(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記画素回路は、保持容量と、映像信号に対応する電圧を前記保持容量に書き込む第1トランジスタと、前記保持容量の電圧に基づいて前記有機EL素子を駆動する第2トランジスタとを有し、
前記第1トランジスタは、外光の入射する位置に配置されている
請求項1に記載の表示装置。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、発明を実施するための形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、説明は以下の順序で行う。
1.第1の実施の形態
カソード電極と検出電極とでタッチセンサが構成されている例
2.第2の実施の形態
カソード電極に流れる電流のモニターによりタッチパネル機能を実現している例
3.モジュールおよび適用例
【0016】
<1.第1の実施の形態>
[構成]
図1は、第1の実施の形態に係る表示装置1の全体構成の一例を表したものである。この表示装置1は、表示パネル10と、表示パネル10を駆動する駆動回路20とを備えている。
【0017】
図2は、表示パネル10の内部構成の一例を表したものである。表示パネル10は、例えば、
図2に示したように、複数の表示画素14が2次元配置された表示領域10Aを有している。表示パネル10は、外部から入力された映像信号20Aに基づく画像を、各表示画素14をアクティブマトリクス駆動することにより表示するものである。各表示画素14は、赤色用のサブピクセル13Rと、緑色用のサブピクセル13Gと、青色用のサブピクセル13Bとを含んでいる。なお、以下では、サブピクセル13R,
13G,
13Bの総称としてサブピクセル13を用いるものとする。
【0018】
図3は、サブピクセル13の回路構成の一例を表したものである。サブピクセル13は、
図3に示したように、有機EL素子11と、有機EL素子11に並列接続された容量Csubと、有機EL素子11を駆動する画素回路12とを有している。容量Csubは、必要に応じて省略したり、寄生容量で代用したりすることも可能である。なお、サブピクセル13Rには、有機EL素子11として、赤色光を発する有機EL素子11Rが設けられている。同様に、サブピクセル13Gには、有機EL素子11として、緑色光を発する有機EL素子11Gが設けられている。サブピクセル13Bには、有機EL素子11として、青色光を発する有機EL素子11Bが設けられている。
【0019】
画素回路12は、例えば、書込トランジスタTwsと、駆動トランジスタTdrと、保持容量Csとを含んで構成されたものであり、2Tr1Cの回路構成となっている。なお、画素回路12は、2Tr1Cの回路構成に限られるものではなく、互いに直列接続された2つの書込トランジスタTwsを有していてもよいし、上記以外のトランジスタや、容量を有していてもよい。
【0020】
書込トランジスタTwsは、映像信号に対応する電圧を保持容量Csに書き込むトランジスタである。駆動トランジスタTdrは、書込トランジスタTwsによって書き込まれた保持容量Csの電圧に基づいて有機EL素子11を駆動するトランジスタである。トランジスタTws,Tdrは、例えば、nチャネルMOS型の薄膜トランジスタ(TFT(Thin Film Transistor))により構成されている。なお、トランジスタTws,Tdrは、pチャネルMOS型のTFTにより構成されていてもよい。
【0021】
なお、本実施の形態の書込トランジスタTwsが特許請求の範囲の「第1トランジスタ」の一具体例に相当し、本実施の形態の駆動トランジスタTdrが特許請求の範囲の「第2トランジスタ」の一具体例に相当する。また、本実施の形態の保持容量Csが特許請求の範囲の「保持容量」の一具体例に相当する。
【0022】
駆動回路20は、タイミング生成回路21、映像信号処理回路22、データ線駆動回路23、ゲート線駆動回路24、ドレイン線駆動回路25、カソード線駆動回路26および検出回路27を有している。駆動回路20は、また、データ線駆動回路23の出力に接続されたデータ線DTLと、ゲート線駆動回路24の出力に接続されたゲート線WSLと、ドレイン線駆動回路25の出力に接続されたドレイン線DSLと、カソード電極駆動回路26の出力に接続されたカソード線CTLを有している。カソード線CTLは、有機EL素子11のカソード電極でもある。有機EL素子11のカソード電極については、後に詳述する。
【0023】
