特許第5779038号(P5779038)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5779038揮発性有機物検出器及び揮発性有機物検出方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5779038
(24)【登録日】2015年7月17日
(45)【発行日】2015年9月16日
(54)【発明の名称】揮発性有機物検出器及び揮発性有機物検出方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 27/60 20060101AFI20150827BHJP
【FI】
   G01N27/60 D
【請求項の数】5
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2011-175078(P2011-175078)
(22)【出願日】2011年8月10日
(65)【公開番号】特開2013-36931(P2013-36931A)
(43)【公開日】2013年2月21日
【審査請求日】2014年4月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】506209422
【氏名又は名称】地方独立行政法人東京都立産業技術研究センター
(74)【代理人】
【識別番号】100145470
【弁理士】
【氏名又は名称】藤井 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100097021
【弁理士】
【氏名又は名称】藤井 紘一
(72)【発明者】
【氏名】平野 康之
(72)【発明者】
【氏名】原本 欽朗
(72)【発明者】
【氏名】吉田 裕道
【審査官】 藤田 都志行
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−256165(JP,A)
【文献】 特開2003−215103(JP,A)
【文献】 特開2002−148240(JP,A)
【文献】 米国特許第06320388(US,B1)
【文献】 堀 雅宏,「室内環境指標としての総揮発性有機化合物(TVOC)」,室内環境,室内環境学会,2010年 6月 1日,Vol. 13, No. 1,p. 9-19
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 27/60
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CiNii
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
揮発性有機物をイオン化させるために、前記揮発性有機物に対してイオン化エネルギーを供給するイオン化エネルギー供給手段と、
前記イオン化されたイオンを検出する少なくとも1対のイオン検出電極と、
前記イオン検出電極に対して所定の電圧を印加する電圧極性が反転可能な電圧印加手段と、
前記イオン検出電極を流れる電流値を測定する電流測定手段と、
前記電圧印加手段により電圧極性を反転させた際に、前記電流測定手段が測定した電圧極性反転前後の電流値に基づいた電流比から前記揮発性有機物の拡散定数を算出する拡散定数算出手段と、
を有し、
前記イオン化エネルギー供給手段は、前記イオン検出電極間であって、一方のイオン検出電極に偏倚した範囲に前記イオン化エネルギーを供給するよう設けられていることで、前記イオン検出電極間に、前記イオン化エネルギーが供給されない範囲が生じること
を特徴とする揮発性有機物検出器。
【請求項2】
前記イオン化エネルギー供給手段は、前記揮発性有機物に対してUVを照射させるUV照射手段、前記揮発性有機物に対して電離放射線を射出させる電離放射線射出手段、前記揮発性有機物に対してコロナ放電を起こさせるコロナ放電手段のうち、いずれか1つを備えていることを特徴とする請求項1記載の揮発性有機物検出器。
【請求項3】
前記拡散定数算出手段により算出された拡散定数に基づく揮発性有機物に関する情報を表示する情報表示手段と、
前記拡散定数算出手段により算出された拡散定数に基づく揮発性有機物に関する情報及び前記電流測定手段により測定された電流値に基づいて前記揮発性有機物の濃度を算出する濃度算出手段と、
前記揮発性有機物に関する情報を修正可能とし、前記揮発性有機物に関する情報が修正された場合は、前記拡散定数と所定の範囲で近似する拡散定数に基づく揮発性有機物に関する情報を前記情報表示手段に列挙表示させるとともに、当該列挙表示された情報から、任意の揮発性有機物に関する情報の選択を受け、且つ、前記濃度算出手段に対し、当該選択された揮発性有機物に関する情報と、前記電流測定手段が測定した電流値から、再度前記揮発性有機物の濃度を算出させる情報修正手段と、
を有することを特徴とする請求項1又は2記載の揮発性有機物検出器。
【請求項4】
揮発性有機物に対してイオン化エネルギーを供給し、前記揮発性有機物をイオン化させるイオン化工程と、
前記イオン化工程によりイオン化されたイオンを所定電圧が印加された少なくとも1対のイオン検出用の電極により検出するイオン検出工程と、
前記イオン検出用の電極に流れる電流値を測定する電流値測定工程と、
前記イオン検出用の電極に印加する電圧の極性を反転させることで、その反転前後の前記イオン検出用の電極に流れる電流値から電流比を求め、当該電流比から前記揮発性有機物の拡散定数を算出する拡散定数算出工程と、
を含み、
