特許第5779310号(P5779310)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5779310揮発性有機化合物の回収方法及び回収装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5779310
(24)【登録日】2015年7月17日
(45)【発行日】2015年9月16日
(54)【発明の名称】揮発性有機化合物の回収方法及び回収装置
(51)【国際特許分類】
   B01D 53/44 20060101AFI20150827BHJP
   B01D 53/34 20060101ALI20150827BHJP
【FI】
   B01D53/44 130
   B01D53/34ZAB
【請求項の数】6
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2009-46378(P2009-46378)
(22)【出願日】2009年2月27日
(65)【公開番号】特開2010-201282(P2010-201282A)
(43)【公開日】2010年9月16日
【審査請求日】2012年2月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】593053335
【氏名又は名称】日本リファイン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100116481
【弁理士】
【氏名又は名称】岡本 利郎
(74)【代理人】
【識別番号】100094466
【弁理士】
【氏名又は名称】友松 英爾
(74)【代理人】
【識別番号】100159972
【弁理士】
【氏名又は名称】油木 肇
(72)【発明者】
【氏名】竹山 友潔
(72)【発明者】
【氏名】小田 昭昌
(72)【発明者】
【氏名】大野 順也
(72)【発明者】
【氏名】池田 剛志
【審査官】 岡谷 祐哉
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−033940(JP,A)
【文献】 特開2008−114203(JP,A)
【文献】 特開平07−328380(JP,A)
【文献】 特表平2−502614(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 53/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
乾燥工程で排出される揮発性有機化合物(以下、VOCという)を含む被処理ガスの冷却工程と、冷却した被処理ガスからのVOC凝縮液の生成工程を少なくとも有し、生成したVOC凝縮液を被処理ガスの冷却用冷媒として用いるための循環経路を設け、該循環経路中にVOC凝縮液の濃度調整用水供給機構を設けると共に、該濃度調整用水供給機構により濃度調整を行う際の水の添加量を制御して、浄化ガスの水分率を乾燥用空気に適した水分率に制御し、浄化ガスを前記被処理ガスの冷却工程における冷却用ガスとして用いた後、更に乾燥用空気として再利用できるようにしたことを特徴とするVOCの回収方法。
【請求項2】
乾燥工程で排出されるVOCを含む被処理ガスを、ガス−ガス熱交換器において冷却用ガスと熱交換させ、該熱交換器を通過した被処理ガスを、液−ガス直接接触型の冷却凝縮器においてVOC凝縮液と接触させると共に、濃度調整用水供給機構により濃度調整を行ったVOC凝縮液を、液−液熱交換器においてVOC凝縮液とは異なる冷却媒体と熱交換させて冷却したのち、前記冷却凝縮器に戻して循環させ、前記冷却凝縮器で発生した浄化ガスを前記冷却用ガスとして用いた後、更に乾燥用空気として再利用できるようにした請求項1記載のVOCの回収方法。
【請求項3】
乾燥工程で排出されるVOCを含む被処理ガスを、ガス−ガス熱交換器において冷却用ガスと熱交換させ、該熱交換器を通過した被処理ガスを、液−ガス熱交換器からなる冷却凝縮器においてVOC凝縮液とは異なる冷却媒体と熱交換させ、生成したVOC凝縮液を回収タンクに移し、次いで、濃度調整用水供給機構により濃度調整を行った後、ミスト−凝縮液接触装置において、前記冷却凝縮器で発生したVOC含有ミストと接触させ、発生したVOC凝縮液は前記回収タンクに戻して循環使用し、発生した浄化ガスは前記冷却用ガスとして用いた後、更に乾燥用空気として再利用できるようにした請求項1記載のVOCの回収方法。
