特許第5779540号(P5779540)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5779540過酸化物硬化剤のための促進剤組成物および促進剤組成物を含む2成分モルタル組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5779540
(24)【登録日】2015年7月17日
(45)【発行日】2015年9月16日
(54)【発明の名称】過酸化物硬化剤のための促進剤組成物および促進剤組成物を含む2成分モルタル組成物
(51)【国際特許分類】
   C08L 101/00 20060101AFI20150827BHJP
   C08K 5/18 20060101ALI20150827BHJP
   C08K 3/00 20060101ALI20150827BHJP
   C08K 5/14 20060101ALI20150827BHJP
   C04B 28/02 20060101ALI20150827BHJP
【FI】
   C08L101/00
   C08K5/18
   C08K3/00
   C08K5/14
   C04B28/02
【請求項の数】15
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2012-101282(P2012-101282)
(22)【出願日】2012年4月26日
(65)【公開番号】特開2012-233184(P2012-233184A)
(43)【公開日】2012年11月29日
【審査請求日】2015年2月5日
(31)【優先権主張番号】10 2011 017 619.5
(32)【優先日】2011年4月27日
(33)【優先権主張国】DE
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】591010170
【氏名又は名称】ヒルティ アクチエンゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】100090022
【弁理士】
【氏名又は名称】長門 侃二
(72)【発明者】
【氏名】トーマス ブールゲル
【審査官】 繁田 えい子
(56)【参考文献】
【文献】 カナダ国特許出願公開第01265895(CA,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
主促進剤(I)および副促進剤(II)を含む、過酸化物よりなる硬化物質によって硬化可能な樹脂組成物のための促進剤組成物において、
前記主促進剤(I)が、N,N‐ビス(2‐ヒドロキシエチル)‐p‐トルイジン、N,N‐ビス(2‐ヒドロキシプロピル)‐p‐トルイジンまたはこれらのエトキシ化もしくはプロポキシ化された誘導体であり、
前記副促進剤(II)が下記の化2又は化3に示す化学式の化合物であり、
【化2】
【化3】
それぞれR1およびR2が相互に無関係であり、C1‐またはC2‐アルキル基、C1〜C3−ヒドロキシアルキル基、または一回以上エトキシ化またはプロポキシ化したC1〜C3‐ヒドロキシアルキル基であり、主促進剤(I):副促進剤(II)のモル比が1:1〜5:1であることを特徴とする促進剤組成物。
【請求項2】
前記副促進剤(II)が、N,N‐ジエチルアニリン、N,N‐ビス(2‐ヒドロキシエチル)‐アニリン、N‐エチル‐N‐ヒドロキシエチルアニリン、N,N‐ビス(2‐ヒドロキシエチル)‐m‐トルイジンまたはN,N‐ビス(2‐ヒドロキシプロピル)‐m‐トルイジンから選択される、請求項1に記載の促進剤組成物。
【請求項3】
前記主促進剤(I)が、N,N‐ビス(2‐ヒドロキシプロピル)‐p‐トルイジンであり、前記副促進剤(II)が、N,N‐ビス(2‐ヒドロキシエチル)‐m‐トルイジンである、請求項2に記載の促進剤組成物。
【請求項4】
主促進剤(I):副促進剤(II)のモル比が3:1である、請求項1から3までのいずれか一項に記載の促進剤組成物。
【請求項5】
少なくとも1つのラジカル重合可能な化合物および前記硬化物質のための促進剤を含む樹脂組成物において、
前記促進剤が、請求項1から4までのいずれか一項に記載の促進剤組成物であることを特徴とする樹脂組成物。
【請求項6】
前記促進剤が、請求項3または4に記載の促進剤組成物である、請求項5に記載の樹脂組成物。
【請求項7】
前記促進剤組成物が、樹脂組成物に対して1〜3重量%の量で含有されている、請求項5または6に記載の樹脂組成物。
【請求項8】
請求項5から7までのいずれか一項に記載の樹脂組成物および無機添加剤を含むことを特徴とする、反応性樹脂モルタル。
【請求項9】
反応性樹脂モルタルに対して30〜50重量%の量の樹脂組成物が含有されている、請求項8に記載の反応性樹脂モルタル。
【請求項10】
反応性樹脂モルタルに対して50〜70重量%の量の無機添加剤がさらに含有されている、請求項8または9に記載の反応性樹脂モルタル。
【請求項11】
A成分として請求項8から10までのいずれか一項に記載の反応性樹脂モルタルを含み、反応を禁止するように分離した状態で、B成分として、硬化物質として有機過酸化物を含有する硬化剤を含むことを特徴とする、2成分モルタル組成物。
【請求項12】
前記有機過酸化物が、ジアシルペルオキシドである、請求項11に記載の2成分モルタル組成物。
