特許第5779176号(P5779176)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5779176
(24)【登録日】2015年7月17日
(45)【発行日】2015年9月16日
(54)【発明の名称】液滴吐出ヘッドの製造方法
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/16 20060101AFI20150827BHJP
【FI】
   B41J2/16 513
   B41J2/16 511
【請求項の数】2
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2012-518399(P2012-518399)
(86)(22)【出願日】2011年5月31日
(86)【国際出願番号】JP2011062480
(87)【国際公開番号】WO2011152393
(87)【国際公開日】20111208
【審査請求日】2014年5月19日
(31)【優先権主張番号】特願2010-128581(P2010-128581)
(32)【優先日】2010年6月4日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004064
【氏名又は名称】日本碍子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100077665
【弁理士】
【氏名又は名称】千葉 剛宏
(74)【復代理人】
【識別番号】100116676
【弁理士】
【氏名又は名称】宮寺 利幸
(74)【復代理人】
【識別番号】100149261
【弁理士】
【氏名又は名称】大内 秀治
(74)【復代理人】
【識別番号】100136548
【弁理士】
【氏名又は名称】仲宗根 康晴
(74)【復代理人】
【識別番号】100136641
【弁理士】
【氏名又は名称】坂井 志郎
(72)【発明者】
【氏名】間瀬 淳
(72)【発明者】
【氏名】田中 英彦
(72)【発明者】
【氏名】清水 秀樹
【審査官】 高松 大治
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2010/030032(WO,A1)
【文献】 特開2004−155202(JP,A)
【文献】 特開2005−067047(JP,A)
【文献】 特開2006−159402(JP,A)
【文献】 特開2009−137291(JP,A)
【文献】 特開平08−267753(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J2/01−2/215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を収容するための加圧室と、前記加圧室に連通するノズル部と、を備える液滴吐出ヘッド本体を含む液滴吐出ヘッドの製造方法であって、
セラミック粉末と、前記セラミック粉末の溶剤と、有機材料と、を含むスラリーを準備するスラリー準備工程と、
少なくとも一つの面が平面である基部と、前記基部の前記平面から立設するとともに前記加圧室及び前記ノズル部を含む液体室と同一形状の凸部を含む凸状部と、を有し、前記基部の平面のうち前記凸状部が存在していない部分と前記凸状部の表面とが成形面を構成する型を準備する型準備工程と、
少なくとも一つの面が平面であり且つ気体が通過可能な多孔質板を準備する多孔質板準備工程と、
前記スラリーを前記多孔質板の平面と前記型の成形面との間に存在させた状態において前記多孔質板と前記型とを対向配置し、前記スラリーに含まれる前記溶剤を前記多孔質板の細孔内に浸み込ませて同スラリーを乾燥させることにより、焼成前の液滴吐出ヘッド本体を作成する焼成前ヘッド本体作成工程と、
前記焼成前の液滴吐出ヘッド本体を焼成することにより焼成後の液滴吐出ヘッド本体を作成する焼成工程と、
を含む製造方法において、
前記焼成前ヘッド本体作成工程は、
前記型内において乾燥させられた前記スラリーにより構成される乾燥後成形体を同型内に保持した状態において同乾燥後成形体の露呈面を研磨することにより、同乾燥後成形体の残膜を除去して前記ノズル部に相当する部分を完成する離型前研磨工程と、
前記残膜が除去された前記乾燥後成形体から前記型を離脱させる離型工程と、
を含む製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の液滴吐出ヘッドの製造方法において、
前記離型前研磨工程は、
前記乾燥後成形体を保持した状態にある前記型を前記成形面と反対側にて研磨用保持具により保持し、同研磨用保持具を前記基部の前記平面と平行な方向に移動させながら前記乾燥後成形体の露呈面を研磨板に押し付けることにより同露呈面の研磨を行う工程である、
製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、DNAを含む液体、液体原料及び液体燃料等の液滴を吐出する液滴吐出ヘッドの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、液体を加圧するための加圧室等の空洞部を内部に備えるセラミックス積層体が知られている。このようなセラミックス積層体は、例えば、DNAチップを製造するための装置、燃料噴射装置等の「流体噴射用アクチュエータ」、インクジェットプリンタのアクチュエータ、燃料電池(SOFC)、スイッチング素子、及び、センサ等として広い分野において使用されている(特許文献1を参照。)。
【0003】
一般に、このようなセラミックス積層体は以下に述べる手順を経て製造される。
(1)セラミックグリーンシートを準備する。
(2)「金型パンチ及びダイ」を用いた打ち抜き加工により、セラミックグリーンシートに所定形状の貫通孔を形成する。
(3)貫通孔が形成されたセラミックグリーンシート及び貫通孔が形成されていないセラミックグリーンシートを積層する。
