特許第5779099号(P5779099)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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5779099テトラクロロシランを用いて壁面析出を減少させる、流動床反応器によるシリコンの製造
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5779099
(24)【登録日】2015年7月17日
(45)【発行日】2015年9月16日
(54)【発明の名称】テトラクロロシランを用いて壁面析出を減少させる、流動床反応器によるシリコンの製造
(51)【国際特許分類】
   C01B 33/035 20060101AFI20150827BHJP
【FI】
   C01B33/035
【請求項の数】17
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2011-534595(P2011-534595)
(86)(22)【出願日】2009年10月12日
(65)【公表番号】特表2012-507462(P2012-507462A)
(43)【公表日】2012年3月29日
(86)【国際出願番号】US2009060310
(87)【国際公開番号】WO2010053659
(87)【国際公開日】20100514
【審査請求日】2012年5月29日
(31)【優先権主張番号】12/265,038
(32)【優先日】2008年11月5日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】503060684
【氏名又は名称】ヘムロック・セミコンダクター・コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】100178685
【弁理士】
【氏名又は名称】田浦 弘達
(74)【代理人】
【識別番号】100165696
【弁理士】
【氏名又は名称】川原 敬祐
(74)【代理人】
【識別番号】100150360
【弁理士】
【氏名又は名称】寺嶋 勇太
(72)【発明者】
【氏名】マイケル マルネア
【審査官】 森坂 英昭
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第02/100777(WO,A1)
【文献】 国際公開第03/106338(WO,A1)
【文献】 特開2002−220219(JP,A)
【文献】 国際公開第2007/002880(WO,A2)
【文献】 国際公開第2008/027101(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 33/00 − 33/193
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1)水素およびシリコンモノマーを含む析出ガスを流動床反応器の内部領域に供給する工程であって、前記シリコンモノマーをSiHおよびHSiClから選択し、前記析出ガスを前記流動床反応器の加熱ゾーンに導入する工程と、この工程と同時に行う、
2)ほぼSiClからなり、反応を局所的にエッチングモードにするのに十分な量のSiClを含むエッチングガスを前記流動床反応器の加熱ゾーンに周辺領域から供給するエッチングガス供給工程であって、該周辺領域は、前記流動床反応器の前記内部領域と壁との間である、該エッチングガス供給工程と
を有し、
前記工程1)における前記シリコンモノマーの量は、前記流動床反応器の加熱ゾーンの上方に位置する反応ゾーンにおいて、流動シリコン粒子上にシリコンを析出させるのに十分な量とし、前記工程2)における前記SiClの量は、前記流動床反応器の壁からシリコンをエッチングするのに十分な量とし、
前記HSiClは、水素化プロセスによりSiClから生成され、前記エッチングガスとして用いられる前記SiClは、同じ供給源由来であることを特徴とするプロセス。
【請求項2】
請求項1に記載のプロセスにおいて、前記析出ガスは、シーメンス反応器からのベントガス流から生じるものとしたプロセス。
【請求項3】
請求項1に記載のプロセスにおいて、1つまたはそれ以上のシーメンス反応器からのベントガス流を分離して、前記シーメンス反応器から出た後であり、かつ前記流動床反応器に入る前に、前記析出ガスの少なくとも一部および前記エッチングガスの少なくとも一部を形成するプロセス。
【請求項4】
請求項3に記載のプロセスにおいて、さらに、前記析出ガスに追加のクロロシラン類を補充する工程を有するプロセス。
【請求項5】
請求項4に記載のプロセスにおいて、前記追加のクロロシラン類は、HSiCl、SiClまたはこれらの組合せを含むものとするプロセス。