【請求項4】
少なくとも、乾燥工程で排出されるVOCを含む被処理ガスの冷却手段、冷却した被処理ガスからのVOC凝縮液生成手段、VOC凝縮液を被処理ガスの冷却用冷媒として用いるための循環経路、該循環経路中に設けられたVOC凝縮液の濃度調整用水供給機構、及び浄化ガスを前記被処理ガスの冷却手段における冷却用ガスとして用いた後、更に乾燥用空気として再利用する手段を備えたことを特徴とするVOCの回収装置。
【請求項5】
被処理ガスの冷却手段が、被処理ガスと冷却用ガスとのガス−ガス熱交換器であり、VOC凝縮液生成手段が、該熱交換器を通過した被処理ガスとVOC凝縮液との液−ガス直接接触型冷却凝縮器であり、更に濃度調整されたVOC凝縮液とVOC凝縮液とは異なる冷却媒体との液−液熱交換器を備え、前記冷却凝縮器で発生した浄化ガスを、前記冷却用ガスとして用いた後、更に乾燥用空気として再利用する構造とした請求項記載のVOCの回収装置。
【請求項6】
被処理ガスの冷却手段が、被処理ガスと冷却用ガスとのガス−ガス熱交換器であり、VOC凝縮液生成手段が、該熱交換器を通過した被処理ガスとVOC凝縮液とは異なる冷却媒体との液−ガス熱交換器(冷却凝縮器)であり、更にVOC凝縮液回収タンク、及び、前記冷却凝縮器で発生したVOC含有ミストとVOC凝縮液との接触装置を備え、該接触装置で発生したVOC凝縮液は循環経路により前記回収タンクに戻し、発生した浄化ガスは前記冷却用ガスとして用いた後、更に乾燥用空気として再利用する構造とした請求項記載のVOCの回収装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、揮発性有機化合物の回収方法及び回収装置に関する。
【背景技術】
【0002】
揮発性有機化合物(以下、VOCと略称することもある)を含む排ガスからのVOCの回収方法としては、(1)省エネルギータイプのガス吸収法(特許文献1)、(2)吸着法(特許文献2)、(3)深冷法(特許文献3)がある。
(1)は、排ガスの熱エネルギーを利用する方法であり、VOCの回収という面では省エネルギープロセスであるが、浄化ガスは湿度が非常に高く、乾燥用空気として再利用するためには、湿度を低減する必要があり、調湿装置の購入費用や調湿のためのランニングコストがかかってしまう。特に水を凝縮又は吸着して回収する場合には、水の凝縮熱が大きいことから必要エネルギーが大きくなり、その結果、ランニングコストが高くなる。
(2)は、活性炭やゼオライト等の吸着剤を利用する技術である。しかし、吸着後のVOCを脱着するためのエネルギーや、脱着して濃縮した後のVOCを冷却して凝縮させるためのエネルギーが必要であり、場合によっては安全のために脱着ガスとして窒素ガスを用いる必要もあるため、ランニングコストが高くなる。また、高温の脱着ガスを必要とする場合には、高温に曝されたVOCが劣化することもある。更に活性炭を使う場合には、吸着熱による発熱、発火の危険性もある。
(3)は、本発明と類似しているが、VOC凝集液に水を添加して濃度調整を行うことにより浄化ガスのVOC濃度を低くするという機能は備えていない。したがって回収効率を上げるためには、吸着装置を利用するか、又は冷却温度を非常に低く設定する必要があり、液体窒素等の特殊な冷媒が必要となるケースが多いし、凝縮率を上げるためにガスを加圧圧縮するといった特殊な方法を採用する場合には設備投資費用が高くなる。また、冷却温度は0℃以下である場合が多く、プロセス配管の凍結等のトラブルも懸念されるため、積極的に水分を除去するプロセスが必要となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−230265号公報
【特許文献2】特開2005−138038号公報
【特許文献3】特開2007−319730号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、乾燥工程で排出されるVOCを含む被処理ガスから、従来よりも高い冷却温度で効率よくVOCを凝縮させることができ、高濃度のVOCを高収率で回収することができる方法及び装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題は、次の1)〜)の発明によって解決される。
