特許第5779036号(P5779036)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5779036
(24)【登録日】2015年7月17日
(45)【発行日】2015年9月16日
(54)【発明の名称】軌道用手動搬送台車
(51)【国際特許分類】
   B61D 15/10 20060101AFI20150827BHJP
   B60F 1/02 20060101ALI20150827BHJP
   B62B 5/04 20060101ALI20150827BHJP
【FI】
   B61D15/10
   B60F1/02
   B62B5/04 A
【請求項の数】1
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2011-171198(P2011-171198)
(22)【出願日】2011年8月4日
(65)【公開番号】特開2013-35347(P2013-35347A)
(43)【公開日】2013年2月21日
【審査請求日】2013年5月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】391030125
【氏名又は名称】保線機器整備株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100074192
【弁理士】
【氏名又は名称】江藤 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100121496
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 重雄
(72)【発明者】
【氏名】細川 誠二
(72)【発明者】
【氏名】今井 国博
【審査官】 鈴木 敏史
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭58−014006(JP,U)
【文献】 実開昭50−028455(JP,U)
【文献】 特開昭51−007609(JP,A)
【文献】 特開平10−035500(JP,A)
【文献】 特開2007−168759(JP,A)
【文献】 実開昭57−176304(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B61D 15/10
B60F 1/02
B62B 5/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
レール上を走行して機材を搬送する軌道用手動搬送台車であって、手動操作用のハンドルを備えた荷台の、前後の左右両側に、地上走行用の内車輪とレール走行用の外車輪を互いに同軸で、しかも、前記レールの頭部の幅より短い離開距離をおいて設け、内車輪は、前記外車輪がレール上を転動するときに、軌間内に位置して空転する、前記外車輪より大径なタイヤで構成し、
前記外車輪の周面には、凹穴を列設する一方、
前記荷台の後部側の一方の車輪体の近傍に支持させた支持体に、連動ワイヤの操作によって進退する制動片を支持させ、該制動片を前記外車輪の周面に列設された凹穴に係離させることにより前記外車輪を制動したり解放するブレーキ装置を設け、
当該ブレーキ装置は、操作片を操作し前記支持体に設けたばね装置に抗して前記制動片を前記凹穴から離脱させることにより前記外車輪の制動状態を解放し、前記操作片から指先を離すことにより、前記ばね装置により前記制動片が適宜の前記凹穴に係合して、前記外車輪の転動を規制するように構成したことを特徴とする軌道用手動搬送台車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、事故現場において、レール上を走行させて機材を搬送するために用いる軌道用手押し搬送台車に関するものである。
【背景技術】
【0002】
具体例を挙げるまでもなく、機材を搬送するものとして、軌道用台車(例えば、特許文献1)や機材運搬ネコ車があり、前者は前後の左右両側に、レール上を転動する専用の車輪を用いることによりレール上を円滑に移動できるようにし、積載能力があるとする利点を備えている。また、後者は軽量のため載線作業が簡単であるという利点がある。
【0003】
