(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
エンジンと、このエンジンを始動させるスタータと、前記エンジンによって駆動される油圧ポンプと、前記油圧ポンプの吐出油が供給されることによって蓄圧するアキュムレータと、前記アキュムレータに蓄えられた圧油により車輪の制動を行うブレーキ装置と、前記ブレーキ装置に供給される圧油を制御するブレーキバルブとを備えたホイール式作業車両に適用され、
前記アキュムレータであって、前記油圧ポンプと前記ブレーキバルブとを繋ぐ第1管路に接続された第1アキュムレータと、
前記アキュムレータであって、前記油圧ポンプと前記第1アキュムレータとの間の前記第1管路から分岐した第2管路に接続された第2アキュムレータと、
前記スタータが作動状態であるか否かを検出する作動検出手段と、
前記エンジンの回転数を検出する回転数検出手段と、
前記第2管路に設けられて前記第1管路と前記第2アキュムレータとを連通する開位置と遮断する閉位置とに弁位置を切換可能な開閉弁と、
前記作動検出手段によって検出される前記スタータの作動状態、および、前記回転数検出手段によって検出されるエンジンの回転数に基づき前記開閉弁を制御する弁制御手段とを備え、
前記弁制御手段は、前記作動検出手段により前記スタータの作動状態が検出されると、前記回転数検出手段により検出されるエンジン回転数が予め設定された設定回転数に達するまで前記開閉弁の弁位置を閉位置に制御し、エンジン回転数が前記設定回転数に達した後は前記開閉弁の弁位置を開位置に制御する
ことを特徴とするホイール式作業車両の油圧制御装置。
エンジンと、このエンジンを始動させるスタータと、前記エンジンによって駆動される油圧ポンプと、前記油圧ポンプの吐出油が供給されることによって蓄圧するアキュムレータと、前記アキュムレータに蓄えられた圧油により車輪の制動を行うブレーキ装置と、前記ブレーキ装置に供給される圧油を制御するブレーキバルブとを備えたホイール式作業車両に適用され、
前記アキュムレータであって、前記油圧ポンプと前記ブレーキバルブとを繋ぐ第1管路に接続された第1アキュムレータと、
前記アキュムレータであって、前記油圧ポンプと前記第1アキュムレータとの間の前記第1管路から分岐した第2管路に接続された第2アキュムレータと、
前記スタータが作動状態であるか否かを検出する作動検出手段と、
前記第2管路に設けられて前記第1管路と前記第2アキュムレータとを連通させる開位置と遮断する閉位置とに弁位置を切換可能な開閉弁と、
前記作動検出手段によって検出される前記スタータの作動状態に基づき前記開閉弁を制御する弁制御手段とを備え、
前記弁制御手段は、前記作動検出手段により前記スタータの作動状態が検出されると、前記開閉弁の弁位置を閉位置に制御し、前記スタータの作動状態が検出されないと前記開閉弁の弁位置を開位置に制御する
ことを特徴とするホイール式作業車両の油圧制御装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前述のように、従来の油圧制御装置は、エンジンを始動させる際に油圧ポンプからアキュムレータへの圧油の供給を中止する油圧回路を備える。この油圧回路は、油圧ポンプとアキュムレータとの間に介在する切換弁を含むため、例えばその切換弁がスティックなどの動作不良を起こした場合には、エンジンの始動時以外の通常の動作状態において油圧ポンプからアキュムレータへの圧油の供給を行うことができない事態が起きるおそれがある。
【0005】
本発明は前述の事情を考慮してなされたものであり、その目的は、エンジンを始動させる際にはエンジンに作用する負荷を軽減してエンジンを速やかに始動させることができ、かつ、油圧ポンプからアキュムレータへの圧油の供給を確実に行うことができるホイール式作業車両の油圧制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前述の目的を達成するために本発明に係るホイール式作業車両の油圧制御装置は次のように構成されている。
【0007】
〔1〕 本発明に係るホイール式作業車両の油圧制御装置は、エンジンと、このエンジンを始動させるスタータと、前記エンジンによって駆動される油圧ポンプと、前記油圧ポンプの吐出油が供給されることによって蓄圧するアキュムレータと、前記アキュムレータに蓄えられた圧油により車輪の制動を行うブレーキ装置と、前記ブレーキ装置に供給される圧油を制御するブレーキバルブとを備えたホイール式作業車両
