(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
構造物の仕切り部に設けられた区画の貫通孔と、前記貫通孔に挿通された配管類と、の隙間に沿って、熱膨張性耐火シート本体と弾性突起部とを有する熱膨張性耐火シートを、前記弾性突起部が前記熱膨張性耐火シート本体の外周面側となる様に前記熱膨張性耐火シートを曲げて、貫通孔内部に挿入する工程と、
前記熱膨張性耐火シート本体の外周面に設置された弾性突起部を、前記貫通孔の外側に突き出させ、
前記熱膨張性耐火シート本体の外周面に設置された弾性突起部を、前記貫通孔の外側に掛ける工程と、
熱膨張性耐火シート本体と弾性突起部とを有する熱膨張性耐火シートを、前記配管類の外周に沿って螺旋状に巻き、前記熱膨張性耐火シート同士が互いに重なる部分を形成する工程と、
を少なくとも有する、防火区画貫通部構造の施工方法。
【背景技術】
【0002】
建築物、船舶等の構造物の仕切り部の一方で火災が発生した場合でも、炎や煙等が他方へ広がることを防ぐために、建築物等の仕切部には通常区画が設けられている。
この建築物内部に配管類を設置する場合には、この区画を貫通する孔を設け、この貫通孔に配管類を挿通する必要がある。
しかしながら単に配管類を前記貫通孔に挿通させただけでは火災等の発生時に前記貫通孔を伝わって、炎や煙等が区画の一方から他方へ拡散する問題がある。
このため前記貫通孔と配管類との隙間を閉塞させることが必要になる。
しかし前記貫通孔を挿通する配管類は一つとは限らず、前記貫通孔に複数の配管類が挿通している場合もある。
前記貫通孔に複数の配管類が挿通している場合には、配管類の外面と貫通孔の内面とにより形成される隙間の形状が複雑になる。
加えて前記貫通孔の形状、大きさ等、前記配管類の数、形状、大きさ等は構造物に設置される防火区画貫通部構造毎に異なるのが通常である。
この様に前記貫通孔と配管類とにより形成される複雑な形状の隙間をどの様に閉塞させるのかが問題となる。
【0003】
この問題に対応するためにこれまで様々な構造が提案されている。
図37は従来の防火区画貫通部構造300を示す模式斜視図である。
図33〜36は従来の防火区画貫通部構造300の構成要素を説明するための模式図である。
ここで
図33は、区画50に設けられた貫通孔51、配管類52および金属枠53のそれぞれの位置関係について説明するための模式斜視図である。
図33に示される様に、区画50に設けられた貫通孔51に複数の配管類52を挿通させ、前記貫通孔51内部に金属枠53を設置する。
前記区画50はコンクリートにより形成されていて、前記金属枠53はコンクリートタッピングビスによりコンクリートからなる前記区画50に固定される。
【0004】
図34は従来の防火区画貫通部構造300に使用する金属枠を説明するための模式平面図である。
図34に示される様に、前記金属枠53は、四角筒状の本体の底の部分に、金属枠53の内側に張り出した底面支持部54を有し、側面の部分に、金属枠53の外側に張り出した側面支持部55を有する。
前記底面支持部54および側面支持部55は、前記区画50の表面と平行に形成されている。
【0005】
図35は従来の防火区画貫通部構造300に使用する底部閉塞用部材を説明するための模式斜視図である。
図35に示される様に、前記底部閉塞用部材56は略U字形部材57,57を組み合わせて形成される。
金属板部材58は、円形部材59と、略U字形部材57,57とが組み合わされた一枚の金属板である。前記金属板部材58に含まれる円形部材59と、略U字形部材57,57とのそれぞれの境界は薄く切削されていて、前記金属板部材58を折り曲げると、円形部材59から略U字形部材57,57がそれぞれ分離する構造となっている。
【0006】
図36は従来の防火区画貫通部構造300に使用する底部閉塞用部材を貫通孔51に設置した状態を説明するための模式平面図である。
区画50の貫通孔51を挿通する配管類52毎に、前記略U字形部材57,57を金属枠53内部に挿入する。
そして前記配管類52毎に、前記金属枠53の底部支持部54に対して前記底部閉塞用部材56を設置する。
【0007】
図37は従来の防火区画貫通部構造300を説明するための模式斜視図である。
図37に示される様に、前記配管類52の外面、金属枠53の内面および底部閉塞用部材56の上面により囲まれる空間の内部に耐火パテ60が設置されている。
前記耐火パテ60は、市販の工作学習用粘土と略同様の硬さ、重量を有するものである。この耐火パテ60を、前前記配管類52の外面、金属枠53の内面および底部閉塞用部材56の上面により囲まれる空間の内部に充填することにより、従来の防火区画貫通部構造300が得られる。
【0008】
この従来の防火区画貫通部構造300は、前記貫通孔51と配管類52とにより形成される隙間が複雑な形状であってもその隙間を閉塞できる利点がある(特許文献1等)。
【0009】
従来の防火区画貫通部構造300は、複雑な形状の隙間に対して施工することができる反面、貫通孔51の形状によっては前記金属枠53を設置できない場合がある。
図38は従来の防火区画に使用される保護枠材が設置された貫通孔を説明するための模式斜視図である。
図38に示される様に、コンクリートにより形成されている区画50の貫通孔51に保護枠材600が設置されている。
前記保護枠材600は鋼鉄製のスリーブであり、区画50の表面に溜まった雨水等が前記貫通孔51を通じて下階へ流れ落ちることを防いでいる。
この様に前記貫通孔51に前記保護枠材600等が前記貫通孔51に設置されている場合には、前記保護枠材600が障害となり前記貫通孔51に前記金属枠53を設置することができない。
図38に示される様に前記保護枠材600等が前記貫通孔51に設置されている場合には、前記保護枠材600等を切断して除去しなければならない等、従来の防火区画貫通部構造300は施工が煩雑になる問題があった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
上記の問題に加えて従来の防火区画貫通部構造300の場合は、前記貫通孔51の形状に合わせた金属枠53を準備し、前記貫通孔51内面と前記配管類52との隙間と同じ体積の耐火パテ60を準備しなければならない問題がある。
前記貫通孔51内面と前記配管類52との隙間の体積が大きい場合には耐火パテ60を多量に準備しなければならないこと、施工現場が高層住宅等の場合には多量の前記耐火パテ60を各階に運び上げる作業が必要があった。
さらに前記貫通孔51内面と前記配管類52との隙間に前記耐火パテ60を充填する作業は容易ではなく、施工者の技能に依存して時間が掛る問題もあった。
【0012】
本発明の目的は、比較的軽量な素材を用いて、区画に設けられた貫通孔を挿通する配管類の外面と、前記区画の貫通孔の内面との隙間を簡単に閉塞できる構造の防火区画貫通部構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
前記課題を解決するため本発明者らが鋭意検討した結果、構造物の仕切り部に設けられた区画の貫通孔を挿通する配管類と貫通孔との隙間に、弾性突起部を有する熱膨張性耐火シートが挿入され、前記弾性突起部が貫通孔の外側に突き出て、貫通孔の外側に掛かっている防火区画貫通部構造が、本発明の目的に適うことを見出し、本発明を完成するに至った。
【0014】
すなわち本発明は、
[1]構造物の仕切り部に設けられた区画の貫通孔に挿通された配管類と、
前記貫通孔と前記配管類との隙間に沿って設置された、熱膨張性耐火シート本体と弾性突起部とを有する熱膨張性耐火シートと、を少なくとも備え、
前記熱膨張性耐火シートの弾性突起部が、前記熱膨張性耐火シート本体の外周面に設置され、
前記熱膨張性耐火シートの弾性突起部が、前記貫通孔の外側に突き出て、前記貫通孔の外側に掛っている
防火区画貫通部構造であって、
前記熱膨張性耐火シートが、熱膨張性耐火シート本体と、第一の弾性突起部と、第二の弾性突起部と、を備え、
前記貫通孔の一方の外側にある前記熱膨張性耐火シート本体が、前記第一の弾性突起部を備え、
前記第一の弾性突起部が、前記貫通孔の一方の外側に掛り、