【請求項13】
前記B成分がさらに鈍感剤を含有する、請求項11または12に記載の2成分モルタル組成物。
【請求項14】
前記B成分が、さらに無機添加物を含有する、請求項11から13までのいずれか一項に記載の2成分モルタル組成物。
【請求項15】
ドリル孔に固定部材を化学的に固定するために使用することを特徴とする、請求項11から14までのいずれか一項に記載の2成分モルタル組成物の使用法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機過酸化物硬化剤のための促進剤組成物、特にジアシルペルオキシドによって硬化可能な樹脂組成物用の促進剤組成物、および、促進剤組成物を含有する樹脂組成物、並びに、化学的固定のために2成分モルタル組成物(Zweikomponenten-Moertelsystem)で促進剤組成物を使用する使用法に関する。本発明はさらに、化学的固定、特にドリル孔への固定手段の化学的固定のための2成分モルタル組成物の使用法に関する。
【背景技術】
【0002】
ラジカル重合可能な化合物をベースとした化学モルタル材(Moertelmassen)は古くから知られている。このようなモルタル材は、一般に反応性樹脂モルタル(A成分)と硬化剤(B成分)とからなる2成分モルタル組成物が使用される。従来技術として、ジアシルペルオキシド、特にジベンゾイルペルオキシドを硬化物質(Haertungsmittel)として含むラジカル重合可能な化合物をベースとした有機結合剤を有する2成分モルタル組成物が既知である。これらのモルタル組成物は、ラジカル重合可能な化合物をベースとした樹脂組成物と、重合反応を促進することができラジカル開始剤の形成を促進する役割を果たす化合物と、重合反応を阻害することができ重合反応を遅延させる役割を果たす化合物とを含有する。これにより、特にモルタル材のゲル化時間をモルタル材に対する要求に応じて適宜調節することが可能である。
【0003】
前記、重合反応を促進することのできる化合物はしばしば促進剤と呼ばれるが、この促進化合物として、芳香族アミン、特に置換アンリンおよびトルイジンが使用される。
【0004】
置換アニリンによって促進されたモルタル材は、硬化後の高温(+40℃)における耐荷重特性は十分であるが、低温では硬化特性が十分ではないことが生じる。したがって、N,N-ジエチルアニリンによって促進されたモルタルは、硬化後に+40℃では良好な耐荷重特性を有するが、しかしながら低温使用時(−10℃)には硬化された物質の耐荷重特性は低下する。
【0005】
そこで、アニリンを、特に低温での活性が著しく高いN置換-p-トルイジンで代用することが提案され、現在では、一般にN置換-p-トルイジン、例えばN,N-ビス(2-ヒドロキシプロピル)-p-トルイジンが、有機過酸化物硬化剤によって硬化される化学モルタル用の重合剤として使用される。
【0006】
メタクリレートをベースとした化学モルタルでは、例えば、現在では一般にゲル化時間は5〜6分に調節される。約8〜10分のゲル化時間に延長したい場合、硬化反応をより強く抑制する必要がある。これは、高温におけるモルタル材の加工性が必要な場合、および後から補強接続材として使用する場合には特に重要である。しかし、重合反応の過度の抑制は硬化物の性能低下を招き、しかも高い周辺温度においては硬化物の性能を著しく低下させ、したがって耐荷重特性を損なうことになる。
【0007】
発明者の考察に基づき、異なる使用温度で使用するため、芳香族アミンをベースとした、特にトルイジンおよびアニリンをベースとした既知の促進剤を組み合わせようとしても、得られるモルタル材は、広い温度範囲にわたって、特に−40℃〜+80℃の温度範囲にわたって、満足な硬化特性と、硬化物における耐荷重特性との両方を提供することはできないと推定された。このことは、とりわけ、m-トルイジンまたはアニリンは高温特性にはポジティブに作用するが、低温特性にはネガティブに作用し、p-トルイジンは低温特性にはポジティブに作用するが、高温特性にはネガティブに作用することを背景としている。
【0008】
したがって、モルタル組成物の特性、例えば、硬化特性(特に低温時)、および、硬化した材料の耐荷重特性(特に高温時)にネガティブに作用することなしに、ゲル化時間を延長し、ひいては−10℃〜+40℃の温度範囲全体にわたって特性を保持することが可能なモルタル組成物が必要とされている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の課題は、硬化物質としての、特にジアシルペルオキシド等の有機過酸化物をベースとした、2成分モルタル組成物用硬化剤に対して用いられる促進剤において、ゲル化時間の延長を可能にし、しかも、従来技術において既知の促進剤における欠点、例えば低温時における硬化特性は問題ないものの高温時における硬化後のモルタル材の耐荷重性能が小さいというような欠点を示すことのない促進剤を提供することである。さらに本発明は、ゲル化時間を延長させても有機過酸化物(特にジアシルペルオキシド)によって硬化が可能で、しかも、高温範囲(−10℃〜−40℃)において高い耐荷重性能を備えるとともに良好な硬化特性を有する樹脂組成物を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記、本発明の課題は、前述の2成分モルタル組成物において、ビス‐N置換‐p‐トルイジン(主促進剤)、および、ビス‐N置換‐アニリンまたはビス‐N置換‐m‐トルイジン(副促進剤)を混合したものを促進剤として使用することにより、解決可能であることが示された。