(4)積層された複数のセラミックグリーンシートを焼成し、一体化する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3600198号
【発明の概要】
【0005】
しかしながら、金型パンチ及びダイを用いた打ち抜き加工は、破断により貫通孔を形成する。従って、セラミックグリーンシートを打ち抜く際、そのセラミックグリーンシートに大きな力が加わる。この結果、破断面が荒れ、或いは、破断部にバリ及びクラックが発生する場合がある。特に、加圧室(空洞部)が微細化するにつれ、これらの変形、バリ及びクラック等は加圧室(空洞部)の形状精度に大きな悪影響を及ぼす。更に、「金型パンチ及びダイ」は打ち抜き加工に耐える硬度を備える必要があるから、それらは高い硬度を有する材質から形成される。高い硬度を有する材質を用いて小型の「金型パンチ及びダイ」を製作することは困難であるから、加圧室(空洞部)の小型化にも限界がある。
【0006】
本発明は、上記課題に対処するためになされたものである。即ち、本発明の目的の一つは、加圧室が微細化した場合及び隣接する加圧室間の距離が短い場合等においても、高い形状精度を有する液滴吐出ヘッドを製造することができる「液滴吐出ヘッドの製造方法」を提供することにある。
【0007】
上記目的を達成するための本発明による液滴吐出ヘッドの製造方法(以下、「本製造方法」と称呼する。)の一つは、「液体を収容するための加圧室と、前記加圧室に連通するノズル部と、を備える液滴吐出ヘッド」を製造するための製造方法である。
【0008】
本製造方法は、(1)スラリー準備工程、(2)型準備工程、(3)多孔質板準備工程、(4)焼成前ヘッド本体作成工程、及び、(5)焼成工程、を含む。
【0009】
(1)スラリー準備工程
スラリー準備工程は、セラミック粉末と、前記セラミック粉末の溶剤と、有機材料と、を含むスラリーを準備する工程である。
(2)型準備工程
型準備工程は、少なくとも一つの面が平面である基部と、前記基部の前記平面から立設するとともに「前記加圧室及び前記ノズル部を含む液体室」と実質的に同一形状の凸部を含む凸状部と、を有する型を準備する工程である。この型の成形面は、前記基部の平面のうち前記凸状部が存在していない部分と、前記凸状部の表面と、により構成される。
【0010】
(3)多孔質板準備工程
多孔質板準備工程は、少なくとも一つの面が平面であり且つ気体が通過可能な多孔質板を準備する工程である。
【0011】
(4)焼成前ヘッド本体作成工程
焼成前ヘッド本体作成工程は、前記スラリーを前記多孔質板の平面と前記型の成形面との間に存在させた状態において前記多孔質板と前記型とを対向配置し、前記スラリーに含まれる前記溶剤を前記多孔質板の細孔内に浸み込ませて同スラリーを乾燥させることにより、焼成前の液滴吐出ヘッド本体を作成する工程である。
【0012】
(5)焼成工程
焼成工程は、前記焼成前の液滴吐出ヘッド本体を焼成することにより焼成後の液滴吐出ヘッド本体を作成する工程である。
【0013】
スラリー準備工程、型準備工程、及び、多孔質板準備工程は、焼成前ヘッド本体作成工程の前までに実施されれば、その実施順序はどのような順序であってもよい。
【0014】
本製造方法によれば、加圧室が、スラリーを型によって成形することに基いて作成される。従って、加圧室が微細化した場合及び隣接する加圧室間の距離が短い場合等においても、高い形状精度を有する液滴吐出ヘッドを製造することができる。
【0015】
更に、本製造方法によれば、ノズル部も、スラリーを型によって成形することに基いて作成される。従って、ノズル部を打ち抜き加工により形成した場合に比較して、ノズル部の表面が滑らかであり、且つ、ノズル部にバリ等が発生しない。その結果、液滴を安定して吐出することができる液滴吐出ヘッドが提供される。
【0016】
更に、本製造方法によれば、一つの型を用いて液滴吐出ヘッド本体が作成される。従って、液滴吐出ヘッド本体を作成するために、例えば、二つ以上の成形体を接合する必要がなく、且つ、液滴吐出ヘッド本体のノズル部に貫通孔を有する金属板等を接合する必要がない。従って、工程を簡素化することができる。加えて、液滴吐出ヘッド本体を作成するために二つの成形体等を位置合わせしながら圧着又は接合する必要がないので、所望の形状の液滴吐出ヘッドを簡単に製造することができる。
【0017】
更に、前記焼成前ヘッド本体作成工程は、
前記型内において乾燥させられた前記スラリーより構成される乾燥後成形体を同型内に保持した状態において同乾燥後成形体の露呈面(即ち、前記多孔質板の平面と接していた成形体の表面)を研磨することにより、同乾燥後成形体の残膜を除去して前記ノズル部に相当する部分を完成(形成)する離型前研磨工程と、
前記残膜が除去された前記乾燥後成形体から前記型を離脱させる離型工程と、
を含むことが好適である。
【0018】
これによれば、後に加圧室及びノズル部となる「乾燥後成形体の空隙部分」が型により埋まっている状態において乾燥後成形体の研磨が実行されるので、研磨屑及び/又は砥粒がその空隙部分に入り込まない。よって、そのような研磨屑及び/又は砥粒を除去するための工程が不要であるから、製造工程全体を簡素化することができる。更に、研磨される「乾燥後成形体」は焼成する前の成形体であるので、焼成された後の成形体(焼成体)に比べてその硬度が低い。その結果、研磨加工速度を大きくすることができるので、短時間にて研磨を完了することができる。
【0019】
加えて、前記離型前研磨工程は、
前記乾燥後成形体を保持した状態にある前記型を前記成形面と反対側にて研磨用保持具により保持し、同研磨用保持具を前記基部の前記平面と平行な方向に移動させながら前記乾燥後成形体の露呈面を研磨板に押し付けることにより同露呈面の研磨を行う工程である。
【0020】
これによれば、型の成形面と反対側の部分(型の成形面と反対側の面、型の裏面、型の背面)を基準として研磨を行うことができるので、乾燥後成形体の露呈面(研磨される面)の平坦性を容易に確保することができる。
【0021】
一方、本製造方法は、更に、