しかしながら、これらはいずれも、現場に到着後、踏切などから線路内に進入して載線(レール上に車輪において載せた)後、機材を積載して現場の適所へと搬送しなければならない。すなわち、トラックなどで当該車を搬送した個所から載線するまでの間、車輪は、専らレール上を転動する構成を採るので、手先で保持して運ぶ必要があり、地上での移動に支障をきたしていた。
【0004】
本発明は、斯様な従来例の欠点に着目し、軌道(鉄道線路)においても、地(陸)上においても移動が支障なく行え、しかも、使用勝手が良好な軌道用手押し搬送車を提供することを目的として創案したものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−331927号公報
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
レール上を走行して機材を搬送する軌道用手動搬送台車であって、手動操作用のハンドルを備えた荷台の、前後の左右両側に、地上走行用の内車輪とレール走行用の外車輪を互いに同軸で、しかも、前記レールの頭部の幅より短い離開距離をおいて設け、内車輪は、前記外車輪がレール上を転動するときに、軌間内に位置して空転する、前記外車輪より大径なタイヤで構成し、前記外車輪の周面には、凹穴を列設する一方、前記荷台の後部側の一方の車輪体の近傍に支持させた支持体に、連動ワイヤの操作によって進退する制動片を支持させ、該制動片を前記外車輪の周面に列設された凹穴に係離させることにより前記外車輪を制動したり解放するブレーキ装置を設け、当該ブレーキ装置は、操作片を操作し前記支持体に設けたばね装置に抗して前記制動片を前記凹穴から離脱させることにより前記外車輪の制動状態を解放し、前記操作片から指先を離すことにより、前記ばね装置により前記制動片が適宜の前記凹穴に係合して、前記外車輪の転動を規制するように構成する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、地上の移動に際してタイヤで構成する内車輪のみが地上に接して転動するから、支障なく地上での移動を行え、しかも、荷台の前後の左右両側それぞれに他と独立した状態でタイヤである内車輪が存するから方向制御が容易な搬送台車を提供できる。
【0008】
また、軌道(レール)上の走行に際しては、内車輪が軌間内にあってフランジの働きをして外車輪の脱線を防ぎ、従って、フランジのないローラ体を車輪として適用でき、コスト的に安価な製品を提供できる。
【0009】
加うるに、軌陸いずれにも不都合なく移動できるから、必要機材を現場で予め積載したまま運び、現場到着後にそのまま陸上をゴム車輪である内車輪を利用して移動し(通常、踏切りまで)、載線が可能となり、常に同じ機材を積載して置き、緊急時に速やかに現場の軌道上に機材を運ぶことが可能となり、実用上、有効である。また、外車輪の周面には、凹穴を列設する一方、荷台の後部側の一方の車輪体の近傍に支持させた支持体に、連動ワイヤの操作によって進退する制動片を支持させ、該制動片を前記外車輪の周面に列設された凹穴に係離させることにより外車輪を制動したり解放するブレーキ装置を設け、当該ブレーキ装置は、操作片を操作し前記支持体に設けたばね装置に抗して制動片を凹穴から離脱させることにより外車輪の制動状態を解放し、操作片から指先を離すことにより、ばね装置により制動片が適宜の凹穴に係合して、外車輪の転動を規制するように構成したため、本発明に係る軌道用手動搬送台車をレール上に放置した場合でも、ブレーキ装置の作用により軌道用手動搬送台車が逸走することを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】正面図。
図2】平面図。
図3】底面図。
図4図1のx−x線略示断面図。
図5】使用状態を示す正面図。
図6】他の使用状態を示す側面図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図面は本発明に係る軌道用手押し搬送車の一実施形態を示し、実施形態の軌道用手押し搬送車Aは、手動操作用ハンドル1を着脱自在に取付けた荷台2と該荷台2の下面の前後の、左右両側にそれぞれ設けた車輪体3,3,3,3で構成する。
【0012】
