【0010】
本実施例は、電力変換装置の零相電流の直流成分が流れることを抑制することで、電流の負荷バランスを容易にし、エネルギー損失の低減や、出力電圧制御の精度向上を実現するものである。
まず、図面を用いて零相電流が流れる原理を説明する。
図8において、第1の電力変換装置108と第2の電力変換装置208は並列接続され、出力を交流負荷300に接続している。交流負荷300は、第1の電力変換装置、または第2の電力変換装置、またはその両方の装置からの電力を受ける受電部、もしくは受電によって制御される制御対象機器としてもよい。
第1の電力変換装置108は、直流電圧源100と、直流電圧源100の出力電圧を検出する直流入力電圧センサ101と、直流電圧源100の供給する直流電力を交流電力に変換する電力変換器102(インバータ)と、電力変換器102の交流出力側に接続され、出力電流を平滑化する交流リアクトル104と、交流リアクトル104の出力側に接続され、出力電圧を安定化する交流コンデンサ105から構成される。
第1の電力変換装置108において、直流電圧源100の出力電圧を直流電源電圧Vs1とし、電力変換器102の出力電圧(相電圧)をvu1、vv1、vw1、出力電流をiu1、iv1、iw1とし、交流コンデンサ105に流れる電流をicu1、icv1、icw1、中性点電位をvcg1、出力電圧(相電圧)すなわち第1の電力変換装置108の出力電圧(相電圧)をvzu1、vzv1、vzw1、出力電流をiLu1、iLv1、iLw1とする。
第2の電力変換装置208は、直流電圧源200と、直流電圧源200の出力電圧を検出する直流入力電圧センサ201と、直流電圧源200の供給する直流電力を交流電力に変換する電力変換器202(インバータ)と、電力変換器202の交流出力側に接続され、出力電流を平滑化する交流リアクトル204と、交流リアクトル204の出力側に接続され、出力電圧を安定化する交流コンデンサ205から構成される。
第2の電力変換装置208において、直流電圧源200の出力電圧を直流電源電圧Vs2とし、電力変換器202の出力電圧(相電圧)をvu2、vv2、vw2、出力電流をiu2、iv2、iw2とし、交流コンデンサ205に流れる電流をicu2、icv2、icw2、中性点電位をvcg2、出力電圧(相電圧)すなわち第2の電力変換装置208の出力電圧(相電圧)をvzu2、vzv2、vzw2、出力電流をiLu2、iLv2、iLw2とする。
また、交流負荷300に流れる電流をiLu、iLv、iLw、入力電圧(相電圧)をvLu、vLv、vLwとする。
電力変換装置108において、交流リアクトル104のインピーダンスをR、インダクタンスをLとし、ラプラス演算子をsとおくと、電力変換器102の出力電流iu1、iv1、iw1は次式で示される。
(式1)
iu1=(vu1−vzu1)/(R+s・L)
iv1=(vv1−vzv1)/(R+s・L)
iw1=(vw1−vzw1)/(R+s・L)
交流コンデンサ105の静電容量をCとし、流れる電流をicu1、icv1、icw1とすると、出力電圧(相電圧)vzu1、vzv1、vzw1は次式で示される。
(式2)
vzu1=icu1/(s・C)+vcg1
vzv1=icv1/(s・C)+vcg1
vzw1=icw1/(s・C)+vcg1
電力変換器102の出力電流iu1、iv1、iw1は、交流コンデンサ105に流れる電流icu1、icv1、icw1と、負荷側に供給する電流iLu1、iLv1、iLw1に分かれる。
(式3)
iu1=icu1+iLu1
iv1=icv1+iLv1
iw1=icw1+iLw1
電力変換装置108と交流負荷300までの配線インピーダンスをrとすると、電力変換装置108の出力電流(負荷供給電流)iLu1、iLv1、iLw1は次式で示される。
(式4)
iLu1=(vzu1−vLu)/r
iLv1=(vzv1−vLv)/r
iLw1=(vzw1−vLw)/r
