記予測式に基づいて、前記コンクリートの製造完了時点の予測温度を計算するステップとを有し、前記各種材料の練り混ぜ前の、前記予測式と気象予測情報による前記コンクリートの製造完了予定時点の前記貯蔵部周囲の予測気温値に基づく前記コンクリートの製造完了時点の予測温度から、前記コンクリートの製造可否を判断する、ことを要旨とする。
本発明は、さらに、コンクリートの製造完了時点の予測温度を計算するステップに続いて、各実測値を蓄積し分析するステップ、及び/又はコンクリートの製造完了時点の予測温度を各実測値とともに記録保管するステップを有することが好ましい。
また、本発明は、
気温変化を考慮すべき条件下で、コンクリートの製造完了後、前記コンクリートを前記コンクリートの打設場所へ運搬し、前記コンクリートの打設場所に打設するコンクリートの打設工程を管理するコンクリート管理方法であって、前記コンクリートの製造完了時点の温度と、前記コンクリートの打設前の、前記コンクリートの製造場所、前記コンクリートの運搬ルート、及び前記コンクリートの打設場所での所定の計測時点及び地点の気温を実測し、前記コンクリートの製造完了時点の温度、前記コンクリートの製造場所、運搬ルート、及び打設場所の各気温の実測値の組み合わせと、前記コンクリートの打設完了時点の前記コンクリートの温度の実測値との関係から、前記コンクリートの打設完了時点の温度を予測するための予測式を作成するステップと、任意の地点及び時点の気象予測情報を所定の時間毎に又は所定の時刻毎に通知する気象予測情報通知手段により得る、前記コンクリートの打設前の、前記コンクリートの製造場所、運搬ルート、打設場所での前記所定の計測時点及び地点の予測気温値と、前記コンクリートの製造完了時点の温度との組み合わせにより、前記予測式に基づいて、前記コンクリートの打設完了時点の予測温度を計算するステップとを有し、前記コンクリートの打設前の、前記予測式と気象予測情報による前記コンクリートの製造場所、運搬ルート、打設場所での前記所定の計測時点及び地点の予測気温値に基づく前記コンクリートの打設完了時点の予測温度から、前記コンクリートの打設可否を判断する、ことを要旨とする。
この場合、コンクリートの製造完了時点の温度に、上記に記載のコンクリート管理方法において計算されるコンクリートの製造完了時点の予測温度を用いてもよく、実測値を用いてもよい。
本発明は、さらに、コンクリートの打設完了時点の予測温度を計算するステップに続いて、各実測値を蓄積し分析するステップ、及び/又はコンクリートの打設完了時点の予測温度を各実測値とともに記録保管するステップを有することが好ましい。
【0008】
さらに、上記目的を達成するために、本発明は、
気温変化を考慮すべき条件下で、コンクリートの各種材料を貯蔵する貯蔵部から前記各種材料を混練部へ供給し、前記各種材料を前記混練部で練り混ぜるコンクリートの製造工程を管理するコンクリート管理システムであって、前記各種材料の練り混ぜ前の、前記貯蔵部周囲の気温、前記各種材料の温度、及び前記混練部内部の温度を実測し、これら気温、各種材料の温度、混練部内温度の実測値の組み合わせと、前記コンクリートの製造完了時点の前記コンクリートの温度の実測値との関係から、前記コンクリートの製造完了時点の温度を予測するための予測式を作成する手段と、任意の地点及び時点の気象予測情報を所定の時間毎に又は所定の時刻毎に通知する気象予測情報通知手段により得る、前記コンクリートの製造完了予定時点の前記貯蔵部周囲の予測気温値と、前記各種材料の練り混ぜ前の、前記各種材料の温度、及び前記混練部内温度の実測値との組み合わせにより、前記予測式に基づいて、前記コンクリートの製造完了時点の予測温度を計算する手段とを備え、前記各種材料の練り混ぜ前の、前記予測式と気象予測情報による前記コンクリートの製造完了予定時点の前記貯蔵部周囲の予測気温値に基づく前記コンクリートの製造完了時点の予測温度から、前記コンクリートの製造可否を判断する、ことを要旨とする。
また、本発明は、