に適用され、前記アキュムレータであって、前記油圧ポンプと前記ブレーキバルブとを繋ぐ第1管路に接続された第1アキュムレータと、前記アキュムレータであって、前記油圧ポンプと前記第1アキュムレータとの間の前記第1管路から分岐した第2管路に接続された第2アキュムレータと、前記スタータが作動状態であるか否かを検出する作動検出手段と、前記エンジンの回転数を検出する回転数検出手段と、前記第2管路に設けられて前記第1管路と前記第2アキュムレータとを連通する開位置と遮断する閉位置とに弁位置を切換可能な開閉弁と、前記作動検出手段によって検出される前記スタータの作動状態、および、前記回転数検出手段によって検出されるエンジンの回転数に基づき前記開閉弁を制御する弁制御手段とを備え、前記弁制御手段は、前記作動検出手段により前記スタータの作動状態が検出されると、前記回転数検出手段により検出されるエンジン回転数が予め設定された設定回転数に達するまで前記開閉弁の弁位置を閉位置に制御し、エンジン回転数が前記設定回転数に達した後は前記開閉弁の弁位置を開位置に制御することを特徴とする。
【0008】
この「〔1〕」に記載のホイール式作業車両の油圧制御装置において、スタータの作動状態を作動検出手段が検出した場合、回転数検出手段により検出されるエンジン回転数が予め設定された設定回転数に達するまでの間、弁制御手段は開閉弁の弁位置を閉位置に制御する。これにより第1管路から第2管路に圧油は流入せず、油圧ポンプの吐出油は第1,第2アキュムレータのうちの第1アキュムレータのみに供給される。
【0009】
つまり、「〔1〕」に記載の油圧制御装置は、エンジンを始動させる際にエンジンの回転数が予め設定された設定回転数に達するまで、油圧ポンプの吐出油を第1,第2アキュムレータのうちの第1アキュムレータのみに供給することによって、油圧ポンプの吐出油を第1,第2アキュムレータの両方に同時に供給する場合よりも油圧ポンプに作用する負荷を軽減することができ、これにより、エンジンに作用する負荷を軽減してエンジンを速やかに始動させることができる。
【0010】
また、「〔1〕」に記載の油圧制御装置において、開閉弁の弁位置が閉位置のときに油圧ポンプの吐出油を供給されなくなるアキュムレータは、第1,第2アキュムレータのうちの第2アキュムレータのみである。したがって、万一、開閉弁が閉位置でスティックした場合には、油圧ポンプの吐出油を第2アキュムレータには供給できなくなるものの、第1アキュムレータには供給することができる。これによって、「〔1〕」に記載の油圧制御装置は、油圧ポンプからアキュムレータへの圧油の供給を確実に行うことができる。
【0011】
〔2〕 本発明に係るホイール式作業車両の油圧制御装置は、エンジンと、このエンジンを始動させるスタータと、前記エンジンによって駆動される油圧ポンプと、前記油圧ポンプの吐出油が供給されることによって蓄圧するアキュムレータと、前記アキュムレータに蓄えられた圧油により車輪の制動を行うブレーキ装置と、前記ブレーキ装置に供給される圧油を制御するブレーキバルブとを備えたホイール式作業車両
に適用され、前記アキュムレータであって、前記油圧ポンプと前記ブレーキバルブとを繋ぐ第1管路に接続された第1アキュムレータと、前記アキュムレータであって、前記油圧ポンプと前記第1アキュムレータとの間の前記第1管路から分岐した第2管路に接続された第2アキュムレータと、前記スタータが作動状態であるか否かを検出する作動検出手段と、前記第2管路に設けられて前記第1管路と前記第2アキュムレータとを連通させる開位置と遮断する閉位置とに弁位置を切換可能な開閉弁と、前記作動検出手段によって検出される前記スタータの作動状態に基づき前記開閉弁を制御する弁制御手段とを備え、前記弁制御手段は、前記作動検出手段により前記スタータの作動状態が検出されると、前記開閉弁の弁位置を閉位置に制御し、前記スタータの作動状態が検出されないと前記開閉弁の弁位置を開位置に制御する
ことを特徴とする。
【0012】