【請求項6】
請求項2または3に記載のプロセスにおいて、さらに、前記1個またはそれ以上のシーメンス反応器により生成されるシリコンを、集積回路、太陽電池またはその両方のために用いる工程を有するプロセス。
【請求項7】
請求項1に記載のプロセスにおいて、さらに、前記流動床反応器により生成されるシリコンを、太陽電池のために用いる工程を有するプロセス。
【請求項8】
請求項2に記載のプロセスにおいて、前記ベントガス流は、HSiCl、SiCl、水素、HClおよびシリコン粉末を含むものとし、また、前記プロセスは、さらに、前記ベントガス流を前記析出ガスとして前記流動床反応器に供給する前に該ベントガス流からシリコン粉末を取り出す工程を有するものとしたプロセス。
【請求項9】
請求項2に記載のプロセスにおいて、前記ベントガス流に対して、追加のHSiClを補充して前記析出ガスを形成し、かつ、前記析出ガスは、20mol%〜50mol%の範囲における濃度のクロロシランを含むものとしたプロセス。
【請求項10】
請求項9に記載のプロセスにおいて、前記クロロシランの濃度は、25mol%〜35mol%の範囲としたプロセス。
【請求項11】
請求項1に記載のプロセスにおいて、さらに、
3)前記流動床反応器から回収システムに第2のベントガス流を供給する工程
を有するプロセス。
【請求項12】
請求項11に記載のプロセスにおいて、前記第2のベントガス流は、水素、HSiCl、SiClおよびHClを含むものとしたプロセス。
【請求項13】
請求項12に記載のプロセスにおいて、さらに、
4)水素、HSiCl、SiClまたはこれらの組合せを回収する工程
を有するプロセス。
【請求項14】
請求項13に記載のプロセスにおいて、さらに、
5)前記水素、HSiClまたはその両方を前記シーメンス反応器に供給する工程を有するプロセス。
【請求項15】
請求項13に記載のプロセスにおいて、さらに、
5)水素、HSiClまたはその両方を前記工程1)における前記析出ガスに添加する工程
を有するプロセス。
【請求項16】
請求項13に記載のプロセスにおいて、さらに、前記SiClを前記工程2)における前記エッチングガスに添加する工程を有するプロセス。
【請求項17】
請求項11に記載のプロセスにおいて、さらに、
4)SiClを回収し、該SiClをHSiClに変換し、該HSiClを前記シーメンス反応器または前記流動床反応器に供給する工程
を有するプロセス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、米国特許法第120条に基づき、2008年11月5日に出願した米国特許出願第12/265,038号の恩典を主張する。米国特許出願第12/265,038号は参照により本明細書に援用される。
【0002】
連邦政府による資金提供を受けた研究開発の記載
なし
【0003】
シリコンは、シーメンス法と称されるプロセスによってロッド状に形成できることが知られている。水素とシラン(SiH)とを含む混合物、または水素とトリクロロシラン(HSiCl)とを含む混合物を、種ロッドを容れた分解反応器に供給し、これら種ロッドは1000℃を超える温度に維持する。シリコンが種ロッド上に析出し、また副生成ガス混合物をベント(vent)流として排出する。水素およびトリクロロシランを含む混合物を使用する場合、ベント流には、水素、塩化水素、クロロシラン、シランおよびシリコン粉末が含まれ得る。本願明細書において、用語「クロロシラン」とは、シリコン(ケイ素)に結合する1つ以上の塩素原子を有する任意のシラン種を意味し、モノクロロシラン(HSiCl)、ジクロロシラン(HSiCl)、トリクロロシラン(HSiCl)、テトラクロロシラン(SiCl)、および種々の塩素化ジシラン、例えばヘキサクロロジシラン、ペンタクロロジシランが挙げられるが、これらに限定しない。本願明細書において、用語「シリコンモノマー」とは、分子中に1個のケイ素原子を有する任意のシラン種(例えば、シランまたはHSiCl、またはHSiClとSiClの組合せ)を意味する。ベント流中、水素と、SiClおよびHSiClなどのクロロシランとは、未反応の供給ガスおよび分解による反応生成物の両方に由来して存在しうる。ベント流は、複雑な回収プロセスを経る。その複雑な回収プロセスにおいて、凝縮、洗浄、吸収および吸着は、再利用に向けた供給材料であるHSiClおよび水素の捕集を容易にするのによく用いられる一式(単位)操作である。シーメンス法に関連する1つの課題は、この反応プロセスを制御する化学平衡および反応速度論に起因し、供給するシリコンに対して多結晶シリコン生成物を高い収率で得ることが困難なことである。
【化1】
