(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5779558
(24)【登録日】2015年7月17日
(45)【発行日】2015年9月16日
(54)【発明の名称】エンジンの排気マニホルド
(51)【国際特許分類】
F01N 13/10 20100101AFI20150827BHJP
【FI】
F01N13/10
【請求項の数】4
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2012-183841(P2012-183841)
(22)【出願日】2012年8月23日
(65)【公開番号】特開2014-40808(P2014-40808A)
(43)【公開日】2014年3月6日
【審査請求日】2014年9月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】100087653
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴江 正二
(72)【発明者】
【氏名】小山 秀行
(72)【発明者】
【氏名】宮▲崎▼ 学
(72)【発明者】
【氏名】藤井 聡
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 諭
(72)【発明者】
【氏名】森本 達也
(72)【発明者】
【氏名】篠原 祐次
(72)【発明者】
【氏名】深田 神
【審査官】
山田 由希子
(56)【参考文献】
【文献】
実開昭62−097216(JP,U)
【文献】
特開2001−207841(JP,A)
【文献】
特開2007−177690(JP,A)
【文献】
特開2007−002726(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01N 13/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
排気マニホルド(1)の中央に配置された排気合流部(2)と、この排気合流部(2)の両端側に配置された複数の枝管(3)(3)とを備え、各枝管(3)にシリンダヘッドに取り付ける排気入口フランジ(4)を設けた、エンジンの排気マニホルドにおいて、
シリンダヘッドに対向させる排気マニホルド(1)のヘッド側面(1a)とその反対側の反ヘッド側面(1b)のうち、反ヘッド側面(1b)にその長手方向に沿うリブ状の反ヘッド側肉盛り部(7)を形成するに当たり、
両端の枝管(3)(3)に反ヘッド側肉盛り部(7)(7)を形成し、排気合流部(2)に反ヘッド側肉盛り部(7)のない反ヘッド側面(1b)を形成した、ことを特徴とするエンジンの排気マニホルド。
【請求項2】
請求項1に記載したエンジンの排気マニホルドにおいて、
排気マニホルド(1)のヘッド側面(1a)にその長手方向に沿うリブ状のヘッド側肉盛り部(8)を形成するに当たり、
両端の枝管(3)(3)にヘッド側肉盛り部(8)(8)を形成し、排気合流部(2)に、ヘッド側肉盛り部(8)のないヘッド側面(1a)を形成した、ことを特徴とするエンジンの排気マニホルド。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載したエンジンの排気マニホルドにおいて、
排気合流部(2)に排気導入管(2a)とこの排気導入管(2a)から上向きに導出した排気導出管(2b)を設け、この排気導出管(2b)の導出端に排気出口フランジ(6)を形成し、枝管(3)の上面(5)にリブ状の上面肉盛り部(10)を形成し、枝管(3)の下面にはリブ状の肉盛部を形成しない、ことを特徴とするエンジンの排気マニホルド。
【請求項4】
請求項3に記載したエンジンの排気マニホルドにおいて、
