特許第5779438号(P5779438)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許5779438-毛髪化粧料 図000006
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5779438
(24)【登録日】2015年7月17日
(45)【発行日】2015年9月16日
(54)【発明の名称】毛髪化粧料
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/42 20060101AFI20150827BHJP
   A61K 8/36 20060101ALI20150827BHJP
   A61K 8/37 20060101ALI20150827BHJP
   A61K 8/34 20060101ALI20150827BHJP
   A61Q 5/12 20060101ALI20150827BHJP
【FI】
   A61K8/42
   A61K8/36
   A61K8/37
   A61K8/34
   A61Q5/12
【請求項の数】6
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2011-165006(P2011-165006)
(22)【出願日】2011年7月28日
(65)【公開番号】特開2013-28554(P2013-28554A)
(43)【公開日】2013年2月7日
【審査請求日】2014年6月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110928
【弁理士】
【氏名又は名称】速水 進治
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 隆儀
【審査官】 井上 能宏
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−343860(JP,A)
【文献】 特開2006−290796(JP,A)
【文献】 特開2006−290795(JP,A)
【文献】 特開2008−127337(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00〜 8/99
A61Q 1/00〜 90/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の成分:
(A)一般式(1)で表されるアミドアミン
【化1】
〔式中、RCOは全脂肪酸残基中、炭素数20以上の脂肪酸残基の割合が75質量%以上、炭素数20の脂肪酸残基の割合が3重量%以上、炭素数22の脂肪酸残基の割合が70〜95質量%である脂肪酸残基を示す。〕
(B)炭素数14〜22の脂肪族アルコール
(C)炭素数2〜8の有機カルボン酸
(D)炭素数10〜30の飽和脂肪酸と、グリセリンとのエステルからなるグリセリンモノ脂肪酸エステル
及び水を含有し、
前記成分(D)に対する前記成分(A)の質量比((A)/(D))が4〜10である毛髪化粧料。
【請求項2】
毛髪化粧料中の前記成分(D)の含有量が0.1〜2質量%である、請求項1に記載の毛髪化粧料。
【請求項3】
前記成分(D)が、炭素数14〜22の直鎖飽和脂肪酸と前記グリセリンとのエステルからなる、請求項1又は2に記載の毛髪化粧料。
【請求項4】
毛髪化粧料中の前記成分(A)の含有量が0.1〜15質量%である、請求項1乃至いずれか1項に記載の毛髪化粧料。
【請求項5】
毛髪化粧料中の前記成分(B)の含有量が0.5〜15質量%である、請求項1乃至いずれか1項に記載の毛髪化粧料。
【請求項6】
毛髪化粧料中の前記成分(C)の含有量が0.1〜5質量%である、請求項1乃至いずれか1項に記載の毛髪化粧料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、毛髪化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
シャンプー後の毛髪の感触を向上させるためにリンス、コンディショナー、トリートメント等の毛髪化粧料が使用されている。毛髪化粧料は、カチオン界面活性剤を主成分とし、さらに、高級アルコールや油剤等を配合したものが知られている。