荷台2は、横桟2aと縦桟2bを互いに溶接し、前後両端に起立部2w,2w´を相対設した格子体で構成し、格子体で構成することにより、起立部2w,2w´間に介在させて載置した搬送機材Lを、ロープを横桟2aや縦桟2bに引っ掛けて縛り付けられるようにして、搬送機材Lの大小を問わず確実に保持して搬送できるようにしてある。
【0013】
また、荷台2の前記後端側起立部2w´を幅方向中央部には、上面開口のケース状の取付け部4を設け、該取付け部4に、正面視T字形の脚杆部1aと把手部1bとで成る、前記手動操作用ハンドル1の脚杆部1aを嵌挿し、取付け部4に螺合した止着ボルト5の先端を外部から操作して該脚杆部1aを締付け、着脱自在に固定できるようにしてある。
【0014】
前記車輪体3は、取付け部片6aの両側に支持部片6b,6bを相対設して成る支持枠6の支持部片6b,6b間に車軸7をわたして設け、該車軸7に内側車輪8と外側車輪9を回動自在に支持させて構成したものである。
【0015】
そして、車輪体3は、前記台枠1の下面の前後両端部の左右両側のそれぞれに支持枠6の取付け部片6aを溶接して配設され、配設位置は、各車輪体3の外側車輪9をレールR上に載せたとき、各内側車輪8が該外側車輪9に隣接してレールRの軌間S内に位置する関係にしてある(図5)。
【0016】
そして、図4で示すように、実施形態の内側車輪8は、車輪リム8bにタイヤ(ゴム)8aを組付けて構成し、前記車軸7に嵌めたスリーブ(すべり軸受け)10に外側から嵌め込んだものである。また、外側車輪9は硬質合成樹脂製のローラ体で成り、ベアリング(転がり軸受け)11を介して前記車軸7に取付けてある。
【0017】
内外車輪8,9は互いに同軸(車軸7)で自在に回動し、内側車輪8を外側車輪9より外径を大きくしてあり、外側車輪9がレールR上を転動するとき、内側車輪8は接地することなく空転し(図5)、内側車輪8が踏面において地上に接地して回動するときは、外側車輪9は地上に接地することのない(図6)関係にしてある。
【0018】
また、内側車輪8は、レールR,Rの軌間S内で、しかも、レールRと隣接するように配され、外側車輪9との車軸7に沿う離開距離がレールRの頭部Raの横幅より短くしてある。このことにより、内側車輪8は外側車輪9のフランジの役割をして、レールRからの脱輪が防止される。
【0019】
車軸7は、支持枠6の支持部片6a,6a間にわたしてナット7bを螺合したボルト体で構成するが、これは、経時変化の損傷による内、外車輪8,9の交換を簡易に行うためで、車輪8,9の経時変化に対する対応つまり交換を無視すれば、支持部片6a,6aにわたして棒杆体であれば良い。
【0020】
そして、トラックなどで現場に搬送後、地上に下ろして、所要の機材(物品)Lを積載後、線路(軌道)の進入個所(踏切など)まで内側車輪8を利用して地上を移動後、外側車輪9をレールR上に載車して該車輪9を利用して現場に移動し、前記機材Lを搬送するようにして用いるのである(搬送車Aの保管場所において、荷台2上に必要機材、例えば、脱輪事故の場合に、修復するために必要な工具等の機材を積載した状態にしておき、事故の通報を受けたとき、そのままトラックに積載し、現場へ直行することができる)。
【0021】
なお、図6で示す符号20はブレーキ装置を示し、ブレーキ装置20は、荷台2の後部側の一方の車輪体3の近傍に支持させた支持体201に、連動ワイヤ202の操作によって進退する制動片203を支持させ、該制動片203が係離する凹穴(図示省略)を外車輪9の周面に列設する一方、制動片203に先端を接続した前記連動ワイヤ202の後端を脚杆1aを経て(ワイヤ202の中間部を脚杆1aに支持させて)、操作ハンドル1の把手部1bに導き、把手部1bに支持させた操作片204に接続して構成したものである。このブレーキ装置20は、操作片204を操作して支持体201に設けたばね装置に抗して制動片203を前記凹穴から離脱させることにより外車輪9の制動状態を解放し、操作片204から指先を離すことにより、ばね装置により制動片203が適宜の凹穴に係合して、外車輪9の転動を規制するようにしてある。すなわち、レール頭部Raに載車状態で、搬送車Aを放置したとき、このブレーキ装置20の作用により逸走し、無用な事故の発生を防ぐようにしてある。
【符号の説明】
【0022】
1 操作ハンドル
2 荷台
8 内車輪
8a タイヤ
9 外車輪
L 機材
R レール
Ra レール頭部
図1
図2
図3
図4
図5
図6