【実施例】
【0114】
実施例1−オーラノフィン
方法
ACH−2およびU1細胞内でのHIV−1の誘発。HIV−1潜伏感染ACH−2細胞を、標準の培養条件(RPMI培地、10%胎児ウシ血清/FBS、および適切な抗生物質、これらは薬剤耐性汚染細菌の選択を回避するように時々交換した)下、96ウェルプレート内で化合物とともにインキュベートし、上清中のHIV−1 p24コア抗原の内容物を、インキュベーションの24および72時間後、HIV−1 p24 ELISAキット(Perkin Elmers(Boston,MA))により、製造業者の使用説明書に従って測定した。各処置において、上清の回収後、細胞生存度を次のように試験した。
【0115】
細胞生存度アッセイ。細胞生存度を、メチルテトラゾリウム(MTT)法を用いて定量した。96ウェルELISAリーダーを使用して、550nmの波長で吸光度値を生成し、細胞の不在下で細胞培地を使用してブランク値を差し引いた。試験化合物の存在下での細胞生存度を、非処置対照細胞培養物の細胞生存度の百分率として表した。
【0116】
2つの薬剤の併用効果を検出するための試験。相乗作用/拮抗作用/加算性の検出のため、細胞を異なる濃度の薬剤単独または併用される両薬剤のいずれかとともにインキュベートし、インキュベーションの3日目に再び、ウイルス複製をELISA試験によって定量した。
【0117】
フローサイトメトリー。Jurkat細胞クローンにおける緑色蛍光タンパク質(GFP)のHIV−1 LTR制御発現を測定するため、細胞をプールし、NaN
3(0.02%)およびウシ血清アルブミン(2%;PBS A/A)を有する氷冷PBSで3回洗浄した。次いで、細胞を1%パラホルムアルデヒド中で20分間固定し、洗浄し、PBS A/A中に再懸濁した。次いで、蛍光をフローサイトメーター(FACScalibur、Becton−Dickinson(Mountain View,CA))によって取得した。蛍光データを4ディケード対数目盛上で収集し、相対蛍光強度を、非形質移入Jurkat細胞を使用して確立された閾値を超える蛍光細胞の百分率として示した。
【0118】
NF−κB核転座の検出。対照Jurkat8.4細胞およびオーラノフィンで様々なインキュベーション時間で処置した細胞に由来する核抽出物を、核抽出キット(Chemicon International)を製造業者の使用説明書に従って使用することで得た。NF−κB核転座を、p65サブユニットに対する比色分析転写因子アッセイ(Millipore)を使用して検出した。結果を、強力なNF−κB刺激性サイトカインTNF−α(5ng/ml)とともに(NF−κBの核転座がピークに達する)1.5時間インキュベートした細胞内で得られるシグナルの百分率として表した。
【0119】
データ分析。少なくとも2つの異なる場合に実験を行い、同様の結果を得て、結果を平均として示した。GraphPadソフトウェアを使用して分析を行った。濃度依存性曲線においては、対照値の百分率を異なる薬剤濃度に対してプロットした。必要な場合、適切な変換を適用し、正規性を回復させた。直線または曲線、データ点の最適なフィッティングを最小二乗法によって生成した。有意性における閾値は、線形回帰の場合、P=0.05であり、非線形回帰の場合、R
2=0.7であると考えられた。非線形回帰は、R
2がより大きい場合、線形回帰よりも(後者が有意であった場合についても)好ましかった。薬剤濃度応答間の差異を、傾きに対するt検定を用いて分析した。
【0120】
相乗作用を、次のように計算される、薬剤併用の効果と同等の濃度で個別投与されるいずれかの薬剤の効果の合計との間のパーセント差異を表す相乗作用値の百分率によって分析した。
PS=100・[E
drugA+drugB−(E
drugA+E
drugB)]/(E
drugA+E
drugB)
(式中、PSは相乗作用の百分率であり、Eは、p24生成における増加倍数として表される薬剤の効果である)
【0121】
三次元(3D)x、y、zグラフを、(xおよびy軸における)使用される同等の薬剤濃度に対して相乗作用値の百分率(z軸)をプロットすることによって生成した。Microsoft Excelを使用して3D表面を生成した。高い凸面は相乗作用を示す。平面は相加効果を示す一方、凹面は拮抗作用を示す。
【0122】
結果
U1およびACH−2細胞内でのオーラノフィンによるHIV−1活性化
HIV−1複製の組み込み後段階(post-integrational stage)が誘発可能である細胞系でのオーラノフィンのHIV−1活性化効果を予め評価するため、HIV−1に感染されたTリンパ球性ACH−2および単球性U1細胞を高濃度の化合物とともにインキュベートし、HIV−1複製を、インキュベーションの24時間後(データは示さず)および72時間後に測定した(
図2はACH−2細胞からのデータを示す)。HIV−1複製をNF−κB(p65/p50)活性化によって強力に促進するサイトカインである5ng/mlのTNF−αを、陽性対照として使用した。結果は、オーラノフィンがHIV−1複製を、関節リウマチの処置の間に認められる平均血漿レベルに近似する0.125〜0.5μMの濃度範囲内で、時間および用量依存性に増強することを示した(P=0.0295、回帰におけるt検定;
図5B)[Bennら、1991年]。
【0123】
注目すべきことに、オーラノフィンのHIV−1活性化効果は、低毒性が与えられた本発明者らの機関のライブラリー由来のクラスIのHDACIであるMC2113の場合に対して相乗的であった[Rotiliら、2009年]。これを、オーラノフィンをU1細胞にMC2113と同時投与する実験において示した(
図3)。効果は、インキュベーションの24時間後すぐに見ることができた。
【0124】
オーラノフィン応答における細胞基盤
