【実施例1】
【0014】
以下、本発明の実施例1を図面を用いて説明する。
図2は本発明の実施例1に係る空気調和機100の制御装置を示すブロック図である。回転数指令生成手段3は室温検出手段1によって検出された室内温度と室温設定手段2によって設定された設定温度の差から圧縮機モータ9の指令回転数を生成する。インバータ制御手段7はインバータ8に信号を出力し、インバータ8は圧縮機モータ9を駆動する。
【0015】
図1に示すように、空気調和機100は室外機101と室内機102を備え、空気調和機100の冷凍サイクルは、圧縮機104、四方弁、室外熱交換器105、電動膨張弁、室内熱交換器106を有しており、これら構成要素がこの順で配管103によって接続されている。冷房運転時の冷凍サイクルの動作を説明する。圧縮機104によって圧縮された高温高圧のガス冷媒は、冷房運転側に切り替えられた四方弁を介して室外熱交換器105に流入し、この室外熱交換器105で外気に熱を放出することで凝縮して高圧の液冷媒となる。この冷媒は電動膨張弁を通過することで減圧されて低温低圧の冷媒となって室内熱交換器106に流入する。室内熱交換器106では、冷却や除湿の対象となる部屋の空気が送風機107によって室内熱交換器106に送られ、冷媒と熱交換することで、冷たい空気を室内へ送ることができる。
【0016】
また、冷媒温度が流入空気の露点以上であれば流入空気を冷却し、冷媒温度が流入空気の露点以下であれば流入空気中の水分を液化してドレン水として室外に排出することで渇いた空気を室内へ送ることができる。
【0017】
また、指令回転数が第1の回転数以下の場合、指令回転数は第1の回転数に置き換えられる。
【0018】
ここで、
図3を用いて、従来の制御における冷房運転のときの室内温度と設定温度、指令回転数、及び圧縮機モータ9の負荷の関係について説明する。室内温度と設定温度の差が大きい場合は指令回転数が大きく、差が小さい場合は指令回転数が小さい。回転数指令生成手段により計算された回転数が第1の回転数より小さい場合は第1の回転数に置き換えられ圧縮機104は運転される。第1の回転数を圧縮機モータ9が脱調しない値に設定することで、脱調を防止することができる。
【0019】
さらに、負荷検出手段5によって圧縮機モータ9の負荷を検出する。そして、補正手段6は圧縮機モータ9の負荷に基づいて第1の回転数4を変更し、インバータ制御手段7に伝達する。
【0020】
しかし、
図3に記載の従来の制御では、負荷に応じて第1の回転数4が変化しない。一方、圧縮機モータ9の負荷が小さいほど、脱調しない回転数の下限値は低い。従って、
図3に記載の従来の制御では、圧縮機モータ9の負荷が小さく、回転数指令生成手段により計算された回転数を第1の回転数4に置き換える必要がない場合にも、第1の回転数4に置き換えるので、サーモオフの回数の増加を招く。
【0021】
次に、
図4を用いて、本発明の制御における冷房運転のときの室内温度と設定温度、指令回転数、及び圧縮機モータ9の負荷の関係について説明する。負荷検出手段が検出した圧縮機モータ9の負荷が軽いほど第1の回転数4を低くする。圧縮機モータ9の負荷が重い間は第1の回転数4を上げて、脱調しないようにする。室内温度と設定温度が離れている間の空気調和機100の動作は
図3に記載の従来の制御と変わりないが、室内温度と設定温度が近くなると回転数を下げていくときに脱調しない回転数で運転を維持する。負荷が軽くなったときは第1の回転数4を下げ、圧縮機104の運転範囲を広げより低い能力が出せるようにする。従って、室内温度を検出する室温検出手段1と、設定温度を設定する室温設定手段2と、を備え、設定温度と室内温度との差に基づいて圧縮機モータ9の負荷を検出することで、サーモオフを減らし、より快適な空気調和機100を実現できる。
【0022】
また、一般にインバータで圧縮機駆動用ブラシレスモータまたは誘導電動機の回転数を制御する場合、特に圧縮機構部の潤滑油を摺動部に供給し得る最低回転数が存在する。
【0023】