【0011】
また、ゲル化時間の延長によって低下する耐荷重性能は、副促進剤を単独で用いた場合にはそれほど高くない耐荷重性能しか得られないのに対して、副促進剤を混合することによって著しく改善されることがわかった。
【0012】
本発明の主旨において、各用語の意味は下記のとおりである。
「樹脂組成物」とは、樹脂生成における反応性組成物からなる組成物(ベース樹脂)を意味し、ラジカル重合可能な化合物、化合物を生成するための触媒、反応性希釈剤、促進剤、ならびに、安定剤、および、必要に応じて他の反応性希釈剤を含む。この概念は、「有機結合剤」の概念と同じ意味で用いられる。
【0013】
「反応性樹脂モルタル」は、樹脂組成物と無機添加剤とからなる組成物を意味し、これについては、「樹脂成分」または「A成分」の用語が同じ意味で用いられる。
【0014】
「硬化物質」は、ベース樹脂の重合化(硬化)をもたらす物質である。
【0015】
「硬化剤」は、硬化物質、粘性化剤、場合によっては不活性溶媒および無機添加剤からなる組成物を意味する。これについては、「硬化成分」または「B成分」が同じ意味で用いられる。
【0016】
「促進剤」は、重合化(硬化)を促進する物質を意味する。
【0017】
「反応性希釈剤」は、樹脂組成物を希釈し、これにより、樹脂組成物を塗布するのに必要な粘性を付与し、ベース樹脂との反応が可能な官能基を含み、重合化(硬化)の際に、硬化された物質(モルタル)の主要構成成分となる、液状または低粘性のラジカル重合可能な化合物を意味する。
【0018】
「モルタル材」は、反応性樹脂モルタルと、硬化物質を含む硬化剤との混合により得られ、化学的固定材として直接使用することができる材料を示す。
【0019】
「2成分モルタル組成物」は、A成分である反応性樹脂モルタルと、B成分である硬化剤とを含む組成物を意味し、2つの成分は反応をしないように別個に保管されており、これにより、反応性樹脂モルタルは、硬化剤との混合後にはじめて硬化する。
【0020】
したがって、本発明の対象は、請求項1に記載の促進剤組成物である。本発明の他の対象は、請求項6に記載のように、本発明の促進剤を含有する樹脂組成物、請求項9に記載のように、樹脂組成物を含有する反応性樹脂モルタル、請求項10に記載の2成分モルタル組成物、ならびに請求項14に記載の化学的固定のための2成分モルタル組成物の使用法である。それらに対応する従属請求項は、これらの発明対象の好ましい実施形態に関する。
【0021】
本発明による促進剤組成物を用いることにより、有機過酸化物、特にジアシルペルオキシドによって硬化可能な化合物をベースとしたモルタル材の特性を低下させることなしにモルタル材のゲル化時間を延長することが可能である。本発明によるモルタル材では、促進剤組成物は、これまでに既知のモルタル組成物よりも良好な硬化特性、特に良好な低温硬化(−10℃)を可能にし、特に高温時(+40℃)に同時に高い耐荷重性能でも良好な硬化特性を確保する。
【0022】
本発明によれば、促進剤組成物は、主促進剤(I)および副促進剤(II)を含み、主促進剤(I)は以下の化1に示される化合物であり、
【化1】
副促進剤(II)は以下の化2又は化3に示される化合物であり、
【化2】
【化3】
それぞれR1およびR2は、相互に無関係であり、C1‐またはC2‐アルキル基、C1〜C3−ヒドロキシアルキル基、または1回以上エトキシ化またはプロポキシ化されたC1〜C3‐ヒドロキシアルキル基である。
【0023】
好ましくは、主促進剤(I)のR1およびR2は、C1〜C3‐ヒドロキシアルキル基、すなわち、ヒドロキシメチル‐、ヒドロキシエチル‐またはヒドロキシプロピル基であり、さらに好ましくは、主促進剤(I)は、N,N‐ビス(2‐ヒドロキシプロピル)‐p‐トルイジンである。
【0024】
副促進剤(II)は、好ましくはN,N‐ジエチルアニリン、N,N‐ビス(2‐ヒドロキシエチル)‐アニリン、N‐エチル‐N‐ヒドロキシエチルアニリン、N,N‐ビス(2‐ヒドロキシエチル)‐m‐トルイジンおよびN,N‐ビス(2‐ヒドロキシプロピル)‐m‐トルイジンから選択され、N,N‐ビス(2‐ヒドロキシエチル)‐m‐トルイジンは特に好ましい。
【0025】
本発明による促進剤として、(I)N,N‐ビス(2‐ヒドロキシプロピル)‐p‐トルイジンおよび(II)N,N‐ビス(2‐ヒドロキシエチル)‐m‐トルイジンは特に好ましい。
【0026】
本発明によれば、主促進剤および副促進剤が、1:1〜5:1、好ましくは3:2〜4:1、特に好ましくは3:1のモル比(I):(II)で使用される。5:1よりも大きい比率では、副促進剤の効果はもはや観察されず、低温時の硬化特性および高温時(+40℃)の耐荷重性能は、大部分は主促進剤によって決定される。良好な低温硬化は観察されるが、硬化された材料の耐荷重性能は高温(+40℃)で低下する。
【0027】