電力変換器102の出力電流iu1、iv1、iw1の平均値をig1、出力電圧(相電圧)vu1、vv1、vw1の平均値をvg1、交流コンデンサ105の出力電圧(相電圧)vzu1、vzv1、vzw1の平均値をvzg1とする。また、電力変換装置108の出力電流(負荷供給電流)iLu1、iLv1、iLw1の平均値をiLg1とする。
(式5)
ig1=(iu1+iv1+iw1)/3
vg1=(vu1+vv1+vw1)/3
vzg1=(vzu1+vzv1+vzw1)/3
iLg1=(iLu1+iLv1+iLw1)/3
交流負荷300の入力電圧(相電圧)vLu、vLv、vLwの平均値をvLgとし、式1の平均値を求める。
(式1’)
ig1=(vg1−vzg1)/(R+s・L)
式3の平均値を求める。キルヒホッフの法則より交流コンデンサ105に流れる電流icu1、icv1、icw1の総和はゼロ(icu1+icv1+icw1=0)になるので
(式3’)
ig1=iLg1
となる。
式4の平均値を求める。
(式4’)
iLg1=(vzg1−vLg)/r
式1’と式3’と式’4よりiLg1、vzg1を消去すると次式が求められる。
(式6)
ig1=(vg1−vLg)/(R+r+s・L)
電力変換装置208においても同様にして求められる。
(式7)
ig2=(vg2−vLg)/(R+r+s・L)
交流負荷300に流れる電流iLu、iLv、iLwは次式で示される。
(式8)
iLu1+iLu2=iLu
iLv1+iLv2=iLv
iLw1+iLw2=iLw
式8の平均値を求める。キルヒホッフの法則より交流負荷300に流れる電流iLu、iLv、iLwの総和はゼロ(iLu+iLv+iLw=0)になるので、
(式9)
ig1+ig2=0
となる。
式6と式7よりvLgを消去すると
(式10)
ig1=−ig2=(vg1−vg2)/2(R+r+s・L)
となる。
電力変換装置108側からみた零相電流iz1は、電力変換器102の出力電流iu1、iv1、iw1の総和であるから、平均値ig1の3倍に等しい。式10の関係を用いて
(式11)
iz1=3・ig1=3・(vg1−vg2)/2(R+r+s・L)
iz2=−iz1
となる。また、電力変換装置208側からみた零相電流iz2は、電力変換装置108側からみた零相電流iz1と大きさが等しく、極性が反対(iz2=−iz1)である。
以上より、零相電流iz1、iz2は、電力変換器102の出力電圧(相電圧)の平均値vg1と電力変換器202の出力電圧(相電圧)の平均値vg2の差に応じて流れることが分かる。
以降、電力変換器(インバータ)の出力電圧(相電圧)の平均値を零相電位と呼ぶ。零相電流は2台の電力変換装置の零相電位の差に応じて流れるが、とくに2台の電力変換装置の零相電位において直流的な電圧差が生じていた場合を考える。すなわち、式11においてsを0に収束させると
(式12)
iz1=3・ig1=3・(vg1−vg2)/2(R+r)
となる。つまり、2台の電力変換装置の零相電位において直流的な電圧差が生じていた場合、零相電流も直流電流が流れる。通常、交流リアクトルのインピーダンスRおよび配線インピーダンスrは抵抗損失を発生させ、システムの電力効率を低下させるので極めて小さい。つまり、2台の電力変換装置の零相電位の直流的な電圧差が僅かであっても、非常に大きな零相電流が直流電流として流れてしまう。これでは、電流負担の平衡化は果たされない。
ここで、仮に直流電圧源100と直流電圧源200の両方が負極側を接地していた場合を考える。このとき直流電圧源100の正極側の電位はVs1とし、直流電圧源200の正極側の電位はVs2とする。このとき電力変換装置108の零相電位はVs1/2となり、電力変換装置208の零相電位はVs2/2となる。2台の電力変換装置の直流電圧が異なる(Vs1≠Vs2)場合、2台の電力変換装置の零相電位には直流的な電圧差が発生し、非常に大きな零相電流が直流電流として流れてしまう。
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
【実施例1】
【0011】