タイミング生成回路21は、例えば、データ線駆動回路23、ゲート線駆動回路24、ドレイン線駆動回路25およびカソード線駆動回路26が連動して動作するように制御するものである。タイミング生成回路21は、例えば、外部から入力された同期信号20Bに応じて(同期して)、これらの回路に対して制御信号21Aを出力するようになっている。
【0024】
映像信号処理回路22は、例えば、外部から入力されたデジタルの映像信号20Aを補正すると共に、補正した後の映像信号をアナログに変換して信号電圧22Bをデータ線駆動回路23に出力するものである。
【0025】
データ線駆動回路23は、制御信号21Aの入力に応じて(同期して)、映像信号処理回路22から入力されたアナログの信号電圧22Bを、各データ線DTLを介して、選択対象の表示画素14(またはサブピクセル13)に書き込むものである。データ線駆動回路23は、例えば、信号電圧22Bと、映像信号とは無関係の一定電圧とを出力することが可能となっている。
【0026】
ゲート線駆動回路24は、制御信号21Aの入力に応じて(同期して)、複数のゲート線WSLに選択パルスを順次印加して、複数の表示画素14(またはサブピクセル13)をゲート線WSL単位で順次選択するものである。ゲート線駆動回路24は、例えば、書込トランジスタTwsをオンさせるときに印加する電圧と、書込トランジスタTwsをオフさせるときに印加する電圧とを出力することが可能となっている。
【0027】
ドレイン線駆動回路25は、制御信号21Aの入力に応じて(同期して)、複数のドレイン線DSLに選択パルスを順次印加して、複数の画素回路12(具体的には駆動トランジスタTdrのドレイン)に電力を供給するものである。ドレイン線駆動回路25は、例えば、有機EL素子11を発光させるときに印加する電圧と、有機EL素子11を消光させるときに印加する電圧とを出力することが可能となっている。
【0028】
カソード線駆動回路26は、制御信号21Aの入力に応じて(同期して)、複数のカソード線CTLに選択パルスを順次印加して、タッチセンサ機能をカソード線CTL単位で順次オンするものである。カソード線駆動回路26は、例えば、タッチセンサ機能をオンするときに印加する電圧と、タッチセンサ機能をオフするときに印加する電圧とを出力することが可能となっている。なお、検出回路27については、後に詳述する。
【0029】
次に、
図3を参照して、各構成要素の接続関係および配置について説明する。
【0030】
ゲート線WSLは、行方向に延在して形成されており、書込トランジスタTwsのゲートに接続されている。ドレイン線DSLも行方向に延在して形成されており、駆動トランジスタTdrのドレインに接続されている。データ線DTLは、列方向に延在して形成されており、書込トランジスタTwsのドレインに接続されている。書込トランジスタTwsのソースは、駆動トランジスタTdrのゲートと、保持容量Csの一端に接続されている。駆動トランジスタTdrのソースと保持容量Csの他端とが、有機EL素子11のアノードに接続されている。有機EL素子11のカソードは、カソード線CTLと兼用されている。容量Csubの一端は、保持容量Csの一端(駆動トランジスタTdr側の端子)と、駆動トランジスタTdrのソースと、有機EL素子11のアノードとに接続されている。容量Csubの他端は、カソード線CTLに接続されている。
【0031】
次に、表示パネル10における画素回路12近傍の断面構成について説明する。
図4は、表示パネル10における画素回路12近傍の断面構成の一例を表したものである。表示パネル10は、例えば、
図4に示したように、表示部30と検出部40とを互いに重ね合わせた構成となっている。
【0032】
表示部30は、例えば、
図4に示したように、画素回路12およびその近傍において、基板31上に、画素回路
12、絶縁層32、絶縁層33および絶縁層34をこの順に積層した構成となっている。絶縁層33は開口33Aを有しており、開口33Aに有機EL素子11が設けられている。有機EL素子11は、例えば、
図4に示したように、アノード電極35、有機層36およびカソード線CTLを開口33Aの底面側から順に積層して構成されている。
【0033】
アノード電極35は、絶縁層32の平坦面にならった平坦な膜となっている。アノード電極35は、金属材料によって構成されており、反射ミラーとして機能する。従って、表示パネル10は、トップエミッション構造となっている。有機層36は、例えば、アノード電極35側から順に、正孔注入効率を高める正孔注入層と、発光層への正孔輸送効率を高める正孔輸送層と、電子と正孔との再結合による発光を生じさせる発光層と、発光層への電子輸送効率を高める電子輸送層とを有している。カソード線CTLは、少なくとも有機層36の上面に接して形成されている。カソード線CTLは、行方向(ドレイン線DSLの延在方向)に延在しており、行方向に配列された複数の有機EL素子11で共有された帯状電極である。複数のカソード線CTLは、互いに並列に配置されている。カソード線CTLは、可視光に対して透明な導電性材料、例えばITO(Indium Tin Oxide;酸化インジウムスズ)からなる。
