(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5779098
(24)【登録日】2015年7月17日
(45)【発行日】2015年9月16日
(54)【発明の名称】誘導発熱ローラ装置
(51)【国際特許分類】
H05B 6/14 20060101AFI20150827BHJP
H05B 6/42 20060101ALI20150827BHJP
F16C 32/04 20060101ALI20150827BHJP
F16C 37/00 20060101ALI20150827BHJP
F16C 13/00 20060101ALI20150827BHJP
F16C 13/02 20060101ALI20150827BHJP
【FI】
H05B6/14
H05B6/42
F16C32/04 A
F16C37/00 Z
F16C13/00 C
F16C13/02
【請求項の数】4
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2011-528675(P2011-528675)
(86)(22)【出願日】2010年4月13日
(86)【国際出願番号】JP2010056602
(87)【国際公開番号】WO2011024508
(87)【国際公開日】20110303
【審査請求日】2013年3月6日
(31)【優先権主張番号】特願2009-197212(P2009-197212)
(32)【優先日】2009年8月27日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000110158
【氏名又は名称】トクデン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121441
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 竜平
(74)【代理人】
【識別番号】100113468
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 明子
(74)【代理人】
【識別番号】100154704
【弁理士】
【氏名又は名称】齊藤 真大
(72)【発明者】
【氏名】北野 良夫
(72)【発明者】
【氏名】岡本 幸三
(72)【発明者】
【氏名】北野 孝次
【審査官】
結城 健太郎
(56)【参考文献】
【文献】
特表2002−527022(JP,A)
【文献】
特開2002−317340(JP,A)
【文献】
特開2009−163968(JP,A)
【文献】
特開2007−321792(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05B 6/14
F16C 13/00
F16C 13/02
F16C 32/04
F16C 37/00
H05B 6/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
気液二相の熱媒体が封入され軸方向に延設されたジャケット室を有する、有底円筒状のローラ本体と、
前記ローラ本体の回転中心軸上に沿うように、前記ローラ本体の底部中央部に設けられた回転軸と、
前記回転軸が内部に挿入されるとともに、前記ローラ本体及び回転軸の間の中空内に配設され、円筒状鉄心及びこの円筒状鉄心に巻装された誘導コイルからなる磁束発生機構が設けられた支持体と、
前記支持体の内周面に設けられて前記回転軸の外周面に対向する磁極部を有し、前記回転軸を先端側及び後端側においてラジアル方向に非接触支持するラジアル磁気軸受とを備え、
前記先端側のラジアル磁気軸受は前記ローラ本体の内部に配置され、前記後端側のラジアル磁気軸受は前記ローラ本体の外部に配置されており、
前記ラジアル磁気軸受が、両端に磁極部が形成される断面コの字形状のヨークと、当該ヨークの磁極部に巻回されたコイルとからなり、前記磁極部の先端には、前記回転軸の外周面と同じ曲率をなす円弧状凹部が形成されており、その先端面が前記回転軸の外周面に対向して配置されている誘導発熱ローラ装置。
【請求項2】
前記ローラ本体と前記回転軸とが一体である請求項1記載の誘導発熱ローラ装置。
【請求項3】
前記先端側のラジアル磁気軸受と前記磁束発生機構とが軸方向において重ならないように設けられている請求項1記載の誘導発熱ローラ装置。
【請求項4】
