(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記任意の毛束において、[副用毛の本数]/[任意の毛束を構成する用毛の全本数]×100で表される副用毛の割合が、10%以上50%未満であることを特徴とする請求項1に記載の歯ブラシ。
【背景技術】
【0002】
口腔内清掃器具である歯ブラシにおいては、最も必要な機能である歯垢除去効果を高めるために、用毛を束ねた毛束の配列、用毛の形状、毛束の毛切り形状等に工夫がなされてきた。
【0003】
近年、衛生志向の高まりにより、歯ブラシには、より一層の歯垢除去効果の向上が求められている。歯垢除去効果の向上の要望に対し、例えば、針状刷毛が非対称形のU−型に折りたたまれて、その両端が0.5〜2mmの範囲の異なった長さで露出した歯ブラシが提案されている(例えば、特許文献1)。
また、少なくとも一部の植毛穴に、平線を挟んだ一方側と他方側とで高低差を設けた毛束を植設し、毛束の先端が起伏形状を有する歯ブラシが提案されている(例えば、特許文献2)。
特許文献1〜2の発明によれば、歯間部や歯頸部等の狭小部に毛先を進入させやすくすることで、歯垢除去効果の向上を図っている。
【0004】
また、ヘッド部の植毛面に対し、毛束を傾斜させて植毛した歯ブラシが提案されている。
例えば、ヘッド部の植毛面に対して傾斜されて、各毛束の毛先同士を寄り合わせて山形に形成した束毛部をヘッド部に複数設けた歯ブラシにおいて、前記束毛部を、毛束の互いに隣り合う3つの各毛束の中心部に向かって毛先を寄り合わせて三角錐山形に形成した三角錐状束毛部として備えた歯ブラシが提案されている(例えば、特許文献3)。
あるいは、少なくとも一部の毛束が、植毛面から起立した中心毛束と、該中心毛束を囲むように植設され離反した位置から中心毛束上部に接触する位置まで傾斜して伸びる周囲毛束とにより、複合毛束群を構成しており、前記中心毛束の先端が、前記周囲毛束の先端より突出している歯ブラシが提案されている(例えば、特許文献4)。
特許文献3〜4の発明によれば、毛先が狭小部に進入しやすく、かつ歯の咬合面、平滑面等に適度な圧力をかけることで、歯垢除去効果の向上を図っている。
【0005】
ところで、歯周病罹患者は、清掃時の痛みや出血等を回避するために、できるだけ歯茎に刺激を与えないような当たり心地の歯ブラシを好む傾向にある。歯茎に刺激を与えないようにするには、細く柔らかい用毛を太い毛束とし、かつ毛束が密に植毛された仕様(密毛仕様)とし、刷掃圧を分散するのが一般的である。
毛束を密に植毛すると、隣接する毛束同士が基端から先端にかけて干渉しあって、先端部が撓みにくくなり、用毛の毛先と清掃対象部との接触面積が広がりにくい傾向となる。
こうした問題に対し、ヘッド部の長さ方向及び幅方向において、隣り合う毛束同士の平線の傾きが逆向きに設定されている歯ブラシが提案されている(例えば、特許文献5)。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(第一の実施形態)
本発明の第一の実施形態にかかる歯ブラシについて、以下に
図1〜2を参照して説明する。
図1は、本実施形態の歯ブラシ1の平面図であり、
図2は、
図1のII−II断面図である。
【0013】
図1〜2に示すように、歯ブラシ1は、ヘッド部2と、ヘッド部2に延設された長尺状のハンドル部3(以下、ヘッド部とハンドル部とを合わせてハンドル体ということがある)とを備え、ヘッド部2の植毛面20に略真円柱状の毛束30が複数植毛されたものである。
図中、符号O1は、ヘッド部2の先端(ヘッド部先端)21と、ヘッド部基端とを結び、かつヘッド部2の中心を通る、ハンドル体の軸線である。なお、ヘッド部基端は、ヘッド部2とハンドル部3との境界を意味する。
【0014】
ヘッド部2は、軸線O1方向を長手とする平面視略矩形状とされたものである。
ヘッド部2とハンドル部3とは、全体として長尺状に一体成形されたものであり、例えば、樹脂を材料とし射出成形により得られるものである。