【0034】
検出部40は、例えば、
図4に示したように、基板41上に、複数の検出電極DETと、接着層42とを積層したものであり、検出電極DETを表示部30側に向けて配置されている。基板41は、可視光に対して透明な基板、例えば、光透過性の樹脂フィルムやガラス基板からなる。基板41の裏面(検出電極DETとは反対側の面)が、表示パネル10の映像表示面Sとなっている。なお、基板41の裏面に何らかの光学機能層が配置されていてもよい。接着層42は、表示部30と検出部40とを互いに貼り合わせるためのものである。各検出電極DETは、
図5に示したように、列方向(カソード線CTLと交差する方向)に延在する帯状電極である。複数の検出電極DETは、互いに並列に配置されている。複数の検出電極DETは、例えば、金属材料によって構成されており、有機EL素子11の直上を避けた位置に配置されている。
【0035】
ここで、例えば、絶縁層34および接着層42と、これらを介して互いに対向配置されたカソード線CTLおよび検出電極DETとにより容量素子が構成されている。従って、その容量素子が、表示パネル10において静電容量型のタッチセンサとして機能する。なお、表示パネル10において、カソード線CTL、絶縁層34、接着層42および検出電極DETの積層方向の並び順は、上記の並び順に限られるものではない。従って、上記の容量素子においてカソード線CTLおよび検出電極DETに挟まれる誘電体は、常に絶縁層34および接着層42であるとは限らない。
【0036】
次に、検出回路27について説明する。検出回路27は、複数の検出電極DETから得られる検出信号に基づいて指などの物体の接触位置を検出するものである。具体的には、検出回路27は、まず、検出電極DETから得られる検出信号に基づき、指などの物体の、映像表示面Sへの接触・非接触を検出するようになっている。検出回路27は、指などの物体が映像表示面Sに接触したことを検出した場合には、例えば、以下のプロセスを実行するようになっている。具体的には、検出回路27は、カソード線駆動回路26から出力された選択パルスの印加タイミングと、閾値電圧以下の検出信号の検出タイミングとに基づいて、映像表示面Sのうち、指などの物体が接触した位置を算出するようになっている。
【0037】
[動作]
次に、本実施の形態の表示装置1の動作の一例について説明する。
【0038】
この表示装置1では、映像信号20Aに対応する信号電圧22Bがデータ線駆動回路23によって各データ線DTLに印加されると共に、制御信号21Aに応じた選択パルスがゲート線駆動回路24およびドレイン線駆動回路25によって複数のゲート線WSLおよびドレイン線DSLに順次印加される。実際には、以下に説明する動作を経て映像が表示される。
【0039】
図6は、ある画素回路12に印加される電圧波形の一例と、駆動トランジスタTdrのゲート電圧Vgおよびソース電圧Vsの変化の一例とを表したものである。
図6(A)にはデータ線DTLに、信号電圧Vsigと、オフセット電圧Vofsが印加されている様子が示されている。
図6(B)にはゲート線WSLに、書込トランジスタTwsをオンする電圧Vonと、書込トランジスタTwsをオフする電圧Voffが印加されている様子が示されている。
図6(C)にはドレイン線DSLに、電圧Vccと、電圧Viniが印加されている様子が示されている。さらに、
図6(F),(G)には、ドレイン線DSL、データ線DTLおよびゲート線WSLへの電圧印加に応じて、駆動トランジスタTdrのゲート電圧Vgおよびソース電圧Vsが時々刻々変化している様子が示されている。なお、
図6(D),(E)には、カソード線CTLに印加される電圧波形と、検出電極DETで検出される電圧波形とが示されているが、これらについては、消光から発光までの一連の動作についての説明の後に詳述するものとする。
【0040】
(閾値補正準備期間)
まず、閾値補正の準備を行う。具体的には、ゲート線WSLの電圧がVoffとなっており、ドレイン線DSLの電圧がVccとなっている時(つまり有機EL素子11が発光している時)に、ドレイン線駆動回路25がドレイン線DSLの電圧をVccからViniに下げる(T1)。すると、ソース電圧VsがViniとなり、有機EL素子11が消光する。その後、データ線DTLの電圧がVofsとなっている時にゲート線駆動回路24がゲート線WSLの電圧をVoffからVonに上げ、駆動トランジスタTdrのゲートをVofsとする。