ほとんどの場合、多結晶シリコンの最大理論収率の50%以下しか達成されない。さらに、シーメンス法ではこの比較的低い収率を達成するのに比較的高いエネルギーを投入する必要がある。
【背景技術】
【0004】
代替的なプロセスとしては、水素とシランとを含む混合物、または水素とトリクロロシランとを含む混合物を、ほぼ球形のシリコンビーズを容れた流動床に供給し、この流動床を高温に維持するものがある。このビーズはサイズが大きくなり、十分大きくなったとき、流動床反応器(FBR)の底部から生成物として取り出す。ベントガスはFBRの頂部から流出させ、シーメンス法に関して上記したものと同様の回収プロセスを経るよう送出する。このプロセスにおける収率は、シーメンス法の50%〜70%に対して最大理論値のほぼ90%となり得る。
【0005】
FBRプロセスに関する1つの課題は、熱伝導を容易にするために、平均床温度よりも高い温度にビーズを加熱しなければならないことである。この加熱は、例えば、高温壁を有する反応器、マイクロ波エネルギー、ラジオ周波数誘導加熱または赤外線を使用して行うことができる。加熱方法はすべて、それぞれ固有の動作上の問題を有している。しかしながら、1つの問題は、FBRの底部が高温となる可能性があり、このため供給ガスがHSiClおよび水素しか含有しない場合に供給ガスが反応性を示すようになることである。結果として、供給ガス分配器、大きいビーズの塊および反応器の側壁にシリコンが急速に析出する傾向がある。続いてそれら析出物により、適切な供給ガス分配、生成物の分離およびシステムの熱伝導が阻害される。FBRプロセスによる別の課題は、生成物の品質が不十分で集積回路の製造に使用できなくなることである。しかし、FBRプロセスの生成物はソーラーグレード用途に用いることがあり得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
シーメンス反応器による多結晶シリコンの製造効率を改善するとともに、副生成物およびエネルギー消費を低減することが、多結晶シリコン産業において必要とされている。FBR技術を改善して、FBRの壁にシリコン析出が生じないようにすることが、多結晶シリコン産業において必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
プロセスは、流動床反応器(FBR)の壁近傍にエッチングガスを供給する工程を有する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本明細書に記載するプロセスのフロー図である。
図2】分配プレートの頂面図である。
図3】FBRの底部の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明によるシリコンの製造プロセスは、
1)水素およびシリコンモノマーを含む析出ガスを流動床反応器(FBR)の内部領域に供給する工程と、この供給と同時に
2)エッチングガスをこのFBRの周辺領域に供給する工程と
を有し、
この周辺領域はFBRの内部領域と壁との間における領域である。
工程1)において、シリコンモノマーは、シラン(SiH)およびトリクロロシラン(HSiCl)から選択することができる。析出ガスおよびエッチングガスをFBRの加熱ゾーンに導入する。工程1)におけるシリコンモノマーの量は、FBRの加熱ーンの上方に位置する反応ゾーンにおいて、流動シリコン粒子上にシリコンを析出させるのに十分な量とする。工程2)におけるエッチングガスの量は、FBRの壁からシリコンをエッチングするのに十分な量とする。エッチングガスは、ほぼSiClからなるものとすることができる。
【0010】
このプロセスの工程2)において、ほぼSiClからなるエッチングガスをFBRの壁近傍でFBR内に供給する。エッチングガスは、分配器の周辺領域からFBRの底部または底部近傍に供給することができ、これにより、壁におけるシリコン析出を最小限にするまたは防止することができる。分配器の周辺領域は、FBRの内部領域と壁との間である。代案として、エッチングガスをFBRの壁近傍に直接供給してもよく、これにより、壁におけるシリコン析出を最小限にする、または防止することができる。本願明細書において、表現「ほぼSiClからなる」は、(段落[0003]で説明した)反応を局所的にエッチングモードにするのに十分な量のSiClをエッチングガスが含むことを意味する。水素およびシリコンモノマーを含む析出ガスをFBRの内部領域に供給する。析出ガスは、随意に分配器から供給することができる。FBRはシーメンス反応器と統合し、これにより、FBRに流入するエッチングガスおよび/または析出ガスは、シーメンス反応器からのベントガスから派生するものとすることができる。
【0011】