ハンドル体を構成する樹脂は、歯ブラシ1に求める剛性や機械特性等を勘案して決定でき、例えば、曲げ弾性率(JIS K7203)が500〜3000MPaの範囲にある高硬度樹脂が挙げられる。このような高硬度樹脂としては、例えば、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリシクロへキシレンジメチレンテレフタレート(PCT)、ポリスチレン(PS)、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン樹脂(ABS)、セルロースプロピオネート(CP)、ポリアリレート、ポリカーボネート、アクリロニトリル・スチレン共重合樹脂(AS)等が挙げられる。これらは1種単独で又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。
また、ハンドル部3は、例えばエラストマー等の柔軟な樹脂が部分的又は全体に被覆されていてもよい。
【0015】
ヘッド部2の大きさは、口腔内での操作性等を勘案して決定でき、例えば、幅が10〜15mmとされ、厚さが4〜8mmとされる。
【0016】
ヘッド部2には、植毛面20に開口する植毛穴23がいわゆる千鳥状に形成され、各々の植毛穴23には、毛束30が植毛されている。
植毛面20には、軸線O1上に6つの毛束30が植毛されて、中央毛束列24が形成されている。ヘッド部2の幅方向(即ち軸線O1に直交する方向)における中央毛束列24の両側には、軸線O1に沿って各5つの毛束30が植毛されて、外側毛束列26が形成されている。
【0017】
毛束30の太さ(毛束径)R1(
図2)は、特に限定されないが、2mm以上が好ましく、2〜3mmがより好ましい。上記下限値以上であれば、先端面31同士の間隔が狭まり、密毛の程度が高まり、より柔らかな当たり心地となる。上記上限値以下であれば、ヘッド部2の強度低下を抑制できる。特に、後述する平線式植毛で毛束30を植毛する場合、毛束径R1が太すぎると、ヘッド部2の白化や割れが生じやすくなる。
なお、毛束径R1は、毛束30を植毛面20で切断した断面の直径である。
【0018】
[全ての毛束30の断面積の合計]÷[植毛領域の面積]×100で表される植毛率は、50%以上が好ましく、60%以上がより好ましい。このような密毛仕様の歯ブラシにおいて、本発明の効果が顕著に現れる。
植毛領域22は、最外周に位置する毛束30の外縁を結ぶ接線で囲んだ領域である。
【0019】
図2に示すように、毛束30の先端面31は、植毛面20と略平行な平面とされ、先端面31を連ねた面(ブラシ面)は略面一な平面とされている。植毛面20から先端面31までの長さH1は、毛束径や用毛の種類等を勘案して決定でき、例えば、6〜13mmの範囲とされる。
【0020】
毛束30は、先端面31に達する長さの正用毛32と、植毛面20から先端面31までの長さよりも短い副用毛34とを有するものである。副用毛34の長さH2は、植毛面20から先端面31までの長さH1の90%以下であり、80%以下が好ましい。上記上限値以下であれば、正用毛32の先端部近傍が撓みやすくなり、柔らかい当たり心地を得られる。長さH2の下限値は、特に限定されないが、長さH1の50%以上が好ましく、60%以上がより好ましい。上記下限値以上であれば、毛束30が適度な弾力を発揮し、良好なフィット感を得られる。
副用毛34の長さは、全て同じであってもよいし、2以上の異なる長さであってもよい。副用毛34の長さが全て同じであれば、量産した場合でも、感触の個体差がなく、柔らかな当たり心地が安定した歯ブラシ1を得られる。2以上の異なる長さの副用毛34が用いられる場合、毛束30は、基端から先端にかけて徐々に毛腰が弱くなり、自然なしなり感を発揮できる。
【0021】
図3に示すように、毛束30は、正用毛32と副用毛34とが無作為に混在したものである。ここで、「無作為」とは、正用毛32と副用毛34との配置に規則性が認めらないことを意味する。
