【実施例】
【0015】
以下、実施例を示して本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
なお、実施例では
図3に示す装置を用いた。11は排風機、12は送風機、13はVOC凝縮液冷却器、14は水供給用電磁弁、15はVOC凝縮液濃度測定計、16はVOC凝縮液循環ポンプ、17は不凍液流量調節弁、18はガス−ガス熱交換器、19は気液接触型ガス冷却凝縮器、20はVOC凝縮液排出用電磁弁、21は温度記録計、22は液面調節計である。
また、冷却後のガス温度の数値から、冷媒である不凍液の流量を調整して冷却温度を制御した。また、VOC凝縮液循環経路にVOC濃度測定用の濃度計を設け、その数値から添加する水の量を決め、濃度を制御した。水を添加する位置は、NMP凝縮液の冷却後の温度が、水の凍結温度まで下がっても、水の供給ラインが凍結しないように、ガス−ガス熱交換器の被処理ガス出口の直近とし、ここにノズルを設けた。
【0016】
実施例1
リチウムイオン2次電池の製造工程では、電極用バインダーを溶解する溶剤としてNMP(分子量99)が使用されている。NMPは、バインダーを溶解したあと、乾燥工程で蒸発し、乾燥用空気と一緒に排出される。排ガス中のNMP濃度は、安全を考慮して爆発限界濃度の下限値(1.3vol%)の1/5〜1/10で管理されるため、排ガス中のNMP濃度は1000ppm.vol前後であることが多い。また、NMPは沸点が高く(202℃)、高温でないと乾燥できないため、乾燥用の空気は80℃以上まで加熱して用いるのが一般的である。
本実施例で用いたNMPを含む排ガスの流量、組成等は下記(A)のとおりである。
(A)排ガス流量:100Nm
3/min
排ガス温度:90℃
NMPガス濃度:1000ppm.vol
排ガス湿度(水分率):4300ppm.vol
【0017】
上記排ガスを、ガス−ガス熱交換器18において冷却用ガス(浄化ガス)と熱交換させた結果、排ガスの流量、組成等は下記(B)のようになった。即ち、ガス温度を90℃から37.4℃まで下げることができた。熱交換器としては、装置の寸法が最適であり且つ熱回収によるメリットが十分にある熱回収率60%のものを選択した。伝熱面積を増やせば熱回収率を80%程度まで上げられるが、装置が大きくなり初期投資が大きくなる。
(B)ガス−ガス熱交換後の排ガス(熱回収率60%想定)
排ガス流量:100Nm
3/min
排ガス温度:37.4℃
NMPガス濃度:1000ppm.vol
排ガス湿度(水分率):4300ppm.vol
【0018】
上記(B)の排ガスを、冷却凝縮器19、凝縮液冷却器13、VOC凝縮液の濃度調整用水供給機構(水供給用電磁弁14、凝縮液濃度測定計15など)等を稼動させて処理した結果、排出された浄化ガスの流量、組成等は下記(C)のようになった。
(C)冷却凝縮器出口から排出される浄化ガス
浄化ガス流量:99.9Nm
3/min
浄化ガス温度:4℃
NMPガス濃度:20ppm.vol
浄化ガス湿度(水分率):4300ppm.vol
濃度100%のNMP水溶液の4℃での蒸気圧は、8.5Paであり、大気圧101325Paから換算すると、4℃冷却後のNMPのガス濃度は83.9ppm.volとなる。しかし、NMP凝縮液に水を適量添加し、NMP80wt%(42.1mol%)、水20wt%(57.9mol%)となるように凝縮液を濃度調整し、この凝縮液と排ガスとを十分に気液接触させ平衡状態にすることにより、NMP42.1mol%水溶液のときの平衡状態にまでNMPの蒸気圧を下げることができる。
その結果、理想系での計算では、8.5Pa×42.1mol%÷101325Pa×10
6≒35ppm.vol程度までNMPガス濃度を減少させることができる。NMPガス濃度の実測値は20ppm.volであり、理想系での計算値よりも低くなっているが、これは、水とNMPが混合したときの物性により、理想系とは異なる状態となったためである。
また、回収効率は、濃度100%のNMP凝縮液による平衡関係では91.6%となるが、濃度80wt%のNMP凝縮液の場合、96.5%となり、5%程度上昇させることができる。