前記焼成工程の後に、弾性を有する母材に同母材より小さい複数の砥粒を固定させた研磨材を前記焼成後の液滴吐出ヘッド本体に対して投射することにより、前記焼成後の液滴吐出ヘッド本体の残膜を除去して前記ノズル部に相当する部分を完成する弾性体使用特殊ブラスト工程、
を含むことができる。
【0022】
このブラスト工程によれば、焼成後の液滴吐出ヘッド本体に焼成による微小なうねり・反りが生じていた場合であっても、その焼成後の液滴吐出ヘッド本体をそのうねり・反りに従って一定量研磨することができる。従って、ノズル部の先端部(即ち、ノズル部により表面に形成される液滴吐出用の開口)の径(ノズル径)を所望の範囲内の値に保つことができる。更に、液滴吐出用の開口の近傍の表面粗さを均一にすることができるので、同開口近傍における液滴吐出ヘッド本体の下面の液体に対する濡れ性を均一化できる。これらの結果、液体を安定して吐出することができる液体吐出ヘッドを製造することができる。
【0023】
本発明装置の他の目的、他の特徴及び付随する利点は、以下の図面を参照しつつ記述される本発明の各実施形態についての説明から容易に理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1図1の(A)は、本発明の実施形態に係る液滴吐出ヘッドの製造方法の一態様により作成される液滴吐出ヘッド本体の平面図であり、図1の(B)は上記製造方法の一態様により作成される液滴吐出ヘッドの断面図である。
図2図2の(A)は上記製造方法の一態様において使用される型の長手方向に沿う縦断面図、図2の(B)はその型の短手方向に沿う縦断面図、図2の(C)はその型の部分斜視図である。
図3図3は上記製造方法の一態様の「多孔質板準備工程及び成形体作成工程」を説明するための図である。
図4図4は上記製造方法の一態様の成形体作成工程を説明するための図である。
図5図5は上記製造方法の一態様の成形体作成工程を説明するための図である。
図6図6は上記製造方法の一態様の成形体作成工程を経て作成された成形体の断面図である。
図7図7は上記製造方法の一態様により作成された液滴吐出ヘッドの断面図である。
図8図8は上記製造方法の一態様により作成された液滴吐出ヘッド本体の部分拡大写真である。
図9図9は、上記製造方法の変形例における残膜の除去方法を説明するための図である。
図10図10は、図9に示した変形例により作成された焼成前ヘッド本体の断面図である。
図11図11は、上記製造方法の別の変形例における残膜の除去方法を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態に係る「液滴吐出ヘッドの製造方法」について説明する。なお、以下に述べる工程の実施順序は、矛盾が生じない範囲において入れ替えることができる。
【0026】
<構造>
先ず、本発明の実施形態に係る「液滴吐出ヘッドの製造方法」により製造される液滴吐出ヘッド10の概略構造について説明する。
【0027】
図1の(A)及び(B)に示したように、液滴吐出ヘッド10は、液滴吐出ヘッド本体(ヘッド本体)20、振動板30、液体貯留室蓋体40、及び、複数(図1に示した例において9個)の圧電素子50、を備えている。なお、図1の(A)は、振動板30、液体貯留室蓋体40、及び、複数の圧電素子50を取り外した状態にある液滴吐出ヘッド10(即ち、ヘッド本体20)の平面図である。図1の(B)は、図1の(A)の1−1線に沿った平面にて液滴吐出ヘッド10を切断した断面図である。
【0028】
ヘッド本体20はセラミックからなる。ヘッド本体20は、互いに直交するX軸、Y軸及びZ軸のそれぞれに平行な辺を有する直方体形状を備える。即ち、図1の(A)に示したように、ヘッド本体20の平面視(Z軸正方向からZ軸に沿ってヘッド本体20を見た場合)における形状は長方形である。この長方形の長辺及び短辺は、X軸及びY軸にそれぞれ平行である。ヘッド本体20の厚み(高さ)方向はZ軸に平行である。なお、以下において、説明の便宜上、Z軸正方向を上方向と定義し、Z軸負方向を下方向と定義する。
【0029】
ヘッド本体20の上部には、複数の加圧室21を構成する複数(図1に示した例において9個)の溝部21aが形成されている。複数の溝部21aは互いに同一形状を有している。各溝部21aは略直方体形状を有する。
【0030】
より具体的に述べると、溝部21aは、平面視において「X軸に沿って伸びる長辺、及び、Y軸に沿って伸びる短辺」を備える。溝部21aのX軸に沿って伸びる長辺の一端は、ヘッド本体20のX軸負方向端部近傍に位置する。溝部21aのX軸に沿って伸びる長辺の他端は、ヘッド本体20のX軸方向の略中央部に位置する。溝部21aの底面は、平面をなし、ヘッド本体20の厚み方向の略中央部に存在している。即ち、溝部21aの深さ(高さ)は、ヘッド本体20の厚み(高さ)の半分程度である。
【0031】
ヘッド本体20にはノズル部21bが形成されている。ノズル部21bは、溝部21aの底面のX軸負方向端部近傍に設けられている。ノズル部21bは逆円錐台形状(又は円柱状)である。ノズル部21bは、溝部21aの底面とヘッド本体20の下面20aとを連通している。従って、ノズル部21bは液体吐出孔を形成している。
【0032】
ヘッド本体20の上部には、液体貯留室(インクタンク室)22を構成する凹部22aが形成されている。凹部22aは略直方体形状を有する。
【0033】
より具体的に述べると、凹部22aは、平面視において「X軸に沿って伸びる長辺、及び、Y軸に沿って伸びる短辺」を備える。凹部22aのX軸に沿って伸びる長辺の一端は、ヘッド本体20のX軸正方向端部近傍に位置する。凹部22aのX軸に沿って伸びる長辺の他端は、ヘッド本体20のX軸方向の略中央部に位置し、溝部21aのX軸に沿って伸びる長辺の他端と所定距離だけ離れている。凹部22aのY軸に沿って伸びる短辺の一端は、複数の溝部21aのうちのY軸正方向端部に位置する溝部21aの短辺のY軸正方向端部よりも、Y軸正方向側の部分に位置している。凹部22aのY軸に沿って伸びる短辺の他端は、複数の溝部21aのうちのY軸負方向端部に位置する溝部21aの短辺のY軸負方向端部よりも、Y軸負方向側の部分に位置している。凹部22aの底面は、平面をなし、ヘッド本体20の厚み方向の略中央部に存在している。凹部22aの深さ(高さ)は溝部21aの深さ(高さ)と同じである。