正用毛32と副用毛34とは無作為に混在していれば、例えば、副用毛34が他の副用毛34と隣接していてもよいし、副用毛34が他の副用毛34と隣接せず正用毛32とのみ隣接していてもよい。柔らかい当たり心地を高める観点から、副用毛34が他の副用毛34と隣接せず正用毛32とのみ隣接するように配置されていることが好ましく、さらに副用毛34が毛束30に略均一に分散していることがより好ましい。ここで、略均一とは、平面視において、副用毛34の偏りがないと認められる状態である。
【0022】
毛束30における副用毛34の割合、即ち、[副用毛の本数]/[任意の毛束を構成する用毛の全本数]×100で表される副用毛割合は、10%以上50%未満が好ましく、20〜30%がより好ましい。上記下限値以上であれば、正用毛32の先端部近傍が撓みやすくなり、柔らかい当たり心地を得られる。上記上限値未満であれば、毛束30が適度な弾力を発揮し、良好なフィット感を得られる。
【0023】
正用毛32の種類としては、毛先に向かって漸次その径が小さくなる用毛(テーパー毛)、毛先の丸め部を除いて外径がほぼ同一である用毛(ストレート毛)が挙げられる。
【0024】
正用毛32の材質は、例えば、6−12ナイロン、6−10ナイロン等のポリアミド、PET、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリトリメチレンテレフタレート(PTT)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリブチレンナフタレート(PBN)等のポリエステル、PP等のポリオレフィン、オレフィン系エラストマー、スチレン系エラストマー等のエラストマー等の合成樹脂材料を用いることができる。
これらの樹脂材料は、1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
また、正用毛32は、芯部と該芯部の外側に設けられた少なくとも1層以上の鞘部とを有する多重芯構造であってもよい。
【0025】
正用毛32の横断面形状は円形が好ましいが、円形に必ずしも限定されるものではなく、歯ブラシ1の目的用途に応じて任意の形状とすることができる。例えば、楕円形、多角形(例えば、三角形、四角形、五角形、六角形等。)、異形(例えば、星形、三つ葉のクローバー形、四つ葉のクローバー形等。)等とすることができる。
【0026】
正用毛32の太さは、特に限定されず、例えば、横断面が円形の場合、8mil(1mil=1/1000inch=0.025mm)以下が好ましく、7mil以下がより好ましい。上記上限値超であると、毛束30の毛腰が強すぎて、柔らかい当たり心地が得られないおそれがある。正用毛32の太さの下限値は、特に限定されないが、4mil以上が好ましい。上記下限値未満であると、毛束30の毛腰が弱くなりすぎて、良好なフィット感が得られないおそれがある。
毛束30は、全てが同じ太さの用毛で構成されていてもよいし、2種以上の異なる太さの用毛が組み合わされて構成されていてもよい。
なお、用毛の太さは、植毛面20で切断した断面が内接する円の直径である。
【0027】
副用毛34の種類は、正用毛32の種類と同様であり、副用毛34の材質は、正用毛32の材質と同様である。
副用毛34の横断面形状は、正用毛32の横断面形状と同様であり、副用毛34の太さは、正用毛32の太さと同様である。
【0028】
本実施形態の歯ブラシ1の製造方法について、一例を挙げて説明する。
まず、ハンドル体を成形した後、このハンドル体の植毛面20に任意の長さの毛束を植毛する。毛束を植毛する方法は、例えば、毛束を二つ折りにしその間に挟み込まれた平線を植毛穴に打ち込むことにより毛束を植設する平線式植毛、毛束の下端を植毛部となる溶融樹脂中へ圧入して固定する熱融着法、毛束の下端を加熱して溶融塊を形成した後に金型中に溶融樹脂を注入して植毛部を成形するインモールド法等が挙げられる。
【0029】
次に、植毛された毛束の任意の位置にシャギーカットを施して、一部の用毛を副用毛34とする。シャギーカットを施す方法としては、例えば、調髪に用いられる梳きバサミ(セニングシザー)等により毛束の任意の位置を処理する方法が挙げられる。
