(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記保護膜形成層は、エネルギー線硬化性樹脂(C)および着色剤(B)を含有する樹脂組成物からなることを特徴とする請求項1または2に記載のチップ用保護膜形成用シート。
前記保護膜形成層は、熱硬化性樹脂(A)、着色剤(B)およびエネルギー線硬化性樹脂(C)を含有する樹脂組成物からなることを特徴とする請求項1または2に記載のチップ用保護膜形成用シート。
前記保護膜形成層における前記剥離シートと接する面の反対側の面上に、第2の剥離シートを有することを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のチップ用保護膜形成用シート。
表面に回路が形成された半導体ウエハの裏面に、請求項1〜6のいずれかに記載のチップ用保護膜形成用シートの保護膜形成層を貼付した後、以下の工程(1)〜(3)を任意の順で行って、平面方向に2色以上の色を有する保護膜を裏面に有する半導体チップを得ることを特徴とする保護膜付半導体チップの製造方法。
(1)保護膜形成層と剥離シートとを剥離する工程
(2)保護膜形成層を硬化させる工程
(3)半導体ウエハおよび保護膜形成層をダイシングする工程
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上記保護膜を形成した半導体装置(チップ)においては、識別性を付与するために、レーザーマーキングにより、チップ裏面に形成された保護膜に印字することが行われている(特許文献1〜5参照)。特に、特許文献4では、レーザーマーキングの視認性を上げるために、色が異なる2層の保護膜形成層を有するチップ用保護膜形成用シートが開示されている。
【0007】
しかし、これらは、いずれもレーザーマーキング工程を必要とする。このようにレーザーマーキングの一工程が増えると、半導体装置の生産効率が悪くなる。また、熱に敏感な精密な半導体装置においては、レーザーマーキング時の光や熱により回路が破壊されるおそれがあることから、レーザーマーキングができないことがある。さらに、チップ裏面に保護膜が形成された同形の半導体装置においては、レーザーマーキングの印字だけでは、そのチップがどのような種類のものか簡単に識別することが困難である。
【0008】
本発明は、このような実状に鑑みてなされたものであり、レーザーマーキングを行わなくてもチップに種類等の識別性を付与することのできるチップ用保護膜形成用シート、およびレーザーマーキングを行わなくても種類等の識別性を有する半導体チップの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、第1に本発明は、チップに積層され、当該チップの保護膜を形成するためのチップ用保護膜形成用シートであって、剥離シートと、前記剥離シートの剥離面上に形成された硬化性の保護膜形成層とを有し、前記保護膜形成層は、前記チップ用保護膜形成用シートがウエハに貼付されたときに、当該ウエハから得られる全てのチップにつき平面方向に2色以上の色を有するように着色されていることを特徴とするチップ用保護膜形成用シートを提供する(発明1)。
【0010】
チップとしては、主として半導体チップを例示することができるが、これに限定されるものではない。なお、本明細書において、「シート」にはフィルムの概念、「フィルム」にはシートの概念が含まれるものとする。
【0011】
ウエハとしては、主として半導体ウエハを例示することができるが、これに限定されるものではない。
【0012】
上記発明(発明1)によれば、平面方向に2色以上の色を有するように着色されている保護膜形成層により、チップに対して種類等の識別性を付与することができ、したがって、識別性付与のためにレーザーマーキングを行う必要はない。
【0013】
上記発明(発明1)において、前記保護膜形成層は、前記チップの種類に応じて異なるように着色されていることが好ましい(発明2)。ただし、前記保護膜形成層は、同じ種類のチップに対しても異なるように着色されていてもよい。
【0014】
上記発明(発明1,2)において、前記保護膜形成層は、熱硬化性樹脂(A)および着色剤(B)を含有する樹脂組成物からなってもよいし(発明3)、エネルギー線硬化性樹脂(C)および着色剤(B)を含有する樹脂組成物からなってもよいし(発明4)、熱硬化性樹脂(A)、着色剤(B)およびエネルギー線硬化性樹脂(C)を含有する樹脂組成物からなってもよい(発明5)。
【0015】
上記発明(発明1〜5)においては、前記保護膜形成層における前記剥離シートと接する面の反対側の面上に、第2の剥離シートを有していてもよい(発明6)。
【0016】
第2に本発明は、表面に回路が形成された半導体ウエハの裏面に、前記チップ用保護膜形成用シート(発明1〜6)の保護膜形成層を貼付した後、以下の工程(1)〜(3)を任意の順で行って、平面方向に2色以上の色を有する保護膜を裏面に有する半導体チップを得ることを特徴とする保護膜付半導体チップの製造方法を提供する(発明7)。