【0034】
ヘッド本体20の上部には、複数の液体流通孔23を構成する複数(図1に示した例において9個)の溝部23aが形成されている。一つの溝部23aは一つの溝部21aに対応するように設けられている。複数の溝部23aは互いに同一形状を有している。各溝部23aは略直方体形状を有する。
【0035】
より具体的に述べると、溝部23aは、平面視において「X軸に沿って伸びる長辺、及び、Y軸に沿って伸びる短辺」を備える。一つの溝部23aのX軸に沿って伸びる長辺の一端は、一つの溝部21aのX軸正方向端部に位置する「Y軸に沿って伸びる短辺」にまで伸びている。各溝部23aのX軸に沿って伸びる長辺の他端は、凹部22aのX軸負方向端部に位置する「Y軸に沿って伸びる短辺」にまで伸びている。溝部23aのY軸に沿って伸びる短辺の長さは、溝部21aのY軸に沿って伸びる短辺の長さよりも小さい。一つの溝部23aは、一つの溝部21aと凹部22aとを連通している。溝部23aの底面は、平面をなし、ヘッド本体20の厚み方向の略中央部に存在している。即ち、溝部23aの深さ(高さ)は溝部21aの深さ(高さ)と同じである。
【0036】
振動板30は、Z軸方向に小さな厚み(高さ)を有するセラミックの薄板である。振動板30は容易に変形可能である。振動板30の平面視における形状は長方形である。振動板30のX軸正方向端部の位置は溝部21aのX軸正方向端部の位置と略一致している。振動板30のX軸負方向端部の位置はヘッド本体20のX軸負方向端部の位置と略一致している。振動板30の「Y軸正方向の端部及びY軸負方向の端部」は、ヘッド本体20の「Y軸正方向の端部及びY軸負方向の端部」とそれぞれ略一致している。振動板30は、ヘッド本体20の上面と接するように配設されている。従って、振動板30は、総ての溝部21aの上部を覆っている。この結果、溝部21aの底面及び側面と、振動板30の下面と、により加圧室21が形成されている。
【0037】
液体貯留室蓋体40はZ軸方向に厚み(高さ)を有するセラミックの板である。液体貯留室蓋体40の平面視における形状は長方形である。液体貯留室蓋体40のX軸正方向端部の位置はヘッド本体20のX軸正方向端部の位置と略一致している。液体貯留室蓋体40のX軸負方向端部の位置は振動板30のX軸正方向端部の位置と一致している。即ち、液体貯留室蓋体40のX軸負方向端部は、振動板30のX軸正方向端部と接している。液体貯留室蓋体40の「Y軸正方向の端部及びY軸負方向の端部」は、ヘッド本体20の「Y軸正方向の端部及びY軸負方向の端部」とそれぞれ略一している。液体貯留室蓋体40は、ヘッド本体20の上面と接するように配設されている。従って、液体貯留室蓋体40は、凹部22aの上部を覆っている。この結果、凹部22aの底面及び側面と、液体貯留室蓋体40の下面と、により液体貯留室22が形成されている。
【0038】
更に、液体貯留室蓋体40は、溝部23aの上部を覆っている。この結果、溝部23aの底面及び側面と、液体貯留室蓋体40の下面と、により液体流通孔23が形成されている。一つの液体流通孔23は、一つの加圧室21と液体貯留室22とを液体が通流可能となるように連通している。
【0039】
液体貯留室蓋体40には、液体供給連通穴40aが形成されている。液体供給連通穴40aは、平面視において液体貯留室蓋体40の略中央部に設けられている。液体供給連通穴40aは、液滴吐出ヘッド本体20の外部と液体貯留室22とを液体が通流可能となるように連通している。
【0040】
なお、液体貯留室蓋体40に代えて、振動板30が、総ての溝部21aの上部のみならず、凹部22aの上部及び総ての溝部23aの上部をも、覆うように構成されてもよい。
【0041】
複数の圧電素子50のそれぞれは、平面視において「X軸に沿って伸びる長辺、及び、Y軸に沿って伸びる短辺」を備える。圧電素子50の平面視における形状は、加圧室21(従って、溝部21a)の平面視における形状と略一致している。複数の圧電素子50のそれぞれは、振動板30を挟んで、複数の加圧室21のそれぞれと対向するように形成されている。
【0042】
このように構成された液滴吐出ヘッド10において、液体(例えば、インク)は液体供給連通穴40aを通して液滴吐出ヘッド10の外部から液体貯留室22へと供給される。液体貯留室22の液体は、液体流通孔23を通して加圧室21に供給される。圧電素子50が、図示しない駆動源からの電力により変形させられると、振動板30が変形する。この結果、加圧室21内の液体は加圧され、加圧された液体は「加圧室21を外部へと連通するノズル部21b」を通して液滴吐出ヘッド10の下面20aから液滴として吐出される。即ち、液体は、下面20aに形成されたノズル部21bの下端である液体吐出用の開口から吐出される。
【0043】
<製造方法>
次に、製造方法について工程別に説明する。
(スラリー準備工程)
先ず、スラリーSLを準備する。スラリーSLは、主原料の粒子としてのセラミック粉末、セラミック粉末の溶剤、有機材料及び可塑剤からなっている。これらの重量比率は、例えば、セラミック粉末:溶剤:有機材料:可塑剤=100:50〜100:5〜10:2〜5である。本例において、セラミック粉末はアルミナ及びジルコニア等からなり、溶剤はトルエン及びイソプロピルアルコール等からなる。有機材料はポリビニルブチラールからなる。可塑剤はフタル酸系ブチルである。各材料及び重量比率は、これらに限定されるものではない。更に、このスラリーの粘性は、例えば、0.1〜100Pa・secであることが望ましい。
【0044】
(型準備工程)