気温変化を考慮すべき条件下で、コンクリートの製造完了後、前記コンクリートを前記コンクリートの打設場所へ運搬し、前記コンクリートの打設場所に打設するコンクリートの打設工程を管理するコンクリート管理システムであって、前記コンクリートの製造完了時点の温度と、前記コンクリートの打設前の、前記コンクリートの製造場所、前記コンクリートの運搬ルート、及び前記コンクリートの打設場所での所定の計測時点及び地点の気温を実測し、前記コンクリートの製造完了時点の温度、前記コンクリートの製造場所、運搬ルート、及び打設場所の各気温の実測値の組み合わせと、前記コンクリートの打設完了時点の前記コンクリートの温度の実測値との関係から、前記コンクリートの打設完了時点の温度を予測するための予測式を作成する手段と、任意の地点及び時点の気象予測情報を所定の時間毎に又は所定の時刻毎に通知する気象予測情報通知手段により得る、前記コンクリートの打設前の、前記コンクリートの製造場所、運搬ルート、打設場所での前記所定の計測時点及び地点の予測気温値と、前記コンクリートの製造完了時点の温度との組み合わせにより、前記予測式に基づいて、前記コンクリートの打設完了時点の予測温度を計算する手段とを備え、前記コンクリートの打設前の、前記予測式と気象予測情報による前記コンクリートの製造場所、運搬ルート、打設場所での前記所定の計測時点及び地点の予測気温値に基づく前記コンクリートの打設完了時点の予測温度から、前記コンクリートの打設可否を判断する、ことを要旨とする。
【発明の効果】
【0009】
(1)本発明のコンクリート管理方法では、
気温変化を考慮すべき条件下で、コンクリートの各種材料を貯蔵する貯蔵部から各種材料を混練部へ供給し、各種材料を混練部で練り混ぜるコンクリートの製造工程において、各種材料の練り混ぜ前の、貯蔵部周囲の気温、各種材料の温度、及び混練部内温度の実測値の組み合わせと、コンクリートの製造完了時点の温度の実測値との関係から、コンクリートの製造完了時の温度を予測するための予測式を作成し、気象予測情報通知手段により得る、貯蔵部周囲のコンクリートの製造完了予定時点の予測気温値と、各種材料の温度、及び混練部内温度の実測値との組み合わせにより、予測式に基づいて、コンクリートの製造完了時の予測温度を計算し、この予測温度に基づいて、コンクリートの製造可否を判断するので、
気温変化を考慮すべき条件下で、コンクリートの製造完了時の温度を可及的に適確に予測して、コンクリートの製造可否の判断を適切に行うことができる、という格別な効果を奏する。
(2)本発明のコンクリート管理方法では、
気温変化を考慮すべき条件下で、コンクリートの製造完了後に、コンクリートをコンクリートの打設場所へ運搬し、コンクリートの打設場所に打設するコンクリートの打設工程において、コンクリートの製造完了時点の温度と、コンクリートの打設前の、コンクリートの製造場所の気温、コンクリートの運搬ルートの気温、及びコンクリートの打設場所の気温の実測値の組み合わせと、コンクリートの打設完了時点の温度の実測値との関係から、コンクリートの打設完了時の温度を予測するための予測式を作成し、気象予測情報通知手段により得る、コンクリートの製造場所、運搬ルート、打設場所の予測気温値と、コンクリートの製造完了時点の温度との組み合わせにより、予測式に基づいて、コンクリートの打設完了時の予測温度を計算し、この予測温度に基づいて、コンクリートの打設可否を判断するので、
気温変化を考慮すべき条件下で、コンクリートの打設完了時の温度を可及的に適確に予測して、コンクリートの打設可否の判断を適切に行うことができる、という格別な効果を奏する。
(3)本発明のコンクリート管理システムでは、
気温変化を考慮すべき条件下で、コンクリートの各種材料を貯蔵する貯蔵部から各種材料を混練部へ供給し、各種材料を混練部で練り混ぜるコンクリートの製造工程において、各種材料の練り混ぜ前の、貯蔵部周囲の気温、各種材料の温度、及び混練部内温度の実測値の組み合わせと、コンクリートの製造完了時点の温度の実測値との関係から、コンクリートの製造完了時の温度を予測するための予測式を作成し、気象予測情報通知手段により得る、貯蔵部周囲のコンクリートの製造完了予定時点の予測気温値と、各種材料の温度、及び混練部内温度の実測値との組み合わせにより、予測式に基づいて、コンクリートの製造完了時の予測温度を計算し、この予測温度に基づいて、コンクリートの製造可否を判断するので、