(1)保護膜形成層と剥離シートとを剥離する工程
(2)保護膜形成層を硬化させる工程
(3)半導体ウエハおよび保護膜形成層をダイシングする工程
【0017】
上記発明(発明7)によれば、半導体チップの裏面に形成された、平面方向に2色以上の色を有するように着色されている保護膜により、得られる保護膜付半導体チップは、レーザーマーキングを行わなくても種類等の識別性を有するものとなる。ただし、本発明は、必要に応じてレーザーマーキングする工程を含んでいてもよく、レーザーマーキングした保護膜付半導体チップを本発明の範囲から除外するものではない。
【0018】
第3に本発明は、半導体チップ裏面に保護膜が形成された保護膜付半導体チップであって、前記保護膜は、平面方向に2色以上の色を有する硬化性の保護膜形成層を硬化して得られる膜であることを特徴とする保護膜付半導体チップを提供する。
【0019】
上記発明に係る保護膜付半導体チップにおいては、平面方向に2色以上の色を有するように着色されている保護膜により、レーザーマーキングを行わなくても種類等の識別性を有する。ただし、本発明は、レーザーマーキングされた保護膜付半導体チップを除外するものではなく、例えば、チップの種類の識別性に関係のないロット番号等がレーザーマーキングされている保護膜付半導体チップも本発明の範囲に含まれる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、レーザーマーキングを行わなくても種類等の識別性を有し、意匠性にも優れた保護膜付半導体チップが得られる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態について説明する。
[チップ用保護膜形成用シート]
図1は、本発明の一実施形態に係るチップ用保護膜形成用シートの断面図である。また、
図2は、本発明の一実施形態に係るチップ用保護膜形成用シートの平面図である。
【0023】
本実施形態に係るチップ用保護膜形成用シート4は、一例として半導体ウエハに貼付され、半導体チップに保護膜を形成するためのものであるが、これに限定されるものではなく、種々のものを被着体とし、種々のチップを被保護体とすることができる。
【0024】
本実施形態に係るチップ用保護膜形成用シート4は、
図1に示すように、(第1の)剥離シート1と、剥離シート1の剥離面上に設けられた保護膜形成層3とからなる。
【0025】
保護膜形成層3は、平面方向に2色以上の色を有するように着色されている。本実施形態では、チップ用保護膜形成用シート4が半導体ウエハに貼付されたときに、当該半導体ウエハから得られる各チップにつき平面方向に2色以上の色を有するように、保護膜形成層3は着色されている(
図2参照)。
【0026】
本実施形態では、保護膜形成層3は市松模様として色分けされているが(
図2,3,4参照)、これに限定されるものではない。この保護膜形成層3は、チップの種類に応じて色が異なるように着色されることが好ましい。これにより、レーザーマーキングを行わなくても、チップの種類に応じて識別性を有する保護膜付半導体チップが得られる。また、かかる保護膜付半導体チップは、2色以上の色を有する保護膜により、意匠性にも優れたものとなる。
【0027】
剥離シート1としては、例えば、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリブテンフィルム、ポリブタジエンフィルム、ポリメチルペンテンフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、塩化ビニル共重合体フィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルム、ポリブチレンテレフタレートフィルム、ポリウレタンフィルム、エチレン酢酸ビニルフィルム、アイオノマー樹脂フィルム、エチレン・(メタ)アクリル酸共重合体フィルム、エチレン・(メタ)アクリル酸エステル共重合体フィルム、ポリスチレンフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリイミドフィルム、フッ素樹脂フィルム、液晶ポリマーフィルム等が用いられる。また、これらの架橋フィルムも用いられる。さらに、これらの積層フィルムであってもよい。
【0028】
特に、保護膜形成層3を加熱硬化した後に剥離シート1を剥離する場合には、耐熱性に優れたポリメチルペンテンフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルム、ポリイミドフィルム等が好ましく用いられる。
【0029】
上記フィルム表面(特に保護膜形成層3と接する面)には、剥離処理が施されていてもよい。剥離処理に使用される剥離剤としては、例えば、アルキッド系、シリコーン系、フッ素系、不飽和ポリエステル系、ポリオレフィン系、ワックス系の剥離剤が挙げられ、特に耐熱性に優れる点で、アルキッド系、シリコーン系、フッ素系の剥離剤が好ましい。
【0030】