本発明の別の対象は、少なくとも1つのラジカル重合可能な化合物、硬化剤のための促進剤、および場合によっては少なくとも1つの抑制剤および少なくとも1つの反応性希釈剤を含有する樹脂組成物であり、促進剤が、主促進剤(I)と副促進剤(II)とを含有し、主促進剤(I)が前記化1に示される化合物であり、副促進剤(II)が、前記化2又は化3に示される化合物であり、それぞれR1およびR2が相互に無関係にC1‐またはC2‐アルキル基、C1〜C3‐ヒドロキシアルキル基、または一回以上エトキシ化またはプロポキシ化されたC1〜C3‐ヒドロキシアルキル基であることを特徴とする。
【0028】
促進剤組成物の正確な説明に関しては、上記実施形態を参照されたい。
【0029】
本発明によれば、促進剤組成物は、樹脂組成物に対して1.0〜3.0重量%、好ましくは、1.3〜2.6重量%、さらに好ましくは、1.7〜2.3重量%の量で含有されている。
【0030】
上記促進剤組成物の他に、樹脂組成物はさらに別の促進剤、例えば、コバルト(例えば、コバルトオクトエート、ナフテン酸コバルト)、マンガン、錫、バナジウム(例えば、バナジウム(IV)‐アセチルアセトネート、バナジウム(V)‐アセチルアセトネート)またはセリウムの塩を含有してもよい。
【0031】
専門家には既知のように、ラジカル重合可能な化合物としては、本発明によれば、エチレン性不飽和化合物、環状モノマー、炭素‐炭素‐三重結合を有する化合物およびチオール‐イン樹脂/チオール‐エン樹脂が適している。
【0032】
これらの化合物のうち、スチロールおよびその誘導体、(メタ)アクリレート、ビニルエステル、不飽和化ポリエステル、ビニルエーテル、アリルエーテル、イタコン酸、ジシクロペンタジエン‐化合物および不飽和脂肪を含む、エチレン性不飽和化合物の群が好ましく、特に不飽和ポリエステル樹脂およびビニルエステル樹脂が適しており、例えばEP1935860A1、DE19531649A1およびWO10/108939A1に記載されている。ビニルエステル樹脂は、耐加水分解性および優れた機械的特性により最適である。
【0033】
例えば、本発明による樹脂組成物で使用できる適切な不飽和ポリエステルは、M. Malik et al. in J. M. S.-Rev. Macromol. Chem. Phys., C40 (2 and 3), p. 139-165 (2000) により分類されているように、以下のカテゴリーに分類される:
(1)オルソ系樹脂:これらは、無水フタル酸、無水マレイン酸またはフマル酸、および、1,2‐プロピレングリコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,3‐プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ネオペンチルグリコールまたは水素化ビスフェノール‐Aなどのグリコールをベースとする;
(2)イソ系樹脂:これらは、イソフタル酸、無水マレイン酸またはフマル酸およびグリコールから生成される。これらの樹脂は、オルソ系樹脂よりも高い割合で反応性希釈剤を含有していてもよい;
(3)ビスフェノールA‐フマレート:これらは、エトキシ化ビスフェノールAおよびフマル酸をベースとする;
(4)HET酸系樹脂(ヘキサクロロ‐エンド‐メチレン‐テトラヒドロフタル酸系樹脂):これらは、不飽和ポリエステル樹脂の生成時にクロリン/臭素を含有する無水物またはフェノールから得られる樹脂である。
【0034】
これらの樹脂類の他に、さらに、いわゆる「ジシクロペンタジエン系樹脂(DCPD系樹脂)」を不飽和ポリエステル樹脂として分類することができる。DCPD系樹脂類は、シクロペタジエンとのディールス・アルダー反応による上記いずれかの樹脂タイプの変成によって得られるか、または代替的に二塩基酸、例えばマレイン酸とジシクロペンタジエニルとの第1反応、および続いて不飽和ポリエステル樹脂の通常の生成による第2反応によって得られ、後者はDCPD系マレイン酸樹脂である。
【0035】
不飽和ポリエステル樹脂は、好ましくは、500〜10,000ダルトンの範囲、さらに好ましくは、500〜5,000ダルトンの範囲、さらにより好ましくは750〜4,000ダルトンの範囲の分子量Mnを有する(ISO13885−1による)。不飽和ポリエステル樹脂は、0〜80mgKOH/g樹脂、好ましくは、5〜70mgKOH/g樹脂の範囲の酸価を有する(ISO2114−2000)。DCPD樹脂は不飽和ポリエステル樹脂として使用される場合、酸価は、好ましくは、0〜50mgKOH/g樹脂である。
【0036】
本発明によれば、ビニルエステル樹脂は、少なくとも1つの(メタ)アクリレート末端基を有するオリゴマーまたはポリマーであり、したがって、いわゆる(メタ)アクリレート官能化樹脂であり、これらにはウレタン(メタ)アクリレート樹脂およびエポキシ(メタ)アクリレートも含まれる。
【0037】
末端位置にのみ不飽和基を有するビニルエステル樹脂は、例えば、(メタ)アクリル酸または(メタ)アクリルアミドによる、例えば、エポキシオリゴマーまたはエポキシポリマー(例えば、ビスフェノールA‐ジグリシジルエーテル、フェノール‐ノボラック型のエポキシド、またはテトラブロモビスフェノールAをベースとしたエポキシドオリゴマー)の、置換によって得られる。好ましいビニルエステル樹脂は、(メタ)アクリレート官能化樹脂、および、メタクリル酸またはメタクリルアミド、好ましくはメタクリル酸によるエポキシオリゴマーまたはエポキシポリマーの置換により得られる樹脂である。このような化合物の例は、US3297745A、US3772404A、US4618658A、GB2217722A1、DE3744390A1およびDE4131457A1により既知である。