エッチングガスの正確な量および供給速度は、種々の要因に依存し、この要因としては、ノズルの数および形態、FBRの形態(例えば、直径および高さ)、ならびにFBRを操作するプロセス条件(例えば、温度および圧力)がある。当業者であればFBRの形態および用いるプロセス条件に基づいて、エッチングガスの量および供給速度を算出することができるであろう。例えば、図1に示し、以下で説明するプロセスにおける温度および圧力では、エッチングガスの量は、局所的に水素およびシリコンが存在する中で少なくとも6mol%のSiClを供給するのに十分なものとすることができる。これにより、段落[0003]に示した反応において、FBRの壁近傍でHClを生成するようにすることができ、その結果、FBR上へのシリコンの析出を最小限にするまたは防止することができ、しかもガス供給全体(析出ガスおよびエッチングガスを組み合せたもの)の組成物を実質的に希釈する必要もない。壁近傍に必要とするSiCl量の正確なレベルは、析出ガス中の反応性シリコン前駆体(シリコンモノマー)の濃度、および、FBR中の種粒子上にシリコンを形成するための析出ガスの熱力学的ポテンシャルに依存する。SiClの量は、FBRの壁一面を覆うSiClのブランケットを生ずるのに十分な量、すなわち、SiClの量は、FBRの壁から内側に12mm、あるいはFRBの壁から内側に10mmの位置にエッチング条件を作り出すのに十分とする。理論に拘泥するものではないが、ブランケットはさらに内側に延びて存在することは付加的な利益はなく、FBRの能力を減少させてしまう可能性があり、逆にブランケットがこれより少ないとFBRの壁にシリコンが析出してしまうものと考えられる。
【0012】
当業者であれば、流動化(流動化速度)を達成するための目標総ガス供給(析出ガスおよびエッチングガスを組み合せた)の流量を計算することができ、この流動化速度を用いて、(内部)供給ガスノズルに供給される析出ガスの量、および、周辺領域における、10mm〜12mm内側および若干距離上方にわたるブランケットとして供給するSiClの量を計算することができる。この上方にわたる距離は、特にFBRの壁に対してシリコン析出を生ずる場所に依存する。6mol%は、この反応のエッチングから析出条件への平衡ラインに基づく。SiClの量が6mol%以下であると、水素がシリコンを析出させるSiClを減少させる。しかしながら、SiClの量が6%を超えると、FBRが大気圧以上の圧力条件で作動している場合、この反応はシリコンをエッチングする方向に進む。(これによりFBRの壁からシリコンを除去することができる。)この場合、SiClは水素化されてHSiClを形成し、またHClは壁近傍のシリコンと反応することで順次消費され、さらなるクロロシランを形成する。しかしながら、6mol%という値は他のプロセス条件、例えば温度および圧力に拠って変化することを当業者であれば認識するであろう。例えば、L.P.ハント氏(L. P. Hunt)およびE.サートル氏(E. Sirtl)著の"A Thorough Thermodynamic Evaluation of the Silicon-Hydrogen-Chlorine System", J. Electrochem. Soc., Vol 199, Issue 12, pp.1741-1745(1972年12月発行)を参照されたい。これらの成分の相対的な量、および温度は、平衡ラインがどこになるかを決める。供給されるSiClの量は、FBRの壁におけるエッチング条件、およびFBR内できる限り多くの部分において析出する析出条件を作り出すに十分な量とする。FBRに供給される析出ガスは、FBR(内部領域)の内部における析出モードに関して、1molのシリコンあたり3.0〜3.3molのClを供給するのに十分な成分を含むものとすることができる。壁において、FBRに供給されるエッチングガスは、反応をエッチングモードに関して、1molのシリコンあたり3.8〜4.0molのClを供給するのに十分な成分を含むものとすることができ、また、6mol%のクロロシランにおける総クロロシラン中の水素に対して最小限の濃度とすることができる。壁または壁近傍に供給されるエッチングガスは、壁において純粋なSiClであり、または、他のガス(例えば、窒素またはアルゴンなどの希釈ガス)と混合したSiClとすることができ、ただしこれは、Cl,SiおよびHの総モル数がここで説明した基準を満たしている場合である。
【0013】