こうして、シャギーカットが施されることで、一部が切断された用毛は副用毛34となり、切断されなかった用毛は正用毛32となった毛束30が形成される。そして、毛束30には、正用毛32と副用毛34とが無作為に混在することとなる。
【0030】
あるいは、他の製造方法としては、長さの異なる用毛同士を束ねて毛束30とし、これを植毛面20に植毛する方法が挙げられる。毛束30を植毛する方法としては、平線式植毛、熱融着法、インモールド法が挙げられる。
【0031】
本実施形態によれば、毛束が、先端面に達する長さの正用毛と、植毛面から先端面までの長さの90%以下の長さの副用毛とが無作為に混在して構成されているため、副用毛より上の位置では、正用毛同士の干渉が少なくなり、容易に撓むこととなる。このため、口腔内の清掃時には、使用者に柔らかい当たり心地を与えられる。
加えて、副用毛の長さ以下の位置では、正用毛と副用毛とが互いに干渉し強い毛腰となる。このため、口腔内を清掃する際に、毛束が適度な弾力で復元しようと作用し、毛束の先端が口腔内の凹凸に合わせて接触するため、良好なフィット感を与えられる。
【0032】
(第二の実施形態)
本発明の第二の実施形態にかかる歯ブラシについて、以下に
図4を参照して説明する。
図4は、本実施形態の歯ブラシ100の断面図であり、
図2と同様の位置の断面である。第一の実施形態と同じ構成には同じ符号をつけてその説明を省略し、主に第一の実施形態と異なる点を説明する。即ち、第一の実施形態と異なる点は、毛束の先端面を連ねた面が、ヘッド部幅方向の中央に向かうに従い膨出する曲面とされている点である。
【0033】
図4に示すように、歯ブラシ100は、軸線O1上に毛束130が植毛されて、中央毛束列が形成され、ヘッド部2の幅方向における中央毛束列の両側には、軸線O1に沿って毛束140が植毛されて、外側毛束列が形成されたものである。
【0034】
毛束130の先端面131は、ヘッド部2の幅方向中央に向かうに従い高くなる曲面とされている。毛束130を構成する用毛132は、全て先端面131に達するもの、即ち、全て正用毛である。
【0035】
毛束140の先端面141は、ヘッド部2の幅方向中央に向かうに従い高くなる曲面とされ、先端面131と先端面141とを連ねた面は、全体として、ヘッド部2の幅方向中央に向かうに従い膨出する曲面とされている。
【0036】
毛束140は、先端面141に達する長さの正用毛142と、植毛面20から先端面141までの長さの90%以下の長さである副用毛144とで構成されている。
ここで、植毛面20から先端面141までの長さとは、副用毛が植毛されている位置における植毛面20から先端面141までの長さを意味する。即ち、副用毛144は、先端面141に達するとした場合の長さに対し、90%以下の長さのものである。
例えば、副用毛144aの長さH5は、副用毛144aが植毛された位置における植毛面20から先端面141までの長さH3の90%以下とされ、副用毛144bの長さH5は、副用毛144bが植毛された位置における植毛面20から先端面141までの長さH4の90%以下とされる。
【0037】
毛束130の毛束径は、毛束30の毛束径と同様であり、毛束130の長さは、毛束30の長さと同様である。
【0038】
毛束140の毛束径は、毛束30の毛束径と同様であり、毛束140の長さは、毛束130の長さを勘案して決定できる。
【0039】
用毛132の種類は、正用毛32の種類と同様であり、用毛132の材質は、正用毛32の材質と同様である。
用毛132の長さは、正用毛32の長さと同様に、例えば、6〜13mmの範囲で適宜決定できる。用毛132の太さは、正用毛32の太さと同様である。
【0040】
正用毛142の種類は、正用毛32の種類と同様であり、正用毛142の材質は、正用毛32の材質と同様である。
正用毛142の長さは、毛束130の長さを勘案して決定でき、正用毛132の太さは、正用毛32の太さと同様である。
【0041】
副用毛144の種類は、副用毛34の種類と同様であり、副用毛144の材質は、副用毛34の材質と同様である。副用毛144の長さは、副用毛34の長さと同様であり、副用毛144の太さは、副用毛34の太さと同様である。
