(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の好ましい実施形態の一例について説明する。但し、下記の実施形態は、単なる一例である。本発明は、下記の実施形態に何ら限定されない。
【0017】
[負極活物質]
本実施形態において、非水電解質二次電池の負極活物質は、黒鉛と亜鉛合金とを含む。
【0018】
黒鉛としては、例えば天然黒鉛、人造黒鉛、メソフェーズカーボン小球体などが挙げられる。
【0019】
黒鉛の形状は、特に限定されないが、粉末状であることが好ましい。
【0020】
黒鉛の平均粒子径は、5μm〜30μm程度であることが好ましく、10μm〜25μm程度であることがより好ましい。なお、本発明において、黒鉛の平均粒子径は、島津製作所社製レーザー回折式粒度分布測定装置(SALAD−2000)を用いて測定した値である。
【0021】
黒鉛は、負極活物質中に20質量%〜99質量%程度の範囲で含まれることが好ましく、50質量%〜90質量%程度の範囲で含まれることがより好ましい。
【0022】
負極活物質に含まれる黒鉛は、1種類のみであってもよいし、2種類以上であってもよい。
【0023】
亜鉛合金は、下記一般式(1)で表される化合物である。
【0025】
一般式(1)において、Mは、Ni,Cu及びFeからなる群から選ばれる少なくとも1種である。Mは、Niであることが好ましい。
【0026】
亜鉛合金の形状は、特に限定されないが、粉末状であることが好ましい。
【0027】
亜鉛合金の平均粒子径は、5μm〜25μm程度であることが好ましく、10μm〜20μm程度であることがより好ましい。なお、本発明において、亜鉛合金の平均粒子径は、島津製作所社製レーザー回折式粒度分布測定装置(SALAD−2000)を用いて測定した値である。
【0028】
亜鉛合金は、多結晶であることが好ましい。
【0029】
また、一般式(1)において、xは、0<x<1の関係を満たす。一般式(1)において、xは、0<x≦0.01の関係を満たすことが好ましく、0<x≦0.0015の関係を満たすことがより好ましく、0<x≦0.0005の関係を満たすことが特に好ましい。xの下限値は、0.00001であることがより好ましい。
【0030】
一般式(1)において、xが、x≦0.01の関係を満たすことにより、亜鉛とM(Ni,Cu及びFeからなる群から選ばれる少なくとも1種)とを容易に合金化することができる。
【0031】
一般式(1)で表される亜鉛合金は、ガスアトマイズ法、水アトマイズ法などの公知の方法により得ることができる。
【0032】
亜鉛合金は、負極活物質中に1質量%〜80質量%程度の範囲で含まれることが好ましく、10質量%〜50質量%程度の範囲で含まれることがより好ましい。
【0033】
負極活物質に含まれる亜鉛合金は、1種類のみであってもよいし、2種類以上であってもよい。
【0034】
負極活物質は、黒鉛と亜鉛合金とを混合することにより得られる。黒鉛と亜鉛合金との混合比(黒鉛:亜鉛合金)は、質量比で99:1〜20:80程度の範囲であることが好ましく、90:10〜50:50程度の範囲であることがより好ましい。
【0035】
黒鉛と亜鉛合金との混合方法は、負極活物質において、黒鉛と亜鉛合金とが均一に分散するように混合できる方法であれば特に限定されない。
【0036】
[負極]
負極活物質を、結着剤、溶剤などと混合し、負極集電体と一体化することにより、非水電解質二次電池の負極とすることができる。より具体的には、負極活物質、結着剤及び溶剤を含むスラリーを作製し、これを負極集電体上に塗布した後乾燥し、圧延ローラーを用いて圧延して、非水電解質二次電池の負極とすることができる。
【0037】
[非水電解質二次電池]
非水電解質二次電池は、上述の負極と、正極と、非水電解質とを備える。
【0038】
正極は、正極活物質を含む。正極活物質を、結着剤、溶剤などと混合し、正極集電体と一体化することにより、非水電解質二次電池の正極とすることができる。
【0039】
正極活物質としては、非水電解質二次電池において一般に使用される公知のものが使用できる。正極活物質としては、例えば、リチウム・コバルト複合酸化物(例えばLiCoO
2)、リチウム・ニッケル複合酸化物(例えばLiNiO
2)、リチウム・マンガン複合酸化物(例えばLiMn
