(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5779340
(24)【登録日】2015年7月17日
(45)【発行日】2015年9月16日
(54)【発明の名称】車両用灯具
(51)【国際特許分類】
F21S 8/10 20060101AFI20150827BHJP
B60Q 1/34 20060101ALI20150827BHJP
H01L 33/00 20100101ALI20150827BHJP
F21Y 101/02 20060101ALN20150827BHJP
【FI】
F21S8/10 385
F21S8/10 351
F21S8/10 352
F21S8/10 380
F21S8/10 371
B60Q1/34 B
H01L33/00 L
F21Y101:02
【請求項の数】6
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2010-262664(P2010-262664)
(22)【出願日】2010年11月25日
(65)【公開番号】特開2011-165651(P2011-165651A)
(43)【公開日】2011年8月25日
【審査請求日】2013年10月3日
(31)【優先権主張番号】特願2010-5552(P2010-5552)
(32)【優先日】2010年1月14日
(33)【優先権主張国】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000001133
【氏名又は名称】株式会社小糸製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100136630
【弁理士】
【氏名又は名称】水野 祐啓
(72)【発明者】
【氏名】石川 智三
(72)【発明者】
【氏名】風岡 成彦
【審査官】
竹中 辰利
(56)【参考文献】
【文献】
特開2008−153076(JP,A)
【文献】
特開2006−164908(JP,A)
【文献】
特開2007−280689(JP,A)
【文献】
実開昭59−115516(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F21S 8/10
B60Q 1/34
H01L 33/00
F21Y 101/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両周辺の所定範囲を複数のLED光源からの光で照明する車両用灯具において、各LED光源を共通の基板上に配列し、LED光源の配列方向に長い導光レンズを基板に組み合わせ、導光レンズに各LED光源からの光を別々に入射する複数の入射部と、該入射部が入射した光を車両周辺へ別々に反射する複数の反射面を形成し、各入射部および各反射面を導光レンズの長手方向において各LED光源と対応する位置に配置し、各反射面の向きを対応するLED光源の位置に応じて相違させたことを特徴とする車両用灯具。
【請求項2】
前記LED光源が光軸を略垂直にした向きで基板上に配列され、前記反射面が入射部の入射光を略水平に全反射する請求項1記載の車両用灯具。
【請求項3】
前記導光レンズが灯具ボディに取り付けられる取付部と、基板を掛止する掛止部とを備えた請求項1又は2記載の車両用灯具。
【請求項4】
前記導光レンズに複数の反射面を車体から離れるほど車両後方を向くように形成した請求項1、2又は3記載の車両用灯具。
【請求項5】
前記LED光源と導光レンズを覆うアウタカバーを備え、アウタカバーに、導光レンズの出射光を透過させる透光部と、LED光源の直射光を遮蔽する遮光部とを設けた請求項1〜4の何れか一項に記載の車両用灯具。
【請求項6】
前記LED光源と導光レンズを覆うアウタカバーを備え、アウタカバーに、ドアミラーのハウジングに位置決めされる位置決め部を形成した請求項1〜5の何れか一項に記載の車両用灯具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両周辺の所定範囲を複数のLED光源からの光で照明する車両用灯具に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の車両用灯具として、従来、例えば
図11に示すようなサイドターンシグナルランプ51が知られている。このランプ51は、ドアミラーのハウジング52に内装されるランプボディ53とアウタカバー54とを備え、双方間に形成された灯室55に複数のLED光源56と同数の基板57とを配設し、基板57をホルダ58でそれぞれ異なる向きに保持し、複数の光源56からの光で車両の前方、側方、後方を含む広範囲を照明するように構成されている。
【0003】
特許文献1には、アウタレンズの前面側部分を内側から覆うインナレンズと、インナレンズを面発光させるLED光源と、アウタレンズの側面側部分を内側から直射する別のLED光源とを備え、複数のLED光源を別々の基板上に実装した車両用灯具が記載されている。特許文献2には、複数のLED光源を共通の基板上に配列し、各光源からの光を車両周辺の同じ方向に照射する車両用灯具が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−164908号公報
【特許文献2】特開2004−1710号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、