図1は、本実施例の零相電流の直流成分を抑制する電力変換システムの回路構成を示す図である。
本実施例の電力変換システムを構成する第1の電力変換装置108と第2の電力変換装置208は並列接続され、出力を交流負荷300に接続している。第1の電力変換装置108は、中点を接地した直流電圧源100と、直流電圧源100の出力電圧を検出する直流入力電圧センサ101と、直流電圧源100の供給する直流電力を交流電力に変換する電力変換器102(インバータ)と、電力変換器102の出力電流の零相成分を検出する出力電流センサ103と、電力変換器102の交流出力側に接続され、出力電流を平滑化する交流リアクトル104と、交流リアクトル104の出力側に接続され、出力電圧を安定化する交流コンデンサ105と、交流コンデンサ105の線間電圧を検出する電圧検出手段である交流出力電圧センサ106と、直流入力電圧センサ101と出力電流センサ103と交流出力電圧センサ106の出力信号を入力し、電力変換器102を駆動するゲートパルス信号を出力する制御装置107から構成される。
同様に第2の電力変換装置208は、中点を接地した直流電圧源200と、直流電圧源200の出力電圧を検出する直流入力電圧センサ201と、直流電圧源200の供給する直流電力を交流電力に変換する電力変換器202(インバータ)と、電力変換器202の出力電流の零相成分を検出する電流センサ203と、電力変換器202の交流出力側に接続され、出力電流を平滑化する交流リアクトル204と、交流リアクトル204の出力側に接続され、出力電圧を安定化する交流コンデンサ205と、交流コンデンサ205の線間電圧を検出する交流出力電圧センサ206と、直流入力電圧センサ201と出力電流センサ203と交流出力電圧センサ206の出力信号を入力し、電力変換器202を駆動するゲートパルス信号を出力する制御装置207から構成される。
図2は、
図1における制御装置107の詳細を示す図である。
制御装置107は、
図1における出力電流センサ103の検出した零相電流iz1より外乱信号成分の零相電流izを抽出する外乱信号検出手段400と、
図1における交流出力電圧センサ106の検出した線間電圧である出力電圧vzuv、vzvwより、出力電圧実効値|Vz|を演算する実効値演算手段430と、実効値演算手段430の出力した出力電圧実効値|Vz|を参照し、自群の電力変換装置が起動する際の出力電圧実効値|Vz|が所定の値以上であれば、既に他群の電力変換装置が起動していると判断する他群起動判別手段431と、基本波位相θに応じて外乱信号を生成する外乱信号生成手段である外乱信号テーブル407と、零相電流izと外乱信号テーブル407の出力の積を求める乗算器401と、0と乗算器401の出力の差を求める減算器402と、減算器402の出力に応じて比例積分制御(PI制御)を行い、基本波周波数操作量Δfを出力する比例積分制御手段403と、比例積分制御手段403の出力した基本波周波数操作量Δfを入力し、他群起動判別手段431の出力を参照して既に他群の電力変換装置が起動している場合に接続するスイッチ404と、スイッチ404の出力と基本波周波数基準値f*の和より基本波周波数fを求める加算器405と、加算器405の出力した基本波周波数fを積分して基本波位相θを求める積分器406と、出力電圧実効値指令|Vz|*と実効値演算手段430の出力した出力電圧実効値|Vz|の差を求める減算器428と、減算器428の出力に応じて比例積分制御(PI制御)を行い、出力電圧実効値指令|Vi|を求める比例制御積分手段429と、基本波位相θより120度遅れた位相θvを求める減算器409と、基本波位相θより120度進んだ位相θwを求める加算器410と、基本波位相θ=θuに応じた正弦波を出力する第1の正弦波テーブル411と、減算器409の出力する位相θvに応じた正弦波を出力する第2の正弦波テーブル412と、加算器410の出力する位相θwに応じた正弦波を出力する第3の正弦波テーブル413と、第1の正弦波テーブル411の出力する正弦波と比例制御