前記イオン化工程は、前記イオン検出用の電極間であって、一方のイオン検出用の電極に偏倚した範囲に前記イオン化エネルギーを供給することで、前記イオン検出用の電極間に、前記イオン化エネルギーが供給されない範囲を生じさせるとともに、前記揮発性有機物に対してイオン化エネルギーを供給すること
を特徴とする揮発性有機物検出方法。
【請求項5】
前記拡散定数算出工程において算出された拡散定数に基づく揮発性有機物に関する情報を表示させる情報表示工程と、
前記算出された拡散定数に基づく揮発性有機物に関する情報及び前記電流値測定工程により測定された電流値から前記揮発性有機物の濃度を算出する濃度算出工程と、
前記情報表示工程により表示された揮発性有機物に関する情報の修正を受け付ける修正受付工程と、
前記修正受付工程により前記揮発性有機物に関する情報が修正された場合は、修正後の揮発性有機物に関する情報及び前記電流値測定工程により測定された電流値から再度前記揮発性有機物の濃度を算出する情報修正工程と、
を含むことを特徴とする請求項4記載の揮発性有機物検出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被測定対象に含まれる揮発性有機物を検出する揮発性有機物検出器及び揮発性有機物検出方法、特に、揮発性有機物をイオン化させ、拡散定数の大きさを判別することで、被測定対象に含まれる揮発性有機物の種別を特定することが可能な揮発性有機物検出器及び揮発性有機物検出方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、測定対象物に含まれる揮発性有機物等の濃度を測定するために、揮発性有機物検出器、例えば、Photo Ionization Detector(以下、PIDとする)といったものが用いられている。このPIDの測定原理は、一対の印加電極が配置された装置内に測定対象の揮発性有機物等を誘導し、短波長のUVを照射することで、揮発性有機物等をイオン化させ、そのイオンを印加電極で捕捉することにより、濃度と相関のある検出電流を測定し、その電流値を濃度に換算することで、揮発性有機物等の濃度を測定するというものである。
【0003】
そして、PID50は、図9に一例として示すように、揮発性有機物等が導入及び排出される検出室52と、検出室52内に設けられた1対の電極54と、電極54に電圧を印加する印加回路56と、検出室54内の測定流体(FL)にUVを照射するUVランプユニット58と、電極54を流れる電流を測定する測定回路60と、更に、電流値から揮発性有機物等の濃度へと換算するための計算を行う計算装置62などから構成されている。
【0004】
この従来のPIDでは、単一成分の揮発性有機物等は、検出室52に導入されてUVランプユニット58によるUV照射後、検出室52から排出される構成となっているが、検出室52に導入された揮発性有機物等が、検出室52の側壁部に設けられたUVランプユニット58から照射されるUVによってイオン化され、このイオン又は電子が、検出室52に設けられている電圧が印加された電極54に引き寄せられて捕捉されることにより、回路内に電流が生じることになる。
【0005】
そして、この電流を測定回路60によって測定し、更に、計算装置62により、当該電流値に対して物質毎(測定対象である揮発性有機物等の物質)の係数を乗じることで、揮発性有機物等の濃度が出力されるというものである。このようなPIDは、上述の他の検出器、検出方法と同様に多くの揮発性有機物等に対して感度があるため、揮発性有機物等の測定に有効な手段であり、その装置自体も大型ではないため、簡易に揮発性有機物等を測定でき、非常に有用なものであるとされる。
【0006】
しかしながら、従来のPIDは、半導体センサ、触媒燃焼式センサなどの簡易測定方法と同様に、揮発性有機物等の濃度測定前に、計測装置に測定対象の揮発性有機物等の物質名を入力する必要があった。そこで、例えば、特許文献1には、気体放電によって発生したUVを被検出試料に照射し、被検出試料のイオン化電流を測定することにより試料成分の検出を行う光イオン化検出方法において、気体放電の放電ガスをHe、Ne、Ar、Xe又はHから選択してUVのエネルギーを変えることにより、検出成分に対して選択性をもたせることを特徴とする光イオン化検出方法が開示されている。この技術によると、測定流体に照射するUVの波長を変えることにより、被測定流体のイオン化ポテンシャルから検出成分に選択性を持たせることができるとされている。
【0007】
また、他の光イオン化検出器では、例えば、特許文献2に挙げられているような構成がある。即ち、図10に一例として示すように、LAランプ70中のガスを励起電極72により高周波励起して、発生した真空紫外線UVを測定対象気体に照射することで、空気中揮発性有機物をイオン化し、イオン電流として検出電極74により検出し、気体の濃度を算出するというものである。
【0008】
またさらに、被測定物質の拡散定数から、その被測定物質の種類特定をするという技術も知られている。例えば、揮発性有機物は標準状態において液体であることが多いが、まず、この揮発性有機物(液体)を首の長い小さな容器(拡散管)に入れ、これを一定温度・圧力の容器内に置き、拡散してくる成分を希釈ガスにより希釈し、一定の発生条件で十分長い時間をおいて、時間毎の重量変化を測定することにより、拡散速度・拡散定数を求めるというものがある。なお、拡散速度は、拡散管の首の長さ、太さ、温度により変化するものである。
【0009】
