(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
(構成)
図1には、実施形態であるVR型レゾルバ100の内部構造を正面から見た状態が概念的に示されている。VR型レゾルバ100は、軸倍角が3Xであり、軟磁性材料により構成されたステータコア101を備えている。ステータコア101は、略円筒形状の通常のVR型レゾルバと同じ構造を有している。この例において、ステータコア101は、珪素鋼板の薄板を図示する形状に打抜き加工したものを複数積層することで構成されている。ステータコア101の内側には、ステータコア101に対して相対的に回転可能なロータコア104が収められている。
【0012】
ステータコア101の内周には、ロータコア104の回転中心に向けて延在した8個の突極102が設けられている。8個の突極102は、軸方向から見て等角な位置に配置されている。各突極102には、後述する巻線が巻かれ、その先端部分はロータコア104に対向した突極面103とされている。突極102の構造自体は、通常のVR型レゾルバと同じである。
【0013】
図1には、符号102によって総称されている8個の突極102a,102b,102c,102d,102e,102f,102g,102hが示されている。以下、突極102への巻線の結線状態の一例を説明する。
図3は、
図1に示すsin検出巻線とcos検出巻線の結線図である。
【0014】
図1に示すように、励磁巻線は、突極102eから巻き始められ、突極102f→突極102g→突極102h→突極102a→突極102b→突極102c→突極102dと、8個の突極102の全てに順に巻回されている。
【0015】
sin検出巻線は、突極102h→突極102b→102d→102fと、一つおきの突極に順に巻回されている。ここで、突極102hには、sin検出巻線が巻回されることで構成されたsin検出巻線巻回部102h’が設けられ、突極102bには、sin検出巻線が巻回されることで構成されたsin検出巻線巻回部102b’が設けられ、突極102dには、sin検出巻線が巻回されることで構成されたsin検出巻線巻回部102d’が設けられ、突極102fには、sin検出巻線が巻回されることで構成されたsin検出巻線巻回部102f’が設けられている。sin検出巻線は、sin検出巻線巻回部102h’→sin検出巻線巻回部102b’→sin検出巻線巻回部102d’→sin検出巻線巻回部102f’と直列に接続されている。
【0016】
cos検出巻線は、突極102a→突極102c→102e→102gと、一つおきの突極に順に巻回されている。ここで、突極102aには、cos検出巻線が巻回されることで構成されたcos検出巻線巻回部102a’が設けられ、突極102cには、cos検出巻線が巻回されることで構成されたcos検出巻線巻回部102c’が設けられ、突極102eには、cos検出巻線が巻回されることで構成されたcos検出巻線巻回部102e’が設けられ、突極102gには、cos検出巻線が巻回されることで構成されたcos検出巻線巻回部102g’が設けられている。cos検出巻線もcos検出巻線巻回部102a’→cos検出巻線巻回部102c’→cos検出巻線巻回部102e’→cos検出巻線巻回部102g’と直列に接続されている。
【0017】
この例では、一つ置きの突極にsin検出巻線とcos検出巻線を交互に巻回することで、sin検出巻線からの検出信号とcos検出巻線からの検出信号とが90°異なる位相となるようにしている。
【0018】
また、4つの突極に順次巻回されたcos検出巻線の中点からゼロ点検出端子が引き出されている。すなわち、cos検出巻線巻回部102c’とcos検出巻線巻回部102e’は隣接するcos検出巻線巻回部であり、且つ、それらは直列に接続されている。そしてこの直列に接続され、cos検出巻線巻回部として周方向で隣接するcos検出巻線巻回部102c’とcos検出巻線巻回部102e’とをつなぐ配線の部分106からゼロ点検出端子が引き出されている。ゼロ点検出端子を引き出す位置は、隣接するcos検出巻線巻回部を結ぶ配線の部分であればよく、