図1は、典型的なプロセスフロー図である。シーメンス供給ガス流101を、細いロッドを容れたシーメンス反応器102に供給する。シーメンス供給ガス流101は、HSiClおよび水素を含む。細いロッドは2つの多結晶シリコン種ロッドで形成し、これらを多結晶シリコンブリッジで互いに連結する。シーメンス供給ガス流101から細いロッド上に多結晶シリコンが析出し、U字形状ロッド103の形で多結晶シリコン生成物を生成する。ロッド103は、バッチの最後でシーメンス反応器102から取り出す。シーメンス反応器102からのベントガス流104には、HSiCl、SiCl、水素、HClおよびシリコン粉末が含まれうる。理論に拘泥しないが、シーメンス反応器の壁はFBRの壁よりも意図的に冷たくなり、それは、シーメンス反応器の壁が、流体(空気、水または他の熱伝導媒体)の強制対流により冷却されるからであり、このことが、なぜシーメンス反応器では壁に対するシリコン析出の問題が生ずることがないのに、FBRでは生じるのかの原因と考えられる。
【0014】
シーメンス反応器102からのベントガス流104は、例えば、塵埃除去装置106にベントガス流104を供給することにより処理され、配水などの流体によって冷却され、これによりライン108から微細なシリコン粉末を除去する。塵埃除去装置106は、焼結金属ブローバックフィルタ、接触型凝縮器またはこれらの組合せを含んでよく、例えば、ベントガス流104ラインにおいて接触型凝縮器(図示せず)の上流または下流に配置した焼結金属ブローバックフィルタとすることができる。
【0015】
結果的に生じる処理されたベントガス流110は、HSiClおよびSiClを含み、その後蒸留塔115において分離され、HSiClを含む反応物の流れ112およびほぼSiClからなるエッチングガス流114を形成する。例えば、蒸発器116を用いて反応物の流れ112を加熱することができる。接触型濃縮器および/または塵埃除去装置106からのオーバーヘッド蒸気118は、水素および非濃縮のクロロシランを含む。オーバーヘッド蒸気118および反応物の流れ112は、随意に、この反応物の流れ112がFBR105に供給される前に、再結合することができる。この反応物の流れ112には、随意に、補充流119において、追加供給ガス、追加ガスを、またはその両方を補充することができる。結果的に生じる析出ガス流113(水素およびHSiClを含む)は、随意にヒータ(図示せず)で加熱し、またFBR105中の分配器117の内部領域に供給することができ、この分配器117は、例えばノズルを有する分配プレートとする。エッチングガス114は、蒸発器120により加熱することができ、また分配器117の周辺領域に供給する。
【0016】
多結晶シリコンは、析出ガス流113からシリコン種粒子上に析出する。ビーズ型の多結晶シリコン生成物は、FBR105から生成物の流れ122として取り出す。第2のベントガス流124は、水素、HCl、ならびに、HSiClおよびSiClなどのクロロシランを含み、FBR105から取り出して、回収システム126に送給する。水素は回収し、ライン128によりシーメンス反応器102またはFBR105のいずれかに送給する。クロロシランはライン130により回収し、リサイクルするまたは販売することができる。HClはライン128により回収し、また販売することができる。SiClはFBR105へとリサイクルすることができる。代案として、SiClは、水素化または別の方法でHSiClに変換し、結果的に生じたHSiClをシーメンス反応器102でリサイクルすることができる。
【0017】
図2は、図1のFBR105に用いる典型的な分配器プレート117の頂面図を示す。分配器プレート117は、内部領域に中央ノズル204を有し、FBR105に析出ガス流113を導入し、また、複数の周辺ノズル202を有し、FBR105の周辺領域にエッチングガス流114を導入する。当業者であれば、図2のノズルの形態は例示的なものであり、これに限定されないことを認識するであろう。例えば、内部領域ノズル204は分配器117の中央にあっても、中央になくてもよく、1つ以上の内部領域ノズル204があってもよい。内部領域ノズル204は、分配器プレート117またはその上方にクロロシランおよび水素を注入することができる。周辺領域ノズル202は、内部領域ノズル204に対してより近くても、より遠くにあってもよい。より多くの、またはより少ない数の周辺領域ノズル202を用いてもよい。あるいは、図3において以下で示すように、分配器プレートを設けずに、析出ガス流およびエッチングガス流を異なるポートからFBR105に導入することによっても、同じ効果を得ることができる。
【0018】
当業者であれば、図1に示すプロセスも例示的なものであり、特許請求の範囲に記載の本発明の範囲を限定するものではないことを認識するであろう。例えば、代替案として、シーメンス反応器102からのベントガス流104を、中間処理工程なしで直接析出ガス流113としてFBR105に供給することができる(つまり、シーメンス反応器102とFBR105との間に一式操作がなにもない)。この例では、分配器プレート117の周辺領域ノズル202に供給されるエッチングガスは、例えば回収システム126を含むソースなどの他のソースから得ることになるであろう。
