(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
座と、後傾動自在な背もたれと、前記背もたれの後傾動に抵抗を付与するロッキング用ばね手段と、前記背もたれの後傾動に対する前記ばね手段の抵抗の度合いを変える弾力調節部材とを備えており、
前記弾力調節部材は人が着座した状態で回転操作できるカムであり、前記背もたれの後傾動に伴うロッキング荷重が前記ばね手段に作用する位置を前記カムで変えることにより、前記ばね手段に掛かるモーメントを変えてばね手段の抵抗の度合いが調節される構成であって、
前記ばね手段は圧縮コイルばねであって、その前部を中心にして上下回動するようにベースに取り付けられている一方、
前記背もたれを設けた背フレームが前記ベースに後傾動自在に連結されており、前記背フレームに、前記ばね手段の後端に当接する押圧部を、当該背フレームの傾動支点よりも下に位置するようにして設けることにより、前記背もたれの後傾動によってばね手段が後ろから押されて縮み変形することが許容されており、
かつ、前記カムは、前記ばね手段の伸縮方向から見て当該ばね手段の外側に配置されており、前記ばね手段が前記カムによって上下回動して当該ばね手段の後端と背フレームの押圧部との上下位置が変わることにより、ロッキング時にばね手段に掛かるモーメントが変化するものであり、
更に、前記ばね手段をカムに密着した状態に保持する離反防止手段が設けられている、ロッキング椅子。
【発明を実施するための形態】
【0023】
次に、本願発明の実施形態を図面に基づいて説明する。まず、
図1〜
図14に示す第1実施形態から説明する。以下の説明では
、方向を特定するため「前後」「左右」の文言を使用するが、この前後左右の文言は着座した人を基準にしている。正面視方向は着座した人と対峙した方向であり、従って、正面視での左右と着座した人から見た左右とは逆になる。
【0024】
(1).椅子の概略
まず、椅子の概要を、主として
図1〜
図5に基づいて説明する。本実施形態は事務用等に多用されている回転椅子に適用しており、
図1に示すように、椅子は、脚支柱1のみを表示している脚装置と、脚支柱1の上端に固定したベース2と、ベース2の上に配置した座3と、着座した人がもたれ掛かり得る背もたれ4とを有している。例えば
図2に示すように、ベース2の上に金属板製の中間金具(座受け金具)5が配置されており、この中間金具5に樹脂製の座アウターシェル6が取り付けられている。
【0025】
例えば図2に示すように、座3は、樹脂製の座インナーシェル(座板)7とその上面に重ね配置した座クッション材8とを有しており、座クッション材8は
、クロス等の表皮材で上から覆われている。本実施形態では、座アウターシェル6は、中間金具5に固定された固定アウターシェル9と
、その手前に突出したスライドアウターシェル10とで構成されており、スライドアウターシェル10は
、固定アウターシェル9に前後スライド自在に取り付けられている。
【0026】
また、座インナーシェル7のうち前側のある程度の範囲は、側面視で下向きに容易に曲がり変形する変形許容部7aになっており、変形許容部7aの前端部がスライドアウターシェル10の前端部に連結されている。このため、スライドアウターシェル10を前後スライドさせると座インナーシェル7の変形許容部7aが前向きに伸びたり下向きに巻き込まれたりする。これにより、座3の前後長さを調節できる。なお、座アウターシェル6を座の一部と見ることも可能であり、また、座3と座アウターシェル6とで座部が構成されていると観念することも可能である。
座インナーシェル7の変形許容部7aには
、左右横長のスリットを多数形成している。
【0027】
図2に示すように、背もたれ4は
、樹脂製の背インナーシェル(背板)12とその前面に重ね配置したクッション材13とを有しており、クッション材13と背インナーシェル12とは袋状の表皮材ですっぽり覆われている。なお、背もたれ4は、着座した人の腰椎に当たるランバーサポート部を形成している。換言すると、背もたれ4は、着座した人の腰椎に当たる部位が最も前になるように
、縦断側面視形状が前向き凸状にカーブした形態になっている。敢えて述べるまでもないが、背もたれ4や座3の形態や構造は任意に選択できる。