細胞集団内部のオーラノフィン応答を評価するため、Jordanらによって確立された潜伏感染Tリンパ球のJurkat細胞クローン8.4を使用した[Jordanら、2003年]。この細胞クローンは、LTRの制御下の、GFP遺伝子置換nefを示す全HIV−1ゲノムを有する。U1細胞と異なり、これらの細胞は、HIV−1発現の非有意な基礎レベルを示し、機能的Tat/TAR軸を有する。8.4細胞において、オーラノフィンは蛍光中に用量依存性変化を誘発し(
図4)、それはほとんどの場合、採用した最高濃度で明らかであった。HDACI/オーラノフィンの併用での相加効果における細胞基盤についても探求した。本発明者らは、オーラノフィンの添加が、HDACI非応答性細胞を応答性細胞集団に動員することを見出した(
図5)。
【0125】
同様の結果が、HIV−1 LTRの制御下でGFPを発現し、かつ、スベロイルアニリドヒドロキサム酸(SAHA)などの他のHDACiを使用する他の細胞系において得られた。Jurkat A1細胞は、HIV−1 LTRの制御下で緑色蛍光タンパク質(GFP)遺伝子を有し、それは一部の細胞集団内で静止している。これらの細胞を、臨床的に意義のある濃度のオーラノフィン(0.25μM)または1μMのMC2113あるいはその双方で処置した。データを、非GFP発現Jurkat細胞を使用して確立された閾値を超える蛍光細胞の百分率として示した。このデータは、オーラノフィンおよびクラスに非特異的なヒストン脱アセチル化酵素阻害剤(SAHA)による緑色蛍光タンパク質(GFP)のLTR制御発現の誘発を示した。
【0126】
オーラノフィン誘発性NF−κB核転座
酸化ストレスが、HIV−1転写および複製にとって重要である[Williamsら、2007年]、NF−κBヘテロダイマーRel A(p65)/p50の活性化および核局在化を誘発する[Rahmanら、2004年]ことは周知である。オーラノフィンが、標的細胞内で酸化ストレスを誘発することによってHIV−1を静止状態から活性化する場合、NF−κB(p65/p50)の核転座が現れるはずである。この仮説を試験するため、オーラノフィン(250μM)で処置したJurkat8.4細胞由来の一定分量の核抽出物を、NF−κBのp65(RelA)サブユニットについて、比色分析アッセイを施した。結果は、核内部で時間依存性のNF−κBの蓄積を示した(
図6)。オーラノフィンは、それがHIV−1を静止状態から活性化する場合と同様の条件下で、NF−κB(p65/p50)の活性化を誘発することを結論づける。
【0127】
オーラノフィンと他の酸化促進剤戦略との相乗効果
オーラノフィン誘発性の静止状態からのHIV−1活性化への洞察をいくらか得るため、薬剤の効果をいくつかの十分に特徴づけられた酸化促進剤分子、すなわち鉄ニトリロアセテート(FeNTA)[Savarinoら、1999年](フェントン反応を通じて酸化ストレスを促進する)、およびブチオニンスルホキシミン(BSO)、グルタチオン合成経路における制限酵素であるγ−グルタミルシステインシンテターゼの不可逆阻害剤[Anderson、1998年]の存在下で試験した。結果は、オーラノフィンと同様、FeNTAがACH−2細胞内でHIV−1複製を用量依存性に誘発する(データは示さず)一方、BSO単独が最大500μMの濃度でHIV−1誘発効果に対して全く効果を有しない(データは示さず)ことを示した。オーラノフィンは、2つの薬剤のいずれかとの同時投与時、相乗作用の百分率のグラフにおいて高い凸面によって示されるように、相乗的なHIV−1活性化効果を発揮した(
図7および8)。オーラノフィンは鉄誘発性HIV−1活性化を増強し、この薬剤の効果はグルタチオンの減少によって促進されることを結論づける。
【0128】
参考文献(本明細書中に引用されるすべての参考文献は、本発明に抵触しない程度に本明細書中に援用される)。
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【0129】
実施例2−HDACi
HIV−1に感染されたリンパ球性ACH−2および単球様U1細胞(双方ともHIV−1複製の低いベースラインレベルを示す)は、HIV−1潜伏における十分に確立された細胞系モデルである[Munierら、2005年]。それらを、標準培養条件下、96ウェルプレート内で、試験化合物とともにインキュベートし、インキュベーションの72時間後、ELISA試験によってHIV−1複製を測定した。HIV−1誘発に対する化合物の効力を、非処置対照において認められるベースラインレベルに対して、標準濃度1μMの試験化合物(この濃度は一般にリード化合物の選択のための閾値として用いられる)の存在下で、HIV−1複製における増加倍数として評価した。潜伏感染細胞内でHIV−1複製を誘発可能な数種の化合物が見出され、一般にACH−2およびU1細胞における結果間で良好な一致があった。
【0130】
数種の化合物(クラスI選択的または非選択的HDACi)は、顕著なHIV−1刺激活性を示し(表1)、それは感染細胞殺滅(U1細胞:P=0.0378;ACH−2細胞:P=0.0017;スピアマンのノンパラメトリック検定(
図9A、B))と相関した。クラスI選択的化合物は、一般に非選択的化合物より低い毒性を示した(データは示さず)。さらに、HIV−1再活性化を促進するいくつかのクラスI選択的HDACiは、HIV−1感染細胞の選択的殺滅を誘発した。これは、MC1855を使用するデータによって図示される(P<0.01;傾きにおけるt検定;
図9C、D)。
【0131】
構造/活性の関係から、特定の要件が、潜伏からのHIV−1回避の効率的誘発について出現する。一般に、HDACiは、一般的なファーマコフォアモデルを示し、触媒トンネルの縁、しばしばCAPを疎水性スペーサー(HS)に連結する極性連結ユニット(polar connection unit)(CU)と相互作用可能なキャップ基(CAP)を含み、それは分子をトンネル内部に位置づけさせる[Maiら、2005b]。最終的に、HSは、空洞の底部でZn
