特許第5779518号(P5779518)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5779518
(24)【登録日】2015年7月17日
(45)【発行日】2015年9月16日
(54)【発明の名称】地下構造物の免震構造
(51)【国際特許分類】
   E02D 27/34 20060101AFI20150827BHJP
   F16F 15/02 20060101ALI20150827BHJP
【FI】
   E02D27/34 B
   F16F15/02 L
   F16F15/02 E
【請求項の数】4
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2012-29613(P2012-29613)
(22)【出願日】2012年2月14日
(65)【公開番号】特開2013-167063(P2013-167063A)
(43)【公開日】2013年8月29日
【審査請求日】2014年10月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】391005949
【氏名又は名称】光洋自動機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100082418
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 朔生
(72)【発明者】
【氏名】山下 経一
【審査官】 神尾 寧
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−056600(JP,A)
【文献】 特開2000−027199(JP,A)
【文献】 特開平09−177095(JP,A)
【文献】 特開2009−281073(JP,A)
【文献】 特開2006−169903(JP,A)
【文献】 米国特許第03952529(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 27/34
F16F 15/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
地下構造物の側壁と地盤との間に側部免震層を介装するとともに、地下構造物の底床と支持地盤との間に底部免震層を介装した地下構造物の免震装置であって、
前記側部免震層および底部免震層を硬質粒体で構成し、
前記側部免震層の上部を拡幅してポケット部を形成し、
前記地下構造物の底床の下面に突設した拘束帯爪により前記底部免震層を複数に区画して拘束し、
前記拘束帯爪および底部免震層を介して、前記地下構造物の底床を支持地盤に支持させたことを特徴とする、
地下構造物の免震構造。
【請求項2】
請求項1において、前記地下構造物の底床の下面に下方を開放したスパイク筒を突設し、硬質粒体を充填した前記スパイク筒の下部を支持地盤に貫入したことを特徴とする、地下構造物の免震構造。
【請求項3】
請求項1または2において、前記拘束帯爪に透孔を開設し、該透孔を通じて底部免震層全体に地震波の伝達を可能に構成したことを特徴とする、地下構造物の免震構造。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3の何れか一項において、前記硬質粒体が砂、砂利、砕石、または廃棄物の造粒物の何れかひとつであることを特徴とする、地下構造物の免震構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は地下式立体駐輪場、地下式立体駐車場、或いは有害物質埋設用地下式処理施設等の地下構造物の免震構造に関し、特に巨大な地下構造物に適した地下構造物の免震構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
各種の地上構造物に対しては、免震装置を主体とした種々の免震技術の開発が進められてきたが、近時の大地震を経験したことで、地上構造物だけでなく地下構造物に対しても地震対策の見直しが進められている。
地下構造物においては、地上構造物と比べて地震時の揺れが小さいこと等からその研究開発が大幅に遅れている。
【0003】
例えば特許文献1には、地上構造物とコンクリート製の建物基礎との間に二種類の免震装置(積層ゴム支承とすべり支承)を介装して免震することが開示されている。