図1に示す位置の他に、符号107の配線部分あるいは符号108の配線部分であってもよい。
【0019】
図1に示すように、ステータコア101の内側には、ステータコア101に対して回転が可能な状態とされたロータコア104が納められている。
図2には、ロータコア104の斜視図が示されている。ロータコア104は、回転軸であるシャフト105に取り付けられており、シャフト105の回転中心105aを軸として回転可能とされている。ロータコア104は、軟磁性材料(この場合は、珪素鋼板を重ねたもの)により構成され、3つの磁極104a,104b,104cを有している。
【0020】
3つの磁極104a,104b,104cは、軸方向から見て等角な位置(周方向に120°ずれた角度位置)にあり、突極面103に対して隙間を有した状態で対向することが可能とされている。ここで、磁極104aおよび104bは、ラジアル方向(突極面103の方向)に突出するように盛り上がった構造を有し、磁極104cは、回転中心105aから等距離の円周面により構成されている。言い換えると、磁極104cは、通常の軸倍角3Xのレゾルバのロータコアにおける3つある磁極の一つ(破線104dの部分)において、その盛り上がりをなくし、その部分を単なる円筒の外周面とした構造により構成されている。
【0021】
この構造によれば、磁極104a,104bと、そこに対向する突極面103との間の距離(ギャップ)L
1に比較して、磁極104cの部分とそこに対向する突極面103との間の距離(ギャップ)L
2が大きくなる。すなわち、ロータコア104を回転させた際における磁極104aと突極面103との間の隙間の最短の距離L
1、および磁極104bと突極面103との間の隙間の最短の距離L
1と、ロータコア104を回転させた際における磁極104cと突極面103との間の隙間の最短の距離L
2とが、L
1<L
2の関係にある。
【0022】
(電気的な構成)
図4には、実施形態のVR型レゾルバ100を用いた角度検出システム120が示されている。角度検出システム120は、角度検出部124を備えている。角度検出部124は、マイコンにより構成され、CPU、メモリ、各種のインターフェースを備え、RDコンバータ部121、ゼロ点検出部122および励磁電流出力部123を備えている。
【0023】
角度検出部124は、
図1に示すVR型レゾルバ100に励磁電流を供給し、またVR型レゾルバ100からのゼロ点検出信号、sin検出信号、およびcos検出信号が取り込まれる。ゼロ点検出信号は、
図1および
図3のゼロ点検出端子から得られる出力信号であり、sin検出信号は、sin検出巻線から得られる検出信号であり、cos検出信号は、cos検出巻線から得られる検出信号である。
【0024】
RDコンバータ部121は、sin検出信号およびcos検出信号に基づき、後述する方法によりVR型レゾルバ100が検出した角度情報を算出する。ゼロ点検出部122は、後述する方法によりロータコア104の角度位置のゼロ点を算出する。励磁電流出力部123は、VR型レゾルバ100の励磁巻線に励磁電流を出力する。
【0025】
以下、RDコンバータ部121について説明する。角度検出においては、VRレゾルバ100の励磁巻線にsinωtの周期性を有する数KHz〜数百KHzの励磁電流を流した状態とする。この状態において、ロータコア104が回転すると、ロータコア104の回転角の変化に従って、ステータコア101側の突極面103とロータコア104との間のギャップが変化する。これは、ロータ104が軸方向から見て、
図2に示すように符号104aと104bとに示される2箇所の凸部を有しているからである。
【0026】
この際、ロータコア104の回転角をθとすると、sinωtの励磁電流に対して、sin出力用巻線からsinθsinωtの波形が得られ、cos出力用巻線からcosθsinωtの波形が得られる。この2つの波形sinθsinωtおよびcosθsinωtに基づいてθが算出される。この際、軸倍角3XのVRレゾルバの場合、ロータコア104が1回転する間に3周期分の出力が得られるので、RDコンバータ部121において算出されるθの値は、実際のロータコア104の回転角(絶対角度)ではない。
【0027】