【0042】
用毛132の太さと、正用毛142の太さと、副用毛144の太さとの関係は、それぞれの用毛の材質や太さ等を勘案して決定できる。例えば、1つの毛束を構成する全ての用毛の太さが同じである場合、各用毛の太さは、用毛132>正用毛142=副用毛144であることが好ましい。毛束140は、毛束130よりも短いため毛腰が強くなりやすい。このため、正用毛142及び副用毛144の用毛径を細くして、歯ブラシ100全体の当たり心地を柔らかいものとできる。
【0043】
毛束140における副用毛割合は、毛束30における副用毛割合と同様である。
【0044】
本実施形態によれば、毛束の先端面を連ねた面が、前記ヘッド部の幅方向中央に向かうに従い膨出する曲面であり、全体としていわゆるドーム形状とされているため、中央毛束列の毛束が優先的に歯間部や歯頸部、歯牙と歯茎との境目等の狭小部を良好に清掃すると共に、ブラシ面がドーム形状とされているため、歯茎等への当たり心地がより柔らかくなる。
【0045】
(第三の実施形態)
本発明の第三の実施形態にかかる歯ブラシについて、以下に
図5を参照して説明する。
図5は、本実施形態の歯ブラシ200の断面図であり、
図2と同様の位置の断面である。第一又は第二の実施形態と同じ構成には同じ符号をつけてその説明を省略し、主に第一及び第二の実施形態と異なる点を説明する。即ち、第一及び第二の実施形態と異なる点は、毛束の先端面に向かい段階的に用毛数が少なくなる点である。
【0046】
毛束230の先端面231は、ヘッド部2の幅方向中央に向かうに従い高くなる曲面とされている。毛束230は、正用毛232と、第一の副用毛244と、第一の副用毛244よりも短い第二の副用毛246とで構成されている。
【0047】
毛束240の先端面241は、ヘッド部2の幅方向中央に向かうに従い高くなる曲面とされ、先端面231と先端面241とを連ねた面は、全体として、ヘッド部2の幅方向中央に向かうに従い膨出する曲面とされている。
【0048】
毛束240は、先端面241に達する長さの正用毛242と、第一の副用毛244と、第一の副用毛244よりも短い第二の副用毛246とで構成されており、先端面241に向かい段階的に用毛数が少なくなるものとされている。
第一の副用毛244の長さH7は、副用毛244が植毛された位置における植毛面20から先端面241までの長さH6の90%以下とされ、第二の副用毛246の長さH9は、第二の副用毛246が植毛された位置における植毛面20から先端面241までの長さH8の90%以下とされる。
【0049】
毛束230の毛束径は、毛束30の毛束径と同様であり、毛束230の長さは、毛束30の長さと同様である。
【0050】
毛束240の毛束径は、毛束30の毛束径と同様であり、毛束240の長さは、毛束130の長さを勘案して決定できる。
【0051】
正用毛232の種類は、正用毛32の種類と同様であり、正用毛232の材質は、正用毛32の材質と同様である。
正用毛232の長さは、正用毛132の長さと同様であり、正用毛232の太さは、正用毛32の太さと同様である。
【0052】
正用毛242の種類は、正用毛32の種類と同様であり、正用毛242の材質は、正用毛32の材質と同様である。
正用毛242の長さは、毛束230の長さを勘案して決定でき、正用毛232の太さは、正用毛32の太さと同様である。
【0053】
第一の副用毛244の種類は、副用毛34の種類と同様であり、第一の副用毛244の材質は、副用毛34の材質と同様である。第一の副用毛244の長さは、正用毛の長さを勘案して決定でき、第一の副用毛244の太さは、副用毛34の太さと同様である。
【0054】
第二の副用毛246の種類は、副用毛34の種類と同様であり、第二の副用毛246の材質は、副用毛34の材質と同様である。第二の副用毛246の長さは、植毛面20から先端面141の長さの90%以下で、かつ第一の副用毛244よりも短ければよく、例えば、第一の副用毛244の長さの60〜90%が好ましい。上記範囲内であれば、毛束がよりしなやかに撓み、柔らかい当たり心地とフィット感とをより高められる。