特許文献2には、地下構造物の側方を包囲した土留壁で以て周辺地盤を通じた地震の伝達を緩和しつつ、地下構造物の側面と土留壁との間に介装したクッション機能を有する免震材により地震荷重の集中を防止することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−210823号公報(図1
【特許文献2】特開2001−164583号公報(図1図3
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
地下構造物に対する免震技術にはつぎのような解決すべき課題がある。
<1>地下構造物と地上構造物では地震波の伝達経路等が相違することから、地上構造物の免震技術を地下構造物へそのまま適用することが難しい。
<2>例えば、大型の立体駐輪場や立体駐車場を地下式に建設する場合、地表から地中深くまで連続した硬質の外殻を構築する必要がある。
このような場合、土圧や耐震強度を踏まえると外殻の躯体厚を非常に厚く設計しなければならず、外殻の建設費が嵩むといった問題と、地表から地中深くまで達するような大型地下構造物に適した免震技術が非常に少ないといった問題がある。
<3>一般的な免震装置の支承方式としては、例えば複数のゴム板を積層した積層ゴム系、構造物の底面側に設けた摩擦係数の小さな滑り材と、基礎側に設けた支持材とを摺接可能に当接させたすべり系、ローラ類を介装した転がり系が知られている。
これらの免震装置を地下構造物に適用した場合には、装置コストやメンテナンスコストが高額なことと、免震装置の設置に多くの時間と費用がかかる等の多くの問題がある。
<4>地下構造物の耐震構造のひとつとして、地下構造物の底部に複数の基礎杭を打設する方法が提案されている。
この耐震構造にあっては、複数の基礎杭の構築に多くの時間と費用を要するといった問題にくわえて、地下構造物の底部下面が支持地盤と直接接触していて、接触面の間に硬度差があるため、横揺れが作用したときに境界部が滑り面となって地下構造物が横滑りし易く、さらに杭頭に過大な応力が集中した場合には破壊するといった問題がある。
<5>地下構造物の周囲に鋼矢板やコンクリート製の地中壁を形成して地震波の伝達を遮断する方法が提案されている。
鋼矢板や地中壁は地震波の伝達をある程度遮断できるものの、地下構造物の共振を確実に防止できず、共振により地下構造物が大きなダメージを受ける。
【0006】
本発明は以上の点に鑑みて成されたもので、その目的とするところは少なくともつぎのひとつの地下構造物の免震技術を提供することにある。
<1>従来の免震装置を用いることなく、簡易な構造で以て効果的に免震できること。
<2>地下構造物の共振抑制効果が大きいこと。
<3>大型の地下構造物に適した実用的で経済的な免震技術を提供すること。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願の第1発明は、地下構造物の側壁と地盤との間に側部免震層を介装するとともに、地下構造物の底床と支持地盤との間に底部免震層を介装した地下構造物の免震装置であって、前記側部免震層および底部免震層を硬質粒体で構成し、前記側部免震層の上部を拡幅してポケット部を形成し、前記地下構造物の底床の下面に突設した拘束帯爪により前記底部免震層を複数に区画して拘束し、前記拘束帯爪および底部免震層を介して、前記地下構造物の底床を支持地盤に支持させたことを特徴とする。
本願の第2発明は、前記第1発明において、前記地下構造物の底床の下面に下方を開放したスパイク筒を突設し、硬質粒体を充填した前記スパイク筒の下部を支持地盤に貫入したことを特徴とする。
前記拘束帯爪に透孔を開設し、該透孔を通じて底部免震層全体に地震波の伝達を可能に構成してもよい。
前記硬質粒体は砂、砂利、砕石、または廃棄物の造粒物の何れかひとつを選択する。
【発明の効果】
【0008】
本発明はつぎの何れかひとつの効果を奏する。
<1>側部免震層の上部を拡幅してポケット部を形成する一方、底部免震層と拘束帯爪とを組み合わせただけでの簡単な免震構造により、従来の免震装置を用いることなく、効果的に地下構造物を免震することができる。
<2>地下構造物の底床の下面と支持地盤との間に滑り面を形成することなく、底部免震層を構成する硬質粒体群の摩擦抵抗により地震波を分散して効率よく吸収することができる。