前記貫通孔の他方の外側にある前記熱膨張性耐火シート本体が、前記第二の弾性突起部を備え、
前記第二の弾性突起部が、前記貫通孔の他方の外側に掛り、
前記貫通孔の内側にある前記熱膨張性耐火シート本体が、前記貫通孔の内面に接している、防火区画貫通部構造を提供するものである。
【0016】
すなわち本発明は、
[
2]
構造物の仕切り部に設けられた区画の貫通孔に挿通された配管類と、
前記貫通孔と前記配管類との隙間に沿って設置された、熱膨張性耐火シート本体と弾性突起部とを有する熱膨張性耐火シートと、を少なくとも備え、
前記熱膨張性耐火シートの弾性突起部が、前記熱膨張性耐火シート本体の外周面に設置され、
前記熱膨張性耐火シートの弾性突起部が、前記貫通孔の外側に突き出て、前記貫通孔の外側に掛っている防火区画貫通部構造であって、
構造物の仕切り部に設けられた区画の貫通孔に挿通された配管類と、
前記貫通孔と前記配管類との隙間に沿って設置された、熱膨張性耐火シート本体と弾性突起部とを有する熱膨張性耐火シートと、の間に、
熱膨張性耐火シート本体と弾性突起部とを有する第二の熱膨張性耐火シートが設置されている、
防火区画貫通部構造を提供するものである。
【0017】
また本発明の一つは、
[
3]前記熱膨張性耐火シートの熱膨張性耐火シート本体および前記第二の熱膨張性耐火シートの熱膨張性耐火シート本体の少なくとも一方が、
熱膨張性樹脂組成物層、無機繊維層、金属箔層および不燃性断熱層からなる群より選ばれる少なくとも一つを含む、上記
[1]または[2]のいずれかに記載の防火区画貫通部構造を提供するものである。
【0018】
また本発明の一つは、
[
4]を構造物の仕切り部に設けられた区画の貫通孔の内部に挿入された、開口部を有する貫通孔閉塞部材と、
前記貫通孔閉塞部材の開口部を挿通する配管類と、
前記貫通孔閉塞部材の開口部と前記配管類との隙間に沿って設置された、熱膨張性耐火シート本体と弾性突起部とを有する熱膨張性耐火シートと、を少なくとも備え、
前記熱膨張性耐火シートの弾性突起部が、前記熱膨張性耐火シート本体の外周面に設置され、
前記熱膨張性耐火シートの弾性突起部が、前記貫通孔閉塞部材の開口部の外側に突き出て、前記貫通孔閉塞部材の開口部の外側に掛っている、
防火区画貫通部構造提供するものである。
【0019】
また本発明の一つは、
[
5]貫通孔閉塞部材支持部材が、前記構造物の仕切り部に設けられた区画の貫通孔に設置され、
前記開口部を有する貫通孔閉塞部材が、前記貫通孔閉塞部材支持部材に支持されている、上記[
4]に記載の防火区画貫通部構造を提供するものである。
【0020】
また本発明の一つは、
[
6]前記貫通孔閉塞部材が、無機繊維を成形してなる二以上の開口部を有するものであって、
前記開口部の形状に略合致する柱状無機繊維部材が、前記貫通孔閉塞部材の開口部のうち、前記配管類が挿通していない開口部に設置されている、上記
[4]または[5]のいずれかに記載の防火区画貫通部構造を提供するものである。
【0021】
また本発明の一つは、
[
7]
構造物の仕切り部に設けられた区画の貫通孔に挿通された配管類と、
前記貫通孔と前記配管類との隙間に沿って設置された、熱膨張性耐火シート本体と弾性突起部とを有する熱膨張性耐火シートと、を少なくとも備え、
前記熱膨張性耐火シートの弾性突起部が、前記熱膨張性耐火シート本体の外周面に設置され、
前記熱膨張性耐火シートの弾性突起部が、前記貫通孔の外側に突き出て、前記貫通孔の外側に掛っている防火区画貫通部構造であって、
保護枠材が、前記構造物の仕切り部に設けられた区画の貫通孔および前記貫通孔閉塞部材の開口部の少なくとも一方に設置され、
前記熱膨張性耐火シートが、前記貫通孔および前記貫通孔閉塞部材の開口部の少なくとも一方に設置され、
前記熱膨張性耐火シートの弾性突起部が、前記貫通孔の外側および前記貫通孔閉塞部材の開口部の外側の少なくとも一方に突き出ていて、
前記熱膨張性耐火シートの弾性突起部が、前記貫通孔の外側および前記貫通孔閉塞部材の開口部の外側の少なくとも一方に、前記保護枠材を介して掛っている、
防火区画貫通部構造を提供するものである。
【0022】
また本発明の一つは、
[
8]前記貫通孔閉塞部材支持部材が、前記貫通孔および前記貫通孔閉塞部材の開口部の少なくとも一方に、前記保護枠材を介して設置されている、上記[
7]に記載の防火区画貫通部構造を提供するものである。
【0023】
また本発明の一つは、
[
9]構造物の仕切り部に設けられた区画の貫通孔と、前記貫通孔に挿通された配管類と、の隙間に沿って、熱膨張性耐火シート本体と弾性突起部とを有する熱膨張性耐火シートを、前記弾性突起部が前記熱膨張性耐火シート本体の外周面側となる様に前記熱膨張性耐火シートを曲げて、貫通孔内部に挿入する工程と、
前記熱膨張性耐火シート本体の外周面に設置された弾性突起部を、前記貫通孔の外側に突き出させ、
前記熱膨張性耐火シート本体の外周面に設置された弾性突起部を、前記貫通孔の外側に掛ける工程と、
熱膨張性耐火シート本体と弾性突起部とを有する熱膨張性耐火シートを、前記配管類の外周に沿って螺旋状に巻き、前記熱膨張性耐火シート同士が互いに重なる部分を形成する工程と、
を少なくとも有する、
防火区画貫通部構造の施工方法を提供するものである。
【0025】
また本発明の一つは、
[
10]
構造物の仕切り部に設けられた区画の貫通孔と、前記貫通孔に挿通された配管類と、の隙間に沿って、熱膨張性耐火シート本体と弾性突起部とを有する熱膨張性耐火シートを、前記弾性突起部が前記熱膨張性耐火シート本体の外周面側となる様に前記熱膨張性耐火シートを曲げて、貫通孔内部に挿入する工程と、
前記熱膨張性耐火シート本体の外周面に設置された弾性突起部を、前記貫通孔の外側に突き出させ、
前記熱膨張性耐火シート本体の外周面に設置された弾性突起部を、前記貫通孔の外側に掛ける工程と、
構造物の仕切り部に設けられた区画の貫通孔に挿通された配管類と、
前記貫通孔と前記配管類との隙間に沿って挿入された熱膨張性耐火シートと、の間に、
熱膨張性耐火シート本体と弾性突起部とを有する第二の熱膨張性耐火シートを挿入する工程
と、
を少なくとも有する、防火区画貫通部構造の施工方法を提供するものである。
【0026】
また本発明の一つは、
[
11]
構造物の仕切り部に設けられた区画の貫通孔と、前記貫通孔に挿通された配管類と、の隙間に沿って、熱膨張性耐火シート本体と弾性突起部とを有する熱膨張性耐火シートを、前記弾性突起部が前記熱膨張性耐火シート本体の外周面側となる様に前記熱膨張性耐火シートを曲げて、貫通孔内部に挿入する工程と、
前記熱膨張性耐火シート本体の外周面に設置された弾性突起部を、前記貫通孔の外側に突き出させ、
前記熱膨張性耐火シート本体の外周面に設置された弾性突起部を、前記貫通孔の外側に掛ける工程と、
構造物の仕切り部に設けられた区画の貫通孔の内部に、開口部を有する貫通孔閉塞部材を挿入して、前記配管類を前記開口部に挿通させる工程と、
前記貫通孔閉塞部材の開口部と前記配管類との隙間に沿って、前記弾性突起部が前記熱膨張性耐火シート本体の外周面側となる様に前記熱膨張性耐火シートを曲げて、貫通孔内部に挿入する工程と、
前記熱膨張性耐火シート本体の外周面に設置された弾性突起部を、前記貫通孔閉塞部材の開口部の外側に突き出させ、
前記熱膨張性耐火シート本体の外周面に設置された弾性突起部を、前記貫通孔閉塞部材の開口部の外側に掛ける工程と、
を少なくとも有する、
防火区画貫通部構造の施工方法を提供するものである。
【0027】
また本発明の一つは、
[
12]貫通孔閉塞部材支持部材を、前記構造物の仕切り部に設けられた区画の貫通孔に設置する工程を有する、上記[
11]に記載の防火区画貫通部構造の施工方法を提供するものである。
【0028】
また本発明の一つは、
[
13]
構造物の仕切り部に設けられた区画の貫通孔と、前記貫通孔に挿通された配管類と、の隙間に沿って、熱膨張性耐火シート本体と弾性突起部とを有する熱膨張性耐火シートを、前記弾性突起部が前記熱膨張性耐火シート本体の外周面側となる様に前記熱膨張性耐火シートを曲げて、貫通孔内部に挿入する工程と、
前記熱膨張性耐火シート本体の外周面に設置された弾性突起部を、前記貫通孔の外側に突き出させ、
前記熱膨張性耐火シート本体の外周面に設置された弾性突起部を、前記貫通孔の外側に掛ける工程と、