前記支持体のラジアル磁気軸受が設けられる部分に、冷却流体が流通する冷却流体通路が形成されている請求項1記載の誘導発熱ローラ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、誘導発熱ローラ装置に関し、特に片持ち式の誘導発熱ローラ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ナイロン、ポリエステル等の合成繊維等の製造工程において、紡糸後に加熱し長さ方向に引き伸ばすことによって分子配向を整えて、引張強度等の特性を向上させる直延伸工程が行われている。
【0003】
そして、この直延伸工程においては、複数の誘導発熱ロール装置が用いられ、合成繊維の加熱を行うとともに、各誘導発熱ロール装置の回転速度差によって合成繊維を延伸することが一般的である。
【0004】
この誘導発熱ローラ装置は、特許文献1に示すように、底部中央部に軸嵌合部を有するローラ本体と、ローラ本体内部に配置された円筒状鉄心及び誘導コイルからなる磁束発生機構と、を備え、モータの回転軸の先端をローラ本体の軸嵌合部に嵌合連結することによりローラ本体を片持ち式に支持してモータにより直接回転させるようにしたものである。このような構成において、モータによりローラ本体を回転させ、また磁束発生機構の誘導コイルを交流電源により励磁させることにより、ローラ本体が発熱する。
【0005】
この誘導発熱ローラ装置のより具体的な構成として、ローラ本体の中空内に延びる円筒部を有し、モータに一体的に連結されるフランジ部を備えている。この円筒部は、ローラ本体の軸心方向に沿うようにローラ本体内部に延長させてある。そして、この円筒部の外面に磁束発生機構が固定されている。また、円筒部の先端側の内面と回転軸との間に転がり軸受を設置し、この転がり軸受により回転軸を円筒部に対して回転自在に支持するようにしている。
【0006】
しかしながら、回転軸を転がり軸受によって支持する構成では、転がり軸受の摩耗による寿命によって、定期的に転がり軸受の交換を行う必要があるという問題がある。特に、誘導発熱ローラ装置における転がり軸受の交換作業は極めて負担が大きい。
【0007】
一方で、特許文献2に示すように、ローラ本体を磁気軸受によって支持するものがあり、この磁気軸受は、円筒部の外周面に設けられて、その磁極部がローラ本体の内周面に対向するように設けられている。このように磁気軸受をいわゆる径方向外向きに配置することにより、磁極部とローラ本体(被支持体)との対向面積を可及的に大きくして支持安定性を向上させるようにしている。
【0008】
しかしながら、磁気軸受によりローラ本体を支持する場合には磁束発生機構の軸方向両側に磁気軸受が配置される構成となり、磁束発生機構により生じる磁束の磁路が磁気軸受により制約されてしまうという問題がある。これにより、磁束がローラ本体全体を通過することができずに、ローラ本体を均一に温度制御することが極めて難しいという問題がある。
【0009】
また、磁気軸受及び磁束発生機構の配置関係によるローラ本体の温度不均一の問題を解決するために、特許文献3に示すように、ガイド部材によって磁路を軸方向に伸ばし、磁束を磁気磁束よりも外側に導くように構成して、これによってローラ本体の温度の均一化を図っているものがある。
【0010】
しかしながら、ガイド部材によって磁路を伸ばす構成であっても、ローラ本体を通過する磁束密度が軸方向の各位置で異なることからローラ本体の温度を均一にすることは難しい。また、ガイド部材をローラ本体の内部に設ける構成は、ローラ本体の大型化及び磁気軸受等のその他の構成部品の配置に制約を与えることになってしまい得策ではない。
【0011】
また、先端側の磁気軸受は磁極部が回転軸の外周面に対向するようにいわゆる内向きに設けられているが、支持安定性を確保するためには、長手方向に大きくする必要があり、この場合、磁束が通過する領域がさらに制限されてしまいローラ本体の温度均一性を確保することが難しくなるという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2009−163968号公報
【特許文献2】特許第4106277号公報
【特許文献3】特許第4221227号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
そこで本発明は、上記問題点を一挙に解決するためになされたものであり、ローラ本体の温度の均一性を確保しながらも、磁気軸受による支持安定性を向上することをその主たる所期課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