そして、例えば、特許文献3には、フィルム状高分子材料の一方から他方の側面に透過してきたガスの誘導期間からガスの拡散係数を算出するといった技術も開示されている。その他、いわゆるTOFMS(飛行時間型質量分析法)によって、揮発性有機物等の質量を得るという手法もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開平10−307123号公報
【特許文献2】特開2002−148240公報
【特許文献3】特開2001−272390公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、特許文献1に開示されている技術の構成は、複数のUV発光ガスを用いることによって照射する波長を変えるため、複雑な構成且つ、大型な装置となってしまっている。また、得られるデータは、いくつかのUVランプ固有の波長によるイオン電流の値であり、その値だけからは物質を特定できるものではない。
【0012】
また、特許文献2に開示されている技術では、検出電流から揮発性有機物等の濃度を測定することは可能ではあるが、拡散定数の算出等ができないため、測定対象の揮発性有機物等の種別を特定することはできないという問題が生じてしまっている。
【0013】
さらに、測定対象の揮発性有機物等の種別を特定可能な拡散定数を求めるため、従来の技術を用いることは有用だが、その手法は煩雑であり、使い勝手が悪く、特許文献3に開示されている技術と同様、空気中に含まれている成分が問題となっている工場等の現場において、リアルタイムに拡散定数を得ることは難しいと考えられている。また、上記TOFMSによる計測は、非常に有益な計測方法ではあるが、装置が大型になってしまうことや、真空中で計測しなくてはならないため、連続測定が不可能であること、そして、装置導入のコストがかさんでしまうため、現場での測定に不向きであると指摘されている。
【0014】
本発明が解決しようとしている課題は、上述の問題に対応するためのもので、シンプルな構成且つ小型な装置で揮発性有機物の濃度とともに、揮発性有機物の重要な性質である拡散定数の大きさを判定可能な揮発性有機物検出器及び揮発性有機物検出方法を提供することにある。また、拡散定数の大きさから揮発性有機物の種別を特定可能であることから、揮発性有機物種別に基づく揮発性有機物検出器の感度補正も行うことができる揮発性有機物検出器及び揮発性有機物検出方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上述の課題を解決するために、本発明は、以下の技術的手段を講じている。
即ち、請求項1記載の発明は、揮発性有機物をイオン化させるために、前記揮発性有機物に対してイオン化エネルギーを供給するイオン化エネルギー供給手段と、前記イオン化されたイオンを検出する少なくとも1対のイオン検出電極と、前記イオン検出電極に対して所定の電圧を印加する電圧極性が反転可能な電圧印加手段と、前記イオン検出電極を流れる電流値を測定する電流測定手段と、前記電圧印加手段により電圧極性を反転させた際に、前記電流測定手段が測定した電圧極性反転前後の電流値に基づいた電流比から前記揮発性有機物の拡散定数を算出する拡散定数算出手段とを有し、前記イオン化エネルギー供給手段は、前記イオン検出電極間であって、一方のイオン検出電極に偏倚した範囲に前記イオン化エネルギーを供給するよう設けられていることで、前記イオン検出電極間に、前記イオン化エネルギーが供給されない範囲が生じることを特徴とする揮発性有機物検出器である。
【0016】
また、請求項2記載の発明は、請求項1記載の揮発性有機物検出器であって、前記イオン化エネルギー供給手段は、前記揮発性有機物に対してUVを照射させるUV照射手段、前記揮発性有機物に対して電離放射線を射出させる電離放射線射出手段、前記揮発性有機物に対してコロナ放電を起こさせるコロナ放電手段のうち、いずれか1つを備えていることを特徴としている。
【0017】
さらに、請求項3記載の発明は、請求項1又は2記載の揮発性有機物検出器であって、前記拡散定数算出手段により算出された拡散定数に基づく揮発性有機物に関する情報を表示する情報表示手段と、前記拡散定数算出手段により算出された拡散定数に基づく揮発性有機物に関する情報及び前記電流測定手段により測定された電流値に基づいて前記揮発性有機物の濃度を算出する濃度算出手段と、前記揮発性有機物に関する情報を修正可能とし、前記揮発性有機物に関する情報が修正された場合は、前記拡散定数と所定の範囲で近似する拡散定数に基づく揮発性有機物に関する情報を前記情報表示手段に列挙表示させるとともに、当該列挙表示された情報から、任意の揮発性有機物に関する情報の選択を受け、且つ、前記濃度算出手段に対し、当該選択された揮発性有機物に関する情報と、前記電流測定手段が測定した電流値から、再度前記揮発性有機物の濃度を算出させる情報修正手段とを有することを特徴としている。
【0018】
また、請求項4記載の発明は、揮発性有機物に対してイオン化エネルギーを供給し、前記揮発性有機物をイオン化させるイオン化工程と、前記イオン化工程によりイオン化されたイオンを所定電圧が印加された少なくとも1対のイオン検出用の電極により検出するイオン検出工程と、前記イオン検出用の電極に流れる電流値を測定する電流値測定工程と、前記イオン検出用の電極に印加する電圧の極性を反転させることで、その反転前後の前記イオン検出用の電極に流れる電流値から電流比を求め、当該電流比から前記揮発性有機物の拡散定数を算出する拡散定数算出工程とを含み、前記イオン化工程は、前記イオン検出用の電極間であって、一方のイオン検出用の電極に偏倚した範囲に前記イオン化エネルギーを供給することで、前記イオン検出用の電極間に、前記イオン化エネルギーが供給されない範囲を生じさせるとともに、前記揮発性有機物に対してイオン化エネルギーを供給することを特徴とする揮発性有機物検出方法である。