保護枠材が、前記構造物の仕切り部に設けられた区画の貫通孔および前記貫通孔閉塞部材の開口部の少なくとも一方に設置された防火区画貫通部構造の施工方法であって、
前記熱膨張性耐火シート本体の外周面に設置された弾性突起部を、前記保護枠材を介して前記貫通孔の外側に掛ける工程、
および、
前記熱膨張性耐火シート本体の外周面に設置された弾性突起部を、前記保護枠材を介して前記貫通孔閉塞部材の開口部の外側に掛ける工程、
との少なくとも一方を有する、
防火区画貫通部構造の施工方法を提供するものである。
【0029】
また本発明の一つは、
[
14]前記貫通孔閉塞部材支持部材を、前記保護枠材を介して前記貫通孔に設置する工程を有する、上記[
13]に記載の防火区画貫通部構造の施工方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0030】
本発明の防火区画貫通部構造は、熱膨張性耐火シート本体と弾性突起部とを有する熱膨張性耐火シートを、前記貫通孔と前記配管類との隙間に沿って設置することにより得られる。
この様に本発明の防火区画貫通部構造の場合は、比較的軽量な素材を用いて、区画に設けられた貫通孔を挿通する配管類の外面と、前記区画の内面との隙間を簡単に閉塞することができる。
また防火区画貫通部構造に使用する熱膨張性耐火シートは弾性突起部を有する。この弾性突起部を、区画の貫通孔の外側に突き出させ、前記弾性突起部を区画の貫通孔の外側、すなわち区画の外側表面に掛けることができる。
【0031】
本発明の防火区画貫通部構造に貫通孔閉塞部材を使用した場合には、弾性突起部を有する熱膨張性耐火シートを前記貫通孔閉塞部材の開口部に挿通させることができる。そして熱膨張性耐火シートに含まれる弾性突起部を貫通孔閉塞部材の開口部の外側に突き出させ、前記弾性突起部を貫通孔閉塞部材の開口部の外側、すなわち貫通孔閉塞部材の外側表面に掛けることができる。
この様に本発明に使用する熱膨張性耐火シートの弾性突起部を貫通孔の外側または貫通孔閉塞部材の開口部の外側に掛けることがでることから、前記熱膨張性耐火シートを貫通孔または貫通孔閉塞部材に簡単に設置することができる。
【0032】
また本発明の防火区画貫通部構造は、熱膨張性耐火シートに含まれる熱膨張性耐火シート本体が、前記貫通孔の外側または前記貫通孔閉塞部材の開口部の外側に突き出している。
本発明の防火区画貫通部構造が火災等の熱にさらされた場合には、前記熱膨張性耐火シート本体が膨張して熱膨張残渣を形成する。この熱膨張残渣が前記貫通孔の内部または前記貫通孔閉塞部材の開口部の内部はもちろんのこと、前記貫通孔の外部または前記貫通孔閉塞部材の開口部の外部をも閉塞する。
このため本発明の防火区画貫通部構造は耐火性に優れる。
【0033】
また本発明の防火区画貫通部構造は、熱膨張性耐火シートに含まれる熱膨張性耐火シート本体が、前記貫通孔の外側または前記貫通孔閉塞部材の開口部の外側に突き出している。
このため前記貫通孔または前記開口部から外側に突き出している熱膨張性耐火シート本体は火災等の熱により熱膨張残渣を形成する。
前記貫通孔または前記開口部から外側に突き出している熱膨張性耐火シート本体部分が存在しない場合には、例えば配管類として金属管等が使用されている場合には、この金属管等を通じて火災が発生した一方の区画から他方の区画へ熱が伝わる場合がある。
これに対し本発明の防火区画貫通部構造の場合は、前記貫通孔または前記開口部から外側に突き出している熱膨張性耐火シート本体により形成される熱膨張残渣が遮熱層として機能する。
前記貫通孔または前記開口部から外側に突き出して形成される熱膨張残渣が存在するため、本発明の防火区画貫通部構造は遮熱性にも優れる。
【0034】
また熱膨張性耐火シート本体と弾性突起部とを有する熱膨張性耐火シートを、前記貫通孔と前記配管類との隙間に沿って設置した後に、前記熱膨張性耐火シートと前記配管類との間に隙間が生じる場合がある。
この場合には、熱膨張性耐火シート本体と弾性突起部とを有する第二の熱膨張性耐火シートを前記隙間に挿入することにより前記隙間を簡単に閉塞することができる。
この関係は前記貫通孔閉塞部材を使用した場合も同様であり、前記熱膨張性耐火シートと前記貫通孔閉塞部材との隙間を、熱膨張性耐火シート本体と弾性突起部とを有する第二の熱膨張性耐火シートを使用して容易に閉塞することができる。
【0035】
加えて本発明の防火区画貫通部構造の場合は、区画の貫通孔にスリーブ等の保護枠材が設置されている場合でも、前記保護枠材を撤去することなく前記防火区画貫通部構造を施工することができる。このため保護枠材を備えた貫通孔に対しても容易に施工することができる。
【0036】
上記に説明した通り、本発明の防火区画貫通部構造は簡単に施工することができる。このため施工現場で実際に作業を行う施工者の技能に依存することなく施工することができ、単位時間当たりの施工生産性に優れる。
【発明を実施するための形態】
【0038】
最初に本発明に使用する配管類と、区画との関係を説明する。
図1は、本発明に使用する配管類と、区画との関係を説明するための模式断面図である。
図1は、戸建住宅、集合住宅、高層ビル等の建築物、客船、輸送船等の船舶等の構造物に使用される区画のうち、床、天井等の地面に対し水平の区画1に設けられた貫通孔2を挿通する配管類3a,3b,3cを例示したものである。
【0039】
図1の場合は、配管類3a,3b,3cが区画1の貫通孔2を垂直に挿通している。
前記配管類3a,3b,3cは、前記貫通孔2の内面と前記配管類3の外面との間に所定間隔をあけて、前記貫通孔2を挿通している。
前記所定間隔の大きさに限定はなく、防火区画貫通部構造の目的、用途に応じて適宜選択することができる。
【0040】
また前記配管類3a,3b,3cはいずれも貫通孔2の中心を挿通する必要はなく、前記貫通孔2内部の任意の位置を挿通することができる。
【0041】
図1に例示される配管類3a,3b,3cとしては、例えば、それぞれ独立に冷媒管、水道管、下水管、注排水管、燃料移送管、油圧配管等の液体移送用管類、ガス管、暖冷房用媒体移送管、通気管等の気体移送用管類、電線ケーブル、光ファイバーケーブル、船舶用ケーブル等のケーブル類等、またこれらの液体移送用管類、気体移送用管類、ケーブル類等を内部に挿通させるためのスリーブ等が挙げられる。
これらの中でも施工性の観点から冷媒管、熱媒管、水道管、下水管、注排水管、ガス管、燃料移送管、油圧配管等の液体移送用管類が好ましく、冷媒管、熱媒管、ガス管等であればさらに好ましい。
【0042】
前記配管類3a,3b,3cは、それぞれ独立に液体移送用管類、気体移送用管類、ケーブル類、スリーブ等の一種もしくは二種以上を使用することができる。
【0043】
前記配管類3a,3b,3cの形状については特に限定はないが、例えば、前記配管類3a,3b,3cの長軸方向に対し垂直方向の断面形状がそれぞれ独立に三角形、四角形等の多角形、長方形等の互いの辺の長さが異なる形状、平行四辺形等の互いの内角が異なる形状、楕円形、円形等の形状が挙げられる。
これらの中でも、断面形状が円形、四角形等であるものが施工性に優れることから好ましい。
【0044】
前記配管類3a,3b,3cの断面形状の大きさは、それぞれの断面形状の重心から断面形状の外郭線までの距離が最も大きい辺の長さを基準として、通常、1〜1000mmの範囲であり、好ましくは5〜750mmの範囲である。
【0045】
前記配管類3a,3b,3cが液体移送用管類、気体移送用管類、ケーブル類等の場合には、通常0.5mm〜10cmの範囲であり、好ましくは1mm〜5cmの範囲である。
また前記配管類3a,3b,3cがスリーブの場合には、通常10〜1000mmの範囲であり、好ましくは50〜750mmの範囲である。
【0046】
前記配管類3a,3b,3cの素材については、特に限定はないが、例えば、金属材料、無機材料、有機材料等の一種もしくは二種以上からなるものを挙げることができる。
【0047】
前記金属材料としては、例えば、鉄、鋼、ステンレス、銅、二以上の金属を含む合金等を挙げることができる。
【0048】