この「〔2〕」に記載のホイール式作業車両の油圧制御装置において、弁制御手段は、スタータの作動状態が作動検出手段により検出されている間、開閉弁の弁位置を閉位置に制御する。開閉弁の弁位置が閉位置に制御された状態において、第1管路から第2管路に圧油は流入せず、油圧ポンプの吐出油は第1,第2アキュムレータのうちの第1アキュムレータのみに供給される。
【0013】
これにより「〔2〕」に記載の油圧制御装置は、エンジンを始動させる際にスタータが作動状態の間だけ、油圧ポンプの吐出油を第1,第2アキュムレータのうちの第1アキュムレータのみに供給することによって、油圧ポンプの吐出油を第1,第2アキュムレータの両方に同時に供給する場合よりも油圧ポンプに作用する負荷を軽減することができ、これにより、エンジンに作用する負荷を軽減してエンジンを速やかに始動させることができる。
【0014】
また、「〔2〕」に記載の油圧制御装置において、開閉弁の弁位置が閉位置のときに油圧ポンプの吐出油を供給されなくなるアキュムレータは、第1,第2アキュムレータのうちの第2アキュムレータのみである。したがって、万一、開閉弁が閉位置でスティックした場合には、油圧ポンプの吐出油を第2アキュムレータには供給できなくなるものの、第1アキュムレータには供給することができる。これによって、「〔2〕」に記載の油圧制御装置は、油圧ポンプからアキュムレータへの圧油の供給を確実に行うことができる。
【0015】
〔3〕 本発明に係るホイール式作業車両の油圧制御装置は、「〔1〕」または「〔2〕」に記載のホイール式作業車両の油圧制御装置において、前記油圧ポンプから吐出される作動油の温度を検出する作動油温度検出手段と、この作動油温度検出手段により検出された温度が所定温度よりも低いか否かを判定する温度判定手段とを備え、前記弁制御手段は、前記作動検出手段により前記スタータの作動状態が検出された状態であり、かつ、前記温度判定手段により作動油の温度が前記所定温度よりも低いと判定された状態である場合に、前記開閉弁の弁位置を閉位置に制御することを特徴とする。
【0016】
作動油の粘度は温度に依存し、その作動油の温度が低下するほど大きくなり、エンジンの始動の際にエンジンに作用する負荷を大きくする。「〔3〕」に記載の油圧制御装置において、所定温度は、作動油の粘度がエンジンの始動に影響を及ぼす場合の作動油の温度であるか否かに基づいて設定されるものであるため、「〔3〕」に記載の油圧制御装置は、エンジンを始動させる際、作動油の粘度がエンジンの始動に影響を及ぼす場合(所定温度よりも低い温度である場合)に、開閉弁の弁位置を閉位置とすることによって、エンジンに作用する負荷を軽減させるようにし、作動油の粘度がエンジンの始動に影響を及ぼさない場合(所定温度以上の温度の場合)に、開閉弁の弁位置を閉位置とせずに開位置とすることによって、エンジンに作用する負荷を軽減させることなく、第2アキュムレータに蓄圧を行わせることができる。
【0017】
〔4〕 本発明に係るホイール式作業車両の油圧制御装置は、「〔1〕」〜「〔3〕」のいずれか1に記載の発明において、請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の発明において、前記第1,第2アキュムレータの総容量に占める前記第1アキュムレータの容量の割合は、前記第1アキュムレータの容量が前
記ブレーキ装置を1回以上の所定回数作動させることが可能な範囲で、前記総容量に占める前記第2アキュムレータの容量の割合よりも小さく設定されたことを特徴とする。
【0018】
この「〔4〕」に記載のホイール式作業車両の油圧制御装置は、第1,第2アキュムレータのうちの第1アキュムレータのみに油圧ポンプの吐出油を供給する際にエンジンに作用する負荷を、第1,第2アキュムレータの総容量を減らすことなく軽減することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明に係るホイール式作業車両の油圧制御装置によれば、エンジンを始動させる際にエンジンに作用する負荷を軽減してエンジンを速やかに始動させることができ、かつ、油圧ポンプからアキュムレータへの圧油の供給を確実に行うことができる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の第1,第2実施形態に係るホイール式作業車両の油圧制御装置について説明する。