保護膜形成層3と剥離シート1との間での剥離を容易にするため、剥離シート1の表面張力は、好ましくは40mN/m以下、さらに好ましくは37mN/m以下、特に好ましくは35mN/m以下である。このように表面張力が低い剥離シート1は、材質を適宜選択して得ることが可能であり、また剥離シートの表面に剥離剤を塗布して剥離処理を施すことで得ることもできる。
【0031】
剥離シート1の厚さは、通常は5〜300μm、好ましくは10〜200μmである。
【0032】
保護膜形成層3は、硬化性を有し、着色された材料からなる。なお、本明細書における「硬化性」とは、加熱やエネルギー線照射等のトリガーによって硬化する性質をいうものとする。
【0033】
上記材料としては、第1に熱硬化性樹脂(A)および着色剤(B)を含有する樹脂組成物(I)、第2にエネルギー線硬化性樹脂(C)および着色剤(B)を含有する樹脂組成物(II)、第3に熱硬化性樹脂(A)、着色剤(B)およびエネルギー線硬化性樹脂(C)を含有する樹脂組成物(III)が好ましい。
【0034】
第1の樹脂組成物(I)は、材料が安価であり、また硬い保護膜を形成することができるという利点がある。さらに、着色剤(B)の存在によって光硬化が困難であり、また電子線がチップに悪影響を及ぼすような場合には、第2の樹脂組成物(II)および第3の樹脂組成物(III)の使用はできないため、第1の樹脂組成物(I)は有用である。
【0035】
第2の樹脂組成物(II)によれば、保護膜形成層3を硬化させるときに加熱を要しないため、熱によるチップへの悪影響を防止することができる。したがって、第2の樹脂組成物(II)は、耐熱性の低いチップに適用するときに、特に有用である。
【0036】
第3の樹脂組成物(III)は、熱硬化性樹脂(A)によって硬い保護膜を形成することができ、またエネルギー線硬化性樹脂(C)を含有することによって、エネルギー線照射時に剥離シート1との剥離性を向上させることができるという利点がある。
【0037】
熱硬化性樹脂(A)とは、加熱により硬化する特性を有する樹脂である。
熱硬化性樹脂(A)としては、例えば、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、ポリイミド樹脂、ベンゾオキサジン樹脂等が挙げられ、それらの1種を単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。特に本実施形態では、エポキシ樹脂、フェノール樹脂またはそれらの混合物が好ましく用いられる。
【0038】
エポキシ樹脂は、加熱を受けると三次元網状化し、強固な被膜を形成する性質を有する。このようなエポキシ樹脂としては、従来より公知の種々のエポキシ樹脂が用いられるが、通常は、分子量300〜2000程度のものが好ましく、特に分子量300〜500、好ましくは330〜400の常態で液状のエポキシ樹脂と、分子量400〜2500、好ましくは500〜2000の常温で固体のエポキシ樹脂とをブレンドした形で用いるのが望ましい。また、本実施形態において好ましく使用されるエポキシ樹脂のエポキシ当量は、通常50〜5000g/eqである。
【0039】
このようなエポキシ樹脂としては、具体的には、ビスフェノールA、ビスフェノールF、レゾルシノール、フェニルノボラック、クレゾールノボラック等のフェノール類のグリシジルエーテル;ブタンジオール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等のアルコール類のグリシジルエーテル;フタル酸、イソフタル酸、テトラヒドロフタル酸等のカルボン酸のグリシジルエーテル;アニリンイソシアヌレート等の窒素原子に結合した活性水素をグリシジル基で置換したグリシジル型またはアルキルグリシジル型のエポキシ樹脂;ビニルシクロヘキサンジエポキシド、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−ジシクロヘキサンカルボキシレート、2−(3,4−エポキシ)シクロヘキシル−5,5−スピロ(3,4−エポキシ)シクロヘキサン−m−ジオキサン等のように、分子内の炭素−炭素二重結合を例えば酸化することによりエポキシが導入された、いわゆる脂環型エポキシドなどを挙げることができる。また、その他、ビフェニル骨格、ジシクロヘキサジエン骨格またはナフタレン骨格を有するエポキシ樹脂を用いることもできる。これらの中でも、本実施形態では、ビスフェノール系グリシジル型エポキシ樹脂、o−クレゾールノボラック型エポキシ樹脂またはフェノールノボラック型エポキシ樹脂が好ましく用いられる。これらエポキシ樹脂は、1種を単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0040】
エポキシ樹脂を用いる場合には、助剤として、熱活性型潜在性エポキシ樹脂硬化剤を併用することが好ましい。熱活性型潜在性エポキシ樹脂硬化剤とは、室温ではエポキシ樹脂と反応せず、ある温度以上の加熱により活性化し、エポキシ樹脂と反応するタイプの硬化剤である。
【0041】