【0041】
(最初の閾値補正期間)
次に、閾値の補正を行う。具体的には、書込トランジスタTwsがオンしており、データ線DTLの電圧がVofsとなっている間に、ドレイン線駆動回路25がドレイン線DSLの電圧をViniからVccに上げる(T2)。すると、駆動トランジスタTdrのドレイン−ソース間に電流Idsが流れ、ソース電圧Vsが上昇する。その後、データ線駆動回路23がデータ線DTLの電圧をVofsからVsigに切り替える前に、ゲート線駆動回路24がゲート線WSLの電圧をVonからVoffに下げる(T3)。すると、駆動トランジスタTdrのゲートがフローティングとなり、閾値の補正が休止する。
【0042】
(最初の閾値補正休止期間)
閾値補正が休止している期間中は、例えば、先の閾値補正を行った行(画素)とは異なる他の行(画素)において、データ線DTLの電圧のサンプリングが行われる。なお、このとき、先の閾値補正を行った行(画素)において、ソース電圧VsがVofs−Vth(Vthは駆動トランジスタTdrの閾値電圧)よりも低いので、閾値補正休止期間中にも、先の閾値補正を行った行(画素)において、駆動トランジスタTdrのドレイン−ソース間に電流Idsが流れ、ソース電圧Vsが上昇し、保持容量Csを介したカップリングによりゲート電圧Vgも上昇する。
【0043】
(2回目の閾値補正期間)
次に、閾値補正を再び行う。具体的には、データ線DTLの電圧がVofsとなっており、閾値補正が可能となっている時に、ゲート線駆動回路24がゲート線WSLの電圧をVoffからVonに上げ、駆動トランジスタTdrのゲート電圧をVofsにする(T4)。このとき、ソース電圧VsがVofs−Vthよりも低い場合(閾値補正がまだ完了していない場合)には、駆動トランジスタTdrがカットオフするまで(ゲート−ソース間電圧VgsがVthになるまで)、駆動トランジスタTdrのドレイン−ソース間に電流Idsが流れる。その後、データ線駆動回路23がデータ線DTLの電圧をVofsからVsigに切り替える前に、ゲート線駆動回路24がゲート線WSLの電圧をVonからVoffに下げる(T5)。すると、駆動トランジスタTdrのゲートがフローティングとなるので、ゲート−ソース間電圧Vgsをデータ線DTLの電圧の大きさに拘わらず一定に維持することができる。
【0044】
なお、この閾値補正期間において、保持容量CsがVthに充電され、ゲート−ソース間電圧VgsがVthとなった場合には、駆動回路20は、閾値補正を終了する。しかし、ゲート−ソース間電圧VgsがVthにまで到達しない場合には、駆動回路20は、ゲート−ソース間電圧VgsがVthに到達するまで、閾値補正と、閾値補正休止とを繰り返し実行する。
【0045】
(書き込み・移動度補正期間)
閾値補正休止期間が終了した後、書き込みと移動度補正を行う。具体的には、データ線DTLの電圧がVsigとなっている間に、ゲート線駆動回路24がゲート線WSLの電圧をVoffからVonに上げ(T6)、駆動トランジスタTdrのゲートをデータ線DTLに接続する。すると、駆動トランジスタTdrのゲート電圧Vgがデータ線DTLの電圧Vsigとなる。このとき、有機EL素子11のアノード電圧はこの段階ではまだ有機EL素子11の閾値電圧Velよりも小さく、有機EL素子11はカットオフしている。そのため、電流Idsは有機EL素子11の素子容量(図示せず)に流れ、素子容量が充電されるので、ソース電圧VsがΔVだけ上昇し、やがてゲート−ソース間電圧VgsがVsig+Vth−ΔVとなる。このようにして、書き込みと同時に移動度補正が行われる。ここで、駆動トランジスタTdrの移動度が大きい程、ΔVも大きくなるので、ゲート−ソース間電圧Vgsを発光前にΔVだけ小さくすることにより、画素13ごとの移動度のばらつきを取り除くことができる。
【0046】
(ブートストラップ期間)
最後に、ゲート線駆動回路24がゲート線WSLの電圧をVonからVoffに下げる(T7)。すると、駆動トランジスタTdrのゲートがフローティングとなり、駆動トランジスタTdrのドレイン−ソース間に電流Idsが流れ、ソース電圧Vsが上昇する。その結果、有機EL素子11に閾値電圧Vel以上の電圧が印加され、有機EL素子11が所望の輝度で発光を開始する。
【0047】