リブ状の上面肉盛り部(10)を排気マニホルド(1)の長手方向と交差する方向に沿わせ、この上面肉盛り部(10)をマニホルド取付ボルトのボルト挿通ボス(11)とした、ことを特徴とするエンジンの排気マニホルド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジンの排気マニホルドに関し、詳しくは、シリンダヘッドと排気入口フランジとの間のシール性の低下を抑制することができる、エンジンの排気マニホルドに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、エンジンの排気マニホルドとして、排気マニホルドの中央に配置された排気合流部と、この排気合流部の両端側に配置された複数の枝管とを備え、各枝管にシリンダヘッドに取り付ける排気入口フランジを設けたものがある(例えば、特許文献1参照)。
しかし、この従来技術では、シリンダヘッドに対向させるヘッド側面とその反対側の反ヘッド側面のうち、反ヘッド側面にその長手方向に沿うリブ状の反ヘッド側肉盛り部を形成するに当たり、排気合流部と枝管の両方に反ヘッド側肉盛り部を形成しているため、問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−207841号公報(
図1、
図2参照)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
《問題》 シリンダヘッドと排気マニホルドの排気入口フランジとの間のシール性が低下しやすい。
排気合流部と枝管の両方に反ヘッド側肉盛り部を形成しているため、エンジン運転後にエンジンを停止すると、シリンダヘッドと排気マニホルドの排気入口フランジとの間のシール性が低下しやすい。
【0005】
本発明の課題は、シリンダヘッドと排気マニホルドの排気入口フランジとの間のシール性の低下を抑制することができる、エンジンの排気マニホルドを提供することにある。
【0006】
《発明に至る経過》
本発明の発明者らは、エンジンの排気マニホルドを研究した結果、次の知見を得た。
エンジン運転中、排気合流部には各枝管を通過した高温の排気が合流して通過するため、排気合流部の肉壁の蓄熱量は、各枝管のそれに比べて多く、エンジン停止後のこれらの温度低下速度差、ひいては、温度差が大きくなり、排気マニホルドの熱歪みにより、シリンダヘッドと排気マニホルドの排気入口フランジとの間のシール性が低下しやすい。特に、排気温度が高い高負荷運転後にはこの問題が顕在化する。
本発明者らは、この知見に基づき、本発明に至った。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に係る発明の発明特定事項は、次の通りである。
図1〜
図3に例示するように、排気マニホルド(1)の中央に配置された排気合流部(2)と、この排気合流部(2)の両端側に配置された複数の枝管(3)(3)とを備え、各枝管(3)にシリンダヘッドに取り付ける排気入口フランジ(4)を設けた、エンジンの排気マニホルドにおいて、
シリンダヘッドに対向させる排気マニホルド(1)のヘッド側面(1a)とその反対側の反ヘッド側面(1b)のうち、反ヘッド側面(1b)にその長手方向に沿うリブ状の反ヘッド側肉盛り部(7)を形成するに当たり、
両端の枝管(3)(3)に反ヘッド側肉盛り部(7)(7)を形成し、排気合流部(2)に反ヘッド側肉盛り部(7)のない反ヘッド側面(1b)を形成した、ことを特徴とするエンジンの排気マニホルド。
【0008】
【発明の効果】
【0009】
(請求項1に係る発明)
請求項1に係る発明は、次の効果を奏する。
《効果》 シリンダヘッドと排気マニホルドの排気入口フランジとの間のシール性の低下を抑制することができる。
図1〜
図3に例示するように、両端の枝管(3)(3)に反ヘッド側肉盛り部(7)(7)を形成し、排気合流部(2)に反ヘッド側肉盛り部(7)のない反ヘッド側面(1b)を形成したので、エンジン運転中の枝管(3)(3)の肉壁の蓄熱量が、排気合流部(2)のそれに近づき、エンジン停止後のこれらの温度低下速度差、ひいては、温度差が小さくなり、排気マニホルド(1)の熱歪みが抑制され、シリンダヘッドと排気マニホルド(1)の排気入口フランジ(4)との間のシール性の低下を抑制することができる。
【0010】
(請求項2に係る発明)
請求項2に係る発明は、請求項1に係る発明の効果に加え、次の効果を奏する。
《効果》 排気マニホルドの熱歪みが抑制される。
図2、
