(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0003】
当該産業において、複数の層を持つゴルフボールを製造することは標準的な事項である。当該産業における個々の設計者は、特定の特徴がその他の特徴よりも重要であると感じており、特定の特徴を最適化するようにゴルフボールを設計する。個々のゴルファーは、更に、特定の特徴がその他の特徴よりも重要であり、望ましいと感じている。
【0004】
多くの場合において、ゴルファーは、ドライブができるだけ長いゴルフボールを望んでいる。ドライブ長さは、ティーボックス及びフェアウェイの相対的な高さ、フェアウェイ上の又はフェアウェイと隣接して設けられた障害、風速、気候、等のゴルファーが制御できない多くの要因によって左右される。更に、ドライブ長さは、クラブのヘッド速度、フォーム、特定のドライブに対して選択されたクラブ等のゴルファーのスウィングパラメータによって左右される。更に、ドライブ長さは、ボールがドライバーから離れる際の初速によって左右される。
【0005】
ショートゲーム等のこの他の場合には、ゴルファーは、打ったときのフィールがよく、スピン/スピン性が良好なゴルフボールを望む。ゴルフボールのフィールは、多くの場合、一つ又はそれ以上のカバー層の材料で決まる。カバー材料の選択は、耐久性、擦り切れ耐久性、色、等に基づいて行われてもよい。
【0006】
多くのゴルファーは、ボールの軌道の長さとボールのフィールとの間の所定のバランスを望む。ゴルファーによっては、専ら、これらのうちの一方又は他方を望むけれども、多くの場合、ゴルファーは、これらの特徴の所定のバランスを望む。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従って、良好なフィール及び最大初速の特徴の組み合わせを持つボールを開発するのが望ましい。特徴のこの組み合わせは、一般的には、ボールでプレイを行っているゴルファーにとって望ましいものと考えられる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
一実施例では、ゴルフボールが提供される。ゴルフボールは、コア及びこのコアを取り囲むカバーを含んでいてもよい。コアは、高度に中和したポリマーを含んでいてもよい。カバーは、減衰材料を含んでいてもよい。コアは第1反発係数を備えていてもよく、ボールは第2反発係数を備えていてもよい。第1反発係数と第2反発係数との間の差は、約0.032よりも小さい。
【0009】
別の実施例では、ゴルフボールが提供される。ゴルフボールは、コア及びこのコアを取り囲むカバーを備えていてもよい。コアの圧縮は、xであってもよい。ボールの反発係数は、式0.6511−0.024x
2+0.1165xによって与えられてもよい。コアの反発係数は、式0.7951−0.0121x
2+0.416xによって与えられてもよい。この傾向線に従って製造された任意のボールの反発係数は、適合するボール(conforming ball) を製造するために抑えられてもよい。カバーとして減衰材料を使用することにより、設計者は高エネルギコアを使用して適合するボールを製造できる。
【0010】
ゴルフボールは、圧縮、反発係数、及び初速の間に特定の関係を持つように設計できる。コアの材料及び反発係数は、ボールの初速及び/又はボールのスピン性が予想したよりも高いように工夫できる。コアの材料及び圧縮は、ボールの全体としての反発係数が予想と異なるように工夫できる。詳細には、本発明に従って製造されたボールは、所与の反発係数について予想されたよりも高い初速を持つ傾向がある。このことは、ゴルファーが、良好なドライバー距離を得るのに十分な初速を持つと同時に、ショートゲームにおいて、特にハーフウェッジショットで、低い反発係数により向上したスピン性を持つということを意味する。
【0011】
高度に中和したポリマー等の高エネルギ材料がコアで使用され、熱可塑性ポリウレタン等の減衰材料がカバーで使用されたボールは、これらの利点を達成できる。所与の高エネルギコアを持つボールは、所望のボール性能パラメータを達成するため、設計者にカバーについての多くの選択肢を提供する。