次に、ゼロ点検出部122について説明する。ゼロ点検出部122は、ゼロ点検出端子に現れるゼロ点検出信号に基づき、ロータコア104の基準角度(ゼロ点)を検出する。これをゼロ点検出という。ここで基準角度というのは、ロータコア104の角度を測る場合の基準となる予め決めておいた角度位置である。以下、ゼロ点検出の原理を説明する。
【0028】
図5は、ゼロ点検出端子に現れるゼロ点検出信号の信号波形の一例である。
図5の横軸は、ロータコア104の回転角であり、縦軸は、
図1のゼロ点検出端子とcos検出巻線の端部(S1またはS3)の間で検出される電圧の値である。
図5に示されるように、ゼロ点検出信号は、ロータコア104の1回転に対応した周期性を有した周期波形となる。つまり、ロータコア104の1回転を1周期とする信号波形がゼロ点検出部122に現れる。これは、以下の理由による。
【0029】
まず、
図1のS1とS3の間で検出される電圧波形は、周方向において均等な角度位置にあるcos検出巻線巻回部102a’,102c’,102e’,102g’において検出される誘起電圧が合成されたものである。この際、ロータコア104が1回転する間に磁極104cの部分が、突極102a,102c,102e,102gに次々に近接するので、3周期分の変化を示すcos検出信号の第1の周期部分、第2の周期部分、第3の周期部分の波形のそれぞれには、磁極104cの部分の影響が平等に現れ、各波形の違いは生じない。なお、本実施形態の場合、磁極104cの部分が磁極104a,104bと同様な形状である場合に比較して、sin検出信号およびcos検出信号の波高値は小さくなる。
【0030】
これに対して、ゼロ点検出端子で検出される電圧波形は、cos検出巻線巻回部102e’,102g’で検出された誘起電圧が合成されたもの、またはcos検出巻線巻回部102a’,102c’で検出された誘起電圧が合成されたものとなる。この場合、例えば、突極102g,102eに着目すると、ロータコア104が1回転する間に、まず磁極104aの部分が近くを通り過ぎ(第1の期間)、次に磁極104bの部分が近くを通り過ぎ(第2の期間)、次に磁極104cの部分が近くを通り過ぎ(第3の期間)、といった状態となる。この場合、第3の期間は、ロータコア104と突極面103との間の距離(ギャップ)が他の2期間の場合と異なる。このため、3周期分の波形の波高値は一致しない。
【0031】
以上がゼロ点検出信号として、
図5の波形が得られる理由である。ここで、
図5の波形を見ると、600mVを超える出力が得られるのは、ロータコア104の回転角がある角度付近(
図5の場合は、0°付近)である場合のみに限定されていることが判る。そこで、ゼロ点検出部122は、ゼロ点検出信号を監視し、その値が特定の閾値を超えた場合に、その旨を特定角度検出信号としてRDコンバータ部121に通知する。
【0032】
RDコンバータ部121には、算出される角度データと
図5の波形との関係が予めメモリに記憶されている。したがって、ゼロ点検出部122から上記の特定角度検出信号が出力された際に、RDコンバータ部121は、ロータコア104が絶対角度(実際の回転角)で捉えてどの付近にあるのかを認識することができる。よって、RDコンバータ部121は、自身が算出した角度データとゼロ点検出部122からの特定角度検出信号とに基づき、ロータコア104の絶対角を得ることができる。
【0033】
(動作の一例)
例えば、ゼロ点検出部122から上記特定角度検出信号が出力されるのが、絶対角0°の付近であることが予め分かっているとする。ここで、ゼロ点検出部122から特定角度検出信号が出力されている期間において、RDコンバータ部121でsin検出信号およびcos検出信号に基づき、ロータコア104の回転角として、例えば0°、120°、240°が算出されたとする。ここで、3つの値が得られるのは、VR型レゾルバ100の軸倍角が3Xであるからである。
【0034】
この場合、上述のように、ゼロ点検出部122から特定角度検出信号が出力されている期間は、ロータコア104が絶対角0°の付近にある場合であるから、ロータコア104の絶対角が0°であることが判別される。そしてこの結果は、角度検出部121から出力される。