このように、本実施の形態の表示装置1では、各サブピクセル13において画素回路12がオンオフ制御され、各サブピクセル13の有機EL素子11に駆動電流が注入されることにより、正孔と電子とが再結合して発光が起こり、その光が外部に取り出される。その結果、表示パネル10の表示領域10Aにおいて画像が表示される。
【0048】
ところで、駆動回路20は、画像表示に悪影響を及ぼさない期間、具体的には、消光期間中に、タッチ検出動作を行う。具体的には、
図6(D)に示したように、カソード線駆動回路26は、有機EL素子11が消光し、閾値補正準備期間となっている間に、カソード線CTLに選択パルスを印加する。この選択パルスは、例えば、
図7(A)〜(E)に示したように、選択パルスを印加するカソード線CTLに対応するドレイン線DSLnに印加される選択パルスの反転パルスと、次に選択パルスが印加されるカソード線CTLに対応するドレイン線DSLn+1に印加される選択パルスとの論理和をとることにより得られる。
【0049】
上記のようにして選択パルスがカソード線CTLに印加されると、各検出電極DETから、カソード線CTLに印加された選択パルスに対応する信号が出力される。このとき、映像表示面Sのうち、選択パルスが印加されたカソード線CTLの近傍で物体が接触していた場合には、物体に近接する検出電極DETから、物体の影響を受けた信号が出力される。それらの信号は、検出回路27に入力され、検出回路27において、物体が接触した位置が算出される。
【0050】
[効果]
次に、本実施の形態の表示装置1の効果について説明する。本実施の形態では、各サブピクセル13の有機EL素子のカソード電極が、行方向に延在する帯状のカソード線CTLとなっており、指などの物体の接触位置を検出する検出電極として用いられている。これにより、表示パネル10の厚さの増加割合を最低限に抑えつつ、表示パネル10にタッチパネル機能を持たせることができる。従って、本実施の形態では、タッチパネル機能を有する薄型の表示パネル10を実現することができる。
【0051】
<2.第2の実施の形態>
次に、第2の実施形態に係る表示装置2について説明する。本実施の形態の表示装置2は、ボトムエミッション構造の表示パネル50を備えている点で、上記実施の形態の表示装置1の構成と主に相違する。そこで、以下では、上記実施の形態との相違点について主に説明し、上記実施の形態との共通点についての説明を適宜、省略するものとする。
【0052】
[構成]
図8は、表示装置2の全体構成の一例を表したものである。この表示装置2は、表示パネル50と、表示パネル50を駆動する駆動回路60とを備えている。
【0053】
図9は、表示パネル50の断面構成の一例を表したものである。表示パネル50は、例えば、
図9に示したように、上記実施の形態の表示部30を上下逆さまにした構成となっている。従って、本実施の形態では、基板31側が映像表示面Sとなっている。表示パネル50では、さらに、上記実施の形態の検出部40が省略されている。
【0054】
本実施の形態において、アノード電極35は、ITOなどの透明導電性材料によって構成されている。一方、カソード線CTLは、金属材料で構成されており、反射ミラーとして機能する。従って、表示パネル50は、ボトムエミッション構造となっている。本実施の形態において、カソード線CTLは、例えば、
図10に示したように、列方向(ドレイン線DSLと交差する方向)に延在しており、列方向に配列された複数の有機EL素子11で共有された帯状電極である。
【0055】
表示パネル50は、例えば、
図9に示したように、基板31と、絶縁層32との間に、遮光層37と、絶縁層38を有している。遮光層37は、画素回路12へ入射する外光を遮るものであり、例えば、
図9に示したように、基板31と画素回路12との間に配置されている。絶縁層38は、遮光層37を含む面を平坦化するためのものである。
【0056】
次に、本実施の形態におけるタッチセンサ機能について説明する。
【0057】
まず、従来のブートストラップ動作について、
図11、
図12を用いて説明する。書き込み期間が終了して、書込トランジスタTwsがオフすると、駆動トランジスタTdrのゲート−ソース間電圧Vgsは保持容量Csによって保持されるので、ゲート電圧Vg、ソース電圧Vsはゲート−ソース間電圧Vgsを保持したまま上昇し、ソース電圧Vsが駆動トランジスタTdrの電流に応じた電圧Voledまで上昇する。ゲート−ソース間電圧Vgsを保ったまま、ゲート電圧Vg、ソース電圧Vsが上昇する動作をブートストラップ動作という。
【0058】
