特許第5779235号(P5779235)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5779235トレッドが熱可塑性加硫物(TPV)エラストマーを含むタイヤ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5779235
(24)【登録日】2015年7月17日
(45)【発行日】2015年9月16日
(54)【発明の名称】トレッドが熱可塑性加硫物(TPV)エラストマーを含むタイヤ
(51)【国際特許分類】
   C08L 9/00 20060101AFI20150827BHJP
   C08L 23/12 20060101ALI20150827BHJP
   C08L 23/16 20060101ALI20150827BHJP
   C08L 7/00 20060101ALI20150827BHJP
   C08K 3/04 20060101ALI20150827BHJP
   C08K 3/36 20060101ALI20150827BHJP
   B60C 1/00 20060101ALI20150827BHJP
【FI】
   C08L9/00
   C08L23/12
   C08L23/16
   C08L7/00
   C08K3/04
   C08K3/36
   B60C1/00 A
【請求項の数】9
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2013-509508(P2013-509508)
(86)(22)【出願日】2011年5月4日
(65)【公表番号】特表2013-526622(P2013-526622A)
(43)【公表日】2013年6月24日
(86)【国際出願番号】EP2011057087
(87)【国際公開番号】WO2011141334
(87)【国際公開日】20111117
【審査請求日】2014年5月7日
(31)【優先権主張番号】1053638
(32)【優先日】2010年5月10日
(33)【優先権主張国】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】512068547
【氏名又は名称】コンパニー ゼネラール デ エタブリッスマン ミシュラン
(73)【特許権者】
【識別番号】508032479
【氏名又は名称】ミシュラン ルシェルシュ エ テクニーク ソシエテ アノニム
(74)【代理人】
【識別番号】100092093
【弁理士】
【氏名又は名称】辻居 幸一
(74)【代理人】
【識別番号】100082005
【弁理士】
【氏名又は名称】熊倉 禎男
(74)【代理人】
【識別番号】100084663
【弁理士】
【氏名又は名称】箱田 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100093300
【弁理士】
【氏名又は名称】浅井 賢治
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 博信
(72)【発明者】
【氏名】ロペス ベアトリス
【審査官】 上前 明梨
(56)【参考文献】
【文献】 中国特許出願公開第101597407(CN,A)
【文献】 国際公開第2010/039327(WO,A1)
【文献】 国際公開第2008/141702(WO,A1)
【文献】 特表2007−522299(JP,A)
【文献】 国際公開第2009/062733(WO,A1)
【文献】 特開平09−286050(JP,A)
【文献】 特表2009−520092(JP,A)
【文献】 特表2008−544075(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2006/0014903(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2006/0100381(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00−101/14
C08K 3/00−13/08
C08J 3/00−3/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トレッドが、少なくともジエンエラストマー、補強用充填剤およびEPDMとポリプロピレンとの熱可塑性エラストマー加硫物(TPV)を含むゴム組成物を含むタイヤであって、TPVエラストマーの含有量が、10phrと50phrの間であることを特徴とするタイヤ。
【請求項2】
上記ジエンエラストマーが、ポリブタジエン(BR)、合成ポリイソプレン(IR)、天然ゴム (NR)、ブタジエンコポリマー、イソプレンコポリマーおよびこれらのエラストマーの混合物からなる群から選ばれる、請求項1記載のタイヤ。
【請求項3】
TPVエラストマーの含有量が、10phrよりも多く、かつ30phr以下である、請求項1または2記載のタイヤ。
【請求項4】
前記ゴム組成物が、可塑剤をさらに含む、請求項1〜のいずれか1項記載のタイヤ。
【請求項5】
可塑剤の含有量が、10phrよりも多い、請求項記載のタイヤ。
【請求項6】
前記可塑剤が熱可塑性炭化水素樹脂であって、そのガラス転移温度(Tg)が0℃よりも高い、請求項または記載のタイヤ。
【請求項7】
前記可塑剤が、20℃で液体であって、−20℃よりも低いガラス転移温度(Tg)を有する、請求項または記載のタイヤ。
【請求項8】
前記ゴム組成物が、請求項記載の炭化水素樹脂と請求項記載の液体可塑剤を含む、請求項または記載のタイヤ。
【請求項9】
前記補強用充填剤が、カーボンブラック、シリカ、またはカーボンブラックとシリカの混合物を含む、請求項1〜のいずれか1項記載のタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤトレッド、およびそのようなタイヤトレッドの製造において使用することのできる、ジエンエラストマーと熱可塑性エラストマーをベースとするゴム組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
知られているように、タイヤトは、高耐摩耗性、低転がり抵抗性並びに高乾燥グリップ性および高湿潤グリップ性の双方のような多くのしばしば相反する技術的要件を満たさなければならない。
諸性質の、特に上記転がり抵抗性および上記グリップ性の見地からのこの妥協点は、近年、特に自家用車を意図するエネルギー節減性の“グリーンタイヤ”に関して、補強用として説明されている特定の無機充填剤、特に、補強力の点から、通常のタイヤ級カーボンブラックと対抗し得る“HDS”(Highly Dispersible Silica)と称する高分散性シリカによって主として補強されていることに特徴を有する新規な弱ヒステリシスゴム組成物の使用によって改良し得ている。