すなわち本発明に係る誘導発熱ローラ装置は、気液二相の熱媒体が封入され軸方向に延設されたジャケット室を有する、有底円筒状のローラ本体と、前記ローラ本体の回転中心軸上に沿うように、前記ローラ本体の底部中央部に設けられた回転軸と、前記回転軸が内部に挿入されるとともに、前記ローラ本体及び回転軸の間の中空内に配設され、円筒状鉄心及びこの円筒状鉄心に巻装された誘導コイルからなる磁束発生機構が設けられた支持体と、前記支持体の内周面に設けられて前記回転軸の外周面に対向する磁極部を有し、前記回転軸を先端側及び後端側においてラジアル方向に非接触支持するラジアル磁気軸受と
を備え、前記先端側のラジアル磁気軸受は前記ローラ本体の内部に配置され、前記後端側のラジアル磁気軸受は前記ローラ本体の外部に配置されており、前記ラジアル磁気軸受が、両端に磁極部が形成される断面コの字形状のヨークと、当該ヨークの磁極部に巻回されたコイルとからなり、前記磁極部の先端には、前記回転軸の外周面と同じ曲率をなす円弧状凹部が形成されており、その先端面が前記回転軸の外周面に対向して配置されていることを特徴とする。
【0015】
このようなものであれば、磁気軸受により回転軸を支持していることから、転がり軸受を用いた場合等の摩耗が無く、軸受の寿命を格段に延ばすことができる。また、ローラ本体に気液二相の熱媒体が封入されたジャケット室を設けているので、ローラ本体の軸方向の温度を均一にすることができる。さらに、ジャケット室を設けていることから、磁気軸受を軸方向に長くしても温度を均一にすることができるので、磁気軸受を軸方向に大きくすることができ、回転軸の支持安定性を向上させることができる。その上、磁気軸受をいわゆる径方向内向きにして回転軸を回転自在に支持していることから、ローラ本体と磁気軸受との配置関係を考慮することなく磁気軸受を配置することができ、後端側の磁気軸受をローラ本体の外部に配置する等のように一層支持安定性を向上させることができる。
加えて、前記先端側のラジアル磁気軸受は前記ローラ本体の内部に配置され、前記後端側のラジアル磁気軸受は前記ローラ本体の外部に配置されているので、ローラ本体及び回転軸の支持安定性を向上させることができる。
【0017】
磁気軸受により回転軸を支持するものは、転がり軸受により回転軸を支持するものよりも高速回転が可能となることから、ローラ本体と回転軸とをテーパ嵌合させて締結要素により連結するとローラ本体と回転軸とのがたつきが大きくなってしまい、剛性が小さくなってしまうという問題がある。この問題を解決するためには、前記ローラ本体と前記回転軸とが一体であることが望ましい。
【0018】
支持体及びローラ本体を径方向に大型化させないためには、前記先端側のラジアル磁気軸受と前記磁束発生機構とが軸方向において重ならないように設けられていることが望ましい。
【0019】
磁気軸受の温度変化に起因する不安定振動の発生を抑制するためには、前記支持体のラジアル磁気軸受が設けられる部分に、冷却流体が流通する冷却流体通路が形成されていることが望ましい。
【0020】
同様に、前記支持体における前記ローラ本体の内周面と対向する外周面に断熱材を設けていることによっても、定常状態における磁気軸受の温度の上昇を抑えることができ、不安定振動の発生を抑制できる。
【発明の効果】
【0021】
このように構成した本発明によれば、ローラ本体の温度の均一性を確保しながらも、磁気軸受による支持安定性を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明の一実施形態に係る誘導発熱ローラ装置の断面図である。
【
図2】同実施形態の先端側の磁気軸受を示すA−A線断面図である。
【
図3】変形実施形態に係る誘導発熱ローラ装置の断面図である。
【
図4】変形実施形態に係る誘導発熱ローラ装置の断面図である。
【符号の説明】
【0023】
100・・・誘導発熱ローラ装置
2・・・ローラ本体
21A・・・ジャケット室
3・・・回転軸
5・・・磁束発生機構
51・・・円筒状鉄心
52・・・誘導コイル
4・・・支持体
6・・・先端側のラジアル磁気軸受
6a、6b・・・磁極部
7・・後端側のラジアル磁気軸受
7a、7b・・・磁極部
4A・・・冷却流体通路
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下に本発明に係る誘導発熱ローラ装置の一実施形態について図面を参照して説明する。
【0025】
本実施形態に係る誘導発熱ローラ装置100は、
図1に示すように、ローラ本体2と、ローラ本体2の底部中央部に設けられた回転軸3と、回転軸3を回転可能に支持するとともに、磁束発生機構5が設けられた支持体4と、支持体4の内周面に設けられて回転軸3を先端側及び後端側においてラジアル方向に非接触支持するラジアル磁気軸受6、7とを具備する。なお、図示しないが回転軸3をスラスト方向に非接触支持するスラスト磁気軸受を配置している。
【0026】