【0012】
この他のシステム、方法、特徴、及び利点は、添付図面及び詳細な説明を検討することにより、当業者に明らかになるであろう。この説明及びこの概要に含まれるこのような追加のシステム、方法、特徴、及び利点は、全て、開示の範囲内に含まれ、添付の特許請求の範囲によって保護される。
【0013】
本発明は、添付図面及び以下の説明を参照することにより更によく理解できる。添付図面における構成要素は必ずしも等縮尺ではなく、本発明の原理を例示するにあたり強調がなされている。更に、添付図面では、異なる図に亘り、同様の参照番号が対応する部分に付してある。
【発明を実施するための形態】
【0015】
多層ゴルフボールを開示する。本明細書中に論じる実施例はゴルフボールに限定されているけれども、本発明はこれに限定されない。本明細書中に記載した技術は、任意の層状物品、特に投射体、ボール、レクリエーションデバイス、又はその構成要素に適用されてもよい。
【0016】
図1は、本明細書中に開示した技術に従って製造されたボール100の側面図である。
図1乃至
図4は、ボール100の外面102に適用した一般的なディンプルパターンを示す。ボール100に設けられたディンプルパターンは、ボール100の飛翔路に影響を及ぼすけれども、ここに開示した実施例を使用するに当たり、特定のディンプルパターンが重要なのではない。設計者は、ボール100に適用されるべき任意の適当なディンプルパターンを選択してもよい。
【0017】
図2は、
図1の2−2線に沿ったボール100の第1実施例の断面図である。
図2に示すように、ボール200は二つの層を備えていてもよい。ボール200は、コア204、及びこのコア204を取り囲むカバー206を含んでいてもよい。本明細書中で説明したゴルフボールの任意の実施例は、例えばコアの圧縮成形及び/又は射出成形、任意の外層の射出成形、随意であるが、ゴルフボールのこれらの層を互いに接着剤で接着する技術、及びスプレー、ブラシ付け、浸漬、パッド塗装等によって塗装又はコーティングを行う技術等の任意の周知の技術に従って製造されてもよい。
【0018】
コア204は高エネルギ効率の材料で形成されていてもよい。高エネルギ効率の材料は、高弾性態様で衝突する傾向がある材料である。コア204は、幾つかの実施例では、主として即ち全体が高度に中和したポリマーで形成されていてもよい。幾つかの実施例では、高度に中和したポリマーは、E. I. DuPont de Nemours and Companyから入手できるHPF1000又はHPF2000であってもよい。幾つかの実施例では、コア204の直径は、約38mm乃至約41mmであってもよい。カバー206は、幾つかの実施例では、低エネルギ効率の材料即ち減衰材料(deadening material)で形成されていてもよい。低エネルギ効率の材料は、低弾性態様で衝突する傾向がある材料である。幾つかの実施例では、カバー206は、主として即ち全体が熱可塑性ウレタン樹脂で形成されていてもよい。幾つかの実施例では、カバー206の厚さは少なくとも2.1mmであってもよい。
【0019】
幾つかの実施例では、一つ又はそれ以上の追加の外層が含まれていてもよいが、これは
図2にもその他のいずれの図にも示してない。
図2のカバー206の外側には、トップコートが設けられていてもよい。トップコートは、ボール200の外観を改善し即ち調節するために適用されるコーティングである。例えば、トップコートは、ボール200の色を変えるため、又はボール200の光沢の程度を変えるために適用されてもよい。別の実施例では、追加のコーティングは、ボール200の外面202上にロゴ又は他の印刷を適用した形態をとってもよい。他の追加のコーティングをカバー206の外側に適用してもよい。このような外部コーティングは、本明細書中に説明した任意の実施例に適用してもよいということは、当業者には理解されよう。従って、この随意のコーティングは、以下の実施例と関連してこれ以上詳細には説明しない。ゴルフボールには、代表的には、コーティングが施されるということに着目されるべきである。本願で論じた試験を行った全てのボールには、塗装や保護コーティング等のコーティングが設けられている。コーティングは、ボールの反発係数(coefficient of restitution)に或る程度の影響を及ぼすが、本明細書中に記載した実施例を考えるに当たり、無視できるものと考えられる。しかしながら、コーティングの厚さが十分に厚い場合やコーティングが非常に硬質又は軟質の材料で形成されている場合、この影響は、本開示による実施例の設計上の目的に大きな影響を及ぼす。