【0003】
例えば、特許文献1には、カチオン界面活性剤と高級アルコールを含有する乳化物に、その乳化物のpHよりも低いpHで調製されたシリコーンエマルジョンを混合することで、カラーリングやブリーチした毛髪の感触を改善する効果、繰り返し使用におけるべたつきのなさ、安定性に優れた毛髪化粧料が記載されている。
【0004】
また、近年、カチオン界面活性剤として、アミドアミンを用いた毛髪化粧料も知られている。特許文献2には、アミドアミンとグリセリン脂肪酸エステルとリン酸を配合することで、毛先の広がりを抑制し、かつ毛髪にコシを付与してトップにボリューム感を付与することができる毛髪保護剤が記載されている。
【0005】
特許文献3には、特定のアミドアミンと、直鎖型の高級アルコールを特定比率で含有するアルコールとを併用することで増粘性(ゲル形成性)と経時安定性に優れ、毛髪に塗布してから洗い流す濯ぎ時に渡って、十分な滑らか感、しっとり感、また乾燥後に十分な滑らかさ、櫛通りの良さを付与できる毛髪化粧料が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−89372号公報
【特許文献2】特開2002−29932号公報
【特許文献3】特開2005−298447号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上述した技術においては、毛髪に滑らかさが与えられる一方、乾燥後の仕上がりの点で改善の余地があった。特に、乾燥後のしっとり感が強く出すぎる場合、乾燥後にべたつきが現れ、毛髪の感触が劣る場合があった。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、カチオン界面活性剤として炭素数20以上の脂肪酸残基を有するアミドアミンを用い、これをポリグリセリン脂肪酸エステルと併用することで、乾燥後の毛髪の仕上がりを向上させる毛髪化粧料を見出した。
【0009】
本発明によれば、
次の成分:
(A)一般式(1)で表されるアミドアミン
【0010】
【化1】
【0011】
〔式中、RCOは全脂肪酸残基中、炭素数20以上の脂肪酸残基の割合が75質量%以上、炭素数20の脂肪酸残基の割合が3重量%以上、炭素数22の脂肪酸残基の割合が70〜95質量%である脂肪酸残基を示す。〕
(B)炭素数14〜22の脂肪族アルコール
(C)炭素数2〜8の有機カルボン酸
(D)炭素数10〜30の飽和脂肪酸と、グリセリンの平均重合度が1〜4であるポリグリセリンとのエステルからなるポリグリセリン脂肪酸エステル
及び水を含有し、
前記成分(D)に対する前記成分(A)の質量比((A)/(D))が、2〜40である、毛髪化粧料が提供される。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、塗布時、すすぎ時の滑らかさ、柔軟性に優れ、乾燥後に、毛髪化粧料が均一に付着することで、毛髪にしっとりとした感触を付与しているのに、べたつかず、さらさらした感触を与える毛髪化粧料を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】毛髪化粧料の希釈液に浸積したマイカ基板を原子力間顕微鏡(AFM)で観察した結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態について、説明する。
[(A)アミドアミン]
本発明で用いられる(A)成分のアミドアミンは、下記一般式(1)で表されるものである。
【0015】
【化2】
【0016】
本発明で使用する(A)成分のアミドアミンにおいて、R1COで示される脂肪酸残基の組成は、全脂肪酸残基中、炭素数20以上の脂肪酸残基の割合が75質量%以上、好ましくは90質量%以上で、炭素数20の脂肪酸残基の割合が3質量%以上、好ましくは4質量%以上、さらに好ましくは5質量%以上で、炭素数22の脂肪酸残基の割合が70〜95質量%、好ましくは80〜95質量%である。なお、本発明において、脂肪酸残基はRCOの部位を意味する。Rは、直鎖又は分岐鎖のいずれの炭化水素基であってもよいし、飽和又は不飽和のいずれの炭化水素基であってもよいが、直鎖のアルキル基が好ましい。
