特許第5779550号(P5779550)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社日立産機システムの特許一覧

<>
  • 特許5779550-微細構造転写装置 図000002
  • 特許5779550-微細構造転写装置 図000003
  • 特許5779550-微細構造転写装置 図000004
  • 特許5779550-微細構造転写装置 図000005
  • 特許5779550-微細構造転写装置 図000006
  • 特許5779550-微細構造転写装置 図000007
  • 特許5779550-微細構造転写装置 図000008
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5779550
(24)【登録日】2015年7月17日
(45)【発行日】2015年9月16日
(54)【発明の名称】微細構造転写装置
(51)【国際特許分類】
   B29C 59/04 20060101AFI20150827BHJP
   H01L 21/027 20060101ALI20150827BHJP
【FI】
   B29C59/04 B
   H01L21/30 502D
【請求項の数】4
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2012-140042(P2012-140042)
(22)【出願日】2012年6月21日
(65)【公開番号】特開2014-4696(P2014-4696A)
(43)【公開日】2014年1月16日
【審査請求日】2014年6月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】502129933
【氏名又は名称】株式会社日立産機システム
(74)【代理人】
【識別番号】110001689
【氏名又は名称】青稜特許業務法人
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】島尾 大輔
(72)【発明者】
【氏名】緒形 利夫
【審査官】 阿川 寛樹
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−098530(JP,A)
【文献】 特開2010−173196(JP,A)
【文献】 特開2014−004826(JP,A)
【文献】 国際公開第2010/143303(WO,A1)
【文献】 特開平06−044616(JP,A)
【文献】 特開平06−036355(JP,A)
【文献】 特開2010−089338(JP,A)
【文献】 特開2012−019013(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 59/00− 59/18
H01L 21/027
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
端状のベルトである支持基材と、
前記支持基材を支持し、前記支持基材を加熱、加圧する一対の対向する円筒形ローラと、
微細構造が形成されたスタンパと、
前記微細構造を転写する被転写体と、
前記被転写体を前記スタンパから剥離する一対の対向する剥離ローラと、
を備え、
前記スタンパと前記被転写体とを前記支持基材同士で挟圧して前記被転写体表面に前記スタンパの微細構造を転写する微細構造転写装置であって、
前記スタンパの幅を前記支持基材及び前記被転写体の幅より大きくし、
前記剥離ローラの横に配置され、前記スタンパの幅方向端部を所定の方向に案内し、前記スタンパを前記被転写体から剥離するコ字形状のガイドを備えることを特徴とする微細構造転写装置。
【請求項2】
端状のベルトである支持基材と、
前記支持基材を支持し、前記支持基材を加熱、加圧する一対の対向する円筒形ローラと、
微細構造が形成されたスタンパと、
前記微細構造を転写する被転写体と、
前記被転写体を前記スタンパから剥離する一対の対向する剥離ローラと、
を備え、
前記スタンパと前記被転写体とを前記支持基材同士で挟圧して前記被転写体表面に前記スタンパの微細構造を転写する微細構造転写装置であって、
前記スタンパをT字形状とし、該T字形の幅広部分の幅を、前記支持基材及び前記被転写体の幅より大きくし、