熱活性型潜在性エポキシ樹脂硬化剤の活性化方法には、加熱による化学反応で活性種(アニオン/カチオン)を生成する方法;室温付近ではエポキシ樹脂中に安定に分散しており、高温でエポキシ樹脂と相溶・溶解し、硬化反応を開始する方法;モレキュラーシーブ封入タイプの硬化剤で、高温で溶出して硬化反応を開始する方法;マイクロカプセルによる方法等が存在する。
【0042】
本実施形態において使用される熱活性型潜在性エポキシ樹脂硬化剤の具体例としては、各種オニウム塩、二塩基酸ジヒドラジド化合物、ジシアンジアミド、アミンアダクト硬化剤、イミダゾール化合物等の高融点活性水素化合物等を挙げることができる。これら熱活性型潜在性エポキシ樹脂硬化剤は、1種を単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0043】
フェノール樹脂としては、アルキルフェノール、多価フェノール、ナフトール等のフェノール類とアルデヒド類との縮合物等が特に制限されることなく用いられる。本実施形態において好ましく使用されるフェノール樹脂としては、具体的には、フェノールノボラック樹脂、o−クレゾールノボラック樹脂、p−クレゾールノボラック樹脂、t−ブチルフェノールノボラック樹脂、ジシクロペンタジエンクレゾール樹脂、ポリパラビニルフェノール樹脂、ビスフェノールA型ノボラック樹脂、あるいはこれらの変性物等が挙げられる。これらフェノール樹脂は、1種を単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0044】
なお、上記フェノール樹脂に含まれるフェノール性水酸基は、上記エポキシ樹脂のエポキシ基と加熱により容易に付加反応して、耐衝撃性の高い硬化物を形成できる。このため、エポキシ樹脂とフェノール樹脂とを併用してもよい。
【0045】
着色剤(B)としては、有機顔料、無機顔料、または染料が使用できる。黒色顔料としては、例えば、カーボンブラック、酸化銅、四三酸化鉄、二酸化マンガン、アニリンブラック、活性炭等が用いられる。黄色顔料としては、例えば、黄鉛、亜鉛黄、カドミウムイエロー、黄色酸化鉄、ミネラルファストイエロー、ニッケルチタンイエロー、ネーブルスエロー、ナフトールエローS、ハンザエロー、ベンジジンエローG、ベンジジンエローGR、キノリンエローレーキ、パーマネントエローNCG、タートラジンレーキ等が用いられる。橙色顔料としては、例えば、赤色黄鉛、モリブデンオレンジ、パーマネントオレンジGTR、ピラゾロンオレンジ、バルカンオレンジ、インダスレンブリリアントオレンジRK、ベンジジンオレンジG、インダスレンブリリアントオレンジGKM等が用いられる。赤色顔料としては、例えば、ベンガラ、カドミウムレッド、鉛丹、硫化水銀、カドミウム、パーマネントレッド4R、リソールレッド、ピロゾロンレッド、ウオッチングレッド、カルシウム塩、レーキレッドD、ブリリアントカーミン6B、エオシンレーキ、ローダミンレーキB、アリザリンレーキ、ブリリアントカーミン3B等が用いられる。紫色顔料としては、例えば、マンガン紫、ファストバイオレットB、メチルバイオレットレーキ等が用いられる。青色顔料としては、例えば、紺青、コバルトブルー、アルカリブルーレーキ、ビクトリアブルーレーキ、フタロシアニンブルー、無金属フタロシアニンブルー、フタロシアニンブルー部分塩素化物、ファーストスカイブルー、インダスレンブルーBC等が用いられる。緑色顔料としては、例えば、クロムグリーン、酸化クロム、ピグメントグリーンB、マラカイトグリーンレーキ、ファイナルイエローグリーンG等が用いられる。白色顔料としては、例えば、亜鉛華、酸化チタン、アンチモン白、硫化亜鉛等が用いられる。体質顔料としては、例えば、バライト粉、炭酸バリウム、クレー、シリカ、ホワイトカーボン、タルク、アルミナホワイト等が用いられる。
【0046】
また、染料としては、例えば、塩基性染料、酸性染料、分散染料、直接染料等が用いられる。このような染料としては、ニグロシン、メチレンブルー、ローズベンガル、キノリンイエロー、ウルトラマリンブルー等が例示される。
【0047】
エネルギー線硬化性樹脂(C)とは、紫外線や電子線等のエネルギー線を照射することにより硬化する特性を有する樹脂である。エネルギー線硬化性樹脂(C)としては、重合性二重結合を有する重量平均分子量5万以上のアクリル系共重合体、あるいは分子内に少なくとも1つの重合性二重結合を有する重量平均分子量が100〜30,000の範囲にあるモノマーおよび/またはオリゴマーが好ましく、上記アクリル系共重合体と上記モノマーおよび/またはオリゴマーとを組み合わせて使用してもよい。
【0048】
重合性二重結合を有する重量平均分子量5万以上のアクリル系共重合体は、アクリル系共重合体の主鎖または側鎖に重合性二重結合を有するものである。重合性二重結合の例としては、ビニル基、アリル基、アクリロイル基、メタクリロイル基、アクリロイルアミド基、メタクリロイルアミド基等が挙げられ、好ましくはアクリロイル基およびメタクリロイル基が挙げられる。
【0049】