【0022】
[第1実施形態]
第1実施形態に係るホイール式作業車両の油圧制御装置について
図1〜
図3を用いて説明する。
【0023】
図1に示すホイール式油圧ショベル1は、左右1対のフロントホイール2aおよび左右1対のリアホイール2bを有する走行体2と、この走行体2の上部に旋回可能に結合した旋回体3と、この旋回体3の前部に装備されたフロント作業装置7とを備える。旋回体3はフロント作業装置7の左側方に設けられた運転室4と、この運転室4の後方に設けられた機械室5と、この機械室5の後方に設けられたカウンタウェイト6とを備える。フロント作業装置7は、旋回体3に回動可能に結合したブーム8、このブーム8の先端部に回動可能に結合したアーム9と、このアーム9の先端部に回動可能に結合したバケット10とを備える。これらブーム8、アーム9、バケット10はそれぞれブームシリンダ8a(油圧シリンダ)、アームシリンダ9a(油圧シリンダ)、バケットシリンダ10a(油圧シリンダ)の伸縮により駆動されるようになっている。
【0024】
ホイール式油圧ショベル1は、フロントホイール2aを制動するフロントブレーキ装置11(油圧式ブレーキ装置)と、リアホイール2bを制動するリアブレーキ装置12(油圧式ブレーキ装置)とを備える。本発明の第1実施形態に係る油圧制御装置20は、それらのフロントブレーキ装置11およびリアブレーキ装置12を制御するものであり、内燃機関であるディーゼルエンジン21と、このディーゼルエンジン21を始動させるスタータ22と、ディーゼルエンジン21の出力が伝達されて駆動される油圧ポンプ23と、この油圧ポンプ23の吐出油が供給されて蓄えられる第1アキュムレータ24,25および第2アキュムレータ26,27とを備える。
【0025】
第1アキュムレータ24は、油圧ポンプ23の吐出油が供給さることによって、フロントブレーキ装置11の駆動に用いられる圧油を蓄えるものである。第1アキュムレータ25は、油圧ポンプ23の吐出油が供給されることによって、リアブレーキ装置12の駆動に用いられる圧油を蓄えるものである。これらの第1アキュムレータ24,25は、油圧ポンプ23と第1管路28を介して接続されている。第1管路28にはアキュムレータチャージバルブ30が設けられている。このアキュムレータチャージバルブ30は、油圧ポンプ23から第1アキュムレータ24,25に向かう圧油の流れを許可し、この流れと逆向きの圧油の流れを阻止するチェック弁(図示省略)と、これと同様に油圧ポンプ23から第1アキュムレータ25に向かう圧油の流れを許可し、第1アキュムレータ24,25および第2アキュムレータ26,27に蓄えられる圧力(以下「チャージ圧」という)が所定圧力(例えば20Mpa)以上になった状態において第1管路28内の圧力を作動油タンク31に排出する圧力制御弁(図示省略)を備える。
【0026】
第2アキュムレータ26,27は、第1管路28から分岐した第2管路29に接続されている。そして、油圧制御装置20は、第2管路29に設けられ第1管路28と第2アキュムレータ26,27の間に介在する開閉弁32を備える。この開閉弁32の弁位置は、開位置(
図2の下側の弁位置)と、閉位置(
図2の上側の弁位置)の2位置である。つまり、開閉弁32の弁位置が開位置のときに第2アキュムレータ26,27に油圧ポンプ23の吐出油が供給され、開閉弁32の弁位置が閉位置のときに第2アキュムレータ26,27への油圧ポンプ23の吐出油の供給が阻止される。また、開閉弁32は、スプリングリターン式で電気操作式の弁であり、開閉弁32のノーマル位置は、そのリターンスプリング32aによって開位置に規定されている。
【0027】
第1アキュムレータ24,25および第2アキュムレータ26,27に蓄えられた圧油は、ブレーキペダル34に連動するブレーキバルブ33を通じて、フロントブレーキ装置11またはリアブレーキ装置12に供給されるようになっている。
【0028】
油圧制御装置20はさらに、開閉弁32を制御するコントローラ40と、キースイッチ45とを備える。キースイッチ45はオフ位置(Off)、オン位置(On)、始動位置(Start)の3位置に切換操作されるものである。キースイッチ45がオン位置、始動位置に切り換えられた状態において、コントローラ40に電力が供給される。また、キースイッチ45が始動位置に保持された状態において、スタータ22が作動状態となる。キースイッチ45は始動位置からオン位置に自己復帰するようになっている。
