特許第5779074号(P5779074)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 三星ダイヤモンド工業株式会社の特許一覧

<>
  • 特許5779074-強化ガラス基板のスクライブ方法 図000002
  • 特許5779074-強化ガラス基板のスクライブ方法 図000003
  • 特許5779074-強化ガラス基板のスクライブ方法 図000004
  • 特許5779074-強化ガラス基板のスクライブ方法 図000005
  • 特許5779074-強化ガラス基板のスクライブ方法 図000006
  • 特許5779074-強化ガラス基板のスクライブ方法 図000007
  • 特許5779074-強化ガラス基板のスクライブ方法 図000008
  • 特許5779074-強化ガラス基板のスクライブ方法 図000009
  • 特許5779074-強化ガラス基板のスクライブ方法 図000010
  • 特許5779074-強化ガラス基板のスクライブ方法 図000011
  • 特許5779074-強化ガラス基板のスクライブ方法 図000012
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5779074
(24)【登録日】2015年7月17日
(45)【発行日】2015年9月16日
(54)【発明の名称】強化ガラス基板のスクライブ方法
(51)【国際特許分類】
   C03B 33/023 20060101AFI20150827BHJP
   B28D 5/00 20060101ALI20150827BHJP
【FI】
   C03B33/023
   B28D5/00 Z
【請求項の数】4
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2011-241128(P2011-241128)
(22)【出願日】2011年11月2日
(65)【公開番号】特開2013-95642(P2013-95642A)
(43)【公開日】2013年5月20日
【審査請求日】2014年5月2日
(73)【特許権者】
【識別番号】390000608
【氏名又は名称】三星ダイヤモンド工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114030
【弁理士】
【氏名又は名称】鹿島 義雄
(72)【発明者】
【氏名】高松 生芳
(72)【発明者】
【氏名】辜 志弘
(72)【発明者】
【氏名】森 亮
【審査官】 吉川 潤
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2011/116165(WO,A1)
【文献】 国際公開第2011/066337(WO,A1)
【文献】 特開2010−089144(JP,A)
【文献】 特開2011−251879(JP,A)
【文献】 特開2013−060331(JP,A)
【文献】 特開2013−001638(JP,A)
【文献】 特開2002−338285(JP,A)
【文献】 特開平06−157060(JP,A)
【文献】 特開2012−171810(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03B 33/023
B28D 5/00
B26F 1/00
B23K 26/00
C03B 33/09
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板表面に圧縮応力層が形成されている強化ガラス基板に対し、スクライブラインを形成する強化ガラス基板のスクライブ方法であって、
(a)前記基板の一端縁より内側に入り込んだ位置で、点状の尖端または線状の尖端を有するけがき部材を、前記基板に対し上方から下降するようにして衝突させて衝突痕の深さが圧縮応力層の厚さより小さくなるように衝突痕を形成することで基板表面の圧縮応力層を剥離し、当該衝突痕をスクライブの起点となるトリガ溝として形成する剥離工程と、
(b)カッターホイールを前記トリガ溝に当接して圧接転動させることによりスクライブラインを形成するスクライブ工程とからなる強化ガラス基板のスクライブ方法。
【請求項2】
前記けがき部材は、先端が尖ったポインタ、または、先端に直刃が形成された固定刃である請求項1に記載の強化ガラス基板のスクライブ方法。
【請求項3】
前記けがき部材がカッターホイールである請求項1に記載の強化ガラス基板のスクライブ方法。
【請求項4】