2+と複合化可能なZn
2+結合基(ZBG)を末端に有する[Maiら、2005b]。一般に、ZBGは、ヒドロキサム酸塩、カルボン酸塩、またはベンズアミドからなる。
【0132】
MS275は、癌治療のための臨床試験におけるクラスI選択的HDACiである[Nishiokaら、2008年;Hauschildら、2008年]。この化合物は、試験化合物の中で潜伏からのHIV−1回避の最も強力な誘発剤であることが判明し、それはACH−2(
図10)およびU1細胞(図示せず)においてナノモル範囲内(十分にインビボで実現可能な血漿濃度の範囲内)で活性を示した[Zhaoら、2007年]。本発明者らのSAR試験は、ブチオニンスルホキシミン(BSO)とともに投与可能なHDACiの化学種を制限することを意図しておらず、HDACiとBSOとの相乗効果(下記参照)は全HDACiクラスに拡張可能である。
【0133】
酸化ストレスを誘発するBSOについても試験を行った。γグルタミルシステインシンテターゼ[Garaciら、1996年](グルタチオン合成における制限酵素)の阻害剤であるBSOは、細胞抗酸化剤の防御を低下させることにより、酸化ストレスを間接的に促進する[Anderson、1998年]。この化合物を、それが酸化環境内で促進されるNF−κBの活性化にとって好ましい可能性があることが理由で試験した。結果は、BSOがACH−2またはU1細胞のいずれかにおいてHIV−1複製を有意に誘発しないことを示した(データは示さず)。これにもかかわらず、BSOを試験し、HDACiの効果を増強し得るか否かを判定した。結果は、
図11および12に示されるように、BSOが、2つのベンズアミドHDACi、すなわちMS275およびMC2211のHIV−1促進効果を顕著に増強することを示した。ACH−2細胞内での相乗作用の百分率グラフの鋭い凸型3D表面は、薬剤併用の相乗効果を示す。相乗効果を示すBSO濃度は、治療的に得られる[Lacretaら、1994年]。同様な効果がU1細胞において得られた(データは示さず)。
【0134】
クラスIのHDAC阻害がそれ自体でHIV−1再活性化にとって十分であるという実験結果は、特に有利である。
【0135】
方法
化学。融点をBuchi530融点装置で測定し、校正していない。赤外線(IR)スペクトル(KBr)をPerkin-Elmer Spectrum One装置で記録した。400MHzでの
1H NMRスペクトルをBruker AC 400分光計で記録し、内部参照のテトラメチルシラン(Me
4Si)に対するδ(ppm)単位での化学シフトを報告する。すべての化合物を、TLCおよび
1H NMRによって定期的に点検した。TLCを、UV光によって可視化されたスポットを有するアルミニウム裏打ち(aluminium backed)シリカゲルプレート(Merck DC、Alufolien Kieselgel 60 F
254)で行った。すべての溶媒は試薬グレードであり、必要な場合、標準的方法によって精製し、乾燥させた。反応および抽出後の溶液の濃縮は、約20トールの減圧下で作動するロータリーエバポレーターの使用を含んだ。有機溶液を無水硫酸ナトリウムで乾燥させた。分析結果は、理論値の±0.40%以内である。生物学的アッセイ用のSAHA試料を、標準的方法に従って同様に調製した。すべての化学物質は、Aldrich Chimica(Milan(Italy))またはLancaster Synthesis GmbH(Milan(Italy))から購入し、それらは最高純度であった[Maiら、2006年]。
【0136】
4−(3,4−ジヒドロ−4−オキソ−6−置換−2−ピリミジニルチオ)ケイ皮酸メチルのエチルエステルの合成における一般的手順。例:4−(3,4−ジヒドロ−4−オキソ−6−ベンジル−2−ピリミジニルチオ)ケイ皮酸メチルのエチルエステル。3mlの無水DMF中、6−ベンジル−4−ヒドロキシ−2−メルカプトピリミジン(6.87mmol、1.5g)、粗エチル4−ブロモケイ皮酸メチル(7.56mmol、2.2g)、および無水炭酸カリウム(7.56mmol、1.0g)の混合物を、室温で1時間撹拌した。冷水(100mL)での処理後、水相を酢酸エチル(340mL)で抽出した。有機相を塩水(340mL)で洗浄し、乾燥させ、乾燥するまで蒸発させ、所望される粗化合物を得て、それをシリカゲルカラム上のクロマトグラフィーによって精製し、酢酸エチル/ヘキサン(1:1)混合物で溶出し、所望される生成物を白色固体(1.2g)として得た。
1H NMR(CDCl
3)δ1.33(t,3H,CH
2CH
3)、3.83(s,2H,PhCH
2)、4.26(q,2H,CH
2CH
3)、4.38(s,2H,CH
2S)、5.98(s,1H,C
5−H)、6.40(d,1H,CH=CHCO)、7.33(m,9H,2つのベンゼン環)、7.61(d,1H,CH=CHCO)、13.20(s,1H,NH)。Anal.C,H,N,S[Maiら、2006年]。
【0137】
6−(3,4−ジヒドロ−4−オキソ−6−(非)置換−2−ピリミジニルチオ)−ヘキサン酸および4−(3,4−ジヒドロ−6−置換−4−オキソピリミジン−2−イルチオ)ケイ皮酸メチルの合成における一般的手順。例:6−(3,4−ジヒドロ−4−オキソピリミジン−2−イルチオ)ヘキサン酸。適切なエチルエステル(1.1mmol、0.3g)、2N KOH(8.8mmol、0.49g)、およびEtOH(5mL)の混合物を、室温で18時間撹拌した。溶液を、水(50mL)中に注ぎ、酢酸エチル(220mL)で抽出した。HCl(2N)をpH5になるまで水層に添加し、沈殿物を濾過し、再結晶化し、表題化合物(0.23g)を純固体として得た。
1H NMR(DMSO−d