側鎖に重合性二重結合を有する共重合体は、例えば、以下の手順で調製される。まず、ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルへキシル(メタ)アクリレート、およびイソオクチル(メタ)アクリレートから選ばれる少なくとも1種類と、ヒドロキシエチルアクリレートやアクリル酸のような活性水素を有する重合性単量体と、必要に応じて活性水素を有しないその他の重合性単量体とをラジカル共重合させることにより、主鎖に上記各重合性単量体に由来する骨格を有し、側鎖に活性水素を有する共重合体が得られる。次いで、この共重合体中の側鎖の活性水素に、例えば、2−メタクロイルオキシエチルイソシアナートのような(メタ)アクリロイル基を有するモノイソシアネート化合物のイソシアネート基を反応させることにより、側鎖に重合性二重結合((メタ)アクリロイル基)を有するアクリル共重合体を得ることができる。
【0050】
重合性二重結合を有するアクリル系共重合体の重量平均分子量は、5万以上が好ましく、10万〜200万が特に好ましい。
【0051】
分子内に少なくとも1つの重合性二重結合を有する重量平均分子量が100〜30,000の範囲にあるモノマー/オリゴマーとしては、例えば、トリメチロールプロパントリアクリレート、テトラメチロールメタンテトラアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ジペンタエリスリトールモノヒドロキシペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、1,4−ブチレングリコールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、オリゴエステルアクリレート、ポリエステル型またはポリエーテル型のウレタンアクリレートオリゴマー、ポリエステルアクリレート、ポリエーテルアクリレート、エポキシ変性アクリレート等が挙げられる。これらの中でも、紫外線硬化型のものが特に好ましい。具体的には、エポキシ変性アクリレート、オリゴエステルアクリレート、ウレタンアクリレートオリゴマー等が好ましく、硬度、耐熱性、接着性等の面からエポキシ変性アクリレートが最も好ましい。上記モノマーまたはオリゴマーは、1種を単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0052】
分子内に少なくとも1つの重合性二重結合を有するモノマーまたはオリゴマーの重量平均分子量は、100〜30,000が好ましく、300〜10,000が特に好ましい。
【0053】
エネルギー線硬化性樹脂(C)は、これに光重合開始剤を混入することにより、重合硬化時間および光線照射量を少なくすることができる。このような光重合開始剤としては、ベンゾフェノン、アセトフェノン、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンゾイン安息香酸、ベンゾイン安息香酸メチル、ベンゾインジメチルケタール、2,4−ジエチルチオキサンソン、α−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、ベンジルジフェニルサルファイド、テトラメチルチウラムモノサルファイド、アゾビスイソブチロニトリル、ベンジル、ジベンジル、ジアセチル、β−クロールアンスラキノン、アシルホスフィンオキシド等が挙げられ、これらの1種を単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの中でも、長波長域の光も吸収し、着色剤(B)を添加した系でも硬化可能なアシルホスフィンオキシドが特に好ましい。
【0054】
上記樹脂組成物(I)〜(III)中における着色剤(B)の含有量は、着色剤(B)の種類により変わり、所望の色を得るためには任意であるが、0.01〜20質量%であることが好ましく、特に0.1〜10質量%であることが好ましい。
【0055】
第3の樹脂組成物(III)中における熱硬化性樹脂(A)とエネルギー線硬化性樹脂(C)との質量比(熱硬化性樹脂(A)/エネルギー線硬化性樹脂(C))は、55/45〜97/3であることが好ましく、特に60/40〜95/5であることが好ましく、さらには70/30〜90/10であることが好ましい。
【0056】
保護膜形成層3は、その他の成分として、必要により、造膜性樹脂(バインダーポリマー)、熱可塑性樹脂、架橋剤、フィラー、カップリング剤、可塑剤、酸化防止剤、難燃剤、応力緩和剤、帯電防止剤等を含有してもよい。
【0057】
保護膜形成層3は、バインダーポリマーを適量含有することで、剥離シート1上に造膜することが容易となり、硬化前には適度なタックを示し、硬化後には被膜強度に優れたものとなる。保護膜形成層3が硬化前にタックを示すと、貼付作業を安定して行うことができ、したがって、チップ用保護膜形成用シート4の半導体ウエハに対する位置合わせを容易に行うことができる。また、貼付位置がずれたとしても、簡単に貼り直しを行うこともできる。
【0058】