【0017】
一般式(1)で表されるアミドアミンにおいて、炭素数20以上の脂肪酸残基を有するアミドアミンとしては、アラキン酸ジメチルアミノプロピルアミド、ベヘニン酸ジメチルアミノプロピルアミド等が挙げられる。このうち、炭素数20の脂肪酸残基を有するアミドアミンとしては、アラキン酸ジメチルアミノプロピルアミドが挙げられ、炭素数22の脂肪酸残基を有するアミドアミンとしては、ベヘニン酸ジメチルアミノプロピルアミドが挙げられる。
【0018】
炭素数20以上の脂肪酸残基以外に含有してもよい(A)成分のアミドアミンの具体例としては、ラウリン酸ジメチルアミノプロピルアミド、ミリスチン酸ジメチルアミノプロピルアミド、パルミチン酸ジメチルアミノプロピルアミド、ステアリン酸ジメチルアミノプロピルアミド、オレイン酸ジメチルアミノプロピルアミド等が挙げられるが、中でもステアリン酸ジメチルアミノプロピルアミドが好ましい。
【0019】
(A)成分のアミドアミンは、2種以上を併用することが好ましく、中でも、性能、安定性、入手容易性等の面で、ステアリン酸ジメチルアミノプロピルアミドと、アラキン酸ジメチルアミノプロピルアミドと、ベヘニン酸ジメチルアミノプロピルアミドとの組合せが好ましく、例えば、市販されているAMIDET APA−22(花王株式会社)等を用いることができる。(A)成分の含有量は、本発明の毛髪化粧料中、毛髪に良好な感触を与え、また製品安定性の観点から、0.1〜15質量%が好ましく、0.5〜10質量%がより好ましく、0.5〜5質量%がさらに好ましい。また、成分(A)のアミドアミンと後述する成分(C)の有機カルボン酸により、アミドアミンの塩をあらかじめ形成させてから、毛髪化粧料に含有させても良い。
【0020】
[(B)炭素数14〜22の脂肪族アルコール]
本発明で使用する(B)成分の炭素数14〜22の脂肪族アルコールとしては、飽和脂肪族アルコールであってもよいし、不飽和脂肪族アルコールであってもよいが、飽和脂肪族アルコールが好ましく、炭素数16〜22の飽和脂肪族アルコールが好ましく、特に炭素数18の飽和脂肪族アルコールが好ましい。また、直鎖状脂肪族アルコール、又は、分岐鎖状脂肪族アルコールであってもよいが、直鎖状脂肪族アルコールであることが好ましい。脂肪族アルコールの好ましい具体例としては、セチルアルコール、ステアリルアルコール、アラキルアルコール、ベヘニルアルコール等が挙げられ、特にステアリルアルコールが好ましい。
【0021】
成分(B)の脂肪族アルコールは、2種以上を併用してもよく、またその含有量は、使用感の観点から、(B)成分の含有量は、0.5〜15質量%が好ましく、1〜10質量%がより好ましい。
【0022】
また、毛髪化粧料の安定性向上の点から、(A)成分のアミドアミンに対する(B)成分の脂肪族アルコールの含有質量比((B)/(A))は、1.5〜10が好ましく、1.5〜6がより好ましい。
【0023】
[(C)炭素数2〜8の有機カルボン酸]
炭素数2〜8の有機カルボン酸としては、乳酸、グルタミン酸、ピロリドンカルボン酸、グリコール酸、クエン酸、酒石酸、リンゴ酸、レブリン酸、酢酸、マレイン酸、フマル酸等が挙げられる。中でも、炭素数2〜8のヒドロキシカルボン酸、又は炭素数2〜8のアミノカルボン酸が好ましく、炭素数3〜5のものがより好ましい。具体的には、乳酸、グルタミン酸、ピロリドンカルボン酸、グリコール酸、リンゴ酸がより好ましく、乳酸、グルタミン酸、ピロリドンカルボン酸がさらに好ましい。
【0024】
これら(C)成分は2種以上を併用してもよく、その含有量は、毛髪の内部改質(空洞補修など)効果、まとまり改善効果、セット持ち向上効果、まとまりの耐湿性効果の点から、遊離酸換算量として、本発明の毛髪化粧料中の0.1〜5質量%が好ましく、0.5〜3質量%がより好ましく、0.5〜2質量%がさらに好ましい。
【0025】
また、(A)成分のアミドアミンに対する(C)成分の有機カルボン酸の含有モル比((C)/(A))は、製品安定性、塗布時の滑らかさの観点から0.1〜10が好ましく、0.5〜5がより好ましい。
【0026】
[(D)ポリグリセリン脂肪酸エステル]