【0028】
例えば
図2に示すように、ベース2には第1背フレーム14が後傾動自在に連結されていると共に、第1背フレーム14にはその後ろに位置した第2背フレーム15が固定されており、第2背フレーム15に背もたれ4が取り付けられている。第1背フレーム14は樹脂製又はアルミダイキャスト製であり、
図3や
図5に示すように、ベース2の後ろにおいて左右方向に広がる基部14aと、基部14aの左右両側部からベース2の外側位置で前向きに延びるアーム部14bとを有しており、左右アーム部14bの前端部が左右横長の第1軸16でベース2に連結されている。従って、背もたれ4は第1軸16の軸心回りに傾動する。ベース2には第1軸16が嵌まる軸受け穴17を空けている。
【0029】
第1背フレーム14における左右アーム部14bの前部は
、左右内側に入り込んだクランク部14cになっており、クランク部14cの基端部に第1軸16が貫通している。また、左右クランク部14cの前端
には、左右横長の押動軸18
が一体に繋がっている。押動軸18は
、下カバー19で下方から覆われている。下カバー19の左右側板には、押動軸18の回動を許容する長穴20が上向きに開口している。
【0030】
第2背フレーム15は、第1背フレーム14にビス21(
図10参照)で固定されている。第2背フレーム15は樹脂製又はアルミダイキャスト製であり、その後端には角形の左右2本の支柱15aが上向きに突設されている。背もたれ4は、ランバーサポート部の高さ位置を中心にして前後に回動し得るように支柱15aに連結されており、図示しない初期角度調節機構により、回動姿勢を複数段階に変更できる。
【0031】
既述のように、第1背フレーム14は第1軸16を中心にして後傾動する。そこで、ベース2の内部に弾力調節ユニット23を設けて、第1背フレーム14の後傾動に抵抗を付与している。
【0032】
本実施形態の椅子は、背もたれ4の後傾に連動して座3が後退しつつ後傾するシンクロタイプの椅子であり、そこで、
図3から推測できるように、中間金具5の前部を弾力調節ユニット23の前部に後退動可能に連結し、中間金具5の後部は、第1背フレーム14に上向き突設したブラケット部24に左右横長の第2軸25で連結されている。また、本実施形態では、背もたれ4を任意の後傾角度に保持するためのロック装置として、弾力調節ユニット23の上に前後長手のロック用ガスシリンダ26を配置している。
【0033】
(2).ベース・座アウターシェル
以下、従前の図に加えて
図6以降の図面も参照して各部位の詳細を説明する。まず、ベース2及びこれと座アウターシェル6との関係を説明する。例えば
図3,5に示すように、ベース2は上向きに開口した箱型の形態であり、手前に行くに従って深さが浅くなっている。ベース2の上端縁には、全周にわたって外向きフランジ29が形成されている。
【0034】
例えば
図3から理解できるように、ベース2の後半部の底は段が上がって高くなっており、この高くなった部位に、底板と左右側板30aとを有する溝型のベースブラケット30が溶接によって固定されている。ベースブラケット30の底板とベース2の底板とに上下開口のブッシュ31が溶接されており、ブッシュ31に脚支柱(ガスシリンダ)1の上端が下方から嵌着している。また、ベースブラケット30の左右側板30aには左右横長の第3軸32が貫通しており、第3軸32
により、ロック用ガスシリンダ26が前向き移動不能に支持されている。第3軸32は、ベースブラケット30の左右側板30aに取り付けられている。
【0035】
例えば
図3に示すように、中間金具5は概ね平面視四角形に近い形状であり、上板5aと左右側板5bとを有している。第2軸25は側板5bに貫通している。なお、
図2に示すように、中間金具5の側板5bは、第1背フレーム14におけるブラケット部24の内側に位置している。
【0036】
図6に示すように、固定アウターシェル9には、中間金具5にすっぽり嵌まり込む凹所33が形成されている。そして、中間金具5の上面の前端に左右一対の前向きストッパー34を設けている一方、固定アウターシェル9における凹所33の前端部には、前向きストッパー34が後ろから嵌まるトンネル形の受け部35を一体に形成している。