バインダーポリマーの重量平均分子量は、通常は5万〜200万、好ましくは10万〜150万、特に好ましくは20万〜100万の範囲にある。分子量が低過ぎると、保護膜形成層3の形成が不十分となる場合があり、分子量が高過ぎると、他の成分との相溶性が悪くなり、結果として均一な保護膜形成層3の形成が妨げられるおそれがある。
【0059】
このようなバインダーポリマーとしては、例えば、アクリル系ポリマー、ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂、シリコーン樹脂、ゴム系ポリマー等が用いられ、特に、分子内に重合性二重結合を有しないアクリル系ポリマーが好ましく用いられる。
【0060】
上記アクリル系ポリマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸エステルモノマーと(メタ)アクリル酸誘導体から導かれる構成単位とからなる(メタ)アクリル酸エステル共重合体が挙げられる。
【0061】
保護膜形成層3の厚さは、3〜300μmであることが好ましく、特に10〜60μmであることが好ましい。
【0062】
ここで、本実施形態の保護膜形成層3の第1の剥離シート1と接する面の反対側の面は、使用されるまで第2の剥離シートにより保護されていてもよい。第2の剥離シートとしては、第1の剥離シート1と同様のものが使用できる。この場合、第2の剥離シートの保護膜形成層3に対する剥離力は、第1の剥離シート1の剥離力よりも小さいほうが好ましい。
【0063】
[チップ用保護膜形成用シートの製造方法]
上記チップ用保護膜形成用シート4は、常法によって製造することができる。例えば、保護膜形成層3を構成する材料(樹脂組成物)と、所望によりさらに溶媒とを含有する塗布剤を調製し、剥離シート1の剥離面上に、複数の塗布ヘッドの付いたダイコーター、マイクロダイコーター、カーテンコーター、スプレーコーター、スリットコーター、ナイフコーター等によりパターンコートすることにより、またはスクリーン印刷、グラビア印刷、オフセット印刷、インクジェット印刷等のパターン印刷により塗布して乾燥させ、平面方向に2色以上の色を有する保護膜形成層3を形成する。
【0064】
保護膜形成層3の色は、特に限定されるものではなく、例えば、黒色、黄色、橙色、赤色、紫色、青色、緑色、白色、それらの中間色または混合色等、種々の色相に係る色、それらの彩度及び/又は明度を変化させた色、各種金属色、各種蛍光色などが挙げられる。
【0065】
保護膜形成層3の色分けのパターンとしては、例えば、
図2に示す市松模様のほか、2色以上のストライプ、2色以上の三角模様、六角模様、格子模様、千鳥格子模様、水玉模様、幾何学模様等の各種形状の模様、各種の図または絵、それらの組み合わせなどが挙げられる。また、パターンの大きさも所望の大きさに設定することができる。さらに、色分けは境界をもって明確になされていてもよいし、グラデーションによって色が変化してもよい。
【0066】
上記のように保護膜形成層3を塗布する際に、チップ用保護膜形成用シート4が半導体ウエハに貼付されたときに、当該半導体ウエハから得られる各チップにつき平面方向に2色以上の色を有するように、保護膜形成層3を形成することが好ましい(
図2および
図3参照)。これにより、半導体ウエハのダイシングで得られる各チップ(の裏面)は、特定の色および模様等が付与され、特定の識別性を有することとなる。
【0067】
上記のようにして作製したチップ用保護膜形成用シート4は、所望により、被着体である半導体ウエハの形状に合わせてカットしてもよい(
図2参照)。半導体ウエハに貼付する前に半導体ウエハの形状に合わせてチップ用保護膜形成用シート4をカットすることにより、半導体ウエハに貼付する際に、保護膜形成層3の模様を半導体ウエハ上の個々の回路に合わせ易くなる。ただし、当該カットは、チップ用保護膜形成用シート4を半導体ウエハに貼付した後に行うこともできる。
【0068】
[保護膜付半導体チップの製造方法]
図3は、本発明の一実施形態に係る保護膜付半導体チップの平面図である。また、
図4は、本発明の一実施形態に係る保護膜付半導体チップの側面図である。
【0069】
本実施形態に係る保護膜付半導体チップ5を製造するには、最初に、表面に回路が形成された半導体ウエハの裏面に、上記チップ用保護膜形成用シート4の保護膜形成層3を貼付する。このとき、半導体ウエハのダイシング後に、各半導体チップ6毎に特定の識別性を有する保護膜3’が形成されるように位置決めして、半導体ウエハの裏面に保護膜形成層3を貼付する。
【0070】
その後、以下の工程(1)〜(3)を任意の順で行うことにより、
図3および
図4に示すように、平面方向に2色以上の色を有する保護膜3’を半導体チップ6の裏面に有する保護膜付半導体チップ5を得る。
(1)保護膜形成層と剥離シートとを剥離する工程
(2)保護膜形成層を硬化させる工程
(3)半導体ウエハおよび保護膜形成層をダイシングする工程
【0071】