【0020】
図3は、
図1の2−2線に沿ったボールの第2実施例の断面図である。
図3に示すように、ボール300は三つの層を含んでいてもよい。ボール300は、コア304と、コア304を取り囲む内方カバー層308と、内方カバー層308を取り囲む外方カバー層310ととを含んでいてもよい。
【0021】
コア304は、高エネルギ効率の材料で形成されていてもよい。コア304は、幾つかの実施例では、主として即ち全体が高度に中和したポリマーで形成されていてもよい。幾つかの実施例では、高度に中和したポリマーは、E. I. DuPont de Nemours and Companyから入手できるHPF1000又はHPF2000であってもよい。コア304の直径は、約38mm乃至約41mmであってもよい。幾つかの実施例では、カバー層以外の任意の層が高度に中和したアイオノマーを含んでいてもよい。幾つかの実施例では、カバー層以外の全ての層を凝集し、約38mm乃至41mmのサイズにしてもよい。幾つかの実施例では、カバー層以外の全ての層を凝集し、約38.6mmにしてもよい。
【0022】
内方カバー層308及び外方カバー層310は、幾つかの実施例では、一つ又はそれ以上の低エネルギ効率の材料即ち減衰材料で形成されていてもよい。幾つかの実施例では、内方カバー層308、外方カバー層310、又はこれらの両方は、主として即ち全体が熱可塑性ウレタン樹脂又は熱可塑性ポリウレタン樹脂で形成されていてもよい。他の実施例では、内方カバー層308、外方カバー層310、又はこれらの両方は、主として即ち全体がアイオノマー樹脂で形成されていてもよい。幾つかの実施例では、アイオノマー樹脂は、E. I. DuPont de Nemours and Companyから商業的に入手できるSURLYN(登録商標)であってもよい。幾つかの実施例では、内方カバー層308及び外方カバー層318の組み合わせ厚さは約2.1mmであってもよい。
【0023】
図4は、
図1の2−2線に沿ったボール400の断面図である。
図4に示すように、ボール400は四つの層を含んでいてもよい。第1層412は内方コア層であってもよい。第2層414は外方コア層であってもよく、第1層412を取り囲んでいてもよい。第3層416は内方カバー層であってもよく、第2層414を取り囲んでいてもよい。第4層418は外方カバー層であってもよく、第3層416を取り囲んでいてもよい。第1層即ち内方コア層412及び第2層即ち外方コア層414を一緒に考えてもよく、コア420と呼んでもよい。第3層即ち内方カバー層416及び第4層即ち外方カバー層418を一緒に考えてもよく、カバー422と呼んでもよい。
【0024】
コア420は一つ又はそれ以上の高エネルギ効率の材料で形成されていてもよく、第1層412及び第2層414の各々は、異なる配合の高エネルギ効率の材料で形成されていてもよい。コア420の少なくとも一つの層は、幾つかの実施例では、主として即ち全体が高度に中和したポリマーで形成されていてもよい。幾つかの実施例では、高度に中和したポリマーは、E. I. DuPont de Nemours and Companyから入手できるHPF1000又はHPF2000であってもよい。カバー422は、低エネルギ効率の材料即ち減衰材料で形成されていてもよい。幾つかの実施例では、第3層416、第4層418、又はこれらの両方が、主として即ち全体が熱可塑性ウレタン樹脂で形成されていてもよい。他の実施例では、第3層416、第4層418、又はこれらの両方は、主として即ち全体がアイオノマー樹脂で形成されていてもよい。幾つかの実施例では、アイオノマー樹脂はE. I. DuPont de Nemours and Companyから商業的に入手できるSURLYNであってもよい。幾つかの実施例では、内方カバー層416及び外方カバー層418の組み合わせ厚さは約2.1mmであってもよい。幾つかの実施例では、カバー層以外の任意の層が、高度に中和したアイオノマーを含んでいてもよい。幾つかの実施例では、カバー層以外の全ての層を凝集し、約38mm乃至41mmの大きさにしてもよい。幾つかの実施例ではカバー層以外の全ての層を凝集し、約38.6mmにしてもよい。