2O
4、LiMnO
2)、リチウム・ニッケル・コバルト複合酸化物(例えばLiNi
1−xCo
xO
2)、リチウム・マンガン・コバルト複合酸化物(例えばLiMn
1−xCo
xO
2)、リチウム・ニッケル・コバルト・マンガン複合酸化物(例えばLiNi
xCo
yMn
zO
2(x+y+z=1))、リチウム・ニッケル・コバルト・アルミ複合酸化物(例えばLiNi
xCo
yAl
zO
2(x+y+z=1))、Li含有遷移金属酸化物などが挙げられる。正極活物質は、1種類のみからなってもよいし、2種類以上の混合物であってもよい。
【0040】
正極に含まれる結着剤としては、例えば、ポリフッ化ビニリデンが挙げられる。
【0041】
正極に含まれる溶剤としては、N−メチル−2−ピロリドンなどの非プロトン性溶媒などが挙げられる。
【0042】
非水電解質としては、公知の非水電解質二次電池において一般に使用されているものが使用できる。非水電解質としては、例えば、非水系溶媒に溶質を溶解させた非水電解液などが使用できる。
【0043】
非水系溶媒としては、公知の非水電解質二次電池において一般に使用されている非水電
解質が使用できる。非水系溶媒としては、例えば、環状カーボネート、鎖状カーボネートなどが挙げられる。環状カーボネートとしては、例えば、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ビニレンカーボネートなどを用いることができる。また、鎖状カーボネートとしては、例えば、ジメチルカーボネート、メチルエチルカーボネート、ジエチルカーボネートなどが挙げられる。非水系溶媒は、1種類のみからなってもよいし、2種類以上の混合物であってもよい。
【0044】
溶質としては、公知の非水電解質二次電池において一般に使用されている非水電解質が使用できる。溶質としては、例えば、LiPF
6,LiBF
4,LiCF
3SO
3,LiN(CF
3SO
2)
2,LiN(C
2F
5SO
2)
2,LiN(CF
3SO
2)(C
4F
9SO
2),LiC(CF
3SO
2)
3,LiC(C
2F
5SO
2)
3,LiClO
4,Li
2B
10Cl
10,Li
2B
12Cl
12などが挙げられる。溶質は、1種類のみからなってもよいし、2種類以上の混合物であってもよい。
【0045】
また、非水電解質としては、非水電解液をポリエチレンオキシド、ポリアクリロニトリルなどのポリマー電解質に含浸させたゲル状ポリマー電解質などを用いることもできる。
【0046】
本実施形態の非水電解質二次電池において、負極活物質に含まれる亜鉛合金が、亜鉛とNi,CuまたはFeとの合金である場合、亜鉛合金が多結晶となりやすい。特に、亜鉛とNiとの合金である場合に、亜鉛合金が多結晶となりやすい。負極活物質に含まれる亜鉛合金が多結晶である場合、電極反応の活性面が増大する。よって、負極活物質に含まれる亜鉛合金が、亜鉛とNi,CuまたはFeとの合金である場合、特に、亜鉛とNiとの合金である場合には、非水電解質二次電池をさらに高容量化、高エネルギー密度化することができる。
【0047】
本実施形態の非水電解質二次電池において、一般式(1):M
xZn
1−xで表される亜鉛合金は、xが0<x≦0.01の関係を満たすことが好ましい。合金化が容易となるためである。また、xが0<x≦0.0015の関係を満たす場合に、非水電解質二次電池をより高容量化、高エネルギー密度化することができ、xが0<x≦0.0005の関係を満たす場合に、非水電解質二次電池を特に高容量化、高エネルギー密度化することができる。
【0048】
さらに、本実施形態の非水電解質二次電池において、負極活物質中に、黒鉛に加えて、亜鉛合金が1質量%〜80質量%の範囲で含まれていることにより、非水電解質二次電池をより高容量化、高エネルギー密度化することができる。特に、亜鉛合金が10質量%〜50質量%の範囲で含まれていることにより、非水電解質二次電池をさらに高容量化、高エネルギー密度化することができる。
【0049】
以下、本発明について、具体的な実施例に基づいて、さらに詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に何ら限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲において適宜変更して実施することが可能である。