【0003】
しかしながら、タイヤの湿潤グリップ特性の改良は、依然として、タイヤ設計者の継続的な最大の関心事である。
【発明の概要】
【0004】
研究中に、本出願法人は、ジエンエラストマー、特定の熱可塑性エラストマー加硫物(TPV)および補強用充填剤をベースとし、良好なレベルの湿潤グリップ性を示し、生状態においてさらに改良されている加工性でもってタイヤトレッドを得ることを可能にする新規なゴム組成物を見出した。
従って、本発明は、トレッドが、少なくとも、ジエンエラストマー、補強用充填剤およびEPDMとポリプロピレンとの熱可塑性エラストマー加硫物を含むゴム組成物を含むことを特徴とするタイヤに関する。
【0005】
本発明のタイヤは、特に、乗用車;SUV車(スポーツ用多目的車);二輪車(特に、オートバイ);航空機;並びに、バン類および重量物運搬車(即ち、地下鉄、バス、重量道路輸送車両(トラック、トラクター、トレーラー)、農業用車両または土木機械のような道路外車両)、または他の輸送もしくは作業車両から選ばれる産業用車両に装着することを意図する。
【0006】
本発明および本発明の利点は、以下の説明および実施例に照して容易に理解し得るであろう。
【発明を実施するための形態】
【0007】
I‐使用する測定および試験法
本発明に従うタイヤにおいて使用するゴム組成物は、以下で示すように、硬化の前後において特性決定する。
I.1‐ムーニー可塑度
フランス規格NF T 43‐005(1991年)に記載されているような振動(oscillating)稠度計を使用する。ムーニー可塑度測定は、次の原理に従って実施する:生状態(即ち、硬化前)の組成物を100℃に加熱した円筒状チャンバー内で成形する。1分間の予熱後、ローターが試験標本中で2回転/分にて回転し、この運動を維持するための仕事トルクを4分間の回転後に測定する。ムーニー可塑度(ML 1 + 4)は、“ムーニー単位”(MU、1MU = 0.83ニュートン.メートル)で表す。
【0008】
I.2‐引張試験
これらの試験は、弾性応力および破断点諸性質を測定することを可能にする。特に断らない限り、これらの試験は、1988年9月のフランス規格 NF T 46‐002に従って実施する。公称割線モジュラス(即ち、見掛け応力;MPaでの)を、10%伸び(MA10と記す)および100%伸び(MA100と記す)において、2回目の伸びにおいて(即ち、その測定自体において想定した伸びの度合に対しての順応サイクル後に)測定する。これらの引張測定は、全て、フランス規格NF T 40‐101 (1979年12月)に従い、温度(23±2℃)および湿度(50±5%相対湿度)の標準条件下に実施する。
【0009】
I.3‐ショアA硬度
硬化後の組成物のショアA硬度は、規格ASTM D 2240‐86に従って評価する。
【0010】
I.4‐動的特性
動的特性は、規格ASTM D 5992‐96に従い、粘度アナライザー(Metravib VA4000)において測定する。単純な交互正弦波剪断応力に、10Hzの周波数において、温度掃引中に、0.7MPaの定常応力下に供した加硫組成物のサンプル(厚さ4mmおよび400mm2の断面積を有する円筒状試験標本)の応答を記録する。0℃において観察したtan(δ)の値を記録する。
当業者にとっては周知の通り、tan(δ)0℃値は湿潤グリップポテンシャルを代表するものであることを思い起すべきである:tan(δ)0℃が高いほど、上記のグリップ性は良好である。
【0011】
II‐本発明を実施するための条件
“phr”は、総エラストマー(従って、EPDMとポリプロピレンとの熱可塑性エラストマー加硫物を含む)の100質量部当りの質量部を意味する。
【0012】
本説明においては、他で明確に断らない限り、示す全て百分率(%)は、質量パーセントである。さらにまた、“aとbの間”なる表現によって示される値の間隔は、いずれも、aよりも大きくからbよりも小さいまでに至る値の範囲を示し(即ち、限界値aとbを除く)、一方、“a〜b”なる表現によって示される値の間隔は、いずれも、aからbに至る値の範囲を意味する(即ち、厳格な限定値aおよびbを含む)。
【0013】
本発明に従うタイヤのトレッドは、少なくともジエンエラストマー、補強用充填剤およびEPDMとポリプロピレンとの熱可塑性エラストマー加硫物を含むエラストマー組成物を含む;これらの成分を、以下で詳細に説明する。
【0014】
II.1‐ジエンエラストマー
本発明に従うタイヤのトレッドは、少なくとも1種のジエンエラストマーを含むという本質的な第1の特徴を有するゴム組成物を含む。
“ジエン”タイプのエラストマー(または“ゴム”;これら2つの用語は同義であるとみなす)は、知られている通り、ジエンモノマー(共役型であり得るまたはあり得ない2個の炭素‐炭素二重結合を担持するモノマー)に少なくとも一部由来する1種以上のエラストマー(即ち、ホモポリマーまたはコポリマー)を意味するものと理解すべきであることを思い起すべきである。
【0015】
ジエンエラストマーは、2つのカテゴリー、即ち、“本質的に不飽和”または“本質的に飽和”に分類し得る。用語“本質的に不飽和”は、一般に、15%(モル%)よりも多いジエン起原(共役ジエン)単位量を有する、共役ジエンモノマーに少なくとも一部由来するジエンエラストマーを意味するものと理解されたい;従って、ブチルゴムまたはEPDMタイプのジエンとα‐オレフィンとのコポリマーのようなジエンエラストマーは、上記の定義に属さず、特に、“本質的に飽和”のジエンエラストマー(常に15%未満である低いまたは極めて低いジエン起原単位量)として説明し得る。“本質的に不飽和”のジエンエラストマーのカテゴリーにおいては、用語“高不飽和”ジエンエラストマーは、特に、50%よりも多いジエン起原(共役ジエン)の単位量を有するジエンエラストマーを意味するものと理解されたい。
【0016】
これらの定義を考慮すると、本発明に従う組成物において使用することのできるジエンエラストマーなる用語は、さらに詳細には、下記を意味するものと理解されたい:
(a) 4〜12個の炭素原子を含有する共役ジエンモノマーを重合させることによって得られる任意のホモポリマー;
(b) 1種以上の共役ジエンをもう1種のジエンまたは8〜20個の炭素原子を含有する1種以上のビニル芳香族化合物と共重合させることによって得られる任意のコポリマー;
(c) エチレンおよび3〜6個の炭素原子を含有するα‐オレフィンを、6〜12個の炭素原子を含有する非共役ジエンモノマーと共重合させることによって得られる3成分コポリマー、例えば、上記タイプの非共役ジエンモノマー、特に、例えば、1,4‐ヘキサジエン、エチリデンノルボルネンまたはジシクロペンタジエンと一緒のエチレンおよびプロピレンから得られるエラストマー;および、
(d) イソブテンとイソプレンのコポリマー(ブチルゴム)、さらにまた、このタイプのコポリマーのハロゲン化形、特に、塩素化または臭素化形。