移動度補正、書込み期間が終了した時点で、ゲート電圧Vgは信号電圧Vsigが書き込まれており、ソース電圧Vsは、閾値補正完了時からそれぞれの移動度に応じた電圧上昇量ΔVsだけ上昇した電圧Vs1=V0−Vth+ΔVsとなる。ここで、書込トランジスタTwsがオフすると、駆動トランジスタTdrのゲート−ソース間電圧Vgsは保持容量Csによって保持されるので、ソース電圧Vsは駆動トランジスタTdrを流れる電流Idsに応じた電圧Voledまで上昇する。ソース電圧Vsの上昇にともない、ゲート電圧Vgも保持容量Csを介して上昇する。このときの上昇量は理想的にはソース電圧Vsの上昇量Voled−Vs1と同じである。しかし、トランジスタに寄生容量が存在する場合は、上記の上昇量は、ソース電圧Vsの上昇量よりも少なくなる。
【0059】
図11に示したように、駆動トランジスタTdr、書込トランジスタTwsには寄生容量Cgs、Cgd、Cwsが存在する。そのため、ソース電圧VsがVs1からVs22に上昇したとすると、ゲート電圧Vgは
(Cs+Cgs)/(Cs+Cgs+Cgd+Cws)×(Vs2−Vs1)
しか上昇しない。このときの係数(Cs+Cgs)/(Cs+Cgs+Cgd+Cws)は必ず1以下になるので、ゲート電圧Vgの上昇量は、ソース電圧Vsの上昇量よりも小さくなる。この係数を、ブートストラップゲインGbと呼ぶことにする。この場合、ブートストラップ後のゲート−ソース間電圧Vgs2は、ブートストラップ前のゲート−ソース間電圧Vgs21よりも(1−Gb)×ΔVsだけ小さくなる。
【0060】
このように、トランジスタに寄生容量が存在した場合、ブートストラップ動作によって、ゲート電圧Vgの上昇量がソース電圧Vsの上昇量よりも少なくなるので、ブートストラップ動作により、駆動トランジスタTdrのゲート−ソース間電圧Vgsが移動度補正完了時点のゲート−ソース間電圧Vgsよりも小さくなってしまう。
【0061】
本実施の形態では、表示パネル50はボトムエミッション構造となっているので、画素回路12が映像表示面S側に位置する。そのため、映像表示面Sに物体が近付いた場合、
図11に示したように、物体付近の駆動トランジスタTdrのゲートと物体との間には容量Ctが形成される。そのため、物体付近のサブピクセル13のブートストラップゲインが、物体から離れたサブピクセル13のブートストラップゲインよりも小さくなる。その結果、物体付近のサブピクセル13ではゲート−ソース間電圧Vgs小さくなり、電流が減少する。そこで、本実施の形態では、この電流減少を検出して物体の位置が検出される。
【0062】
本実施の形態では、駆動回路60では、
図8に示したように、駆動回路20において、カソード線駆動回路26の代わりに接触位置検出回路28が設けられており、さらに、検出回路27が省略されている。接触位置検出回路28は、上述の電流減少を検出して物体の位置を検出するものであり、例えば、
図13に示したように、電流検出部28−1と、電流計算部28−2と、接触位置計算部28−3とを有している。
【0063】
電流検出部28−1は、カソード線CTLを流れる電流を検出するものであり、例えば、カソード線CTLに直列に接続された抵抗の電圧、またはそれに対応する信号を出力するようになっている。電流計算部28−2は、映像信号に基づいて非接触時の電流を導出するものであり、例えば、映像信号に基づいて非接触時の電流を、電流検出部28−1の抵抗に流したときの抵抗の電圧、またはそれに対応する信号を出力するようになっている。接触位置計算部28−3は、電流検出部28−1で検出された電流の値と、電流計算部28−2で導出された電流の値とに基づいて接触位置情報を導出するものである。接触位置計算部28−3は、例えば、電流検出部28−1から出力された電圧または信号と、電流計算部28−2から出力された電圧または信号とに基づいて、接触位置情報を導出するようになっている。接触位置計算部28−3は、例えば、双方の電圧または信号の差分と、所定の閾値とを比較し、その結果に基づいて、接触位置情報を導出するようになっている。
【0064】
図14(A)〜(D)は、単色の画像が出力されているときのカソード線CTLに流れる電流波形と、ドレイン線DSLに入力される選択パルス(つまり発光期間)との関係の一例を表したものである。なお、
図14(A),(B)で位相が異なっているのは、ドレイン線DSLはラインごとに順次選択されているためである。
【0065】
例えば、物体がカソード線CTL2およびドレイン線DSL2が交差する位置の近傍で映像表示面Sに接しており、カソード線CTL1およびドレイン線DSL1が交差する位置から離れている場合、