【0037】
更に、中間金具5における上板5aの後端部に、左右横長で角形のロック穴36を空けている一方、固定アウターシェル9における凹所33の後端部に、ロック穴36に嵌まるロック爪37を下向きに突設している。ロック爪37は弾性変形してからロック穴36に嵌まり込む。これにより、固定アウターシェル9は中間金具5に抜け不能に取り付けられる。
【0038】
例えば
図5に示すように、弾力調節ユニット23は、ベース2の前部に嵌まる左右一対の支持ブラケット38を有している。支持ブラケット38は板材製でベース2の内側面の内側に配置されており、この支持ブラケット38の前部には、ベース2の外向きフランジ29に上から重なる羽根部39を横向きに突設している。ベース2の外向きフランジ29には
、支持ブラケット38の羽根部39に重なる張り出し部29aが形成されており、張り出し部29aには、羽根部39を左右ずれ不能に保持するストッパー片40が上向き突設されている。
【0039】
図5から理解できるように、ベース2の張り出し部29aと支持ブラケット38の羽根部39には、樹脂製のスライダ受け41が左右外側から嵌まっており、
図8(B)に示すように、これらスライダ受け41と羽根部39と張り出し部29aとは
、ビス42で共締めされている。そして、例えば
図3に示すように、中間金具5にはスライダ受け41に上から重なる横向き突出部43を設けており、
図8(C)に示すように、横向き突出部43の外端部の下面に装着した樹脂製のスライダー44が
、スライダ受け41に上から当接している。
【0040】
スライダ受け41のうちスライダー44を支持する外端部41aの上面は、側面視で上向き凸の状態に湾曲した形状になっている。このため、中間金具5は(座3は)、ロッキングに際して滑らかに動いて後傾しつつ後退する。
図4(A)に示すように、中間金具5の横向き突出部43には、スライダ受け41を左右外側と後ろから囲う壁部43aが下向きに突設されている。
【0041】
他方、
例えば図8のとおり、スライダ受け41における外端部の上部は左右外側に張り出した突出部41aになっており、
図4(A)のとおり、中間金具5の壁部43aには、スライダ受け41における突出部41aの下方に位置するストッパー片45(
図16(A)も参照)を曲げ形成している。従って、中間金具5の前部は上向き移動不能に保持されており、このため、座3の前部を上に持ち上げても
、中間金具5がベース2から外れることはない。なお、中間金具5とベース2との離脱防止機能は、他の部材によっても講じられている。
【0042】
(3).弾力調節機構
次に、弾力調節ユニット23を中心にした弾力調節機構を説明する。例えば
図5に示すように、弾力調節ユニット23は、既に述べた左右一対の支持ブラケット38と、左右の支持ブラケット38の間に配置されたばねユニット50と、左右の支持ブラケット38に回転自在に取り付けた操作軸51と、ばねユニット50の左右両側部に装着した側面視略L形の姿勢保持体52とを有している。姿勢保持体
52は、請求項に記載した離反防止手段の一例である。
【0043】
図13に示すように、ばねユニット50は、略角形で後ろ向きに開口した筒状部材53と、筒状部材53の内部に配置された圧縮コイルばね54と、筒状部材53にスライド自在に嵌まった可動ばね受け55とで構成されている。筒状部材53と可動ばね受け55
とにより、請求項に記載した
ばねケースが構成されている。可動ばね受け55は概ね角形の形態を成しており、このため、筒状部材53の内部も概ね角形に近い形状になっている。また、可動ばね受け55の左右側面にはガイド突条56を設けている一方、筒状部材53の内側面には、ガイド突条56が嵌まるガイド溝57を形成している。
【0044】
筒状部材53と可動ばね受け55には、抜け防止手段の一例として左右横長のピン58が貫通しており、筒状部材53のピン挿通穴59を前後に長い長穴とすることにより、可動ばね受け55の前後スライドが許容されている。筒状部材53の前端部には左右外側に突出した支軸60を設けており、
図14(A)に示すように、支軸60は
