特許第5779500号(P5779500)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許5779500-転炉傾斜駆動装置のためのトルク支持体 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5779500
(24)【登録日】2015年7月17日
(45)【発行日】2015年9月16日
(54)【発明の名称】転炉傾斜駆動装置のためのトルク支持体
(51)【国際特許分類】
   C21C 5/50 20060101AFI20150827BHJP
【FI】
   C21C5/50 B
【請求項の数】2
【全頁数】5
(21)【出願番号】特願2011-515084(P2011-515084)
(86)(22)【出願日】2009年5月8日
(65)【公表番号】特表2011-525568(P2011-525568A)
(43)【公表日】2011年9月22日
(86)【国際出願番号】DE2009000664
(87)【国際公開番号】WO2009155892
(87)【国際公開日】20091230
【審査請求日】2011年2月22日
【審判番号】不服2014-5080(P2014-5080/J1)
【審判請求日】2014年3月17日
(31)【優先権主張番号】102008030192.2
(32)【優先日】2008年6月25日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】500031054
【氏名又は名称】エスエムエス・ジーマーク・アクチエンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】SMS Siemag AG
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【弁理士】
【氏名又は名称】奥山 尚一
(74)【代理人】
【識別番号】100096769
【弁理士】
【氏名又は名称】有原 幸一
(74)【代理人】
【識別番号】100107319
【弁理士】
【氏名又は名称】松島 鉄男
(74)【代理人】
【識別番号】100114591
【弁理士】
【氏名又は名称】河村 英文
(74)【代理人】
【識別番号】100184424
【弁理士】
【氏名又は名称】増屋 徹
(72)【発明者】
【氏名】ハーテル,イェルク
(72)【発明者】
【氏名】ヴァルメロート,ベンヤミン
(72)【発明者】
【氏名】ローゼ,ルッツ
(72)【発明者】
【氏名】ズンダーマン,クリストフ
(72)【発明者】
【氏名】シュルツェ,シュテファン
(72)【発明者】
【氏名】イミーラ,クリスティアン
(72)【発明者】
【氏名】イーゲルホルスト,ヴォルフガング
(72)【発明者】
【氏名】ティーデマン,ウーヴェ
【合議体】
【審判長】 木村 孔一
【審判官】 河本 充雄
【審判官】 松嶋 秀忠
(56)【参考文献】
【文献】 特開平3−257112(JP,A)
【文献】 国際公開第2008/040524(WO,A1)
【文献】 特開平9−291306(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C21C 5/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ジャーナル軸上に取付けられた転炉傾斜駆動装置のためのトルク支持体であって、
転炉を支える構造体(6)への支持のために、駆動対象のジャーナル軸を受け入れる歯車ユニットハウジング(1)には、支持部が設けられており、前記支持部の各々が、関節接続式で前記構造体(6)に個別に固定されており、前記支持部の各々が、複動の油圧ピストン−シリンダユニット(5)として構成され、前記油圧ピストン−シリンダユニット(5)のうちの少なくとも1つは、動力なしで前記転炉の動きに追従するために、解放できるように構成され
前記油圧ピストン−シリンダユニット(5)は、前記転炉の吹錬処理の際の能動的または受動的な振動を減衰させるように制御され、
若しくは、前記転炉の傾斜、または吹錬処理の際、固定されていることを特徴とするトルク支持体。
【請求項2】
前記油圧ピストン−シリンダユニット(5)が、別個独立に制御されるようになっていることを特徴とする請求項に記載のトルク支持体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軸ジャーナル上に取付けられた転炉傾斜駆動装置のためのトルク支持体に関するものである。このトルク支持体において、いくつかの支持部が、転炉を支える構造体への支持のために、駆動対象の軸ジャーナルを受け入れる歯車ユニットハウジングに設けられている。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、軸ジャーナルに取付けられる駆動装置、特に、転炉傾斜駆動装置のためのトルク支持体が記載されており、このトルク支持体において、歯車ユニットハウジングが、駆動対象の軸ジャーナルに取付けられている。
【0003】
操作ロッドが、軸ジャーナルの回転軸に関して対称となるように歯車ユニットハウジングに配置されている。操作ロッドの下端は、ジョイント軸受に接続しており、ジョイント軸受は、トーションバー(torsion bar)によって互いに接続されている。各々の操作ロッドは、機械的な手段によって付勢しておくことができるばね要素が間に配置された2つの部分を備えている。
【0004】
トーション軸は、横方向の力(横方向の力=トルクの印加に起因する曲げ力)対して独立しているが、軸の下側部分にある4つの回動点(pivot point)の全てに対して大きな回転角度とともに大きな力が生じることによって、摩擦による摩耗および微小な腐食が生じるため、吹錬プロセスから生じる激しい動力学には適していない。
【0005】
トーション軸は、調節することができず、能動的に影響を与えることが不可能である。
【0006】
別のトルク支持体(特許文献2)においては、圧縮ガスによって作動させることができる単動ピストンシリンダが、弾性的な支持のために、転炉の軸の両側に設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】ドイツ特許出願公開第3827329 A1号明細書