図11および特許文献1の車両用灯具によると、LED光源の向きを変えるために、光源と同数の基板を設ける必要があり、部品点数が増え、製作コストが高くつく問題点があった。また、LED光源が水平向きに配列されているので、灯具の奥行が深くなるうえ、光源の点発光が外観に表れやすいという不都合もあった。特許文献2の車両用灯具は、基板を共通化できるが、複数の光源が共に車両前方を向いているため、車両側方および後方が相対的に暗くなるという問題点があった。
【0006】
そこで、本発明の目的は、安価な構成で車両周辺の広範囲を明るく照明できる車両用灯具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、本発明は、車両周辺の所定範囲を複数のLED光源からの光で照明する車両用灯具において、次のような手段を採用したことを特徴とする。
(1)複数のLED光源を共通の基板上に配列し、LED光源の配列方向に長い導光レンズを基板に組み合わせ、導光レンズに各LED光源からの入射光を車両周辺へ別々に反射する複数の反射面を形成し、各反射面の向きを対応するLED光源の位置に応じて相違させたことを特徴とする車両用灯具。
【0008】
(2)LED光源が光軸を略垂直にした向きで基板上に配列され、導光レンズの反射面がLED光源からの入射光を略水平に全反射することを特徴とする(1)に記載の車両用灯具。好ましくは、反射面が回転放物面または反射光学面の一部を含むように構成するとよい。
【0009】
(3)導光レンズがドアミラーのハウジングに取り付けられる取付部と、基板を掛止する掛止部とを備えたことを特徴とする(1)又は(2)に記載の車両用灯具。
【0010】
(4)導光レンズに複数の反射面を車体から離れるほど車両後方を向くように形成したことを特徴とする(1)、(2)又は(3)に記載の車両用灯具。
【0011】
(5)LED光源と導光レンズを覆うアウタカバーを備え、アウタカバーに、導光レンズの出射光を透過させる透光部と、LED光源の直射光を遮蔽する遮光部とを設けた(1)〜(4)の何れか一つに記載の車両用灯具。
【0012】
(6)LED光源と導光レンズを覆うアウタカバーを備え、アウタカバーに、ドアミラーのハウジングに位置決めされる位置決め部を形成した(1)〜(5)の何れか一つに記載の車両用灯具。
【発明の効果】
【0013】
本発明の車両用灯具によれば、LED光源からの光を導光レンズの反射面で反射するので、光の出射方向を反射面の向きによって決めることができる。このため、複数のLED光源を単一の基板上に配列でき、部品点数を減らし、灯具を安価に製作できる。また、反射面の向きを容易に変更できるため、車体の形状やLED光源の位置に応じて、車両周辺に最適な配光パターンを形成できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の一実施形態を示すサイドターンシグナルランプの正面図である。
【
図2】該ランプの内部を示す
図1のII−II線断面図である。
【
図3】該ランプの構成部品を分解して示す斜視図である。
【
図4】アウタカバーを取り外した状態でランプ内部を示す正面図である。
【
図5】導光レンズを上方から見たランプの断面図である。
【
図6】導光レンズを下方から見たランプの断面図である。
【
図7】水平および垂直面におけるランプの配光作用を示す概略図である。
【
図8】ハウジングに対するアウタカバーの位置決め構造を示す正面図である。
【
図9】アウタカバーの別の位置決め構造を示す正面図である。
【
図10】アウタカバーのさらに別の位置決め構造を示す斜視図である。
【
図11】従来のサイドターンシグナルランプを示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を自動車のサイドターンシグナルランプに具体化した実施形態を図面に基づいて説明する。
図1に示すように、サイドターンシグナルランプ1のボディ2は、ミラーハウジング3の内部に設置され、取付片4にてネジ5で固定されている。ランプボディ2の前面にはアウタカバー6が被せられ、リテーナ(図示略)を介してミラーハウジング3に保持されている。アウタカバー6には、横長隆起形状の意匠部7がミラーハウジング3の開口部8から露出するように形成されている。
【0016】
図2に示すように、ランプボディ2とアウタカバー6との間の灯室10には、LED光源11と基板12と導光レンズ13とが配設されている。LED光源11は基板12に下向きに装着され、導光レンズ13がLED光源11からの光を意匠部7に導く。意匠部7には、導光レンズ13の出射光を透過させる透光部14が上下2本のカットライン15で横長スリット状(
図1参照)に画定されている。そして、LED光源11の直射光を遮蔽できるように、透光部14を除くアウタカバー6の内面にアルミ蒸着膜からなる遮光部16が設けられている。
【0017】
図3、
図4に示すように、LED光源11は、例えば4個が、それぞれ光軸を垂直にした向きで基板12に配列されている。導光レンズ13は、透明樹脂で光源11の配列方向に長い三日月形に成形され、上面に光源11からの光を別々に入射する4つの凸レンズからなる入射部18と、3つの取付片19,20,21とが設けられている。導光レンズ13の下面には、入射光を水平に全反射する4つの反射面22(
図6参照)が形成され、導光レンズ13の前面に反射光を透光部14に向けて出射する出射面23が設けられている。
【0018】
図3、
図5に示すように、導光レンズ13の一端に起立する取付片19には、基板12の小孔25に挿入される掛止ピン26と、基板12の切欠27に掛止される掛止爪28と、ネジ29を通す取付孔30とが設けられている。導光レンズ13の他端に起立する取付片20には、基板12のコーナ部31に掛止される掛止爪32と、ネジ33を通す取付孔34とが設けられている。導光レンズ13の中間に起立する取付片21は、基板12の下面に当接し、LED光源11と入射部18との間隔を一定に保持している。