、支持ブラケット38に設けた穴61にブッシュを介して嵌まっている。支持ブラケット38はベース2に固定されているので、ばねユニット50は支軸60を中心にして上下回動する。
【0045】
そして、例えば
図9,
図13に示すように、第1背フレーム14の前端に設けた押動軸18にプッシャー62を装着し、プッシャー62で可動ばね受け55を押すようになっている。プッシャー62は
、請求項に記載した
押圧部の一例である。可動ばね受け55の後端部は側面視で後ろ向き凸の山形になっている一方、プッシャー62の前面は側面視で支軸60を中心にした曲率半径の円弧面62aになっている。
図9(B)から容易に理解できるように、押動軸18には
、前板63aと底板63bと左右側板63cとを有する位置決め部材63が固着されており、プッシャー62には、位置決め部材63に上から嵌まる凹所64が形成されており、このため、プッシャー62は
、左右ずれ不能でかつ回転不能に保持されている。プッシャー62の前面には、可動ばね受け55との片当たりを防止するため縦溝を形成している。なお、プッシャー62の前面に
、耐磨耗性に優れたライニング材を装着することも可能である。
【0046】
また、
図9(B)のとおり、位置決め部材63の底板63bに係合穴65を設けている一方、プッシャー62には係合穴65に嵌まる係合爪66が形成されており、係合爪66が係合穴65に引っ掛かることにより、位置決め部材63は押動軸18から離脱不能に保持されている。プッシャー62の後面には、後ろ向きに開口した補助溝62bが左右全長にわたって形成されている。補助溝62bは、第1背フレーム14を取り付けるに当たって、ベース2に形成した前向き支持片2aに嵌め込むことで、第1背フレーム14を仮保持するためのものである。なお、位置決め部材63は押動軸18に一体成形してもよい。
【0047】
例えば
図14(B)に示すように、筒状部材53のうち支軸60より後ろの部位に
、左右一対のガイド軸67を左右外向きに突設している一方、支持ブラケット38には、ガイド軸67が移動自在に嵌まる円弧状のガイド穴68が形成されている。これにより、ばねユニット50の回動ストロークが規制されている。
【0048】
例えば
図13から理解できるように、操作軸51には左右一対の周面カム70が嵌まっている一方、ばねユニット50を構成する筒状部材53の左右両
側部には、周面カム70の外周面が
上から当るカム受け部71を突設している。
図11に明示するように、本実施形態では、周面カム70には、回転軸心からの距離e1〜e5が短い順に第1〜第5の5つのカム面70a〜70eが形成されており、このため、操作軸51で周面カム70を回転させると
、ばねユニット50は5つの姿勢に変化し、第1軸16から可動ばね受け55までの間隔(スパン)が変化し、その結果、ロッキングに対する抵抗の大きさ
(或いはモーメント)を5段階に調節することができる。
【0049】
左右の周面カム70は
、筒状部を介して連結
された状態に1つのカム部材73
として一体成形されており、カム部材73に角形の操作軸51を挿通することにより、操作軸51と周面カム70とが一体に回転するようになっている。例えば
図12や
図14に示すように、操作軸51は
、左右の支持ブラケット38に回転自在に保持されている。また、操作軸51の一端部はベース2の外側に突出していて
、これに摘まみ74を装着している。また、操作軸51の他端には
、抜け止めクリップ75を装着している。例えば
図12(A)に示すように、ベース2には
、操作軸51が入り込む凹所76を設けている。このため、操作軸51の高さをできるだけ低くすることができる。
【0050】
例えば
図14に示すように、周面カム70の内側には、姿勢保持用カム部77が一体に形成されている。姿勢保持用カム部77の外周には、軸心からの距離が周面カム70のカム面70a〜70eと逆の関係になっているカム面77a〜77eが形成されている。姿勢保持用周面カム部77は、周面カム70より一回り小さい大きさに設定されている。
【0051】
