特許第5779530号(P5779530)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5779530
(24)【登録日】2015年7月17日
(45)【発行日】2015年9月16日
(54)【発明の名称】電力変換装置
(51)【国際特許分類】
   H02P 7/292 20060101AFI20150827BHJP
   H02M 7/48 20070101ALI20150827BHJP
   H02H 3/253 20060101ALI20150827BHJP
   H02H 3/34 20060101ALI20150827BHJP
   H02H 7/122 20060101ALI20150827BHJP
   G01R 29/18 20060101ALI20150827BHJP
【FI】
   H02P7/292 G
   H02M7/48 M
   H02H3/253
   H02H3/34 A
   H02H7/122 Z
   G01R29/18 Q
【請求項の数】7
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2012-66526(P2012-66526)
(22)【出願日】2012年3月23日
(65)【公開番号】特開2013-198382(P2013-198382A)
(43)【公開日】2013年9月30日
【審査請求日】2014年5月30日
(73)【特許権者】
【識別番号】502129933
【氏名又は名称】株式会社日立産機システム
(74)【代理人】
【識別番号】100100310
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 学
(74)【代理人】
【識別番号】100098660
【弁理士】
【氏名又は名称】戸田 裕二
(74)【代理人】
【識別番号】100091720
【弁理士】
【氏名又は名称】岩崎 重美
(72)【発明者】
【氏名】杉本 卓也
(72)【発明者】
【氏名】荒尾 祐介
【審査官】 松本 泰典
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−005257(JP,A)
【文献】 特開平10−243551(JP,A)
【文献】 特開2010−041830(JP,A)
【文献】 特開2001−309669(JP,A)
【文献】 特開2009−017665(JP,A)
【文献】 特開2005−201461(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02P 7/292
G01R 29/18
H02H 3/253
H02H 3/34
H02H 7/122
H02M 7/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
3相の交流電力を出力して交流電動機を駆動する電力変換器と、
前記電力変換器の3相の出力電流のうちいずれか2相を検出する電流検出部と、
前記電流検出部により検出された電流をエッジに変換するエッジ変換部と、
前記エッジ変換部で変換されたエッジの有無およびエッジのパターンを判別するエッジ判別部と、
を備え、
前記エッジ判別部が変換された各々のエッジを比較し、少なくとも1相の欠相を検出することを特徴とする電力変換装置。
【請求項2】
前記エッジ変換部は、前記電流検出部により検出された電流を1つ以上の閾値と比較し、
閾値以上であれば立上りエッジとなるようにエッジを生成し、
閾値以下であれば立下りエッジとなるようエッジを生成する
ことを特徴とする請求項1に記載の電力変換装置。
【請求項3】
前記エッジ判別部は、前記エッジ変換部が変換した各々のエッジの有無を判別する
ことを特徴とする請求項1に記載の電力変換装置。
【請求項4】
電力変換装置の情報を表示させる表示部と、
を備え、
前記エッジ判別部が判別した結果、欠相と判別された場合には、前記表示部に欠相状態が表示、または、外部に通報することを特徴とする請求項1に記載の電力変換装置。
【請求項5】
前記電流検出部において未検出相が欠相している場合、
前記エッジ変換部は、出力電流を検出している相をエッジに変換し、
前記エッジ判別部において各エッジがある出力電圧に関連した区間各々生成時に、
欠相と判別することを特徴とする請求項1に記載の電力変換装置。
【請求項6】
前記電力変換器は、6つのアームで構成されており、
相の上又は下アームが欠相している場合は、前記電流検出部により検出された電流を前記エッジ変換にてエッジに変換し、前記エッジ判別部においてある出力電圧に関連した区間エッジが生成されないと判別された場合は、欠相と検出することを特徴とする請求項1に記載の電力変換装置。