積分手段429の出力する出力電圧実効値指令|Vi|の積より出力電圧指令(基本波)viuを求める乗算器414と、第2の正弦波テーブル412の出力する正弦波と比例制御積分手段429の出力する出力電圧実効値指令|Vi|の積より出力電圧指令(基本波)vivを求める乗算器415と、第3の正弦波テーブル413の出力する正弦波と比例制御積分手段429の出力する出力電圧実効値指令|Vi|の積より出力電圧指令(基本波)viwを求める乗算器416と、外乱信号テーブル407の出力と外乱振幅ΔViの積より外乱信号Δviを求める乗算器408と、乗算器414の出力する出力電圧指令(基本波)viuと乗算器408の出力する外乱信号Δviの和より出力電圧指令vmuを求める加算器417と、乗算器415の出力する出力電圧指令(基本波)vivと乗算器408の出力する外乱信号Δviの和より出力電圧指令vmvを求める加算器418と、乗算器416の出力する出力電圧指令(基本波)viwと乗算器408の出力する外乱信号Δviの和より出力電圧指令vmwを求める加算器419と、加算器417の出力する出力電圧指令vmuを
図1における直流入力電圧センサ101の検出した直流電源電圧Vs1で除算して変調波ymuを求める除算器420と、加算器418の出力する出力電圧指令vmvを直流電源電圧Vs1で除算して変調波ymvを求める除算器421と、加算器419の出力する出力電圧指令vmwを直流電源電圧Vs1で除算して変調波ymwを求める除算器422と、基本波位相θに応じて搬送波ymcを生成する搬送波テーブル427と、除算器420の出力する変調波ymuと搬送波テーブル427の出力する搬送波ymcを比較して
図1の電力変換器102を駆動するゲートパルス信号Gpu1を出力する第1のPWM演算器423と、除算器421の出力する変調波ymvと搬送波テーブル427の出力する搬送波ymcを比較して
図1の電力変換器102を駆動するゲートパルス信号Gpv1を出力する第2のPWM演算器424と、除算器422の出力する変調波ymwと搬送波テーブル427の出力する搬送波ymcを比較して
図1の電力変換器102を駆動するゲートパルス信号Gpw1を出力する第3のPWM演算器425から構成される。制御装置207の構成も
図2と同様にすればよい。
図3は、
図1に示す直流電圧源100の詳細を示す図である。
直流電圧源100は、直流電源501と、バランス抵抗502、503と、分圧コンデンサ504、505、フィルタコンデンサ506から構成される。バランス抵抗502、503を直列接続し、その中点を接地して直流電源501に並列接続する。同様に分圧コンデンサ504、505も直列接続し、その中点を接地して直流電源501に並列接続する。さらにフィルタコンデンサ506を直流電源501に並列接続する。分圧コンデンサ504、505の静電容量は、原理的には同一にすることが望ましい。ただし、ノイズなどの影響を考慮して、静電容量を厳密に同一にしなくても良い。
図4は、
図2に示す外乱信号検出手段400の詳細を示す図である。
外乱信号検出手段400は、出力電流センサ103の検出した零相電流iz1を入力し、カットオフ周波数をスイッチング周波数とするローパスフィルタ600と、ローパスフィルタ600の出力である零相電流izfを入力し、スイッチング周波数の逓倍でサンプリングを行うサンプリング手段であるA/D変換器601と、A/D変換器601の出力である零相電流izaの前回値を保存する記憶素子602と、零相電流izaと記憶素子602の出力の和を求める加算器603と、加算器603の出力に1/2を乗じるゲイン604から構成される。A/D変換器601は、例えば2倍でサンプリングを行えばよい。
図5は、外乱信号検出手段400の動作波形を示す図である。
図5は、第1の電力変換装置の基本波位相および搬送波位相が第2の電力変換装置に比べて進み位相のとき、第1の電力変換装置から見た(出力方向を正とした)場合の零相電流波形を基本波一周期分を描いたものである。外乱信号として基本波周波数の3倍の三角波を与えており、外乱信号である三角波にキャリア周波数付近の高調波が重畳した形の零相電流が流れる。