また無機材料としては、例えば、ガラス、セラミック、ロックウール、セラミックウール、シリカアルミナ繊維、アルミナ繊維、シリカ繊維、ジルコニア繊維、セラミックブランケット等を挙げることができる。
【0049】
また有機材料としては、例えば、ポリ塩化ビニル樹脂、ABS樹脂、フッ化ビニリデン樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂等の合成樹脂等を挙げることができる。
前記素材は一種もしくは二種以上を使用することができる。
【0050】
本発明に使用する配管類3a,3b,3cはそれぞれ独立に、前記金属材料管、無機材料管および有機材料管等の一種以上から形成されているが、前記金属材料管、無機材料管および有機材料管等の二種以上を内筒や外筒に使用した積層管として使用することもできる。
【0051】
図1に示される配管類3a,3b,3cは例示であり、本発明に使用する配管類は一または二以上を自由に使用することができる。
【0052】
次に本発明に使用する区画について説明する。
前記区画1に限定はないが、一例を挙げるとすれば建築物の壁、間仕切り壁、床、天井等、船舶の防火区画や船室に設けられた鋼板等が挙げられる。
これらの区画1に貫通孔2を設けることにより、前記貫通孔2に前記配管類3a,3b,3cを挿通させることができる。
【0053】
本発明に使用する前記区画1の具体例としては、例えば、コンクリートスラブ、RC壁、ALC壁、RW壁、レンガ、中空壁等を挙げることができる。
前記中空壁はその内部に空間を有するものであればよく、特に限定はないが、例えば柱部材と耐熱パネル等を含むものが挙げられる。
具体的には、例えば、木桟、金属フレーム、鉄筋コンクリート製の柱、鋼材からなる鉄骨等の少なくとも一つのスタッドに対して一又は二以上の耐熱パネル等を両側から固定した構造のもの等を挙げることができる。
【0054】
前記区画1に使用される前記耐熱パネルとしては、例えば、セメント系パネル、無機セラミック系パネル等が挙げられる。
前記セメント系パネルとしては、例えば、硬質木片セメント板、無機繊維含有スレート板、軽量気泡コンクリート板、モルタル板、プレキャストコンクリート板等が挙げられる。
前記無機セラミック系パネルとしては、例えば、石膏ボード、けい酸カルシウム板、炭酸カルシウム板、ミネラルウール板、窯業系板等が挙げられる。
【0055】
ここで前記石膏ボードとしては、具体的には焼石膏に鋸屑やパーライト等の軽量材を混入し、両面に厚紙を貼って成形したもので、例えば、普通石膏ボード(JIS A6901準拠:GB−R)、化粧石膏ボード(JIS A6911準拠:GB−D)、防水石膏ボード(JISA6912準拠:GB−S)、強化石膏ボード(JIS A6913準拠:GB−F)、吸音石膏ボード(JISA6301準拠:GB−P)等が挙げられる。
【0056】
前記耐熱パネル等は一種もしくは二種以上を使用することができる。
【0057】
次に本発明に使用する熱膨張性耐火シートについて説明する。
本発明に使用する熱膨張性耐火シートは、熱膨張性耐火シート本体と、弾性突起部とを有するものである。
前記熱膨張性耐火シート本体としては、例えば、熱膨張性樹脂組成物層、無機繊維層、金属箔層、不燃性断熱層等の一種もしくは二種以上を積層したもの等が挙げられる。
【0058】
前記熱膨張性樹脂組成物層としては、例えば、エポキシ樹脂やゴム等の樹脂成分、リン化合物、中和された熱膨張性黒鉛、無機充填材等を含有する熱膨張性樹脂組成物をシート状に成形してなるもの等を挙げることができる。
【0059】
前記熱膨張性樹脂組成物層の具体例としては、例えば積水化学工業社製フィブロック(登録商標。エポキシ樹脂やゴムを樹脂成分とし、リン化合物、熱膨張性黒鉛および無機充填材等を含む熱膨張性樹脂組成物のシート状成形物)、住友スリ―エム社のファイアバリア(クロロプレンゴムとバーキュライトを含有する樹脂組成物からなるシート材料、膨張率:3倍、熱伝導率:0.20kcal/m・h・℃)、三井金属塗料化学社のメジヒカット(ポリウレタン樹脂と熱膨張性黒鉛を含有する樹脂組成物からなるシート材料、膨張率:4倍、熱伝導率:0.21kcal/m・h・℃)等が挙げられる。
【0060】
前記熱膨張性樹脂組成物層は火災等の熱にさらされると膨張して熱膨張残渣を形成する。前記熱膨張残渣により火災等の炎、煙、熱等を遮断することができる。
前記熱膨張性樹脂組成物層は厚み方向に20倍以上膨張するものが好ましく、30倍以上膨張するものを使用することが好ましい。
また前記熱膨張残渣は支えることなく形状を維持できる強度を有することが、得られる防火区画貫通部構造の耐火性を維持する上で好ましい。
【0061】
また前記無機繊維層に使用する無機繊維としては、例えば、ロックウール、セラミックウール、シリカアルミナ繊維、アルミナ繊維、シリカ繊維、ジルコニア繊維、セラミックブランケット等が挙げられる。
【0062】
前記金属箔層に使用する金属箔としては、例えば、アルミニウム箔、銅箔、ステンレス箔、錫箔、鉛箔、錫鉛合金箔、クラッド箔、鉛アンチ箔等の金属箔等が挙げられる。
【0063】
前記不燃性断熱層としては、例えば、不燃性発泡体、無機繊維、無機耐火等の一種もしくは二種以上を組み合わせてなるもの等が挙げられる。。
前記不燃性発泡体としては、例えば、焼石膏粉末等の無機粉末とアルミニウム粉末等の金属粉末とを混合した後、フッ化水素酸を用いて反応させた無機金属系発泡体等、フッ化ポリオレフィン等の不燃性樹脂を発泡させてなる不燃性樹脂発泡体等が挙げられる。
前記無機繊維としては、例えば、ロックウール、セラミックウール、シリカアルミナ繊維、アルミナ繊維、シリカ繊維、ジルコニア繊維、セラミックブランケット等が挙げられる。
前記無機耐火材としては、例えば、セラミック体、ケイ酸カルシウム、石膏、パーライト等の粉体、破砕品等が挙げられる。
前記不燃性断熱層は、不燃性発泡体、無機繊維、無機耐火等の一種もしくは二種以上を合成樹脂、無機バインダー等により成形したもの等を使用することもできる。
【0064】
また前記弾性突起部は、弾性を有する素材から形成されているものであれば特に限定はないが、前記素材の一例を挙げて説明するとすれば、例えば、ポリエチレンフォーム、ポリプロピレンフォーム、ポリスチレンフォーム、ポリウレタンフォーム、シリコーンフォーム等の内部に気泡を有する合成樹脂フォーム、
天然ゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、1,2−ポリブタジエンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、クロロプレンゴム、ニトリルゴム、ブチルゴム、塩素化ブチルゴム、エチレン−プロピレンゴム、クロロスルホン化ポリエチレン、アクリルゴム、エピクロルヒドリンゴム、非加硫ゴム、シリコーンゴム、フッ素ゴム、ウレタンゴム等のゴム物質等が挙げられる。
前記弾性突起部は、配管類3a,3b,3c等に対する保温性から、内部に気泡を有する合成樹脂フォーム等から形成されているものを使用することが好ましい。
【0065】
前記弾性突起部の素材は一種もしくは二種以上を使用することができる。
【0066】
次に本発明に使用する熱膨張性耐火シートの実施形態について図面を参照しつつ説明する。
図2は本発明に使用する第一の実施形態に係る熱膨張性耐火シートを例示した模式斜視図である。
図2に例示される様に、第一の実施形態に係る熱膨張性耐火シート100は、熱膨張性耐火シート本体10aとして熱膨張性樹脂組成物からなる熱膨張性樹脂組成物層11が使用されている。またポリウレタンフォームからなる弾性突起部20aを有する。
前記熱膨張性樹脂組成物層11は厚さ1mmのものを使用した。前記熱膨張性樹脂組成物層11の厚さは使用する熱膨張性樹脂組成物層11の膨張率、熱膨張残渣により閉塞する貫通孔2の大きさにより適宜決定されるが、通常は0.5〜20mmの範囲である。
前記熱膨張性樹脂組成物層11の厚みが0.5mm以上の場合には前記貫通孔2の内面と、配管類3a,3b,3cとの隙間を熱膨張残渣により閉塞させることができる。
また前記熱膨張性樹脂組成物層11の厚みが20mm以下の場合には、前記貫通孔2の内部に容易に第一の実施形態に係る熱膨張性耐火シート100を設置することができる。