他方、姿勢保持体52は金属板製であり、筒状部材53の支軸60に回動自在に嵌まっている。姿勢保持体52は、姿勢保持用カム部77に斜め上から当接する上当接部52aと、筒状部材52のカム受け部71の下方に位置するように後ろ向きに延びる下支持部52bとを有しており、下支持部52bの下端に支持片52cを外向き突設し、支持片52cで3個のゴム78を支持している。ゴム78は請求項に記載した弾性部の一例であり、カム受け部71には
、ゴム78を位置決めする穴79が形成されている。なお、ゴム78の個数は1個でも複数個でもよい。ゴム78に代えてコイルばねを使用することも可能である。
【0052】
周面カム70とカム受け部71とが
、姿勢保持体52によって上下から挟まれた状態になっており、このため、ばねユニット50と周面カム70とは離反不能に保持されている。従って、周面カム70をどちらの方向に回転させてもばねユニット50は回動する。
【0053】
さて、周面カム70を回転させる
と、操作軸51の軸心からカム受け部71の上面までの間隔E1が変化すると共に、操作軸51の軸心から姿勢保持用周面カム部77までの距離E2も変化するが、操作軸51をどのように回転させても(E1+E2)の寸法が略一定になるように姿勢保持用周面カム部77の形状を設定することにより、カム受け部71の下面と姿勢保持体52の支持片52cとの間隔寸法E3も略一定に保持している。つまり、操作軸51の回転によってばねユニット50が回動すると、姿勢保持体52もばねユニット50の回動方向に回動するのであり、このため、ばねユニット50の姿勢に関係なくE3の寸法が略一定に保持されるのである。
【0054】
そして、周面カム70のいずれかのカム面70a〜70eがカム受け部71に当接した状態では、ゴム78は全く圧縮されていないか又は軽く圧縮されており、周面カム70を回転させると、隣り合ったカム面の交差部であるコーナー部が乗り越えるに際して、カム受け部71が押されてゴム78が圧縮変形してから
、ゴム78の弾性復原力でカム受け部71が戻り回動するという現象が生じ、これにより、使用者は
、カム受け部71に当接するカム面が切り換わって
、ロッキングに対する抵抗の大きさが切り替えられた事実を感触で把握できる。換言すると、弾力の切り替えに際して使用者は、回転抵抗の変化からクリック感を得ることができる。
【0055】
そして、周面カム70の回転に際してカム受け部71が下向きに押されることで、カム受け部71の下面と姿勢保持体52の支持片52cとの間隔寸法はE4に小さくなるが、各段階において(E1+E2)が略同じであることにより、E4はどの段階でも略同じ寸法に保持されている。このため、弾力をどの段階に切り替えるにおいてもゴム78の圧縮変形量は略一定であり、従って、操作軸51を回転操作するにおい
ての回転抵抗(或いはクリック感)は
、略一定に保持される。
【0056】
(4).ロック装置
次に、背もたれ4のロッキングを制御するロック装置を、主に
図15,16を参照して説明する。ロック装置は、既述のとおりロック用ガスシリンダ26を有している。ロック用ガスシリンダ26は市販品であり、筒体26aと
、これにスライド自在に嵌まったロッド26bとを有している。本実施形態では、ロッド26bは後ろ向きに突出しており、ロッド26bの先端(後端)に樹脂製等のサポート部材80を取り付け、サポート部材80を第3軸32に嵌め込んでいる。
【0057】
サポート部材80には、第3軸32が嵌まる取り付け溝81が
、略上向きに開口した状態に形成されている。従って、
図15(B)に示すように、ロック用ガスシリンダ26は、取り付け溝81を略下向きに開口するように起こした姿勢にしてからサポート部材80を第3軸32に嵌め込み、次いで、筒体26aが手前に向かうように姿勢を変えることにより、第3軸32にワンタッチ的に取り付けることができる。ロック用ガスシリンダ26の取り付けは、中間金具5をベース2に取り付けた状態で行われる。そこで、ベース2には
、ロック用ガスシリンダ26を上から嵌め可能な穴82が空いている。
【0058】
図9(A)に示すように、ロック用ガスシリンダ26を所定姿勢にセットした状態では、サポート部材80はベースブラケット30で落下不能に保持されている。従って、ロック用ガスシリンダ26は離脱不能に保持されている。