【0019】
そして、請求項5記載の発明は、請求項4記載の揮発性有機物検出方法であって、前記拡散定数算出工程において算出された拡散定数に基づく揮発性有機物に関する情報を表示させる情報表示工程と、前記算出された拡散定数に基づく揮発性有機物に関する情報及び前記電流値測定工程により測定された電流値から前記揮発性有機物の濃度を算出する濃度算出工程と、前記情報表示工程により表示された揮発性有機物に関する情報の修正を受け付ける修正受付工程と、前記修正受付工程により前記揮発性有機物に関する情報が修正された場合は、修正後の揮発性有機物に関する情報及び前記電流値測定工程により測定された電流値から再度前記揮発性有機物の濃度を算出する情報修正工程とを含むことを特徴としている。
【発明の効果】
【0020】
本発明に係る揮発性有機物検出器及び揮発性有機物検出方法によれば、イオンを検出する検出電極に流れる電流値に基づいて、揮発性有機物の種類特定に有効な拡散定数の大きさを得ることができる。また、拡散定数から揮発性有機物を推定することも可能である。さらに、揮発性有機物の濃度のみならず、拡散定数を得ることができることから、例えば、工場等の換気の指針等についての情報も得ることが容易となる。さらに、揮発性有機物検出器自体が、複雑な構成を必要としないため、シンプル且つ、小型なものとして用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明に係る揮発性有機物検出器の第1の実施形態における検出器の構成の一例を示した模式図である。
図2】本発明に係る揮発有機物検出方法の第1の実施形態における検出工程を示した一例図である。
図3】本発明に係る揮発性有機物検出方法の第1の実施形態における揮発性有機物の拡散定数算出の理論を説明するための電極の配置とUV照射位置及び電圧の印加状況を示す模式図である。
図4】本発明に係る揮発性有機物検出器の第1の実施形態において揮発性有機物であるトルエン(20ppm)を検出させた際の印加電圧とイオン電流の関係の実験結果を示したグラフである。
図5】本発明に係る揮発性有機物検出器の第1の実施形態において揮発性有機物であるトルエンを検出させた際の各印加電圧における揮発性有機物(トルエン)の濃度と、イオン電流の関係の実験結果を示したグラフである。
図6】本発明に係る揮発性有機物検出器の第1の実施形態において揮発性有機物(20ppm)を検出させた際の正負イオン電流比と拡散定数の関係の実験結果を示したグラフである。
図7】本発明に係る揮発性有機物検出器の第2の実施形態における検出器の構成の一例を示した模式図である。
図8】本発明に係る揮発有機物検出方法の第2の実施形態における検出工程を示した一例図である。
図9】従来のPIDの構成の一例を示した模式図である。
図10】従来の光イオン化検出器の構成の一例を示した模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明に係る揮発性有機物検出器及び揮発性有機物検出方法の第1の実施形態について図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明に係る揮発性有機物検出器の第1の実施形態における検出器の構成の一例を示した模式図で、図2は、本発明に係る揮発請求器物検出方法の第1の実施形態における検出工程を示した一例図である。また、10は揮発性有機物検出器、12はイオン検出室、14はUVランプ、16はUVランプ発光部、18UVランプ励起回路、20はイオン検出電極、22は電圧印加手段、24は電流値計測手段、26は拡散定数算出手段を示している。
【0023】
まず、図1に示すように、揮発性有機物検出器10は、被測定対象の揮発性有機物を流入させるイオン検出室12を有しており、イオン検出室12には、その内壁に揮発性有機物に対しイオン化エネルギーを供給するUVランプ14(イオン化エネルギー供給手段)のUVランプ発光部16が接続されている。また、UVランプ14には、UVランプを励起するUVランプ励起回路18が接続されている。なお、図中、被測定対象の揮発性有機物は、図の表現上、イオン検出室12を左から右へと流れるようになっているが、実際は、図中、奥側から手前側へと流入させるよう構成されている。
【0024】
また、イオン検出室12内には、イオン化エネルギーによってイオン化された揮発性有機物のイオンを捕捉するためのイオン検出電極20が、1対設けられている。なお、イオン検出電極20としては、SUS(ステンレス)電極、金電極、白金電極、銅電極などを用いることができるが、銅は反応性が良いため、電極表面が変質しやすいことから、SUS電極、金電極、白金電極を用いることが好ましい。
【0025】
本実施形態では、UVランプ14及びUVランプ発光部16は、図1に示すように、イオン検出電極20の電極間であって、一方のイオン検出電極20に偏倚した範囲にイオン化エネルギーを供給する位置に設けられていることで、イオン検出電極20の電極間にイオン化エネルギーが供給されない範囲が生じるように構成されている。なお、後述の実験においては、イオン検出室12内のイオン検出電極20は、縦の長さ16mm、横の長さ6mm、そして厚さを1mmのものとし、電極間の距離を8.5mmとなる揮発性有機物検出器10を用いている。
【0026】