【0035】
(優位性)
以上述べたように、
図1に示すVR型レゾルバ100は、軸倍角が3XのVR型レゾルバであり、ラジアル方向に突出した磁極104a,104b、ラジアル方向に突出していない磁極104cを備えたロータコア104の構造としている。また、突極102cと102eとに巻回されたcos検出巻線の巻回部分を繋ぐ配線の途中からゼロ点検出端子を引き出している。ここで、ゼロ点検出端子に現れる電圧波形に閾値を設けることで、ロータコア104の絶対角を知ることができる。
【0036】
すなわち、
図5に示すように、明確な値の違いとして、ゼロ点を検出することができる。よって絶対角度の角度検出の精度が高い。また、新たな巻線は必要とされず、sin検出巻線またはcos検出巻線の配線引き回し部分の一部からゼロ点検出端子を引き出せばよいので、構造が簡素であり、コスト増を招かない。この点は、小型化および低コスト化を追求する場合に有用となる。
【0037】
(その他)
図1には、突極が8個ある例が示されているが、突極の数は、これに限定されない。これは、通常のVR型レゾルバの場合と同じである。突極への巻線の巻き方は、
図1に示す形態に限定されるものではない。例えば、全ての突極にsin検出巻線とcos検出巻線とを巻回する構造も可能である。この場合、sin検出巻線とcos検出巻線から位相が90°異なる検出信号が得られるように突極への巻き方を設定すればよい。
【0038】
ゼロ点検出端子は、同相の隣接する巻回部分の中点であれば、
図1の場合に限定されない。例えば、符号107または符号108の部分からゼロ点検出端子を引き出してもよい。ゼロ点検出端子は、sin検出巻線に設けてもよい。この場合もゼロ点検出端子の引き出し位置は、cos検出巻線の場合と同じである。
【0039】
本発明を軸倍角が4XのVR型レゾルバに適用する場合、ロータコアは、通常4つある磁極の盛り上がりが一つない構造のものとされる。なお、本発明は、ロータコアの複数ある磁極の一つを他の磁極に比較して変形させ、それによりゼロ点検出端子に表れる検出波形にロータ1回転に対応する周期性を持たせる点に特徴がある。したがって、
図2の場合のように一つの磁極の盛り上がりを無くす形状に限定されず、その盛り上がりを他の磁極と比較して小さくした形状にすることで同様の効果が得られる。言い換えると、先に説明したL
1<L
2の関係の式が成り立つロータコア表面とステータ側の突極面との距離(ギャップ)を有していれば良い。
【0040】
軸倍角は、2X以上であれば本発明が適用可能であるが、2Xでは本発明のメリットが得られないので、軸倍角3X以上の構成に本発明は適している。
【0041】
盛り上がった磁極の部分に空洞部、貫通孔、凹部等の部分的にロータコアの構成部材を取り除いた重量軽減部を設けることで、ロータコアにおける軸回りの重量分布のバランスを調整した構造も可能である。
図6には、ロータコア104の変形例が示されている。
図6に示すロータコア104では、外側に盛り上がった磁極104a,104bの部分に断面が略三日月形状の軸方向に貫通した貫通孔109a,109bが形成されている。貫通孔109a,109bは、軸回りにおける磁極104a,104b,104cの重量分布を調整し、各磁極の部分における回転モーメントを均一化する目的で設けられている。貫通孔109a,109bを設けることで、ロータコア104の回転時における振動の発生を抑えることができる。ここでは、貫通孔109a、109bを設けることで、軸周りの重量分布のバランスを調整する例を示したが、貫通していない凹部等であってもよく、またその断面形状も図示する形状に限定されない。また、重量を軽減できればよいので、空洞部を設けることで、同様の目的を達成することも可能である。また、その数は、該当する磁極の部分において一つに限定されず、複数であってもよい。
【0042】
本発明の態様は、上述した個々の実施形態に限定されるものではなく、当業者が想到しうる種々の変形も含むものであり、本発明の効果も上述した内容に限定されない。すなわち、特許請求の範囲に規定された内容およびその均等物から導き出される本発明の概念的な思想と趣旨を逸脱しない範囲で種々の追加、変更および部分的削除が可能である。