1) 乾燥工程で排出される揮発性有機化合物(以下、VOCという)を含む被処理ガスの冷却工程と、冷却した被処理ガスからのVOC凝縮液の生成工程を少なくとも有し、生成したVOC凝縮液を被処理ガスの冷却用冷媒として用いるための循環経路を設け、該循環経路中にVOC凝縮液の濃度調整用水供給機構を設けると共に、該濃度調整用水供給機構により濃度調整を行う際の水の添加量を制御して、浄化ガスの水分率を乾燥用空気に適した水分率に制御し、浄化ガスを前記被処理ガスの冷却工程における冷却用ガスとして用いた後、更に乾燥用空気として再利用できるようにしたことを特徴とするVOCの回収方法。
2) 乾燥工程で排出されるVOCを含む被処理ガスを、ガス−ガス熱交換器において冷却用ガスと熱交換させ、該熱交換器を通過した被処理ガスを、液−ガス直接接触型の冷却凝縮器においてVOC凝縮液と接触させると共に、濃度調整用水供給機構により濃度調整を行ったVOC凝縮液を、液−液熱交換器においてVOC凝縮液とは異なる冷却媒体と熱交換させて冷却したのち、前記冷却凝縮器に戻して循環させ、前記冷却凝縮器で発生した浄化ガスを前記冷却用ガスとして用いた後、更に乾燥用空気として再利用できるようにした1)記載のVOCの回収方法。
3) 乾燥工程で排出されるVOCを含む被処理ガスを、ガス−ガス熱交換器において冷却用ガスと熱交換させ、該熱交換器を通過した被処理ガスを、液−ガス熱交換器からなる冷却凝縮器においてVOC凝縮液とは異なる冷却媒体と熱交換させ、生成したVOC凝縮液を回収タンクに移し、次いで、濃度調整用水供給機構により濃度調整を行った後、ミスト−凝縮液接触装置において、前記冷却凝縮器で発生したVOC含有ミストと接触させ、発生したVOC凝縮液は前記回収タンクに戻して循環使用し、発生した浄化ガスは前記冷却用ガスとして用いた後、更に乾燥用空気として再利用できるようにした1)記載のVOCの回収方法。
4) 少なくとも、乾燥工程で排出されるVOCを含む被処理ガスの冷却手段、冷却した被処理ガスからのVOC凝縮液生成手段、VOC凝縮液を被処理ガスの冷却用冷媒として用いるための循環経路、該循環経路中に設けられたVOC凝縮液の濃度調整用水供給機構、及び浄化ガスを前記被処理ガスの冷却手段における冷却用ガスとして用いた後、更に乾燥用空気として再利用する手段を備えたことを特徴とするVOCの回収装置。
5) 被処理ガスの冷却手段が、被処理ガスと冷却用ガスとのガス−ガス熱交換器であり、VOC凝縮液生成手段が、該熱交換器を通過した被処理ガスとVOC凝縮液との液−ガス直接接触型冷却凝縮器であり、更に濃度調整されたVOC凝縮液とVOC凝縮液とは異なる冷却媒体との液−液熱交換器を備え、前記冷却凝縮器で発生した浄化ガスを、前記冷却用ガスとして用いた後、更に乾燥用空気として再利用する構造とした4)記載のVOCの回収装置。
6) 被処理ガスの冷却手段が、被処理ガスと冷却用ガスとのガス−ガス熱交換器であり、VOC凝縮液生成手段が、該熱交換器を通過した被処理ガスとVOC凝縮液とは異なる冷却媒体との液−ガス熱交換器(冷却凝縮器)であり、更にVOC凝縮液回収タンク、及び、前記冷却凝縮器で発生したVOC含有ミストとVOC凝縮液との接触装置を備え、該接触装置で発生したVOC凝縮液は循環経路により前記回収タンクに戻し、発生した浄化ガスは前記冷却用ガスとして用いた後、更に乾燥用空気として再利用する構造とした4)記載のVOCの回収装置。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、乾燥工程で排出されるVOCを含む被処理ガスから、従来よりも高い冷却温度で効率よくVOCを凝縮させることができ、高濃度のVOCを高収率で回収することが可能な方法及び装置を提供できる。
また、本発明は、後述するように、VOC凝縮液及び浄化ガスのVOC濃度や水分率の制御が容易であり、配管の凍結を防止しつつ冷却温度を0℃より低く設定することもでき、VOC凝縮液の劣化を抑制でき、引火点を無くして安全性を高めることもできるというような多面的な効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本発明のVOC回収方法及び装置の一例を示す図。
図2】本発明のVOC回収方法及び装置の他の例を示す図。