この関係は以下の場合も同様である。
【0067】
図2に例示した前記熱膨張性耐火シート本体10aの形状は長方形である。前記長方形の辺12は前記区画1の表面に対して垂直方向に配置される。また前記長方形の辺13は前記区画1に設置された貫通孔2の内面の内周方向に沿って配置される。
前記区画1の表面に対する垂直方向を基準として、前記長方形の辺12は前記区画1の厚みに70mmを加えたものである。
【0068】
前記熱膨張性耐火シート本体10aの辺12の長さは、前記区画1の厚みに通常10〜600mmを加えた長さの範囲であり、前記区画1の厚みに40〜200mmを加えたものであれば好ましい。
前記長方形の辺12の長さが前記区画1の厚みに10mmを加えた長さ以上の場合は前記貫通孔2への第一の実施形態に係る熱膨張性耐火シート100の設置が容易になる。
また前記長方形の辺12の長さが前記区画1の厚みに600mmを加えた長さ以下の場合は、第一の実施形態に係る熱膨張性耐火シート100を使用した防火区画貫通部構造が火災等の熱にさらされた場合には、前記熱膨張性耐火シート100が膨張して熱膨張残渣を形成して前記貫通孔から火災等の炎、煙、熱等が伝わることを効率よく防止することができる。
【0069】
また前記熱膨張性耐火シート本体10aの長方形の辺13は前記区画1の貫通孔2の内面の内周と略同じである。
なお前記熱膨張性耐火シート本体10aの長さが前記貫通孔2の内面の内周に比べて短いときは、別の第一の実施形態に係る熱膨張性耐火シート100を使用して足りない部分を補うことができる。
また前記熱膨張性耐火シート本体10aの長さが前記貫通孔2の内面の内周に比べて長いときは、前記弾性突起部20aの末端末端同士を重ね合わせて使用することができる。
【0070】
第一の実施形態に係る熱膨張性耐火シート100は、前記弾性突起部20aが前記熱膨張性耐火シート本体10aの辺12および辺13に沿って、前記弾性突起部20aが前記熱膨張性耐火シート本体10aの辺12の全てと、前記熱膨張性耐火シート本体10aの辺12方向の一部と、を覆う様に前記熱膨張性耐火シート本体10aに設置されている。
図2の第一の実施形態の場合は幅35mm、前記熱膨張性耐火シート本体10aの辺13方向に沿って、前記熱膨張性耐火シート本体10aの辺13と同じ長さ、および厚み10mmの大きさの直方体形状の前記弾性突起部20aが前記熱膨張性耐火シート本体10aに設置されている。
【0071】
辺12方向の前記弾性突起部20aの幅は、通常は5〜300mmの範囲であり、好ましくは20〜100mmの範囲である。
【0072】
辺13方向の前記弾性突起部20aの長さは、通常は前記貫通孔2の内面の内周と略同じとすることが取り扱い易くなることから好ましい。
前記弾性突起部20aの長さは、前記熱膨張性耐火シート本体10aの辺13の長さと同じであることが取り扱い性の面から好ましい。
また前記弾性突起部20aの厚みは、5〜300mmの範囲であり、好ましくは10〜100mmの範囲であり、より好ましくは15〜60mmの範囲である。
【0073】
次に本発明に使用する第二の実施形態に係る熱膨張性耐火シート110について説明する。
図3に例示される様に、第二の実施形態に係る熱膨張性耐火シート110は、熱膨張性耐火シート本体10として熱膨張性樹脂組成物からなる熱膨張性樹脂組成物層11が使用されている。またポリウレタンフォームからなる弾性突起部20a,20bを有する。
第一の実施形態に係る熱膨張性耐火シート100の場合は、前記熱膨張性耐火シート本体10aの一方の面にポリウレタンフォームからなる弾性突起部20aが一個設置されていた。
これに対し、第二の実施形態に係る熱膨張性耐火シート110は、前記熱膨張性耐火シート本体10aの両方の面の同じ位置にポリウレタンフォームからなる弾性突起部20a,20bが設置されている。つまりポリウレタンフォームからなる弾性突起部20bが追加されている点が第一の実施形態に係る熱膨張性耐火シート100と異なる。
それ以外は第一の実施形態に係る熱膨張性耐火シート100の場合と同じである。
【0074】
第二の実施形態に係る熱膨張性耐火シート110は前記熱膨張性耐火シート本体10aの両面にポリウレタンフォームからなる弾性突起部20a,20bを有する。
このため前記ポリウレタンフォームからなる弾性突起部20aを貫通孔2の外側に掛けることができる。またポリウレタンフォームからなる弾性突起部20bの外面を配管類3a,3b,3cの外面に接触させることができる。
このため、貫通孔2の内面に挿入された第二の実施形態に係る熱膨張性耐火シート110を、前記貫通孔2と前記配管類3a,3b,3cとの隙間に沿って安定して設置することができる。
【0075】
次に本発明に使用する第三の実施形態に係る熱膨張性耐火シート120について説明する。
図4に例示される様に、第三の実施形態に係る熱膨張性耐火シート120は、熱膨張性耐火シート本体10aとして熱膨張性樹脂組成物からなる熱膨張性樹脂組成物層11が使用されている。またポリウレタンフォームからなる弾性突起部20a,20cを有する。
第一の実施形態に係る熱膨張性耐火シート100の場合は、前記熱膨張性耐火シート本体10aの一方の面にポリウレタンフォームからなる弾性突起部20aが一個設置されていた。
これに対し、第三の実施形態に係る熱膨張性耐火シート120は、前記熱膨張性耐火シート本体10の一方の面に、それぞれの辺13に沿って二つつのポリウレタンフォームからなる弾性突起部20a,20cが設置されている。つまりポリウレタンフォームからなる弾性突起部20cが追加されている点が第一の実施形態に係る熱膨張性耐火シート100と異なる。
それ以外は第一の実施形態に係る熱膨張性耐火シート100の場合と同じである。
【0076】
前記ポリウレタンフォームからなる弾性突起部20cは前記弾性突起部20aと同じ形状である。
また前記弾性突起部20cが前記熱膨張性耐火シート本体10aの辺13と平行な辺および辺12に沿って、前記弾性突起部20cが前記熱膨張性耐火シート本体10aの辺13と平行な辺方向の全てと、前記熱膨張性耐火シート本体10aの辺12方向の一部とを覆う様に、前記熱膨張性耐火シート本体10aに設置されている。
【0077】
前記弾性突起部20aと前記弾性突起部20cとの距離は、前記区画1に対して垂直方向を基準に、貫通孔2の長さと略一致している。
このため前記ポリウレタンフォームからなる第一の弾性突起部20aを貫通孔2の一方の外側に掛けることができる。
また前記ポリウレタンフォームからなる第二の弾性突起部20cを貫通孔2の他方の外側に掛けることができる。
このため、貫通孔2の内面に挿入された第三の実施形態に係る熱膨張性耐火シート120を、前記貫通孔内に安定して設置することができる。
【0078】
次に本発明に使用する第四の実施形態に係る熱膨張性耐火シート130について説明する。
図5に例示される様に、第四の実施形態に係る熱膨張性耐火シート130は、熱膨張性耐火シート本体10aとして熱膨張性樹脂組成物からなる熱膨張性樹脂組成物層11が使用されている。またポリウレタンフォームからなる弾性突起部20a,20b,20cを有する。
第二の実施形態に係る熱膨張性耐火シート110は、前記熱膨張性耐火シート本体10aの両方の面の同じ位置にポリウレタンフォームからなる弾性突起部20a,20bが設置されている。
これに対し、第四の実施形態に係る熱膨張性耐火シート130は、前記熱膨張性耐火シート本体10の一方の面に、同じ形状のポリウレタンフォームからなる弾性突起部20a,20cが設置されている。つまりポリウレタンフォームからなる弾性突起部20cが追加されている点が第二の実施形態に係る熱膨張性耐火シート110と異なる。
それ以外は第二の実施形態に係る熱膨張性耐火シート110の場合と同じである。
【0079】
前記ポリウレタンフォームからなる弾性突起部20cは前記弾性突起部20aと同じ形状である。
また前記弾性突起部20cが前記熱膨張性耐火シート本体10aの辺13と平行な辺および辺12に沿って、前記弾性突起部20cが前記熱膨張性耐火シート本体10aの辺13と平行な辺方向の全てと、前記熱膨張性耐火シート本体10aの辺12方向の一部とを覆う様に設置されている。