【0029】
コントローラ40はCPU、ROM、RAMを備えるマイクロコンピュータであり、制御プログラムにより設定された作動検出手段41を備える。この作動検出手段41は、スタータ22が作動状態であるか否かを、キースイッチ45が始動位置に操作された状態であるか否かに基づき検出するものである。
【0030】
油圧制御装置20はさらに、油圧ポンプ23で扱われる作動油の温度を検出する作動油温度検出手段として、作動油の温度を油温検出信号(電気信号)に変換してコントローラ40に出力する作動油温度センサ46を備える。コントローラ40は、制御プログラムにより設定された温度判定手段42を備える。この温度判定手段42は、作動油温度センサ46からの油温検出信号を入力して、この油温検出信号に示された作動油の温度が所定温度よりも低いか否かを判定するものである。
【0031】
ところで、作動油の粘度は温度に依存し、作動油の温度が低下するほど大きくなり、ディーゼルエンジン21に接続された油圧ポンプの影響によりディーゼルエンジン21を始動させる際の負荷を大きくする。温度判定手段42において、作動油の温度を判定するための基準値となる所定温度は、作動油の粘度がディーゼルエンジン21の始動に影響を及ぼす負荷となるときの温度であるか否かに基づいて設定される。作動油の粘度がディーゼルエンジン21の始動に影響を及ぼす負荷となるときの温度は、実験等によって得られたものである。
【0032】
油圧制御装置20はさらに、ディーゼルエンジン21の出力軸の回転角度を回転検出信号(電気信号)変換して出力するロータリエンコーダ47を備える。コントローラ40は、制御プログラムにより設定された回転数算出手段43を備える。この回転数算出手段43は、ロータリエンコーダ47からの回転検出信号に示される回転角度に基づき、ディーゼルエンジン21の単位時間当たりの回転数を算出するものである。ロータリエンコーダ47と回転数算出手段43は、ディーゼルエンジン21の単位時間当たりの回転数(以下「エンジン回転数」という)を検出する回転数検出手段を構成している。
【0033】
コントローラ40は、制御プログラムにより設定された弁制御手段44を備える。この弁制御手段44は、作動検出手段41による検出の結果と、温度判定手段42による判定の結果と、回転数算出手段43によるエンジン回転数の算出結果とに基づき開閉弁32を制御するものである。具体的には、作動検出手段41によりスタータ22の作動状態が検出され、かつ、作動油温度センサ46により検出された作動油の温度が所定温度よりも低い温度であると温度判定手段42により判定された場合に、回転数算出手段43により算出されるエンジン回転数が予め設定されたアイドリング回転数(例えば800rpm)に達するまでの間は、開閉弁32の弁位置を閉位置に制御し、回転数算出手段43により算出されるエンジン回転数が予め設定された設定回転数であるアイドリング回転数(例えば800rpm)に達した後は開閉弁32の弁位置を開位置に制御するようになっている。
【0034】
このように構成された第1実施形態に係る油圧制御装置20の動作について
図3を用いて説明する。
図3において、実線はディーゼルエンジン21に作用する負荷を軽減するために開閉弁32の制御が行われた場合の動作を示し、2点鎖線は開閉弁32の制御が行われないかった場合の動作を示す。
【0035】
はじめに、ディーゼルエンジン21に作用する負荷を軽減するために開閉弁32が用いられた場合の動作について説明する。
図3(a)に示すように時点T1でキースイッチ45がオフ位置(Off)からオン位置(On)に操作されると、コントローラ40に電力が供給されてコントローラ40が起動する。これにより、作動油温度センサ46からの油温検出信号がコントローラ40に入力され、このコントローラ40の温度判定手段42は、その油温検出信号に示された作動油の温度が所定温度よりも低いか否かの判定を行う。今回、作動油の温度は所定温度よりも低いと判定されたとする。
【0036】
次に、時点T2でキースイッチ45が始動位置に操作されると、スタータ22が作動する。これに伴い、