図3】実施例で用いたVOC回収装置の構成を示す図。
図4】NMP−水の固液平衡図。
図5】水−DMSOの固液平衡図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、上記本発明について詳しく説明する。
本発明は、揮発性有機化合物(VOC)を含む被処理ガスを冷却凝縮させてVOCを回収する際に、VOC凝縮液に水を添加することによりVOCの分圧を下げること、及び、生成させたVOC凝縮液を、その生成工程において冷媒として循環使用することを主な特徴とする。ここで、揮発性有機化合物とは、大気汚染防止法で規定するものなどを指し、例えば、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)、ジメチルアセトアミド(DMAc)、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ブチルジグリコール(BDG)が挙げられる。また、被処理ガスとしては、各種工業製品の製造工程で排出される排ガスが挙げられる。
【0009】
被処理ガスの冷却工程で用いる装置は特に限定されず、公知の熱交換器などを用いることができる。プレート式、多管式の熱交換器、蓄熱体を利用した蓄冷式熱交換器、ガスとガスの間に熱媒を循環させる間接式の熱交換器等があるが、冷却用ガスとして浄化ガスを用いるとエネルギー効率の点で有利であるため、ガス−ガス熱交換器が好ましい。
VOC凝縮液の生成工程で用いる冷却凝縮器としては、液−ガス直接接触型の冷却凝縮器や液−ガス熱交換器(プレートフィン式、エロフィン式、プレート式、多管式等)等を用いることができる。
上記熱交換器と冷却凝縮器は、設置場所、初期投資、熱回収率等を考慮して最適な組み合わせを選択すればよい。
濃度調整用水供給機構は、濃度計、水供給部、自動制御部等を備えていればよく、例えば、オンラインの濃度計の数値に基づいて間欠的に水を補給する自動制御機構が簡便で好ましい。濃度調整用水供給機構によるVOC凝縮液の水分率の調整は、大気汚染防止法などにより要求される浄化ガスのVOC濃度に合わせて行う。水の添加量は少量であり、純水等の特別な水を用いる必要はない。
実際の回収装置の稼動に際しては、起動から徐々に、冷媒として用いるVOC凝縮液の温度を下げ、冷却凝縮器中の温度を下げていくことことにより、起動時に空気中に含まれていた水分を凝縮させ、所定の冷却温度まで達した後、定常運転とするのが望ましい。
また、ガスの管理濃度は、爆発限界の下限値の1/4以下とする。ただし、実際の管理では、更に安全性を考慮して、一般に前記下限値の1/5〜1/10とする。
【0010】
次に、図を参照しつつ、本発明の実施の態様例について説明する。
図1に示す例では、VOCを含む高温(通常、40〜120℃程度)の排ガスはガス−ガス熱交換器1の高温側入口に送られ、VOC冷却凝縮器2から排出される浄化ガスと熱交換して温度が下がる(通常、20〜60℃程度)。
熱交換器1を通過した排ガスは、液−ガス直接接触型のVOC冷却凝縮器2に送られ、液−液熱交換器3で冷却されたVOC凝縮液(通常、5℃以下程度)により、所定の温度まで冷却されてVOC成分が凝縮し、冷却凝縮器2の下部に溜まる。この溜まったVOC凝縮液は、濃度調整用水供給機構により水分率を調整され、次いで、VOC凝縮液と冷却媒体との液−液熱交換器3に送られて冷却された後、冷却凝縮器2に戻されて循環する。冷却媒体は一般に不凍液を用いるが、冷却温度によっては、冷却水などの他の材料を用いてもよい。また、冷却凝縮器2に溜めるVOC凝縮液は、十分に循環できる量とする必要がある。
凝縮により大部分のVOCが除去された浄化ガス(通常、10℃以下程度)は、冷却用ガスとして冷却凝縮器2から熱交換器1に送られる。
なお、回収対象となるVOCは多種多様であり、VOCを含む排ガスの条件も多種多様であるから、上記説明中の温度は一例であって、これに限定されるものではない。
【0011】
図2に示す他の例では、ガス−ガス熱交換器1及び浄化ガスの動作については、図1の場合と同様である。
熱交換器1を通過した排ガスは、液−ガス熱交換器であるVOC冷却凝縮器4において冷却媒体により冷却凝縮され、凝縮液はVOC凝縮液回収タンクに送られる。
該回収タンクに溜まったVOC凝縮液は、濃度調整用水供給機構により水分率を調整されて、ミスト−凝縮液接触装置5に送られる。