前記弾性突起部20aと前記弾性突起部20cとの距離は、前記区画1に対して垂直方向を基準に貫通孔2の長さと略一致している。
【0080】
このため前記ポリウレタンフォームからなる第一の弾性突起部20aを貫通孔2の一方の外側に掛けることができる。
また前記ポリウレタンフォームからなる第二の弾性突起部20cを貫通孔2の他方の外側に掛けることができる。
加えてポリウレタンフォームからなる弾性突起部20bの外面を配管類3a,3b,3cの外面に接触させることができる。
このため、貫通孔2の内面に挿入された第四の実施形態に係る熱膨張性耐火シート130を、前記貫通孔2と前記配管類3a,3b,3cとの隙間に沿って安定して設置することができる。
【0081】
次に本発明に使用する第五の実施形態に係る熱膨張性耐火シート140について説明する。
図6に例示される様に、第五の実施形態に係る熱膨張性耐火シート140は、熱膨張性耐火シート本体10aとして熱膨張性樹脂組成物からなる熱膨張性樹脂組成物層11が使用されている。またポリウレタンフォームからなる弾性突起部20a,20b,20c,20dを有する。
第四の実施形態に係る熱膨張性耐火シート130は、前記熱膨張性耐火シート本体10aの両方の面の同じ位置にポリウレタンフォームからなる弾性突起部20a,20bが設置されている。また、前記熱膨張性耐火シート本体10aの一方の面に、同じ形状のポリウレタンフォームからなる弾性突起部20a,20cが設置されている。
これに対し、第五の実施形態に係る熱膨張性耐火シート140は、前記熱膨張性耐火シート本体10aの一方の面に、ポリウレタンフォームからなる弾性突起部20a,20cが設置されている。また他方の面に、ポリウレタンフォームからなる弾性突起部20b,20dが設置されている。つまりポリウレタンフォームからなる弾性突起部20dが追加されている点が第四の実施形態に係る熱膨張性耐火シート130と異なる。
それ以外は第四の実施形態に係る熱膨張性耐火シート130の場合と同じである。
【0082】
前記ポリウレタンフォームからなる弾性突起部20dは前記弾性突起部20bと同じ形状である。
また前記弾性突起部20dが前記熱膨張性耐火シート本体10aの辺13と平行な辺および辺12に沿って、前記弾性突起部20dが前記熱膨張性耐火シート本体10aの辺13と平行な辺方向の全てと、前記熱膨張性耐火シート本体10aの12辺方向の一部とを覆う様に、前記熱膨張性耐火シート本体10aに設置されている。
前記弾性突起部20dと前記弾性突起部20bとの距離は、前記区画1に対して垂直方向を基準に貫通孔2の長さと略一致している。
【0083】
第五の実施形態に係る熱膨張性耐火シート140も、前記ポリウレタンフォームからなる第一の弾性突起部20aを貫通孔2の一方の外側に掛けることができる。
また前記ポリウレタンフォームからなる第二の弾性突起部20cを貫通孔2の他方の外側に掛けることができる。
加えてポリウレタンフォームからなる弾性突起部20b,20dの外面を配管類3a,3b,3cの外面に接触させることができる。
このため、貫通孔2の内面に挿入された第五の実施形態に係る熱膨張性耐火シート140を、前記貫通孔2と前記配管類3a,3b,3cとの隙間に沿って安定して設置することができる。
【0084】
次に本発明に使用する第六〜第十の実施形態に係る熱膨張性耐火シート150〜190について説明する。
第六〜第十の実施形態に係る熱膨張性耐火シート150〜190は、それぞれ第一〜第五の実施形態に係る熱膨張性耐火シート100〜140に使用した熱膨張性耐火シート本体10aに代えて、熱膨張性耐火シート本体10bを使用した点が異なる。
前記熱膨張性耐火シート本体10aは熱膨張性樹脂組成物からなる熱膨張性樹脂組成物層11により形成されていたが、前記熱膨張性耐火シート本体10bは、熱膨張性樹脂組成物からなる熱膨張性樹脂組成物層11とガラスクロスからなる無機繊維層14とアルミニウム箔層15を積層してなる点が異なる。
図7は、前記熱膨張性耐火シート本体10bを説明するための模式部分断面図である。
図7に示される通り、熱膨張性樹脂組成物からなる熱膨張性樹脂組成物層11、ガラスクロスからなる無機繊維層14およびアルミニウム箔層15がこの順番に積層されている。
本発明に第六〜第十の実施形態に係る熱膨張性耐火シート150〜190を使用する場合には、それぞれ前記アルミニウム箔層15を最外層として、熱膨張性樹脂組成物からなる熱膨張性樹脂組成物層11が前記配管類3a,3b,3c側となる様に設置することが好ましい。
【0085】
次に本発明に使用する第十一〜第十五の実施形態に係る熱膨張性耐火シート200〜240について説明する。
図8〜
図12は、それぞれ本発明に使用する第十一〜第十五の実施形態に係る熱膨張性耐火シート200〜240を例示した模式断面図である。
図8〜
図12に例示される様に、本発明に使用する前記熱膨張性耐火シート本体10cは、熱膨張性樹脂組成物からなる熱膨張性樹脂組成物層11とガラスクロスからなる無機繊維層14とアルミニウム箔層15に加えて、セラミックブランケット等の無機繊維を成形してなる不燃性断熱層16が積層されている。
図13は
図12に例示した第十五の実施形態に係る熱膨張性耐火シート240を例示した模式斜視図である。
図13に例示される様に、直方体の前記不燃性断熱層16が前記熱膨張性耐火シート本体10cに形成されている。
前記不燃性断熱層16の長さは、前記熱膨張性耐火シート本体10cの長さと一致させておくことが、本発明の防火区画貫通部構造の耐火性を高めることから好ましい。
また前記不燃性断熱層16と、ポリウレタンフォームからなる弾性突起部20a〜20dのそれぞれとの間は互いに接していても、隙間があってもよいが、前記隙間は5〜50mmの範囲であれば取り扱い易いことから好ましい。
本発明に使用する第十一〜第十五の実施形態に係る熱膨張性耐火シート200〜240は、前記熱膨張性耐火シート本体10cの両方の面に不燃性断熱層16,16を有するが、いずれか一方の面に不燃性断熱層16があるものも使用することができる。
【0086】
次に図面を参照しつつ、実施例により本発明についてより詳細に説明するが、本発明は以下の実施例により何ら限定されるものではない。
【実施例1】
【0087】
実施例1では
図13に例示した第十五の実施形態に係る熱膨張性耐火シート240を使用して防火区画貫通部構造500の施工を行った。
図14は実施例1に係る防火区画貫通部構造の施工方法を説明するための模式斜視図である。
図14に示される様に、高層建築ビルの仕切り部に設けられたコンクリートスラブの区画1に円形の貫通孔2が形成されている。この貫通孔2を配管類3a,3b,3cが挿通している。
前記貫通孔2に挿通された配管類3a,3b,3cと、前記貫通孔2との隙間に沿って、前記熱膨張性耐火シート240を丸めながら、前記貫通孔2に挿入した。
前記熱膨張性耐火シート240を前記貫通孔2に挿入する際に、前記熱膨張性耐火シート240を全て前記貫通孔2の内部に挿入するのではなく、前記熱膨張性耐火シート240のうち、弾性突起部20a,20bが前記貫通孔2の外側へ突き出る様にした。
【0088】
図15は実施例1に係る防火区画貫通部構造の施工方法を説明するための模式断面図である。
前記熱膨張性耐火シート本体10cの外周面に設置された弾性突起部20aを、前記貫通孔2の外側に掛ける。
ここで前記貫通孔2の外側に掛ける工程は、前記熱膨張性耐火シート本体10cの外周面に設置された弾性突起部20aのうち、前記区画1の表面に対向する面を前記区画1の表面に設置する工程のことをいう。
また
図15に示される様に、前記熱膨張性耐火シート本体10cの外周面に設置された弾性突起部20aと前記熱膨張性耐火シート本体10cの外周面に設置された弾性突起部20cとの距離は、前記区画1の厚みと同じ長さとなっている。
このため前記熱膨張性耐火シート本体10cの外周面に設置された弾性突起部20aを、前記貫通孔2の外側に掛けると、前記熱膨張性耐火シート本体10cの外周面に設置された弾性突起部20cは、前記貫通孔2の反対側の外側に掛かかる。