(D)成分のポリグリセリン脂肪酸エステルは、炭素数10〜30の飽和脂肪酸と、グリセリンの平均重合度が1〜4であるポリグリセリンとのエステルからなるポリグリセリン脂肪酸エステルである。
【0027】
(D)成分のポリグリセリン脂肪酸エステルは、グリセリンの平均重合度が1〜4、好ましくは1である。グリセリンの平均重合度は末端基分析法により決定される。この末端基分析法とは、水酸基化(OHV)の測定値と理論値の関係から、次式によりグリセリンの重合度(n)と分子量(MW)が求められる[「ポリグリセリンエステル、33〜34頁(1994年10月3日、阪本薬品工業(株)発行)」参照]。
(数1)
MW=74n+18
(数2)
OHV=56110(n+2)/MW
【0028】
(D)成分のポリグリセリン脂肪酸エステルの脂肪酸残基は、炭素数10〜30の飽和脂肪酸であるが、乾燥後に、毛髪化粧料が均一に付着することで、乾燥後の毛髪にしっとり感とさらさら感を付与できるという観点から炭素数14〜22が好ましく、炭素数18〜20がより好ましい。直鎖飽和脂肪酸残基を有するものがより好ましく、特に、炭素数18〜20の直鎖の飽和脂肪酸残基を有するものが好ましい。
【0029】
代表的なポリグリセリン脂肪酸エステルには、グリセリンモノ脂肪酸エステル、グリセリンジ脂肪酸エステル、ジグリセリンモノ脂肪酸エステルが挙げられるが、乾燥後の毛髪に対し、しっとり感とさらさら感を付与できるという観点から、中でも、脂肪酸1モルとグリセリン1モルとからなるグリセリンモノ脂肪酸エステルが好ましい。
【0030】
グリセリンモノ脂肪酸エステルとしては、例えば、グリセリンモノデカン酸エステル、グリセリンモノラウリン酸エステル、グリセリンモノミリスチン酸エステル、グリセリンモノパルミチン酸エステル、グリセリンモノステアリン酸エステル、グリセリンモノベヘニン酸エステル等が挙げられる。これらのうち、特にグリセリンモノステアリン酸エステルが好ましい。
【0031】
(D)成分のポリグリセリン脂肪酸エステルは、2種以上を併用してもよく、またその含有量は、乾燥後に、毛髪化粧料が均一に付着することで、乾燥後の毛髪にしっとり感とさらさら感とを付与する観点から、(D)成分の含有量は、0.1〜2質量%が好ましく、0.2〜1質量%がより好ましい。
【0032】
上述のとおり、(D)成分のポリグリセリン脂肪酸エステルに対する(A)成分のアミドアミンの含有質量比((A)/(D))は、2〜40であるが、乾燥後に、毛髪化粧料が均一に付着することで、乾燥後の毛髪にしっとり感を付与し、べたつきを抑制する観点から、2〜20が好ましく、乾燥後の毛髪にしっとり感とさらさら感とを両立する観点から、4〜10がより好ましい。
また、(D)成分のポリグリセリン脂肪酸エステルに対する(B)成分の脂肪族アルコールの含有質量比((B)/(D))は、乾燥後に、毛髪化粧料が均一に付着することで、乾燥後の毛髪にしっとり感を付与し、べたつきを抑制する観点から、5〜100が好ましく、5〜52がより好ましく、10〜30がさらに好ましい。
【0033】
水の含有量は、本発明の毛髪化粧料中、50質量%以上98質量%以下が好ましく、60質量%以上95質量%以下がより好ましい。
【0034】
本発明の毛髪化粧料では、(A)成分、(B)成分、(C)成分に、(D)成分をバランスよく組み合わせることで、塗布時の毛髪に対し、均一に付着する為、塗布時のしっとり感を付与し、すすぎ時のコート感及びしっとり感をさらに高めることができる。また、乾燥後の毛髪は柔らかく、しっとりするのに、べたつかず、さらさらした感触をよりいっそう高めることができる。これは、(D)成分のポリグリセリン脂肪酸エステルにより(A)成分のアミドアミンの分子間のアミド相互作用が弱まることから、(A)成分〜(D)成分によって形成されるαゲルが毛髪に付着したとき、(A)成分のアミドアミンと(B)成分の脂肪族アルコールとの相溶解性が高まり、均一に膜構造を形成し付着するためと推察される。(D)成分のポリグリセリン脂肪酸エステルを含まない(A)成分〜(C)成分のαゲルでは、吸着の際にアミドアミン同士、脂肪族アルコール同士の相互作用による会合が見られ、不均一な吸着膜を形成するため、塗布時の使用感に影響し、すすぎ時、特に乾燥後の感触においても、影響を与えるものと推察される。
【0035】
[その他の成分]