一方、冷却凝縮器4において急冷のために発生するVOCミストは、ミストセパレータを兼ねるミスト−凝縮液接触装置5に送られ、水分率を調整されたVOC凝縮液と接触して凝縮し、VOC凝縮液回収タンクに送られる。このとき、ミスト−凝縮液接触に用いたVOC凝縮液も一緒に該回収タンクに送られるので、該回収タンクのVOC凝縮液は循環することになる。また凝縮により大部分のVOCが除去された排ガスは、浄化ガスとして冷却凝縮器4から熱交換器1に送られる。
なお、図1図2では、熱交換器1の冷却用空気として浄化ガスを用いる場合を示したが、代りに普通の空気を用いてもよい。その場合には、浄化ガスは冷却凝縮器2又はミスト−凝縮液接触装置5から空中に放出される。また、VOC凝縮液が一定量以上溜まった場合には、液面調節計や排出バルブ等を備えた回収機構(図示せず)により回収する。
【0012】
本発明は従来技術に比べて次のような多くの利点を有する。
(1)VOC凝縮液に水を添加することにより、VOCを含む被処理ガスから常圧で効率よくVOCを回収するのに必要な冷却温度よりも高い温度での回収が可能となり、冷却エネルギーが少なくて済む。
(2)VOC凝縮液生成工程等において、該凝縮液を冷媒として循環使用することにより、液体窒素等の冷媒を用いることなく、従来よりも高い温度で効率よく冷却凝縮できる。
(3)本発明のように、VOC凝縮液を生成工程等において冷媒として循環使用すると、気液平衡状態の形成、装置内部の凍結防止及び飛沫同伴防止、ミスト捕集効率向上などの点で効果的である。即ち、VOC濃度が一定に制御されたVOC凝縮液と被処理ガス又はVOCミストを十分に接触させることにより、被処理ガス又はVOCミストの組成は平衡状態となり、被処理ガス又はVOCミスト中のVOC濃度及び湿度は、濃度調整したVOC凝縮液の組成により制御することができる。
(4)VOC凝縮液に水を混合することにより凝固点降下が起こるため、VOC凝縮液の冷却温度を0℃よりも低く設定することもできる。例えば図4に示すように、水−NMP系の場合、NMP約50wt%以上では、−20℃位まで冷却しても液体であり、図5に示すように、水−DMSO系の場合、DMSO約45〜75wt%の範囲では、−25℃位まで冷却しても液体である。また、この凝固点降下を利用すると、凝固点が高いVOCでも、水溶性であれば、VOC凝縮液を液体のまま取り扱うことができ、取り扱いが容易になる。更に、冷却温度を0℃よりも低く設定した場合でも、プロセス配管の凍結等のトラブルを防止できる。
【0013】
(5)VOC凝縮液の水分率を自動制御により調整して一定以上に保つことにより、引火点を無くし、安全性を高めて非危険物とすることができる。また、回収装置は非危険物施設として扱うことが可能となる。
(6)VOCの種類に応じて、冷却温度を下げることにより、反応性を抑制して安全性を向上させるとともに、回収したVOC凝縮液の劣化を抑制できる。
(7)VOC凝縮液の冷却温度を、VOCを効率よく回収できる温度に下げても、浄化ガスを被処理ガスの冷却に用いることにより、VOC凝縮液の冷却に使った熱を回収できるため、ランニングコストを下げることができる。
(8)浄化ガスを乾燥用空気として再利用するので、被処理ガスの熱エネルギー及びVOC凝縮液の冷却に用いた冷却エネルギーを回収利用できる。
(9)吸着剤のような劣化し交換する必要のある消耗品がなく、メンテナンス性に優れており、また、装置に必要な機器点数が少なく小型で効率よいVOC回収装置が得られる。
【0014】
(10)浄化ガスは、熱交換器1で使用された後、更に各種製造工程等の乾燥用空気として再利用するので、乾燥用空気として要求される湿度も考慮して水分率を調整する必要がある。その際、VOC凝縮液の冷却温度における水の蒸気圧(分圧)は、冷却温度での飽和水蒸気圧よりも低いので効果的である。また、吸着法を使うことなく、乾燥用空気に要求される湿度に対応する飽和蒸気圧に合わせるための温度制御を行うこともなく、乾燥用空気の湿度を安定的かつ簡易に調整できる。
(11)季節変動による湿度変化の影響を受けることなく制御された一定の湿度と温度の乾燥用空気を送り込むことができる。
(12)熱交換器1において排ガスと熱交換することにより浄化ガスが暖められるので、乾燥用空気として用いるための加熱エネルギーを減らすことができ、プロセス全体での省エネルギー化を達成できる。