【0019】
図3は、他の実施形態で用いるのに適したFBRの底部300の断面を示す。FBRの底部300にはシリコン粒子301が含まれ、この粒子は十分に大きくなると、生成物引出しチューブ302から排出される。HSiClおよび水素を含む析出ガスは、1つ以上の注入ノズル303,304から供給し、これらノズルは、生成物引出しチューブ302の上方に位置する円錐グリッドに指向させる。理論に拘泥しないが、グリッドの円錐傾斜によってシリコン粒子301の排出が容易になる一方、供給ガス(析出ガスおよびエッチングガス)の注入ノズル303を水平に指向させることで、供給ガスプレナムへのシリコン粒子301のにじみを低減することができると考えられる。円錐グリッドの角度は、水平に対して60°以下、あるいは水平に対して20〜60°の範囲の角度とすることができる。
【0020】
注入ノズル303は、水平オリフィス306を有する。すなわち、これらオリフィスはFBRの壁305に対して水平方向に指向する。図3の左側および右側に水平オリフィス306の典型的な実施形態を2つ示すが、当業者であれば、これらの実施形態は例示的なものであり、これに限定するものではないことを認識するであろう。例えば、水平オリフィス306は、FBRの壁305に水平に貫通させた孔(左側の306)とする、または水平オリフィス(右側の306)をFBRに突入するノズル304の端部とすることができる。ほぼSiClからなるエッチングガスは、周辺ノズル304から供給する。
【0021】
シーメンス反応器
このプロセスで用いるシーメンス反応器は、普通のシーメンス反応器、例えば米国特許第2,999,735号、同第3,011,877号、同第3,862,020号、または同第3,961,003号に開示されているシーメンス反応器とすることができる。例えば、シーメンス反応器の操作は、以下のとおりに実施できる。多結晶シリコン種ロッドをシーメンス反応器内に直立させ、かつ互いに平行となるように配置する。これら種ロッドを2個以上互いにブリッジにより連結することで、U字状ロッドを形成できる。700℃〜1400℃、あるいは1000℃〜1200℃、あるいは1100℃〜1150℃の範囲の温度に達するまで、U字状ロッドを加熱する。シーメンス反応器は、13kPa(2psig)〜3450kPa(500psig)、あるいは6kPa(1psig)〜1380kPa(200psig)、さらにあるいは100kPa(1bar)〜690kPa(100psig)の範囲における圧力下で動作させることができる。
【0022】
シーメンス供給ガスは、底面の流入口からシーメンス反応器に供給する。シーメンス供給ガスは、水素およびHSiClを含むものとすることができる。シーメンス供給ガスは、随意にSiClをさらに含んでよい。供給ガスによりU字状ロッド上にシリコンが析出し、それによりU字状ロッドの直径が増大する。シーメンス供給ガス流は、5%〜75%のHSiClを含むものとすることができる。シーメンス供給ガスは、水素1モル当たり0.015モル〜0.3モルのHSiClを含むものとすることができる。あるいは、シーメンス供給ガスは、水素1モル当たり0.03モル〜0.15モルのHSiClを含んでもよい。理論に拘泥しないが、シーメンス供給ガスに含まれるシリコンの総量に対して、20%〜50%あるいは20%〜40%の範囲における量の多結晶シリコン生成物が、シーメンス反応器から得られると考えられる。
【0023】
流動床反応器
本発明に用いるFBRは、普通のFBR、例えば米国特許第5,077,028号に開示されているFBRとすることができる。例えば、FBRの操作は以下のとおりに実施できる。シリコンの種粒子をFBR内に配置し、流動化させる。種粒子の供給源は当該技術分野において既知である。例えば、種粒子は、顆粒状の多結晶シリコンの機械的摩耗によって、または、シーメンス反応器内で生成された多結晶シリコンを粉砕することによって、得ることができる。床を流動化するのに用いるガス(流動化ガス)は、水素、アルゴン、ヘリウム、窒素、またはこれらの組合せなどの希釈ガスを含むものとすることができる。あるいは、流動化ガスおよび/または反応性ガス(これらは析出ガス流113を構成する)は、シーメンス反応器からのベントガス流から生じるものであってよく、例えば、析出ガス流は、シーメンス反応器からのベントガス流の全部または一部分を含むものとすることができる。あるいは、流動化ガスは、希釈ガスと、シーメンス反応器からのベントガス流の全部または一部分との組合せを含んでもよい。シリコンは種粒子の表面上に析出して、種粒子の直径を増大させる。得られるビーズ状の生成物を流動床から取り出し、より多くの種粒子を導入してもよい。
【0024】