【0017】
本発明は、任意のタイプのジエンエラストマーに当てはまるけれども、タイヤ分野における熟練者であれば、本発明は、好ましくは、特に上記のタイプ(a)または(b)の本質的に不飽和のジエンエラストマーと一緒に使用するものであることを理解されたい。
【0018】
以下は、共役ジエンとして特に適している:1,3‐ブタジエン;2‐メチル‐1,3‐ブタジエン;例えば、2,3‐ジメチル‐1,3-ブタジエン、2,3‐ジエチル‐1,3‐ブタジエン、2‐メチル‐3‐エチル‐1,3‐ブタジエンまたは2‐メチル‐3‐イソプロピル‐1,3‐ブタジエンのような2,3‐ジ(C1〜C5アルキル)‐1,3‐ブタジエン;アリール‐1,3‐ブタジエン、1,3‐ペンタジエンまたは2,4‐ヘキサジエン。以下は、例えば、ビニル芳香族化合物として適している:スチレン;オルソ‐、メタ‐およびパラ‐メチルスチレン;“ビニル‐トルエン”市販混合物;パラ‐(tert‐ブチル)スチレン;メトキシスチレン;クロロスチレン;ビニルメシチレン;ジビニルベンゼンまたはビニルナフタレン。
【0019】
上記のコポリマーは、99質量%と20質量%の間の量のジエン単位と1質量%と80質量%の間の量のビニル芳香族単位を含み得る。上記エラストマーは、使用する重合条件、特に、変性剤および/またはランダム化剤の存在または不存在並びに使用する変性剤および/またはランダム化剤の量に依存する任意のミクロ構造を有し得る。上記エラストマーは、例えば、ブロック、ランダム、序列または微細序列エラストマーであり得、分散液中または溶液中で調製し得る;これらのエラストマーは、カップリング剤および/または星型枝分れ化剤或いは官能化剤によってカップリングしおよび/または星型枝分れ化し得或いは官能化し得る。カーボンブラックとカップリングさせるには、例えば、C‐Sn結合を含む官能基、または、例えば、アミノベンゾフェノンのようなアミノ化官能基を挙げることができる;シリカのような補強用無機充填剤とカップリングさせるには、シラノール官能基またはシラノール末端を有するポリシロキサン官能基(例えば、FR 2 740 778号、US 6 013 718号およびWO2008/141702号に記載されているような)、アルコキシシラン基(例えば、FR 2 765 882号またはUS 5 977 238号に記載されているような)、カルボキシル基(例えば、WO 01/92402号またはUS 6 815 473号、WO 2004/096865号またはUS 2006/0089445号に記載されているような)、或いはポリエーテル基(例えば、EP 1 127 909号、US 6 503 973号、WO 2009/000750号およびWO 2009/000752号に記載されているような)を挙げることができる。また、官能化エラストマーの他の例としては、エポキシ化タイプのエラストマー(SBR、BR、NRまたはIRのような)も挙げることができる。
【0020】
以下が適している:ポリブタジエン、特に4%と80%の間の1,2‐単位含有量(モル%)を有するポリブジエンまたは80%よりも多いシス‐1,4‐単位含有量(モル%)を有するポリブタジエン;ポリイソプレン;ブタジエン/スチレンコポリマー、特に、0℃と−70℃の間、特に−10℃と−60℃の間のTg (ガラス転移温度;ASTM D3418に従い測定)、5質量%と60質量%の間、特に20質量%と50質量%の間のスチレン含有量、4%と75%の間のブタジエン成分‐1,2結合含有量(モル%)および10%と80%の間のトランス‐1,4‐結合含有量(モル%)を有するコポリマー;ブタジエン/イソプレンコポリマー、特に、5質量%と90質量%の間のイソプレン含有量および−40℃〜−80℃のTgを有するコポリマー;イソプレン/スチレンコポリマー、特に、5質量%と50質量%の間のスチレン含有量および−5℃と−50℃の間のTgを有するコポリマー。ブタジエン/スチレン/イソプレンコポリマーの場合は、5質量%と50質量%の間、特に10質量%と40質量%の間のスチレン含有量、15質量%と60質量%の間、特に20質量%と50質量%の間のイソプレン含有量、5質量%と50質量%の間、特に20質量%と40質量%の間のブタジエン含有量、4%と85%の間のブタジエン成分‐1,2単位含有量(モル%)、6%と80%の間のブタジエン成分トランス‐1,4‐単位含有量(モル%)、5%と70%の間のイソプレン成分1,2 + 3,4‐単位含有量(モル%)および10%と50%の間のイソプレン成分トランス‐1,4‐単位含有量(モル%)を有するコポリマー、さらに一般的には、−5℃と−70℃の間のTgを有する任意のブタジエン/スチレン/イソプレンコポリマーが、特に適している。
【0021】
要するに、本発明に従う組成物のジエンエラストマーは、好ましくは、ポリブタジエン(“BR”と略記する)、合成ポリイソプレン(IR)、天然ゴム(NR)、ブタジエンコポリマー、イソプレンコポリマーおよびこれらのエラストマーの混合物からなる高不飽和ジエンエラストマーの群から選ばれる。そのようなコポリマーは、さらに好ましくは、ブタジエン/スチレンコポリマー(SBR)、イソプレン/ブタジエンコポリマー(BIR)、イソプレン/スチレンコポリマー(SIR)およびイソプレン/ブタジエン/スチレンコポリマー(SBIR)からなる群から選ばれる。
【0022】
特定の実施態様によれば、上記組成物は、40〜100phrのSBRエラストマー(エマルジョン中で調製したSBR (“ESBR”)または溶液中で調製したSBR (“SSBR”)のいずれか)を含む。
もう1つの特定の実施態様によれば、上記ジエンエラストマーは、SBR/BRブレンド(混合物)である。
他の可能性ある実施態様によれば、上記ジエンエラストマーは、SBR/NR (またはSBR/IR)、BR/NR (またはBR/IR)或いはSBR/BR/NR (またはSBR/BR/IR)ブレンドである。
【0023】
SBR (ESBRまたはSSBR)エラストマーの場合、特に、例えば20質量%と35質量%の間の中程度のスチレン含有量または例えば35〜45質量%の高スチレン含有量、15%と70%の間のブタジエン成分ビニル結合含有量、15%と75%の間のトランス‐1,4‐結合含有量(モル%)および−10℃と−55℃の間のTgを有するSBRを使用する;そのようなSBRは、有利には、好ましくは90%(モル%)よりも多いシス‐1,4‐結合を有するBRとの混合物として使用し得る。
【0024】