図16(B)に示すように、サポート部材80には、ロック用ガスシリンダ26のプッシュバルブ83を操作するためのレバー片84が下方から嵌め込まれている。レバー片84の下端には支軸部85が形成されており、支軸部85は
、サポート部材80に設けた軸受け溝86に嵌まっている。
図9(A)に示すように、サポート部材80の上端前部に索導管87の一端部を固定し、索導管87に挿通されたワイヤー88の一端に固定した球89を
、レバー片84の上端部に掛け止めしている。
図16(B)に示すように、レバー片84には、球89を嵌め込んでから上向き移動させ得る係合溝90が形成されている。
【0059】
索導管87の他端は
、固定アウターシェル9の左側部又は右側部に連結されており、ワイヤー88の他端は
、手動式操作レバー(図示せず)に連結されている。操作レバーは
、ロック姿勢とフリー姿勢とに選択的に保持されるようになっている。
図9(A)では操作レバーはロック姿勢になっており、この状態では
、背もたれ4は傾動不能に保持されている。
図9の状態から操作レバーをフリー姿勢に回動させると、レバー片84はその上端が手前に移動するように回動し、これによ
り、プッシュパルブ83が押されてロック用ガスシリンダ26は伸縮自在なフリー状態になる。従って、背もたれ4は傾動自在になる。
【0060】
ロック用ガスシリンダ26の前端部には左右横長の第4軸91が取り付けられており、この第4軸91は、左右の底板と左右の側板92aとフラップ片92bとを有するピン受け部材92に上から嵌め込み保持されている。すなわち、ピン受け部材92のフラップ片92bは側板92aの上端から外向きに突出しており、フラップ片92bと側板92aとに切り開き形成したピン受け溝93に、第4軸91が上から嵌め込まれている。ピン受け部材92のフラップ片92bは
、中間金具5の下面にビス94で固定されている。
【0061】
第4軸91は、中間金具5に手前から差し込み装着したストッパー95
によって、上向き抜け不能及び左右抜け不能に保持されている。このストッパー95は樹脂製であり、前板から後ろ向きに延びる左右の足体95aを有している。
図16(A)(B)に示すように、左右の足体95aは
、第4軸91の左右端部を外側と上側とから囲うように背面視L形に形成されており、左右の足体95aにより、第4軸91は
、上向きに抜け不能でかつ左右方向にも抜け不能に保持されている。
【0062】
中間金具5の前端には前板5cが形成されており、この前板5cに、ストッパー95の足体95aが貫通する取り付け穴97を設けている。足体95aは
、中間金具5の下面に重なっている。このため、第4軸91に上向きの外力が掛かっても曲がり変形することはない。
図16(C)から明瞭に把握できるように、ストッパー95における前板の下端には、左右2つの係合爪98を後ろ向きに突設している。係合爪98の先端(後端)は上向き鉤状になっており、この係合爪98を
、中間金具5の前板5cに下方から掛け止めている。言うまでもないが、係合爪98は
、その弾性に抗して変形してから中間金具5の前板5cに引っ掛かる。このため、ストッパー95は離脱不能に保持される。
【0063】
(5).まとめ
既述のとおり、着座した人が背もたれ4にもたれ掛かると、第1背フレーム14の回動によりプッシャー62が前進動して可動ばね受け55が
手前に押され、これにより、ロッキングに対する抵抗が付与される。そして、操作軸51を回転操作して周面カム70を回転させることにより、ロッキングに対する抵抗の度合いを複数段階(5段階)に切り替えできる。敢えて述べるまでもないが、弾力調節の切り替え段数は5段階には限らず、任意の段数に設定できる。
【0064】
プッシャー62は押動軸18に一体成形することも可能であるが、本実施形態のようにプッシャー62を押動軸18とは別体に構成すると、プッシャー62を第1背フレーム14とは異なる素材にしてプッシャー62の機能を向上できる利点や、プッシャー62が磨耗等したら簡単に交換できる利点がある。より具体的には、例えば
、第1背フレーム14及び押動軸18をアルミダイキャスト製の一体成形品とし、プッシャー62を強度や耐摩耗性に優れた樹脂(例えばナイロン系の樹脂やポリアセタールなど)で製造
