【実施例】
【0047】
以下、実施例により本発明を更に説明する。なお、「部」、「%」は特に示さない限り、重量基準とする。
【0048】
[実施例1]
厚み6μmの透明高分子フィルム(ルミラー:東レ社)の一方の表面に下記組成の離型性組成物を含む塗布液をバーコーティングにより塗布、120℃で5分加熱硬化させ、厚み約0.5μmの塗膜を形成した。更にもう一方の面に下記組成の粘着層用塗布液を塗布し、乾燥させることにより、厚み約4μmの粘着層を形成して、実施例1の表面保護フィルムを作製した。粘着層には、取り扱い上のために厚み25μmのポリエチレンテレフタレート離型フィルム(MRB:三菱化学ポリエステルフィルム社)を貼り合わせた。
【0049】
<離型性組成物を含む塗布液>
・バインダー樹脂 1.85部
(ES-1002T:信越化学工業社、固形分60%)
・末端にアルコキシ基を有するシリコーンオイル 0.05部
(X-22-1968:信越化学工業社、固形分100%)
・シランアルコキシド縮合物 2.22部
(X-40-2308:信越化学工業社、有効成分100%)
・硬化剤 0.1部
(チタン系キレート、有効成分100%)
・シランカップリング剤 0.3部
(有効成分100%)
・溶媒 14.46部
【0050】
<粘着層用塗布液>
・アクリル酸エステル共重合体 10部
(アロンタックSCL-200:固形分40%、東亜合成)
・溶媒 20部
【0051】
[実施例2]
実施例1に用いた離型性組成物を含む塗布液を下記組成の離型性組成物を含む塗布液に代えた以外は、実施例1と同様にして、実施例2の表面保護フィルムを作製した。
【0052】
<離型性組成物を含む塗布液>
・バインダー樹脂 1.85部
(ES-1002T:信越化学工業社、固形分60%)
・末端にアルコキシ基を有するシリコーンオイル 0.02部
(X-22-1968:信越化学工業社、固形分100%)
・シランアルコキシド縮合物 2.22部
(X-40-2308:信越化学工業社、有効成分100%)
・硬化剤 0.1部
(チタン系キレート、有効成分100%)
・シランカップリング剤 0.3部
(有効成分100%)
・溶媒 9.64部
【0053】
[実施例3]
実施例1に用いた離型性組成物を含む塗布液を下記組成の離型性組成物を含む塗布液に代えた以外は、実施例1と同様にして、実施例3の表面保護フィルムを作製した。
【0054】
<離型性組成物を含む塗布液>
・バインダー樹脂 1.85部
(ES-1002T:信越化学工業社、固形分60%)
・末端にアルコキシ基を有するシリコーンオイル 0.19部
(X-22-1968:信越化学工業社、固形分100%)
・シランアルコキシド縮合物 2.22部
(X-40-2308:信越化学工業社、有効成分100%)
・硬化剤 0.1部
(チタン系キレート、有効成分100%)
・シランカップリング剤 0.3部
(有効成分100%)
・溶媒 9.64部
【0055】
[実施例4]
実施例1に用いた離型性組成物を含む塗布液を下記組成の離型性組成物を含む塗布液に代えた以外は、実施例1と同様にして、実施例4の表面保護フィルムを作製した。
【0056】
<離型性組成物を含む塗布液>
・バインダー樹脂 2.78部
(ES-1002T:信越化学工業社、固形分60%)
・末端にアルコキシ基を有するシリコーンオイル 0.05部
(X-22-1968:信越化学工業社、固形分100%)
・シランアルコキシド縮合物 1.67部
(X-40-2308:信越化学工業社、有効成分100%)
・硬化剤 0.1部
(チタン系キレート、有効成分100%)
・シランカップリング剤 0.3部
(有効成分100%)
・溶媒 13.6部
【0057】
[実施例5]
実施例1に用いた離型性組成物を含む塗布液を下記組成の離型性組成物を含む塗布液に代えた以外は、実施例1と同様にして、実施例5の表面保護フィルムを作製した。
【0058】
<離型性組成物を含む塗布液>
・バインダー樹脂 1.39部
(ES-1002T:信越化学工業社、固形分60%)
・末端にアルコキシ基を有するシリコーンオイル 0.05部
(X-22-1968:信越化学工業社、固形分100%)
・シランアルコキシド縮合物 2.5部
(X-40-2308:信越化学工業社、有効成分100%)
・硬化剤 0.1部
(チタン系キレート、有効成分100%)
・シランカップリング剤 0.3部
(有効成分100%)
・溶媒 14.15部
【0059】
[実施例6]