<3>地下構造物の底床の下面に突設したスパイク筒を支持地盤に貫入することで、地下構造物の下部の横揺れ防止効果を高くできるから、地下構造物の免震効果が格段に良くなる。
<4>側部免震層と底部免震層を構成する硬質粒体群により地震波を吸収できるので、地下構造物の共振を確実に防止できる。
<5>大型の地下構造物に適した実用的で経済的な免震技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明に係る免震構造を適用した地下構造物のモデル図
図2】一部を省略した免震層の要部の拡大図
図3】側壁の建込み作業を説明するための側壁下部の縦断面図
図4】側部免震層の形成作業を説明するための側壁の縦断面図
図5】拘束帯爪を設置した側壁の横断面図
図6図5におけるVI−VIの断面図
図7】底部免震層の形成作業を説明するための側壁下部の縦断面図
図8】底床の形成作業を説明するための縦断面図
図9】免震作用を説明するための地下構造物のモデル図
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に図面を参照しながら本発明の実施例について説明する。
【0011】
<1>地下構造物の概要
図1に例示した地下構造物10は地盤20を開削して構築したコンクリート製の外殻を有する構造物で、複数の側壁11と、天井12と、底床13とを有する。
【0012】
本例は地下構造物10が立方体を呈した大型地下駐輪場または大型地下駐車場である場合を示し、天井12の一部に自転車や自動車等の車両を入出庫するための単数または複数の出入口14が設けてある。また地下構造物10の内部には複数の車両を格納するための格納部が階層的に形成してあって、出入口14および格納部の間で車両を機械的に搬送する搬送手段により、または自走により出入口14と格納部との間で車両を移動可能に構成されている。
さらに地下構造物10の内部は、駐輪または駐車に必要な装置や設備が組み込まれている。
【0013】
地下構造物10は車両の格納施設に限定されるものではなく、廃棄物施設や住宅施設であってもよい。さらに、地下構造物10の形状は立方形に限定されず、多角柱体や円柱体等を含むものである。
【0014】
本発明は、地下構造物10を構成する側壁11の外面と側面地山21との間に介装する側部免震層30と、底床13の下面と支持地盤22との間に介装する底部免震層35とを、ともに硬質粒体群で構成したものである。
特に後述する拘束帯爪32および底部免震層35を介して底床13を支持地盤22に支持させて、地下構造物10の上部の横揺れに対して地下構造物10の下部の横揺れを小さくするように構成した。
【0015】
<2>側部免震層
硬質粒体で構成する側部免震層30は、側壁11の外面と側面地山21との間に介装した免震材で、地下構造物10の横揺れと縦揺れを吸収するためと、地中の間隙水を排水するために機能する。
【0016】
側部免震層30の素材として例えば耐震ゴムを用いた場合には、経年劣化や地震時の破損の問題があり、また軽量土を用いるとコスト高と低免震性等の問題があり、さらに土粒子間の水圧上昇に伴う液状化対策を別途に行う必要がある。
側部免震層30の素材として硬質粒体を用いれば、上記した問題点を一挙に解消することができる。
側部免震層30を構成する硬質粒体としては、例えば砂、砂利、砕石、各種廃棄物より形成した造粒物等を単独で、またはこれら複数の組み合わせを適用できるが、経済性や充填性を考慮すると砂を単独で用いることが好適である。
【0017】
側部免震層30は全体が略均一の層厚を有していて、その上部に層厚の厚いポケット部31を形成している。要は側部免震層30の上部の層厚が下部に対して厚く形成してあればよい。
側部免震層30の上部にポケット部31を形成したのは、地下構造物10の上部の免震性能を高めるためと、地震時に自重を利用して硬質粒体を下方の側部免震層30へ補給するためであるから、ポッケット部31の深さや層厚は地下構造物10の全高等に応じて適宜選択するものとする。
【0018】
<3>底部免震層
硬質粒体で構成する底部免震層35は、底床13と支持地盤22との間に介装した免震材で、次記する拘束帯爪32と協働して地下構造物10の下部の横揺れを小さく抑制するためと、縦揺れを吸収するために機能するだけでなく、底床13と支持地盤22との間で荷重を均等に分散するために機能する。
【0019】