することも、好ましい態様である。尚、プッシャー62を強度面や耐摩耗性に優れた素材で形成することで、ライニング材の装着を不要とすることも可能である。
【0065】
本実施形態のようにロック装置としてロック用ガスシリンダ26を使用すると、ロック用ガスシリンダ26はロッキングに対する抵抗としても作用するため、ロッキング用圧縮コイルばね54をできるだけ小型化できる利点があるが、特に、本実施形態では、ロック用ガスシリンダ26をロッキング用ばね手段として機能させる効果が高いと言える。この点を説明する。
【0066】
さて、ロック用ガスシリンダ26で荷重を支持する場合、荷重の作用線が軸心と一致すると、ロック用ガスシリンダ26はこじれなく荷重を的確に支持することができる。従って、ロック用ガスシリンダ26は、できるだけ軸心方向に荷重がかかるように配慮するのが好ましい。
【0067】
この点、本実施形態では、
図11(A)から理解できるように、ロック用ガスシリンダ26の支軸である第3軸32が第1軸16と第2軸25との間の高さ位置に配置されていることと、ロッキングしても第4軸91の高さはさほど変わらないこととにより、ロッキングに伴ってロック用ガスシリンダ26に作用する荷重の作用線は、ロック用ガスシリンダ26の軸心に近接した姿勢になっている。このため、ロック用ガスシリンダ26の能力(弾性復原力)を、背もたれ4の後傾動に対する抵抗としてフルに発揮させることができる。また、ロック用ガスシリンダ26の耐久性も向上できる。
【0068】
背もたれの後傾動に連動して座が後傾及び後退するシンクロ椅子では、人が着座すると座は後退しつつ後傾しようとする。そこで、着座しただけでは座が後傾及び後傾しないように保持する必要がある。そして、ロック用ガスシリンダ26を設けると、ロック用ガスシリンダ26も座2の後退動及び後傾動に対する抵抗として作用するが、本実施形態では、一般成人(例えば体重60kg程度の人)が着座した程度の荷重はロック用ガスシリンダ26のみで支持できるように設定している。
【0069】
すなわち、人が着座してもばねユニット50は縮まないように設定している。このため、
図11(C)に示すように、人が背もたれ4にもたれ掛かっていない着座状態で、可動ばね受け55とプッシャー62との間に若干の間隔Sの隙間を設けることが可能になり、その結果、操作軸51によるばねユニット50の姿勢変更を軽い力で行うことができる。可動ばね受け55がプッシャー62に軽く当たっている状態であっても、操作軸51の回転操作を軽い力で行うことができる。なお、ロック用ガスシリンダ26を若干縮めた状態でセットしてフリー状態にしておくと、ロック用ガスシリンダ26にプリテンションを掛けて座3を前向きに付勢したのと同じ状態になるため、部材の連結部のガタを吸収できる。
【0070】
図8(C)を引用して説明したように、スライダ受け41のうち荷重を受ける外端部41aは上向き凸に湾曲しており、非ロッキング状態では
、湾曲した外端部41aの頂点部分にスライダ44が当たっている。このため、スライダー44に上から荷重が作用しても、スライダー44は後ろに滑ることはない。従って、着座荷重によってスライダー44が後ろに移動する傾向は生じない。
【0071】
つまり、スライダー44がスライダ受け41の傾斜面に載っていると、着座荷重は下向きの分力と後ろ向きの分力とに分けられるため、座3が後退しようとする傾向を呈するが、本実施形態では
、着座荷重が後ろ向きの分力に分けられることはないため、着座によって座3が後退しつ後傾しようとする現象が軽減されるのであり、その結果、着座により座3が後傾及び後退することを、ロック用ガスシリンダ26のみで的確に阻止できるのである。
【0072】
本実施形態では、ばねユニット50や支持ブラケット38、カム部材73付きの操作軸51を一つの固まりの弾力調節ユニット23に構成
しているため、保管や組み立ての手間を抑制できると共に、組み立て誤差のバラ付きをなくして精度アップにも貢献できる利点がある。
【0073】