また、浄化ガスを乾燥用空気として再利用する
ことから、回収しきれないNMPは乾燥プロセスに戻されるので、NMPの回収率は実質100%となる。
更に、4℃の水の飽和蒸気圧は、812.5Paであり、大気圧から換算すると8019ppm.volとなる。しかし、NMPと同様に、水の蒸気圧は、水57.9mol%のときの蒸気圧まで下げることができるため、812.5Pa×57.9mol%÷101325Pa×10
6≒4643ppm.volまでガス中の水分率を下げることができる。4643ppm.volという水分率は、ガス温度が−3.5℃のときの飽和水蒸気圧と同じである。したがって、4℃までの冷却で、−3.5℃相当の乾燥空気を作ることが可能となる。実測値では4300ppm.volとなっているが、これは、水とNMPが混合したときの物性により、理想系とは異なる状態となったためである。
本実施例では、ガス−ガス熱交換器18によりプレ冷却を実施したため、4℃まで冷やすエネルギーを大幅に減らすことができた。
また、NMPガス濃度は20ppm.volと低く、環境基準を十分に満たしているので、浄化ガスを空気中に放出しても問題はない。
【0019】
上記(B)の排ガスを処理して得られたNMP凝縮液の回収量、組成等は下記(D)のとおりであった。
(D)NMP凝縮液
NMP回収量:25.6kg/hr
水添加量:6.4kg/hr
NMP濃度:80wt%
凝縮液温度:0℃
NMP凝縮液は、80wt%よりも低い濃度で管理することが可能であるが、回収したNMPを精製して再利用する際、水を分離するためのコストを考慮すると80wt%程度の濃い状態が最適である。また、NMPは水を15wt%以上に調整すると引火点がなくなるという事実があり、装置としての安全性が高まるほか、非危険物施設として扱うことが可能となる。NMP凝縮液は、0℃まで冷却し、並流での気液接触でも十分にガス温度が下げられるようにした。0℃まで冷却してもNMP水溶液であるため水が凍結することはなく、液体として常時循環させることができた。
【0020】
前記冷却凝縮器出口で4℃であった(C)の浄化ガスを、ガス−ガス熱交換器18において冷却用ガスとして用いたが、浄化ガスからみると排ガスによって加熱されたことになり、熱交換後の浄化ガスの風量、組成等は下記(E)のようになった。
(E)ガス−ガス熱交換後の浄化ガス
浄化ガス風量:99.9Nm
3/min
浄化ガス温度:63.1℃
NMPガス濃度:20ppm.vol
浄化ガス湿度:4300ppm.vol
加熱された浄化ガスの温度は約63℃であり湿度も低いため、他の製造工程等の乾燥用空気として再利用することができる。従来の方法では、乾燥用空気を大気から取り入れることが多く、常温(25℃程度)から加熱して90℃まで上げる必要がある。例えば100Nm
3/minのガスを、25℃から90℃までスチームにより加温する場合について、簡易的な条件で試算すると次のようになる。
スチームの蒸発潜熱を500kcal/kg、乾燥用空気1Nm
3の重量を1.3kg、乾燥用空気の顕熱を0.24kcal/kg・℃、スチームを作るボイラーの効率を0.6、スチームを作る燃油の燃焼熱を9700kcal/kgとすると、加温に必要な熱量は、次式のようになる。
100Nm
3/min×1.3kg/Nm
3×60min/hr×(90℃−25℃)×0.24kcal/kg・℃=121680kcal/hr
そして、この熱量を作るのに必要な燃油は、次式のようになる。
121680kcal/hr÷9700kcal/kg÷0.6≒20.9kg/hr
これに対し、本実施例のように再利用により熱回収すると、63℃から90℃まで上げる熱量だけでよく、必要な熱量は、次式のようになる。
100Nm
3/min×1.3kg/Nm
3×60min/hr×(90℃−63℃)×0.24kcal/kg・℃=50544kcal/hr
そして、この熱量を作るのに必要な燃油は、次式のようになり、前述した25℃の空気を加熱する場合に比べて、およそ6割の燃油を節約することができる。