底部免震層35として例えば公知の免震装置を用いた場合には、装置自体が高額であること、地下構造物の底部の下方に複数の免震装置を支えるための支持基礎を別に構築する必要があること、免震装置の設置に広い空間を必要とすること、免震装置の設置に多くの時間と費用がかかること等の多くの問題がある。
底部免震層35の素材として硬質粒体を用いれば、上記した問題点を一挙に解消することができる。
【0020】
底部免震層35を構成する硬質粒体としては、例えば砂、砂利、砕石、各種廃棄物より形成した造粒物等を単独で、またはこれら複数の組み合わせを適用できるが、経済性や充填性を考慮すると砂を単独で用いることが好適である。
【0021】
<4>拘束帯爪
拘束帯爪32を省略して、底床13と支持地盤22との間の全面に硬質粒体を層状に介装した場合は、地震時に硬質粒体が偏倚して本来の免震作用を発揮できなくなる恐れがある。
そこで底床13の下面に複数の拘束帯爪32を下方へ向けて突設しておけば、底部免震層35を構成する硬質粒体を複数の区画にブロック化して硬質粒体の偏倚を防止できるので、各区画単位で本来の免震作用を発揮させることが可能となる。
【0022】
このように拘束帯爪32は、硬質粒体で構成する底部免震層35を複数に区画して区画単位で硬質粒体を拘束するためと、拘束した硬質粒体を介して地下構造物10の重量を均等に分散して支持地盤22へ伝達するために機能する突起体で、底床13の下面に下向きに突設してある。
拘束帯爪32としては、例えばH形鋼、I形鋼、ボックス鋼等の鋼材を適用することができる。
拘束帯爪32の配置形態は格子状に限定されず、底部免震層35を複数に区画できる配置形態であればよい。
【0023】
また拘束帯爪32はそのウェブに複数の透孔33を有していて、該透孔33を通じて拘束帯爪32の両側に位置する硬質粒体の相互間で力(地震動)を伝達し得るようになっている。透孔33は必須ではなく省略する場合もある。
【0024】
[地下構造物の構築方法]
つぎに図3〜8を参照しながら免震層30,35を具備した地下構造物10の構築方法の一例について説明する。
【0025】
<1>側壁の沈設
図3,4に示すように、上下に開放した側壁11の内側の地盤20の掘削工と、既設の側壁11の上端への躯体の増設工を行いながら、上下の開放した側壁11を自重により沈設する。
延長用躯体の増設方法としては、型枠を用いて現場でコンクリートを打継ぎするか、またはプレキャスト製の延長用躯体を組み付ける等の公知の増設方法による。以下に側壁11の沈設工について詳述する。
【0026】
<1.1>地盤の掘削
側壁11の内側の地盤10は公知の各種掘削機を用いて掘削し、削土はバケット等で地上へ排出する。
【0027】
<1.2>間隙の形成
側壁11を地中に建て込む際、図4の左半に示すように、側壁11の外面と側面地山21との間に、側部免震層30の介装空間となる間隙23を形成する。
本例では、側壁11の内方下部に自走可能に配備した複数の掘削機40で以て側壁11の直下地盤とその外方の余掘りを同時に行うことで、均一幅の間隙23を形成する場合について説明する。
図示した掘削機40は少なくとも鉛直軸を中心に回転する掘削歯と、掘削歯を回転する駆動源と、掘削歯および駆動源を搭載した掘削機本体を側壁11に沿って走行体させるための自走手段とを具備している。
間隙23の形成手段は、上記した他にトレンチ掘削機やウォータジェット式掘削機等の公知の掘削機を使用できる。
バックホー等の掘削機を用いて隙間23の上部に、間隙23より幅広の拡幅部24を形成する。
【0028】
<2>側部免震層の形成
図4の右半に示すように、拡幅部24内に硬質粒体を充填すると、硬質粒体が間隙23内へ自重落下して側壁11の外周全面に側部免震層30が形成される。
拡幅部24に硬質粒体を貯留した状態で側壁11の建て込み作業を行うと、硬質粒体の充填性がよくなる。
なお、側壁11の建て込み完了後に一括して硬質粒体を充填して側部免震層30を形成することも可能である。
【0029】
<3>底部免震層の形成
図5〜7を参照しながら底部免震層35の形成方法について説明する。
【0030】
<3.1>底部空間の区画
図5,6は複数の拘束帯爪32を用いて側壁11の下部開口内を複数に区画した形態を示している。
側壁11の下部開口内に複数の拘束帯爪32を井桁状に配置し、各拘束帯爪32の端部を側壁11と一体に固定する。
【0031】