気温変化を考慮すべき条件下で、コンクリートの製造完了時の温度を可及的に適確に予測して、コンクリートの製造可否の判断を適切に行うことができる、という格別な効果を奏する。
(4)本発明のコンクリート管理システムでは、
気温変化を考慮すべき条件下で、コンクリートの製造完了後に、コンクリートをコンクリートの打設場所へ運搬し、コンクリートの打設場所に打設するコンクリートの打設工程において、コンクリートの製造完了時点の温度と、コンクリートの打設前の、コンクリートの製造場所の気温、コンクリートの運搬ルートの気温、及びコンクリートの打設場所の気温の実測値の組み合わせと、コンクリートの打設完了時点の温度の実測値との関係から、コンクリートの打設完了時の温度を予測するための予測式を作成し、気象予測情報通知手段により得る、コンクリートの製造場所、運搬ルート、打設場所の予測気温値と、コンクリートの製造完了時点の温度との組み合わせにより、予測式に基づいて、コンクリートの打設完了時の予測温度を計算し、この予測温度に基づいて、コンクリートの打設可否を判断するので、
気温変化を考慮すべき条件下で、コンクリートの打設完了時の温度を可及的に適確に予測して、コンクリートの打設可否の判断を適切に行うことができる、という格別な効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明によるコンクリートの製造工程を管理するコンクリート管理方法を示す流れ図
【
図4】同管理方法において作成する計算式を導くための各種要素を示す図
【
図5】同管理方法において作成するエビデンス(管理帳票)を示す図
【
図6】同管理方法に基づくコンクリート管理システムの概略構成を示す図
【
図7】本発明によるコンクリートの打設工程を管理するコンクリート管理方法を示す流れ図
【発明を実施するための形態】
【0011】
次に、この発明を実施するための形態について図を用いて説明する。
図1に
気温変化を考慮すべき条件下で、コンクリート製造プラントのコンクリートの製造工程を管理するコンクリート管理方法を示し、
図2及び
図3にそのイメージを概略的に示している。まず、
図1のステップ1及び
図2に示すように、コンクリートの各種材料の練り混ぜ前の、貯蔵部(
図2中の受材ビン)周囲の気温、各種材料の温度、及び混練部内部の温度を実測し、これら気温、各種材料の温度、混練部内温度の実測値の組み合わせと、コンクリートの製造完了時点の温度の実測値との関係から、コンクリートの製造完了時の温度を予測するための予測式を作成する。この場合、コンクリートの製造完了後の温度は、使用する骨材、セメント、水などの比熱、密度、体積、流入(出)熱量の関数によって表現することができ、また、流入(出)熱量は温度変化量や熱伝導率の関数によって表現することができる。そこで、複数(この場合、3個)の受材ビン(骨材を貯蔵するサイロ)内の温度t1、t2、t3とその付近の屋外温度(気温)T1、コンクリートの練り混ぜ室(混練部)内の温度T2を実測し、また、x分後のコンクリートの製造完了時の温度を実測する。そして、これら受材ビン内の温度t1、t2、t3、その付近の屋外温度T1及び練り混ぜ室内の温度T2の実測値の組み合わせとコンクリートの製造完了時点の温度の実測値との関係から、コンクリートの製造完了時の温度を予測するための予測式を導く。なお、ここで「x分」とは、受材ビンから骨材などが回収され、ベルトコンベアなどにより練り混ぜ室に届けられて、所定の回数(時間)まで練り混ぜられた後、コンクリートの製造が完了するまでの時間をいい、現場での実測時間である。
このコンクリートの製造完了後の温度Tは例えば、次の式(1)により求められる。
【数1】
この場合、受材ビンに貯蔵されている骨材の温度Ta1、Ta2、…、セメントの温度Tc、水の温度Tmと外気温との関係は、事前に実測して関係式を得ておく。