図2の(A)乃至(C)に示した型(押し型・スタンパ)100を準備する。図2の(A)は型100を長手方向(X軸方向)に沿う平面(X−Z平面)にて切断した型100の断面図である。図2の(B)は型100を「型100のX軸中央部よりもX軸負方向側の所定位置において」短手方向(Y軸方向)に沿う平面(Y−Z平面)により切断した型100の断面図である。図2の(C)は型100の部分斜視図である。型100は、基部101、加圧室形成用凸部102、ノズル部形成用凸部103、及び、枠部104、を備えている。
【0045】
基部101は平板状である。従って、基部101は少なくとも一つの平面101uを備えている。
【0046】
加圧室形成用凸部102は平面101uから立設している。加圧室形成用凸部102は、前述した「複数の溝部21a、凹部22a及び複数の溝部23a」と実質的に同一の形状を有している。即ち、加圧室形成用凸部102は、「複数の加圧室21、液体貯留室22及び複数の液体流通孔23」と実質的に同一の形状を有している。よって、加圧室形成用凸部102は、互いに平行に配列される複数の加圧室21と実質的に同一形状の凸部を含む凸状部である。
【0047】
ノズル部形成用凸部103は、加圧室形成用凸部102の頂面102aから立設している。ノズル部形成用凸部103は、図1に示したノズル部21bと実質的に同一の形状を有している。即ち、ノズル部形成用凸部103は円錐台形状を有している。よって、型100は、「複数の加圧室21及びノズル部21bを含む液体室(並びに、液体貯留室22及び複数の液体流通孔23)」と実質的に同一形状の凸部を含む凸状部を備える、と言うことができる。
【0048】
枠部104は、基部101の外周部の全体に渡り平面101uから立設している。枠部104の内側面のなす形状は、図1に示したヘッド本体20の外周面のなす形状と同一である。枠部104の頂面104a及びノズル部形成用凸部103の頂面103aは、平面101uと平行な一つの平面PL内に存在している。
【0049】
型100の成形面は、基部101の平面101uのうち「加圧室形成用凸部102及び枠部104が存在していない部分(表面)」と、加圧室形成用凸部102の表面のうちノズル部形成用凸部103が存在していない部分(表面)と、ノズル部形成用凸部103の表面と、枠部104の内側の側面と、により構成されている。
【0050】
型100の成形面は離型剤により被覆されていることが好ましい。この場合、型100と離型剤との密着力を向上させるために、離型剤を型100(型100の成形面、即ち、離型面)に塗布する前に型100の洗浄を行っておくことが望ましい。この洗浄は、超音波洗浄、酸洗浄、及び、紫外線オゾン洗浄等により行うことができる。この洗浄により、離型剤が塗布される予定の成形面(洗浄表面)が原子レベルにまで清浄されることが好ましい。離型剤の一例は、ダイキン工業株式会社製の「オプツールDSX」等のフッ素系離型剤である。離型剤は、シリコン系又はワックス系の離型剤であってもよい。離型剤は、ディッピング、スプレー塗布、及び、刷毛塗り等により塗布された後、乾燥及び洗浄の各工程を通して型100の表面(成形面)に膜状に形成される。型100の表面を、DLC(ダイヤモンドライクカーボン)コーティングによる無機膜処理によって被覆してもよい。更に、型100の表面を、DLCコーティングによる無機膜処理と、離型剤による処理と、を組み合わせることにより被覆してもよい。
【0051】
(多孔質板準備工程)
気体が通過可能な多孔質板120を準備する(図3を参照。)。多孔質板120の少なくとも一つの面120u(実際には両面)は平面である。このような多孔質板120の代表例は、樹脂からなる多孔質フィルムである。多孔質板120の細孔径(平均細孔径、目開き)は、スラリーSLのセラミック粉末の粒径(平均粒子径)よりも小さく、溶剤の分子径よりも大きい。より具体的には、多孔質板120は、その細孔径が1μm以下(更に、望ましくは0.5μm以下)の「ポリプロピレン及びポリオレフィン等」からなる多孔質フィルムである。なお、多孔質板120は、多孔質セラミック基板、及び、多孔質金属(例えば、焼結金属)基板、等であってもよい。
【0052】
(成形体作成工程)
図3に示したように、型100の枠部104の内部にスラリーSLを充填する。スラリーSLの充填は塗布により行われる。この工程は「スラリー充填(塗布)工程」とも称呼される。スラリーSLは、塗布以外の適当な方法(例えば、ディッピング、スキージ、刷毛塗り、及び、ディスペンサーによる充填等)により充填されてもよい。更に、スラリー充填率を向上させために、スラリーSLを枠部104の内部に充填させる際、型100に超音波振動を加えても良く、或いは、真空脱気して型100内に残存している気泡を除去してもよい。また、スラリーSLを「型100と別途準備される平板との間」に存在させた状態において「型100を平板に押しつける」ことにより、スラリーSLを型100内に充填させてもよい。その平板には、スラリーSLが転写しないように(即ち、型100を平板から離す際、「型100内に充填されたスラリーSL」が平板に残存することがないように)、離型処理されたPETフィルム等を用いることができる。
【0053】
このスラリー充填工程において、スラリーSLは、型100に対して多めに充填される。これは、スラリーSLを充填する際のスラリーSLの圧力(充填圧)を高めることにより、スラリーSLの充填率を上げるためである。また、スラリーSLが乾燥する際、スラリーSLが収縮することを考慮する必要があるからである。この結果、図3に示したように、スラリーSLは、そのスラリーSLの表面が型100の「枠部104の頂面104a及びノズル部形成用凸部103の頂面103a(即ち、平面PL)」よりも距離tだけ外側に存在するように、型100に充填される。この平面PLよりも型100の外側に存在しているスラリーSLの全部が後に残膜となる。
【0054】
一方、図3に示したように、多孔質板120を「多孔質の焼結金属130の上面(焼結金属130の両方の面のうちの一方の面の上)」に載置する。焼結金属130は枠体140内に収容されている。枠体140は「緻密で且つ熱伝導性のある材質」からなる。即ち、焼結金属130は、その上面を除く周囲(側面及び下面)が緻密な枠体140により覆われている。枠体140の側部には吸引用連通管141が挿入されている。吸引用連通管141は図示しない真空ポンプに接続されている。