【実施例】
【0015】
以下、実施例を示して本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
なお、実施例では図3に示す装置を用いた。11は排風機、12は送風機、13はVOC凝縮液冷却器、14は水供給用電磁弁、15はVOC凝縮液濃度測定計、16はVOC凝縮液循環ポンプ、17は不凍液流量調節弁、18はガス−ガス熱交換器、19は気液接触型ガス冷却凝縮器、20はVOC凝縮液排出用電磁弁、21は温度記録計、22は液面調節計である。
また、冷却後のガス温度の数値から、冷媒である不凍液の流量を調整して冷却温度を制御した。また、VOC凝縮液循環経路にVOC濃度測定用の濃度計を設け、その数値から添加する水の量を決め、濃度を制御した。水を添加する位置は、NMP凝縮液の冷却後の温度が、水の凍結温度まで下がっても、水の供給ラインが凍結しないように、ガス−ガス熱交換器の被処理ガス出口の直近とし、ここにノズルを設けた。
【0016】
実施例1
リチウムイオン2次電池の製造工程では、電極用バインダーを溶解する溶剤としてNMP(分子量99)が使用されている。NMPは、バインダーを溶解したあと、乾燥工程で蒸発し、乾燥用空気と一緒に排出される。排ガス中のNMP濃度は、安全を考慮して爆発限界濃度の下限値(1.3vol%)の1/5〜1/10で管理されるため、排ガス中のNMP濃度は1000ppm.vol前後であることが多い。また、NMPは沸点が高く(202℃)、高温でないと乾燥できないため、乾燥用の空気は80℃以上まで加熱して用いるのが一般的である。
本実施例で用いたNMPを含む排ガスの流量、組成等は下記(A)のとおりである。
(A)排ガス流量:100Nm/min
排ガス温度:90℃
NMPガス濃度:1000ppm.vol
排ガス湿度(水分率):4300ppm.vol
【0017】
上記排ガスを、ガス−ガス熱交換器18において冷却用ガス(浄化ガス)と熱交換させた結果、排ガスの流量、組成等は下記(B)のようになった。即ち、ガス温度を90℃から37.4℃まで下げることができた。熱交換器としては、装置の寸法が最適であり且つ熱回収によるメリットが十分にある熱回収率60%のものを選択した。伝熱面積を増やせば熱回収率を80%程度まで上げられるが、装置が大きくなり初期投資が大きくなる。
(B)ガス−ガス熱交換後の排ガス(熱回収率60%想定)
排ガス流量:100Nm/min
排ガス温度:37.4℃
NMPガス濃度:1000ppm.vol
排ガス湿度(水分率):4300ppm.vol
【0018】
上記(B)の排ガスを、冷却凝縮器19、凝縮液冷却器13、VOC凝縮液の濃度調整用水供給機構(水供給用電磁弁14、凝縮液濃度測定計15など)等を稼動させて処理した結果、排出された浄化ガスの流量、組成等は下記(C)のようになった。
(C)冷却凝縮器出口から排出される浄化ガス
浄化ガス流量:99.9Nm/min
浄化ガス温度:4℃
NMPガス濃度:20ppm.vol
浄化ガス湿度(水分率):4300ppm.vol
濃度100%のNMP水溶液の4℃での蒸気圧は、8.5Paであり、大気圧101325Paから換算すると、4℃冷却後のNMPのガス濃度は83.9ppm.volとなる。しかし、NMP凝縮液に水を適量添加し、NMP80wt%(42.1mol%)、水20wt%(57.9mol%)となるように凝縮液を濃度調整し、この凝縮液と排ガスとを十分に気液接触させ平衡状態にすることにより、NMP42.1mol%水溶液のときの平衡状態にまでNMPの蒸気圧を下げることができる。
その結果、理想系での計算では、8.5Pa×42.1mol%÷101325Pa×10≒35ppm.vol程度までNMPガス濃度を減少させることができる。NMPガス濃度の実測値は20ppm.volであり、理想系での計算値よりも低くなっているが、これは、水とNMPが混合したときの物性により、理想系とは異なる状態となったためである。
また、回収効率は、濃度100%のNMP凝縮液による平衡関係では91.6%となるが、濃度80wt%のNMP凝縮液の場合、96.5%となり、5%程度上昇させることができる。また、浄化ガスを乾燥用空気として再利用することから、回収しきれないNMPは乾燥プロセスに戻されるので、NMPの回収率は実質100%となる。