<3.2>硬質粒体の充填
つぎに拘束帯爪32を設けた側壁11の下部開口内に硬質粒体を充填して底部免震層35を形成する。
底部免震層35の形成にあたっては、拘束帯爪32により複数に区画した領域内で硬質粒体群を拘束し得るように十分に転圧する等して締め固めることが肝要である。
底部免震層35は支持地盤22で支持され、さらに周囲を複数の拘束帯爪32で囲まれた囲繞空間内で締め固められる。
【0032】
なお、底部免震層35を構成する硬質粒体群を先行して敷設した後に、複数の拘束帯爪32を硬質粒体群へ圧入するようにしてもよい。
【0033】
<4>底床の形成
つぎに、図8に示すように底部免震層35を形成した側壁11の下部開口内にコンクリートを打設して側壁11と一体に底床13を形成する。
【0034】
この際、拘束帯爪32の上部を底部免震層35より露出しておき、拘束帯爪32の上部を底床13に固着する。
底部免震層35は底床13および側壁11等の重量により圧縮され、底部免震層35の下面は支持地盤22に隙間なく接面し、また底部免震層35の上面は底床13の下面と隙間なく接面する。
したがって、底部免震層35は複数の拘束帯爪32で区画され、かつ底部免震層35を構成する硬質粒体群を、各区画単位で底床13と支持地盤22との間に加圧状態で介装することができる。
【0035】
<5>地下構造物の構築
側壁11と一体に底床13を構築したら、地下構造物の使途に応じて内部構造や天井12を構築する。
以上のように側部免震層30を介して側壁11が側面地山21と隔絶するともに、底部免震層35を介して底床13が支持地盤22と隔絶した地下構造物10を構築する。
【0036】
[免震作用]
つぎに図9を参照しながら地下構造物10の免震作用について説明する。
図9は周囲を側部免震層30および底部免震層35で覆って周囲の地盤から隔絶した地下構造物10のモデル図を示したものである。
【0037】
<1>通常時
地震が起きない通常時において、地下構造物10の重量は、底床13および底部免震層35を介して支持地盤22に分散して支持される。
【0038】
<2>地震時
地震時における両免震層30,35の免震作用について説明する。
【0039】
<2.1>小さな横揺れに対して
震源地から地盤20を通じて横揺れの地震波が伝わると、両免震層30,35の免震作用により地震波が吸収されて地下構造物10が免震される。
すなわち、両免震層30,35を構成する硬質粒体群の粒子間の摩擦抵抗により、上記した地震波を効果的に吸収して地下構造物10への伝達を小さくする。
殊に、底部免震層35を構成する硬質粒体群が、拘束帯爪32の透孔33を通じて区画を超えた力の伝達が可能であるので、底部免震層35の全体で地震波を効率よく吸収することができる。
【0040】
<2.2>大きな横揺れに対して
地下構造物10はその上部の横揺れに対して下部の横揺れを小さく抑制し得るようになっている。
すなわち、地下構造物10のコンクリート製の底床13と支持地盤22との間は、底部免震層35を介装することで、底床13と支持地盤22との間に硬度差をなくした。底部免震層35の上下面は、底床13と支持地盤22にそれぞれ横滑りがし難い状態で圧接している。
したがって、大きな横揺れの地震波が作用すると、底床13と底部免震層35の上面との間の境界面、または底部免震層35の下面と支持地盤22の間の境界面に滑り面が形成されず、底部免震層35を構成する硬質粒体群の内部で滑りを生じ、粒子間の摩擦抵抗により地震波を効果的に吸収する。
このとき、底部免震層35および拘束帯爪32は、例えて言えば基礎杭と同様に抵抗部材として働き、地震波を吸収しながら地下構造物10の底部の横移動を阻止する。
このように、底部免震層35および拘束帯爪32が、支持杭としての機能と免震材としての機能を同時に発揮するため、底部免震層35全体で地震波を分散しながら吸収することができる。
また底部免震層35を複数に区画した拘束帯爪32は、カンジキのように硬質粒体群を移動不能に保持するため、硬質粒体群の物理的な移動を阻止して硬質粒体群の偏りを防止する。
【0041】
さらに、側部免震層30の上部が拡幅してあって、地下構造物10の上部の横揺れを積極的に許容するようになっている。
このように、大きな横揺れの地震波が作用した場合であっても、両免震層30,35を通じて地震波を効率よく吸収できて、地下構造物10はその底部を中心に上部が多少横揺れする程度に免震することができる。