図14(D)に示したように、ドレイン線DSL2が選択されている期間のみ、電流は減少する。従って、各カソード線CTLに流れる電流を、映像信号から計算し、その電流値と実測の電流値を比較することによって、電流が減少するラインとタイミングを検出することができ、物体の位置を検出することができる。
【0066】
図15(A)〜(D)は、カラー画像が出力されているときのカソード線CTLに流れる電流波形と、ドレイン線DSLに入力される選択パルス(つまり発光期間)との関係の一例を表したものである。この場合も、上記と同様、ドレイン線DSL2が選択されている期間のみ、電流は減少する。従って、各カソード線CTLに流れる電流を、映像信号から計算し、その電流値と実測の電流値を比較することによって、電流が減少するラインとタイミングを検出することができ、物体の位置を検出することができる。
【0067】
[変形例]
上記第2の実施の形態では、遮光層37が設けられていたが、例えば、
図16に示したように、省略されていてもよい。ただし、その場合には、書込トランジスタTwsなどを含む画素回路12が、外光の入射する位置に配置されていることになる。
【0068】
一般に、トランジスタに光が入射した場合は、
図17に示したように、トランジスタ特性が変化して、オフ領域のリーク電流が増加する。この特性変化を画素回路12に当てはめると、保持容量Csにつながっている書込トランジスタTwsに光が入射した場合、書込トランジスタTwsのリーク電流が増加する。これにより、保持容量Csから電荷がリークし、駆動トランジスタTdrのゲート−ソース間電圧Vgsが低下し、その結果、輝度も低下する(
図18参照)。従って、物体が映像表示面Sに接触しているときに、その物体付近のサブピクセル13では、物体によって外光が遮られるので、カソード線CTLを流れる電流量が上昇する。一方、物体から離れたサブピクセル13では、物体によって外光が遮られないので、書込トランジスタTwsに光が入射し、カソード線CTLを流れる電流量が減少する。
【0069】
したがって、上記第2の実施の形態と同様に、各カソード線CTLに流れる電流を、映像信号から計算し、その電流値と実測の電流値を比較することによって、電流が減少するラインとタイミングを検出することができ、物体の位置を検出することができる。
【0070】
図19(A)〜(D)は、単色の画像が出力されているときのカソード線CTLに流れる電流波形と、ドレイン線DSLに入力される選択パルス(つまり発光期間)との関係の一例を表したものである。
【0071】
例えば、物体がカソード線CTL2およびドレイン線DSL2が交差する位置の近傍で映像表示面Sに接しており、カソード線CTL1およびドレイン線DSL1が交差する位置から離れている場合、
図19(D)に示したように、ドレイン線DSL2が選択されている期間のみ、電流は上昇する。従って、各カソード線CTLに流れる電流を、映像信号から計算し、その電流値と実測の電流値を比較することによって、電流が上昇するラインとタイミングを検出することができ、物体の位置を検出することができる。
【0072】
図20(A)〜(D)は、カラー画像が出力されているときのカソード線CTLに流れる電流波形と、ドレイン線DSLに入力される選択パルス(つまり発光期間)との関係の一例を表したものである。この場合も、上記と同様、ドレイン線DSL2が選択されている期間のみ、電流は上昇する。従って、各カソード線CTLに流れる電流を、映像信号から計算し、その電流値と実測の電流値を比較することによって、電流が上昇するラインとタイミングを検出することができ、物体の位置を検出することができる。
【0073】
<3.モジュールおよび適用例>
以下、上記実施の形態で説明した表示装置1,2の適用例について説明する。表示装置1,2は、テレビジョン装置、デジタルカメラ、ノート型パーソナルコンピュータ、携帯電話等の携帯端末装置あるいはビデオカメラなど、外部から入力された映像信号あるいは内部で生成した映像信号を、画像あるいは映像として表示するあらゆる分野の電子機器の表示装置に適用することが可能である。
【0074】
[モジュール]
表示装置1,2は、例えば、
図21に示したようなモジュールとして、後述する適用例1〜5などの種々の電子機器に組み込まれる。このモジュールは、例えば、基板3の一辺に、表示パネル10,50を封止する部材(図示せず)から露出した領域210を設け、この露出した領域210に、タイミング生成回路21、映像信号処理回路22、データ線駆動回路23、ゲート線駆動回路24、ドレイン線駆動回路25、カソード線駆動回路26、検出回路27および接触位置検出回路28の配線を延長して外部接続端子(図示せず)を形成したものである。外部接続端子には、信号の入出力のためのフレキシブルプリント配線基板(FPC;Flexible Printed Circuit)220が設けられていてもよい。