前記剥離ローラの横に配置され、前記T字形の幅広部分の幅方向端部を所定の方向に案内し、前記スタンパを前記被転写体から剥離するコ字形状のガイドを備えることを特徴とする微細構造転写装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2記載の微細構造転写装置において、
前記コ字形状のガイドにカーブを形成し、前記スタンパまたは前記スタンパの幅広部分を通過させ、前記スタンパを垂直な方向に案内して剥離することを特徴とする微細構造転写装置。
【請求項4】
請求項1または請求項2記載の微細構造転写装置において、
記剥離ローラより送られた前記被転写体は、転写方向より斜め下側方向に巻き取ることを特徴とする微細構造転写装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面にナノメートル又はマイクロメートル単位の微細な凹凸が形成されたスタンパを用い、被転写体に押付け微細構造体を成型する微細構造転写装置に係わり、特にローラの回転により連続転写を行うナノインプリント装置の微細構造転写技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、熱式のナノインプリント技術においては、表面にナノメートル又はマイクロメートル単位の微細な凹凸構造が形成されたスタンパと被転写体とを、極平坦に加工されプレート同士で挟み込み、加熱し被転写体を軟化させた後に加圧を行いスタンパの形状に押し込み、その状態を保ったまま冷却を行い、被転写体を硬化させ成型するのが、熱式のナノインプリント装置の一般的な転写方法である。ここで、熱式のナノインプリント装置においては、前述の極平坦に加工されたプレート同士で挟み込み転写を行うので、平行平板型やバッチ方式とも称される転写装置となっている。また、前述の転写工程を各工程毎に行う形で、装置を連続的に設置することにより、枚葉毎の転写を行う、連続バッチ方式の装置開発もされており、生産性を向上させている。更に、量産性を上げ、大面積、且つ高速転写を目指す技術として、加熱可能なローラを対に設置、またはローラを2本以上の複数設置した状態で、前述の複数本からなるローラにベルトをかけ、それらを対とし、スタンパと被転写体とを挟み込み、加圧、加熱、冷却、剥離までを一環で行うことで転写を行う、連続転写方式の装置技術も開発されてきており、量産化に向けた技術が発展してきている。
【0003】
また、ナノインプリントの技術としては、転写を行う装置だけではなく、前述の連続転写方式の装置に対応した、極微細な凹凸が形成されたスタンパの技術開発も必須であり、近年は特に大形化、シームレス化、低コスト化などの開発が進んでおり、装置とスタンパの両面から技術開発が推進されている。
特許文献1(特開2003−11218号公報)は、ベルト駆動させているローラと基材をローラで相手側のローラとベルトとを挟圧し、その間にスタンパを枚葉毎に挿入することで転写を行い、転写後にスタンパを回収し、再度上流からスタンパを流すことで、連続的に転写を行う技術である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−11218号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前述のスタンパは転写を繰り返すうちに、スタンパと被転写体との離型性が悪化するため、定期的に離型性を向上させるためのメンテナンスが必要である。スタンパへ定期的なメンテナンスを行わない場合は、離型性が悪化し、前述のスタンパに形成されている微細な凹凸構造に被転写体が詰まった状態となり、被転写体への微細凹凸構造の転写が行えなくなる。
【0006】
特許文献1のような装置構造、及びスタンパにおいては、スタンパを枚葉毎に投入できるため、個々のスタンパでメンテナンスが行え、スタンパの離型性が悪化した場合や破損などと言ったトラブルにも対応しやすくなっている。
ここで、スタンパとしてはウェハ、石英、電鋳ニッケル、樹脂などが上げられる。
転写工程では、スタンパと被転写体がベルト、またはローラに挟圧され、加熱、加圧、冷却され微細構造が被転写体に成形された後に、スタンパと被転写体との剥離が行われるが、極微細な凹凸構造に被転写体が入り込んでいるため、剥離の際にはスタンパ、及び被転写体を引っ張り剥さなければならない。特にアスペクト比の高いものについては、かなりの剥離力が必要となる。
【0007】