第二の副用毛246の太さは、副用毛34の太さと同様である。
【0055】
毛束230を構成する用毛の太さと、毛束240を構成する用毛の太さとの関係は、それぞれの用毛の材質や太さ等を勘案して決定できる。例えば、1つの毛束を構成する全ての用毛の太さが同じである場合、各用毛の太さは毛束230を構成する用毛>毛束240を構成する用毛であることが好ましい。
【0056】
毛束230における副用毛割合は、毛束30における副用毛割合と同様であり、毛束240における副用毛割合は、毛束30における副用毛割合と同様である。
本実施形態における「副用毛の本数」は、第一の副用毛244と第二の副用毛246との合計である。
【0057】
1つの毛束当たりの第一の副用毛244と第二の副用毛246との比率(第一の副用毛の本数/第二の副用毛の本数)は、特に限定されないが、例えば、1〜3が好ましく、1.5〜2.5がより好ましい。上記範囲内であれば、毛束がよりしなやかに撓み、柔らかい当たり心地とフィット感とをより高められる。
【0058】
本実施形態の歯ブラシによれば、毛束は、先端面に向かうに従い段階的に用毛の本数が少なくなっているため、基端から先端にかけて徐々に毛腰が弱くなり、自然なしなり感を発揮できる。
【0059】
(その他の実施形態)
本発明は上述の実施形態に限定されるものではない。
例えば、第一〜第三の実施形態では、毛束が千鳥状に配置されているが、本発明はこれに限定されず、例えば、毛束が、いわゆる格子状(碁盤目状)に配置されていてもよい。
【0060】
第一〜第三の実施形態では、全ての毛束が略真円柱状とされているが、本発明はこれに限定されず、毛束が楕円柱状であってもよいし、三角柱状、四角柱状等の多角柱状であってもよいし、これらが組み合わせられたものであってもよい。
【0061】
第一〜第三の実施形態では、3列の毛束列が形成されているが、本発明はこれに限定されず、例えば、2列であってもよいし、4列以上であってもよい。
【0062】
第一〜第三の実施形態では、6つの毛束によって中央毛束列が形成されているが、本発明はこれに限定されず、中央毛束列を形成する毛束は5つ以下であってもよいし、7つ以上であってもよい。
第一〜第三の実施形態では、5つの毛束によって外側毛束列が形成されているが、本発明はこれに限定されず、外側毛束列を形成する毛束は4つ以下であってもよいし、6つ以上であってもよい。
【0063】
第一及び第三の実施形態では、全ての毛束が正用毛と副用毛とで構成されているが、本発明はこれに限定されず、正用毛と副用毛とで構成された毛束が、一部にのみ植毛されていてもよい。
【0064】
第二の実施形態では、中央毛束列を形成する毛束が、正用毛のみで構成されているが、本発明はこれに限定されず、中央毛束列を形成する毛束は、副用毛を有していてもよい。あるいは、中央毛束列を形成する毛束が副用毛を有し、外側毛束列を形成する毛束が正用毛のみで構成されていてもよい。
【0065】
第三の実施形態では、1つの毛束が2種の長さの副用毛を有しているが、本発明はこれに限定されず、1つの毛束が3種以上の長さの副用毛を有していてもよい。
【0066】
なお、本発明の歯ブラシの毛束は、正用毛より短く、かつ植毛面から先端面までの長さの90%超の長さの用毛を有していてもよい。
【実施例】
【0067】
以下、実施例を示して本発明を詳細に説明するが、本発明は以下の記載によって限定されるものではない。表中、用毛種類の「S」はストレート毛を示し、「T」はテーパー毛を示す。
【0068】
(実施例1)
表1の仕様に従い、
図4の歯ブラシ100と同様の歯ブラシを得た。この歯ブラシは、植毛穴同士の距離が0.6mmとされ、毛束の先端面を連ねた面(ブラシ面)が、ヘッド部の幅方向中央に向かうに従い膨出する曲面(ドーム状)とされたものである。
中央毛束列を形成する毛束は、ヘッド部幅方向両側の長さが10.5mm、中央部の長さが12mmとされたものである。外側毛束列を構成する毛束は、ヘッド部側縁の側の長さが9mm、ヘッド部中央の側の長さが10.5mmとされたものである。