図3(c)に実線で示すように、エンジン回転数が増加し始める。また、時点T2において、コントローラ40の作動検出手段41はキースイッチ45が始動位置に操作された状態であることに基づき、スタータ22が作動状態であることを検出する。今回は時点T1の経過後に、作動油の温度は所定温度よりも低いと温度判定手段42により判定されたため、作動検出手段41によりスタータ22の作動状態が検出された時点T2のタイミングで、コントローラ40の弁制御手段44は開閉弁32に制御信号を出力して、
図3(b)に実線で示すように開閉弁32をオンさせて、開閉弁32の弁位置を閉位置に制御する。その後、弁制御手段44は、回転数算出手段43により算出されるエンジン回転数が予め設定されたアイドリング回転数(800rpm)に達するまでの間、開閉弁32の弁位置を閉位置に保持する。
【0037】
開閉弁32は第2管路29に設けられて第1管路28と第2アキュムレータ26,27の間に介在するものであるため、開閉弁32の弁位置が閉位置に制御された状態においては、第1管路28から第2管路29に圧油は流入しないため、エンジン21の駆動により油圧ポンプ23の吐出油は第1アキュムレータ24,25および第2アキュムレータ26,27のうちの第1アキュムレータ24,25のみに供給される。そして、第1アキュムレータ24,25に蓄えられる圧力(チャージ圧)が
図3(e)に実線で示すように上昇することに伴い、油圧ポンプ23の吐出圧(ポンプ圧)も上昇し、これに伴って、油圧ポンプ23に作用する負荷が大きくなる。
【0038】
時点T3でキースイッチ45が始動位置からオン位置に戻されると、スタータ22は停止し、ディーゼルエンジン21は始動して自力でエンジン回転数を上昇させる。この状態においても引き続き油圧ポンプ23の吐出油は第1アキュムレータ24,25に供給され、この結果、時点T4で第1アキュムレータ24,25のチャージ圧およびポンプ圧は、
図3(e),(d)に示すように、チャージバルブ30により規定された所定圧力(20Mpa)に達する。このとき、チャージバルブ30は第1管路28内の圧力を作動油タンク31に排出する状態になり、これに伴ってポンプ圧は
図3(d)に示すようにタンク圧(略0Mpa)に低下する。
【0039】
その後、時点T5でエンジン回転数はアイドル回転数(800rpm)に達する。このとき、コントローラ40の弁制御手段44は、回転数算出手段43により算出されたエンジン回転数がアイドリング回転数(800rpm)に達したことに基づき、開閉弁32への制御信号の出力を停止させ、
図3(b)に実線で示すように開閉弁32をオフさせて、リターンスプリング32aにより開閉弁32の弁位置を開位置に復帰させる。
【0040】
このように時点T5で開閉弁32の弁位置が開位置になると、油圧ポンプ23の吐出油は第1管路28から第2管路29を通じて第2アキュムレータ26,27に供給される状態になるため、第1アキュムレータ24,25および第2アキュムレータ26,27の全体としては、第2アキュムレータ26,27の空き容量分だけ、チャージ圧が低下する(第1アキュムレータ24,25のチャージ圧は低下しない)。そして、時点T6で油圧ポンプ23の吐出油が第2アキュムレータ26,27に供給され始めたことに伴い、ポンプ圧はステップ的に立ち上がり、第2アキュムレータ26,27のチャージ圧は上昇を開始する。その後、時点T7でチャージバルブ30により規定された所定圧力(20Mpa)に達する。このとき、チャージバルブ30は第1管路28内の圧力を作動油タンク31に排出する状態となり、この結果、ポンプ圧はタンク圧(略0Mpa)に低下する。
【0041】
次に、開閉弁32が用いられない場合の動作について説明する。
図3(b)に2点鎖線で示すように、時点T2で開閉弁32の弁位置を閉位置に制御することが行われない場合、すなわち、開閉弁32の弁位置が開位置に維持された場合、スタータ22の作動は、油圧ポンプ23の吐出油が第1アキュムレータ24,25および第2アキュムレータ26,27の両方に供給されることと並行して行われることになる。このため、第1アキュムレータ24,25および第2アキュムレータ26,27の全体のチャージ圧およびポンプ圧は、
図3(e),(d)に2点鎖線で示すように、時点T2から上昇し始め、時点T8でチャージバルブ30により規定された所定圧力(20Mpa)に達する。また、エンジン回転数は、
