【実施例1】
【0014】
図1に本発明の実施例に関わるインクジェット記録装置の構成を示す。101はインクジェット記録装置全体を制御するMPU(マイクロプロセッシングユニット)、102はインクジェット記録装置内で一時的にデータを記憶しておくRAM(ランダムアクセスメモリー)、103は書き出し位置を計算するソフトウェアおよびデータを記憶するROM(リードオンリーメモリ)、104は入力されたデータおよび印字内容等を表示する表示装置、105は被印字物の幅、印字距離、書き出し位置、及び印字文字列の幅を入力するパネルである。
【0015】
106はカウンターで構成され印字開始のタイミングを調節する書き出しタイマ、107はインクジェット記録装置の印字動作を制御する印字制御回路、108は被印字物検出回路、109は被印字物の検知時間と入力された被印字物の長さから移動速度を計算する移動速度計測回路、120は計測された移動速度から、書出し時の文字信号を送るタイミングを決めるためのラインクロック信号を生成する書出しタイミング制御回路、121は印字文字列の幅を一定に制御するためのラインクロック信号を生成する印字幅制御回路、110は印字内容を文字信号にする文字信号発生回路である。
【0016】
そして111はデータ等を送るバスライン、112はインクを噴出するノズル、113はノズルより噴出したインクが粒子になりそのインク粒子に電荷を加える帯電電極、114は帯電したインク粒子を偏向する偏向電極、115は印字に使用しないインクを回収するガター、116はガターより回収されたインクを再びノズルへ供給するポンプ、117と122は被印字物を検出するセンサ、118は印字の対象となる被印字物、119は被印字物を搬送するコンベアである。
【0017】
次に、印字内容入力から印字を完了するまでの一連の動作概要について述べる。
印字内容は、印字内容データをパネル105によって入力してRAM102に保存することで設定することが出来る。また、パネル105より設定された印字文字列の幅から縦列間の距離(ラインクロック信号1パルスあたりの移動距離)を決定し、RAM102に保存する。
【0018】
パネル105より設定された印字内容、印字フォーマットと縦列間距離から、ROM103に記憶されている移動速度計算プログラムによって、該当印字内容の最高印字速度を計算する。この最高印字速度によって生成されたラインクロック信号によって決定した書出し位置を基準にして位置が合うように制御する。
【0019】
ここで、
図2〜
図4を用いてラインクロック信号について説明する。
図2はラインクロック信号を生じさせるインクジェット記録装置の構成図であり、
図3はラインクロック信号と印字スキャンの関係を示す図であり、
図4はラインクロックの幅と被印字物の移動速度の関係を示した図である。
【0020】
ラインクロック信号とは、被印字物の移動量に同期させて速度制御するためのロータリーエンコーダ等の信号発生装置201において、外部パルスを入力回路202によって装置に入力し、入力された外部パルスを分周回路203によって分周した信号に相当する信号である。
【0021】
信号発生装置を使用する場合は、この分周された信号を基に、文字信号を発生するタイミングを調整し印字を行う。
図3に示す文字信号は、印字対象とする文字をドットパターンで表した印字文字における縦1列分の文字配列(ドットパターン配列)と対応しており、縦1列分の上下方向位置におけるドットの有無に対応するようにパルスの立上りを有する。これより、ラインクロック信号は、
図3に示すようにパルスの立上がりもしくは立下りをトリガにして、1パルスあたり1スキャン(縦1列分)の文字信号を発生させるための信号であるといえる。
【0022】
ラインクロック信号の周期は1スキャンあたりの移動時間となるように生成され、入力された印字文字列の長さとなるように印字制御及び書き出し位置の制御を行う。そのラインクロック信号のスキャン間隔(パルスの周期)から、被印字物の移動速度がわかり、
図4に示すようにスキャン間隔が長いほど被印字物の移動速度は遅く、短いほど移動速度が速いことを示すものである。
【0023】
ラインクロック信号は以下のように生成される。まず、被印字物検出センサ117は制御対象となる被印字物を検出すると、被印字物検知回路108によって被印字物の遮光時間を計測する。移動速度計測回路109にてパネル105より設定された被印字物の長さと計測された遮光時間に基づいて被印字物の移動速度を計測する。
【0024】
次に、被印字物の移動速度と設定時に決定された最高印字速度との比に基づいてラインクロック信号を生成する。その生成されたラインクロック信号バスライン111を通じてRAM102に保存される。
【0025】
被印字物検出センサ117から書出しまでの距離を、記憶された縦列間の距離で除算し、被印字物検出センサ117から書出しまでの必要なラインクロックパルス数(1)を算出できる。
【0026】
また、文字信号発生回路110から生成させる文字信号の発生から被印字物への書出し粒子の着弾までの被印字物の移動量を、パネル105によって入力された印字距離から求めた飛行粒子時間と計測した移動速度から算出する。その移動量を縦列間の距離で除算ラインクロックパルス数(2)を算出する。
【0027】