図3に例示するように、ヘッド側肉盛り部(8)でも、反ヘッド側肉盛り部(7)と同様の機能が得られるので、排気マニホルド(1)の熱歪みが抑制される。また、排気マニホルド(1)がリブ状のヘッド側肉盛り部(8)と反ヘッド側肉壁部(7)の両方で補強されているので、この点でも排気マニホルド(1)の熱歪みが抑制される。
【0011】
【0012】
(
請求項3に係る発明)
請求項3に係る発明は、
請求項1または請求項2に係る発明の効果に加え、次の効果を奏する。
《効果》 排気マニホルドの熱歪みが抑制される。
図1〜図3に例示するように、排気合流部(2)に排気導入管(2a)とこの排気導入管(2a)から上向きに導出した排気導出管(2b)を設け、この排気導出管(2b)の導出端に排気出口フランジ(6)を形成し、枝管(3)の上面(5)にリブ状の上面肉盛り部(10)を形成し、枝管(3)の下面にはリブ状の肉盛部を形成しないので、排気合流部(2)の上側と枝管(3)の上側の蓄熱量が平衡に近づき、エンジン停止後のこれらの温度低下速度差、ひいては、温度差が小さくなり、排気マニホルド(1)の熱歪みが抑制される。
【0013】
(
請求項4に係る発明)
請求項4に係る発明は、
請求項3に係る発明の効果に加え、次の効果を奏する。
《効果》 上面肉盛り部がマニホルド取付ボルトの取り付けの邪魔になることがない。
図1〜図3に例示するように、リブ状の上面肉盛り部(10)を排気マニホルド(1)の長手方向と交差する方向に沿わせ、この上面肉盛り部(10)をマニホルド取付ボルトのボルト挿通ボス(11)としたので、上面肉盛り部(10)がマニホルド取付ボルトの取り付けの邪魔になることがない。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る排気マニホルドを説明する図で、
図1(A)は平面図、
図1(B)は側面図、
図1(C)は
図1(B)のC−C線断面図、
図1(D)は
図1(B)のD−D線断面図、
図1(E)は
図1(B)のE方向矢視図である。
【
図2】本発明の第2実施形態に係る排気マニホルドを説明する図で、
図2(A)は平面図、
図2(B)は側面図である。
【
図3】本発明の第3実施形態に係る排気マニホルドを説明する図で、
図3(A)は平面図、
図3(B)は側面図である。
【
図4】本発明の
参考形態に係る排気マニホルドを説明する図で、
図4(A)は平面図、
図4(B)は側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1〜図3は本発明の実施形態に係るエンジンの排気マニホルドを説明する図であり、
図1は第1実施形態、
図2は第2実施形態、
図3は第3実施形態
である。
図4は
参考形態である。
各実施形態
と参考形態では、過給機付きの立型直列4気筒ディーゼルエンジンの排気マニホルドについて説明する。
【0016】
まず、第1実施形態について説明する。
図1(A)(B)に示すように、排気マニホルド(1)の中央に配置された排気合流部(2)と、この排気合流部(2)の両端側に配置された複数の枝管(3)(3)とを備え、各枝管(3)にシリンダヘッドに取り付ける排気入口フランジ(4)を設けている。
排気合流部(2)には、排気導入管(2a)とこの排気導入管(2a)から導出した排気導出管(2b)を設け、この排気導出管(2b)の導出端に排気出口フランジ(6)を形成している。排気出口フランジ(6)には、過給機を取り付ける。
図1(B)に示すように、排気導入管(2a)から排気導出管(2b)を上向きに導出し、排気導出管(2b)の下方に位置する排気導入管(2a)の下壁(9)を上向きに凹入させている。枝管(3)は各シリンダの排気を通過させる管で、排気合流部(2)は複数の枝管(3)(3)の排気を合流させる部分である。
平面視で、排気マニホルド(1)は、排気合流部(2)と、両端の一対の枝管(3)(3)とで弓形管を形成し、この弓形管のシリンダヘッド側に中央寄りの一対の枝管(3)(3)を形成している。中央寄りの一対の枝管(3)(3)の隣り合う排気入口フランジ(4)(4)同士は架橋部(12)で相互に連結されている。
【0017】