更に、4℃の水の飽和蒸気圧は、812.5Paであり、大気圧から換算すると8019ppm.volとなる。しかし、NMPと同様に、水の蒸気圧は、水57.9mol%のときの蒸気圧まで下げることができるため、812.5Pa×57.9mol%÷101325Pa×10≒4643ppm.volまでガス中の水分率を下げることができる。4643ppm.volという水分率は、ガス温度が−3.5℃のときの飽和水蒸気圧と同じである。したがって、4℃までの冷却で、−3.5℃相当の乾燥空気を作ることが可能となる。実測値では4300ppm.volとなっているが、これは、水とNMPが混合したときの物性により、理想系とは異なる状態となったためである。
本実施例では、ガス−ガス熱交換器18によりプレ冷却を実施したため、4℃まで冷やすエネルギーを大幅に減らすことができた。
また、NMPガス濃度は20ppm.volと低く、環境基準を十分に満たしているので、浄化ガスを空気中に放出しても問題はない。
【0019】
上記(B)の排ガスを処理して得られたNMP凝縮液の回収量、組成等は下記(D)のとおりであった。
(D)NMP凝縮液
NMP回収量:25.6kg/hr
水添加量:6.4kg/hr
NMP濃度:80wt%
凝縮液温度:0℃
NMP凝縮液は、80wt%よりも低い濃度で管理することが可能であるが、回収したNMPを精製して再利用する際、水を分離するためのコストを考慮すると80wt%程度の濃い状態が最適である。また、NMPは水を15wt%以上に調整すると引火点がなくなるという事実があり、装置としての安全性が高まるほか、非危険物施設として扱うことが可能となる。NMP凝縮液は、0℃まで冷却し、並流での気液接触でも十分にガス温度が下げられるようにした。0℃まで冷却してもNMP水溶液であるため水が凍結することはなく、液体として常時循環させることができた。
【0020】
前記冷却凝縮器出口で4℃であった(C)の浄化ガスを、ガス−ガス熱交換器18において冷却用ガスとして用いたが、浄化ガスからみると排ガスによって加熱されたことになり、熱交換後の浄化ガスの風量、組成等は下記(E)のようになった。
(E)ガス−ガス熱交換後の浄化ガス
浄化ガス風量:99.9Nm/min
浄化ガス温度:63.1℃
NMPガス濃度:20ppm.vol
浄化ガス湿度:4300ppm.vol
加熱された浄化ガスの温度は約63℃であり湿度も低いため、他の製造工程等の乾燥用空気として再利用することができる。従来の方法では、乾燥用空気を大気から取り入れることが多く、常温(25℃程度)から加熱して90℃まで上げる必要がある。例えば100Nm/minのガスを、25℃から90℃までスチームにより加温する場合について、簡易的な条件で試算すると次のようになる。
スチームの蒸発潜熱を500kcal/kg、乾燥用空気1Nmの重量を1.3kg、乾燥用空気の顕熱を0.24kcal/kg・℃、スチームを作るボイラーの効率を0.6、スチームを作る燃油の燃焼熱を9700kcal/kgとすると、加温に必要な熱量は、次式のようになる。
100Nm/min×1.3kg/Nm×60min/hr×(90℃−25℃)×0.24kcal/kg・℃=121680kcal/hr
そして、この熱量を作るのに必要な燃油は、次式のようになる。
121680kcal/hr÷9700kcal/kg÷0.6≒20.9kg/hr
これに対し、本実施例のように再利用により熱回収すると、63℃から90℃まで上げる熱量だけでよく、必要な熱量は、次式のようになる。
100Nm/min×1.3kg/Nm×60min/hr×(90℃−63℃)×0.24kcal/kg・℃=50544kcal/hr
そして、この熱量を作るのに必要な燃油は、次式のようになり、前述した25℃の空気を加熱する場合に比べて、およそ6割の燃油を節約することができる。
50544kcal/hr÷9700kcal/kg÷0.6≒8.68kg/hr
なお、本実施例では熱回収率を60%としているが、熱交換器の設計次第では熱回収率70%、80%も可能であり、熱回収による用益費の削減と初期設備投資費用を考慮して、熱回収率を決定すればよい。
【0021】
実施例2