本発明の毛髪化粧料には、塗布/濯ぎ時の滑らかさ、滑り感を向上させ、更には乾燥後の毛髪に柔らかさを付与する等の点から、芳香族アルコール、及び、ポリプロピレングリコールから選ばれる有機溶剤を含有させることができる。
【0036】
芳香族アルコールとしては、ベンジルアルコール、シンナミルアルコール、フェネチルアルコール、p−アニシルアルコール、p−メチルベンジルアルコール、フェノキシエタノール、2−ベンジルオキシエタノール等が挙げられる。これらのうち、毛髪に塗布時やすすぎ時の滑らかさ、柔軟性の観点から、ベンジルアルコール、2−ベンジルオキシエタノールがより好ましく、ベンジルアルコールがさらに好ましい。
【0037】
ポリプロピレングリコールは、数平均分子量100〜1000のポリプロピレングリコールが好ましく、数平均分子量200〜700のものがより好ましく、分子量300〜500のものがさらに好ましい。ここで、数平均分子量とは、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により測定されるポリスチレン換算の数平均分子量をいう。
【0038】
これら有機溶剤は、2種類以上を併用してもよく、またその含有量は、剤の毛髪への吸着性や、毛髪の弾力性、柔軟性付与の観点から、本発明の毛髪化粧料中の0.01〜50質量%以下が好ましく、0.1〜35質量%がより好ましく、0.2〜10質量%がさらに好ましい。
【0039】
本発明の毛髪化粧料には、毛髪に与える感触及び毛髪補修効果を更に向上させるため、更にシリコーン化合物を添加することができる。シリコーン化合物としては、高重合ジメチルポリシロキサン、ジメチルポリシロキサン、アミノ変性シリコーン、環状シリコーン等が挙げられる。
【0040】
本発明の毛髪化粧料には、更に、毛髪化粧料に一般に使用されるその他の成分を、目的に応じて配合することができる。例えば、カチオン化セルロース、カチオン化グアーガム、ヒドロキシ化セルロース、高重合ポリエチレンオキサイド等の高分子化合物;グリセリン、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール等の保湿剤;ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油等の非イオン性界面活性剤;ステアリン酸、ベヘニン酸、オレイン酸等の高級脂肪酸;リン酸等の無機酸;ミリスチン酸イソプロピル等のエステル油;流動イソパラフィン、ワセリン、スクワラン等の炭化水素;ジンクピリチオン、塩化ベンザルコニウム等の抗フケ剤;その他キレート剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、着色剤、香料、防腐剤等が挙げられる。
【0041】
本発明の毛髪化粧料は、酸を用いて、(A)成分のアミドアミンを中和し、またpHを調整するのが好ましい。酸としては、上記(D)成分のほか、無機酸、アルキル硫酸、アルキルリン酸、酸性アミノ酸等の有機酸を用いることもできる。本発明の毛髪化粧料は、20質量倍に水で希釈した際のpH(25℃)が2〜5が好ましく、特に3〜5となるように調整するのが、乾燥後の毛髪の良好な感触、柔軟性、弾力性の付与、吸着性の向上、身体の安全性の点で好ましい。pHの調整には、上記酸のほか、塩基物質として水酸化ナトリウム等も併用できる。
【0042】
本発明の毛髪化粧料は、毛髪をシャンプーした後、毛髪に塗布し、水で洗い流して使用するタイプの剤型、例えばヘアリンス、ヘアコンディショナー、ヘアトリートメント等に好適に利用することができる。
【0043】
以上、本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することもできる。
【実施例】
【0044】
以下、%で示すものはすべて質量%である。
【0045】
実施例1〜7及び比較例1〜5
表1に示す毛髪化粧料(ヘアコンディショナー)を、常法により調製し、以下の評価方法により評価した。その結果を表1に示す。なお、表1中各成分は、質量%で示す。pHは各組成物を水で20質量倍希釈し、25℃で測定した値である。
【0046】
評価方法
ストレートパーマ1回、ブリーチ2回処理を施した日本人女性の毛髪をダメージ毛髪とし、それぞれ20g(長さ30cm、平均直径80μm)の毛髪束を、パネラー5名が次の方法で処理しながら官能評価を行った。