もう1つの特定の実施態様によれば、上記ジエンエラストマーは、イソプレンエラストマーである。用語“イソプレンエラストマー”は、知られているとおり、イソプレンホモポリマーまたはコポリマー、換言すれば、可塑化または解凝固し得る天然ゴム(NR)、合成ポリイソプレン(IR)、各種イソプレンコポリマーおよびこれらエラストマーの混合物からなる群から選ばれるジエンエラストマーを意味するものと理解されたい。イソプレンコポリマーのうちでは、特に、イソブテン/イソプレンコポリマー(ブチルゴム;IIR)、イソプレン/スチレンコポリマー(SIR)、イソプレン/ブタジエンコポリマー(BIR)またはイソプレン/ブタジエン/スチレンコポリマー(SBIR)を挙げることができる。このイソプレンエラストマーは、好ましくは、天然ゴムまたは合成シス‐1,4‐ポリイソプレンである;これらの合成ポリイソプレンのうちでは、好ましくは、90%よりも多い、さらに好ましくは98%よりも多いシス‐1,4‐結合量(モル%)を有するポリイソプレンを使用する。
【0025】
本発明のもう1つの好ましい実施態様によれば、上記ゴム組成物は、−70℃と0℃の間のTgを示す1種以上の“高Tg”ジエンエラストマーと、−110℃と−80℃の間、より好ましくは−105℃と−90℃の間のTgを示す1種以上の“低Tg”ジエンエラストマーとのブレンドを含む。高Tgエラストマーは、好ましくは、S‐SBR、E‐SBR、天然ゴム、合成ポリイソプレン(好ましくは95%よりも多いシス‐1,4‐構造含有量(モル%)を有する)、BIR、SIR、SBIRおよびこれらエラストマーの混合物からなる群から選択する。低Tgエラストマーは、好ましくは、ブタジエン単位を少なくとも70%に等しい含有量(モル%)で含む;低Tgエラストマーは、好ましくは、90%よりも多いシス‐1,4‐構造含有量(モル%)を有するポリブタジエン(BR)からなる。
【0026】
本発明のもう1つの特定の実施態様によれば、上記ゴム組成物は、例えば30phrと90phrの間、特に40phrと90phrの間の量の高Tgエラストマーを、低Tgエラストマーとのブレンドとして含む。
【0027】
本発明のもう1つの特定の実施態様によれば、本発明に従う組成物のジエンエラストマーは、90%よりも多いシス‐1,4‐構造含有量(モル%)を有するBR(低Tgエラストマーとしての)と1種以上のS‐SBRまたはE‐SBR(高Tgエラストマーとしての)とのブレンドを含む。
本発明の組成物は、単一種のジエンエラストマーまたは数種のジエンエラストマーの混合物を含み得る。
【0028】
II.2‐EPDMとポリプロピレンとの熱可塑性エラストマー加硫物
本発明に従うタイヤのトレッドは、EPDMとポリプロピレンとの熱可塑性エラストマー加硫物(TPV)を含むという他の本質的特徴を有するゴム組成物を含む。
【0029】
上記TPVエラストマーは、知られている通り、部分的に加硫させた、従って、その加硫物の名称の、EPDMとポリプロピレンとの混合物からなる;その製造方法は、既知であり、例えば、文献US 3 806 558 A号およびGB 1 830 884号に記載されている。
これらのTPVエラストマーは、商業的に入手可能であって、例えば、ExxonMobil Chemical社から“Santoprene”の品名で販売されている。
その知られている用途は、自動車部品、プラスチック製の工業および建設用シールおよびパッキング類、ワイヤーおよびケーブル絶縁等である。
【0030】
上記ゴム組成物は、好ましくは、5phrよりも多いEPDMとポリプロピレンとの熱可塑性エラストマー加硫物を、好ましくは5phrと50phrの間の、特に10〜30phrのそのようなTPVエラストマーを含む。
【0031】
II.3‐補強用充填剤
タイヤの製造において使用することのできるゴム組成物を補強するその能力について知られている任意のタイプの補強用充填剤、例えば、カーボンブラックのような有機充填剤、シリカのような補強用無機充填剤、またはこれら2つのタイプの充填剤のブレンド、特に、カーボンブラックとシリカとのブレンドを使用することができる。
【0032】
全てのカーボンブラック、特に、タイヤ級ブラック類は、カーボンブラックとして適している。後者のうちでは、例えば、N115、N134、N234、N326、N330、N339、N347またはN375ブラック類のような100、200または300シリーズの補強用カーボンブラック類(ASTM級)が、或いは、目標とする用途次第では、より高級シリーズのブラック類(例えば、N660、N683またはN722)も挙げられる。カーボンブラックは、例えば、マスターバッチの形で、イソプレンエラストマー中に既に混入させていてもよい(例えば、出願 WO 97/36724号またはWO 99/16600号を参照されたい)。
【0033】
カーボンブラック以外の有機充填剤の例としては、出願 WO‐A‐2006/069792号、WO‐A‐2006/069793号、WO‐A‐2008/003434号およびWO‐A‐2008/003435号に記載されているような官能化ポリビニル有機充填剤を挙げることができる。
【0034】
用語“補強用無機充填剤”とは、本特許出願においては、定義によれば、カーボンブラックに対比して“白色充填剤”、“透明充填剤”としてまたは“非黒色充填剤”としてさえも知られており、それ自体単独で、中間カップリング剤以外の手段によることなく、タイヤの製造を意図するゴム組成物を補強し得る、換言すれば、通常のタイヤ級カーボンブラックとその補強機能において置換わり得る任意の無機または鉱質充填剤(その色合およびその天然または合成起原にかかわらない)を意味するものと理解すべきである;そのような充填剤は、一般に、知られている通り、その表面でのヒドロキシル(‐OH)基の存在に特徴を有する。
【0035】
補強用無機充填剤が存在する物理的状態は、粉末、マイクロビーズ、顆粒、ビーズまたは任意の他の適切な濃密化形のいずれの形状であれ重要ではない。勿論、補強用無機充填剤なる用語は、種々の補強用無機充填剤、特に、下記で説明するような高分散性シリカ質および/またはアルミナ質充填剤の混合物も意味するものと理解されたい。
【0036】
シリカ質タイプの鉱質充填剤、特にシリカ(SiO2)、またはアルミナ質タイプの鉱質充填剤、特にアルミナ(Al2O3)が、特に補強用無機充填剤として適している。使用するシリカは、当業者にとって既知の任意の補強用シリカ、特に、共に450m2/g未満、好ましくは30〜400m2/gであるBET表面積とCTAB比表面積を有する任意の沈降または焼成シリカであり得る。高分散性沈降シリカ(“HDS”)としては、例えば、Degussa社からのUltrasil 7000およびUltrasil 7005シリカ類;Rhodia 社からのZeosil 1165MP、1135MPおよび1115MPシリカ類;PPG社からのHi‐Sil EZ150Gシリカ;Huber社からのZeopol 8715、8745または8755シリカ類;または、出願 WO 03/16837号に記載されているような高比表面積を有するシリカ類が挙げられる。
【0037】
使用する補強用無機充填剤は、特にシリカである場合、好ましくは45m2/gと400m2/gの間、より好ましくは60m2/gと300m2/gの間のBET比表面積を有する。
【0038】