前記剥離工程において、前記けがき部材を前記衝突痕から水平に移動させることにより1mm〜3mmの長さのトリガ溝に拡大する請求項1または2に記載の強化ガラス基板のスクライブ方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、強化ガラス製のガラス基板のスクライブ方法に関する。
ここで、「強化ガラス」とは、製造工程中におけるイオン交換による化学的処理により、ガラス基板の基板表面層(基板表面から深さが5μm〜50μm程度)に圧縮応力が残留する圧縮応力層が形成され、基板内部に引張応力が残留するように製造されたガラスをいう。
強化ガラスの特徴は、圧縮応力層の影響で外力に対し割れにくい性質を有する反面、一旦、基板表面に亀裂が生じて残留引張応力が存在する基板内部まで進むと、今度は逆に亀裂が深く浸透しやすくなる性質を有している。
【背景技術】
【0002】
一般にガラス基板を分断する加工では、まず基板表面に有限深さのスクライブラインを形成し、その後、基板の裏側からスクライブラインに沿ってブレイクバーやブレイクローラで押圧することによりブレイクする方法が採用されている。
前者のスクライブラインを形成する工程では、基板表面に対して円盤状のカッターホイール(スクライビングホイールともいう)を圧接転動させることによりスクライブする方法が知られており、例えば特許文献1などで開示されている。
【0003】
図10は、ガラス製の基板M(マザー基板)を、それぞれが製品となる単位基板に分断するときに行われるクロススクライブ加工を示している。まず基板Mの表面に対してカッターホイールでX方向のスクライブラインSを形成し、次いで、X方向と交差するY方向のスクライブラインSを形成する。このようにX−Y方向に交差した複数のスクライブラインを形成したあと、基板Mはブレイク装置に送られ、各スクライブラインに沿って裏面側から撓ませることにより、単位基板に分断される。
【0004】
ところで、ガラス基板をカッターホイールでスクライブする方法には、「外切り」と「内切り」とがある。基板の種類や用途によって、外切りと内切りとを選択的に使い分けることができるようにしたスクライブ装置が開示されている(特許文献2参照)。
【0005】
前者の外切りは、図11(a)に示すように、カッターホイールの最下端を基板Mの表面(上面)より僅かに下方まで降下した状態で、基板Mの片側端部の外側位置(スクライブ開始位置P1)にセットする。そしてセットした位置から水平移動させ、基板M端部に衝突させて乗り上げ、さらに所定のスクライブ圧で押圧しながら、カッターホイールを水平移動させるようにしてスクライブを行う。
【0006】
外切りでは、基板M端部でカッターホイールがスリップする問題は発生せず、形成されるスクライブラインは基板Mの端部まで達しているため、次工程でのブレイクが容易かつ正確に行える。その一方で、刃先が基板M端部に衝突するので、基板M端部にカケが生じ、基板M内部の引張応力の影響で端部からフルカットされてしまうおそれがあり、また、カッターホイールもエッジ部分との衝突で消耗しやすい。
【0007】
後者の内切りは、図11(b)に示すように、基板Mの端縁から2mm〜10mm程度内側(スクライブ開始位置Q1)にてカッターホイールを上方から下降させて基板Mに所定のスクライブ圧で当接させ、押圧しながらカッターホイールを水平移動させるようにしてスクライブを行う。
【0008】
内切りでは、カッターホイールが基板M端部のエッジ部分と衝突するようなことがないため、基板M端部にカケが生じるおそれはなく、刃先の消耗についても外切りに比べて抑えることができる。しかし、基板M端部からスクライブ開始位置Q1までは、スクライブラインが形成されていないため外切りに比べるとブレイクが難しくなる傾向がある。また、カッターホイールが基板Mに当接した状態から水平方向に移動させるときに刃先の食い込みが悪くスリップしてしまい、スクライブできない場合がある。
このように、外切りと内切りとは、それぞれ長所短所を有しているため、基板の種類や用途によって、外切りと内切りとを使い分けている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特許第3074143号公報
【特許文献2】特開2009−208237号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
近年、携帯電話等のカバーガラス等に使用されるガラス製品のなかには、いわゆる強化ガラス(化学強化ガラスともいう)と呼ばれるガラスの使用が望まれている。上述したように、強化ガラスは、基板表面層に圧縮応力が残留するようにして製造されており、これによりガラスの板厚が薄いにもかかわらず、割れにくいガラスが得られる。
【0011】