【特許文献2】欧州特許出願公開第0003 108 A1号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、この支持構造は、トルクが転炉の軸ジャーナルに沿って導入されるときに、一方のシリンダだけに荷重がかかり、反対側のシリンダの荷重が軽減されるため、横方向の力を免れない。これにより、必然的に、転炉の軸ジャーナルに曲げ力がもたらされ、すなわち、歯車ユニットを保持している転炉の軸ジャーナルの軸が、転炉の軸からシリンダまでの距離を乗算した片側だけのシリンダ力によって曲げられる。
【0009】
本発明の目的は、転炉傾斜駆動装置のための優れたトルク支持体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この目的は、本発明に係る、ジャーナル軸上に取付けられた転炉傾斜駆動装置のためのトルク支持体によって達成される。本発明において、いくつかの支持部が、転炉を支える構造体への支持のために、駆動対象のジャーナル軸を受け入れる歯車ユニットハウジングに設けられ、上記支持部の各々が、関節接続式(articulated manner)で上記構造体に個別に固定され、上記支持部の各々が、複動(double-acting)の油圧ピストン−シリンダユニットとして構成され、前記油圧ピストン−シリンダユニット(5)のうちの少なくとも1つは、動力なしで前記転炉の動きに追従するために、解放できるように構成されている
【0011】
上述した従来技術と対照的に、本発明に係るトルク支持体のシリンダは、複動式である。複動式のシリンダが、転炉によって持ち込まれるトルクに逆らい、転炉の軸の両側において互いに反対方向に等しい大きさの力を設定し、これらの力が、互いの力を打ち消し合うように作用し、トルクが加わるときに軸系に曲げ力が生じることがないようにする。
【0012】
支持部は、傾斜駆動装置と支持構造体との間の接続を提供する。この接続によって、吹錬プロセスの際の転炉の軸ジャーナルの軸を中心とする駆動装置の回転を除く駆動装置のあらゆる動きが許容され、特に軸ジャーナルにおいて曲げ力を生じさせることなく、トルクだけが軸ジャーナルに導入されるようになる。
【0013】
吹錬プロセスの際に生じる軸ジャーナル対するトルクは、転炉の傾斜時の復帰モーメントの数倍になる可能性があるため、吹錬の際のトルクによって曲げ力が生じないように保証することが有益である。
【0014】
プロセス中に動力が生じず、より小さな力しかかからない傾斜の場合には、軸ジャーナルは、トルクがかかるときの曲げ力にも容易に持ちこたえることができる。
【0015】
複動式の油圧ピストン−シリンダユニットを使用することによって、多くの利点がある。例えば、複動式の油圧ピストン−シリンダユニットによって、転炉の吹錬プロセスの際の振動を能動的または受動的に減衰させるように制御することが可能である。
【0016】
複動式の油圧ピストン−シリンダユニットを別々に制御することが可能であり、例えば、傾斜の際に片側のシリンダユニットを固定状態(rigid)にすることができ、あるいは、吹錬プロセスの際に両側のシリンダユニットを固定状態にし、これにより、横方向の力を免れることができる。
【0017】
の新規なシステムは、(異なる荷重状態ならびに/あるいは、熱および/または機械的な作用に起因する変形によって生じる)傾斜の際の転炉の軸ジャーナルの軸の変位を、2つのシリンダのうちの一方を解放することによって対処している。したがって、転炉の復帰モーメントおよび固定されているシリンダに関するてこに起因して傾斜の際に横方向の力が生じるが、駆動装置と基礎部分との間に拘束が存在しない。傾斜の際に、駆動装置は、固定されているシリンダを固定の支持部分として、駆動装置自身の軸が移動することによって、解放状態にあるシリンダ上において傾くようになっている。
【0018】
これを、以下のように要約することができる。
1.シリンダは、シリンダが油圧に関して固定され、あるいは自身の位置を維持するように制御されるときに、両側において同じ大きさかつ反対向きの押す力および引く力を伝えることができる(曲げ力が生じない状態)。
2.システムのばねの作用を、種々の動作状態に適合するように制御することができる。
3.シリンダが、関節接続式で接続され、したがって、シリンダの軸以外のすべての方向に必要な自由度を保証しているので、ジョイント軸受(joint bearing)が、荷重が加わったときに無視できるほどの小さい角度にしかならず、摩擦による摩耗を被ることがない。
4.吹錬の際の歯車ユニット/軸ジャーナルの軸の小さな静荷重のずれ(deviation)は、シリンダの内部における漏出またはそれに相応するシリンダの制御によって補われ、これにより、吹錬プロセスの期間の全体にわたって横方向の力が生じない状態を保つことができる。
5.システムは、プロセス中に横方向の力を生じさせずに、軸ジャーナルおよび支持リング軸受の荷重をさらに軽減し、あるいは軸ジャーナルおよび支持リング軸受に意図的に荷重を加えるように、駆動装置の自重を完全または部分的に補い、あるいは反対の操作を過度に行って補うことができる。
6.吹錬プロセスに起因する振動を、意図的にシリンダを制御することによって、プロセス中に横方向の力を生じさせずに、能動的に減衰させることができる。
7.吹錬プロセスの際にプロセスを最適にするために、吹錬容器(blowing vessel)の位置は、シリンダを動かすことによって、プロセス中に横方向の力を生じさせることなく、変更することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1は、実施例を概略的に示しているが、転炉そのものは図示していない。
【発明を実施するための形態】
【0020】
転炉(図示されていない)の軸ジャーナルに取付けられるように構成された歯車ユニットハウジングが、1によって示されている。
【0021】
転炉傾斜駆動装置が、2および3によって示されている。
【0022】
ブラケット4などが、ピストン−シリンダユニット5による歯車ユニットハウジング1の支持構造体上への支持を助けるために、歯車ユニットハウジング1において軸ジャーナルの両側に設けられている。
図1