【0025】
図4には、複数の層を持つボール400が示してある。幾つかの実施例では、追加の層を加えてもよい。例えば、幾つかの実施例では、コア420とカバー422との間にマントル層を加えてもよい。他の実施例では、内方カバー層416と外方カバー層418との間に中間カバー層を挿入してもよい。他の実施例では、内方コア層412と外方コア層414との間に中間コア層を挿入してもよい。
【0026】
更に、本明細書中に開示した実施例から逸脱することなく、設計者の特定の所望に基づいて、これらの実施例のうちの任意の実施例に対し、同様の変更を行ってもよいということは当業者には理解されよう。例えば、四層ボールには、内方コア層、中間コア層、外方コア層、及び単一のカバー層が含まれていてもよい。同様に、四層ボールには、単一のコア層及び内方カバー層、中間カバー層、及び外方カバー層が含まれていてもよい。更に、当業者には、中間層の数が異なるボールが明らかである。従って、例示の実施例は単なる例であって、限定を意図するものではない。
【0027】
次に
図5を参照すると、この図には、開示の実施例と現在商業的に入手できるボールとの間の相違を示すグラフが示してある。これらのボールを以下に更に詳細に説明する。左側のy軸の値は、ドライバーを用いて試験した場合のボールの初速である。各ボールをロフト角が9.5のナイキSQドライバーで同じ条件(ヘッド速度、迎え角、等)で打った。
【0028】
初速は、棒グラフの各棒の高さによってグラフに示してある。棒グラフに示す初速は、マイル毎時で示してある。150マイル毎時の初速は、約220フィート毎秒(67.056メートル毎秒)と等しい。約170マイル毎時の初速は、約250フィート毎秒(76.2メートル毎秒)と等しい。
【0029】
グラフの右側の値は、ボール全体としての反発係数を示す。対象物の反発係数を計測するため、対象物を空気砲によって1秒当たり約40メートルの初速で発射した。砲から約1.2mのところに鋼板を位置決めし、砲から約0.6m乃至約0.9mの距離に速度監視デバイスを配置した。対象物が空気砲から発射され、速度監視デバイスを通過し、初速を確認する。対象物は、次いで、鋼板に当たって跳ね返り、速度監視デバイスを通り、戻り速度を確認する。反発係数は、初速に対する戻り速度の比である。各ボールの反発係数をグラフの線544で示す。
【0030】
X軸は、試験を行ったボールに付した番号である。各ボールには、初速及び反発係数について試験が行われた。最初の9個のボール(1番乃至9番)は、商業的に入手できるボールである。これらのゴルフボールの各々は、ブタジエンゴムコンパウンド製の直径が約40mmのコアを有する。各ボールについて、コアの正確な配合がわずかに異なっている。各ボールのコアは、添加剤が異なるブタジエンゴムで形成されており、又は大きさが異なり、そのため圧縮及び反発係数が異なる。反発係数とコアの大きさとの間には、相関、即ち潜在的に強い相関があるものと考えられる。そのため、コアの大きさの僅かな変化でも反発係数に無視できない影響が及ぼされる。これらのボールの各々のカバーの厚さは約1.4mmであり、主としてSURLYNで形成されている。
【0031】
他方、10番を付したボールは、本実施例に従って製造したボールである。10番ボールは、主として高度に中和したポリマー樹脂で形成された直径が約38mmのコアを有する。コアの直径は、約41mm程度であってもよい。ボールのカバーの厚さは約2.1mmであるが、約0.9mmと薄くてもよい。所望であれば、USGAの大きさについての最小規格である42.67mm(1.680インチ)とボールが合致するように、マントル層を含んでいてもよい。
【0032】