6)δ1.32(m,2H,CH
2CH
2CH
2S)、1.49(m,2H,CH
2CH
2CO)、1.61(m,2H,CH
2CH
2S)、1.93(t,2H,CH
2CO)、3.06(t,2H,CH
2S)、6.07(s,1H,C
5−H)、7.83(s,1H,C
5−H)、12.2(s,1H,COOH)。Anal.C,H,N,S[Maiら、2006年]。
【0138】
N−ヒドロキシ−6−(3,4−ジヒドロ−4−オキソ−6−(非)置換−2−ピリミジニルチオ)ヘキサンアミドおよび/N−ヒドロキシ−4−(3,4−ジヒドロ−6−置換−4−オキソピリミジン−2−イルチオ)−メチルシンナミルアミドの合成における一般的手順。例:N−ヒドロキシ−6−(3,4−ジヒドロ−4−オキソピリミジン−2−イルチオ)ヘキサンアミド。乾燥テトラヒドロフラン(5mL)中、適切なカルボキシル酸(0.9mmol、0.22g)の0℃に冷却した溶液に対して、クロロギ酸エチル(2.2mmol、0.21mL)およびトリエチルアミン(2.3mmol、0.33mL)を添加し、混合物を10分間撹拌した。固体を濾過分離し、濾過物に対してO−(2−メトキシ−2−プロピル)ヒドロキシルアミン(5.4mmol、0.4mL)を添加した。得られた混合物を室温で1時間撹拌し、次いでそれを減圧下で蒸発させ、残留物をMeOH(5mL)で希釈した。Amberlyst15イオン交換樹脂(0.18g)をO−保護ヒドロキサム酸の溶液に添加し、混合物を室温で1時間撹拌した。その後、反応物を濾過し、濾過物を真空中で濃縮し、最終の粗生成物を得て、それを結晶化によって精製した。
1H NMR(DMSO−d
6)δ1.30(m,2H,CH
2CH
2CH
2S)、1.46(m,2H,CH
2CH
2CO)、1.60(m,2H,CH
2CH
2S)、1.90(t,2H,CH
2CO)、3.02(t,2H,CH
2S)、6.10(s,1H,C
5−H)、7.85(s,1H,C
6−H)、8.66(s,1H,NHOH)、10.33(s,1H,NHOH)、12.5(s,1H,ウラシルNH)。Anal.C,H,N,S[Maiら、2006年]。
【0139】
3−(4−アシルアミノフェニル)−N−ヒドロキシ−2−プロペンアミドの合成における一般的手順。例:3−[4−(2,3−ジフェニルプロピオニルアミノ)フェニル]−N−ヒドロキシ−2−プロペンアミド(MC1895)。
クロロギ酸エチル(1.26mmol、0.12mL)およびトリエチルアミン(1.37mmol、0.19mL)を、乾燥THF(10mL)中、3−[4−(2,3−ジフェニルプロピオニルアミノ)フェニル]−2−プロペン酸(1.05mmol、0.39g)の冷却(0℃)溶液に添加し、混合物を10分間撹拌した。固体を濾過分離し、O−(2−メトキシ−2−プロピル)ヒドロキシルアミン(3.15mmol、0.23mL)を濾過物に添加した。溶液を0℃で15分間撹拌し、次いで減圧下で蒸発させ、残留物をメタノール(10mL)で希釈した。Amberlyst(登録商標)15イオン交換樹脂(105mg)を、O−保護ヒドロキサム酸の溶液に添加し、混合物を室温で1時間撹拌した。その後、反応物を濾過し、濾過物を真空中で濃縮し、粗MC1895を得て、それを結晶化によって精製した。
1H NMR(DMSO−d
6)δ3.05(m,1H,PhCH
2)、δ3.60(m,1H,PhCH
2)、δ3.75(m,1H,PhCHCO)、δ6.36(d,1H,PhCH=CHCOOEt)、δ7.15〜7.70(m,15H,ベンゼンプロトンおよびPhCH=CHCOOEt)、δ9.00(s,1H,OH)、δ10.23(s,1H,CONHPh)、δ10.85(s,1H,NHOH)。Anal.C,H,N,O。
【0140】
インビトロでのトウモロコシHD2、HD1−B、およびHD1−A酵素阻害。放射性標識したニワトリコアヒストンを、確立された手順に従い、酵素基質として使用した[Maiら、2006年において参照]。酵素は基質からトリチウム化酢酸を遊離させ、それをシンチレーション計数によって定量した。IC
50値は3通りの測定の結果である。(30℃での)トウモロコシ酵素の50μLの試料を、10μLの[
3H]酢酸塩で予備標識したニワトリ全網状赤血球ヒストン(2mg/mL)とともにインキュベートした(30分)。反応を、36μLの1M HCl/0.4M酢酸塩および800μLの酢酸エチルの添加によって停止させた。遠心分離(10000g、5分)後、600μLの一定分量の上層を、3mLの液体シンチレーションカクテル中の放射能について計数した。化合物を40μMの初期濃度で試験し、活性物質をさらに希釈した。TSAおよびSAHAを参照化合物として使用し、ブランク溶媒を陰性対照として使用した[Maiら、2006年]。
【0141】
マウスHDAC1酵素アッセイ。阻害アッセイにおいては、マウス肝臓由来の部分精製HDAC1(アニオン交換クロマトグラフィー)を酵素源として使用した。HDAC活性を、基質として[
3H]酢酸塩で予め標識したニワトリ網状赤血球ヒストンを使用して測定した。マウスHDAC1(50μL)を、氷上で異なる濃度の化合物とともに15分間インキュベートし、[
3H]酢酸塩で予め標識したニワトリ全網状赤血球ヒストン(2mg/mL)の10μLを添加し、41μMの濃度を得た。混合物を37℃で1時間インキュベートした。反応を、50μLの1M HCl/0.4Mアセチル酢酸塩および1mLの酢酸エチルの添加によって停止させた。10000gで5分間遠心分離後、上層の600μLの一定分量を、3mLの液体シンチレーションカクテル中の放射能について計数した[Maiら、2006年]。
【0142】