【0055】
枠体140は、ホットプレート(加熱装置)150の上に載置されている。ホットプレート150は通電されたときに発熱し、枠体140及び焼結金属130を介して多孔質板120の下面(他方の面、即ち、多孔質板120の一部)を加熱するようになっている。
【0056】
次に、図4に示したように、スラリーSLを「多孔質板120の平面120uと型100の成形面との間」に存在させた状態において、多孔質板120(多孔質板120の露呈面である平面120u)と型100(型100の成形面)とが対向するように、多孔質板120と型100とを配置する。このとき、型100を多孔質板120に対して適当な力で押圧してもよい。
【0057】
この結果、図4に矢印により示したように、「型100の内部に保持されているスラリーSL」に含まれる溶剤が、毛細管現象によって、多孔質板120の平面120u(スラリーSLと多孔質板120との接触面)近傍の細孔内に浸み込むとともに気化(蒸発)する。これにより、スラリーSLが乾燥して行く。
【0058】
更に、この工程において、前述した真空ポンプを駆動する。この真空ポンプの駆動により、多孔質板120内に存在するガスが排出される(白抜きの矢印Aを参照。)。従って、多孔質板120の内部の圧力は、大気圧よりも低圧(例えば、大気圧よりも80kPa低い圧力)になる。これによって、スラリーSLに含まれている溶剤が、多孔質板120の細孔(特に、多孔質板120の表面近傍の細孔)内に効率的に吸引される(浸み込みながら気化して行く)。この場合、真空度(多孔質板120内部圧力)は、0〜−100kPaであることが好ましく、−80〜−100kPaであることが好ましい。
【0059】
なお、真空ポンプの駆動により多孔質板120の細孔内を低圧化する場合、「焼結金属130の露呈面、及び、多孔質板120の露呈面」を、気密性の高いフィルムなどで覆うことにより、焼結金属130及び多孔質板120を密閉することがより好ましい。焼結金属130の露呈面とは、焼結金属130の表面のうち「枠体140及び多孔質板120」により覆われていない表面のことである。多孔質板120の露呈面とは、多孔質板120の側面と、多孔質板120の平面(上面)120uのうち型100(実際にはスラリーSL)によって覆われていない表面と、からなる部分のことである。「焼結金属130の露呈面、及び、多孔質板120の露呈面」を密閉しない場合、多孔質板120内の真空度が低下するので、溶剤の気化の効率が低下する。また、スラリーSLの溶剤が気化した部分に負圧が発生し、その部位に大気が流入する。その結果、特に、スラリーSLの多孔質板120の近傍部位に気孔が発生する場合がある。これに対し、上記のように「焼結金属130の露呈面、及び、多孔質板120の露呈面」を密閉すると、そのような気孔の発生を防止することができる。
【0060】
加えて、この工程において、ホットプレート150に通電する。従って、多孔質板120の温度が上昇するので、多孔質板120の細孔内に浸み込んだ溶剤は容易に蒸発(拡散)する。この結果、スラリーSLは乾燥され固化し、乾燥後の成形体110が「型100と多孔質板120との間」に作成される。
【0061】
なお、この工程において、ホットプレート150を最も上方に位置させ、そのホットプレート150の下方に枠体140、焼結金属130及び多孔質板120を保持し、その多孔質板120に向けて「スラリーSLを充填した型100」を押圧してもよい。即ち、図4に示した構成の上下を逆転してもよい。これにより、気化した溶剤は垂直上方へと蒸発(拡散)する。従って、比重の小さい気化した溶剤が蒸発(拡散)し易くなるので、スラリーSL内に気孔が発生し難い。
【0062】
また、真空ポンプの駆動による多孔質板120の細孔内の低圧化は任意である。従って、焼結金属130及び枠体140は、単なる基台に置換されてもよい。更に、ホットプレート150による多孔質板120の加熱も任意である。従って、ホットプレート150は省略されてもよい。更に、本例においては、型100を多孔質板120に対向配置する際には型100を多孔質板120に対して適当な力で押圧するが、その後の「真空ポンプの駆動による多孔質板120の細孔内の低圧化中、及び、ホットプレート150による多孔質板120の加熱中」には、型100には何らの押圧力を加えないか、或いは、多孔質板120の密度が局所的に変化することのない程度の適正な押圧力を加えてもよい。
【0063】
その後、スラリーSLが乾燥して「乾燥後成形体110」が形成されると、「型100、多孔質板120及び乾燥後成形体110」は冷却される。次いで、図5に示したように、型100が「多孔質板120及び乾燥後成形体110」から除去される。すなわち、離型工程が実施される。
【0064】
この離型工程においても真空ポンプを駆動し、焼結金属130の内部の圧力を低圧化することが好ましい。これにより、型100を脱離させる際(離型時)、多孔質板120を焼結金属130によって安定して保持することができる。この結果、多孔質板120が浮き上がることが防止されるので、多孔質板120の変形及び乾燥後成形体110の変形(パターンの破損)が回避され得る。
【0065】
次いで、成形体110を多孔質板120から分離する。この結果、図6に示した乾燥後であって焼成前の成形体110が得られる。
【0066】
なお、上述した離型工程を実施する前に、多孔質板120を成形体110から剥離し、その後、成形体110の多孔質板120が剥離された面を熱感応接着フィルム及び吸引等により固定し、その状態で離型工程を実施して型100を成形体110から離脱させることにより、図6に示した成形体110を得てもよい。これによれば、多孔質板120を剥離する際、成形体110のパターンが型100により固定されているので、パターンの変形・破損の可能性を低減することができる。
【0067】