また、日射を考慮した受材ビン内部温度は、次の式(2)となる。複数の粒径の骨材を用いる場合、つまり、複数の受材ビンがある場合は、個別に式を得ておく。
なお、式(2)を導くための各種要素を
図4に示す。
図4に示すように、測定ポイントにおける水平面日射量(計測値)はItvで表され、その外気温度(計測値)はToaで表される。
また、受材ビン内部の物性などに関する各種要素は次のように表される。
受材ビン表面積:A
時刻nの内部代表温度:T(n)
空気熱容量(既知):Cpa
空気密度(既知):ρa
空間容積(計測値):Va
材料熱容量(既知):Cpb
材料密度(既知):ρb
材料容積(計測値):Vb
【数2】
【0012】
次に、
図1のステップ2及び
図3に示すように、任意の地点及び時点の気象予測情報を所定の時間毎に又は所定の時刻毎に通知する気象予測情報通知手段により得る、貯蔵部(
図3中の受材ビン)周囲のコンクリートの製造完了予定時点の予測気温値と、各種材料の温度、及び混練部内温度の実測値との組み合わせにより、上記予測式に基づいて、コンクリートの製造完了時の予測温度を計算する。そして、この予測温度に基づいて、コンクリートの製造可否を判断する。この場合、気象予測情報通知手段に、例えば、気象予報業務免許を取得した民間気象情報会社で、全国各地の気温を含む気象予測情報を例えば10分間隔、1時間間隔などのように所定の時間毎に、又は午前11時、午後1時などのように所定の時刻毎に、インターネットその他の通信ネットワークを介してパソコンや携帯電話などのユーザ端末に配信する気象情報通知システムを利用し、このシステムからx分後(又はx時間後)に予測されるコンクリート製造場所の屋外温度を得て、これを上記予測式(式1、式2)の気温(外気温)の項に入力し、コンクリートの製造完了時の温度を予測する。そして、この予測温度を出荷してはいけないコンクリートの温度基準と対比して、コンクリートの製造可否を判断し、この予測温度が当該温度基準を超えていない場合、コンクリートの製造を進め、この予測温度が当該温度基準を超えている場合、受材ビンからの骨材などの集荷を停止し、コンクリートの製造を中断する。コンクリート製造プラントでは、一般に、コンクリートの製造に必要な骨材、セメント、水を自動的に集荷する集荷装置やこれらの骨材、セメント、水を加温又は冷却する加温冷却装置などを備えているので、コンクリートの製造可否の判断で、「否」と判断された場合は、当該集荷装置の動作を自動的に停止し、当該加温冷却装置を自動的に動作させて骨材、セメント、水の温度を調整することになる。
【0013】
次に、
図1のステップ3に示すように、上記各実測値を蓄積し、分析する。この場合、x分後のコンクリートの製造完了時の温度の実測値とコンクリートの製造完了時の予測温度とを比較することで、予測式の精度を上げるなど、このような上記各実測値の蓄積、分析により、予測値を実測値に最大限に近づけ、上記予測式の精度を可及的に向上させることが望ましい。
【0014】
そして、
図1のステップ4に示すように、コンクリートの製造完了時の予測温度を各実測値と共に、エビデンス(管理帳票)として記録し保管する。
図5にエビデンスの一例を示している。このようなエビデンスの作成により、温度等実測値、予測気温値及び予測に基づいて実行した作業指示内容を日時情報とともに記録し、履行証明に必要な情報を施工管理帳票として保管する。
【0015】
図6にこの管理方法に基づくコンクリート製造プラントのコンクリートの製造工程を管理するコンクリート管理システムの概略を示している。