細胞アッセイ。細胞系および培養物。U937細胞系を、10%胎児牛血清、100U/mLのペニシリン、100μg/mLのストレプトマイシン、および250ng/mLのアンフォテリシンB、10mMのHEPESおよび2mMグルタミンを有するRPMI中で培養した。U937細胞を、200000個の細胞/mLの一定濃度の培地で保持した。ヒト乳癌ZR−75.1細胞を、10%胎児牛血清および抗生物質(100U/mLのペニシリン、100μg/mLのストレプトマイシン、および250ng/mLのアンフォテリシンB)を補充したDMEM培地中で増殖させた。
【0143】
リガンドおよび材料。SAHAを、DMSO中に溶解し、1もしくは5μMで使用した。MS−275(Schering AGからの贈呈)を、エタノール中に溶解し、5μMで使用した。UBHA化合物1dおよび1jを、DMSO中に溶解し、1もしくは5μMで使用した。
【0144】
細胞に基づくヒトHDAC1およびHDAC4アッセイ。細胞(HDAC1アッセイ用のU937細胞およびHDAC4アッセイ用のZR75.1細胞)を、氷中、プロテアーゼ阻害剤カクテル(Sigma)、1mM DTT、および0.2mM PMSFを有するIP緩衝液(pH7.0での50mMトリス−HCl、180mM NaCl、0.15% NP−40、10%グリセリン、1.5mM MgCL
2、1mM NaMO
4、および0.5mM NaF)中に10分間で溶解し、13000rpmで30分間遠心分離した。次いで、1000μgの抽出物を、IP緩衝液で1mLまで希釈し、ロッキングテーブルで20μLのA/G+アガロース(Santa Cruz)とともに4℃で30分間〜1時間インキュベートすることによって予備洗浄した。上清を新しい管に移し、抗体(約3〜4μg)を加え、IPをロッキングテーブル上で、4℃で一晩展開させておいた。使用した抗体は、HDAC1(Abcam)およびHDAC4(Sigma)であった。陰性対照として、同量のタンパク質抽出物を、対応する精製IgG(Santa Cruz)で免疫沈降させた。翌日、20μLのA/Gおよびアガロース(Santa Cruz)を各IPに添加し、インキュベーションを2時間継続した。ビーズを、短時間の遠心分離によって回収し、冷却IP緩衝液で数回洗浄した。次いで、試料をPBSで2回洗浄し、20μLの無菌PBSで再懸濁した。HDACアッセイを、供給業者の使用説明書(Upstate)に従って実施した。つまり、HDAC4およびHDAC1または精製IgGで免疫沈降させた試料を、別々にプールし、すべての試料を均質化した。次いで、10μLのIPを、ストレプトアビジンアガロースビーズと結合させた予め標識した
3H−ヒストンH4ペプチド(Upstate)とともにインキュベートした。具体的には、120000CPMのH4−
3H−アセチル−ペプチドを各管において使用し、200μLの最終容量の場合、HDAC阻害剤の存在下または不在下で、10μLの試料を有する1つのHDAC緩衝液中でインキュベートした。それらの試料を、低速で回転させて、37℃で一晩インキュベートした。翌日、50μLの急冷溶液を添加し、短時間の遠心分離後、100μLの試料をシンチレーション計数管で2通りに計数した。実験は4通りに実施している[Maiら、2006年]。
【0145】
化合物の保存。化合物を乾燥粉末として保存し、使用時にジメチルスルホキシド(DMSO)で再懸濁した。最終細胞培地中、2/1000未満のDMSO(v/v)で適切な薬剤濃度を得るため、DMSO溶液中の初期濃度を調節した。
【0146】
HIV−1再活性化スクリーニング試験。潜伏HIV−1感染ACH−2細胞を、標準培養条件下(RPMI培地、10%胎児ウシ血清/FBS、および適切な抗生物質、薬剤耐性汚染菌の選択を回避するために時々交換)、96ウェルプレート内で化合物とともにインキュベートし、インキュベーションの72時間後、上清中のHIV−1 p24コア抗原の内容物を、HIV−1 p24 ELISAキット(Perkin Elmer製)により、製造業者の使用説明書に従って測定した。潜伏からのHIV−1回避の誘発に対する化合物の効力を、非処置対照において認められるベースラインレベルに対する、1μMの標準濃度の存在下でのHIV−1複製における増加倍数(%)として評価した。1μMの濃度を、それがリード化合物の選択のための閾値であると一般に考えられることから選択した。上清の回収後、各処置における細胞生存度を以下のように試験した。
【0147】
細胞生存度アッセイ。細胞生存度を、高度に標準化されたメチルテトラゾリウム(MTT)法(Savarino A, Calosso L, Piragino A, Martini C, Gennero L, Pescarmona GP, Pugliese A. Modulation of surface transferrin receptors in lymphoid cells de novo infected with human immunodeficiency virus type-1.Cell Biochem Funct. 1999 Mar;17(1):47-55に詳述)を用いて定量した。96ウェルELISAリーダーを使用して、450nmの波長での吸光度値を生成し、細胞の不在下で細胞培地を使用してブランク値を差し引いた。試験化合物の存在下での細胞生存度を、非処置対照細胞培養物の細胞生存度の百分率として表した。選択的殺滅の試験のため、非感染H9、およびU937、およびHIV−1感染H9
IIIB、ACH−2、およびU1細胞を、試験化合物とともに7日間インキュベートし、細胞生存度を上記のように測定した。
【0148】
濃度−応答曲線。最適な活性を有する化合物について、細胞を減少濃度の化合物(0.001〜1μM)とともにインキュベートすることにより、濃度−応答曲線を生成した。
【0149】
併用薬剤効果の検出についての試験。相乗/拮抗作用の検出については、細胞を、BSO単独、ヒストン脱アセチル化酵素阻害剤単独、またはその双方の異なる組み合わせとともにインキュベートし、インキュベーションの3日後、再び、ウイルス複製をELISA試験によって定量した。