初速及び反発係数の関係を比較すると、1番乃至9番のボールについて、反発係数と初速との間に全体として相関がある。例えば、反発係数が0.795よりも低い1番、2番、4番、及び5番のボールについて、初速は約150.2まで低下する。反発係数が0.800よりも低い3番、6番、7番、及び8番のボールについて、初速は約150.8よりも高い。反発係数が約0.800の9番のボールについて、初速は約150.5である。従って、グラフは、反発係数と初速との間に全体として相関があるということを示す。
【0033】
しかしながら、
図5に示すグラフは、10番ボールの初速が、反発係数が0.774の従来のボールの予想初速から外れるということを示す。10番ボールについて、反発係数の値は約0.774である。1番乃至9番の従来のボールからは初速が150マイル毎時(67.056メートル毎秒)よりも低いと予想されるが、10番ボールの初速は150.8である。この初速は、10番ボールよりも反発係数が遥かに高いボールの初速とほぼ同程度である。従って、上述のボール構造を使用することによって、ショートゲームにおける良好なフィール及びスピン性のためにボールの反発係数を比較的低いままにして、ドライバーを用いた長い距離に対して適切な高い初速を維持する。
【0034】
これは、ハーフウェッジショットについて特に重要である。反発係数が低いボールでは、ゴルファーは、反発係数が高いボールと同じ距離を出すため、ボールを強く、即ち比較的高いヘッド速度で打とうとする。強く打てば打つ程(クラブのヘッド速度が高ければ高い程)、ボールに更に多くのスピンが加わる。従って、ゴルファーは、初速及びドライバー距離が良好であるがショートゲームでのスピン性が高い、低反発係数のボールを得ることができる。
【0035】
現存のボールと本開示のボールとの間で比較できる追加の特徴が
図6でわかる。
図6は、様々なボール及びボールコアについての圧縮と反発係数との間の関係を示すグラフである。x軸は、ボールの内方コア層の圧縮を表す。圧縮は、当該技術で周知の方法で決定される。球形のコア及び/又はボールに10kgの初期荷重を加える。ポール(pole(s)) 、シーム、又はランダムな点等の一つ又はそれ以上の点で、ボールの直径を、代表的にはミリメートル単位で計測する。単一の値又は得られた値の平均値のいずれかを記録する。荷重を130kgまで増大し、同じ点でボールの直径の第2の計測を、これもまたミリメートル単位で行う。大きな荷重が加わった状態での単一の値又は得られた値の平均値を記録する。記録されたミリメートル単位の値間の差が圧縮である。
【0036】
y軸の値は、考えられる四つのアイテムの各々についての反発係数を表す。線650は、ブタジエンゴムコンパウンドで形成された直径が約38mmのコアについての圧縮と反発係数との間の関係を示す。このゴムコアの傾向線についての方程式を以下の式1に示す。
式1 y=0.7531−0.0128x
2+0.055x
ここで、xは内方コアの圧縮であり、yは対応する反発係数である。
【0037】
線660は、線650で示すコアを覆うカバーを含むボールについての圧縮と反発係数との間の関係を示す。この線についての方程式は、以下の式2で与えられる。
式2 y=0.6794−0.0179x
2+0.0831x
ここで、xはコアの圧縮であり、yはボール全体の反発係数である。コアの相対的反発係数とボールの反発係数との間の差は、約0.035乃至約0.037である。
【0038】
しかしながら、主として即ち全体が高度に中和したポリマーで形成されたコアを含むボールについての相対的反発係数を比較すると、明確な差が示される。線670は、主として即ち全体が高度に中和したポリマーで形成された直径が約38mmのコアについての圧縮と反発係数との間の関係を示す。この線についての方程式は、以下の式3で与えられる。
式3 y=0.7951−0.0121x
2+0.0416x
ここで、xはコアの圧縮であり、yは対応する反発係数である。
【0039】
線680は、線670で示すコアを覆うカバーを含むボールについての圧縮と反発係数との間の関係を示す。カバーは、線650で表されるボールのカバーと同じカバー構造である。この線についての方程式は、以下の式4で与えられる。
式4 y=0.6511−0.024x
2+0.1165x