ラインクロックパルス(1)と(2)の合計を、書出しタイマ106でパルス数を数える際のカウンター値とする。書出しタイマ106はラインクロック信号のパルス1つにつき1つずつカウンター値からカウントダウンを始める。書き出しタイマ106のカウンターがカウントを終了すると、書き出しタイマ106からタイムアップの指令がMPU101へ届く。
【0028】
MPU101は、タイムアップ指令を受けて印字開始タイミングの指令を発生させると共に、MPU101はRAM102に記憶している印字内容を、バスライン112を介して文字発生回路110へ送る。
【0029】
文字信号発生回路110は送られてきた印字内容を文字信号に変更し、ノズル112から噴出し、帯電電極113内で粒子化したインク粒子に、該文字信号に応じた帯電電圧が印加される。
【0030】
印字制御回路107はバスライン111を介して、上記帯電電圧の印加制御を行うための帯電信号を帯電電極113へ送出するタイミングをコントロールする。この制御によって帯電したインク粒子は偏向電極114により偏向され、コンベヤ119によって搬送され被印字物118hへ向かって飛翔し、付着して印字される。印字に使用されなかったインク粒子はガター115より回収され、ポンプ116によって再びノズル112へ供給される。
【0031】
ここからは
図5〜
図8、
図10を用いて、従来の技術と発明のラインクロック生成時の違いについて述べる。
図5(a)は被印字物検出センサを1つ用いた時の本発明の被印字物搬送の図であり、
図5(b)は被印字物検出センサを2つ用いた時の本発明の被印字物搬送の図であり、
図6は被印字物への書出し制御における従来技術と本発明の比較図である。
図7は、従来技術におけるラインクロック信号生成のタイムチャートである。
図8は、本発明におけるラインクロック信号生成のタイムチャートである。
図10は、本発明の制御処理フローチャートである。
【0032】
被印字物118が搬送される様子は
図5(a)に示すように、被印字物118は被印字物118aを先頭に、被印字物118b、被印字物118cと搬送される。
【0033】
最初に、従来の技術について、被印字物118aが被印字物検出センサ117を通過してから被印字物118bの印字が完了するまでのラインクロック信号の生成を
図7に示し、以下に説明する。
【0034】
まず、被印字物118aが被印字物検出センサ117を通過する際の計測時間から求めた移動速度V
1に相当するラインクロック信号S
1を生成する。被印字物118aは被印字物検出センサ117での計測後から印字完了まで、ラインクロック信号S
1によって動作する。
【0035】
次に、被印字物118aの後方から一定の距離をおいて搬送される被印字物118bが被印字物検出センサ117を通過する際の計測時間から求めた移動速度V
2に相当するラインクロック信号S
2を生成する。被印字物118bは、被印字物検出センサ117計測後から印字完了までラインクロック信号S
2によって動作する。
【0036】
被印字物118aと被印字物118bのラインクロック信号生成方法は同じであり、被印字物118b以後に搬送される被印字物118も全て同様の方法でラインクロック信号を生成する。
【0037】
このとき従来の技術では、被印字物aの書出し位置を計算する際、被印字物118aが被印字物検出センサ117を通過する際に計測されたデータのみを用いてラインクロック信号を生成するため、被印字物検出センサ117を通過するタイミングから印字開始タイミングまでの間に被印字物118aが加減速して移動する場合の書出し位置の調整には対応しておらず、被印字物の移動速度が加減速した場合には書出し位置にずれが生じ、印字品質が低下する問題があった。同様に、被印字物118b以後においても、対応する被印字物の移動速度が加減速することで当該問題が生じるものである。
【0038】
図6は、印字ヘッド部におけるコンベアの移動速度を示す。左側に記載するのが従来技術のグラフであり、右側に記載するのが本発明のグラフである。ただし、被印字物の移動速度の絶対値が異なっても、センサ計測後から書出し粒子着弾までに速度が変化することが無ければ、従来の技術でも書出し位置を調整することは可能だが、センサ計測後から書出し粒子着弾までに速度が変化する場合は、書出し調整不可であることを示す。
【0039】
次に、本発明のラインクロック信号生成について述べる。RAM102に保存された複数の移動速度データを、バスライン111を介して、書出しタイミング制御回路120へ送り、加速度を考慮した移動速度を計算する。
【0040】
その移動速度に応じて生成されたラインクロック信号のデータをバスライン111を介して、書出しタイマ106へセットする。以下に、書出しタイミング制御回路120による加速度を考慮した制御について述べる。
【0041】
図10に本発明の書出し印字制御フローチャートの概要を示す。
まず、印字内容及び印字条件を設定し(S1)、設定された値から最高印字速度を算出する(S2)。そして後述する方法で被印字物の第1の移動速度V
1と第2の移動速度V
2を算出し(S3、S4)、この第1及び第2の移動速度に基づいて平均移動速度V
12と加速度aを求める(S5)。これより、平均移動速度V
12と最高印字速度との比から第1のラインクロック信号を生成し(S6)、第1のラインクロック信号に基づいて上述のラインクロックパルス数を算出し、パルスをカウントするタイマの設定値とする(S7)。