特許文献1のようにスタンパを枚葉毎に送る構造とした場合は、装置後方に剥離ローラが取り付けられており、被転写体の巻き取り角度を付けることによりスタンパと被転写体との剥離を行っている。しかし、ウェハや石英と言ったある程度硬度があり、湾曲せず真っ直ぐ出てきて、剥離ローラで被転写体と離型角度が取れるものに関しては離型可能かもしれないが、線状に力が掛かる上、スタンパが固定されておらず力が局所的に掛かる、または振動し大きく揺れるため、スタンパが割れる危険性が高い。また、薄いスタンパ、特に電鋳ニッケルや樹脂等のある程度湾曲できるスタンパに関しては、そのまま被転写体と剥離ローラにならい湾曲し、剥離されないままスタンパが被転写体と共に巻き取られてしまうと言った問題が生じる。
【0008】
そこで、本発明は、スタンパが枚葉毎に転写可能でメンテナンス性が良く、確実にスタンパと被転写体との剥離を可能とする、剥離機構、及びスタンパ形状を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上記目的を達成するため、無端状のベルトである支持基材と、前記支持基材を支持し、前記支持基材を加熱、加圧する一対の対向する円筒形ローラと、微細構造が形成されたスタンパと、前記微細構造を転写する被転写体と、前記被転写体を前記スタンパから剥離する一対の対向する剥離ローラと、を備え、前記スタンパと前記被転写体とを前記支持基材同士で挟圧して前記被転写体表面に前記スタンパの微細構造を転写する微細構造転写装置であって、前記スタンパの幅を前記支持基材及び前記被転写体の幅より大きくし、前記剥離ローラの横に配置され、前記スタンパの幅方向端部を所定の方向に案内し、前記スタンパを前記被転写体から剥離するコ字形状のガイドを備えることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、枚葉毎のスタンパによる連続転写を可能とし、スタンパに過剰な負荷をかけることなく、スタンパと被転写体との剥離が確実に行え、上記スタンパの回収、メンテナンス、及び再投入を容易にする剥離機構、及びスタンパ構造を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明のスタンパ剥離機構、及び投入機構を有した微細構造転写装置の概略図を示す。
図2】本発明の加熱サイクルを表すフロー図、及び温度推移グラフを示す。
図3】本発明の剥離機構部の斜視図を示す。
図4】本発明の剥離機構の別方式による剥離機構部の斜視図を示す。
図5】本発明の微細構造転写装置における別方式の概略図を示す。
図6】本発明の剥離機構の別方式による剥離機構部の斜視図を示す。
図7】本発明の剥離機構のさらに別方式による剥離機構部の斜視図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態を図面を用いて説明する。
(実施例1)
本発明の微細構造転装置および転写方法について、図1を用いて説明する。
図1は、本発明の実施例1の形態を示す微細構造転写装置の概略図である。
図1において、1はスタンパで、1a,1b,1cはそれぞれ枚葉のスタンパを表し、2a,2bは熱源を有している円筒形ローラ、3a,3bはスタンパと被転写体を剥離する剥離ローラ、4a,4bはスタンパを余熱する余熱機構、5a,5bは支持機材を余熱する支持機材余熱機構、6a,6bは冷却ブロー、7a,7bは冷却ローラ、8a,8b,8c,8dは円筒形ローラ及び剥離ローラの用いている弾性体、9はスタンパの微細構造を転写する被転写体。10は基材巻き出しローラ、11は基材巻き取りローラ、12a,12bは円筒形ローラ上の支持基材、13は剥離機構、15はスタンパ送りガイドである。
【0013】
図1の微細構造転写装置は、微細構造が形成されたスタンパ1、被転写体9の表面にスタンパ1を加圧、加熱する機能を有する1対の対向する円筒形ローラ2と、円筒形ローラ2上に配置される支持基材12とを備えている。支持基材12は円筒形ローラ2,剥離ローラ3、冷却ローラ7の3本を介して装置本体に回転移動が可能な状態で装着される。
【0014】
ここで、スタンパ1は、剥離ローラ3から円筒形ローラ2側へ移動する際、円筒形ローラ2へ接する直前までスタンパ予熱機構4により所定温度まで加熱できる。また、支持基材12に関しても、剥離ローラ3から円筒形ローラ2側へ移動している際、円筒形ローラ2に接する直前まで支持基材予熱機構5にて加熱できる。また、加熱の際、スタンパ1と支持基材12の所定温度は個別に設定できる。その後、スタンパ1、及び支持基材12は円筒形ローラ2にて所定温度まで均一に加熱される。また、スタンパを枚葉毎に任意のタイミングで円筒形ローラに供給し、被転写体9と円筒形ローラの支持基材との間に挟まれる。