【0038】
この関係で出願明細書US2011071234AAを参照されたい。これにより、同明細書の内容は本明細書に組み込まれるものとする。
【0039】
ビニルエステル樹脂は、好ましくは、500〜3,000ダルトンの範囲、より好ましくは500〜1,500ダルトンの範囲の分子量Mnを有する(ISO13885−1による)。ビニルエステル樹脂は、0〜50mgKOH/g樹脂、好ましくは0〜30mgKOH/g樹脂の範囲の酸価を有する(ISO2114−2000による)。
【0040】
ビニルエステル樹脂としては、2〜10、有利には、2〜4のエトキシ化度を有するエトキシ化ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、二官能性、三官能性またはそれよりも多数官能性のウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーまたはこれらの硬化可能な成分の組成物が、特に適している。
【0041】
本発明により使用できるすべての樹脂は、専門家により既知の方法で、例えば、より少ない酸価数、水酸化物価数または無水物価数を達成するために変更を加えることができ、また、柔らかい材料を基材に混ぜることにより、より柔らかくすることもできる。
【0042】
さらに、樹脂は、WO2010/108939A1(イタコン酸エステル)に記載のように、例えば過酸化物などの反応抑制剤によって重合化することができるさらに別の反応基、例えば、イタコン酸、シトラコン酸およびアリル基などによって誘導された反応基を含んでいてもよい。
【0043】
ラジカル重合可能な化合物は、樹脂組成物に対して0〜30重量%、有利には10〜20重量%の量で含まれている。
【0044】
本発明の好ましい実施形態では、必要に応じて、樹脂組成物に、さらに他の低粘性のラジカル重合可能な化合物を反応性希釈剤として含有させ、このことによって、樹脂組成物の粘度を、樹脂として機能するラジカル重合可能な化合物の粘度に調整することができる。反応性希釈剤は、樹脂組成物に対して20〜70重量%、有利には30〜70%、特に好ましくは50〜70重量%の量で添加してもよい。
【0045】
適切な反応性希釈剤が、EP1935860A1およびDE19531649A1に記載されている。有利には、樹脂成分(A)はコモノマー(c)として(メタ)アクリル酸エステルを含有し、特に好ましくは、(メタ)アクリル酸エステルは、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ブタンジオール‐1,2‐ジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エチルトリグリコール(メタ)アクリレート、N,N‐ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、1,4‐ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、アセトアセトキシエチル(メタ)アクリレート、1,2‐エタンジオールジ(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、トリメチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、2‐ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルオキシエチル(メタ)アクリレートおよび/またはトリシクロペンタジエニルジ(メタ)アクリレート、ビスフェノール‐A‐(メタ)アクリレート、ノボラックエポキシジ(メタ)アクリレート、ジ[(メタ)アクリロイル‐マレオイル]‐トリシクロ‐5.2.1.0.2.6−デカン、ジシクロペンテニルオキシエチルクロトネート、3‐(メタ)アクリロイル‐オキシメチル‐トリクロ‐5.2.1.0.2.6‐デカン、3‐(メタ)シクロペンタジエニル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレートおよびデカリル‐2‐(メタ)アクリレートからなる群から選択される。
【0046】
基本的に、他の一般的なラジカル重合可能な化合物を単独で、または(メタ)アクリル酸エステルとの組成物として、例えば、スチロール、α‐メチルスチロール、tert‐ブチルスチロールなどのアルキル化スチロール、ジビニルペンゾールおよびアリル化合物を使用することもできる。
【0047】
ラジカル重合可能な化合物を示すために使用される命名「(メタ)アクリル・・/(メチル)アクリル」は、これらの表示によって「メタクリル・・/・・メタクリル・・」‐ならびに「アクリル・・/・・アクリル・・」‐化合物が含まれていることを意味する。
【0048】
本発明の好ましい実施形態では、樹脂組成物は、ゲル化時間を調節するための抑制剤をさらに含有している。抑制剤として、本発明によれば、ラジカル重合可能な化合物のために一般に使用される、専門家に既知であるような抑制剤が適している。好ましくは、抑制剤は、フェノール化合物および非フェノール化合物、例えば安定ラジカルおよび/またはフェノチアジンから選択される。
【0049】