図1(A)に示すように、シリンダヘッドに対向させる排気マニホルド(1)のヘッド側面(1a)とその反対側の反ヘッド側面(1b)のうち、反ヘッド側面(1b)にその長手方向に沿うリブ状の反ヘッド側肉盛り部(7)を形成するに当たり、両端の枝管(3)(3)に反ヘッド側肉盛り部(7)(7)を形成し、排気合流部(2)に反ヘッド側肉盛り部(7)のない反ヘッド側面(1b)を形成している。
【0018】
図1(A)(B)に示すように、排気合流部(2)に排気導入管(2a)とこの排気導入管(2a)から上向きに導出した排気導出管(2b)を設け、この排気導出管(2b)の導出端に排気出口フランジ(6)を形成し、枝管(3)の上面(5)にリブ状の上面肉盛り部(10)を形成し、枝管(3)の下面にはリブ状の肉盛部を形成しない。
【0019】
図1(A)(B)(C)(E)に示すように、リブ状の上面肉盛り部(10)を排気マニホルド(1)の長手方向と交差する方向に沿わせ、この上面肉盛り部(10)をマニホルド取付ボルトのボルト挿通ボス(11)としている。
ボルト挿通ボス(11)としているのは、両端側の枝管(3)(3)の上面肉盛り部(10)(10)のみで、中央の一対の枝管(3)(3)の上面肉盛り部(10)(10)はボルト挿通ボス(11)にはなっていない。
【0020】
図2に示す第2実施形態と、
図3に示す第3実施形態は、第1実施形態にヘッド寄り肉盛り部(8)を追加したものである。
すなわち、
図2(A)または
図3(A)に示すように、排気マニホルド(1)のヘッド側面(1a)にその長手方向に沿うリブ状のヘッド側肉盛り部(8)を形成するに当たり、両端の枝管(3)(3)にヘッド側肉盛り部(8)(8)を形成し、排気合流部(2)に、ヘッド側肉盛り部(8)のないヘッド側面(1a)を形成している。
第2実施形態のものは、反ヘッド側肉盛部(7)とヘッド側肉盛部(8)の両方を備えているため、反ヘッド側肉盛部(7)の垂直幅(7a)は、第1実施形態のそれよりも小さくし、その体積を小さくしている。
第3実施形態のものは、反ヘッド側肉盛部(7)とヘッド側肉盛部(8)の両方を備えているが、いずれも水平方向の突出寸法が小さいため、反ヘッド側肉盛部(7)の垂直幅(7a)は、第1実施形態のそれよりも大きくし、その体積を確保している。
また、第2実施形態と第3実施形態では、全ての隣合う排気フランジ(4)(4)同士を架橋部(12)で相互に連結している。
他の構成は、第1実施形態と同じであり、
図2、
図3中、第1実施形態と同一の要素には、
図1と同じ符号を付しておく。
【0021】
図4に示す
参考形態は、反ヘッド側肉盛り部(7)は設けず、ヘッド側肉盛り部(8)のみを設けたものである。
すなわち、
図4(A)に示すように、シリンダヘッドに対向させる排気マニホルド(1)のヘッド側面(1a)にその長手方向に沿うリブ状のヘッド側肉盛り部(8)を形成するに当たり、両端の枝管(3)(3)にヘッド側肉盛り部(8)(8)を形成し、排気合流部(2)に、ヘッド側肉盛り部(8)のないヘッド側面(1a)を形成したものである。
このため、エンジン運転中の枝管(3)(3)の肉壁の蓄熱量が、排気合流部(2)のそれに近づき、エンジン停止後のこれらの温度低下速度差、ひいては、温度差が小さくなり、排気マニホルド(1)の熱歪みが抑制され、シリンダヘッドと排気マニホルド(1)の排気入口フランジ(4)との間のシール性の低下を抑制することができる。
また、
参考形態では、第2実施形態と第3実施形態と同様、全ての隣合う排気フランジ(4)(4)同士を架橋部(12)で相互に連結している。
他の構成は、第1実施形態と同じであり、
図4中、第1実施形態と同一の要素には、
図1と同じ符号を付しておく。
本発明の実施形態
と参考形態は、過給機付きディーゼルエンジンの排気マニホルドについて説明したが、本発明は、これに限らず、自然吸気ディーゼルエンジンの排気マニホルド、過給機付き火花点火式エンジンの排気マニホルド、自然吸気火花点火式エンジンの排気マニホルドに適用してもよいことは勿論である。
【符号の説明】
【0022】
(1) 排気マニホルド
(1a) ヘッド側面
(1b) 反ヘッド側面
(2) 排気合流部
(2a) 排気導入管
(2b) 排気導出管
(3) 枝管
(4) 排気入口フランジ
(5) 上面
(6) 排気出口フランジ
(7) 反ヘッド側肉盛り部
(8) ヘッド側肉盛り部
(9) 下壁
(10) 上面肉盛り部