【0015】
次に、上記円筒形ローラ2a、及び2bにてスタンパ1と被転写体9が挟圧され加熱、加圧し密着した状態にて排出され、冷却ブロー6、及び冷却ローラ7にて所定温度まで冷却される。この時、スタンパ1と被転写体9とが支持基材12a、及び12bにて挟持されており、圧力を保った状態で被転写体9はTS温度(ガラス転移温度)以下となる。被転写体9は、基材巻出しローラ10から円筒形ローラ2の挟持部へ供給され、基材巻取りローラ11にて巻き取られる。本装置は、スタンパ1,被転写体9、及び、支持基材12が、非接触状態で1対の対向する円筒形ローラ2まで移動し、スタンパ1と被転写体9とを支持基材12で挟持する配置で加圧されることを特徴とする。
また、基材巻取りローラ11は、被転写体9が転写される高さ位置より剥離機構の剥離ローラを通過後、やや下側に設置し、剥離角度を直角より大きくする。
【0016】
次にスタンパ1及び支持基材12の温度加熱フローについて、図2(a)のフローチャート、及び図2(b)を用いて説明する。
まず、スタンパ1、及び支持基材12が剥離ローラ3から円筒形ローラ2へ向かう際にスタンパ1、及び支持基材12が其々スタンパ予熱機構4、及び支持基材予熱機構5で加熱開始され所定の予熱温度(S201)となる。昇温速度としては、与える熱量、潜熱量、放熱量等と昇温時間、つまりは予熱ヒータへの出力とベルト状金型1の送り速度により比例関係が得られる。この時の温度としては、所定温度に達する補助となることが目的のため、図2(b)に示す通り、TS温度前後となるのが望ましい。
【0017】
次に、S202にてスタンパ1は円筒形ローラ2に接触し、弾性体8を介して加熱される。このときの昇温速度も、円筒形ローラ2の温度と、接触時間に依存される。次に、スタンパ1と支持基材12の間に被転写体9が配置された状態で、スタンパ1の微細構造を被転写体9に転写するための圧力を印加した状態となる。円筒形ローラ2、弾性体8、支持基材12にて挟持することにより圧力が印加された状態で被転写体9を加熱することで、被転写体9を軟化させ、スタンパ1の微細構造が被転写体に転写される(S203)。 ここで、スタンパ1,被転写体9、支持基材12とが接触した状態で、加圧前に加熱することは転写時に皺状痕を発生しやすくなるため好ましくない。次に、S202,S203でスタンパ1の微細構造を被転写体9に転写した後、所定の温度までスタンパ1,被転写体9、及び支持基材12を冷却し(S204)、その後、被転写体9からスタンパ1、及び支持基材12を剥離する(S205)。ここで、冷却ブローノズル6、及び冷却ローラ7からなる冷却部から剥離ローラ3に至るまでは、スタンパ1、被転写体9、及び支持基材12は周囲環境の温度との差で放熱される熱量分、自然に降温する。また、必要以上温度が下がらないように、冷却部から剥離ローラ3に至るまでの間でスタンパ1、被転写体9、及び支持基材12を囲う機構を設け、外気温と遮断し、保温するか、所定温度となるよう温度コントロールしても良い。
【0018】
ここで、円筒形ローラ2には、加熱する以外に、圧力を所定時間掛けるため、弾性体8が備えられているが、弾性体8自体は耐熱温度に上限があるため、それ程温度が上げられず円筒形ローラ2との接触時間を増加させるには、円筒形ローラ2を大きくするか、速度を落とすほかない。そのため高スループット化、及び小形化を同時に行うためには、上記スタンパ予熱機構4、及びベルト予熱機構5にて外部よりエネルギーを与え、所定温度まで予熱を行うのが最良である。
【0019】
予熱機構の熱源としては、接触式ではスタンパ1、及び支持基材12を損傷させる恐れがあるため、非接触式の熱源が好ましい。但し、ローラ形状であれば、接触した際に、回転速度と同期し、動作させることでスタンパ1、及び支持基材12への損傷を抑えられるが、ローラ形状では直線上での接触時間が少なく、与えられる熱量も少ない。そこで、非接触にて加熱が行えるものが良く、特に輻射熱を利用したものが望ましい。電磁誘導にて加熱する方法も可能ではあるが、スタンパ1は幅広薄板であり、均一に加熱するためには、誘導コイル形状が複雑になり、また制御装置も大型となる。さらに、熱風にて加熱する方法もあるが、クリーンな環境においては不向きである。ここで、加熱、予熱、及び保温を行う際は、部屋中に囲い熱が外部に漏れないようにすることが好ましい。また、冷却後におけるスタンパ1、及び支持基材12の降温を防ぐため、剥離ローラ3に保温を行えるように、ヒータなどの加熱機器を内臓させることも良い。