図3(c)に2点鎖線で示すように、時点T2から上昇し始め、時点T9でアイドル回転数(800rpm)に達する。
【0042】
図3(c)に実線と2点鎖線とで示されたエンジン回転数の上昇の様子の比較により分かるように、時点T2で開閉弁32の弁位置が閉位置に制御された場合、すなわち第1アキュムレータ24,25および第2アキュムレータ26,27のうちの第1アキュムレータ24,25のみに油圧ポンプ23の吐出油が供給される場合は、開閉弁32の弁位置が閉位置に制御することが行われなかった場合、すなわち第1アキュムレータ24,25および第2アキュムレータ26,27の両方に同時に油圧ポンプ23の吐出油が供給される場合よりも早くエンジン回転数がアイドル回転数(800rpm)に達する。これは、第1アキュムレータ24,25および第2アキュムレータ26,27のうちの第1アキュムレータ24,25のみに油圧ポンプ23の吐出油が供給される状態の方が、第1アキュムレータ24,25および第2アキュムレータ26,27の両方に同時に油圧ポンプ23の吐出油が供給される状態よりも、油圧ポンプ23に作用する負荷が小さくなり、これに伴ってディーゼルエンジン21に作用する負荷が小さくなるからである。
【0043】
第1実施形態に係る油圧制御装置20によれば次の効果を得られる。
【0044】
第1実施形態に係る油圧制御装置20は、ディーゼルエンジン21を始動させる際にエンジン回転数が予め設定されたアイドル回転数(800rpm)に達するまで、油圧ポンプ23の吐出油を第1アキュムレータ24,25および第2アキュムレータ26,27のうちの第1アキュムレータ24,25のみに供給することによって、油圧ポンプ23に作用する負荷を軽減することができ、これにより、ディーゼルエンジン21に作用する負荷を軽減してエンジンを速やかに始動(アイドル回転数に到達)させることができる。
【0045】
第1実施形態に係る油圧制御装置20において、開閉弁32の弁位置が閉位置のときに油圧ポンプ23の吐出油を供給されなくなるのは第1アキュムレータ24,25および第2アキュムレータ26,27のうちの第2アキュムレータ26,27のみである。したがって、万一、開閉弁32が閉位置でスティックした場合でも、油圧ポンプ23の吐出油を第2アキュムレータ26,27には供給できなくなるものの、第1アキュムレータ24,25には供給することができる。これによって、第1実施形態に係る油圧制御装置20は、油圧ポンプ23からアキュムレータへの圧油の供給を確実に行うことができる。
【0046】
第1実施形態に係る油圧制御装置20において、弁制御手段44は、所定温度よりも低い作動油の温度が作動油温度センサ46により検出された場合に、開閉弁32の弁位置を閉位置に制御する。その所定温度は、作動油の粘度がディーゼルエンジン21の始動に影響を及ぼす負荷となるときの温度であるか否かに基づいて設定されるものであるため、第1実施形態に係る油圧制御装置20はディーゼルエンジン21を始動させる際、作動油の粘度がエンジンの始動に影響を及ぼさない場合に、開閉弁32の弁位置を閉位置とせずに開位置とすることによって、ディーゼルエンジン21に作用する負荷を軽減させずに、第2アキュムレータ26,27に蓄圧を行わせることができる。
【0047】
[第2実施形態]
本発明の第2実施形態に係るホイール式作業車両の油圧制御装置について
図4を用いて説明する。
図4に示すもののうち、
図2に示したものと同等のものに対しては
図2で使用した符号と同じ符号を付してある。
【0048】
図4に示すように、第2実施形態に係る油圧制御装置50は、第1実施形態に係る油圧制御装置20においてロータリエンコーダ47と回転数算出手段43、すなわち回転数検出手段を備えず、弁制御手段44とは異なる弁制御手段51を備える点で第1実施形態に係る油圧制御装置20とは構成が異なるが、その点以外の構成は第1実施形態に係る油圧制御装置20と同じである。
【0049】
第2実施形態に係る油圧制御装置50において、弁制御手段51は、作動検出手段41による検出の結果と、温度判定手段42による判定の結果とに基づき開閉弁32を制御するものである。具体的には、スタータ22の作動状態を作動検出手段41が検出している状態であり、かつ、作動油温度センサ46により検出された作動油の温度が所定温度よりも低い温度であると温度判定手段42により判定された状態であること場合に、開閉弁32の弁位置を閉位置に制御し、その場合以外は開閉弁32の弁位置を開位置に制御するものである。