本例の歯ブラシは、外側毛束列を形成する毛束にシャギーカットを施し、該毛束の副用毛割合が20%とされたものである。
得られた歯ブラシについて、フィット感、当たり心地及び清掃実感を評価し、その結果を表1に示す。
【0069】
(実施例2)
表1の仕様に従い、
図5の歯ブラシ200と同様の歯ブラシを得た。この歯ブラシは、植毛穴同士の距離が0.6mmとされ、ブラシ面がドーム状とされたものである。
中央毛束列を形成する毛束は、ヘッド部の幅方向両側の長さが10.5mm、中央部の長さが12mmとされたものである。外側毛束列を構成する毛束は、ヘッド部側縁の側の長さが9mm、ヘッド部中央の側の長さが10.5mmとされたものである。
本例の歯ブラシは、中央毛束列を形成する毛束及び外側毛束列を形成する毛束に、植毛面から6mmの位置及び植毛面から10mmの位置でシャギーカットを施し、該毛束の副用毛割合が45%とされたものである。なお、1つの毛束は、6mmの副用毛を15%(本数基準)、10mmの副用毛を30%(本数基準)有するものである。
得られた歯ブラシについて、フィット感、当たり心地及び清掃実感を評価し、その結果を表1に示す。
【0070】
(実施例3)
中央毛束列の用毛をテーパー毛とした以外は、実施例1と同様にして歯ブラシを得た。得られた歯ブラシについて、フィット感、当たり心地及び清掃実感を評価し、その結果を表1に示す。
【0071】
(実施例4)
外側毛束列を形成する毛束に、植毛面から7〜10mmの位置でランダムにシャギーカットを施した以外は、実施例1と同様にして歯ブラシを得た。得られた歯ブラシについて、フィット感、当たり心地及び清掃実感を評価し、その結果を表1に示す。
【0072】
(実施例5)
副用毛割合を5%にした以外は、実施例1と同様にして歯ブラシを得た。得られた歯ブラシについて、フィット感、当たり心地及び清掃実感を評価し、その結果を表1に示す。
【0073】
(実施例6)
副用毛割合を50%にした以外は、実施例1と同様にして歯ブラシを得た。得られた歯ブラシについて、フィット感、当たり心地及び清掃実感を評価し、その結果を表1に示す。
【0074】
(実施例7)
表1の仕様に従い、
図1の歯ブラシ1と同様の歯ブラシを得た。この歯ブラシは、中央毛束列を形成する毛束及び外側毛束列を形成する毛束が、植毛面に略平行な先端面とされ、ブラシ面が略面一の平面状とされたものである。
本例の歯ブラシは、外側毛束列を形成する毛束にシャギーカットを施し、該毛束の副用毛割合が20%とされ、中央毛束列を形成する毛束が全て正用毛で構成されたものである。また、植毛穴同士の距離は、0.6mmとされている。
得られた歯ブラシについて、フィット感、当たり心地及び清掃実感を評価し、その結果を表1に示す。
【0075】
(実施例8)
表2の仕様に従い、
図6の歯ブラシ300と同様の歯ブラシを得た。この歯ブラシ300は、毛束群330が軸線O1方向に2つ並べられたものである。毛束群330は、第一の毛束331を中心として6個の第二の毛束332が環状配置されたものである。第一の毛束331の先端面は、先端に向かうに従い膨出する曲面とされ、第二の毛束332の先端面は、第一の毛束331に近づくに従い高くなる形状とされている。こうして、毛束群330の先端面は、第一の毛束331の先端に向かうに従い膨出する曲面(ドーム形状)とされている。
また、毛束群330同士が最も接近する位置の両側には、第三の毛束333が設けられており、第三の毛束333は、第二の毛束332の中で最も短い正用毛と同等の長さとされている。即ち、歯ブラシ300は、毛束の先端面を連ねた面が、全体として、2つのドーム形状を有するものである。
本例においては、植毛穴間の距離が0.6mmとされ、第一の毛束331は、中央部の長さが12mm、周縁の長さが10.5mmとされている。第二の毛束332は、第一の毛束331に近接する部分の長さが10.5mm、毛束群330の周縁に位置する部分の長さが9mmとされ、植毛面20から8mmの位置でシャギーカットが施され、副用毛割合が20%とされたものである。第三の毛束333は、長さが9mmとされ、植毛面20から8mmの位置でシャギーカットが施され、副用毛割合が20%とされたものである。