したがって、インバータによって0から無段階に回転数制御可能であったとしても必ず最低回転数が存在する。また、圧縮機104がスクロール圧縮機である場合、冷媒を含有した潤滑油を背圧室に供給することで、背圧を制御する。そのため、背圧を制御するために所定量の潤滑油をスクロール圧縮機に供給しなければならず、最低回転数が存在する。本発明は、圧縮機構部の潤滑油を摺動部に供給し得る回転数以上の値として最低回転数を備え、第1の回転数4が最低回転数以下である場合に第1の回転数を最低回転数とすることで、圧縮機構部の潤滑油を摺動部に供給するのを維持することができる。
【0024】
また、室内温度が設定温度付近に到達し、室内温度を設定温度付近に維持する際は、第1の回転数4での運転とサーモオフとを繰り返す運転を行う。サーモオフを繰り返す運転を行う場合、圧縮機モータ9の負荷は低い。従って、一度サーモオフを行った後は、第1の回転数4を最低回転数としてもよい。第1の回転数4を最低回転数まで下げることで、サーモオフを減らすことができる。サーモオフを減らすことで、室内温度をより設定温度付近に維持しやすくなり、また、消費電力の削減にも寄与することができる。
【0025】
なお、負荷検出手段5で検出された負荷が軽い場合に補正手段6は第1の回転数4を減少させるようにしてもよい。負荷が軽い場合にだけ最低回転数を下げることで安定性を損なうことなく、サーモオフが少なくなり室内の快適性を保つことができる。
【0026】
また、負荷検出手段5で検出された負荷が重い場合に補正手段6は第1の回転数4を増加させるようにしてもよい。負荷が重い場合にだけ安定性を重視した運転とすることで室内の快適性をできるだけ保つことができる。
【0027】
また、第1の回転数4は、冷房モード、暖房モード、除湿モード等のいずれかの運転モードで変えたものである。圧縮機モータ9の負荷の重さと回転数の関係は各運転モードにより異なるので第1の回転数4を運転モードに応じて変えることで、より室内の快適性を増すことができる。
【0028】
また、室外に位置する室外マイコンを備え、室外マイコンは第1の回転数、最低回転数及び補正手段6を備える。また、第1の回転数4は室内マイコンが備え、最低回転数の補正限界と最低回転数補正部は、室外マイコンが備える。室外機101にある圧縮機モータ9を室外機101にある室外マイコンで制御するため、最終的な最低回転数の決定を室外マイコンが行うことで、室内マイコンを介さずに済み、室内機のマイコンのソフトを変更する必要がない。
【0029】
また、第1の回転数4及び最低回転数選択部を、室内マイコンが備えるものである。最終的な最低回転数の決定を室内マイコンが行うことで室外機101のマイコンのソフトを変更することなく本発明を実施することができる。
【0030】
以上のように、指令回転数に基づいて圧縮機104を駆動する圧縮機モータ9と、指令回転数を生成する指令回転数生成手段と、指令回転数が第1の回転数以下である場合に指令回転数を第1の回転数とする補正手段6と、圧縮機モータ9の負荷を検出する負荷検出手段と、負荷検出手段が検出した圧縮機モータ9の負荷により第1の回転数を可変する補正手段6と、を備えることで、低速での脱調の防止とサーモオフの低減を両立することができる。
【0031】
また、空気調和機100において圧縮機モータ9の負荷を検出する手段として圧縮機モータ9のトルクを演算するトルク演算部と回転数を検出する回転数検出部を備え、圧縮機モータ9のトルクと回転数から負荷の重さを判断する。圧縮機モータ9の負荷の増大に比例して圧縮機モータ9に流れる電流が増大する。トルク演算部は、圧縮機モータ9に流れる電流に基づいて圧縮機モータ9の負荷を演算する。正確に圧縮機モータ9の負荷の重さを知ることにより、より正確に負荷の重さを判断することができる。
【0032】
また、圧縮機モータ9の負荷を検出する手段として室外機101の温度を検出する外気温検出手段を備え、室内機の温度と室外機101の温度から負荷の重さを判断する。一般に空気調和機100は室内温度を検出する室温検出手段と室外機101の温度を検出する外気温検出部を備えているので新たな検出手段を増やすことなく負荷の重さを判断することができる。