【0050】
このように構成された第2実施形態に係る油圧制御装置50においては、スタータ22が始動位置からオン位置に戻った時点で、弁制御手段51が開閉弁32の弁位置を開位置に制御するため、ディーゼルエンジン21を始動させる際にディーゼルエンジン21に作用する負荷を軽減する期間はスタータ22が作動状態の間だけである。この結果、エンジン回転数がアイドル回転数(800rpm)に達する時点は、開閉弁32の弁位置をエンジン回転数がアイドル回転数(800rpm)に達するまで閉位置に制御する第1実施形態の場合の時点T5よりは遅く、開閉弁32を閉位置に制御しなかった場合の時点T9よりは早い。
【0051】
第2実施形態に係る油圧制御装置50によれば次の効果を得られる。
【0052】
第2実施形態に係る油圧制御装置50は、ディーゼルエンジン21を始動させる際にスタータ22が作動状態の間だけ、油圧ポンプ23の吐出油を第1アキュムレータ24,25および第2アキュムレータ26,27のうちの第1アキュムレータ24,25のみに供給することによって、油圧ポンプ23の吐出油を第1アキュムレータ24,25および第2アキュムレータ26,27の両方に同時に供給する場合よりも油圧ポンプ23に作用する負荷を軽減するこができ、これにより、ディーゼルエンジン21に作用する負荷を軽減してエンジンを速やかに始動(アイドル回転数に到達)させることができる。
【0053】
第2実施形態に係る油圧制御装置50の弁制御手段51は、第1実施形態に係る油圧制御装置20の弁制御手段44のようにエンジン回転数が予め設定されたアイドル回転数に達したか否かの判定を行わないので、開閉弁32の制御に用いられる制御プログラムを、第1実施形態に係る油圧制御装置20よりも簡単にすることができる。
【0054】
第2実施形態に係る油圧制御装置50は、第1実施形態に係る油圧制御装置20と同じように、油圧ポンプ23からアキュムレータへの圧油の供給を確実に行うことができる。また、ディーゼルエンジン21を始動させる際、ディーゼルエンジン21を始動させる際、作動油の粘度がエンジンの始動に影響を及ぼさない場合に、開閉弁32の弁位置を閉位置とせずに開位置とすることによって、ディーゼルエンジン21に作用する負荷を軽減させずに、第2アキュムレータ26,27に蓄圧を行わせることができる。
【0055】
前述の第1実施形態に係る油圧制御装置20および第2実施形態に係る油圧制御装置50は、作動油温度センサ46(作動油温度検出手段)と温度判定手段42を備え、温度判定手段42により作動油の温度が所定温度よりも低いと判定されることが開閉弁32を閉位置に制御する条件になっていたが、本発明は、作動油温度検出手段と温度判定手段を備えないもの、すなわち、作動油の温度が所定温度であることを開閉弁32の制御の条件としないものであってもよい。
【0056】
前述の第1実施形態に係る油圧制御装置20および第2実施形態に係る油圧制御装置50において、第1アキュムレータ24,25と第2アキュムレータ26,27の総容量に占める第1アキュムレータ24,25の割合については言及していないが、第1アキュムレータ24,25の容量の合計は、フロントブレーキ装置11およびリアブレーキ装置12のそれぞれを1回以上の所定回数作動させることが可能な容量であって、第2アキュムレータ26,27の容量の合計よりも小さく設定されていてもよい。これにより、第1アキュムレータ24,25および第2アキュムレータ26,27のうちの第1アキュムレータ24,25のみに油圧ポンプ23の吐出油を供給する際にディーゼルエンジン21に作用する負荷を、第1アキュムレータ24,25と第2アキュムレータ26,27の総容量を減らすことなく軽減することができる。
【0057】
前述の第1実施形態に係る油圧制御装置20および第2実施形態に係る油圧制御装置50が適用されるホイール式作業車両は、ホイール式油圧ショベルであったが、本発明が適用されるのはホイール式油圧ショベルに限定されるものではなく、ホイールローダなどの他のホイール式作業車両であってもよい。