【0042】
さらに、被印字物への印字開始地点における移動速度V
3を加速度aから算出し(S8)、移動速度V
3と最高印字速度との比から第2のラインクロック信号を生成し(S9)、タイマのパルスカウントが設定したラインクロックパルス数に達した際を印字開始タイミングとし、第2のラインクロック信号に従って印字を開始する(S10)。
【0043】
図10のフローチャートにおける被印字物の加速度の算出について2通りの方法を以下に説明する。
【0044】
まず、2つの被印字物の移動速度から加速度を求める場合について説明する。この場合、
図5(a)に示したように、被印字物の搬送経路においては被印字物検出センサが1つ備えられていればよいものである。
図8を用いて、被印字物118aが被印字物検出センサ117を通過してから、被印字物118bの印字が完了するまでのラインクロック信号の生成を以下に説明する。
【0045】
最初に移動する被印字物118aは、加速度を算出できないので、被印字物118aは被印字物検出センサ117を通過する計測時間から求めた移動速度V
1のみによってラインクロック信号を生成し、被印字物118aは被印字物検出センサ117での計測後から印字完了まで、ラインクロック信号S
1によって動作する。
【0046】
次に被印字物118bでは加速度を考慮する。ここでは加速度を求めるために2つの被印字物の移動速度を必要とするため、被印字物検出センサ117の通過時点での被印字物118aと被印字物118bによる移動速度V
1および移動速度V
2を算出する。ここで、移動速度V
1によって生成されたラインクロック信号をS
1とする。2つの被印字物の移動速度と、被印字物検出回路108で検出する被印字物検出センサの位置情報とによって、被印字物検出センサで計測する2つの被印字物の計測時間の時間差から演算し、被印字物118bの加速度を算出する。
【0047】
次に、算出した加速度および上記計算された被印字物118bの移動速度V
2から被印字物118bが印字位置の移動速度V
2’を算出可能となる。そして被印字物検出センサ位置での速度V
2と印字位置での速度V
2’から、被印字物検出センサ117から印字位置間の平均速度V
2’’を計算し、平均速度V
2’’と該当印字内容(決定された印字文字列の幅)での印字を可能とする最高印字速度の比から、書出しタイミング制御回路120でラインクロック信号S
2を生成する。
【0048】
書出し位置の変化を抑制するために、被印字物118bが被印字物検出センサ117から印字位置に移動するまでは、ラインクロック信号S
2を書出しタイマ106にセットし、カウンターがカウントを終了すると、書き出しタイマタイムアップの指令がMPU101へ届く。指令が届いたら、ラインクロック信号S
2’の周期に切り替えて、印字開始から印字完了まで制御することで、印字文字列の幅の変化を抑制する。
【0049】
被印字物118b以後に搬送される被印字物118は、被印字物118bと同様に、前方の被印字物の移動速度から加速度を算出し、加減速にも対応可能なラインクロック信号を生成することができる。
【0050】
次に、
図9を用いて2つのセンサを使用して被印字物の移動速度から加速度を求める場合について説明する。この場合は、最初の被印字物から加速度を考慮することが可能である。
図9には被印字物118aが被印字物検出センサ117を通過してから、印字が完了するまでの様子を示す。
【0051】
この場合、
図5(b)に示したように、被印字物の搬送経路においては被印字物検出センサが2つ備えられているものとする。加速度を求めるには、2つの被印字物の移動速度が必要なので、1つの被印字物118aが、2つの地点に設けられた被印字物検出センサ117と印字物検出センサ122を通過する時点での移動速度V
0および移動速度V
1を算出する。その2つの速度と2つの被印字物検出センサで計測する被印字物の計測時間の時間差から演算し加速度を算出する。
【0052】
次に、算出した加速度から被印字物118aの印字位置での移動速度V
1’を算出する。印字位置での移動速度V
1’と該当印字内容における最高印字速度の比から印字幅制御回路121によってラインクロック信号S
1’を生成する。
【0053】
そして、センサ位置での速度V
1と印字位置での速度V
1’から平均速度V
1’’を計算する。平均速度V
1’’と該当印字内容の最高速度の比から、書出しタイミング制御回路120でラインクロック信号S
1を生成する。書出し位置の変化を抑制するために、被印字物118aが被印字物検出センサ122から印字位置に移動するまでは、ラインクロック信号S
1を書出しタイマ106にセットし、カウンターがカウントを終了すると、書き出しタイマタイムアップの指令がMPU101へ届く。指令が届いたら、ラインクロック信号S
1’の周期に切り替えて、印字開始から印字完了まで制御することで、印字文字列の幅の変化を抑制する。
【0054】
被印字物118a以後に搬送される被印字物118は、被印字物118aと同様に、2つのセンサによる被印字物の移動速度から加速度を算出し、加速度を考慮したラインクロック信号を生成することができる。
【0055】
以上の実施の形態によれば、被印字物が加減速する場合においても、書出し位置のずれを抑制した印字を可能にし、印字品質を向上することができるインクジェット記録装置を提供することができる。