50544kcal/hr÷9700kcal/kg÷0.6≒8.68kg/hr
なお、本実施例では熱回収率を60%としているが、熱交換器の設計次第では熱回収率70%、80%も可能であり、熱回収による用益費の削減と初期設備投資費用を考慮して、熱回収率を決定すればよい。
【0021】
実施例2
液晶の製造工程では剥離液の主成分としてDMSOがよく用いられる。DMSOは凝固点が高く(18℃)、単一成分では固体となるため扱いにくい。しかし、水を添加することにより凝固点は限りなく下がり、液体として取り扱うことが出来るほか、排ガスを冷却するための冷媒としても利用可能となる。
本実施例で用いたDMSOを含む排ガスの流量、組成等は下記(A)のとおりである。
(A)排ガス流量:50Nm
3/min
排ガス温度:100℃
DMSOガス濃度:1000ppm.vol
排ガス湿度(水分率):5266ppm.vol
【0022】
上記排ガスを、ガス−ガス熱交換器18において冷却用ガス(浄化ガス)と熱交換させた結果、排ガスの流量、組成等は下記(B)のようになった。即ち、ガス温度を100℃から35.8℃まで下げることができた。上記条件でのDMSOは35.8℃では結露せず、仮に結露したとしても融点が18℃であるため、凝固する懸念はない。本実施例は排ガス温度が高く、その熱を出来るだけ有効利用するため、熱回収率を70%に設定して熱交換器を選定した。
(B)ガス−ガス熱交換後の排ガス(熱回収率70%想定)
排ガス流量:50Nm
3/min
排ガス温度:35.8℃
DMSOガス濃度:1000ppm.vol
排ガス湿度(水分率):5266ppm.vol
【0023】
上記(B)の排ガスを、実施例1と同様にして処理した結果、排出された浄化ガスの流量、組成等は下記(C)のようになった。
(C)冷却凝縮器出口から排出される浄化ガス
浄化ガス流量:49.9Nm
3/min
浄化ガス温度:10℃
DMSOガス濃度:43.9ppm.vol
浄化ガスの湿度(水分率):5266ppm.vol
【0024】
上記(B)の排ガスを処理して得られたDMSO凝縮液の回収量、組成等は下記(D)のとおりであった。
(D)DMSO凝縮液
DMSO回収量:10.2kg/hr
水添加量:4.39kg/hr
DMSO濃度:70wt%
凝縮液温度:5℃
本実施例では、凝縮液中のDMSO濃度を70wt%になるように制御した。これにより、DMSOの蒸気圧を下げる効果及び引火点を無くす効果が得られ、更には凝固点降下により、5℃以下でもDMSOが凝固することなく、常時液体の状態で取り扱うことが可能となった。
【0025】
前記冷却凝縮器出口で4℃であった(C)の浄化ガスを、ガス−ガス熱交換器18において冷却用ガスとして用いたが、浄化ガスからみると排ガスによって加熱されたことになり、熱交換後の浄化ガスの風量、組成等は下記(E)のようになった。
(E)ガス−ガス熱交換後の浄化ガス
浄化ガス流量:49.9Nm
3/min
浄化ガス温度:74.6℃
DMSOガス濃度:43.9ppm.vol
浄化ガス湿度(水分率):5266ppm.vol
本実施例では、熱回収率を70%に設定したため、乾燥用空気として再利用する浄化ガスの温度を74.6℃まで上げることができた。その結果、実施例1と同様に、冷却凝縮に必要なエネルギーを加味しても大幅なエネルギー節減を達成でき、且つDMSOの凝固によるトラブルを回避し、安定して排ガスからDMSOを回収することができた。
【0026】
以上のように、本発明では、水を添加することにより、VOCの分圧(蒸気圧)を下げる効果、水の分圧(蒸気圧)を下げる効果、引火点を無くし、非危険物にすることによる安全性向上の効果、凝固点降下による低温下での液体としての取り扱いが可能となる効果が得られ、簡単な方法で効率よくガス化したVOCを液体として回収することが出来る。また、冷却エネルギーは、被処理ガスを冷却することで、エネルギー節減が可能であり、更には排出される熱エネルギーを回収することで、プロセスに戻す乾燥用空気を加熱するためのエネルギーを削減することができ、プロセス全体として大幅なエネルギー削減効果が得られる。