好ましくは、総補強用充填剤(カーボンブラックおよび/またはシリカのような補強用無機充填剤)の含有量は、20phrと200phrの間、より好ましくは30phrと150phrの間の量である。
本発明の好ましい実施態様によれば、50phrと150phrの間の量の無機充填剤、特にシリカと、任意構成成分としてのカーボンブラックとを含む補強用充填剤を使用する;カーボンブラックは、存在する場合、好ましくは20phr未満、さらにより好ましくは10phr未満(例えば、0.1phrと10phrの間)の含有量で使用する。
【0039】
補強用無機充填剤をジエンエラストマーにカップリングさせるためには、知られている通り、無機充填剤(その粒子表面)とジエンエラストマー間に化学的および/または物理的性質の十分な結合を与えることを意図する少なくとも二官能性であるカップリング剤(または結合剤)、特に、二官能性のオルガノシランまたはポリオルガノシロキサン類を使用する。
特に、例えば出願 WO 03/002648号(またはUS 2005/016651号)およびWO 03/002649号(またはUS 2005/016650号)に記載されているような、その特定の構造によって“対称形”または“非対称形”と称するシランポリスルフィドを使用する。
【0040】
下記の一般式(I)に相応する“対称形”シランポリスルフィド類は、以下の定義に限定されることなく、特に適している:
(I) Z ‐ A ‐ Sx ‐ A ‐ Z
[式中、xは、2〜8 (好ましくは2〜5)の整数であり;
Aは、2価の炭化水素基(好ましくはC1〜C18アルキレン基またはC6〜C12アリーレン基、特にC1〜C10、特にC1〜C4アルキレン基、特にプロピレン)であり;
Zは、下記の式の1つに相応する:
【化1】

(式中、R1基は、置換されていないかまたは置換されており、互いに同一または異なるものであって、C1〜C18アルキル、C5〜C18シクロアルキルまたはC6〜C18アリール基(好ましくはC1〜C6アルキル、シクロヘキシルまたはフェニル基、特にC1〜C4アルキル基、特にメチルおよび/またはエチル)を示し;
R2基は、置換されていないかまたは置換されており、互いに同一または異なるものであって、C1〜C18アルコキシルまたはC5〜C18シクロアルコキシル基(好ましくは、C1〜C8アルコキシルおよびC5〜C8シクロアルコキシルから選ばれる基、さらにより好ましくはC1〜C4アルコキシルから選ばれる基、特にメトキシルおよびエトキシル)を示す)]。
【0041】
上記式(I)に相応するアルコキシシランポリスルフィド類の混合物、特に、通常の商業的に入手可能な混合物の場合、“x”指数の平均値は、好ましくは2と5の間の、より好ましくは4に近い分数である。しかしながら、本発明は、例えば、アルコキシシランジスルフィド(x = 2)によっても有利に実施し得る。
【0042】
さらに詳細には、シランポリスルフィドの例としては、特に、例えば、ビス(3‐トリメトキシシリルプロピル)またはビス(3‐トリエトキシシリルプロピル)ポリスルフィドのような、ビス((C1〜C4)アルコキシル(C1〜C4)アルキルシリル(C1〜C4)アルキル)ポリスルフィド類(特に、ジスルフィド、トリスルフィドまたはテトラスルフィド類)が挙げられる。特に、これらの化合物のうちでは、式[(C2H5O)3Si(CH2)3S2]2を有するTESPTと略称されるビス(3‐トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、または式[(C2H5O)3Si(CH2)3S]2を有するTESPDと略称されるビス(3‐トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィドを使用する。また、好ましい例としては、特許出願WO 02/083782号(またはUS 2004/132880号)に記載されているような、ビス(モノ(C1〜C4)アルコキシルジ(C1〜C4)アルキルシリルプロピル)ポリスルフィド類(特に、ジスルフィド、トリスルフィドまたはテトラスルフィド類)、特に、ビス(モノエトキシジメチルシリルプロピル)テトラスルフィドも挙げられる。
【0043】
アルコキシシランポリスルフィド類以外のカップリング剤としては、特に、特許出願WO 02/30939号(またはUS 6 774 255号)およびWO 02/31041号(またはUS 2004/051210号)に記載されているような、二官能性POS (ポリオルガノシロキサン)類またはヒドロキシシランポリスルフィド(上記式Iにおいて、R2 = OH)、或いは、例えば、特許出願WO 2006/125532号、WO 2006/125533号およびWO 2006/125534号に記載されているような、アゾジカルボニル官能基を担持するシランまたはPOS類が挙げられる。
本発明に従うゴム組成物においては、カップリング剤の含有量は、好ましくは4phrと12phrの間、より好ましくは4phrと8phrの間の量である。
【0044】
当業者であれば、この項において説明した補強用無機充填剤と等価の充填剤として、もう1つの性質、特に、有機性を有する補強用充填剤を、この補強用充填剤がシリカのような無機層で被覆されているか、或いは、充填剤とエラストマー間の結合を形成させるためにカップリング剤の使用を必要とするその表面官能部位(特にヒドロキシル)を含むかを条件として使用し得ることを理解されたい。
【0045】
II.4‐各種添加剤
また、本発明に従うタイヤのトレッドのゴム組成物は、例えば、顔料;オゾン劣化防止ワックス、化学オゾン劣化防止剤、酸化防止剤のような保護剤;上述した可塑剤以外の可塑剤;疲労防止剤;補強用樹脂;メチレン受容体(例えば、フェノールノボラック樹脂)またはメチレン供与体(例えば、HMTまたはH3M);イオウまたはイオウ供与体および/または過酸化物および/またはビスマレイミドのいずれかをベースとする架橋系;加硫促進剤および加硫活性化剤のような、トレッドの製造を意図するエラストマー組成物において一般的に使用する通常の添加剤の全てまたは一部も含む。
【0046】
また、これらの組成物は、カップリング剤以外に、カップリング活性化剤;無機充填剤を被覆するための薬剤;知られている通り、ゴムマトリックス中での充填剤の分散性を改良し組成物の粘度を低下させることによって、生状態における組成物の加工特性を改良することのできるより一般的な加工補助剤も含み得る;これらの薬剤は、例えば、アルキルアルコキシシランのような加水分解性シラン;ポリオール;ポリエーテル;第一級、第二級または第三級アミン類;或いはヒドロキシル化または加水分解性ポリオルガノシロキサン類である。
【0047】
好ましい実施態様によれば、本発明に従うタイヤのトレッドの組成物は、可塑剤をさらに含む。好ましくは、この可塑剤は、固形炭化水素系樹脂、液体可塑剤またはこれら2つの混合物である。
可塑剤の総含有量は、好ましくは10phrよりも多く、より好ましくは10phrと100phrの間、特に20phrと80phrの間、例えば、20phrと70phrの間の量である。