【0020】
本発明において、微細構造とは数μmから数nm程度の範囲の凹凸構造を有する構造体を言う。
また、本発明においてスタンパとは、表面に微細構造が形成され、上記のように支持基材12に挟持され移動させることが可能な平帯状のものである。スタンパは所定の強度を有し、掛渡されたロール側面をスムーズに密着移動できる可撓性を有しているものが好ましい。材質は特に制限がないが、Ni箔やポリイミドフィルムなどが強度、可撓性の点から好ましく例示される。また、エンドレスのステンレスベルトや樹脂ベルト上に接着剤を介し、微細構造が形成された金型部材を貼り付けたものでも良い。
また、本発明の円筒形ローラ、剥離ローラ、及び冷却ローラは支持基材の回転に伴って回転するが、それ自身が支持基材を回転させる駆動機構を有していてもよく、冷却ローラ、及び剥離ローラは支持基材の張りを調整する張力調整機構を有していることがより好ましい。
【0021】
本発明の円筒形ローラは対向する1対の円筒状のローラにより構成される。この円筒状のローラは、円柱状の鋳造品または円筒形の成形品であり、所定の強度を有し、中心軸により回転可能なものである。材質に特に制限はないが、ステンレスのような合金やセラミックス,エンジニアリングプラスチックなどが強度,成形性などの点より好ましく例示される。この円筒形ローラは、スタンパと被転写体とを支持基材で挟み、加熱,加圧するとともにスタンパ,支持基材,被転写体を移送させる。加圧のための推力は円筒形ローラの回転軸両端にエアー圧又は油圧等の推力を加えることで実現される。この推力を調整することで円筒形ローラが被転写体およびスタンパ,支持基材に加える圧力を調整する。
【0022】
さらに、スタンパ,被転写体及び支持基材に対してローラ全体を均一に加圧するために、回転軸両端の圧力を独立で調整する均一加圧調整機構を有することが好ましい。また、円筒形ローラはスタンパおよび被転写体を加熱するために電熱線,インダクティブヒータ,赤外線ヒータ等による加熱機構を内蔵している。また、円筒形ローラはスタンパの回転および被転写体移送のための駆動機構を有している。
【0023】
また、本発明の円筒形ローラ2に用いられる円筒形ローラ表面には弾性体8が形成されていることが圧力を均一にかける上で好ましい。円筒形ローラ2、冷却ローラ6、剥離ローラ3の表面に形成する弾性体としては、フッ素ゴム,シリコーンゴム,フッ化シリコーンゴム,アクリルゴム,水素化ニトリルゴム,エチレンプロピレンゴム,クロロスルホン化ポリスチレン,エピクロルヒドリンゴム,ブチルゴム,ウレタンゴム等が挙げられる。また、ポリイミド(PI),ポリカーボネート(PC)/アクリロニトリルブタジエンスチレン(ABS)アロイ,ポリシロキサンジメチレンテレフタレート(PCT)/ポリエチレンテレフタレート(PET)共重合ポリブチレンテレフタレート(PBT)/ポリカーボネート(PC)アロイ,ポリテトラフルオロエチレン(PTFE),フロリネイテッドエチレンプロピレン(FEP),ポリアリレート,ポリアミド(PA)/アクリロニトリルブタジエンスチレン(ABS)アロイ,変性エポキシ,変性ポリオレフィン等が挙げられる。
【0024】
この他にもエポキシ樹脂,不飽和ポリエステル樹脂,エポキシイソシアネート樹脂,マレイミド樹脂,マレイミドエポキシ樹脂,シアン酸エステル樹脂,シアン酸エステルエポキシ樹脂,シアン酸エステルマレイミド樹脂,フェノール樹脂,ジアリルフタレート樹脂,ウレタン樹脂,シアナミド樹脂,マレイミドシアナミド樹脂等の各種熱硬化性樹脂及びこれらを2種以上組み合わせた材料でもよい。この弾性体の物性としては、200℃から300℃程度までの耐熱性を有し、弾性率が100MPaから4000MPa程度のものが好ましい。
【0025】
さらに、円筒形ローラ2の外周部に弾性体9を形成する代わりに高圧流体層を形成してもよい。円筒形ローラ2のローラ最表面に高圧流体を封入するための被覆膜が形成され、この被覆膜内部に高圧流体層が形成されているものを用いてもよい。本発明の被覆膜としては耐熱性,耐圧性と可とう性を有しているものであれば特に制限はない。具体的にはステンレス等の金属箔のほか、ポリイミドフィルム等のエンジニアリングプラスチックやワイヤーや繊維等により補強されたゴムシートのような複合材料等が挙げられる。