前記弾性突起部20cは弾力を有するため外力を加えると自由に変形させることができる。このため円滑に前記弾性突起部20cを、前記配管類3a,3b,3cと、前記貫通孔2との隙間に沿って、前記貫通孔2内部円滑に挿入することができる。
また前記熱膨張性耐火シート本体10cの内周面に設置された弾性突起部20b,20dは、それぞれ配管類3a,3b,3cの外周面に接触する。
このため熱膨張性耐火シート240を前記貫通孔2の内部に安定して設置することができる。
【0089】
図16は実施例1に係る防火区画貫通部構造の施工方法を説明するための模式断面図である。
前記貫通孔2内部に前記熱膨張性耐火シート240を設置した場合、前記貫通孔2に対する配管類3a,3b,3cの位置、前記配管類3a,3b,3cのそれぞれの大きさ等に依存して、前記配管類3a,3b,3cと、前記熱膨張性耐火シート240との間に隙間40が生じる場合がある。
【0090】
図17および18は熱膨張性耐火シート240の変形例を例示した模式斜視図である。
図17に示される熱膨張性耐火シート240aおよび
図18に示される熱膨張性耐火シート240bはそれぞれ
図13に示される熱膨張性耐火シート240を短辺方向に切断したものであり、それぞれ長さが異なる。
【0091】
実施例1の場合は、
図17および18にそれぞれ示される熱膨張性耐火シート240aおよび240bを使用して、前記配管類3a,3b,3cと、前記熱膨張性耐火シート240と隙間40を閉塞した。
【0092】
図19は実施例1に係る防火区画貫通部構造500を示す模式斜視図である。
図19に示される様に、簡単に実施例1に係る防火区画貫通部構造500を得ることができる。
【0093】
図20は実施例1に係る防火区画貫通部構造500が火災等の熱にさらされる前の状態を示す模式断面図である。また
図21は実施例1に係る防火区画貫通部構造500が火災等の熱にさらされた後の状態を例示する模式断面図である。
図20と
図21とを比較すると明かな様に、実施例1に係る防火区画貫通部構造500が下階等から火災等の熱にさらされた場合、前記熱膨張性耐火シート240,240a,240bに含まれる前記熱膨張性耐火シート本体10cが膨張する。この際にセラミックブランケット等の無機繊維を成形してなる不燃性断熱層16が熱膨張性耐火シート240,240a,240bの膨張に合わせて前記貫通孔2の内部を閉塞する方向、すなわち前記区画1の表面と平行方向に開く。
【0094】
前記熱膨張性耐火シート本体10cにより形成される熱膨張残渣10xと前記不燃性断熱層16とにより火災等の炎が前記貫通孔2を貫通することを遅延させることができる。
この様に前記貫通孔2内部で前記熱膨張性耐火シート本体10cにより形成される熱膨張残渣、前記不燃性断熱層16同士が互いに支えあうため、火災等の熱により前記熱膨張性耐火シート240,240a,240bが前記貫通孔2より脱落することも防止することができる。
【0095】
また前記不燃性断熱層16の存在により、前記熱膨張性耐火シート240,240a,240bが十分膨張する前に火災等の炎が前記貫通孔を抜けて上階へ達することを防止することができる。
また前記貫通孔2の外側に突き出た前記熱膨張性耐火シート240,240a,240bが火災等の熱により熱膨張残渣を形成するため、火災等の熱が配管類3a,3b,3cを伝わって火災等が発生していない側へ火災等の熱が伝わることを防止することができる。
【0096】
実際に施工してみたところ、
図14から始めて
図19に示す防火区画貫通部構造500の施工を終えるまでの時間は1分〜2分程度であった。
この様に、本発明に係る防火区画貫通部構造は極めて短い時間内に施工することが可能である。
【0097】
[比較例1]
図14に示したコンクリートスラブの区画1に円形の貫通孔2に配管類3a,3b,3cが挿通している構造に対して
図29〜
図33に示した工程と同様の工程により耐火パテ60を使用して防火区画貫通部構造600の施工を行った。
比較例1の場合は
図30に示した前記金属枠53の形状と
図31に示した前記底部閉塞用部材56を円形の貫通孔2に設置することができる様に円形形状のものを使用した。
耐火パテ60を充填し防火区画貫通部構造600の施工を終えるまでの時間は5分以上であった。
【実施例2】
【0098】
実施例2は実施例1の変形例である。
実施例1では貫通孔2の内面の内周と略同じ長さの熱膨張性耐火シート240を使用した。
これに対し実施例2の場合は、配管類3a,3b,3cの周囲を一周を越えて、螺旋状に巻き回すことのできる長さの熱膨張性耐火シート240dを使用した。
前記熱膨張性耐火シート240dは熱膨張性耐火シート240と比較して長手方向の長さだけが異なる。それ以外の構成は熱膨張性耐火シート240と同じである。
前記貫通孔2に挿通された配管類3a,3b,3cと、前記貫通孔2との隙間に沿って、前記配管類3a,3b,3cの周囲に前記熱膨張性耐火シート240dを螺旋状に巻き回して、前記貫通孔2に挿入した。前記貫通孔2の内部で前記熱膨張性耐火シート240dに重なる部分が生じた。
また実施例1の場合と同様、熱膨張性耐火シート240aおよび240bを使用して、前記配管類3a,3b,3cと、前記熱膨張性耐火シート240dとの隙間40を閉塞した。
この様にして実施例2に係る防火区画貫通部構造510を得た。
実施例2に示される様に、前記熱膨張性耐火シート240dを使用して配管類の周囲を一周を越えて、螺旋状に巻き回すことにより、配管類と貫通孔との隙間が大きい場合でも配管類と貫通孔との隙間に前記熱膨張性耐火シート240dを設置することができる。この様に簡単に実施例2に係る防火区画貫通部構造510を得ることができる。
【実施例3】
【0099】
実施例3では
図13に例示した第十五の実施形態に係る熱膨張性耐火シート240を使用して防火区画貫通部構造520の施工を行った。
図22は実施例3に係る防火区画貫通部構造の施工方法を説明するための模式斜視図である。
図22に示される様に、高層建築ビルの仕切り部に設けられたコンクリートスラブの区画1に長方形の貫通孔2aが形成されている。この貫通孔2aを配管類300a,300bが挿通している。
前記配管類300a,300bはそれぞれ配管類3a,3b,3cにより形成されている。
【0100】
図23〜25は実施例3に使用する貫通孔閉塞部材の模式斜視図である。
前記貫通孔閉塞部材70はロックウールからなる無機繊維ボード71により形成されている。
本発明に使用する貫通孔閉塞部材は、不燃性のものであれば特に限定はないが、一例を挙げるとすれば、例えば、ロックウール、セラミックウール、シリカアルミナ繊維、アルミナ繊維、シリカ繊維、ジルコニア繊維、セラミックブランケット等の無機繊維により成形したもの等が挙げられる。
前記貫通孔閉塞部材に使用される無機繊維は、一種もしくは二種以上を使用することができる。
【0101】
図23に例示される様に、前記無機繊維ボード71には前記無機繊維ボード71を貫通する円柱状の切り込み72a,72b,72c,72d,72eが設けられている。
このため前記無機繊維ボード71の円柱状の無機繊維柱状部材73a,73b,73c,73d,73eを押すと、前記無機繊維柱状部材73a,73b,73c,73d,73eのそれぞれを前記無機繊維ボード71から分離することができる。
また前記無機繊維ボード71から前記無機繊維柱状部材73a,73b,73c,73d,73eを取り去った無機繊維ボード本体74は無機繊維ボード本体部分74a,74bの二つの部分に分割できる構造となっている。
前記無機繊維ボード71から前記無機繊維柱状部材73a,73b,73c,73d,73eを取り去った無機繊維ボード本体74には開口部75a,75b,75c,75d,75eが形成されている。
【0102】
本発明に使用する無機繊維柱状部材の形状に限定はなく、前記無機繊維ボード71に開口部を設け、前記開口部に配管類を挿通させることができるものであればよい。
前記無機繊維柱状部材の形状の一例を挙げるとすれば、例えば、円柱、楕円柱、多角柱等の形状を挙げることができる。
前記無機繊維柱状部材の形状は一種もしくは二種以上を使用することができる。
【0103】
図25に例示される様に、実施例3の場合は、前記無機繊維ボード71から前記無機繊維柱状部材73a,73bを撤去して開口部開口部75a,75bが形成されている。