このように形成された成形体110は、図6の破線の円内に示したように、残膜RFを有する。残膜RFは、型100のノズル部形成用凸部103の頂面103aと多孔質板120の平面120uとの間に残存したスラリーSLにより形成される膜である。
【0068】
このように、成形体作成工程は、スラリーSLを「多孔質板120の平面120uと型100の成形面との間」に存在させた状態において、多孔質板120と型100とを対向配置し、スラリーSLに含まれる溶剤を多孔質板120の細孔内に浸み込ませてスラリーSLを乾燥させることにより、乾燥後の成形体110を作成する工程である。
【0069】
(焼成前ヘッド本体作成工程)
次に、残膜RFを、レーザー加工により除去する。即ち、図7に示したように、残膜RFに貫通孔Hを形成する。これにより、ノズル部21bが完成し、図7に示した「焼成前ヘッド本体20A」が作成される。図8は、このように製造された焼成前ヘッド本体20Aの部分拡大写真である。
【0070】
(焼成工程)
一方、振動板30となるセラミックグリーンシートと、液体貯留室蓋体40となるセラミックグリーンシートとを別途準備しておく。更に、液体貯留室蓋体40の所定位置に、液体供給連通穴40aとなる貫通孔を形成しておく。そして、焼成前ヘッド本体20Aの上に、振動板30となるセラミックグリーンシートと、液体貯留室蓋体40となるセラミックグリーンシートと、を平面方向の位置を合わせながら積層する。次いで、これらを熱圧着し、熱圧着された積層体を脱脂した後に焼成する。これにより、振動板30及び液体貯留室蓋体40を有するヘッド本体20(焼成された積層体、焼成後の液滴吐出ヘッド本体)が完成する。
【0071】
(圧電素子形成工程)
その後、周知の手法に従って、所定の位置に圧電素子を形成する。例えば、前記ヘッド本体20と、焼成された圧電体膜を含む圧電素子と、を接合する。このとき、焼成された圧電体膜は振動板30の上面に配置される。次いで、圧電素子の上にマスクを形成し、微粒子(砥粒)を噴射・投射してマスクが存在していない部分の圧電素子を除去する。即ち、所謂「ブラスト加工」により圧電素子50を形成する(例えば、特許第3340043号を参照。)。これにより、液滴吐出ヘッド10が完成する。なお、焼成前の圧電素子を振動板30の上部の所定位置に形成し、その後、圧電素子を焼成してもよい。
【0072】
この製造方法は、一つの型100を用い、一度の成形体作成工程において、スラリーSLを乾燥させることにより「乾燥後成形体110」を作成する。従って、例えば、二つの型を用いて二つの乾燥後成形体を作成し、その二つの乾燥後成形体を接合する必要がないので、工程を簡素化することができる。加えて、「ノズル部21bと連通する貫通孔を有する金属板(SUS等のノズルプレートである吐出孔先端部形成体)等」を液滴吐出ヘッド本体20の下面20aに接合する必要がない。従って、工程を更に簡素化することができる。また、二つの乾燥後成形体を位置合わせしながら圧着する必要がないので、所望の形状の液滴吐出ヘッドを簡単に製造することができる。
【0073】
なお、この製造方法において、スラリー準備工程、型準備工程、及び、多孔質板準備工程は、成形体作成工程の前までに実施されれば、その実施順序はどのような順序であってもよい。
【0074】
<第1変形例>
上記製造方法の焼成前ヘッド本体作成工程における「レーザー加工による残膜RFの除去(貫通孔Hの形成)」に代え、乾燥後成形体110を焼成した後、精密研磨によって残膜RFを除去してもよい。即ち、残膜RFは、成形体110の焼成後に研磨加工により除去してもよい。これによれば、ノズル部21bの先端部(開口部、液滴吐出口)の径を精密に調整できるので、別部材(SUS等)のノズルプレート(吐出孔先端部形成体)を用いる必要性をより低減することができる。
【0075】
<第2変形例>
上記製造方法の焼成前ヘッド本体作成工程における「レーザー加工による残膜RFの除去(貫通孔Hの形成)」に代え、スラリーSLが型100内において乾燥して固化し、乾燥後の成形体110が「型100と多孔質板120との間」に形成された後であって(図4を参照。)、型100が乾燥後成形体110から除去される前(離型がなされる前)に、図9に示したように、研磨を実行して残膜RFを除去してもよい。即ち、乾燥後成形体110を型100に保持した状態のまま研磨し、貫通孔Hを形成してもよい(図10を参照。)。
【0076】
より具体的に述べると、この研磨は、次のように行われる。
先ず、図4に示したように、型100内において乾燥後成形体110が完成すると、多孔質板120から乾燥後成形体110を型100内に保持したまま離脱させる。
【0077】
次に、図9に示したように、乾燥後成形体110が型100内に保持されている状態において、その型100の背面側を研磨用保持具400により保持する。そして、研磨用保持具400を水平方向(型100の基部101の平面101uと平行な方向)に移動させながら、乾燥後成形体110の露呈面(残膜RF)を研磨板410に押し付けることにより、研磨を実施する。研磨が完了すると(残膜RFが除去されると)離型を実施する。この結果、図10に示した「焼成前ヘッド本体20A」が作成される。
【0078】
このように、乾燥後成形体110の研磨を乾燥後成形体110が型100内に保持された状態にて行うこと(即ち、「離型前研磨加工」を行うこと)の利点は次のとおりである。
【0079】
(利点1)焼成後の成形体に対して研磨を行うと、研磨屑及び/又は砥粒が加圧室等に入り込むので、その除去工程が必要となる。これに対し、上記方法によれば、乾燥後成形体110が型100に保持されている状態にて研磨されるので、研磨屑及び/又は砥粒が加圧室等に入り込まない。よって、そのような除去工程が不要であるから、製造工程全体を簡素化することができる。
【0080】
(利点2)型100の裏面(成形面と反対側の面、背面)を基準として研磨を行うことができるので、研磨される面(乾燥後成形体110の露呈面)の平坦性を容易に確保することができる。