【0050】
(実施例1)
[亜鉛合金粉末の作製]
亜鉛合金粉末として、水アトマイズ法により、平均粒径が約20μmのニッケル亜鉛合金(Ni
0.00050Zn
0.99950)粉末を作製した。なお、ニッケル亜鉛合金の平均粒子径は、レーザー回折式粒度分布測定装置として島津製作所社製SALAD−2000を用い、粉末抵抗は粉末抵抗測定システムとして三菱化学株式会社製PD−41を用いて測定した。
【0051】
[負極の作製]
負極活物質として、上記のようにして得られたニッケル亜鉛合金と、平均粒子径が約25μmの人造黒鉛を用いた。ニッケル亜鉛合金と人造黒鉛を、質量比(ニッケル亜鉛合金:人造黒鉛)が30:70となるように、乳鉢を用いて混合した。次に、得られた混合物に、結着剤としてポリフッ化ビニリデンを、負極活物質と結着剤の質量比(負極活物質:結着剤)が90:10となるように混合した。さらに、溶剤としてN−メチル−2−ピロリドンを加え、混練して負極合剤スラリーを作製した。
【0052】
得られた負極合剤スラリーを、厚さ10μmの銅箔からなる負極集電体の上に塗布した。これを80℃で乾燥させた後、圧延ローラーを用いて圧延し、集電タブを取り付けて、負極を作製した。
【0053】
[試験セルの作製]
上記の負極を用いて、アルゴン雰囲気下のグローブボックス中において、
図1に示すような試験セル1を作製した。上記の負極を作用極2とし、対極3及び参照極4としてそれぞれ金属リチウムを用いた。作用極2、対極3及び参照極4には、それぞれ電極タブ8が取り付けた。作用極2と対極3との間及び作用極2と参照極4との間に、それぞれポリエチレン製のセパレーター5を介在させ、非水電解液6と共にアルミニウムラミネートで構成されたラミネート容器7内に封入して、実施例1の試験セルA1とした。
【0054】
なお、非水電解液6として、エチレンカーボネートとエチルメチルカーボネートを3:7の体積比で混合させた混合溶媒に、ヘキサフルオロリン酸リチウム(LiPF
6)を濃度が1モル/リットルとなるように溶解させたものを用いた。
【0055】
(実施例2)
亜鉛合金粉末として、Ni
0.00050Zn
0.99950の代わりにCu
0.00050Zn
0.99950を用いたこと以外は、実施例1と同様にして試験セルA2を作製した。
【0056】
(実施例3)
亜鉛合金粉末として、Ni
0.00050Zn
0.99950の代わりにFe
0.00050Zn
0.99950を用いたこと以外は、実施例1と同様にして試験セルA3を作製した。
【0057】
(比較例1)
負極活物質として、人造黒鉛を添加せず、亜鉛合金粉末Ni
0.00050Zn
0.99950のみを負極活物質として用いたこと以外は、実施例1と同様にして比較例1の試験セルXを作製した。
【0058】
(比較例2)
負極活物質として、人造黒鉛を添加せず、純亜鉛粉末のみを負極活物質として用いたこと以外は、実施例1と同様にして比較例2の試験セルYを作製した。
【0059】
(比較例3)
負極活物質として、人造黒鉛のみを用いたこと以外は、実施例1と同様にして比較例3の試験セルZを作製した。
【0060】
[充放電試験]
上記のように作製した実施例1〜3で作製した試験セルA1〜A3、比較例1〜3で作製した試験セルX〜Zの各試験セルについて、以下の充放電試験を行った。
【0061】
各試験セルについて、室温下、0.75mA/cm
2、0.25mA/cm
2及び0.1mA/cm
2の各定電流において、それぞれ0V(vs.Li/Li
+)に達するまで充電した後、0.25mA/cm
2の定電流で電位が1.0V(vs.Li/Li
+)に達するまで放電し、それぞれ1サイクル目と6サイクル目における初期放電容量を求めた。結果を表1に示す。
【0063】
表1に示す結果から、人造黒鉛と亜鉛合金(ニッケル亜鉛合金、銅亜鉛合金または鉄亜鉛合金)を負極活物質とした試験セルA1〜A3においては、純亜鉛または人造黒鉛を負極活物質として単独で用いた試験セルY,Zに比べて、初期放電容量及び6サイクル目放電容量が大きいことが分かる。また、試験セルA1〜A3は、負極活物質としてニッケル亜鉛合金のみを用いた試験セルXと比べても、初期放電容量及び6サイクル目放電容量が大きいことが分かる。特に、6サイクル目放電容量については、試験セルA1〜A3は、試験セルX〜Zに比して、顕著に大きい。