【0026】
また、本発明の高圧流体層としては、ローラに加えられる圧力により、ローラとベルト状金型又は支持基材との接触部分全体に均一な静水圧がかかるものが好ましく、具体的には、空気や窒素等の気体の他、シリコーンオイル等の液体の他、ポリジメチルシロキサン等のゲル状物質が挙げられる。この高圧流体層の圧力は調整できることが好ましい。
【0027】
本発明の微細な構造が転写される被転写体9は特に限定されないが、所望する目的に応じて選択される。具体的には、ポリエチレン,ポリプロピレン,ポリビニルアルコール,ポリ塩化ビニリデン,ポリエチレンテレフタレート,ポリ塩化ビニール,ポリスチレン,ABS樹脂,AS樹脂、アクリル樹脂,ポリアミド,ポリアセタール,ポリブチレンテレフタレート,ガラス強化ポリエチレンテレフタレート,ポリカーボネート,変性ポリフェニレンエーテル,ポリフェニレンスルフィド,ポリエーテルエーテルケトン,液晶性ポリマー,フッ素樹脂,ポリアレート,ポリスルホン,ポリエーテルスルホン,ポリアミドイミド,ポリエーテルイミド,熱可塑性ポリイミド等の熱可塑性樹脂や、フェノール樹脂,メラミン樹脂,ユリア樹脂,エポキシ樹脂,不飽和ポリエステル樹脂,アルキド樹脂,シリコーン樹脂,ジアリルフタレート樹脂,ポリアミドビスマレイミド,ポリビスアミドトリアゾール等の熱硬化性樹脂、及びこれらを2種以上ブレンドした材料を用いることも可能である。
【0028】
これら樹脂は単体のフィルム状で供給されるか、支持基板表面上に数nmから数十μm形成されている場合もある。ここで支持基板とはパターンが形成される部材を支持する基板であり、その材質は特に限定されないが、所定の強度を有するもので、微細構造体が形成される部材の表面が平坦なものであれば良い。さらに好ましくはパターンを連続的に形成するために、連続的に供給できるよう屈曲性を有しロール状に巻きつけられるものが好ましい。具体的には、ステンレス等の各種金属材料やポリイミドフィルムのようなプラスチック等がある。
【0029】
支持基材12は、弾性率,線膨張係数等がスタンパ1と類似した材料で構成され、形状はベルト状で連続転写が可能である。さらに、複数のロールに掛渡して回転させることが可能な平帯状のものであり、所定の強度を有し、掛渡されたロール側面をスムーズに密着移動できる可撓性を有している。材質は、Niやステンレス板等の金属やポリイミドフィルムなどが強度、可撓性の点から好ましい。
剥離機構13は、スタンパ1、被転写体9、支持基材12が一体化し転写した状態よりスタンパ1及び支持基材12を被転写体9より剥離するためのものである。
【0030】
図3に剥離機構13の具体的な機構を示す。
図3において、1は枚葉式のスタンパ、3aは上側の剥離ローラ、3bは下側の剥離ローラ、13aは手前の剥離機構、13bは奥側の剥離機構、9は被転写体、11は被転写体9を巻き取る基材巻取りローラ、12aは上側の支持基材、12bは下側の支持基材を示す。
図3に示した剥離機構の構成において、剥離ローラ3aと円筒形ローラ2aとに掛け渡しされた支持基材12aと、剥離ローラ3bと円筒形ローラ2bとに掛け渡された支持基材2bとの間に、スタンパ1と被転写体9を挟み、加熱及び加圧して、スタンパ1の微細構造を転写し剥離機構に送り、被転写体9よりスタンパ1の幅方向(送り方向と垂直方向の長さ)の長さを大きくし、かつ上下の剥離ローラの幅よりも大きくし、剥離ローラ3a,3bの接する部分にコ字形状のガイド13a,13bを配置し、このコ字形状のガイド13a,13bにスタンパ1を挿入して、斜め下向きに巻き取る被転写体9にスタンパ1が引っ張られていかれないように両側で案内する。
図3においては、剥離後のスタンパは、直線的に移動し確保して次の転写に使用する。
【0031】
さらに、円筒形ローラ自体が自転する機構を有しているものも好ましい。さらには図5に示すように剥離ロール3が組み合わされ、剥離ローラ間のギャップを調整することで各々剥離角度の調整が可能なものも好ましく例示される。その際、剥離機構13も剥離ローラ3から冷却ローラ7に至るまでの間であれば、所望の位置へ取り付けることが可能であることが望ましい。
本発明のスタンパ送りガイド15とは、スタンパ1を任意のタイミングで支持基材12に挟圧される形で送り込むガイド、または挿入機構である。
【0032】