【請求項7】
前記電力変換器は6つのアームで構成されており、
未検出相の上又は下アームが欠相している場合、
前記エッジ変換部は、出力電流を検出している相をエッジに変換し、
前記エッジ判別部において各エッジが正常時とは異なったエッジパターンから欠相を検出することを特徴とする請求項1に記載の電力変換装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、出力側欠相検出機能を搭載した電力変換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
本技術分野の背景技術として、特開2012−5257号公報(特許文献1)がある。この公報には、「電力変換器(インバータ)の出力電流を検出器にて検出するとともにその極性を判定器にて判定し、出力電流がそのゼロクロス点と極性で6分割される領域のいずれにあるかを判定器で判定し、この各領域が或る一定の順序で遷移するかどうかを回路で判定し、一定の順序で遷移しないときは少なくとも1相が欠相しているものと判定する。」と記載されている(要約参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2012−5257号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1に開示の発明によると、出力電流領域の遷移状態を常に監視し欠相状態を判別しなければならない。また、どの相が欠相しているかを判別することは記載されていない。さらに、特許文献1に開示の発明によると3相分の電流検出器が必要となり、高価かつ電力変換装置の大きさが大きくなる欠点があった。
【0005】
本発明は、特許文献1に開示の発明を始めとする従来の技術と比較して、より容易に欠相状態を判別し、どの相が欠相しているか判別可能な安価で小型な電力変換装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、例えば特許請求の範囲に記載の構成を採用する。
【0007】
本願は上記課題を解決する手段を複数含んでいるが、その一例を挙げるならば、
3相の交流電力を出力して交流電動機を駆動する電力変換器と、
前記電力変換器の3相の出力電流のうち少なくとも2相を検出する電流検出部と、
前記電流検出部により検出された電流をエッジに変換するエッジ変換部と、
前記エッジ変換部で変換されたエッジから欠相を判定するエッジ判別部と、
を備え、
前記エッジ判別部が前記変換された各々のエッジを比較し、
少なくとも1相の欠相を検出することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、電力変換器の出力2相の電流を検出するだけでより容易に欠相状態を判別し、どの相が欠相しているか判別可能とできる。また、本発明によれば、安価にかつ小形に出力側欠相検出機能を搭載した電力変換器を構成することが可能となる。
上記した以外の課題、構成及び効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】電流検出器を少なくとも2つ用いた出力欠相検出を行う電力変換装置の構成図の例である。
図2】電流波形とエッジの関係図の例である。
図3】エッジ判別部の処理を説明するフローチャートの例である。
図4】v相が欠相した場合の電流波形とエッジの関係図の例である。
図5】電力変換器を具体的に示した詳細図の例である。
図6】u相の下アームが欠相した場合の電流波形とエッジの関係図の例である。
図7】v相の下アームが欠相した場合の電流波形とエッジの関係図の例である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、実施例を図面を用いて説明する。
【実施例1】
【0011】
本実施例では、電流検出器を少なくとも2つ用いた出力欠相検出を行う電力変換装置の構成の例を説明する。
【0012】
図1は、本実施例の電流検出器を少なくとも2つ用いた出力欠相検出を行う電力変換装置の構成図の例である。
【0013】
電力変換装置101は、平滑コンデンサ102と電力変換器103と電流検出器104と交流電動機105と欠相検出モジュール106と電流取得部107とエッジ変換部108とエッジ判別部109と欠相検出部110を有する。
【0014】