【0048】
本発明の第1の好ましい実施態様によれば、上記可塑剤は、“低Tg”液体可塑剤と称する20℃において液体の可塑剤である、即ち、この可塑剤は、定義によれば、−20℃よりも低い、好ましくは−40℃よりも低いTgを有する。
【0049】
ジエンエラストマーに対するその可塑化特性について知られている芳香族性または非芳香族性いずれかの任意の増量剤オイルおよび任意の液体可塑剤を使用し得る。周囲温度(20℃)において、これらの可塑剤またはこれらのオイルは、多かれ少なかれ粘稠であり、特に炭化水素可塑化用樹脂(周囲温度においては本来固体である)とは対照的に、液体(即ち、その容器の形状を最終的にはとる能力を有する物質)である。
【0050】
特に適しているのは、ナフテン系オイル(低粘度または高粘度を有し、特に、水素化されているまたは水素化されていない)、パラフィン系オイル、MES(中度抽出溶媒和物(medium extracted solvate))オイル、TDAE(処理留出物芳香族系抽出物(treated distillate aromatic extract))オイル、鉱油、植物油、エーテル可塑剤、エステル可塑剤、ホスフェート可塑剤、スルホネート可塑剤、並びにこれらの化合物の混合物からなる群から選ばれる液体可塑剤である。
【0051】
ホスフェート可塑剤としては、例えば、12個と30個の間の炭素原子を含有するホスフェート可塑剤、例えば、リン酸トリオクチルを挙げることができる。エステル可塑剤の例としては、特に、トリメリテート、ピロメリテート、フタレート、1,2‐シクロヘキサンジカルボキシレート、アジペート、アゼレート、セバケート、グリセリントリエステルおよびこれらの化合物の混合物からなる群から選ばれる化合物を挙げることができる。上記トリエステルのうちでは、特に、好ましくはC18不飽和脂肪酸、即ち、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸およびこれらの酸の混合物からなる群から選ばれる脂肪酸から主として(50質量%よりも多く、より好ましくは80質量%よりも多くにおいて)なるグリセリントリエステルを挙げることができる。さらに好ましくは、合成起原または天然起原(この場合は、例えば、ヒマワリまたはナタネ植物油)のいずれであれ、使用する脂肪酸は、50質量%よりも多い、さらにより好ましくは80質量%よりも多いオレイン酸からなる。高含有量のオレイン酸を含むそのようなトリエステル(トリオレアート)は周知である;そのようなトリエステルは、例えば、出願WO 02/088238号に、タイヤトレッド中の可塑剤として記載されている。
【0052】
好ましくは、液体可塑剤の含有量は、5phrと50phrの間、より好ましくは10phrと40phrの間、さらにより好ましくは10phrと35phrの間の量である。
【0053】
本発明のもう1つの好ましい実施態様によれば、この可塑剤は、そのTgが0℃よりも高い、好ましくは+20℃よりも高い熱可塑性炭化水素系樹脂である。この樹脂は、オイルのような液体可塑化用化合物とは対照的に、周囲温度(23℃)において固体である。
【0054】
好ましくは、上記熱可塑性炭化水素可塑化用樹脂は、少なくとも下記の特徴のいずれか1つを示す:
・20℃よりも高い、より好ましくは30℃よりも高いTg;
・400g/モルと2000g/モルの間、より好ましくは500g/モルと1500g/モルの間の数平均分子量(Mn);
・3よりも低い、より好ましくは2よりも低い多分散性指数(PI) (注:PI = Mw/Mn;Mwは質量平均分子量である)。
さらに好ましくは、この熱可塑性炭化水素可塑化用樹脂は、上記好ましい特徴の全部を有する。
【0055】
上記炭化水素系樹脂のマクロ構造(Mw、MnおよびPI)は、立体排除クロマトグラフィー(SEC)によって測定する:溶媒 テトラヒドロフラン;温度 35℃;濃度 1g/l;流量 1ml/分;注入前に0.45μmの有孔度を有するフィルターにより濾過した溶液;ポリスチレン標準によるムーア(Moore)較正;直列の3本“Waters”カラムセット(“Styragel”HR4E、HR1およびHR0.5);示差屈折計(“Waters 2410”)およびその関連操作ソフトウェア(“Waters Empower”)による検出。
【0056】
上記熱可塑性炭化水素樹脂は、脂肪族または芳香族或いは脂肪族/芳香族タイプであり得る、即ち、脂肪族および/または芳香族モノマーをベースとし得る。これらの炭化水素樹脂は、天然または合成であって、石油系であり得(その場合、石油樹脂の名称でも知られている)または石油系ではあり得ない。
【0057】
例えば、スチレン;α‐メチルスチレン;オルソ‐、メタ‐またはパラ‐メチルスチレン;ビニルトルエン;パラ‐(tert‐ブチル)スチレン;メトキシスチレン;クロロスチレン;ビニルメシチレン;ジビニルベンゼン;ビニルナフタレン;C9留分(または、より一般的にはC8〜C10留分)に由来する任意のビニル芳香族モノマーは、芳香族モノマーとして適している。好ましくは、ビニル芳香族モノマーは、スチレンまたはC9留分(または、より一般的にはC8〜C10留分)に由来するビニル芳香族モノマーである。好ましくは、ビニル芳香族モノマーは、当該コポリマー中では、モル画分として表して小量モノマーである。
【0058】
特定の好ましい実施態様によれば、上記可塑化用炭化水素樹脂は、シクロペンタジエン(CPDと略記する)またはジシクロペンタジエン(DCPDと略記する)のホモポリマーまたはコポリマー樹脂、テルペンのホモポリマーまたはコポリマー樹脂、テルペン/フェノールのホモポリマーまたはコポリマー樹脂、C5留分のホモポリマーまたはコポリマー樹脂、C9留分のホモポリマーまたはコポリマー樹脂、α‐メチルスチレンのホモポリマーまたはコポリマー樹脂およびこれらの樹脂の混合物からなる群から選ばれる;これらの可塑化用炭化水素樹脂は、単独でまたは液体可塑剤、例えば、MESまたはTDAEオイルと組合せて使用し得る。
【0059】
用語“テルペン”は、この場合、知られている通り、α‐ピネンモノマー、β‐ピネンモノマーおよびリモネンモノマーを包含する。好ましくは、リモネンモノマーを使用する;この化合物は、知られている通り、3種の可能性ある異性体の形で存在する:L‐リモネン(左旋性鏡像体)、D‐リモネン(右旋性鏡像体)或いはジペンテン、即ち、右旋性鏡像体および左旋性鏡像体のラセミ体。特に、上記可塑化用炭化水素樹脂のうちでは、α‐ピネン、β‐ピネンまたはジペンテンのホモポリマーまたはコポリマー樹脂、またはポリリモネン樹脂が挙げられる。
【0060】
上記の好ましい樹脂は、当業者にとって周知であり、商業的に入手可能であって、例えば、下記に関しては販売されている:
・ポリリモネン樹脂:DRT社から品名“Dercolyte L120” (Mn=625g/モル;Mw=1010g/モル;PI=1.6;Tg=72°C)として、またはArizona Chemical Company社から品名“Sylvagum TR7125C”(Mn=630g/モル;Mw=950g/モル;PI=1.5;Tg=70°C)として;
・C5留分/ビニル芳香族コポリマー樹脂、特に、C5留分/スチレンまたはC5留分/C9留分コポリマー樹脂:Neville Chemical Company社から品名“Super Nevtac 78”、“Super Nevtac 85”または“Super Nevtac 99”として、Goodyear Chemicals社から品名“Wingtack Extra”として、Kolon社から品名“Hikorez T1095”および“Hikorez T1100”として、さらに、Exxon社から品名“Escorez 2101”および“ECR 373”として;
・リモネン/スチレンコポリマー樹脂:DRT社から品名“Dercolyte TS 105”として、またはArizona Chemical Company社から品名“ZT115LT”および“ZT5100”として。
【0061】
また、他の好ましい樹脂の例として、フェノール変性α‐メチルスチレン樹脂も挙げることができる。これらのフェノール変性樹脂を特性決定するためには、知られている通り、“ヒドロキシル価”(規格ISO 4326に従って測定し、mg KOH/gで表す)と称する数値を使用することを思い起すべきである。α‐メチルスチレン樹脂、特に、フェノールによって変性した樹脂は、当業者にとって周知であり、商業的に入手可能であって、例えば、Arizona Chemical Company社から品名“Sylvares SA 100” (Mn=660g/モル;PI=1.5;Tg=53°C);“Sylvares SA 120” (Mn=1030g/モル;PI=1.9;Tg=64°C);“Sylvares 540”(Mn=620g/モル;PI=1.3;Tg=36°C;ヒドロキシル価=56mg KOH/g);“Sylvares 600”(Mn=850g/モル;PI=1.4;Tg=50°C;ヒドロキシル価=31mg KOH/g)として販売されている。
【0062】
本発明の特定の実施態様によれば、上記炭化水素可塑化用樹脂の含有量は、5phrと50phrの間、好ましくは10phrと40phrの間、さらにより好ましくは10phrと35phrの間の量である。
【0063】
II.5‐ゴム組成物の製造
本発明のタイヤのトレッドにおいて使用するゴム組成物は、適切なミキサー内で、当業者にとって周知の2つの連続する製造段階、即ち、110℃と190℃の間、好ましくは130℃と180℃の間の最高温度までの高温で熱機械的に加工または混練する第1段階(“非生産”段階)、および、その後の、典型的には110℃よりも低い、例えば、40℃と100℃の間の低めの温度まで機械加工する第2の段階(“生産”段階)を使用して製造することができ、この仕上げ段階において、架橋系を混入する。
【0064】
そのような組成物の製造方法は、例えば、下記の段階を含む:
・ジエンエラストマー中に、第1段階(“非生産”段階)において、少なくとも補強用充填剤およびEPDMとポリプロピレンとの熱可塑性エラストマー加硫物を混入し、全てを、110℃と190℃の間の最高温度に達するまで熱機械的に混練する段階(例えば、1回以上);
・混ぜ合せた混合物を100℃よりも低い温度に冷却する段階;
・次に、第2段階(“生産”段階)において、架橋系を混入する段階;
・全てを110℃よりも低い最高温度まで混練する段階。
【0065】
例えば、上記非生産段階は、1回の熱機械的段階で実施し、その間に、第1工程において、全ての必須ベース構成成分(ジエンエラストマー、EPDMとポリプロピレンとの熱可塑性エラストマー加硫物、補強用充填剤)を、標準の密閉ミキサーのような適切なミキサーに導入し、その後、第2工程において、例えば1〜2分間の混錬後、架橋系を除いた他の添加剤、任意構成成分としての充填剤用のさらなる被覆剤または加工助剤を導入する。この非生産段階における総混練時間は、好ましくは1分と15分の間の時間である。
【0066】
そのようにして得られた混合物を冷却した後、架橋系を、この場合は、低温(例えば、40℃と100℃の間の)に維持した開放ミルのような開放ミキサー内に導入する。その後、混ぜ合せた混合物を、数分間、例えば、2分と15分の間の時間混合する(生産段階)。
【0067】
適切な架橋系は、好ましくは、イオウと、一次加硫促進剤、特に、スルフェンアミドタイプの促進剤とをベースとする。この加硫系に、上記第1非生産段階および/または上記生産段階において混入する各種既知の加硫活性化剤または二次加硫促進剤、例えば、酸化亜鉛、ステアリン酸、グアニジン誘導体(特に、ジフェニルグアニジン)等が加わる。イオウ含有量は、好ましくは、0.5phrと3.0phrの間の量であり、また、一次促進剤の含有量は、好ましくは、0.5phrと5.0phrの間の量である。
【0068】
(一次または二次)促進剤としては、イオウの存在下にジエンエラストマーの加硫において促進剤として作用し得る任意の化合物、特に、チアゾールタイプの促進剤およびその誘導体、チウラムおよびジチオカルバミン酸亜鉛タイプの促進剤を使用し得る。これらの促進剤は、さらに好ましくは、2‐メルカプトベンゾチアジルジスルフィド(“MBTS”と略記する)、N‐シクロヘキシル‐2‐ベンゾチアゾールスルフェンアミド(“CBS”と略記する)、N,N‐ジシクロヘキシル‐2‐ベンゾチアゾールスルフェンアミド(“DCBS”と略記する)、N‐tert‐ブチル‐2‐ベンゾチアゾールスルフェンアミド(“TBBS”と略記する)、N‐tert‐ブチル‐2‐ベンゾチアゾールスルフェンイミド(“TBSI”と略記する)、ジベンジルジチオカルバミン酸亜鉛 (“ZBEC”と略記する)およびこれらの化合物の混合物からなる群から選ばれる。好ましくは、スルフェンアミドタイプの一次促進剤を使用する。
【0069】
その後、そのようにして得られた最終組成物は、特に実験室での特性決定のための、例えば、シートまたはプラークの形にカレンダー加工するか、或いは、押出加工して、例えば、トレッドの製造において使用するゴム形状要素を形成させる。
本発明は、生状態(即ち、硬化前)および硬化状態(即ち、架橋または加硫後)双方の上記タイヤに関する。
【0070】
III‐本発明の実施例
III.1‐組成物の製造
以下の試験における手順は、以下のとおりである:ジエンエラストマー、本発明に従う組成物の場合のEPDMとポリプロピレンとの熱可塑性エラストマー加硫物、補強用充填剤(シリカおよび/またはカーボンブラック)、および、加硫系を除いた各種他の成分を、出発容器温度がおよそ60℃である密閉ミキサー内に連続して導入する(最終充填度:およそ70容量%)。その後、熱機械的加工(非生産段階)を1段階で実施する;この段階は、165℃の最高“落下”温度に達するまで合計で約3〜4分間続く。