エッチングガスは、FBRの壁近傍に導入する。エッチングガスはほぼSiClからなる。エッチングガスは、随意にさらに、希釈ガス(例えば、水素もしくはアルゴン)、または上記段落[0003]に記載の反応の平衡を析出モードにシフトさせない任意の他のガス含むものとすることができる。理論に拘泥しないが、エッチングガスによりFBRの壁近傍の反応が析出モードよりもエッチングモードになるものと考えられる。局所的なエッチングモードにより、FBRの壁に対するシリコン析出を防止および/または排除することができる。
【0025】
FBR内部の温度は900℃〜1410℃、あるいは1100℃〜1300℃、さらにあるいは1100℃〜1250℃の範囲とすることができる。FBR内部の圧力は、少なくとも2気圧、あるいは5気圧〜15気圧、さらにあるいは5〜8気圧とすることができる。当業者であれば、上限は例示的なものであり、化学的に限定されるものではないが、15気圧を超える圧力で動作するFBRを構築するのは実用的ではないことを認識するであろう。
【0026】
ベントガス流をシーメンス反応器からFBR内に直接供給すれば、FBRに対する熱供給が少なくて済むため、エネルギー節減の利点を得ることができる。あるいは、シーメンス反応器からのベントガス流に追加のHSiClを随意に補充してもよい。FBRへの供給流中のクロロシランの濃度は、20mol%〜50mol%、あるいは25mol%〜35mol%の範囲とすることができる。理論に拘泥しないが、クロロシランの濃度が50%より高い場合には、過剰量の微細粉末が形成される可能性があると考えられる。流動化されたシリコン粒子の平均直径は、0.5mm〜4mm、あるいは0.6mm〜1.6mmの範囲となりうる。流動化した粒子による流動床におけるガスの滞留時間は、0.5秒〜4秒、あるいは0.5秒〜2秒の範囲となりうる。
【0027】
最小流動化速度および設計動作速度は、種々の要因に基づいて当業者が決定することができる。最小流動化速度は、重力加速度、流体密度、流体粘度、固相密度および固体粒子径を含む要因の影響を受けることがある。動作速度は、熱伝導特性および反応速度特性を含む要因、例えば流動床の高さ、総表面積、供給ガス流中のシリコン前駆体の流量、圧力、ガスおよび固相の温度、化学種の濃度、ならびに熱力学的平衡点の影響を受けることがある。
【0028】
上記のシリコン粒子サイズのレジューム(現象領域)として、流動床は、ゲルダート群Bの領域に納まり、そのなかの最も大きい粒子はゲルダート群Dに納まる。ゲルダート群Bの粒子による流動床は、比較的大きな泡を形成する傾向が特徴的であり、これら泡は、注入ポイントから上昇するにつれて成長する。これら泡が大きくなると、流動床のエマルション相において固相の局所的な再循環を生ずる。この作用は流動床の内部の中心で起こる傾向があり、そのためエマルション相の混合を誘発する。しかしながら、流動床の周辺近傍では、泡の上昇があまり起こらず、壁が邪魔になり、泡によって誘発される固相の動きが、中心近傍で起きるよりも優勢的ではない。この特徴により、本発明者らは、流動床の自然な透過性を利用して、壁近傍におけるSiClの注入により、壁の周辺で優先的に上昇する傾向となり、これにより、粒子によるブランケットをゾーン形成し、また壁を反応性がより少ない供給組成物で覆うことができるようになる。
【0029】
シーメンス反応器がバッチプロセスで動作し、FBRが連続プロセスで動作することを、当業者は認識している。さらに、シーメンス反応器を出るベントガス流組成物は、バッチの過程で変化しうる。したがって、複数(2つ以上)のシーメンス反応器からのベントガスを組み合せて、析出ガスとしてFBRに直接的にまたは間接的に供給されるベントガス流を形成するか、または、例えばFBRへ供給される析出ガス流の変動が最小となるように、FBRへ供給される析出ガス流に追加のHSiCl、SiCl、水素またはこれらの組合せを補充してもよいことを、当業者は認識するであろう。さらに、並列に構成される1つ以上の流動床反応器に、シーメンス反応器からのベントガス流を供給してもよい。理論に拘泥しないが、析出ガス流にHSiClを含むクロロシランを補充することにより、シリコンの生産率を増大させることができると考えられる。理論に拘泥しないが、(例えば図1に示すような、析出ガス流113、エッチングガス流114、またはその両方のような)FBRへの供給ガス流にSiClを補充することにより、FBRの壁、加熱器の壁および供給分配器117上に望ましくない析出を防ぐことができると考えられる。
【0030】
理論に拘泥しないが、FBRでは、理論最大値の90%〜50%、または40%の収率差がある析出となり得る。理論に拘泥しないが、本プロセスの別の利点は、部分的に変換されたシーメンス反応器からの供給ガスが組成物を含み、この組成物は、大気圧下で1250℃未満の温度ではシリコンを析出させることができないものであると考えられる。このような詳細な点により、ホットウォール反応器、抵抗加熱供給管、またはFBRプロセスに通常用いられるものよりも効率的な他の手段による加熱システムの設計が可能となる。