平滑コンデンサ102は、直流電圧を平滑化するための平滑コンデンサである。電力変換器103は、平滑化された直流を交流に変換する。電流検出器104は、電力変換器103の3相出力電流のうち、例えばu相・w相の2相電流を検出する。交流電動機105は、電力変換器103からの出力を得て駆動される。欠相検出モジュール106は,電流検出器104の出力電流フィードバック信号を取得する。
【0015】
以下,欠相検出モジュール106の内部構成について説明する。
【0016】
電流取得部107は、電流検出器104の出力電流フィードバック信号を取得する。また、エッジ変換部108は、電流取得部107にて与えられた出力電流フィードバック信号をエッジに変換する。エッジ判別部109は、前記エッジ変換器108で変換されたエッジの有無とエッジパターンを判別する。欠相検出部110は、前記エッジ判別器109で欠相と判別されたら欠相検出と判別する。表示部111は、前記欠相検出部110の状態を表示する。欠相状態信号出力部112は、前記欠相検出部110の状態を出力する。
【0017】
図2は、電流波形とエッジの関係図の例である。
【0018】
電流201は、例えばu相に取り付けられた検出器104から取得した電流である。立上りエッジ閾値203は、例えば駆動する交流電動機の定格電流や無負荷電流等の+5%の値に設定する。立下りエッジ閾値204は、例えば駆動する交流電動機の定格電流や無負荷電流等の−5%の値に設定する。このように設定する理由は、電流201が零点付近を通過する場合、正常時の電流値と欠相時の電流値の区別が出来ないためである。エッジ202は、電流201の値が立上りエッジ閾値203を超えた瞬間に+1、立下りエッジ閾値204を超えた瞬間に−1となり、それ以外は0となる。
【0019】
図3は、エッジ判別部109の処理を説明するフローチャートの例である。
【0020】
エッジ判別部109は、エッジ取得処理S301、例えばu相の立上りエッジ・立下りエッジ検出処理S302、立上りエッジ検出判別処理S303、u相の下アーム欠相処理S304、立下りエッジ検出判別処理S305、u相の上アーム欠相処理S306、欠相検出処理S307を有する。また、エッジ判別部109は、3パターンの欠相判別が可能である。1つ目は、上アームの欠相判別、2つ目は、下アームの欠相判別、3つ目は、交流電動機側の配線欠相か上下アームの欠相である。
【0021】
エッジ取得処理S301は、エッジ変換部108において変換されたエッジの値が+1なら立上りエッジ、−1なら立下りエッジ、0ならエッジなしを取得する。立上りエッジ・立下りエッジ検出判別処理S302は、エッジ取得処理S301から取得したエッジを出力電圧や取得電流1周期の間に立上りエッジ1回・立下りエッジ1回検出したかどうかの判別処理である。検出判別処理S302の判別結果が、Yesの場合、欠相されていないと判別され、Noの場合、次の立上りエッジ検出判別処理S303に移行する。立上りエッジ検出判別処理S303は、出力電圧や取得電流1周期の間に立上りエッジ1回検出したかどうかの判別処理である。検出判別処理S303の判別結果が、Yesの場合、下アーム欠相処理S304は、下アーム欠相状態を出力し、Noの場合、次の立下りエッジ検出判別処理S305に移行する。立下りエッジ検出判別処理S305は、出力電圧や取得電流1周期の間に立下りエッジ1回検出したかどうかの判別処理である。検出判別処理S305の判別結果が、Yesの場合、上アーム欠相処理S306は、上アーム欠相状態を出力し、Noの場合、欠相検出処理S307は、u相の欠相状態を出力する。
本実施例では、出力電圧や取得電流1周期においての判別方法を記載しているが、数周期に渡って判別させることも可能である。
【0022】
図4は、v相が欠相した場合の電流波形とエッジの関係例である。
【0023】
u相電流401とw相電流402は、v相が欠相した場合の電流である。u相エッジ403は、u相電流401が立上りエッジ閾値203の値の時+1、立下りエッジ閾値204の時−1となり、それ以外は0となる。w相エッジ404は、w相電流402が立上りエッジ閾値203の値の時+1、立下りエッジ閾値204の時−1となり、それ以外は0となる。エッジ判別部は、u相エッジ403とw相エッジ404が、同時にエッジが生成している事を検出し、電流を検出していないv相の欠相を判別することが可能となる。
【0024】
欠相検出部110は、欠相状態を欠相検出モジュール106の外部モジュールに通報する。例えば、欠相検出部110が、欠相を検出したら図1の表示部111に通信等を用いて通報し欠相状態を表示させる。また、欠相検出部110は、欠相状態を欠相状態出力部112に通報し、欠相状態出力部112は、欠相状態にあることを知らせるため欠相検出信号を出力し、端子等を介して外部に通報する。
【実施例2】