したがって強化ガラスを用いると、薄くて軽く、しかも丈夫なカバーガラスが製造できる点で優れている。その一方で、カバーガラスにするには、大面積のマザー基板から所望の大きさ、所望の形状の単位製品に切り出す加工が必要になる。
【0012】
ところが、強化ガラスに対し、外切りでスクライブラインを形成した場合、基板端部で刃先が衝突する際に表面圧縮応力層より深くスクライブされると、基板内部の残留引張応力の影響を受け、一挙に完全分断されてしまう不具合が発生してしまうおそれがある。
そのため、強化ガラスでは、外切りよりも内切りでのスクライブの方が好ましいと考えられる。
【0013】
しかしながら、内切りでスクライブしようとしても、刃先を当接させたときに、強化ガラスであるが故に、基板表面層の残留圧縮応力の影響で、刃先が基板表面に食い込みにくく、基板への刃先のかかりが非常に悪いため、スリップが生じてしまい、スクライブすることができなかった。そのため、かえってスクライブ加工が困難となるという問題が生じることになった。
【0014】
このように、強化ガラスに対しては、従来から使用されているソーダガラス基板に対するスクライブ加工とは異なり、外切りによっても、また内切りによっても、うまくスクライブラインを形成することが困難であった。この傾向は、基板表面の圧縮応力層が厚くて残留応力が大きい基板ほど顕著になる。
【0015】
そこで、本発明は、加工困難な強化ガラス製のガラス基板であっても、内切りで確実にスクライブラインを形成することができるスクライブ方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記目的を達成するために本発明では次のような技術的手段を講じた。
すなわち、本発明のスクライブ方法では、基板表面に圧縮応力層が形成された強化ガラス基板に対し、スクライブラインを形成する強化ガラス基板のスクライブ方法であって、
(a)基板の一端縁より内側に入り込んだ位置で、点状の尖端または線状の尖端を有するけがき部材を、基板に対し上方から下降するようにして衝突させて衝突痕の深さが圧縮応力層の厚さより小さくなるように衝突痕を形成することで基板表面の圧縮応力層を剥離し、当該衝突痕をスクライブの起点となるトリガ溝として形成する剥離工程と、
(b)カッターホイールをトリガ溝に当接して圧接転動させることによりスクライブラインを形成するスクライブ工程とからなるようにしている。
【0017】
本発明のスクライブ方法によれば、基板の一端縁より内側に入り込んだ位置から「内切り」を行う際に、まず、基板に対し上方からけがき部材を下降するようにして衝突させて衝突痕を形成する。使用するけがき部材の当接部分が点状の尖端であれば、点状の微小な衝突痕が形成され、線状の尖端であれば、線状の微小な衝突痕が形成される。衝突時に表面に加える圧力は、あらかじめ同じ材質のダミー基板で最適化することにより、衝突時の圧力が強すぎていきなりブレイクされてしまわないように、また、弱すぎて衝突痕が形成できなくならないようにすることで、衝突痕を確実に形成することができる。
すなわち、(a)の剥離工程では、衝突痕の深さが圧縮応力層の厚さより小さくなるように、けがき部材を衝突させる。また、圧縮応力層の厚さ(通常5μmから50μm程度)の情報は、あらかじめ基板メーカから入手できるので、予備実験で衝突圧と衝突痕の深さとの関係を求め、圧縮応力層の厚さ情報を参照して、適切な衝突圧に調整することで、圧縮応力層の厚さよりも衝突痕が浅くなるようにけがき部材を衝突させる。これにより、圧縮応力層だけを剥離させることができ、誤ってブレイクしてしまう不具合の発生を確実に防止できる。
そして、衝突痕の形成により、基板表面の圧縮応力層を剥離することができるので、衝突痕の部分をスクライブの起点であるトリガ溝とする。そして、形成されたトリガ溝にカッターホイールを当接させて所定のスクライブ圧をかけながら転動させることにより、スリップすることなくスクライブラインを形成することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、これまでカッターホイールでは内切りでのスクライブラインの形成が困難であった強化ガラスを、尖端がスリップすることもなく、基板がブレイクされてしまうこともなく、カッターホイールを用いて有限深さのスクライブラインを形成することができるようになる。
【0019】
ここで、けがき部材は先端が尖ったポインタ(例えばダイヤポインタ、超硬合金製ポインタなど)、または、先端に直刃が形成された固定刃(例えば超硬合金製の直刃カッタなど)を用いてもよいし、カッターホイールのような回転刃であってもよい。ポインタでは点状の衝突痕を形成することができ、固定刃であれば刃先長さに対応した線状の衝突痕を形成することができる。また、カッターホイールでは、ホイールの稜線に沿った線状の衝突痕を形成することができる。なおカッターホイールの場合は、次工程のスクライブに用いるカッターホイールと兼用することもできる。