さらに、UVランプ14(ヘレウス株式会社製、PKR106、外径12.6mm、10.6eV)のUVランプ発光部16は、円形状を呈しているため、UVランプ発光部16の形状が、電極方向3mm、それに直交する方向(揮発性有機物が流入してくる方向)8mmの長方形になるように、遮光カバー(ジーエルサイエンス社製)を取り付け、イオン化エネルギーが供給されない範囲を電極方向で5.5mm程度のものとしている。なお、上記電極間の距離を8.5mm以上とし、さらに、イオン化エネルギーが供給されない範囲を電極方向で5.5mm以上となるように構成した揮発性有機物検出器10を用いても良い(電極間の距離を大きくした場合は、それに伴いイオン化エネルギーが供給されない範囲も大きくすることが好ましい)。
【0027】
続いて、イオン検出電極20には、イオン検出電極20に対して、所定の電圧を印加することができる電圧印加手段22が接続されており、また、同様に、電流値計測手段24も接続され、電圧印加手段22によって電圧が印加されることによりイオン検出電極20に流れる電流の値を測定することができるように構成されている。
【0028】
電圧印加手段22は、電圧極性を反転させることができるよう構成されており、電圧極性の反転前後に電流計測手段24によって計測されたイオン検出電極20を流れる電流値の電流比から、被測定対象の揮発性有機物の拡散定数を算出することができる拡散定数算出手段26が、電流値測定手段24に接続されている。そして、算出された拡散定数により特定された揮発性有機物の種別は、拡散定数算出手段26に接続される表示手段(図示せず)によって表示させるようにしておく。
【0029】
また、電流値計測手段24によって測定されるイオン検出電極20に流れる電流値に基づいて被測定対象である揮発性有機物の濃度も算出することができるようにもなっている。その算出方法としては、例えば、トルエンであれば、予め実験によって得た図4及び5に一例として示されるデータを記憶装置(図示せず)に蓄積させておき、そのデータを用いて算出するというものである。
【0030】
さらに、例えば、被測定対象のガスに複数種別の揮発性有機物が含まれている場合、算出される拡散定数は、その複数種別の揮発性有機物の平均値が算出されるが、表示装置にこの平均値を表示させれば、換気の指針として有用なものとなる。また、算出された揮発性有機物の濃度とともに表示させても良い。
【0031】
なお、本実施形態では、揮発性有機物に対するイオン化エネルギーの供給は、UVランプによるものとしているが、これは、揮発性有機物に対し電離放射線を照射する構成としても良いし、揮発性有機物に対しコロナ放電を起こさせる構成としても良い。
【0032】
次に、本実施形態における揮発性有機物検出方法の流れについて説明する。図2に示すように、まず、イオン検出室内に流入させた被測定対象である揮発性有機物に対し、UVランプからUVを照射し(イオン化エネルギー供給)、揮発性有機物をイオン化させる。
【0033】
続いて、イオン化されたイオンをそれぞれ所定の電圧が印加されたイオン検出用の電極により捕捉させる。そして、イオン又は電子がイオン検出用の電極に捕捉されることにより、イオン検出用の電極に電流が流れるため、その電流の値を電流値測定器によって測定する。
【0034】
次に、一旦、電流値測定器によって電流の値を測定した後、イオン検出用の電極に印加する電圧の極性を反転させる。そうすると、UV照射によってイオン化されたイオンが、他方の電極へと移動し、再度捕捉されることになる。そうすると、イオン検出用の電極に電流が流れるので、この電流の値を再度電流値測定器によって測定する。
【0035】
なお、UVを照射する範囲は、イオン検出用の電極間であって、一方のイオン検出用の電極へ偏倚した範囲となっているため、反転前後に測定される電流値は、それぞれ異なる値となる。そして、拡散定数を算出する計算装置が、測定された反転前後の電流値から電流比を求め、その電流比から被測定対象である揮発性有機物の拡散定数を算出し、この算出された拡散定数から揮発性有機物の種別を特定することができるようになっている。また、算出された拡散定数により特定された揮発性有機物の種別は、計算装置に設けられている表示手段によって表示させるようにしておく。
【0036】
また、電流値測定器によって測定される電流値に基づいて、被測定対象である揮発性有機物の濃度も算出することができるようになっており、その算出方法は、上述の通り、例えば、トルエンであれば、予め実験によって得た図4及び5に一例として示されるデータを記憶装置に蓄積させておき、そのデータを用いて算出するというものである。さらに、例えば、被測定対象のガスに複数種別の揮発性有機物が含まれている場合、算出される拡散定数は、その複数種別の揮発性有機物の平均値であるが、この平均値を表示手段に表示させれば、工場等の換気の指針として有用な情報を得ることが可能となる。
【0037】
(揮発性有機物検出理論)
以下、上記の揮発性有機物検出器の構成及び揮発性有機物検出方法によって、被測定対象である揮発性有機物の拡散定数が算出される理論についてより詳細に説明する。
【0038】
揮発性有機物に対してUVを照射することでイオン化エネルギーhνを供給すると、イオンの発生とその再結合が発生する。大気中での反応は、次式にて表すことが可能である。
【0039】
【数1】
【0040】
例えば、クリプトンの放電による発光(10.6eV、波長117nm)を揮発性有機物であるトルエンに照射すると、トルエンは、電子を放出して陽イオンになる。なお、電子が酸素と衝突するまでの平均自由工程は、約2μmである。UVの照射領域では、陽イオン、電子及び陰イオンがオーバーラップして存在しているが、電子は酸素に吸着され、電界によって移動するイオンについては、k4≫k3が成立している。大気中での光イオン化の場合、揮発性有機物が陽イオン、酸素が陰イオンになり、電界をかけると、それぞれのイオンがドリフトすることになる。