市販のラジカル硬化反応性樹脂の成分となることの多いフェノール抑制剤としては、2‐メトキシフェノール、4‐メトキシフェノール、2,6‐ジ‐tert‐ブチル‐4‐メチルフェノール、2,4‐ジ‐tert‐ブチルフェノール、2,6‐ジ‐tert‐ブチルフェノール、2,4,6‐トリメチルフェノール、2,4,6‐トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、4,4′‐チオビス(3‐メチル‐6‐tert‐ブチルフェノール)、4,4′イソプロピリデンジフェノール、6,6′‐ジ‐tert‐ブチル‐4,4′‐ビス(2,6‐ジ‐tert‐ブチルフェノール)、1,3,5‐トリメチル‐2,4,6‐トリス(3,5‐ジ‐tert‐ブチル‐4‐ヒドロキシベンジル)ベンゾール、2,2′‐メチレン‐ジ‐p‐クレゾール、ピロカテコール(Brenzkatechin)、および4‐tert‐ブチルピロカテコール、4,6‐ジ‐tert‐ブチルピロカテコールなどのブチルピロカテコール、2‐メチルヒドロキノン、2‐tert‐ブチルヒドロキノン、2,5‐ジ‐tert‐ブチルヒドロキノン、2.6‐ジ‐tert‐ブチルヒドロキノン、2,6‐ジメチルヒドロキノン、2,3,5‐トリメチルヒドロキノン、ベンゾキノン、2,3,5,6‐テトラクロロ‐1,4‐ベンゾキノン、メチルベンゾキノン、2,6‐ジメチルベンゾキノン、ナフトキノンなどのヒドロキノン、またはこれらの2つ以上の組成物が問題となる。
【0050】
非フェノール性または嫌気性の、すなわち、フェノール抑制剤とは反対に酸素なしでも有効な抑制剤としては、有利には、フェノチアジンおよび/またはフェノチアジン誘導体またはフェノチアジン化合物などのフェノチアジン、またはガルビノキシルおよびN‐オキシラジカルなどの安定性のある有機ラジカルが考慮される。
【0051】
例えばDE19956509に記載のようなN‐オキシルラジカルを使用することができる。適宜な安定N‐オキシルラジカル(ニトロキシルラジカル)は、1‐オキシル‐2,2,6,6‐テトラメチルピペリジン、1‐オキシ‐2,2,6,6‐テトラメチルピペリジン‐4‐オール(TEMPOLとも呼ばれる)、1‐オキシル‐2,2,6,6‐テトラメチルピペリジン‐4‐オン(TEMPONとも呼ばれる)、1‐オキシル‐2,2,6,6‐テトラメチル‐4‐カルボキシル‐ピペリジン(4‐カルボキシ‐TEMPOとも呼ばれる)、1‐オキシル‐2,2,5,5‐テトラメチルピロリジン、1‐オキシル‐2,2,5,5‐テトラメチルピロリジン、1‐オキシル‐2,2,5,5‐テトラメチル‐3‐カルボキシルピロリジン(3‐カルボキシ‐PROXYLとも呼ばれる)、アルミニウム‐N‐ニトロソフェニルヒドロキシルアミン、ジエチルヒドロキシルアミンから選択することができる。さらに適宜なN‐オキシル化合物は、アセタルドオキシム、アセトンオキシム、メチルエチルケトオキシム、サリチルオキシム、ベンゾイルオキシム、グリオキシム、ジメチルグリオキシム、アセトン‐O‐(ベンジルオキシカルボニル)オキシムなどとすることができる。
【0052】
抑制剤は、樹脂組成物の所望の特性に依存して、単独で、または2つ以上の化合物として使用することができる。フェノール性抑制剤と非フェノール性抑制剤との組合せは、相乗作用を可能にし、同様に実質的にドリフトなしに反応性樹脂のゲル化時間を調節することを可能にする。
【0053】
抑制剤は、樹脂組成物に対して、有利には、0.01〜0.5重量%、さらに有利には0.03〜0.35重量%の量で含有されている。
【0054】
本発明の別の対象は、上記樹脂組成物および他の無機添加剤を含む反応性樹脂モルタルである。
【0055】
本発明による反応性樹脂モルタルおよび/または硬化剤内に含まれていてもよい無機添加剤は、特にチクソトロピー剤、濃化剤、充填剤および/または添加剤である。
【0056】
適宜なチクソトロピー剤および濃化剤は、場合によっては、有機的に後処理された発熱性シリカ、ケイ酸塩、ラポナイト、ベントナイト、アルキル‐およびメチルセルロース、ひまし油誘導体、セルロース誘導体などである。
【0057】
充填剤としては、通常の充填剤、好ましくは鉱物または鉱物のような充填剤、例えば、石英、ガラス、砂、ケイ砂、シリカ微粉、磁器、酸化アルミニウム、セラミック、タルク粉末、ケイ素(例えば、発熱性シリカ)、ケイ酸塩、陶土、二酸化チタン、クレヨン、バライト、長石、玄武岩、水酸化アルミニウム、花崗岩または砂岩、熱硬化性樹脂などのポリマー充填剤、石こう、生石灰またはセメント(例えば、速硬セメント、ポルトランドセメント)などの液圧硬化可能な充填剤、アルミニウムなどの金属、カーボンブラック、さらに木材、鉱物繊維または有機繊維など、または粉末として粒子形態で、または成形体の形態で添加することができるこれらの2つ以上の組成物を使用することができる。充填剤は、適宜な形態で、例えば粉末もしくは微粉、または、例えば円筒形状、リング形状、ボール形状、小プレート形状、小棒形状、鞍形状または結晶形状など、またはさらに繊維形状(繊維状充填剤)の成形体として設けられていてもよい。適宜な基本粒子は、有利には0.0001〜10mmの最大直径を有している。しかしながら、粗い不活性材(球形状)は有利に、かつ極めて補強的に作用する。
【0058】