【0025】
本実施例では、図1に示す電力変換器103内のアーム欠相検出の構成の例を説明する。
【0026】
図5は、電力変換器を具体的に示した詳細図の例である。電力変換器103は、上側アーム群501と下側アーム群502の6つのアームで構成される。また、電力変換器103は、電流検出器104よりu相上下アーム、w相上下アーム、v相上下アームで構成される。
【0027】
図6は、u相の下アームが欠相した場合の電流波形とエッジの関係図の例である。
【0028】
下アーム欠相電流601は、例えばu相に取り付けられた電流検出器104から取得した電流である。エッジ602は、下アーム欠相電流601の値が立上りエッジ閾値203を超えた瞬間に+1になるが、立下りエッジ閾値204を超える瞬間が存在しないため0のままとなる。立下りエッジを検出できない場合は、電流検出している相の下アームが欠相していると判別が可能となる。
【0029】
図7は、v相の下アームが欠相した場合のエッジ判別部の例である。
【0030】
u相電流701とw相電流702は、v相の下アームが欠相した場合の電流である。u相エッジ703は、u相電流701が立上りエッジ閾値203の値の時+1、立下りエッジ閾値204の時−1となり、それ以外は0となる。w相エッジ704は、w相電流702が立上りエッジ閾値203の値の時+1、立下りエッジ閾値204の時−1となり、それ以外は0となる。u相エッジ703とw相エッジ704は、w相エッジ704、u相エッジ703、u相エッジ703とw相エッジ704の順に生成するパターンとなる。欠相がない場合は、u相エッジ703とw相エッジ704は、u相エッジ703・w相エッジ704と交互に生成されるため、その違いにより、電流を検出していないv相の下アーム欠相を判別することが可能となる。同様に、交流電動機105の回転方向が逆回転になったら、v相の下アームが欠相した場合、各エッジ生成パターンは、u相エッジ703、w相エッジ704、u相エッジ703とw相エッジ704の順となるため、欠相を検出することが可能となる。
【0031】
欠相検出部110は、欠相状態を欠相検出モジュール106の外部モジュールに通報する。例えば、欠相検出部110が、欠相を検出したら図1の表示部111に通信等を用いて通報し欠相状態を表示させる。また、欠相検出部110は、欠相状態を欠相状態出力部112に通報し、欠相状態出力部112は、欠相状態にあることを知らせるため欠相検出信号を出力し、端子等を介して外部に通報する。
【0032】
なお、本発明は上記した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。また、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【0033】
また、上記の各構成、機能、処理部、処理手段等は、それらの一部又は全部を、例えば集積回路で設計する等によりハードウェアで実現してもよい。また、上記の各構成、機能等は、プロセッサがそれぞれの機能を実現するプログラムを解釈し、実行することによりソフトウェアで実現してもよい。各機能を実現するプログラム、テーブル、ファイル等の情報は、メモリや、ハードディスク、SSD(Solid State Drive)等の記録装置、または、ICカード、SDカード、DVD等の記録媒体に置くことができる。
【0034】
また、制御線や情報線は説明上必要と考えられるものを示しており、製品上必ずしも全ての制御線や情報線を示しているとは限らない。実際には殆ど全ての構成が相互に接続されていると考えてもよい。
【符号の説明】
【0035】
101…電力変換装置、102…平滑コンデンサ、103…電力変換器、104…電流検出器、105…交流電動機、106…欠相検出モジュール、107…電流取得部、108…エッジ変換部、109…エッジ判別部、110…欠相検出部、111…表示部、112…欠相状態信号出力部、201…電流、202…エッジ、203…立上りエッジ閾値、204…立下りエッジ閾値、S301…エッジ取得処理、S302…立上りエッジ・立下りエッジ検出判別処理、S303…立上りエッジ検出判別処理、S304…下アーム欠相処理、S305…立下りエッジ検出判別処理、S306…上アーム欠相処理、S307…欠相検出処理、401…u相電流、402…w相電流、403…u相エッジ、404…w相エッジ、501…上側アーム群、502…下側アーム群、601…下アーム欠相電流、602…エッジ、701…u相電流、702…w相電流、703…u相エッジ、704…w相エッジ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7