本発明の基材巻き出しローラ10および巻き取りローラ11は回転することにより、転写前後の帯状の被転写体を供給,回収するためのもので被転写体に所定の張力を与えるためのブレーキおよび駆動機構を有している。
本発明の冷却機構(冷却ブローノズル6、冷却ローラ7)は、スタンパ1と被転写体9,支持基材12を冷却、または徐熱するための機構である。冷却機構として、一体化したスタンパ1と被転写体9,支持基材12に冷媒となる気体を吹き付ける、または接触し熱を奪うことにより被転写体9のガラス転移温度以下まで冷却するものが例示される。ここで、被転写体がガラス転移温度以下に冷却される間に、スタンパ1、被転写体9、支持基材12が密着状態を保つために、冷却機構が内蔵された冷却ローラ7を円筒形ローラ直後に配置するのが望ましい。
【0033】
本発明の転写工程として、スタンパ1を支持基材12a側から挟持するのではなく、支持基材12b側から挟持することも可能であり、更にスタンパ1を支持基材12a、及び支持基材12bから同時に投入することで、被転写体9の表面、及び裏面の両側へ微細構造を転写することが可能である。
【0034】
(実施例2)
次に、実施例2の剥離機構の発明について図4を用いて説明する。
図4の剥離機構は、スタンパ1の形状をT字形状とし、T字形の幅広の部分がコ字形状のガイド13a,13bを通過するように構成するものである。
すなわち、枚葉式のスタンパ1の先端部分をT字形状とし、先端のT字形の幅広の部分をコ字形状のガイドを通過させて案内する構成とし、確実に被転写体を剥離することができる。スタンパ1のT字形の先端の幅広の部分の長さは、支持基材や剥離ローラ3a,3b、被転写体9の幅より大きくし、剥離ローラ3aと剥離ローラ3bが接する箇所に配置したコ字形状のガイド13a、13bを通過するように構成している。
また、スタンパ1のT字形状の幅広の部分以外には微細構造の領域を有し、被転写体に転写する領域と合うように構成している。
図4においては、図3と同様に、スタンパ1は直線方向に送られ、被転写体9は剥離ローラ3a、3bを通過した後は、斜め下側方向に基材巻取りローラ11で巻き取られて、スタンパ1と引き離され剥離する。
【0035】
(実施例3)
次に、実施例3の剥離機構の発明について、図6を用いて説明する。
図6に示した剥離機構において、図3に示した剥離機構と異なる点は、被転写体を剥離後案内するガイドにカーブを形成し、スタンパ1を直線方向ではなく、上向きに案内する構成とした点である。
すなわち、枚葉式のスタンパ1の幅を、被転写体9、支持基材12a、12b及び剥離ローラ3a,3bの幅より大きくし、剥離ローラ3aと剥離ローラ3bが接する箇所に配置したコ字形状のガイド13a、13bを通過させ、ガイドにカーブを設けているので転写方向より垂直な上向き方向へスタンパが移送するように構成している。
【0036】
また、被転写体9は、剥離後斜め下側方向に基材巻取りローラ11で巻き取ることにより、スタンパ1と被転写体9との剥離角は、実施例1及び2よりも大きくなりより剥離し易くなる。
【0037】
(実施例4)
次に、実施例4の剥離機構の発明について図7を用いて説明する。
図7の剥離機構において、図4の剥離機構と異なる点は、スタンパ1をT字形状とし、剥離機構のコ字形状のガイド13a,13bにカーブを形成し、このガイドにT字形状の幅広の部分を通過させ、スタンパ1を上向きに移送させる構成とした点である。
すなわち、枚葉式のスタンパ1の先端部分をT字形状とし、先端のT字形の横の幅広部分を、被転写体9、支持基材12a、12b及び剥離ローラ3a,3bの幅より大きくし、剥離ローラ3aと剥離ローラ3bが接する箇所に配置したコ字形状のカーブを有したガイド13a、13bに幅広部分を通過させ、転写方向より垂直な上向き方向へスタンパが案内されるように構成している。
また、被転写体9は、剥離後斜め下側方向に基材巻取りローラ11で巻き取ることにより、スタンパ1と被転写体9との剥離角は、より大きくなり剥離し易くなる。
【符号の説明】
【0038】
1‥スタンパ 2‥円筒形ローラ 3‥剥離ローラ
4‥スタンパ予熱機構 5‥支持基材予熱機構 6‥冷却ブローノズル
7‥冷却ローラ 8‥弾性体 9‥被転写体
10‥基材巻出しローラ 11‥基材巻取りローラ 2‥支持基材
13‥剥離機構 14‥保持治具 15‥スタンパ送りガイド
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7