液晶の製造工程では剥離液の主成分としてDMSOがよく用いられる。DMSOは凝固点が高く(18℃)、単一成分では固体となるため扱いにくい。しかし、水を添加することにより凝固点は限りなく下がり、液体として取り扱うことが出来るほか、排ガスを冷却するための冷媒としても利用可能となる。
本実施例で用いたDMSOを含む排ガスの流量、組成等は下記(A)のとおりである。
(A)排ガス流量:50Nm/min
排ガス温度:100℃
DMSOガス濃度:1000ppm.vol
排ガス湿度(水分率):5266ppm.vol
【0022】
上記排ガスを、ガス−ガス熱交換器18において冷却用ガス(浄化ガス)と熱交換させた結果、排ガスの流量、組成等は下記(B)のようになった。即ち、ガス温度を100℃から35.8℃まで下げることができた。上記条件でのDMSOは35.8℃では結露せず、仮に結露したとしても融点が18℃であるため、凝固する懸念はない。本実施例は排ガス温度が高く、その熱を出来るだけ有効利用するため、熱回収率を70%に設定して熱交換器を選定した。
(B)ガス−ガス熱交換後の排ガス(熱回収率70%想定)
排ガス流量:50Nm/min
排ガス温度:35.8℃
DMSOガス濃度:1000ppm.vol
排ガス湿度(水分率):5266ppm.vol
【0023】
上記(B)の排ガスを、実施例1と同様にして処理した結果、排出された浄化ガスの流量、組成等は下記(C)のようになった。
(C)冷却凝縮器出口から排出される浄化ガス
浄化ガス流量:49.9Nm/min
浄化ガス温度:10℃
DMSOガス濃度:43.9ppm.vol
浄化ガスの湿度(水分率):5266ppm.vol
【0024】
上記(B)の排ガスを処理して得られたDMSO凝縮液の回収量、組成等は下記(D)のとおりであった。
(D)DMSO凝縮液
DMSO回収量:10.2kg/hr
水添加量:4.39kg/hr
DMSO濃度:70wt%
凝縮液温度:5℃
本実施例では、凝縮液中のDMSO濃度を70wt%になるように制御した。これにより、DMSOの蒸気圧を下げる効果及び引火点を無くす効果が得られ、更には凝固点降下により、5℃以下でもDMSOが凝固することなく、常時液体の状態で取り扱うことが可能となった。
【0025】
前記冷却凝縮器出口で4℃であった(C)の浄化ガスを、ガス−ガス熱交換器18において冷却用ガスとして用いたが、浄化ガスからみると排ガスによって加熱されたことになり、熱交換後の浄化ガスの風量、組成等は下記(E)のようになった。
(E)ガス−ガス熱交換後の浄化ガス
浄化ガス流量:49.9Nm/min
浄化ガス温度:74.6℃
DMSOガス濃度:43.9ppm.vol
浄化ガス湿度(水分率):5266ppm.vol
本実施例では、熱回収率を70%に設定したため、乾燥用空気として再利用する浄化ガスの温度を74.6℃まで上げることができた。その結果、実施例1と同様に、冷却凝縮に必要なエネルギーを加味しても大幅なエネルギー節減を達成でき、且つDMSOの凝固によるトラブルを回避し、安定して排ガスからDMSOを回収することができた。
【0026】
以上のように、本発明では、水を添加することにより、VOCの分圧(蒸気圧)を下げる効果、水の分圧(蒸気圧)を下げる効果、引火点を無くし、非危険物にすることによる安全性向上の効果、凝固点降下による低温下での液体としての取り扱いが可能となる効果が得られ、簡単な方法で効率よくガス化したVOCを液体として回収することが出来る。また、冷却エネルギーは、被処理ガスを冷却することで、エネルギー節減が可能であり、更には排出される熱エネルギーを回収することで、プロセスに戻す乾燥用空気を加熱するためのエネルギーを削減することができ、プロセス全体として大幅なエネルギー削減効果が得られる。
【産業上の利用可能性】
【0027】
本発明は、リチウムイオン2次電池の製造工程、液晶の製造工程、プリンター等に使用されているシームレスベルトの製造工程、乾式合成皮革の製造工程等で発生するVOC含有ガス、グラビア印刷やラミネート処理で発生するVOC含有ガス等の回収に好適に利用できる。
【符号の説明】
【0028】
11 排風機
12 送風機
13 VOC凝縮液冷却器
14 水供給用電磁弁
15 VOC凝縮液濃度測定計
16 VOC凝縮液循環ポンプ
17 不凍液流量調節弁
18 ガス−ガス熱交換器
19 気液接触型ガス冷却凝縮器
20 VOC凝縮液排出用電磁弁
21 温度記録計
22 液面調節計
図1
図2
図3
図4
図5