図6に示すように、コンクリート製造プラント1は、コンクリートの各種材料(骨材、セメント、水)を貯蔵する貯蔵部(受材ビン)2、各種材料を計量する計量部(図示省略)、各種材料を練り混ぜる混練部(練り混ぜ室)3、これら各部を操作、制御する制御部(制御盤)4などを備え、コンクリート管理システム5A、5Bの所定の制御プログラムに基づいて、コンクリートの各種材料を貯蔵部2から混練部3へ供給し、混練部3で練り混ぜるようになっている。コンクリート管理システム5は、コンクリート製造プラント1の各部に配設され、各部の温度を計測する複数の温度センサ6と、コンクリート製造プラント1内に設置され、各温度センサ6により検出された各部の温度に基づいて、コンクリートの製造工程を管理するコンピュータ7とにより構成される。この場合、各温度センサ6には放射温度計や熱電対などの汎用的な温度感知センサが使用され、これらの温度感知センサが貯蔵部2内部、貯蔵部2付近の屋外、及び混練部3内部にそれぞれ配置されて、貯蔵部2内の各種材料の温度、貯蔵部2付近の屋外温度(気温)、及び混練部3内の温度を計測する。コンピュータ7はパソコンが採用され、演算装置及び制御装置からなる中央処理装置、プログラムメモリ及びデータメモリなどを有する記憶装置、キーボードなどの入力装置、モニタ、プリンタなどの出力装置、さらに各種の通信ネットワークに接続可能な通信インタフェースなどを備え、記憶装置に、各種材料の練り混ぜ前の、受材ビン周囲の気温、各種材料の温度、及び混練部内部の温度を各温度センサ6により実測し、これら気温、各種材料の温度、混練部内温度の実測値の組み合わせと、コンクリートの製造完了時点の温度の実測値との関係から、コンクリートの製造完了時の温度を予測するための予測式を作成する予測式作成プログラム71と、任意の地点及び時点の気象予測情報を所定の時間経過毎に又は所定の時刻毎に通知する気象予測情報通知手段9により得る、受材ビン周囲のコンクリートの製造完了予定時点の予測気温値と、各種材料の温度、及び混練部内温度の実測値との組み合わせにより、上記の予測式に基づいて、コンクリートの製造完了時の予測温度を計算する予測温度計算プログラム72とを含む、コンクリートの製造プログラムを格納される。そして、この管理システム5の場合、気象予測情報通知手段9に、既述のとおり、気象予報業務免許を取得した民間気象情報会社で、全国各地の気象予測情報を所定の時間経過毎に又は所定の時刻毎に、インターネットその他の通信ネットワーク8を介してユーザ端末に配信する気象情報通知システムを利用するので、パソコン7が通信インタフェースを介してインターネットその他の通信ネットワーク8に接続され、このネットワーク8を介して気象情報通知システム9に接続される。なお、温度センサ6とパソコン7、パソコン7と制御部4はそれぞれネットワークケーブルなどで接続される。このようにしてコンクリートの製造完了時の温度を予測し、この予測温度に基づいて、コンクリートの製造可否を判断する。
【0016】
以上説明したように、このコンクリート管理方法及びシステムでは、各種材料の練り混ぜ前の、貯蔵部周囲の気温、各種材料の温度、及び混練部内温度の実測値の組み合わせと、コンクリートの製造完了時点の温度の実測値との関係から、コンクリートの製造完了時の温度を予測するための予測式を作成し、任意の地点及び時点の気象予測情報を所定の時間経過毎に又は所定の時刻毎に通知する気象予測情報通知手段により得る、貯蔵部周囲の製造完了予定時点の予測気温値と、各種材料の温度、及び混練部内温度の実測値との組み合わせにより、上記予測式に基づいて、コンクリートの製造完了時の予測温度を計算し、この予測温度に基づいて、コンクリートの製造可否を判断するので、コンクリートの製造完了時の温度を可及的に適確に予測して、コンクリートの製造可否の判断の正答率を向上させることができ、これにより、コンクリートの製造ロスを防止することができる。
【0017】
図7に
気温変化を考慮すべき条件下で、コンクリートの製造完了後、コンクリートをコンクリートの打設場所へ運搬し、コンクリートの打設場所に打設するコンクリートの打設工程を管理するコンクリート管理方法を示している。まず、