実施例1に用いた離型性組成物を含む塗布液を下記組成の離型性組成物を含む塗布液に代えた以外は、実施例1と同様にして、実施例6の表面保護フィルムを作製した。
【0060】
<離型性組成物を含む塗布液>
・バインダー樹脂 0.93部
(ES-1002T:信越化学工業社、固形分60%)
・末端にアルコキシ基を有するシリコーンオイル 0.05部
(X-22-1968:信越化学工業社、固形分100%)
・シランアルコキシド縮合物 2.78部
(X-40-2308:信越化学工業社、有効成分100%)
・硬化剤 0.1部
(チタン系キレート、有効成分100%)
・シランカップリング剤 0.3部
(有効成分100%)
・溶媒 18.9部
【0061】
[実施例7]
実施例1に用いた離型性組成物を含む塗布液を下記組成の離型性組成物を含む塗布液に代えた以外は、実施例1と同様にして、実施例7の表面保護フィルムを作製した。
【0062】
<離型性組成物を含む塗布液>
・バインダー樹脂 1.70部
(ES-1002T:信越化学工業社、固形分60%)
・末端にカルビノール基を有するシリコーンオイル 0.06部
(X-22-170DX:信越化学工業社、固形分100%)
・シランアルコキシド縮合物 2.00部
(X-40-2308:信越化学工業社、有効成分100%)
・硬化剤 0.1部
(チタン系キレート、有効成分100%)
・シランカップリング剤 0.3部
(有効成分100%)
・溶媒 13.0部
【0063】
[実施例8]
実施例1に用いた離型性組成物を含む塗布液を下記組成の離型性組成物を含む塗布液に代えた以外は、実施例1と同様にして、実施例8の表面保護フィルムを作製した。
【0064】
<離型性組成物を含む塗布液>
・バインダー樹脂 1.70部
(ES-1002T:信越化学工業社、固形分60%)
・末端にエポキシ基を有するシリコーンオイル 0.06部
(X-22-163C:信越化学工業社、固形分100%)
・シランアルコキシド縮合物 2.00部
(X-40-2308:信越化学工業社、有効成分100%)
・硬化剤 0.1部
(チタン系キレート、有効成分100%)
・シランカップリング剤 0.3部
(有効成分100%)
・溶媒 13.0部
【0065】
[比較例1]
実施例1に用いた離型性組成物を含む塗布液を下記組成の離型性組成物を含む塗布液に代えた以外は、実施例1と同様にして、比較例1の表面保護フィルムを作製した。
【0066】
<離型性組成物を含む塗布液>
・バインダー樹脂 4.4部
(ES-1001N:信越化学工業社、固形分45%)
・末端にアミン基を有するシリコーンオイル 0.1部
(KF-8012:信越化学工業社、固形分100%)
・硬化剤 0.1部
(チタン系キレート、有効成分100%)
・溶媒 33.0部
【0067】
[比較例2]
実施例1に用いた離型性組成物を含む塗布液を下記組成の離型性組成物を含む塗布液に代えた以外は、実施例1と同様にして、比較例2の表面保護フィルムを作製した。
【0068】
<離型性組成物を含む塗布液>
・バインダー樹脂 3.3部
(ES-1001N:信越化学工業社、固形分45%)
・末端にアルコキシ基を有するシリコーンオイル 0.1部
(X-22-1968:信越化学工業社、固形分100%)
・硬化剤 0.1部
(チタン系キレート、有効成分100%)
・溶媒 33.0部
【0069】
実施例1〜8、比較例1〜2で得られた表面保護フィルムについて、下記項目の評価を行った。結果を表1に示す。
【0070】
[初期離型性の評価]
表面保護フィルムの塗膜に粘着テープ(セロテープ(登録商標)CT405AP-18:ニチバン社)を貼りつけて引っ張り試験機(島津小型卓上試験機 EZ-L:島津製作所社)を用いて、剥離速度300mm/minにおける180°剥離力を測定した。剥離力が0.1N/18mm未満のものを「◎」、0.1N/18mm以上、1N/18mm未満のものを「○」、1N/18mm以上のものを「×」とした。
【0071】
[耐洗浄溶剤性の評価]
表面保護フィルムの塗膜面の耐洗浄溶剤性を確認するためにエタノールを使用した耐クリーニング試験を行った。溶媒を布に浸漬させて200gの荷重をかけて100往復した。その後、粘着テープ(セロテープ(登録商標)CT405AP-18:ニチバン社)を貼りつけて引っ張り試験(島津小型卓上試験機 EZ-L:島津製作所社)を用いて、剥離速度300mm/minにおける180°剥離力を測定した。評価は剥離力が0.2N/18mm未満のものを「◎」、0.2N/18mm以上、1N/18mm未満のものを「○」、1N/18mm以上のものを「×」とした。