【0020】
剥離工程において、けがき部材を衝突痕から水平に移動させることにより1mm〜3mmの長さのトリガ溝に拡張、拡大するようにしてもよい
【0021】
けがき部材を衝突痕から水平に移動させることによりトリガ溝を拡張することができ、これにより位置合わせが容易になるので、次工程でのスクライブの際のトリガ溝としての使用が容易になる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明のスクライブ方法に用いるスクライブ装置の一実施例を示す正面図。
図2図1のダイヤポインタの一例を示す拡大図。
図3図1のカッターホイールを示す正面図および左側面図。
図4図1のスクライブ装置によるスクライブ方法の手順を示す平面図。
図5】本発明のスクライブ方法に用いるスクライブ装置の他の一例を示す正面図。
図6図5における固定刃を示す図。
図7図5のスクライブ装置によるスクライブ方法の手順を示す平面図。
図8】本発明のスクライブ方法に用いるスクライブ装置のさらに他の一例を示す正面図。
図9図8のスクライブ装置によるスクライブ方法の手順を示す平面図。
図10】マザー基板のクロススクライブ加工を示す図。
図11】カッターホイールによる従来のスクライブ方法を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0023】
(実施形態1)
以下において本発明に係るスクライブ方法の詳細を、図面に基づいて詳細に説明する。
図1は、本発明方法を実施する際に用いるスクライブ装置の一例を示す正面図である。スクライブ装置SC1では、けがき部材としてダイヤポインタを用いる。
スクライブ装置SC1は、強化ガラス基板Mを上面に保持するとともに、水平方向の回転機構を有するテーブル4と、このテーブル4を一方向(紙面に垂直方向)に移動可能に保持するレール5と、テーブル4の上方でレール5と直交する方向(図1の左右方向)に橋架されたガイドバー6とを備えている。
このガイドバー6には、水平方向に移動可能に設けられた2基のスクライブヘッド7a、7bと、スクライブヘッド7a、7bの下端に昇降可能に装着されたホルダ8a、8bとを備えている。このうち、一方のホルダ8aには衝突痕を形成するためのけがき部材であるダイヤポインタ11が取り付けられ、他方のホルダ8bにはカッターホイール12が取り付けられている。
【0024】
図2はダイヤポインタ11の一例を示す拡大図である。ダイヤポインタ11は片端が円錐形状に成形された円柱ロッド11aの先端に、先端を尖らせたダイヤ片11bが固定してあり、このダイヤ片11bを強化ガラス基板Mに衝突させることで点状の衝突痕が形成されるようにしてある。
【0025】
図3はカッターホイール12の一例を示す図である。直径2mm〜6mm程度の超硬合金製の円盤ディスク12aに刃先となる稜線12bが形成されている。なお、本実施例では、稜線に溝が形成されていない溝無しホイール(ノーマルホイールともいう)を使用しているが、稜線に溝が形成された溝付きホイール(例えば三星ダイヤモンド工業株式会社製のアピオ(APIO(登録商標))カッターホイール)を用いてもよい。
【0026】
次に、このスクライブ装置SC1を用いたスクライブ方法を説明する。
まず図4(a)〜(c)に示すように、基板Mに想定したスクライブ予定ライン上で、基板Mの一端縁より内側(例えば3mm内側)に入り込んだ箇所にダイヤポインタ11を、あらかじめ予備実験で求めた衝突圧で、上からガラス基板Mの表面を軽く打ちつけるように降下させ、その後、上昇させることにより、点状の衝突痕Tを形成する。この衝突痕は次工程でスクライブの起点として用いるので、「トリガ溝T」とも呼ぶ。衝突痕Tを大きくするときは、続いて図4(d)に示すように、ダイヤポインタ11を衝突痕Tに再び当接させてスクライブ予定ラインの方向に水平移動させて拡張し、長さが1mm〜3mm程度のトリガ溝T’とする。拡張したトリガ溝T’を形成することにより、カッターホイール12の刃先が合わせやすくなる。
【0027】
次いで、図4(e)に示すように、カッターホイール12を、トリガ溝T’を形成した位置に降下させて当接し、図4(f)で示すように、スクライブ予定ラインに沿って圧接しながら転動させることにより、スクライブラインSを形成する。すなわち、上述した内切りの手法によってスクライブラインSを形成する。カッターホイール12は、あらかじめ形成してあるトリガ溝T’に食い込むことができるので、スリップすることなくスクライブラインSを形成することができる。
【0028】
(実施形態2)