【0071】
そのようにして得られた混合物を回収し、冷却し、その後、イオウとスルフェンアミドタイプの促進剤とを30℃のミキサー(ホモ・フィニッシャー)内に混入し、全てを適切な時間(例えば、5分と12分の間の時間)混合する(生産段階)。
【0072】
そのようにして得られた組成物を、その後、その物理的または機械的性質の測定のためのゴムのプラーク(2〜3mm厚)または薄シートの形にカレンダー加工するか、或いはトレッドの形に押出加工する。
【0073】
III.2‐試験
以下の試験は、本発明に従うタイヤのトレッド用の組成物の湿潤グリップ性能における改良を、対照トレッドと比較して実証する。
このために、4通りのトレッド用のゴム組成物、即ち、本発明に従う3通りの組成物(以下C.2〜C.4と示す)および本発明に従わない組成物(対照、以下C.1と示す)を、上述したようにして製造した。
これら組成物の配合(phr即ち総エラストマー(即ち、EPDMとポリプロピレンとの熱可塑性エラストマー加硫物を含む)の100質量部当りの質量部での)およびこれら組成物の硬化前後の機械的性質を、下記の表1および2に示している。
【0074】
組成物C.1は、SBRをベースとし、乗用車用の“グリーンタイヤ”トレッドを製造するのに通常使用するSBRとBRをベースとし、当業者とっての参照組成物である。
組成物C.2〜C.4は、SBRおよびBRと、EPDMとポリプロピレンとの熱可塑性エラストマー加硫物とをベースとする。従って、これらの組成物は、対照組成物C.1とは、10phrのSBRと10phrのBRを20phrのTPVエラストマーで置換えたことのみで異なる。
組成物C.1〜C.4は、全て、炭化水素樹脂(ポリリモネン樹脂)、液体可塑剤(グリセリンオレイン酸トリエステル)およびMESオイルを含む可塑剤混合物を含む。
【0075】
先ずは最初に、組成物C.2〜C.4は、対照組成物C.1の値よりも実質的に低いムーニー粘度値を示していることに注目されたい;このことは、生状態における組成物の加工性の改良を立証している。
【0076】
引き続き、組成物C.2〜C.4は、硬化後、対照組成物C.1の特性よりも高い剛性(ショアA硬度)特性および10%歪みおよび100%歪みでのモジュラス特性を示していることに注目されたい;このことは、道路挙動の改良(増強されたコナーリング力)の当業者にとっての認識された指標である。
【0077】
最後に、本発明に従うタイヤのトレッドの組成物C.2〜C.4は、対照組成物C.1の値よりも常に高い0℃でのtan(δ)値、即ち、改良されているタイヤトレッドの湿潤グリップポテンシャルの当業者にとっての明白な指標を示していることも判明している。
本発明は、また、以下の態様であり得る。
〔1〕
トレッドが、少なくともジエンエラストマー、補強用充填剤およびEPDMとポリプロピレンとの熱可塑性エラストマー加硫物(TPV)を含むゴム組成物を含むことを特徴とするタイヤ。
〔2〕
上記ジエンエラストマーが、ポリブタジエン(BR)、合成ポリイソプレン(IR)、天然ゴム (NR)、ブタジエンコポリマー、イソプレンコポリマーおよびこれらのエラストマーの混合物からなる群から選ばれる、〔1〕記載のタイヤ。
〔3〕
TPVエラストマーの含有量が、5phrよりも多い、〔1〕または2〕記載のタイヤ。
〔4〕
TPVエラストマーの含有量が、10phrと50phrの間の量である、〔3〕記載のタイヤ。
〔5〕
前記ゴム組成物が、可塑剤をさらに含む、〔1〕〜〔4〕のいずれか1項記載のタイヤ。
〔6〕
可塑剤の含有量が、10phrよりも多い、〔5〕記載のタイヤ。
〔7〕
前記可塑剤が熱可塑性炭化水素樹脂であって、そのガラス転移温度(Tg)が0℃よりも高い、〔5〕または〔6〕記載のタイヤ。
〔8〕
前記熱可塑性炭化水素樹脂が、シクロペンタジエン(CPDと略記する)またはジシクロペンタジエン(DCPDと略記する)のホモポリマーまたはコポリマー樹脂、テルペンのホモポリマーまたはコポリマー樹脂、テルペン/フェノールのホモポリマーまたはコポリマー樹脂、C5留分のホモポリマーまたはコポリマー樹脂、C9留分のホモポリマーまたはコポリマー樹脂、α‐メチルスチレンのホモポリマーまたはコポリマー樹脂およびこれらの樹脂の混合物からなる群から選ばれる、〔7〕記載のタイヤ。
〔9〕
前記可塑剤が、20℃で液体であって、−20℃よりも低いガラス転移温度(Tg)を有する、〔5〕または〔6〕記載のタイヤ。
〔10〕
前記液体可塑剤が、ナフテン系オイル、パラフィン系オイル、MESオイル、TDAEオイル、エステル可塑剤、エーテル可塑剤、ホスフェート可塑剤、スルホネート可塑剤およびこれら化合物の混合物からなる群から選ばれる、〔9〕記載のタイヤ。
〔11〕
前記ゴム組成物が、〔7〕または〔8〕記載の炭化水素樹脂と〔9〕または〔10〕記載の液体可塑剤を含む、〔5〕または〔6〕記載のタイヤ。
〔12〕
前記補強用充填剤が、カーボンブラック、シリカ、またはカーボンブラックとシリカの混合物を含む、〔1〕〜〔11〕のいずれか1項記載のタイヤ。
【0078】
表1
(1) SSBR溶液 (乾燥SBRとして表す含有量):25%のスチレン、57%の1,2‐ポリブタジエン単位および23%のトランス‐1,4‐ポリブタジエン単位 (Tg = −21℃);
(2) 4.3%の1,2‐、2.7%のトランス‐1,4‐、93%のシス‐1,4‐を含むBR (Tg = −106℃);
(3) EPDM/ポリプロピレン:(ExxonMobil Chemical社からの“Santoprene TPV 111‐45”);
(4) EPDM/ポリプロピレン:(ExxonMobil Chemical社からの“Santoprene TPV 9101‐55”;
(5) EPDM/ポリプロピレン:ExxonMobil Chemical社からの“Santoprene TPV 121‐62M100”;
(6) シリカ (Rhodia社からの“Zeosil 1165MP”);
(7)カップリング剤:TESPT (Degussa社からのSi69);
(8) カーボンブラック N234;
(9) グリセリンオレイン酸トリエステル (Novance社からの“Lubrirob Tod 1880”)、ポリリモネン樹脂(DRT社からの“Dercolyte L120”)およびSBR用の増量剤オイル(MES)の混合物;
(10) N‐(1,3‐ジメチルブチル)‐N‐フェニル‐パラ‐フェニレンジアミン(Flexsys社からのSantoflex 6‐PPD);
(11) DPG = ジフェニルグアニジン (Flexsys社からの“Perkacit DPG”);
(12) 酸化亜鉛 (工業級;Umicore社);
(13) Stearin (Uniquema社からの“Pristerene”);
(14) N‐シクロヘキシル‐2‐ベンゾチアゾールスルフェンアミド (Flexsys社からのSantocure CBS)。
【0079】
表2