【0072】
[耐フォトレジスト付着性の評価]
フォトレジストを表面保護フィルムの塗膜面を密着させて、塗膜面の裏面から露光を行い、UV硬化樹脂を硬化させた後、表面保護フィルムから剥離した。この操作を100回行った後、表面保護フィルムの塗膜に粘着テープ(セロテープ(登録商標)CT405AP-18:ニチバン株式会社)を貼りつけて引っ張り試験(島津小型卓上試験機 EZ-L:株式会社島津製作所)を用いて、剥離速度300mm/minにおける180°剥離力を測定した。評価は剥離力が0.2N/18mm未満のものを「◎」、0.2N/18mm以上、1N/18mm未満のものを「○」、1N/18mm以上のものを「×」とした。
【0073】
[透明性の評価]
ヘーズメーター(HGM−2K:スガ試験機社)を用いて、JIS K7105:1981にしたがって、表面保護フィルムのヘーズを測定した。ヘーズが1%未満のものを「◎」、1%以上3%未満のものを「○」、3%以上のものを「×」とした。
【0074】
[外観の評価]
表面保護フィルムの外観を目視にて観察を行った。目視観察上均一なものを「○」、欠陥が見られたものを「×」とした。
【0075】
【表1】
【0076】
表1から以下の事項が理解される。実施例1〜8の表面保護フィルムは、シリコーンオイルと金属アルコキシドの加水分解物およびバインダー樹脂を含む離型性組成物から形成されてなる塗膜を有するものである。シリコーンオイルとバインダー樹脂との相溶性が良好であるため、透明性に優れるものであった。また、シリコーンオイルとバインダー樹脂との相溶性が良好であるが、金属アルコキシドの加水分解物を含むため、シリコーンオイルが、塗膜中に埋没することなく、初期の離型性が良好なものであった。
【0077】
実施例1〜6の表面保護フィルムは、シリコーンオイルとして、分子の末端に少なくとも1つのアルコキシ基を有するものを用いたため、塗膜中にシリコーンオイルが固定化され、実施例7、8の表面保護フィルムより、離型性を持続することができるものであった。
【0078】
実施例4の表面保護フィルムは、バインダー樹脂に対する金属アルコキシドの加水分解物の添加量が少ない(バインダー樹脂100部に対して60部強)ため、表面へ浮上したシリコーンオイルを固定化しきれず、実施例1〜3の表面保護フィルムと比べて、耐洗浄溶剤性、耐フォトレジスト性が若干劣るものとなった。しかしながら性能的には十分に満足できるものが得られた。
【0079】
実施例7の表面保護フィルムは、カルビノール基を有するシリコーンオイルを用いたものである。カルビノール基の反応性がアルコキシド基より劣るため、実施例1〜6の表面保護フィルムと比べて、耐洗浄溶剤性、耐フォトレジスト性が劣るものであった。これにより、反応性官能基としてのアルコキシ基を有する反応性シリコーンオイルを用いることで、初期離型性に加え、耐洗浄溶剤性と耐フォトレジスト性の向上をも図ることができること、すなわち有用性がより高められることが確認できた。
【0080】
実施例8の表面保護フィルムは、エポキシ基を有するシリコーンオイルを用いたものである。エポキシ基の反応性がアルコキシド基より劣るため、実施例1〜3の表面保護フィルムと比べて、耐洗浄溶剤性、耐フォトレジスト性が若干劣るものであった。
【0081】
比較例1の表面保護フィルムは、金属アルコキシドの加水分解物を含まないものである。シリコーンオイルとバインダー樹脂との相溶性が良好であるため、塗膜中にシリコーンオイルが埋没してしまい、初期離型性が得られないものであった。
【0082】
比較例2の表面保護フィルムは、金属アルコキシドの加水分解物を含まないものである。シリコーンオイルとバインダー樹脂との相溶性が良好であるため、シリコーンオイルの量を多くして、初期離型性を得ていた。しかし、塗膜中に占めるシリコーンオイルの割合が多くなったため、塗膜中にシリコーンオイルを充分固定化することができず、洗浄溶剤やフォトレジストによって遊離したシリコーンオイルが拭き取られ、離型持続性は得られないものであった。また、シリコーンオイルの割合が多くなったため、塗膜表面に指擦り試験(ラビング)をしたときの塗膜の白化の発生を防止することができないものであった。さらに、塗膜に固定化されなかったシリコーンオイルのフォトレジストへの転写を防止することができないものであった。