得られた歯ブラシについて、フィット感、当たり心地及び清掃実感を評価し、その結果を表2に示す。
【0076】
(比較例1)
表1の仕様に従い、
図7の歯ブラシ900と同様の歯ブラシを得た。この歯ブラシは、植毛穴同士の距離が0.6mmとされ、ブラシ面が、ヘッド部幅方向の中央に向かい段階的に突出する形状(段差状)とされたものである。
中央毛束列を形成する毛束930は、長さ12mmである。外側毛束列を構成する毛束940は、毛束の端部を1mmずらして折り曲げ、平線式植毛で植毛したものであり、ヘッド部側縁の側の用毛944の長さが9mm、ヘッド部中央の側の用毛942の長さが10mmとされたものである。
得られた歯ブラシについて、フィット感、当たり心地及び清掃実感を評価し、その結果を表1に示す。
【0077】
(比較例2)
外側毛束列を形成する毛束にシャギーカットを施さなかった以外は、実施例1と同様にして歯ブラシを得た。
得られた歯ブラシについて、フィット感、当たり心地及び清掃実感を評価し、その結果を表1に示す。
【0078】
(評価方法)
<フィット感>
モニター10人が各例の歯ブラシを使用し、下記の評価基準にて、狭小部へのフィット感を評価した。モニター10人の平均点が2.5点以上を「◎」、平均点2.0点以上2.5点未満を「○」、平均点1.5点以上2.0点未満を「△」、平均点1.5点未満を「×」とした。
【0079】
≪評価基準≫
3点:口腔内の凹凸に合わせ、毛束が適度な弾力で当接する感触を非常に感じる。
2点:口腔内の凹凸に合わせ、毛束が適度な弾力で当接する感触を感じる。
1点:口腔内の凹凸に合わせ、毛束が適度な弾力で当接する感触をあまり感じない。
0点:口腔内の凹凸に合わせ、毛束が適度な弾力で当接する感触を感じない。
【0080】
<当たり心地>
モニター10人が各例の歯ブラシを使用し、歯茎への当たり心地を下記の評価基準にて評価した。モニター10人の平均点が2.5点以上を「◎」、平均点2.0点以上2.5点未満を「○」、平均点1.5点以上2.0点未満を「△」、平均点1.5点未満を「×」とした。
【0081】
≪評価基準≫
3点:歯茎の痛みがなく、当たり心地が非常に柔らかい。
2点:歯茎の痛みがなく、当たり心地が柔らかい。
1点:歯茎に弱い痛みを感じる。
0点:歯茎に強い痛みを感じる。
【0082】
<清掃実感>
モニター10人が各例の歯ブラシを使用し、歯牙と歯茎との隙間の清掃実感を下記評価基準にて評価した。モニター10人の平均点が2.5点以上を「◎」、平均点2.0点以上2.5点未満を「○」、平均点1.5点以上2.0点未満を「△」、平均点1.5点未満を「×」とした。
【0083】
≪評価基準≫
3点:歯牙と歯茎との隙間の汚れが落ちた感触を非常に感じる。
2点:歯牙と歯茎との隙間の汚れが落ちた感触を感じる。
1点:歯牙と歯茎との隙間の汚れが落ちた感触をあまり感じない。
0点:歯牙と歯茎との隙間の汚れが落ちた感触を感じない。
【0084】
【表1】
【0085】
【表2】
【0086】
表1〜2に示すように、本発明を適用した実施例1〜8は、フィット感及び当たり心地の評価が「○」又は「◎」であった。中でも、2種以上の長さの副用毛を有する毛束が用いられた実施例2及び4は、当たり心地に優れるものであった。また、中央毛束列の毛束がテーパー毛で構成された実施例3は、清掃実感に優れるものであった。これは、テーパー毛を採用したことで、中央毛束列の毛束の先端部近傍において、用毛の動きの自由度がさらに高まり、先端が先鋭化されたテーパー毛が狭小部により侵入しやすくなったためと考えられる。
一方、ブラシ面を段差形状とした比較例1は、当たり心地の評価が「△」であった。また、副用毛を有しない毛束のみを用いた比較例2は、当たり心地の評価及び清掃実感の評価が「×」であった。
これらの結果から、本発明を適用した歯ブラシは、良好なフィット感と柔らかい当たり心地とを両立できることが判った。