他の可能な添加剤は、さらに、フタル酸エステルまたはセバシン酸エステルなどの可塑剤、安定剤、帯電防止剤、柔軟剤、硬化触媒、レオロジー補助剤、界面活性剤、例えば混合を良好に制御するための成分に異なる色を付けるための着色剤または特に顔料などの着色添加剤など、またこれらの2つ以上の組成物である。
【0059】
樹脂組成物は反応性樹脂モルタルの30〜50重量%、好ましくは、約40重量%、およびさらなる添加剤は反応性樹脂モルタルの50〜70重量%であれば適切である。
【0060】
本発明の別の対象は、A成分として上記反応性樹脂モルタルを含み、B成分として硬化剤を含有する2成分モルタル組成物である。2成分モルタル組成物は、硬化可能な構成成分を含む成分である反応性樹脂モルタルとは反応しないように空間的に分離された状態で、硬化物質としての有機過酸化物を含有し、この有機過酸化物としては、例えばメチルエチルケトンペルオキシド、tert‐ブチルペルベンゾエート、シクロヘキサノンペルオキシド、クモールヒドロペルオキシドおよび/またはtert‐ブチルペルオキシ‐2‐エチルヘキサノエート、またはジアシルペルオキシド、好ましくは、ベンゾイルペルオキシドまたはラウロイルペルオキシドをあげることができ、ジアキルペルオキシドは好ましく、ベンゾイルペルオキシドは特に好ましい。この場合、硬化物質は、AおよびB成分の総量(モルタル材)に対して0.5〜3重量%、有利には、1.5〜2.5重量%の濃度で含有されている。
【0061】
2成分モルタル組成物のB成分(硬化剤)は、さらに通常の無機添加剤を含有していてもよい。
【0062】
B成分(硬化剤)は、モルタル材に対して30重量%まで、例えば1〜20重量%の量の水および/または有機希釈剤(溶媒)、例えば、フタル酸エステル、高度アルコールおよびそのエトキシ化またプロポキシ化もしくは官能化誘導体、例えばエチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、ジエチレングリコール、トリエチレングリコールなどまたはポリエチレングリコールならびに、例えばグリセリンエーテルまたはポリエチレングリコールビニルエーテルまたはアリルエーテルなどを含有していてもよく、これらはB成分中にペーストまたはエマルジョンの生成、すなわち、レオロジー特性の調整の他に、鈍感剤としての役割を果たす。
【0063】
過酸化物は、好ましくは水溶性分散物として提供されており、水は鈍感剤としての役割を果たす。
【0064】
2成分モルタル組成物の特に好ましい実施形態では、A成分は、反応性樹脂モルタルの他に、付加的にもう1つの水硬性の、または重縮合可能な無機化合物を含有し、B成分は硬化物質の他にさらに水を含有する。このようなモルタル材は、DE4231161A1に詳述されている。この場合、有利には水硬性の、または重縮合可能な無機化合物としてA成分は、セメント、例えばポルトランドセメントまたはアルミン酸塩セメントであり、酸化鉄なしの、または酸化鉄に乏しいセメントが特に好ましい水硬性の無機化合物は、石こうとして、またはセメントと混合して使用することができる。
【0065】
本発明による2成分モルタル組成物は、特に、ドリル孔、特に、例えば、コンクリート、気泡コンクリート、レンガ積み、ケイ灰レンガ、砂岩、天然石などを基礎にした様々な鉱物基盤のドリル孔にアンカーボルト、補強鋼材、ねじなどの固定部材を化学的に固定するために使用される。
【0066】
2成分モルタル組成物は、例えば、複数チャンバ‐カートリッジなどの複数チャンバ‐ユニットの異なる容器内に反応を禁止するように分離したA成分およびB成分を含む。このような複数チャンバ‐カートリッジから、2つの成分は機械的な押圧力の作用によって、またはガス圧の作用下に押し出され、混合される。別の可能性は、2成分モルタル組成物を2成分カプセルとしてまとめ、これをドリル孔に挿入したあと固定部材をインパクトレンチ等により固定することによって破壊し、同時にモルタル材の2つの成分を混合することである。有利には、カートリッジシステムまたは注入システムを使用し、この場合、2つの成分が別個の容器から押し出され、スタティックミキサ内を案内され、そこで一様に混合され、次いでノズルを介して、有利には直接にドリル孔内に放出される。
【0067】
本発明の大きい利点は、上記促進剤組成物により、過酸化物によって硬化されるラジカル重合化合物をベースとしたモルタル材のゲル化時間を約8〜10分に調節できること、およびモルタル材が、低温(−10℃)における硬化特性が十分であり、硬化された物質が高温(+40℃)でも十分な耐荷重性能を示すことである。
【0068】
以下の実施例は、本発明をさらに説明するために役立つ。
【発明を実施するための形態】
【実施例】
【0069】
比較例1〜3および実施例1〜3のサンプルは以下に示す基本組成に基づいている。アミン促進剤の組成は表2に示されている。
【0070】
表1AにA成分の組成を示す。A成分を生成するためには、まずアミン促進剤が加熱下においてメタクリル樹脂内で溶解される。溶解のためには、次いで抑制剤が添加され、一様な溶解が得られるまで混合される。次いで真空下に発熱性シリカおよび無機充填材が、一様なペーストが得られるまで溶剤によって樹脂溶液内に分散される。表1Aにおける、量[重量%]は、他の記載されていない場合それぞれA成分に対するものである。
【0071】