図7のステップ5に示すように、コンクリートの製造完了時点の温度と、コンクリートの打設前の、コンクリートの製造場所の気温、コンクリートの運搬ルートの気温、及びコンクリートの打設場所の気温を実測し、これらコンクリートの温度、コンクリートの製造場所、運搬ルート、打設場所の各気温の実測値の組み合わせと、コンクリートの打設完了時点の温度の実測値との関係から、コンクリートの打設完了時の温度を予測するための予測式を作成する。この場合、コンクリートの打設完了時の温度は、運搬中、打設中の熱損失のために、混練部で練り混ぜられたときのコンクリートの温度よりも低下し、その低下の程度は1時間につき、コンクリートの温度とその周囲の気温との差の15パーセント程度とされている。そこで、コンクリートの製造完了時点の温度、コンクリートの打設前の、コンクリートの製造場所の気温、コンクリートの運搬ルートの気温、及びコンクリートの打設場所の気温、コンクリートの打設完了時の温度を実測する。そして、このコンクリートの温度と各気温の実測値の組み合わせとコンクリートの打設完了時点の温度の実測値との関係から、コンクリートの打設完了時の温度を予測するための予測式を導く。
このコンクリートの打設完了後の温度Tは例えば、次の式(3)により求められる。
【数3】
この式3に、t時間後の予測気温と、製造時の実測コンクリート温度を代入すれば、コンクリートの打設完了時の温度を得ることができる。
なお、T0、T1、T2の関係を定期的に分析することで、式3中の計数0.15を見なおすことがある。
【0018】
次に、
図7のステップ6に示すように、任意の地点及び時点の気象予測情報を所定の時間経過毎に又は所定の時刻毎に通知する気象予測情報通知手段により得る、コンクリートの製造場所、運搬ルート、打設場所の予測気温値と、コンクリートの製造完了時点の温度との組み合わせにより、上記予測式に基づいて、コンクリートの打設完了時の予測温度を計算する。なお、この場合、コンクリートの製造完了時点の温度に、上記のコンクリート管理方法において計算されるコンクリートの製造完了時の予測温度を用いてもよく、また、コンクリートの製造完了時点の実測値を用いてもよく、この予測値又は実測値を式3のコンクリートの製造完了時の温度T1に代入する。そして、この予測温度に基づいて、コンクリートの打設可否を判断する。
【0019】
次に、
図7のステップ7に示すように、上記の各実測値を蓄積し、分析する。この場合、コンクリートの打設完了時の温度の実測値とコンクリートの打設完了時の予測温度とを比較することで、予測式の精度を上げるなど、このような上記各実測値の蓄積、分析により、予測値を実測値に最大限に近づけ、上記予測式の精度を可及的に向上させることが望ましい。
【0020】
そして、
図7のステップ8に示すように、コンクリートの打設完了時の予測温度を各実測値と共に、エビデンス(管理帳票)として記録し保管する(
図5参照)。このようなエビデンスの作成により、温度等実測値、予測気温値及び予測に基づいて実行した作業指示内容を日時情報とともに記録し、履行証明に必要な情報を施工管理帳票として保管する。
【0021】
図6にこの管理方法に基づくコンクリートの打設工程を管理するコンクリート管理システムを併せて示している。
図6に示すように、この管理システム5Bは既述のコンクリートの製造工程を管理するコンクリート管理システム5Aと一体的に構成される。すなわち、この管理システム5Bはコンピュータ7により実現され、パソコン7(の記憶装置)に、コンクリートの製造完了時点の温度と、コンクリートの打設前の、コンクリートの製造場所の気温、コンクリートの運搬ルートの気温、及びコンクリートの打設場所の気温を実測し、これらコンクリートの温度、コンクリートの製造場所、運搬ルート、打設場所の各気温の実測値の組み合わせと、コンクリートの打設完了時点の温度の実測値との関係から、コンクリートの打設完了時の温度を予測するための予測式を作成する予測式作成プログラム73と、任意の地点及び時点の気象予測情報を所定の時間経過毎に又は所定の時刻毎に通知する気象予測情報通知手段9により得る、コンクリートの製造場所、運搬ルート、打設場所の予測気温値と、コンクリートの製造完了時点の温度との組み合わせにより、上記の予測式に基づいて、コンクリートの打設完了時の予測温度を計算する予測温度計算プログラム74を併せて格納される。