一例として、上記行程を(1)−(2)−(3)の順で行う場合について具体的に説明する。まず、半導体ウエハの裏面に貼付した上記チップ用保護膜形成用シート4の保護膜形成層3から剥離シート1を剥離し、半導体ウエハと保護膜形成層3との積層体を得る。
【0072】
次いで、保護膜形成層3を硬化させ、半導体ウエハの裏面全面に保護膜3’を形成する。この保護膜形成層3の硬化により、保護膜3’は半導体ウエハの裏面に強固に接着する。
【0073】
保護膜形成層3を硬化させるには、保護膜形成層3を構成する材料に応じて、加熱および/またはエネルギー線照射を行えばよい。エネルギー線としては、通常、紫外線、電子線等が用いられる。
【0074】
その後、半導体ウエハと保護膜3’との積層体を、半導体ウエハ表面に形成された回路毎にダイシングする。本実施形態におけるダイシングは、半導体ウエハおよび保護膜3’をともに切断するように行う。半導体ウエハのダイシングは、ダイシングシートを用いた常法により行われる。このとき、積層体は、半導体ウエハ面をダイシングシートに貼付して固定してもよいし、保護膜面をダイシングシートに貼付して固定してもよい。この結果、
図3および
図4に示すように、半導体チップ6の裏面に保護膜3’を有する保護膜付半導体チップ5が得られる。ダイシングして得られた保護膜付半導体チップ5は、コレット等の汎用手段によりピックアップすればよい。
【0075】
保護膜付半導体チップ5を製造する工程は、上記(1)−(2)−(3)の順以外にも、(1)−(3)−(2)の順、(2)−(1)−(3)の順、(2)−(3)−(1)の順、(3)−(1)−(2)の順、または(3)−(2)−(1)の順であってもよい。
【0076】
以上のようにして得られる保護膜付半導体チップ5は、半導体チップ6の裏面に形成された保護膜3’が平面方向に2色以上の色を有することにより、レーザーマーキングを行わなくても識別性を有し、かつ意匠性にも優れる。また、保護膜3’に着色する色および色分けのパターンを適宜選択することにより、視認性も非常に高いものとなる。
【0077】
以上説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするために記載されたものであって、本発明を限定するために記載されたものではない。したがって、上記実施形態に開示された各要素は、本発明の技術的範囲に属する全ての設計変更や均等物をも含む趣旨である。
【0078】
例えば、上記実施形態では、回路(チップ)の種類にあわせて保護膜形成層3に特定の模様を付して、チップに対して回路の種類の識別性(例えば、1枚の半導体ウエハに1種類の回路が複数形成されているときに、回路aが複数形成された半導体ウエハAから得られた回路aのチップと、回路bが複数形成された半導体ウエハBから得られた回路bのチップとを識別する識別性)を付与する例を挙げて説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0079】
例えば、2色以上のランダムな模様からなる保護膜形成層3を半導体ウエハに貼付し、ダイシングして個々のチップにした場合、得られる個々のチップに異なる模様が付与されるため、それをCCDカメラ等で認識してチップと模様との関連付けを行い、個々のチップに個別番号のような識別性を付与することができる。すなわち、1枚の半導体ウエハに1種類の回路が複数形成されているときに、回路aが複数形成された半導体ウエハAから得られた同じ回路aのチップでも、それらチップの一つ一つに個別の識別性を付与することができる。
【実施例】
【0080】
以下、実施例等により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例等に限定されるものではない。
【0081】
〔調製例1〕(保護膜形成層用の塗布液1)
液状ビスフェノールA型エポキシ樹脂(エポキシ当量:180〜200g/eq)30質量部と、固形ビスフェノールA型エポキシ樹脂(エポキシ当量:800〜900g/eq)40質量部と、o−クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(エポキシ当量:210〜230g/eq)10質量部とを混合し、これを熱硬化性樹脂(A)とした。
【0082】
また、アクリル酸ブチル55質量部と、メタクリル酸メチル15質量部と、メタクリル酸グリシジル20質量部と、アクリル酸2−ヒドロキシエチル15質量部とを共重合して、重量平均分子量90万のアクリル系共重合体を得た。このアクリル系共重合体を、バインダーポリマーとした。
【0083】
上記熱硬化性樹脂(A)80質量部と、熱活性型潜在性エポキシ樹脂硬化剤(イミダゾール化合物)0.6質量部と、着色剤(B)(青色顔料;コバルトブルー)1.3質量部と、上記バインダーポリマー15質量部とを混合し、これを保護膜形成層用の塗布液1とした。
【0084】
〔調製例2〕(保護膜形成層用の塗布液2)
着色剤(B)として、黄色顔料(カドミウムイエロー)1.5質量部を使用した以外は、調製例1における保護膜形成層用の塗布液1と同様にして、保護膜形成層用の塗布液2を調製した。