【0033】
また、冷房時に室外温度が高いとき、及び、暖房時に室外温度が低いときは、圧縮機モータ9の負荷が重くなるので、最低回転数を上げ、脱調しないようにする。冷房時に室外温度が低いとき、及び、暖房時に室外温度が高いときは、脱調しない範囲で最低回転数を下げることによっても、サーモオフを減らすことができる。従って、室外温度を検出する外気温検出手段を備え、室外温度に基づいて圧縮機モータ9の負荷を検出することで、新たな検出手段を増やすことなく負荷の重さを判断することができる。
【0034】
また、設定温度と室内温度との差及び室外温度に基づいて圧縮機モータ9の負荷を検出してもよい。
【0035】
また、圧縮機104の吐出温度を検出する吐出温度検出手段と、圧縮機モータ9の回転数を検出する回転数検出部を備え、吐出温度検出手段により検出した吐出温度と回転数検出部により検出した回転数から圧縮機モータ9の負荷の重さを判断する。一般に空気調和機100は圧縮機104の吐出温度を検出する吐出温度検出手段と、圧縮機モータ9の回転数を検出する回転数検出部を備えているので新たな検出手段を増やすことなく負荷の重さを判断することができる。
【0036】
冷房運転における場合について説明したが、暖房運転及び除湿運転においても同様に、本発明の制御を適用することができる。
【実施例2】
【0037】
実施例2について
図5を用いて説明する。実施例2の空気調和機100は第1の回転数4と第1の回転数4より高い第2の回転数10を備え、補正手段6は、圧縮機モータ9の負荷が設定値以上の場合は第1の回転数を第2の回転数とする。負荷検出手段5によって検出された圧縮機モータ9の負荷が設定値以下の場合、第1の回転数4を選択し、圧縮機モータ9の負荷が重い場合、第2の回転数10を選択する選択手段11を持ち、最低回転数をインバータ制御手段7に伝達する。2種類の最低回転数をあらかじめもつことでより簡単に制御の安定性と室内の快適性を両立した空気調和機100を実現することができる。
【0038】
また、第1の回転数4及び第2の回転数10は、冷房モード、暖房モード、除湿モード等のいずれかの運転モードで変えたものである。圧縮機モータ9の負荷の重さと回転数の関係は各運転モードにより異なるので、運転モードに応じて第1の回転数4を変えることで、より室内の快適性を増すことができる。
【0039】
また、室外に位置する室外マイコンを備え、室外マイコンは第1の回転数、最低回転数及び補正手段6を備える。また、第1の回転数4は室内マイコンが備え、第2の回転数10と最低回転数選択部は、室外マイコンが備える。室外機101にある圧縮機モータ9を室外機101にある室外マイコンで制御するため、最終的な最低回転数の決定を室外マイコンが行うことで、室内マイコンを介さずに済み、室内機のマイコンのソフトを変更する必要がない。
【0040】
また、第1の回転数4あるいは第2の回転数10あるいはその第1と第2の回転数10両方と最低回転数選択部とを、室内マイコンが備えるものである。最終的な最低回転数の決定を室内マイコンが行うことで室外機101のマイコンのソフトを変更することなく本発明を実施することができる。
【0041】
また、室内温度が設定温度付近に到達し、室内温度を設定温度付近に維持する際は、第1の回転数4での運転とサーモオフとを繰り返す運転を行う。一度サーモオフを行った後は、第1の回転数4を指令回転数とすることで、サーモオフを減らすことができる。
【0042】
また、室外に位置する室外マイコンを備え、室外マイコンは第1の回転数4、第2の回転数10及び選択手段11を備える。また、第1の回転数4は室内マイコンが備え、最低回転数の補正限界と最低回転数補正部は、室外マイコンが備える。室外機101にある圧縮機モータ9を室外機101にある室外マイコンで制御するため、最終的な最低回転数の決定を室外マイコンが行うことで、室内マイコンを介さずに済み、室内機のマイコンのソフトを変更する必要がない。