(利点3)焼成体に比べて「焼成前成形体110」は硬度が低いので、研磨加工の速度を大きくすることができる。即ち、短時間にて研磨を完了することができる。
【0081】
なお、このような「離型前研磨加工」を行う場合、型100には硬度の高い材質の材料を用いるか、又は、型100の表面をDLC(ダイヤモンドライクカーボン)処理しておくことが望ましい。
【0082】
<第3変形例>
上記製造方法の焼成前ヘッド本体作成工程における「レーザー加工による残膜RFの除去(貫通孔Hの形成)」に代え、乾燥後の成形体110を焼成した後に「弾性体使用特殊ブラスト加工(後述)」により残膜RFを除去し(貫通孔Hを形成し)、それによりノズル部21bを完成してもよい。
【0083】
より具体的に述べると、この第3変形例においては、残膜RFを除去しない状態にて乾燥後成形体110に「振動板30となるセラミックグリーンシート及び液体貯留室蓋体40となるセラミックグリーンシート」を平面方向の位置を合わせながら積層する。次いで、これらを熱圧着し、熱圧着された積層体を脱脂した後に焼成する。この結果、図11の(A)に示した焼成後成形体20B(焼成後液滴吐出ヘッド本体)が作成される。
【0084】
次に、図11の(B)に示したように、焼成後成形体20Bを所定の治具に保持し、焼成後成形体20Bの残膜RFが形成されている表面に対して「弾性体使用特殊ブラスト加工処理」を行う。このブラスト加工は、例えば特開2006−159402号公報等に開示されているように、「比較的大径の弾性体である母材」内に「SiC等の小径の砥粒」が固定された研磨材Kを「加工対象物の表面(焼成後成形体20Bの残膜RFが形成されている表面)」に対し、その加工対象物の表面の法線とは相違する方向から噴射又は投射する方法である。即ち、研磨材Kは、焼成後成形体20Bの残膜RFが形成されている表面に対し斜め方向から投射される。この場合、研磨材Kの母材の直径Dkは、ノズル部21bの直径D(ノズル部21bの先端部により形成される開口部(液滴吐出口)の直径D)よりも大きい径であることが望ましい。
【0085】
弾性を有する研磨材Kが投射されると、図11の(C)に示したように、その研磨材Kは焼成後成形体20Bの表面にて押し潰れ、焼成後成形体20Bの表面を滑走した後に同表面から離れる。この間、焼成後成形体20Bの表面が摩耗し(砥粒により削られ)、その結果、図11の(D)に示したように、残膜RFが除去されノズル部21bが完成する。
【0086】
このブラスト方法(弾性体使用特殊ブラスト加工処理)によれば、焼成後成形体20Bに焼成による微小なうねり・反り(変形、ひずみ)が生じていた場合であっても、そのうねり・反りに従って焼成後成形体20Bを一定量研磨することができる。従って、ノズル部21bの先端部(即ち、ノズル部21bにより表面に形成される液滴吐出用の開口)の径(ノズル径)を所望の範囲内の値に保つことができる。
【0087】
更に、この弾性体使用特殊ブラスト加工によれば、液滴吐出ヘッド本体20の下面(表面)であって、ノズル部21bの近傍(液滴吐出用の開口の近傍)の表面20a(図1を参照。)の表面粗さが小さくなる。また、その表面20aの微小領域毎の表面粗さのばらつき(差)が小さくなる。その結果、ノズル部21bの近傍の表面20aの「吐出される液滴に対する濡れ性」が安定化する(濡れ性の領域間のばらつきが小さくなる)。その結果、何れのノズル部21bにおいても液滴をより安定して吐出することができる。換言すると、複数のノズル部21b間の液滴吐出性能を均質化することができる。加えて、上記弾性体使用特殊ブラスト加工方法によれば、ノズル部21bのエッヂ(液滴吐出用の開口の縁)における微小なバリを除去することができるので、何れのノズル部21bにおいても液滴をより安定して吐出することができる。
【0088】
加えて、上記弾性体使用特殊ブラスト加工によれば、研磨材K(母材)の直径Dkが大きいので、ブラスト加工中に研磨材Kが「ノズル部21bとなる空隙」に進入し難い。よって、それらを除去する工程を別途設ける必要がないか、或いは、それらを容易に除去することができる。
【0089】
なお、前述したように、この弾性体使用特殊ブラスト加工方法において、研磨材の噴射又は投射方向は90度でない方向(加工対象の壁面の法線と相違する方向、加工対象の壁面に対して直交しない方向)であることが望ましい。更に、この弾性体使用特殊ブラスト加工は、型100を成形体110から取り除く前(離型前)に行われてもよく、型100を成形体110から取り除いた後(離型後)に行われてもよい。
【0090】
以上、説明したように、本発明による液滴吐出ヘッドの製造方法の実施形態及び変形例によれば、ノズル部を従来の「金型パンチ及びダイ」を用いた打ち抜き加工により作成しないので、破断面が荒れず、且つ、ノズル部にバリ等が発生し難い。その結果、液滴を安定して吐出することができる液滴吐出ヘッドが提供される。
【0091】
更に、上記製造方法によれば、加圧室21が、スラリーを型100によって成形することに基いて作成される。従って、加圧室21が微細化した場合及び隣接する加圧室21間の距離が短い場合等においても、高い形状精度を有する液滴吐出ヘッド10を製造することができる。
【0092】
更に、上記製造方法によれば、ノズル部21bも、スラリーを型100によって成形することに基いて作成される。従って、ノズル部21bを打ち抜き加工により形成した場合に比較して、ノズル部21bの表面が滑らかであり、且つ、ノズル部21bにバリ等が発生し難い。その結果、液滴を安定して吐出することができる液滴吐出ヘッド10が提供される。
【0093】
加えて、上記製造方法によれば、液滴吐出ヘッド本体20のノズル部21bに貫通孔を有する金属板等を接合する必要がない。従って、工程を簡素化することができる。
【0094】
なお、本発明は上記実施形態に限定されることはなく、本発明の範囲内において種々の変形例を採用することができる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図9
図10
図11
図8