【0019】
基板12は掛止ピン26および掛止爪28,32によって導光レンズ13に組み付けられ、導光レンズ13がネジ29,33でランプボディ2に取り付けられている。ランプボディ2には、ネジ29,33が締め付けられる一対のボス部35,36が設けられ、一方のボス部36の近傍に筒状部38が形成され、ここに導光レンズ13の位置決めピン37が挿入されている。筒状部38の近傍には端子部39が設けられ、端子部39の内側で基板12の端子ピン(図示略)がドアミラーの内部電気配線に接続される。
【0020】
図2に示すように、導光レンズ13の反射面22は、LED光源11と同じ数が、軸線を水平にした回転放物面41の一部を含む全反射ステップとして形成されている。
図6に示すように、4つの全反射ステップ22A,22B,22C,22Dは、LED光源11と対応する位置において導光レンズ13の下面に形成され、各光源11からの入射光をドアミラーの周辺へ別々に全反射する。ステップ22A〜22Dの向きは、光源11の位置に応じて相違し、車体に最も近いステップ22Aが最も前方を向き、車体から最も離れたステップ22Dが最も後方を向いている。
【0021】
したがって、このサイドターンシグナルランプ1によれば、次のような作用効果を発揮できる。
(a)
図7(A)に示すように、複数のLED光源11からの光を導光レンズ13の出射面23から異なる方向に出射し、自動車の前方、側方、後方を含むドアミラーの周辺を広範囲に照明できる。
(b)出射方向を反射面22の向きで決定しているため、一枚の基板12上に複数のLED光源11を配列でき、ランプ1の部品点数を削減できる。
【0022】
(c)複数の反射面22の向きを個別に設計できるため、ミラーハウジング3の外形やLED光源11の位置が変わった場合でも、ドアミラー周辺の配光パターンを容易に変更できる。
(d)車体から離れる反射面22ほど車両後方を向くように構成したので、LED光源11を増設することなく、シグナルランプとしての機能配光を満たすことができる。
(e)
図7(B)に示すように、LED光源11を垂直に設け、入射光を水平に反射するので、ランプボディ2の奥行を浅くし、ミラーハウジング3内部に占めるランプ1の設置スペースを縮小できる。
【0023】
(f)アウタカバー6が遮光部16によってLED光源11の直射光を遮蔽しているので、透光部14から点発光を解消し、意匠部7の見栄えを改善できる。
(g)基板12を導光レンズ13に掛止し、導光レンズ13をミラーハウジング3に取り付けたので、基板12を保持するための専用部品(従来のホルダ58:
図11参照)を不要とすることができるうえ、LED光源11と反射面22の相対位置精度を高めることができる。
【0024】
図8〜
図10は、アウタカバー6をミラーハウジング3に位置決めする構造を示す。各図に示すアウターカバー6は、ミラーハウジング3に直接的に位置決めされる位置決め部45,46,47を備え、特に、ミラーハウジング3の開口部8に対する意匠部7の組付精度を向上できるようになっている。
【0025】
図8に示すアウタカバー6には、外周縁に2つの突片43,44が設けられ、一方の突片43に、ミラーハウジング3側のピン(図示略)が嵌入する位置決め穴45が形成され、他方の突片44に、ミラーハウジング3側の穴(図示略)に嵌入する位置決めピン46が形成されている。このため、取付片4とネジ5との間の遊びでランプボディ2の位置がズレた場合でも、アウタカバー6をミラーハウジング3に対して正確に位置決めできる。位置決め部としては、穴45やピン46にかえ、ダボやリブを使用することもできる。
【0026】
図9に示すアウタカバー6には、意匠部7の周面に3つの位置決めダボ47が適宜の間隔をあけて形成されている。各ダボ47は、ミラーハウジング3の開口部8の周縁に接触し、開口部8と意匠部7との隙間を各部一定に保つように機能する。従って、方向性ある意匠部7の外観上の見栄えを向上できる。また、意匠部7と開口部8との隙間を狭くし、ハウジング3内部への空気流の侵入を規制し、風切り音の発生を未然に防止できる。
【0027】
図10に示すアウタカバー6には、外周縁に1つの突片44が設けられ、突片44に位置決めピン46が形成され、意匠部7の周面に2つの位置決めダボ47が形成されている。従って、アウタカバー6をミラーハウジング3に高精度に組み付け、意匠部7の見栄えをよくし、風切り音の発生を防止できる。また、アウタカバー6をそれ自身の形状部46,47で位置決めしているので、プロテクターやリテーナー等の補助部品を省いたり、ランプボディ2のネジ締めを不要(
図9参照)にしたりするなど、組付構造を簡略化できる。
【0028】
なお、本発明は、サイドターンシグナルランプ1に限定されるものではなく、例えば、ハイマウントシグナルランプ、デイタイムランニングランプ、リアコンビネーションランプなど、車両各部の灯具に適用することもできる。その他、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、LED光源11の数や導光レンズ13の形状を適宜に変更して実施することも可能である。
【符号の説明】
【0029】
1 サイドターンシグナルランプ
2 ランプボディ
3 ミラーハウジング
6 アウタカバー
11 LED光源
12 基板
13 導光レンズ
14 透光部
16 遮光部
18 入射部
19,20 取付片
22 反射面
23 出射面
26 掛止ピン
28,32 掛止爪
45,46,47 位置決め部