ここで、xはコアの圧縮であり、yはボール全体の反発係数である。コアの相対的反発係数とボールの反発係数との間の差は、約0.026乃至約0.031である。
【0040】
従って、
図6に明確に示されているように、内方コアの所与の圧縮について、ゴムコアを持つボールの反発係数は、HNP(highly neutralized polymer)コアを持つボールよりも低い。更に、減衰材料の効果を最大にするため、コアの反発係数とボールの反発係数との間の差は少なくとも0.026でなければならないが、0.037、0.05、又は場合によっては0.1とこれよりもかなり高くてもよい。ボールの反発係数が低ければ低い程、ボールのスピン性が向上し、そのため、反発係数の差が少なくとも0.037又は少なくとも0.05と大きいボールが望ましい。上文中に論じたように、本発明に従って製造されたコアは反発係数が比較的高いため、カバー材料を選択する上での融通性をかなり大きくできる。これは、減衰性カバーを設けても、ボールの全体としての反発係数が最高性能範囲内にあるためである。
【0041】
これらの利点を
図7に更に簡潔に示す。ここでは、ゴムコアの傾向線762は、所与の反発係数についての内方コアの圧縮が、HNPコアの傾向線760よりも一貫して低いということを示す。HNPコアを持つボールの傾向線(HNPコアを持つボール全体についての傾向線)764は、参考のために示してある。
【0042】
従って、特定の反発係数の樹脂コアを同じ特定の反発係数のゴムコアに代えることにより、ボール及びコアの相対的反発係数を劇的に変えることができる。このことは、樹脂コアの反発係数がゴムコアの傾向線によって与えられた反発係数を越え、ボールの反発係数が以下の式5によって与えられる反発係数よりも小さい場合に真である。
式5 y=−0.0103x+0.8419
ここで、yは反発係数であり、xは内方コアの圧縮である。
【0043】
これは、代表的には、少なくとも一つの内/非カバー層を高度に中和したアイオノマー/ポリマーで形成することによって達成できる。ブタジエンゴムコアと高度に中和したポリマーコアとの間でカバーの性質を変える必要はない。しかしながら、コアとボールとの間の反発係数の差は、高度に中和したポリマーコアを使用した場合、少なくとも約0.004低い。これにより、反発係数が比較的高いボールを、同じカバー材料を用いて製造できる。
【0044】
高度に中和したポリマーコア及び高度に中和したポリマーコアを持つボールについて上文中に論じた反発係数の傾向線に従って、他の制限を観察する必要がある。例えば、同じ形体のボールの反発係数は、式5、又は更に控えめに以下の式6によって与えられた傾向よりも低い。
式6 y=−0.0103x+0.8299
ここで、yは反発係数であり、xは内方コアの圧縮である。
従って、設計者は、反発係数が、式6によって与えられた反発係数を越えないように、式4に従って与えられたボールの反発係数を抑えようとする。
【0045】
上述の開示の範囲内で製造されたボールは、改善された特性を備えているものと考えられる。このようなボールは、初速が予想よりも高いと考えられる。このようなボールは、更に、カバー材料を大幅に変更でき、特に低価格のカバー材料にできる。このようなボールは、他のボールよりも長い軌跡を持つ比較的安価なボールをゴルファーに提供できる。
【0046】
これらの利点を高めるため、層状物品の別の構造もまた可能である。例えば、本開示、及び2010年8月20日に出願された「指定の曲げ弾性率及び硬度を持つ複数層を有するゴルフボール」という表題の米国特許出願第12/860,785号である米国特許第___号に記載された物品の両方の教示に従ってゴルフボールを製造してもよい。出典を明示することにより、上記出願に開示された全ての内容は本明細書の開示の一部とされる。
【0047】
本発明の様々な実施例を説明したが、以上の説明は、限定でなく例示を目的としたものであり、本開示の範囲内のこの他の多くの実施例が可能であるということは当業者には明らかであろう。従って、本開示は添付の特許請求の範囲及びその等価物の範囲を除き、限定されるものではない。更に、添付の特許請求の範囲の範疇で様々な変形及び変更を行うことができる。