【0047】
下記の処方の標準シャンプー2gを用いて洗浄した毛髪束に、表1に示す毛髪化粧料2gを塗布し、毛髪全体に十分に馴染ませた後、およそ30秒間約40℃の流水下で濯ぎ、ついで、タオルドライを行い、ドライヤーで十分に乾燥させた後に乾燥後の評価を行った。評価は5人で行い、その積算値を求めた。
【0048】
・標準シャンプーの処方(pH7.0)
25%ポリオキシエチレン(2.5)ラウリルエーテル硫酸ナトリウム塩 62.0質量%
ラウリン酸ジエタノールアミド 2.3質量%
エデト酸二ナトリウム 0.15質量%
安息香酸ナトリウム 0.5質量%
塩化ナトリウム 0.8質量%
75%リン酸 適量
香料、メチルパラベン 適量
精製水 残量
【0049】
評価基準
(1)塗布時の滑らかさ
4:非常に滑らか
3:やや滑らか
2:あまり滑らかでない
1:滑らかでない
(2)濯ぎ時の滑らかさ
4:非常に滑らか
3:やや滑らか
2:あまり滑らかでない
1:滑らかでない
(3)濯ぎ時の柔らかさ
4:非常に柔らかい
3:やや柔らかい
2:あまり柔らかくない
1:柔らかくない
(4)乾燥後のしっとり感
4:非常にしっとりする
3:ややしっとりする
2:あまりしっとりしない
1:しっとりしない
(5)乾燥後のべたつきのなさ
4:べたつきを感じない
3:あまりべたつきを感じない
2:ややべたつきを感じる
1:非常にべたつきを感じる
(6)乾燥後のさらさら感
4:非常にさらさらする
3:ややさらさらする
2:あまりさらさらしない
1:さらさらしない
(7)乾燥後の柔軟性
4:非常に柔軟性がある
3:やや柔軟性がある
2:あまり柔軟性がない
1:柔軟性がない
【0050】
【表1】
【0051】
なお、表1中の各成分の原料名、及び製造元はそれぞれ下記の通りである。
・ 乳酸(90%溶液)
・ ステアリルアルコール
(原料名)カルコール8098 (製造元)花王株式会社
・ L−グルタミン酸
(原料名)L−グルタミン酸 (製造元)味の素株式会社
・ ピロリドンカルボン酸
(原料名)AJIDEW A−100 (製造元)味の素株式会社
・ グリセリンモノステアリン酸エステル
(原料名)NIKKOL MGS−AV (製造元)日光ケミカルズ株式会社
・ グリセリンモノミリスチン酸エステル
(原料名)NIKKOL MGM (製造元)日光ケミカルズ株式会社
・ テトラグリセリンモノステアリン酸エステル
(原料名)NIKKOL Tetraglyn 1−SV
(製造元)日光ケミカルズ株式会社
・ モノオレイン酸モノグリセリル(グリセリンモノオレイン酸エステル)
(原料名)NIKKOL MGO (製造元)日光ケミカルズ株式会社
【0052】
本発明の毛髪化粧料が、乾燥後の毛髪に対し、均一に付着することを示すモデル実験として、マイカ基板を用いた以下の実験を行った。
まず、1.5cm×1.5cmのマイカ基板(株式会社日本マイカ製作所 生マイカ)を水に10秒浸漬させた後、引き上げた。次に、上記処方の標準シャンプーを20倍希釈した希釈液に1分間浸漬させた後、引き上げ、20mlの水で洗浄した。その後、実施例1及び比較例1の毛髪化粧料の10倍希釈液にそれぞれ1分間浸漬させた後、引き上げ、20mlの水で洗浄した。
洗浄後のマイカ基板を(株式会社アサイラムテクノロジー製MFP-3DTM)原子力間顕微鏡(AFM)で観察した。観察結果を図1に示す。
【0053】
図1(a)は、比較例1の毛髪化粧料を用いたマイカ基板のAFM像を示す。また、図1(b)は、実施例1の毛髪化粧料を用いたマイカ基板のAFM像を示す。図1(a)に示すように、比較例1の毛髪化粧料を用いたマイカ基板は、基板の上に複数の空隙部分が散在している。これは、(A)成分〜(C)成分のαゲルでは、アミドアミン同士、脂肪族アルコール同士の相互作用による会合体が形成し、均一な吸着膜を形成していないため、水洗浄時にマイカ基板から脱落したものと考えられる。一方、表1の実施例1の毛髪化粧料を用いたマイカ基板は、均一に付着していることがわかる。これは(A)成分、(B)成分、(C)成分に、(D)成分をバランスよく組み合わせることで、塗布時の毛髪に対し、均一に付着させていることを示している。
図1