図5は、本発明方法を実施する際に用いるスクライブ装置の他の一例を示す概略的な正面図である。なお、図1と同じ部分については同符号を付すことにより、説明を省略する。このスクライブ装置SC2では、けがき部材として直刃の固定刃13を用いる。
図6(a)は、固定刃13の正面図、図6(b)は側面図である。固定刃13は超硬合金の円柱ロッド13aの片側端に、直刃13bが形成してある。直刃13bの刃先長さaは1mm〜3mmにしてあり、刃先を基板Mに衝突させると、刃先長さaの直線状の衝突痕Tが形成される(図7参照)。なお、直刃13bの刃先長さaを短くし、上述した実施形態1と同様に、衝突後に直刃13bの刃先を当接した状態で水平移動することにより衝突痕を拡張するようにして1mm〜3mmにしてもよい。このようにして形成された衝突痕Tは、トリガ溝Tを形成することになる。
次に、このスクライブ装置SC2を用いたスクライブ方法を説明する。
【0029】
まず図7(a)〜(c)に示すように、基板Mに想定したスクライブ予定ライン上で、基板Mの一端縁より内側に入り込んだ箇所に固定刃13を、上からガラス基板Mの表面を軽く打ちつけるように降下させ、そのあと上昇させることにより、直線状の衝突痕T(トリガ溝T)を形成する。ここでは長さが2mm程度のトリガ溝Tが形成されたものとする。
【0030】
次いで、図7(d)に示すように、カッターホイール12を、トリガ溝Tを形成した位置にカッターホイール12を降下させて当接し、図7(e)で示すように、スクライブ予定ラインに沿って圧接しながら転動させることにより、スクライブラインSを形成する。すなわち、上述した内切りの手法によってスクライブラインSを形成する。カッターホイール12は、あらかじめ形成してあるトリガ溝Tに食い込むことができるので、スリップすることなくスクライブラインSを形成することができる。
【0031】
(実施形態3)
図8は、本発明方法を実施する際に用いるスクライブ装置のさらに他の一例を示す概略的な正面図である。なお、図1と同じ部分については同符号を付すことにより、説明を省略する。このスクライブ装置SC3では、けがき部材として、図3で示したカッターホイール12を用いる。すなわち、衝突痕を形成するけがき部材として、カッターホイール12を兼用する。
そのため、ガイドバー6には、図1におけるスクライブヘッド7bだけが用いられ、図1におけるスクライブヘッド7a、および、これに装着されるホルダ8a、けがき部材11、13(図1,5参照)は取り付けられていない。
【0032】
次に、このスクライブ装置SC3を用いたスクライブ方法を説明する。
まず図9(a)〜(c)に示すように、基板Mに想定したスクライブ予定ライン上で、基板Mの一端縁より内側に入り込んだ箇所にカッターホイール12を、上からガラス基板Mの表面を軽く打ちつけるように降下させ、そのあと上昇させることにより、稜線に対応した線状の衝突痕T(トリガ溝T)を形成する。ここでは長さが2mm程度のトリガ溝Tが形成されたものとする。
【0033】
次いで、図9(d)に示すように、カッターホイール12を、トリガ溝Tを形成した位置に再び降下させて当接し、図9(e)で示すように、スクライブ予定ラインに沿って圧接しながら転動させることにより、スクライブラインSを形成する。すなわち、上述した内切りの手法によってスクライブラインSを形成する。カッターホイール12は、あらかじめ形成してあるトリガ溝Tに食い込むことができるので、スリップすることなくスクライブラインSを形成することができる。
【0034】
以上の実施形態では、スクライブラインを一つ形成する例で説明したが、平行に複数本形成したり、XY方向に交差するスクライブラインを形成したりする場合にも適用することができる。
また、上記実施形態では、カッターホイール12に溝無しホイールを用いたが、溝付きホイールにしてもよい。溝付きホイールを用いることによりさらに食いつきがよくなる。
上記実施形態では、衝突痕であるトリガ溝を形成したが、衝突痕を設けた位置は基板の端縁近傍であるため、この部分を端材領域としておき、最終的には端材として廃棄するようにすれば、製品には衝突痕がついていないので衝突痕による問題は発生しない。
その他本発明では、その目的を達成し、請求の範囲を逸脱しない範囲内で適宜修正、変更することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0035】
本発明のスクライブ方法は、強化ガラス基板をスクライブする場合に利用することができる。
【符号の説明】
【0036】
M 基板
S スクライブライン
、T、T 衝突痕(トリガ溝)
11 ダイヤポインタ
12 カッターホイール
13 固定刃
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11