【0064】
なお、負極活物質の粉末抵抗の値から、試験セルA1〜A3及びXで用いた亜鉛合金は、多結晶化していることが分かる。試験セルA1及びXのニッケル亜鉛合金において、特に多結晶化が進んでいることが分かる。
【0065】
(実施例4)
亜鉛合金として、Ni
0.00050Zn
0.99950の代わりにNi
0.00010Zn
0.99990を用いたこと以外は、実施例1と同様にして試験セルA4を作製した。亜鉛合金の粉末抵抗は、1.20Ω/cm
3であった。
【0066】
(実施例5)
亜鉛合金として、Ni
0.00050Zn
0.99950の代わりにNi
0.00025Zn
0.99975を用いたこと以外は、実施例1と同様にして試験セルA5を作製した。亜鉛合金の粉末抵抗は、1.30Ω/cm
3であった。
【0067】
(実施例6)
亜鉛合金として、Ni
0.00050Zn
0.99950の代わりにNi
0.00075Zn
0.99925を用いたこと以外は、実施例1と同様にして試験セルA6を作製した。亜鉛合金の粉末抵抗は、1.45Ω/cm
3であった。
【0068】
(実施例7)
亜鉛合金粉末として、Ni
0.00050Zn
0.99950の代わりにNi
0.00100Zn
0.99900を用いたこと以外は、実施例1と同様にして試験セルA7を作製した。亜鉛合金の粉末抵抗は、1.30Ω/cm
3であった。
【0069】
(実施例8)
亜鉛合金として、Ni
0.00050Zn
0.99950の代わりにNi
0.00150Zn
0.99850を用いたこと以外は、実施例1と同様にして試験セルA8を作製した。亜鉛合金の粉末抵抗は、1.10Ω/cm
3であった。
【0070】
[充放電試験]
実施例4〜8で作製した各試験セルA4〜A8について、実施例1〜3及び比較例1〜3と同様にして、充放電試験を行い、初期放電容量を測定した。結果を実施例1の試験セルA1の結果と共に表2に示す。
【0072】
表2に示す結果より、Ni
xZn
1−xのxが、0<x≦0.0015の関係を満たす亜鉛合金を用いた場合、高い初期放電容量を示すことが分かる。Ni
xZn
1−xのxが、0<x≦0.001の関係を満たす亜鉛合金を用いた場合、さらに高い初期放電容量を示し、xが、0<x≦0.0005の関係を満たす亜鉛合金を用いた場合、特に高い初期放電容量を示すことが分かる。
【0073】
(実施例9)
負極活物質において、ニッケル亜鉛合金と人造黒鉛との混合比を、質量比で30:70(ニッケル亜鉛合金:人造黒鉛)とする代わりに、5:95としたこと以外は、実施例1と同様にして、セルA9を作製した。
【0074】
(実施例10)
負極活物質において、ニッケル亜鉛合金と人造黒鉛との混合比を、質量比で30:70(ニッケル亜鉛合金:人造黒鉛)とする代わりに、10:90としたこと以外は、実施例1と同様にして、セルA10を作製した。
【0075】
(実施例11)
負極活物質において、ニッケル亜鉛合金と人造黒鉛との混合比を、質量比で30:70(ニッケル亜鉛合金:人造黒鉛)とする代わりに、50:50としたこと以外は、実施例1と同様にして、セルA11を作製した。
【0076】
(実施例12)
負極活物質において、ニッケル亜鉛合金と人造黒鉛との混合比を、質量比で30:70(ニッケル亜鉛合金:人造黒鉛)とする代わりに、65:35としたこと以外は、実施例1と同様にして、セルA12を作製した。
【0077】
(実施例13)
負極活物質において、ニッケル亜鉛合金と人造黒鉛との混合比を、質量比で30:70(ニッケル亜鉛合金:人造黒鉛)とする代わりに、80:20としたこと以外は、実施例1と同様にして、セルA13を作製した。
【0078】
[充放電試験]
実施例9〜14で作製した各試験セルA9〜A13について、実施例1〜3及び比較例1〜3と同様にして、充放電試験を行い、初期放電容量を測定した。結果を実施例1の試験セルA1の結果と共に表3に示す。
【0080】
表3に示す結果より、負極活物質中に亜鉛合金粉末が5〜80質量%の範囲で含まれていることにより、高い初期放電容量が得られることが分かる。負極活物質中に亜鉛合金粉末が10〜50質量%の範囲で含まれていることにより、特に高い初期放電容量が得られることが分かる。