ローラ本体2は、底部中央部において回転軸3が一体的に設けられた有底円筒状をなすものである。また、ローラ本体2の側周壁21には、長手方向(軸方向)に延びる気液二相の熱媒体を封入するジャケット室21Aが、周方向に複数例えば等間隔に形成され、各ジャケット室21A内の端部は側周壁21の周方向に設けられた環状の孔と連通して各ジャケット室21A同士は連続している。このジャケット室21A内に封入した気液二相の熱媒体の潜熱移動によりローラ本体2の外表面温度を均一化する。また、ジャケット室21Aは、磁束発生機構5と向かい合う位置を超えて、ローラ本体2の側周壁21において軸方向略全長に亘って設けられている。さらに、ローラ本体2の側周壁21の先端側には、外表面の温度を検出するための温度センサ10が埋設されている。
【0027】
本実施形態の回転軸3は、ローラ本体2と一体成型されるものであり、ローラ本体2の底部中央部に回転中心軸C上に沿うように設けられている。また、回転軸3の後端部301には、駆動モータ8のロータ81が周方向に等間隔となるように着脱可能に固定されている。その一例としては、回転軸3の後端部301が後端に行くに従って縮径するテーパ状をなし、ロータ81の内周面が前記後端部301のテーパに相対するテーパ状をなし、前記回転軸3の後端部301にロータ81が嵌合した状態で、ボルト、ナット等の締結要素9によって後端部301とロータ81を締結固定している。このような構成により、後端側の磁気軸受7を交換する場合には、締結要素9を取り外してロータ81を取り外せば、後端側の磁気軸受7を容易に後端側に抜くことができる。
【0028】
支持体4は、回転軸3が内部に挿入されるとともに、先端部がローラ本体2及び回転軸3の間の中空内に配設され、回転軸3を先端側及び後端側において磁気軸受6、7により回転自在に支持する。また、支持体4における回転軸3のロータ81に対向する内周面に駆動モータ8のステータ82が設けられている。具体的に支持体4は、先端側の磁気軸受6及び後端側の磁気軸受7が取り付けられる支持体本体41と、当該支持体本体41の後端に設けられ、ステータ82が固定されるステータ固定部42とを備えている。
【0029】
支持体本体41は、ローラ本体2の内径よりも小さい外径を有する円筒部411と、当該円筒部411の外径よりも大きい外径を有し、円筒部411の基端部においてローラ本体2の開口部を覆うフランジ部412と、を有する。また、支持体本体41の側周壁には、フランジ部412の外周面で開口し、円筒部411の先端部に延びる複数の冷却流体通路4Aが形成され、各冷却流体通路4Aは、支持体4の先端部で折り返してフランジ部412の外周面で開口する。この冷却流体通路4A内には、例えば水又は油等の冷却流体が供給され、この冷却流体の流通によって支持体4を冷却し、この冷却によって磁束発生機構5及び先端側の磁気軸受6を冷却する。
【0030】
このように、冷却流体通路4Aを設けて先端側軸受6を冷却することより、熱的な定常状態における軸受温度を低くすることができるので、組み立て時と定常状態時との軸受隙間や予圧の差を小さくすることができ、定常状態に至るまでの間も不安定振動が発生することを抑制することができる。
【0031】
磁束発生機構5は、ローラ本体2の内周面に沿うように支持体4(具体的には円筒部411)に設けられており、湾曲する磁性鋼板を放射状に円周方向に沿って配列積層して形成される円筒状鉄心51と、円筒状鉄心51の外周面に巻装された誘導コイル52とから円筒状のものである。
【0032】
このような磁束発生機構5により、誘導コイル52に交流電圧が印加されると交番磁束が発生し、その交番磁束は円筒状鉄心51及びローラ本体2の側周壁21を通過する。この通過によりローラ本体2に電流が発生し、その電流でローラ本体2はジュール発熱する。
【0033】
また、支持体4におけるローラ本体2の内周面と対向する外周面、具体的には支持体4の円筒部411及び磁束発生機構5の外周面には断熱材11が設けられている。これにより、定常状態における磁気軸受の温度の上昇を抑えることができ、不安定振動の発生を抑制できる。
【0034】
先端側の磁気軸受6は、支持体4の内周面に設けられて回転軸3の外周面に対向する磁極部6a、6bを有し、回転軸3を先端側においてラジアル方向に非接触支持するものである。この先端側の磁気軸受6は、磁束発生機構5よりも先端側に設けられるとともに、ローラ本体2の内部に設けられている。
【0035】
具体的に先端側の磁気軸受6は、
図1の部分拡大図、