【0042】
<3>縦揺れに対して
直下地震が起きた場合には、両免震層30,35を通じて縦揺れの地震波が吸収されて地下構造物10への伝達を緩和する。
すなわち、両免震層30,35を構成する硬質粒体群の摩擦抵抗により縦揺れの地震波に対しても効果的に吸収できる。
【0043】
<4>共振の防止
地下構造物10の周囲を覆う側部免震層30および底部免震層35は、地震波を変位により吸収可能な硬質粒体群で構成している。
そのため、従来の地中壁や鋼矢板等の硬質部材と異なり、大小さまざまな地震波が作用しても、地震波が側部免震層30および底部免震層35により分散吸収されるため、地下構造物10の共振を確実に防止することができる。
【0044】
<5>間隙水について
一般に地震が起きると地盤中の間隙水の水圧が上昇して、液状化現象が生じる。
本例では、地盤20中の間隙水の水圧が上昇すると、地下構造物10の周囲に設けた側部免震層30を通じて地上へ排水される。
底部免震層35へ間隙水が集まった場合でも、底部免震層35の周縁から側部免震層30へ向けて通水して地上へ排水できるので、地下構造物10の浮き上がりを防止できる。
【0045】
[他の実施例]
以降に他の実施の形態について説明するが、その説明に際し、前記した実施の形態1と同一の部位は同一の符号を付してその詳しい説明を省略する。
【0046】
出した底床13にスパイク筒を付設した他の実施例について説明する。基本の構成は既述した実施例と同様に、底部免震層35が複数の拘束帯爪32で区画され、かつ各区画単位で拘束された状態で、底床13と支持地盤22との間に介装されている。
【0047】
<1>スパイク筒
スパイク筒は支持地盤22に貫入して地下構造物10の下部の横揺れ防止効果を高めるための抵抗部材であり、下方を開放した筒体で構成されている。
スパイク筒の断面形状は特に制約がなく、円形、楕円形、多角形のいずれでもよく、底部免震層35を貫通して支持地盤22の上層部に貫入できる全長を有する筒体であればよい。
スパイク筒の上端は底床13に一体に固着してある。
本例ではスパイク筒を拘束帯爪32の交点位置に固着した形態について説明するが、底床13の下面に直接固着してもよい。またスパイク筒の配設間隔や設置数は適宜選択する。
【0048】
<2>スパイク筒の固着方法
スパイク筒の取付方法は、支持地盤22を穿孔して複数のスパイク筒を貫入セットしてスパイク筒内に硬質粒体を充填した後に、前記実施例1で説明した底部免震層35を形成する作業と同様に、複数の拘束帯爪32の配置工を経て、スパイク筒内および拘束帯爪32を設けた側壁11の下部開口内に硬質粒体を充填して底部免震層35を形成し、最後にコンクリートを打設して底床13の下面にスパイク筒を一体化する。
底床13または拘束帯爪32との連結強度を増すため、スパイク筒の上端に接続用に鉄筋等を延設しておくとよい。
スパイク筒の取付方法は上記した方法に限定されず、要は地下構造物10の底床13の下面に、硬質粒体を充填したスパイク筒が突設されていて、該スパイク筒の下部が支持地盤22に貫入した状態で設置してあればよい。
【0049】
<3>スパイク筒による免震作用
本例では、スパイク筒の底面と支持地盤22との間に滑り面ができないように、スパイク筒内に硬質粒体が充填してある。
硬質粒体群をスパイク筒が拘束した構造となるため、コンクリート充填鋼管と略同程度のせん断強度を発揮する。
【0050】
底部免震層35と拘束帯爪32とによる免震作用は既述した実施例と同様である。
本例にあっては、底床13の下面から突出する複数のスパイク筒が直接支持地盤22に貫入して抵抗部材として機能するため、先の実施例と比べて地下構造物10の下部の横揺れ防止効果が格段に高くなる。
さらに硬質粒体を充填したスパイク筒は、地中深くに打設する従来の基礎杭と比べて、支持地盤22への貫入深さが浅くて済むので施工がきわめて容易である。
【符号の説明】
【0051】
10・・・・・地下構造物
11・・・・・側壁
11・・・・・底床
20・・・・・地盤
21・・・・・側面地山
22・・・・・支持地盤
23・・・・・間隙
24・・・・・拡幅部
30・・・・・側部免震層
31・・・・・ポケット部
32・・・・・拘束帯爪
33・・・・・透孔
35・・・・・底部免震層
図1
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図9