【0041】
次に、図3を参照しながら、被測定対象である揮発性有機物の拡散定数を算出する理論について説明する。まず、一般的に、イオン密度n、移動度μのイオンが、断面積Sの空間を距離lだけ移動するときの抵抗値Rは、次式で表される。
【0042】
【数2】
【0043】
ここで、陽イオンの移動度をμ、移動距離をl、陰イオンの移動度をμ、移動距離をlとしたとき、イオン密度nと、断面積Sは同じ値とすると、両者を直列に接続した場合の抵抗値R±は、次式で表される。
【0044】
【数3】
【0045】
電極に印加する電圧の極性を反転させると、図3に示した状態1の場合は、l=d、l=d、状態2の場合は、l=d、l=dとなる。そして、厚さdのUV照射領域の抵抗値をRとすると、状態1の抵抗値RT1及び状態2の抵抗値RT2は、それぞれ次式のようになる。
【0046】
【数4】
【0047】
被測定対象が、例えば芳香族の場合は、陽イオンの移動度μは、陰イオンである酸素イオンの移動度μより小さく、図3に示すようにd>dとすると、RT1<RT2となり、その値は、移動度の大きさ、電極の配置、UV照射位置などから決められることになる。従って、電極に与える電位を変えたときの電極に流れる電流の変化から、イオン化した物質の移動度の大きさを判別することが可能である。そして、陰イオンである酸素イオンの移動度μは、その大きさが分かっているため、陽イオンである揮発性有機物のイオンの移動度μが判別可能となる。
【0048】
また、図3における電極1をUV照射領域内におき、Rを0とした場合は、電極2に−Vを印加して主に陽イオンの移動が律速となる電流Iと、電極2に+Vを印加して主に陰イオンの移動が律速になる電流Iとの比から、陰イオンの移動度に対する陽イオンの移動度の大きさは、次式で近似することができる。なお、空気中において、陰イオンは酸素分子であるため、既知の1つの揮発性有機物を検知すれば、次式の定数が得られることになる。
【0049】
【数5】
【0050】
さらに、気体中のイオンに関しては、拡散定数Dと、移動度μの間には、次式の関係が成り立っているため、つまり、揮発性有機物のイオンの移動度μの大きさが判別できれば、被測定対象である揮発性有機物の拡散定数の値を算出でき、そして、算出された拡散定数から被測定対象の揮発性有機物の種別が特定されることになる。
【0051】
【数6】
【0052】
(実験1)
次に、本発明に係る揮発性有機物検出器の第1の実施形態において揮発性有機物であるトルエン(20ppm)を検出させた際の印加電圧とイオン電流の関係を明らかにするために行った実験について説明する。図4は、本発明に係る揮発性有機物検出器の第1の実施形態において揮発性有機物であるトルエン(20ppm)を用いた際の印加電圧とイオン電流の関係の実験結果を示したグラフである。
【0053】
本実験では、イオン検出用の電極を固定したイオン検出室の内壁にUVランプ発光面を接続し、測定試料は、校正用ガス調整装置(株式会社ガステック製、PD−1B−2)によって調整したトルエン20ppm単一のガスを約45mm/sの流速でイオン検出室内に流入させるというものである。なお、イオン検出用の電極に流れる電流を計測する電流計は、日置電機株式会社製のDSM−8104を用い、また、印加電圧は、その値を変更することができる電圧原を用いた。
【0054】
図4のグラフに示すように、被測定対象がトルエン20ppmの場合、印加電圧が、10Vであれば、イオン電流は、1.E−09A近辺、100Vであれば、1.E−08A近辺、1000Vであれば、1.E−07A近辺の値が計測されていることが分かる。この実験によって得られたデータを記憶装置等に蓄積させておくことで、計測される電流値から揮発性有機物の濃度を算出できるようになる。
【0055】
(実験2)
続いて、本発明に係る揮発性有機物検出器の第1の実施形態において揮発性有機物であるトルエンを検出させた際の各印加電圧におけるトルエンの濃度と、イオン電流の関係を明らかにするための実験について説明する。図5は、本発明に係る揮発性有機物検出器の第1の実施形態において揮発性有機物であるトルエンを検出させた際の各印加電圧における揮発性有機物(トルエン)の濃度と、イオン電流の関係の実験結果を示したグラフである。
【0056】
本実験では、イオン検出用の電極を固定したイオン検出室の内壁にUVランプ発光面を接続し、測定試料は、校正用ガス調整装置(株式会社ガステック製、PD−1B−2)によって調整したトルエンを0〜150ppmの間で任意の濃度の単一のガスを約45mm/sの流速でイオン検出室内に流入させるというものである。なお、イオン検出用の電極に流れる電流を計測する電流計は、日置電機株式会社製のDSM−8104を用い、また、印加電圧は、その値を変更することができる電圧原を用い、それぞれ、1V、10V、100Vの電圧を印加した。
【0057】
図5のグラフに示すように、印加電圧が1V、10V、100Vともに、トルエンの濃度が、20ppm近辺までは、イオン電流の値の増加率が高まり、その後、緩やかな増加を見せていることが分かる。そして、この実験によって得られたデータを記憶装置等に蓄積させておくことで、計測される電流値から揮発性有機物の濃度を算出できるようになる。
【0058】
(実験3)
次に、本発明に係る揮発性有機物検出器の第1の実施形態において濃度20ppmの揮発性有機物(p−キシレン、トルエン、ベンゼン)それぞれを単一ガスとして検出させた際の正負イオン電流比と拡散定数の関係を明らかにするための実験について説明する。図6は、本発明に係る揮発性有機物検出器の第1の実施形態において揮発性有機物(20ppm)を検出させた際の正負イオン電流比(印加電圧±100Vによる)と拡散定数の関係の実験結果を示したグラフである。