【0150】
データ分析。少なくとも2つの異なる場合に実験を行い、同様の結果を得て、結果を平均として示した。GraphPadソフトウェアを使用して分析を行った。細胞死/HIV−1再活性化の間の相関を、各化合物についてHIV−1複製における増加倍数に対する細胞生存度の阻害の百分率をプロットすることによって評価した。相関の有意性を、P=0.05の有意性閾値を用いるスピアマンの相関係数を用いて評価した。濃度依存性曲線においては、増加倍数値を異なる濃度に対してプロットした。必要な場合、適切な変換を適用し、正規性を回復した。直線または曲線、データ点の最適なフィッティングを最小二乗法によって生成した。有意性の閾値は、線形回帰の場合、P=0.05であり、非線形回帰の場合、R
2=0.7であると考えられた。相乗作用を、次のように計算される、薬剤併用の効果と同等の濃度で個別投与されるヒストン脱アセチル化酵素阻害剤および酸化促進剤の効果の合計との間のパーセント差異を表す、相乗作用値の百分率によって分析した。
PS=100・[E
drugA+drugB−(E
drugA+E
drugB)]/(E
drugA+E
drugB)
(式中、PSは相乗作用の百分率でありかつEは薬剤濃度の効果であり、p24生成における増加倍数として表される)
【0151】
三次元(3D)x、y、zグラフを、(xおよびy軸における)使用される同等の薬剤濃度に対して相乗作用値の百分率(z軸)をプロットすることによって生成した。Microsoft Excelを使用して3D表面を生成した。高い凸面は相乗作用を示す。平面は相加効果を示す一方、凹面は拮抗作用を示す。
【0152】
【表1】
【0153】
【表2】
【0154】
【表3】
【0155】
HDACiにおける参考文献
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【0156】
1. 実施例3−HDACI+BSOに対するさらなる研究
HDACiとBSOとの間の相乗作用の細胞基盤を検討するため、HIV−1静止のためのJurkatモデルを使用した。これらの結果は、HIV−1 LTRの制御下で組み込まれたGFP/Tatコンストラクトを有するA1 Jurkat細胞クローンから得られ、それは大部分の細胞内で静止することから、フローサイトメトリーにより、単一の細胞レベルでのLTRプロモーターの活性化を試験することを可能にする、[Jordan Aら、2003年]。本発明者らの結果は、BSOがHDACI感受性細胞を応答細胞集団に動員することを示した(
図13)。BSO単独は、ACH−2およびU1細胞内でのp24の測定値から得られた結果と異なり、少数の細胞内でLTR活性化を誘発した。
【0157】
HIV−1を複製する細胞培養物は、還元グルタチオンのレベルの低下を示す[Simon Gら、1994年]。非感染細胞系および潜伏感染細胞系において、BSO+HDACi併用の毒性を比較した。結果は、BSOとHDACiの併用により、インキュベーションの72時間後、非感染細胞培養物でなく潜伏感染細胞培養物中で著明な細胞毒性が認められることを示した(
図14)。
【0158】
これは、非感染Jurkat細胞およびJurkat細胞クローン(6.3および8.4)(LTRの制御下で静止HIV−1ゲノム(GFP遺伝子を有する)を有する)における実験によって支持される[Jordan A、2003年、下記]。6.3細胞クローンが、MS−275/BSOの併用に対して、その非感染対応物より容易に死滅することを見出した(
図14)。8.4クローンの場合、同様の結果が得られた(データは示さず)。
【0159】
要するに、BSOの効果は、HDACiに基づくHIV−1再活性化処置に対して応答する細胞の割合を高めることを可能にする。一般に、酸化ストレスは、増強されたHAT活性およびDNA巻き戻しへのHAT/HDAC活性のバランスを崩すことから、いくつかの転写因子の結合を促進する[Rahman Iら、2004年]。これは、わずかな細胞集団だけが全体的シグナルに応答して活性化された活性化後の多様な表現が、Jordanら、2004年[下記]によって示された(彼らはこの現象を異なる局所クロマチン環境に起因すると考えた)ことから、重要な臨床用途を示唆している。
【0160】
本試験の結果は、BSOなどの酸化促進剤をHDACiと併用するという本発明者らの戦略が、ヒストン脱アセチル化酵素阻害剤の効果を高めること以外に、潜伏感染細胞の選択的殺滅を誘発可能であるという仮説を立てることを可能にする。この戦略は、念願の「ショックおよび殺滅」戦略の1つであると考えることができる。これらの戦略は、(ウイルス拡散を遮断するための)ARTの存在下での薬剤による静止状態からのHIV−1活性化の誘発(すなわち「ショック」段階)と、その後の自然的手段(例えば、免疫応答、ウイルス細胞病原性)または人工的手段(例えば、薬剤、モノクローナル抗体など)のいずれかによる感染細胞の除去(すなわち「殺滅」段階)からなる[Hamer DH、2004年]。当然、本発明者らの戦略は、潜伏感染細胞内でHIV−1複製を活性化する(すなわち「ショック」段階)HDACiと、還元グルタチオンの細胞内レベルでのHIV−1誘発性破壊に起因する細胞傷害を拡大する(すなわち「殺滅」段階)BSOなどの酸化促進剤との併用に基づく。かかる効果を発揮可能な薬剤併用の探索は、これまでAIDS研究における「聖杯」であった。
【0161】
実施例3における参考文献
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Hamer DH: Can HIV be Cured? Mechanisms of HIV persistence and strategies to combat it. Curr HIV Res 2004, 2:99-111.