この場合、コンクリートの製造場所の気温、コンクリートの運搬ルートの気温、及びコンクリートの打設場所の気温の実測値は、各現場において、温度センサにより計測して、この計測値を通信ネットワーク8を介してパソコン7に入力してもよく、また、各種の気象情報機関や既述の気象予測情報通知システム(9)などを利用して気温データを通信ネットワーク8を介してパソコン7に取り込むようにしてもよい。また、コンクリートの製造場所、運搬ルート、及び打設場所の気温の予測値については、既述のとおり、気象予測情報通知システム9を利用して取得すればよい。このようにしてコンクリートの打設完了時の温度を予測し、この予測温度に基づいて、コンクリートの打設可否を判断する。
【0022】
以上説明したように、このコンクリート管理方法及びシステムでは、コンクリートの製造完了後に、コンクリートをコンクリートの打設場所へ運搬し、コンクリートの打設場所に打設するコンクリートの打設工程において、コンクリートの製造完了時点の温度と、コンクリートの打設前の、コンクリートの製造場所の気温、コンクリートの運搬ルートの気温、及びコンクリートの打設場所の気温の実測値の組み合わせと、コンクリートの打設完了時点の温度の実測値との関係から、コンクリートの打設完了時の温度を予測するための予測式を作成し、気象予測情報通知手段により得る、コンクリートの製造場所、運搬ルート、打設場所の予測気温値と、コンクリートの製造完了時点の温度との組み合わせにより、予測式に基づいて、コンクリートの打設完了時の予測温度を計算し、この予測温度に基づいて、コンクリートの打設可否を判断するので、コンクリートの打設完了時の温度を可及的に適確に予測して、コンクリートの打設可否の判断の正答率を向上させることができ、これにより、コンクリートの無駄な打設作業を回避することができる。また、気象予測情報通知システムを利用してコンクリートの打設場所やコンクリートの各種材料の貯蔵場所の予測気温値が分かれば、コンクリートの製造完了時の温度とコンクリートの打設完了時の温度の関係や各種材料の温度の予測値(実測値でもかまわない)を組み合わせることで、最上流工程であるコンクリートの製造時の可否判断が可能となる。さらに、遠隔地へのコンクリートの運搬や多量のコンクリートの打設などコンクリートの製造から打設までに多くの時間を要する場合に、コンクリートの製造について従来の経験値による可否判断に比べて理論的な可否判断ができ、コンクリートの製造から運搬、打設までの一連の工程を作業を中断することなく連続的に実施することができる。
【0023】
なお、この管理システムでは、各種の温度データを通信ネットワークを介してパソコンに直接入力するようにしているが、各種の温度データをパソコンとは異なる他の機器、例えば携帯電話や携帯端末に取り込んで、パソコンの操作者の手入力によりパソコンに入力するようにしてもよい。
【0024】
また、この管理方法及びシステムでは、気象予測情報通知手段に、気象予報業務免許を取得した民間気象情報会社で、全国各地の気温を含む気象予測情報を所定の時間毎に又は所定の時刻毎に、インターネットその他の通信ネットワークを介してユーザ端末に配信する気象情報通知システムを利用するものとして例示したが、この種の気象情報通知システムは近年増えつつあり、その中から、この管理システムに最適なものを適宜選択すればよく、また、このような気象情報通知システムに代えて、この管理システムにコンクリートの製造場所、運搬ルート、打設場所の各地点の任意の時点の気温を予測することのできる独自の気象予測システムを導入してもよい。
【符号の説明】
【0025】
1 コンクリート製造プラント
2 貯蔵部(受材ビン)
3 混練部(練り混ぜ室)
4 制御部(制御盤)
5A コンクリート管理システム
5B コンクリート管理システム
6 温度センサ
7 コンピュータ(パソコン)
71 予測式作成プログラム
72 予測温度計算プログラム
73 予測式作成プログラム
74 予測温度計算プログラム
8 通信ネットワーク
9 気象予測情報通知手段(気象情報通知システム)