【0059】
まず、P−キシレンを検出させた場合、イオン電流比は、およそ0.88近辺の値を算出することができる。そして、P−キシレンの拡散定数は0.07近辺であるので対応する点をプロットする。続いて、トルエンを検出させた場合、イオン電流比は、およそ0.92近辺の値を算出することができる。そして、トルエンの拡散定数は0.085近辺であるので対応する点をプロットする。
【0060】
さらに、ベンゼンを検出させた場合、イオン電流比は、およそ0.95近辺の値を算出することができる。そして、ベンゼンの拡散定数は0.09近辺であるので対応する点をプロットする。これらプロット同士を結ぶことにより、グラフ中に示す一つの関数が導き出され、これにより、濃度が20ppmの揮発性有機物を検出した際には、イオン電流比が算出されれば、その揮発性有機物の拡散定数がある程度導き出せ、つまり、揮発性有機物の種別の特定に繋がることになる。なお、他の濃度による実験を行い、それらのデータも蓄積させておけば、より精度の高い揮発性有機物の検出ができるようになる。
【0061】
続いて、本発明に係る揮発性有機物検出器及び揮発性有機物検出方法の第2の実施形態について図面を参照しながら説明する。
図7は、本発明に係る揮発性有機物検出器の第2の実施形態における検出器の構成の一例を示した模式図で、図8は、本発明に係る揮発有機物検出方法の第2の実施形態における検出工程を示した一例図である。また、10は揮発性有機物検出器、12はイオン検出室、14はUVランプ、16はUVランプ発光部、18UVランプ励起回路、20はイオン検出電極、22は電圧印加手段、24は電流値計測手段、26は拡散定数算出手段、28は情報表示手段、30は濃度算出手段、32は情報修正手段を示している。
【0062】
まず、図7に示すように、揮発性有機物検出器10は、被測定対象の揮発性有機物を流入させるイオン検出室12を有しており、イオン検出室12には、その内壁に揮発性有機物に対しイオン化エネルギーを供給するUVランプ14のUVランプ発光部16が接続されている。また、UVランプ14には、UVランプを励起するUVランプ励起回路18が接続されている。なお、図中、被測定対象の揮発性有機物は、図の表現上、イオン検出室12を左から右へと流れるようになっているが、実際は、図中、奥側から手前側へと流入させるよう構成されている。
【0063】
また、イオン検出室12内には、イオン化エネルギーによってイオン化された揮発性有機物のイオンを捕捉するためのイオン検出電極20が、一対設けられている。なお、イオン検出電極20としては、SUS(ステンレス)電極、金電極、白金電極、銅電極などを用いることができるが、銅は反応性が良いため、電極表面が変質しやすいことから、SUS電極、金電極、白金電極を用いることが好ましい。
【0064】
本実施形態では、UVランプ発光部16は、図7に示すように、イオン検出電極20の電極間であって、一方のイオン検出電極20に偏倚した範囲にイオン化エネルギーを供給する位置に設けられていることで、イオン検出電極20の電極間にイオン化エネルギーが供給されない範囲が生じるように構成されている。なお、揮発性有機物の検出においては、第1の実施形態と同様、イオン検出室12内のイオン検出電極20は、縦の長さ16mm、横の長さ6mm、そして厚さを1mmのものとし、電極間の距離を8.5mmとなる揮発性有機物検出器10を用いる。
【0065】
さらに、UVランプ14(ヘレウス株式会社製、PKR106、外径12.6mm、10.6eV)のUVランプ発光部16は、円形状を呈しているため、UVランプ発光部16の形状が、電極方向3mm、それに直交する方向(揮発性有機物が流入してくる方向)8mmの長方形になるように、遮光カバー(ジーエルサイエンス社製)を取り付け、イオン化エネルギーが供給されない範囲は、電極方向で5.5mm程度のものとする。なお、上記電極間の距離を8.5mm以上とし、さらに、イオン化エネルギーが供給されない範囲を電極方向で5.5mm以上となるように構成した揮発性有機物検出器10を用いても良い(電極間の距離を大きくした場合は、それに伴いイオン化エネルギーが供給されない範囲も大きくすることが好ましい)。
【0066】
続いて、イオン検出電極20には、イオン検出電極20に対して、所定の電圧を印加することができる電圧印加手段22が接続されており、また、同様に、電流値計測手段24も接続され、電圧印加手段22によって電圧が印加されることによりイオン検出電極20に流れる電流の値を測定することができるように構成されている。
【0067】
なお、電圧印加手段22は、電圧極性を反転させることができるよう構成されており、電圧極性の反転前後に電流計測手段24によって計測されたイオン検出電極20を流れる電流値の電流比から、被測定対象の揮発性有機物の拡散定数を算出することができる拡散定数算出手段26が、電流値測定手段24とともにイオン検出電極20に接続されている。
【0068】
また、図に示すように、拡散定数算出手段26には、情報表示手段28、濃度算出手段30,情報修正手段32が設けられていて、まず、情報表示手段28に、拡散定数算出手段26により特定された揮発性有機物の情報が表示される。そして、濃度算出手段30は、拡散定数算出手段26により特定された揮発性有機物の情報及び、電流値測定手段24により測定された電流値から、揮発性有機物の濃度を算出することができるようになっている。
【0069】