【0104】
前記無機繊維ボード71の外面形状は、貫通孔2aの内面形状と略同じである。このため前記無機繊維ボード71を区画1に設けられた貫通孔2aに略隙間なく挿入することができる。
前記無機繊維ボード71の厚みは、前記貫通孔2aの厚みと同じかそれ以下であることが取り扱い性の面から好ましい。
前記無機繊維ボード71の厚みは、前記貫通孔2aの厚みの1/20〜4/5の範囲であることがより好ましく、1/5〜1/2の範囲であることがさらに好ましい。
この関係は本発明に使用する貫通孔閉塞部材について共通する。
【0105】
図26は実施例3に係る防火区画貫通部構造の施工方法を説明するための模式斜視図である。
前記貫通孔2aに固定補助具80を設置する。前記固定補助具80は、区画1の表面に固定するための固定部81、区画1に設けられた貫通孔2a内面側に設置される本体部82および前記貫通孔閉塞部材70を支持するための支持部83により形成されている。
実施例3に使用した固定補助具80は鋼製である。
なお前記固定補助具80の素材に限定はなく、金属材料等により形成されている。前記金属材料としては、例えば、鉄、鋼、ステンレス、銅、二以上の金属を含む合金等を挙げることができる。
固定補助具80の固定部81を区画1の表面に設置し、タッピングビス等の固定手段を用いて前記固定補助具80の固定部81を区画1の表面に固定する。
【0106】
図27は実施例3に係る防火区画貫通部構造の施工方法を説明するための模式斜視図である。
次に前記区画1の貫通孔2aの内部に前記貫通孔閉塞部材70を挿入する。
前記貫通孔2aの内部に前記貫通孔閉塞部材70を挿入するときは、無機繊維ボード本体部分74a,74bの二つの部分を開いて、前記貫通孔閉塞部材70の開口部75a,75bに、前記配管類300a,300bを挿通させる。
なお、前記貫通孔閉塞部材70の開口部75c,75d,75eはそれぞれ前記無機繊維柱状部材7373c,73d,73eにより閉塞されている。
【0107】
図28は実施例3に使用する熱膨張性耐火シート240dを貫通孔に設置する工程を説明するための模式斜視図である。
実施例1に使用した前記熱膨張性耐火シート240と比較して、弾性突起部間の距離が前記貫通孔閉塞部材70の厚さと同じに調整されている。それ以外は実施例1に使用した前記熱膨張性耐火シート240の場合と同じである。
【0108】
前記貫通孔閉塞部材70の開口部75a,75bに挿通された配管類300a,300bと、前記貫通孔2aとの隙間に沿って、前記熱膨張性耐火シート240d,240dを丸めながら、前記開口部75a,75bにそれぞれ挿入した。
前記熱膨張性耐火シート240d,240dを前記開口部75a,75bにそれぞれ挿入する際に前記熱膨張性耐火シートの弾性突起部が前記開口部のそれぞれの外側へ突き出る様にした。
【0109】
図29は実施例3に係る防火区画貫通部構造を説明するための模式断面図である。
図29に示される様に、前記固定補助具80の支持部83により前記貫通孔閉塞部材70が前記貫通孔2aに固定されている。
また前記貫通孔閉塞部材70の厚みは、前記区画2aの厚みの1/3である。
【0110】
まず前記熱膨張性耐火シート本体10Cの外周面に設置された弾性突起部20Aを、前記開口部75a,75bの外側に掛ける。
ここで前記開口部75a,75bの外側に掛ける工程は、前記熱膨張性耐火シート本体10Cの外周面に設置された弾性突起部20Aのうち、前記貫通孔閉塞部材70に対向する面を前記貫通孔閉塞部材70の表面に設置する工程のことをいう。
また
図28に示される様に、前記熱膨張性耐火シート本体10Cの外周面に設置された弾性突起部20Aと前記熱膨張性耐火シート本体10Cの外周面に設置された弾性突起部20Cとの距離は、前記貫通孔閉塞部材70の厚みと同じ長さとなっている。
このため前記熱膨張性耐火シート本体10Cの外周面に設置された弾性突起部20Aを、前記貫通孔閉塞部材70の外側に掛けると、前記熱膨張性耐火シート本体10Cの外周面に設置された弾性突起部20Cは、前記開口部75a,75bの反対側の外側に掛かかる。
【0111】
前記弾性突起部20Cは弾力を有するため外力を加えると自由に変形させることができる。このため円滑に前記弾性突起部20Cを、前記配管類300a,300bと、前記開口部75a,75bとのそれぞれの隙間に沿って、前記開口部75a,75b内部にそれぞれ円滑に挿入することができる。
また前記熱膨張性耐火シート本体10Cの内周面に設置された弾性突起部20B,20Dは、それぞれ配管類3a,3b,3cの外周面に接触する。
このため熱膨張性耐火シート240を前記貫通孔2の内部に安定して設置することができる。
【0112】
また前記熱膨張性耐火シート240dと配管類3a,3b,3cとの隙間には、前記熱膨張性耐火シート240dよりも長さが短い前記熱膨張性耐火シート240e、240fが挿入されて閉塞されている。
【0113】
この様に実施例3に係る防火区画貫通部構造を簡単に施工することができる。
【実施例4】
【0114】
図30は実施例4に係る防火区画貫通部構造の施工方法を説明するための模式斜視図である。
先に説明した実施例3に使用した前記貫通孔2aには保護枠材が設置されていない。これに対し、実施例4に使用した貫通孔2aには保護枠材90が設置されている。
実施例4に係る防火区画貫通部構造は、実施例3に係る防火区画貫通部構造と比較して、保護枠材90が設置されていること、および固定補助具80に代えて固定補助具84を使用したこと以外は実施例3の場合と同様である。
実施例4に使用した保護枠材90は鋼鉄製のスリーブである。前記保護枠材90は貫通孔2aの外側に突き出る様に設置されている。また前記保護枠材90は貫通孔2aの内面に隙間なく設置されていて、前記保護枠材90と前記貫通孔2aとの間から水が漏れない構造となっている。
前記保護枠材90は筒形状であり、内部が空洞となっていることから前記保護枠材90の内部に配管類300a,300bを挿通させることができる。
【0115】
本発明に使用する保護枠材は、その外形が貫通孔2aの内面に隙間なく合致するものを使用することが好ましい。
前記保護枠材の素材は難燃性のものであれば特に限定はなく、例えば金属材料、無機材料のものを使用することができる。
前記金属材料としては、例えば、鉄、鋼、ステンレス、銅、二以上の金属を含む合金等を挙げることができる。
また前記無機材料としては、例えば、硬質木片セメント板、無機繊維含有スレート板、軽量気泡コンクリート板、モルタル板、プレキャストコンクリート板等が挙げられる。
前記無機セラミック系パネルとしては、例えば、石膏ボード、けい酸カルシウム板、炭酸カルシウム板、ミネラルウール板、窯業系板等が挙げられる。
【0116】
図31は実施例4に係る防火区画貫通部構造の施工方法を説明するための模式斜視図である。
前記貫通孔2aに固定補助具84を設置する。前記固定補助具84は、保護枠材90に固定するための固定部85、貫通孔2aの前記保護枠材90の内面側に設置される本体部86および前記貫通孔閉塞部材70を支持するための支持部83により形成されている。
実施例4に使用した固定補助具84は、実施例3に使用した固定補助具80と比較して固定部85の形状が異なる。それ以外は前記固定補助具80と同様である。
前記固定補助具84の固定部85を前記保護枠材90に掛けることにより固定することができる。
【0117】
図32は実施例4に係る防火区画貫通部構造を説明するための模式断面図である。
実施例4に示される通り、前記貫通孔2aに保護枠材90が設置されている場合でも、前記保護枠材90を撤去することなく簡単に防火区画貫通部構造を施工することができる。
実施例4に係る防火区画貫通部構造の施工時間はおよそ10分間であった。
これに対し、比較例1の場合と同様に実施例4の場合で耐火パテを用いて施工を行った場合の施工時間は30〜60分間を要した。
【0118】
以上、実施例1〜4に基づいて本発明の防火区画貫通部構造について説明した。本発明の防火区画貫通部構造は実施例1〜3に示される様に、床、天井等の水平の区画のみならず、外壁、内壁等、垂直の区画についても同様に簡単に施工することができる。