【0162】
実施例4−三酸化ヒ素
金塩およびヒ素は、多数の生物学的効果を共有し、今や、いくつかの医療用途を有する潜在的に有望なエピジェネティック金属薬として新たな展望を提示している。他の病状におけるそれらの治療用途は、当然ながら古くからの伝統を有する。ヒ素は金属および非金属特性の双方を示す元素であると考えられるが、それは多くの局面において金属として振る舞う。その最も一般的な元素形態(灰色ヒ素)において、それは金属様の性質を有し、電気を通す。金塩と同様、ヒ素は、紀元前5世紀以来、治療で用いられている。ヒポクラテスは、潰瘍に対する治療薬として鶏冠石(As
2S
2)および石黄(As
2S
2)を使用した。伝統的中国医学では、ヒ素と金を併用することで、様々な症状が処置された。テーベのOlympiodorus(紀元5世紀)は、硫化ヒ素を焙焼し、白色ヒ素(As
2O
3であるが、As
4O
3としても見出され得る)を得た。金塩およびヒ素の双方は、後に、数ある用途の中でも、抗リウマチ、抗梅毒、および抗腫瘍における用途があることが見出された[Eisler、2003年、Giordano、1844年、ChristisonおよびGriffith、1848年、CutlerおよびBradford、1878年、Waxmanら、2001年、Parkら、2008年]。ヒ素は、高用量で使用される場合には、毒薬としても知られている。
【0163】
三酸化ヒ素および金塩の使用は、前世紀には徐々に少なくなり、三酸化ヒ素の慢性前骨髄球性白血病への使用および金塩の関節リウマチへの使用が制限された。しかし、この10年にわたり、これらのタイプの薬剤への関心は、それらのエピジェネティック効果、すなわちDNA構造の修飾を塩基の配列を改変することなく誘発する能力の発見のおかげで再燃している。巻き込み/巻き戻しなどのDNAの構造的修飾は遺伝子発現を調節する。さらなる研究によると、三酸化ヒ素および金塩が、細胞レベルでのそれらの効果において重要な類似性を共有し、それは、両タイプの薬剤における、それらの歴史を通じて見出されてきた類似の治療用途を明らかにし得ることが示された。三酸化ヒ素と金塩の双方は、反応性酸素種(ROS)を誘導する。
【0164】
酸化ストレスは、増強されるHAT活性およびDNA巻き戻しへのHAT/HDAC活性のバランスを崩すことから、いくつかの転写因子の結合を促進することが知られている[Rahmanら、2004年]。興味深いことに、三酸化ヒ素および金含有化合物の双方は、チオレドキシンレダクターゼを阻害し、かつスーパーオキシドジスムターゼ(SOD)模倣体として作用する。したがって、金化合物およびヒ素は、これらの効果およびHAT活性の誘発などの共通のエピジェネティック効果を踏まえ、独特な薬剤クラスとして検討され始めている[Talbotら、2008年]。
【0165】
ヒ素および金含有化合物を含むこの薬剤クラスは、以降「エピジェネティック金属薬」(すなわちエピジェネティック効果を有する金属薬)と称されることになる。HIV−1を潜伏から活性化することで知られる他の金属薬、例えば鉄含有化合物およびシスプラチン[Savarinoら、1998年;Spandidosら、1990年]は、金化合物およびヒ素の向分化(pro-differentiating)効果を示さない。
【0166】
さらに、金およびヒ素イオンは、チオレドキシンレダクターゼ(TrxR)の活性部位を、これらのタンパク質の還元活性にとって重要なセレノシステイン残基と直接複合化することによって遮断する能力を共有する。オーラノフィンのこの活性は、三酸化ヒ素と共有される[Liuら、2007年]。金(I)誘導体および三酸化ヒ素は、チオレドキシンレダクターゼの極めて優れた阻害剤のように見られ、ナノモル範囲内のIC
50値を示す(IC
50<300nM)一方、金属イオンおよび金属複合体はマイクロモル範囲内で活性がある(19〜80μM)[Bragadinら、2004年;Luら、2007年]。三酸化ヒ素およびオーラノフィンなどの金(I)誘導体によって共有される別の活性は、TrxRの合成を抑制する独特の能力である[Talbotら、2008年]。
【0167】
実施例1において、金含有化合物のオーラノフィンが、関節リウマチを有するヒトの血漿中に見出される場合を再現する濃度で、インビトロで潜伏からのHIV−1回避を誘発可能であることを示している。本発明者らの理論が正しい場合、潜伏からのHIV−1回避に対する金含有化合物オーラノフィンの効果はまた、ヒ素によって発揮されるものである。
【0168】
三酸化ヒ素は、文書で十分に立証されたエピジェネティックの潜在性、すなわち十分に記載された毒性特性を有し、またその臨床使用は、特定用量で比較的安全である。
【0169】
最初に、HIV−1 LTRの制御下で組み込まれた緑色蛍光タンパク質(GFP)コード遺伝子を有するJurkat細胞クローンにおける三酸化ヒ素に対する応答性を試験した[Jordanら、2003年]。
【0170】
実施例1において詳述された技術に従って実験を行った。これらのJurkat細胞クローンでは、HDACIによるGFPの誘導は、わずかな細胞においてのみ明らかであり、三酸化ヒ素に応答して濃度依存性に増大した(
図15)。
【0171】
全HIV−1ゲノムを有する細胞集団内部での三酸化ヒ素に対する応答を評価するため、Jordanらによって確立された、潜伏感染Tリンパ球Jurkat細胞クローン6.3および8.4を使用した[Jordanら、2003年]。この細胞クローンは、LTRの制御下の、GFP遺伝子置換nefを示す全HIV−1ゲノムを有する。これらの細胞は、U1細胞に対して、非有意な基礎レベルのHIV−1発現を示し、機能的なTat/TAR軸を有する。8.4細胞においては、三酸化ヒ素は、蛍光における用量依存性変化を誘発し(データは示さず)、それはほとんどの場合、採用した最高濃度で明らかであった。