【0075】
[適用例1]
図22は、表示装置1,2が適用されるテレビジョン装置の外観を表したものである。このテレビジョン装置は、例えば、フロントパネル310およびフィルターガラス320を含む映像表示画面部300を有しており、この映像表示画面部300は、表示装置1,2により構成されている。
【0076】
[適用例2]
図23は、表示装置1,2が適用されるデジタルカメラの外観を表したものである。このデジタルカメラは、例えば、フラッシュ用の発光部410、表示部420、メニュースイッチ430およびシャッターボタン440を有しており、その表示部420は、表示装置1,2により構成されている。
【0077】
[適用例3]
図24は、表示装置1,2が適用されるノート型パーソナルコンピュータの外観を表したものである。このノート型パーソナルコンピュータは、例えば、本体510,文字等の入力操作のためのキーボード520および画像を表示する表示部530を有しており、その表示部530は、表示装置1,2により構成されている。
【0078】
[適用例4]
図25は、表示装置1,2が適用されるビデオカメラの外観を表したものである。このビデオカメラは、例えば、本体部610,この本体部610の前方側面に設けられた被写体撮影用のレンズ620,撮影時のスタート/ストップスイッチ630および表示部640を有しており、その表示部640は、表示装置1,2により構成されている。
【0079】
[適用例5]
図26は、表示装置1,2が適用される携帯電話機の外観を表したものである。この携帯電話機は、例えば、上側筐体710と下側筐体720とを連結部(ヒンジ部)730で連結したものであり、ディスプレイ740,サブディスプレイ750,ピクチャーライト760およびカメラ770を有している。そのディスプレイ740またはサブディスプレイ750は、表示装置1,2により構成されている。
【0080】
以上、上記各実施の形態および適用例を挙げて本発明を説明したが、本発明はそれらに限定されるものではなく、種々変形が可能である。
【0081】
例えば、上記実施の形態等では、表示装置がアクティブマトリクス型である場合について説明したが、アクティブマトリクス駆動のための画素回路12の構成は上記実施の形態等で説明したものに限られない。従って、必要に応じて容量素子やトランジスタを画素回路12に追加することが可能である。その場合、画素回路12の変更に応じて、上述したタイミング生成回路21、映像信号処理回路22、データ線駆動回路23、ゲート線駆動回路24、ドレイン線駆動回路25、カソード線駆動回路26、検出回路27および接触位置検出回路28のほかに、必要な駆動回路を追加してもよい。
【0082】
また、上記実施の形態等では、映像信号処理回路22、データ線駆動回路23、ゲート線駆動回路24、ドレイン線駆動回路25、カソード線駆動回路26、検出回路27および接触位置検出回路28の駆動をタイミング生成回路21および映像信号処理回路22が制御していたが、他の回路がこれらの駆動を制御するようにしてもよい。また、映像信号処理回路22、データ線駆動回路23、ゲート線駆動回路24、ドレイン線駆動回路25、カソード線駆動回路26、検出回路27および接触位置検出回路28の制御は、ハードウェア(回路)で行われていてもよいし、ソフトウェア(プログラム)で行われていてもよい。
【0083】
また、上記実施の形態等では、書込トランジスタTwsのソースおよびドレインや、駆動トランジスタTdrのソースおよびドレインが固定されたものとして説明されていたが、いうまでもなく、電流の流れる向きによっては、ソースとドレインの対向関係が上記の説明とは逆になることがある。
【0084】
また、上記実施の形態等では、書込トランジスタTwsおよび駆動トランジスタTdrがnチャネルMOS型のTFTにより形成されているものとして説明されていたが、書込トランジスタTwsおよび駆動トランジスタTdrの少なくとも一方がpチャネルMOS型のTFTにより形成されていてもよい。なお、駆動トランジスタTdrがpチャネルMOS型のTFTにより形成されている場合には、上記実施の形態等において、有機EL素子11のアノードがカソードとなり、有機EL素子11のカソードがアノードとなる。また、上記実施の形態等において、書込トランジスタTwsおよび駆動トランジスタTdrは、常に、アモルファスシリコン型のTFTやマイクロシリコン型のTFTである必要はなく、例えば、低温ポリシリコン型のTFTであってもよい。