図2のA−A線断面図に示すように、支持体4の先端部内周面(具体的に円筒部411先端の内周面)に周方向に等間隔に配置された4つの磁気軸受を有する。各磁気軸受6は、両端に磁極部6a、6bが形成される断面概略コの字形状のヨーク61と、当該ヨーク61の磁極部6a、6bに巻回されたコイル62とからなる。磁極部6a、6bの先端には、回転軸3の外周面と略同じ曲率をなす円弧状凹部が形成され、その先端面が回転軸3の外周面に対向して配置される。なお、先端側の磁気軸受6が設けられる円筒部411先端の内周面は、先端側の磁気軸受6の磁極部6a、6b先端がその他の内周面と略面一となるように内径が大きく形成されている。
【0036】
また、後端側の磁気軸受7は、支持体4の内周面に設けられて回転軸3の外周面に対向する磁極部7a、7bを有し、回転軸3を後端側においてラジアル方向に非接触支持するものである。この後端側の磁気軸受7は、磁束発生機構5よりも後端側に設けられるとともに、ローラ本体2の外部に設けられている。このように、ローラ本体2の外部に設けられるのは、後端側の磁気軸受7が支持体4の内周面に設けられ、磁極部7a、7bが回転軸3の外周面に対向して設けられ、ローラ本体2の内周面に対向して設ける構成としていないためである。
【0037】
具体的に後端側の磁気軸受7は、
図1に示すように、支持体4(フランジ部)の内周面に周方向に等間隔に配置された4つの磁気軸受を有する。各磁気軸受は、先端側の磁気軸受6と同様に、両端に磁極部7a、7bが形成される断面概略コの字形状のヨーク71と、当該ヨーク71の磁極部7a、7bに巻回されたコイル72とからなる。
【0038】
なお、先端側の磁気軸受6及び後端側の磁気軸受7の間には、磁気軸受6、7が停電などにより停止した場合に回転軸3を緊急的に支持するための、例えば転がり軸受又はすべり軸受等のタッチダウン軸受12が設けられている。
【0039】
<本実施形態の効果>
このように構成した本実施形態に係る誘導発熱ローラ装置100によれば、磁気軸受6、7により回転軸3を支持していることから、転がり軸受を用いた場合等の消耗が無く、軸受の寿命を格段に延ばすことができる。また、ローラ本体2に気液二相の熱媒体が封入されたジャケット室21Aを設けているので、ローラ本体2の軸方向の温度を均一にすることができる。さらに、ジャケット室21Aを設けていることから、磁気軸受6、7を軸方向に長くしても温度を均一にすることができるので、磁気軸受6、7を軸方向に大きくすることができ、回転軸3及びローラ本体2の支持安定性を向上させることができる。その上、磁気軸受6、7をいわゆる径方向内向きにして回転軸3を支持していることから、ローラ本体2と磁気軸受6、7との配置関係を考慮することなく磁気軸受6、7を配置することができる。特に後端側の磁気軸受7をローラ本体2の外部に配置する等のように先端側の磁気軸受6と後端側の磁気軸受7との距離を大きくとることができ、一層支持安定性を向上させることができる。
【0040】
<その他の変形実施形態>
なお、本発明は前記実施形態に限られるものではない。
【0041】
例えば、前記実施形態では、支持体4が軸方向に1つの磁束発生機構5を有し、その磁束発生機構5を先端側の磁気軸受6及び後端側の磁気軸受7により挟むような配置により構成しているが、
図3に示すように、支持体4が軸方向に2つの磁束発生機構5を有し、先端側の磁気軸受6をその磁束発生機構5の間に配置しても良い。
【0042】
また、磁束発生機構5は2つに限られず、軸方向に3つ以上設けても良い。
【0043】
さらに、前記実施形態の磁気軸受は、先端側の磁気軸受6及び後端側の磁気軸受7により軸方向に2点磁気軸受を配置しているが、軸方向に3点以上配置する構成としても良い。
【0044】
その上、前記実施形態の後端側の磁気軸受7は、ローラ本体2の外部において駆動モータ8よりも先端側に配置されたもの、つまりローラ本体2と駆動モータ8の間に配置されたものであったが、
図4に示すように、駆動モータ8よりも後端側、具体的には駆動モータ8と温度検出装置(回転トランス)RTSとの間に配置するように構成しても良い。
【0045】
その上、前記実施形態ではローラ本体2及び回転軸3を一体として、回転によるローラ本体2及び回転軸3同士のがたつきが生じないように構成しているが、ローラ本体2及び回転軸3をテーパ嵌合等を用いて締結要素により連結するように構成しても良い。
【0046】
その他、本発明は前記実施形態に限られず、その趣旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能であるのは言うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明により、ローラ本体の温度の均一性を確保しながらも、磁気軸受による支持安定性を向上することができる。