【0085】
〔調製例3〕(保護膜形成層用の塗布液3)
アクリル酸ブチル65質量部と、メタクリル酸メチル10質量部と、アクリル酸メチル10質量部と、アクリル酸2−ヒドロキシエチル15質量部とを共重合して、重量平均分子量80万のアクリル系共重合体を得た。このアクリル系共重合体を、バインダーポリマーとした。
【0086】
第1のエネルギー線硬化性樹脂(C)(トリメチロールプロパントリアクリレート)50質量部と、第2のエネルギー線硬化性樹脂(C)(α−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン)1.5質量部と、着色剤(B)(赤色顔料;カドミウムレッド)1.0質量部と、上記バインダーポリマー100質量部と、架橋剤(有機多価イソシアネート系架橋剤)0.5質量部とを混合し、これを保護膜形成層用の塗布液3とした。
【0087】
〔調製例4〕(保護膜形成層用の塗布液4)
着色剤(B)として、緑色顔料(クロムグリーン)1.8質量部を使用した以外は、調製例3における保護膜形成層用の塗布液3と同様にして、保護膜形成層用の塗布液4を調製した。
【0088】
〔実施例1〕
剥離シートとしての片面を剥離処理したポリエチレンテレフタレートフィルム(厚さ:38μm,表面張力:30mN/m)の剥離処理面(剥離面)に、保護膜形成層用の塗布液1および保護膜形成層用の塗布液2を、それぞれ乾燥後の厚さが30μmとなり、そして平面視4mm×4mmの市松模様になるように、スクリーン印刷機を用いて塗布した後、乾燥させて、保護膜形成層を形成し、チップ用保護膜形成用シートを得た。
【0089】
得られたチップ用保護膜形成用シートの保護膜形成層を、表面に複数の回路aが形成され、裏面が#2000研磨された直径200mm、厚さ200μmの半導体ウエハAの研磨面に、保護膜形成層の市松模様の交差点が半導体ウエハ表面の個々の回路a(8mm×8mm角)の中心に位置するように、シート貼付装置を用いて貼付した。そして、チップ用保護膜形成用シートを半導体ウエハAの外周に沿ってカットし、半導体ウエハAからはみ出た部分を除去した。
【0090】
次に、半導体ウエハAに貼付したチップ用保護膜形成用シートから剥離シートを剥がし、そして送風定温恒温器を用いて160℃で1時間加熱し、保護膜形成層を硬化させて保護膜付ウエハを得た。
【0091】
その後、ダイシングテープマウンターを用いて、保護膜付ウエハの保護膜上にダイシングシートを貼付し、次いでダイシング装置を用いて、保護膜とともに半導体ウエハを個々の回路aにあわせて個々のチップ(8mm×8mm角)にダイシングした。個片化されたチップをピックアップし、チップの裏面に青色と黄色の市松模様が形成された保護膜付半導体チップを得た。
【0092】
〔実施例2〕
剥離シートとしての片面を剥離処理したポリエチレンテレフタレートフィルム(厚さ:38μm,表面張力:30mN/m)の剥離処理面(剥離面)に、保護膜形成層用の塗布液3および保護膜形成層用の塗布液4を、それぞれ乾燥後の厚さが30μmとなり、そして平面視幅4mm/4mmのストライプ模様になるように、マイクロダイコーターを用いて塗布した後、乾燥させて、保護膜形成層を形成し、チップ用保護膜形成用シートを得た。
【0093】
得られたチップ用保護膜形成用シートの保護膜形成層を、表面に複数の回路bが形成され、裏面が#2000研磨された直径200mm、厚さ200μmの半導体ウエハBの研磨面に、保護膜形成層のストライプ模様の境界線が半導体ウエハ表面の個々の回路b(8mm×8mm角)の中心を通るように、シート貼付装置を用いて貼付した。そして、チップ用保護膜形成用シートを半導体ウエハBの外周に沿ってカットし、半導体ウエハBからはみ出た部分を除去した。
【0094】
次に、半導体ウエハBに貼付したチップ用保護膜形成用シートから剥離シートを剥がし、そして紫外線照射装置を用いて窒素雰囲気下、該シート側より紫外線を照射し(照射条件:照度310mW/cm
2,光量300mJ/cm
2)、保護膜形成層を硬化させて保護膜付ウエハを得た。
【0095】
その後、ダイシングテープマウンターを用いて、保護膜付ウエハの保護膜上にダイシングシートを貼付し、次いでダイシング装置を用いて、保護膜とともに半導体ウエハを個々の回路bにあわせて個々のチップ(8mm×8mm角)にダイシングした。個片化されたチップをピックアップし、チップの裏面に赤色と緑色のストライプ模様が形成された保護膜付半導体チップを得た。
【0096】
〔試験例〕
実施例1,2で得られた保護膜付半導体チップを、それぞれフェースダウン方式で基板上に実装した。各保護膜付半導体チップは、レーザーによるマーキングがなく、同形であるにもかかわらず、それらの模様の違いによって、容易に識別することができ、また、基板上の適切な位置に適切な半導体チップが実装されていることが容易に確認できた。
【0097】
さらに、実施例1,2で得られた保護膜付半導体チップは、半導体チップを保護するために樹脂封止を施す必要はなく、模様が現れるため、外観が美しく、意匠性にも優れるものであった。