なお、支持機構部の組み立ては次の手順で行われる。すなわち、予め押動軸18にプッシャー62を嵌め込み装着しておいて、第1背フレーム14をベース2にセットする、弾力調節ユニット23をベース2にセットする、スライダー44を装着して固定する、中間金具5の前部をスライダー44に後ろから差し込む、第2軸25で中間金具5と第1背フレーム14とを連結する、ロック用ガスシリンダ26をセットする、ストッパー95を中間金具5に装着する、という手順で行われる。ピン受け部材92は予め中間金具5に固定している。本実施形態ではビス止め箇所は僅かであるため、椅子の組み立てを
、能率良くしかも高い精度で行える利点がある。
【0074】
(6).第2実施形態
次に、
図17,18に示す第2実施形態を説明する。この実施形態は弾力調節ユニットの変形例であり、第1実施形態との大きな相違点は、周面カム70とばねユニット50とを常に重なった状態に保持する姿勢保持手段の構成が相違する点である。
【0075】
この第2実施形態では、姿勢保持体52は樹脂製であり、左右の姿勢保持体52をジョイント100で連結すると共に、左右姿勢保持体52に、請求項に記載した弾性部の一例として、筒状部材51のカム受け部71に突設したガイド突条71aに下から当接するばね部101を一体に設けている。ばね部101は細い線状で
、側面視上向き凸の山形に形成されている。従って、ばね部101が撓み変形することで
、周面カム70の回転が許容される。本実施形態では
、ばね部101が姿勢保持体52に一体成形されているため、部材点数の削減によるコスト抑制や組み立て作業性アップに貢献できる。
【0076】
ジョイント100は左右の姿勢保持体52を一体に繋ぐためのものであり、平面視では前向き凸の山形に形成されている。このため、ジョイント100を左右方向に伸ばすように変形させることにより、左右姿勢保持体52の間隔を拡げることが
できる。その結果、左右の姿勢保持体52
が一体成形されたものでありながら、筒状部材53の支軸60に嵌め込むことができる。
【0077】
いうまでもないが、左右の姿勢保持体52は分離していても良いし、一体成形せずに別体のジョイントで連結することも可能である。なお、支持ブラケット38には前向きに突出した角部38aを設けており、角部38aには
、第1軸16が嵌まる軸受け穴102を空けている。
【0078】
ばねユニット50は
、プッシャー62で押されると上向き回動する傾向を呈することが有り、このため支持ブラケット38もその後部が浮く傾向を呈することがあるが、本実施形態のように角部38aを第1軸16に嵌め込んでいると、支持ブラケット38の浮きを簡単な構造で確実に防止できる。
図18(B)に示すように、支持ブラケット38の後部下端には、ベース2に設けた係合穴(図示せず)に嵌まる鉤片38aを形成しており、この鉤片38aによっても浮きを防止している。
【0079】
図18(B)から理解できるように、可動ばね受け55と筒状部材53とを連結するピン58は
、姿勢保持体52で左右抜け不能に保持されている。
【0080】
第1実施形態では、ばねユニット50の回動ストローク規制手段として
、支持ブラケット38に円弧状のガイド穴68を形成していたが、本実施形態では、周面カム70によって回動ストロークを規制している。すなわち、第1カム面70aと第5カム面70eとの間
のコーナー部を便宜的にエンドコーナーと称した場合、第1カム面70aの高さ(回転軸心からの寸法)とエンドコーナー部の高さとの差をE3の寸法より大きい寸法に設定すると共に、第5カム面70eの高さとエンドコーナー部の高さとの差をE3の寸法より大きい寸法に設定することにより、第1カム面70aから第5カム面70eに移行させようとしたり、第5カム面70eから第1カム面70aに移行させようとしたりしても、周面カム70のエンドコーナー部がカム受け部71につかえて回転できないようにしている。このため構造が簡単になる。もとより、第1実施形態と同様に長穴等のストローク規制手段を別に設けてもよい。
【0084】
本願発明は
、上記の実施形態の他にも様々に具体化できる。例えば、適用対象は移動自在な回転椅子には限らず、劇場用椅子のような固定式の椅子にも適用できる。ベース等の構成部材は
、必要に応じて各種の形態を採用できる。カムは必ずしも周面カムには限らず、端面カムや溝形カムなども採用できる。カムとばね手段とを離反不能に保持する手段としては、単にばねで引っ張るといったことも可能である。