【0172】
三酸化ヒ素の効果が、HIV−1潜伏のための細胞系モデルにおけるオーラノフィンの効果を再現することを結論づける。オーラノフィンと同様、シスプラチンは、ナノモル範囲内の濃度で潜伏HIV−1を活性化する能力があった。オーラノフィンおよび三酸化ヒ素は、濃度のナノモル範囲内ではなくマイクロモル内で静止HIV−1を活性化する、シスプラチンなどの他の金属薬とそれらの効果を共有しない[Spandidosら、1990年]。したがって、本発明者らの結果は、金(I)誘導体および三酸化ヒ素が、エピジェネティック調節剤の独特の薬剤クラスに属するものとして見なされるべきであるという見解を支持する。三酸化ヒ素であれば、オーラノフィンと同様、HIV−1をレゼルボアから除去するための「追い出し(smoking out)」戦略において用途が見出され得る。
【0173】
実施例2および3において、「ショックおよび殺滅」効果が、HIV−1潜伏のための細胞系モデルにおいて、クラスIヒストン脱アセチル化酵素阻害剤(HDACI)をブチオニンスルホキシミン(γ−グルタミルシステインシンテターゼ、すなわちグルタチオン合成用の制限酵素の阻害剤)と併用することによって得られることを示している[Savarinoら、2009年]。
【0174】
グルタチオンは、疑いなく1つの重要な抗酸化防御であるが、BSO単独は、潜伏からのHIV−1回避をわずかしか誘発することができなかった。これは、BSOは本質的に酸化ストレスを誘発しないが、その代わり、HDACIによって誘発される酸化ストレスに対抗する細胞集団の能力を損なうという事実によって説明可能である[Palamaraら、未公開データ]。これに関連して、オーラノフィンおよび三酸化ヒ素は、おそらくそれらのスーパーオキシドジスムターゼ模倣効果を通じて本質的に酸化ストレスを誘発する能力があり、かつ、TrxRを阻害することによって抗酸化防御に対抗する能力がある。これらの効果であれば、HIV−1潜伏に対抗するための手段としての酸化ストレスの利用における先進の工程を示し得る。
【0175】
最近、Chomontらは、抗レトロウイルス療法(ART)下でありかつ低いCD4カウントを示す個体におけるHIV−1潜伏における主要なレゼルボアとして、移行性メモリーT−CD4
+細胞(T
TMs)を同定した[Chomontら、2009年]。T
TMsは、セントラルメモリーT−CD4
+細胞(T
CMs)の前駆体であり、それはより安定なHIV−1レゼルボアを示し、長年にわたって生存する。T
TMsは、T
CMsに対し、あまり分化していない表現型を示し、幹細胞増殖を誘発するサイトカインであるIL−7に応答して増殖する。低いCD4カウントを有するARTで処置された個体からのHIV−1根絶を得るため、Chomontらは、ARTと併用して長期持続型T
CMレゼルボアの生成を回避するため、T細胞増殖を阻害しかつ幹細胞性を低下させることが可能な「インテリジェント標的化(intelligent-targeted)化学療法」での処置を提唱している。しかし、筆者らは、好適な薬剤候補を同定することができなかった。しかし、(ウイルスの細胞病原性または免疫系によって感染細胞の除去を可能にする)三酸化ヒ素のHIV−1誘発効果であれば、リンパ球に対するその周知の抗芽球効果とその著明な向分化活性に加えて、この薬剤がHIV−1根絶の臨床試験における理想的な候補となる。
【0176】
実施例4における参考文献
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Chomont N, El-Far M, Ancuta P, Trautmann L, Procopio FA, Yassine-Diab B, Boucher G, Boulassel MR, Ghattas G, Brenchley JM, Schacker TW, Hill BJ, Douek DC, Routy JP, Haddad EK, Sekaly RP. HIV reservoir size and persistence are driven by T cell survival and homeostatic proliferation. Nat Med. 2009 Aug;15(8):893-900.
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Savarino A, Mai A, Norelli S, El Daker S, Valente S, Rotili D, Altucci L, Palamara AT, Garaci E. "Shock and kill" effects of class I-selective histone deacetylase inhibitors in combination with the glutathione synthesis inhibitor buthionine sulfoximine in cell line models for HIV-1 quiescence. Retrovirology. 2009 Jun 2;6:52.
Spandidos DA, Zoumpourlis V, Kotsinas A, Maurer HR, Patsilinacos P. Transcriptional activation of the human immunodeficiency virus long terminal repeat sequences by cis-platin. Genet Anal Tech Appl. 1990 Sep;7(5):138-41.
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