表1BにB成分の組成を示す。メタクリレート樹脂のための硬化剤として、ベンゾイルペルオキシドを水中に分散させ、その中に充填材を拡散させ、発熱性シリカによって濃縮する。他に記載されていない場合、表1Bにおける、量[重量%]は、他の記載されていない場合それぞれB成分に対するものである。


【0072】
【表1A】
【表1B】
[実施例1]
【0073】
表1A及び表1Bに挙げた成分をベースとしてモルタル材を作製し、A成分に、抑制剤として0.12重量%のピロカテコール、アミン促進剤として0.53重量%のビス(2‐ヒドロキシエチル)‐p‐トルイジン(2.73mmol)および0.21重量%のジエチルアニリン(1.36mmol)を、ゲル化時間を調節するために添加した。ビス(2‐ヒドロキシエチル)‐p‐トルイジンとジエチルアリニンとのモル混合比は、したがって2:1である。
[実施例2]
【0074】
表1A及び表1Bに挙げた成分をベースとしてモルタル材を作製し、A成分に、抑制剤として0.13重量%のピロカテコール、アミン促進剤として0.60重量%のビス(2‐ヒドロキシエチル)‐p‐トルイジン(3.08mmol)および0.25重量%のビス(2‐ヒドロキシエチル)‐m‐トルイジン(1.03mmol)を、ゲル化時間を調節するために添加した。ビス(2‐ヒドロキシエチル)‐p‐トルイジンとビス(2‐ヒドロキシエチル)‐m‐トルイジンとのモル混合比は、したがって3:1である。
[実施例3]
【0075】
表1A及び表1Bに挙げた成分をベースとしてモルタル材を作製し、A成分に、抑制剤として0.11重量%のピロカテコール、アミン促進剤として0.41重量%のビス(2‐ヒドロキシエチル)‐p‐トルイジン(2.05mmol)および0.42重量%のビス(2‐ヒドロキシエチル)‐m‐トルイジン(2.05mmol)を、ゲル化時間を調節するために添加した。ビス(2‐ヒドロキシエチル)‐p‐トルイジンとビス(2‐ヒドロキシエチル)‐m‐トルイジンとのモル混合比は、したがって1:1である。
[比較例1]
【0076】
表1A及び表1Bに挙げた成分をベースとしてモルタル材を作製し、A成分に、抑制剤として0.15重量%のピロカテコール、アミン促進剤として0.80重量%のビス(2‐ヒドロキシエチル)‐p‐トルイジン(2.05mmol)を、ゲル化時間を調節するために添加した。
[比較例2]
【0077】
表1A及び表1Bに挙げた成分をベースとしてモルタル材を作製し、A成分に、抑制剤として0.07重量%のピロカテコール、アミン促進剤として0.62重量%のジエチルアニリンを、ゲル化時間を調節するために添加した。
[比較例3]
【0078】
表1A及び表1Bに挙げた成分をベースとしてモルタル材を作製し、A成分に、抑制剤として0.06重量%のピロカテコール、アミン促進剤として0.96重量%のビス(2‐ヒドロキシエチル)‐m‐トルイジンを、ゲル化時間を調節するために添加した。
【0079】
a)ゲル化時間の決定
このようにして得られたA成分とB成分とからなる組成物のゲル化時間の決定は、市販の装置(Gernorm(商標登録)‐ゲルタイマー)によって25℃の温度で行われる。このために、A成分とB成分とは容積比3:1で混合され、混合直後にシリコーン槽で25℃に調整され、試料の温度が測定される。試料自体は試験管に挿入されており、試験管はシリコーン槽に沈めたエアジャケット内で温度調整される。
【0080】
試料の熱発生が時間に対して示される。評価はDIN16945,1ページおよびDIN16916にしたがって行う。ゲル化時間は10K温度が上昇するのに要する時間であり、ここでは25℃から35°に到達するまでの時間である。
【0081】
ゲル化時間決定の結果は表2に示されている。
【0082】
これにより、実施例1,2および3に示した促進剤組成物によって調節した本発明による組成物のゲル化時間は、室温では、従来技術によって既知の抑制剤によって調節した組成物のゲル化時間の範囲内であることが分かる。
【0083】
b)耐荷重性能の決定
硬化された物質の耐荷重性能を決定するためにM12のアンカーボルトを使用する。このアンカーボルトは、14mmの直径および73mmの穿孔深さを有するコンクリートのドリル孔内に本発明による2成分反応性樹脂で固定される。堅固なアンカーボルトを使用して、狭い部分で支持されたアンカーボルトの中心を引き抜くことによって平均耐荷重を算出する。それぞれ3本のアンカーボルトを固定し、24時間の硬化後に耐荷重性能を測定する。このように測定された耐荷重性能は、これらの平均値が、表2に、ゲル化時間と同様に示されている。
【0084】
表2より、本発明による促進剤組成物によって、比較例1で得られた高温範囲(+40℃)における低い耐荷重性能、および比較例2および3で得られた低温領域(−10℃)における低い耐荷重性能を、他の温度範囲における耐荷重性能の低下を招くことなく、著しく引き上げられること明らかである。
【0085】
【表2】
【0086】
これらの実施例は、本発明のよる促進剤組成物によって、従来技術による促進剤によって得られるゲル化時間の範囲内でゲル化時間を調節することができるという驚くべき事実を例証している。さらに、−10℃〜40℃の温度範囲にわたって本発明による促進剤組成物を使用することにより、極めて安定的な特性が得られることを示すことができた。特に低温範囲(−10℃)および高温範囲(+40℃)で、比較樹脂組成物に対して耐荷重性能の改善を達成することができた。