さらに、情報表示手段28に表示された揮発性有機物の情報が間違っている場合は、その情報を情報修正手段32によって修正することができるようになっている。情報修正手段32によって揮発性有機物の情報が修正される場合(例えば、「NO」を選択)には、算出された拡散定数と所定の範囲で近似する拡散定数に基づく揮発性有機物に関する情報が情報表示手段28に列挙表示され、さらに、列挙表示された情報から、任意の揮発性有機物に関する情報の選択を受け付ける構成が採られている。
【0070】
そして、揮発性有機物に関する情報が選択されると、情報修正手段32が、濃度算出手段30に対し、この選択された揮発性有機物に関する情報に基づいて、再度揮発性有機物の濃度を算出させるようになっている。このような構成になっていることから、揮発性有機物検出方法の感度補正をも行うことができるようになっている。なお、予め揮発性有機物の濃度とイオン電流が関連付けられているデータを記憶させておくことにより揮発性有機物の濃度を算出するようにしても良いし、所定の係数を乗じて濃度を算出するようにしても良い。
【0071】
また、例えば、被測定対象のガスが複数種別の揮発性有機物からなると、算出される拡散定数は、その複数種別の揮発性有機物の平均値であるため、表示装置に表示される揮発有機物に関する情報が間違っている場合、換気の必要性を察知することができるといった有用なものにもなる。
【0072】
なお、本実施形態では、揮発性有機物に対するイオン化エネルギーの供給は、UVランプによるものとしているが、これは、揮発性有機物に対し電離放射線を照射する構成としても良いし、揮発性有機物に対しコロナ放電を起こさせる構成としても良い。
【0073】
次に、本実施形態における揮発性有機物検出方法の流れについて説明する。図8に示すように、まず、イオン検出室内に流入させた被測定対象である揮発性有機物に対し、UVランプからUVを照射し(イオン化エネルギー供給)、揮発性有機物をイオン化させる。
【0074】
続いて、イオン化されたイオンをそれぞれ所定の電圧が印加されたイオン検出用の電極により捕捉させる。そして、イオン又は電子がイオン検出用の電極に捕捉されることにより、イオン検出用の電極に電流が流れるため、その電流の値を電流値測定器によって測定する。
【0075】
次に、一旦、電流値測定器によって電流の値を測定した後、イオン検出用の電極に印加する電圧の極性を反転させる。そうすると、UV照射によってイオン化されたイオンが、反対側のイオン検出用の電極へと移動し、再度捕捉されることになる。そうすると、イオン検出用の電極に電流が流れるので、この電流の値を再度電流値測定器によって測定する。
【0076】
なお、UVを照射する範囲は、イオン検出用の電極間であって、一方のイオン検出用の電極へ偏倚した範囲となっているため、反転前後に測定される電流値は、それぞれ異なる値となる。そして、計算装置が、測定された反転前後の電流値から電流比を求め、その電流比から被測定対象である揮発性有機物の拡散定数を算出し、算出された拡散定数から揮発性有機物の種別を特定することができるようになっている。
【0077】
続いて、拡散定数から特定された揮発性有機物の種別(揮発性有機物の情報)が、表示装置に表示される。従って、測定を行うユーザーは、測定された揮発性有機物が何かを表示装置から読みとることができるようになっている。表示装置に表示されている揮発性有機物の種別が、想定していた種別と同じである場合には、ユーザーが、例えば「YES」を選択することで、算出された揮発性有機物の濃度がさらに表示される。なお、濃度の算出方法は、例えば、トルエンであれば、予め実験によって得た図4及び5に一例として示されるデータを記憶装置に蓄積させておき、そのデータを用いて算出するものである。
【0078】
また、表示装置に表示されている揮発性有機物の種別が、想定していた種別と異なる場合には、ユーザーは、計算装置にある揮発性有機物の種別を修正する手段により、表示されている揮発性有機物の種別を想定していた揮発性有機物の種別へと修正することができる。
【0079】
ユーザーによって揮発性有機物の種別が修正される場合(例えば、「NO」を選択)には、表示装置に、算出された拡散定数と所定の範囲で近似する拡散定数に基づく揮発性有機物の種別が列挙表示され、その中から、任意の揮発性有機物の種別を選択できるようになっている。そして、選択された揮発性有機物の種別と、算出された電流値に基づいて、再度揮発性有機物の濃度が算出され、表示装置に表示されるようになっている。このような流れを採ることにより、感度の低い物質、即ち、イオン化エネルギーの高い物質を検出した場合には、揮発性有機物検出器の感度補正を行うことができるわけである。
【産業上の利用可能性】
【0080】
本発明に係る揮発性有機物検出器及び揮発性有機物検出方法によれば、シンプルな構成且つ小型な装置で揮発性有機物の濃度とともに、揮発性有機物の重要な性質である拡散定数の大きさを判定可能であるため、多様な場面で行う必要がある揮発性有機物の検出に有用である。また、拡散定数の大きさから揮発性有機物の種別を特定可能であることから、揮発性有機物の種別に基づく揮発性有機物検出器の感度補正も行うことができるため、高い検出精度を求められる場面において、極めて有用なものとなる。
【符号の説明】
【0081】
10 揮発性有機物検出器
12 イオン検出室
14 UVランプ
16 UVランプ発光部
18 UVランプ励起回路
20 イオン検出電極
22 電圧印加手段
24 電流値計測手段
26 拡散定数算出手段
28 情報表示手段
30 濃度算出手段
32 情報修正手段
図1
図2
図7
図8
図9
図10
図3
図4
図5
図6