【0031】
本願において、範囲の開示は、範囲自体およびそれに包括される全てをも含み、端点も同様に含む。例えば、700〜1400の範囲の開示は、700〜1400の範囲だけでなく、700、850、1000および1400を個別に、範囲内に包括される任意の他の数値も同様に含む。さらに、例えば700〜1400の範囲の開示は、部分範囲、例えば1000〜1400および1000〜1100、範囲内に包括される任意の他の部分範囲を同様に含む。同様に、マーカッシュ群の開示は、群全体、任意の個別の構成物およびそれに包括される部分群をも含む。例えば、水素、HSiCl、SiClおよび塩化水素といったマーカッシュ群の開示は、構成物である水素を別個に含んだり;HSiClおよびSiClの部分群を含んだり;ならびにそれに包括される任意の他の個別な構成物および部分群を含む。本願明細書において、「a」、「an」および「the」の冠詞は、それぞれ1つ以上である場合も意味しうる。
【0032】
回収システム
FBRからのベントガス流は、任意の普通の手段によって回収できる。FBRからのベントガス流は、普通の装置を用いて冷却してもよい。微細なシリコン粉末は、接触型コンデンサ、焼結金属ブローバック濾過アセンブリ、またはサイクロンとフィルタアセンブリとの組合せなど普通の装置を用いて取り出すことができる。
【0033】
あるいは、FBRからのベントガス流を接触型コンデンサに供給して、液体クロロシランにおける固形物を破砕した後、この微細シリコン粉末を例えばスプレー乾燥機内で乾燥してもよい。得られるシリコン粉末は中和し、販売することができる。あるいは、微細シリコン粉末およびクロロシランを回収し、シーメンス反応器への供給流として用いるためのクロロシランに変換してもよい。当業者は、必要以上の実験を伴うことなく、好適な回収システムを選択することができる。
【産業上の利用可能性】
【0034】
理論に拘泥しないが、FBRの壁近傍に供給するエッチングガスにより、析出モードからエッチングモードに局所的に反応がシフトすると考えられる。しかしながら、エッチングガスの寄与は、FBRへのガス全体の供給速度と比較して小さいので、FBR中のバルクの化学的性質は、析出モードのままである。理論に拘泥しないが、FBRは、壁近傍にエッチングガスを供給しないFBRと比べて、流動床の内部領域に供給される、より反応性がある析出ガスで動作させることができ、過剰量の粉塵を生じることもなく、壁へのシリコンの成長を減少させることができると考えられる。さらに、ここで説明したプロセスによれば、FBRを真の連続モードで長時間動作させることができ、すなわち、シリコン析出が止まったり、緩慢になったりすることがなく、FBRの壁または他の内部からシリコン析出物をエッチングすることができる。
【0035】
供給システムおよび回収システムの重複がないことと、プロセスのより容易な加熱とが組み合わさった利点により、シーメンス反応器プロセスと統合されたFBRはより扱いやすく、かつ、経済的なものとすることができる。シーメンス反応器の多結晶シリコン生成物は、太陽電池または集積回路の用途のいずれにとっても好適となることができる。FBRの多結晶シリコン生成物は太陽電池用途に好適なものとすることができる。
【0036】
当業者であれば、SiClおよび他のクロロシランに関連する上記の開示は例示的なものであり、限定されないことを認識するであろう。本発明のプロセスおよびFBRでは、他のハロシラン系を用いることもでき、例えば、シリコンモノマーは、シラン、または、クロロシランもしくはブロモシランなどのハロシランを含んでもよい。この例では、析出ガスがトリブロモシランを含む場合、代替的にエッチングガスはほぼテトラブロモシランからなるものとすることもできる。
【符号の説明】
【0037】
101 シーメンス供給ガス流
102 シーメンス反応器
103 多結晶シリコンロッド
104 シーメンスベントガス流
105 流動床反応器
106 塵埃除去装置
108 取り出しライン
110 処理済ベントガス流
112 反応物流
113 析出ガス流
114 第2の流れ
115 蒸留塔
116 蒸発器
117 分配器
118 オーバーヘッド蒸気
119 補充流
120 蒸発器
122 生成物流
124 第2のベントガス流
126 回収システム
128 水素/HClライン
130 クロロシランライン
202 周辺ノズル
204 中央ノズル
300 FBRの底部
302 生成物引出しチューブ
303 注入ノズル
304 周辺ノズル
305 BRの壁
306 水平オリフィス

図1
図2
図3