零相電流iz1は出力電流センサ103の検出した値であり、ここでは実際に流れている零相電流と等しいと考える。
零相電流izfはローパスフィルタ600の出力である。ローパスフィルタのカットオフ周波数をスイッチング周波数としているため、零相電流に含まれるキャリア周波数付近の高調波成分は大きく減衰している。このローパスフィルタはキャリア周波数付近の高調波成分を完全に除去する必要はなく、むしろ外乱信号である三角波の位相を大きく変えないように留意すべきである。
零相電流izaはA/D変換器601の出力である。キャリア周波数の2倍で周期サンプリングすることにより、キャリア周波数付近の高調波成分はサンプリング毎に増減を繰り返すため、記憶素子602と加算器603とゲイン604によって構成される平滑化フィルタである移動平均フィルタによって、キャリア周波数付近の高調波成分を除去することができる。
この結果、移動平均フィルタの出力である零相電流izは、キャリア周波数付近の高調波成分を除去し、外乱信号である三角波成分を抽出できている。
次に、零相電流の直流成分を抑制する動作原理について説明する。
本実施例は、中点を接地した直流電圧源100を持つことで、零相電流の直流成分の抑制を実現している。
図8において、直流電圧源100および直流電圧源200は中点を接地しているものとする。このとき、直流電圧源100の正極側の電位は+Vs1/2、負極側の電位は−Vs1/2となり、電力変換装置108の零相電位の直流成分はゼロとなる。同様に直流電圧源200の正極側の電位は+Vs2/2、負極側の電位は−Vs2/2となり、電力変換装置208の零相電位の直流成分は原理的にはゼロとなる。つまり、2台の電力変換装置の直流電圧源の出力電圧Vs1、Vs2に関わらず、電力変換装置の零相電位の直流成分はともに原理的にゼロとなって差が生じないため、結果的に零相電流の直流成分も抑制される。さらに、中点を接地しているため、電位自体が変動したとしても、零相電位の直流成分には影響を与えない。
2台の電力変換装置の直流電圧源の出力電圧が異なる場合でも、電力変換装置の零相電位の直流成分はともにほぼゼロ(原理的にはゼロ)であるので、2台の電力変換装置の間には零相電流の直流成分は基本的に流れない。この結果、2台の電力変換装置の間の抵抗要素(交流リアクトル、配線など)が直流成分に対して低インピーダンスの場合においても、容易に電流分担をバランスさせることができるため、簡素な制御によって、精度の高く、応答性の高い出力電圧制御を実現できるほか、交流リアクトルや配線のインピーダンスを下げることによって損失を低減することができる。
また、2台の電力変換装置の出力電圧振幅および出力電圧位相が等しくても、2台の電力変換装置の直流電圧源の出力電圧が異なる場合には、変調率が異なる=スイッチングタイミングが異なることにより、2台の電力変換装置の間には零相電流のキャリア周波数成分が流れる。ところが、本発明においては
図5に示すように、検出した零相電流からキャリア周波数成分を除去し、外乱信号成分を抽出して位相同期しているため、零相電流のキャリア周波数成分を無視することができる。つまり、2台の電力変換装置の直流電圧源の出力電圧が異なる場合でも、基本波位相の同期に影響を及ぼさない。
本実施例では、零相電流のキャリア周波数成分を無視しているが、
図2に示すように基本波位相θに応じて搬送波ymcを求めており、いわゆる同期PWM方式を採用している。この結果、基本波位相θが一致すれば搬送波ymcも一致することが保証される。つまり、2台の電力変換装置の直流電圧源の出力電圧が同程度の場合には、2台の電力変換装置のパルスタイミングが揃うことになり、比較的低精度・低応答の制御装置でも、2台の電力変換装置のゲートパルスを同期させるという高度な制御を実現できる能力を有している。
また、出力電流センサ103や、ローパスフィルタ600、あるいはA/D変換器601などの誤差によって、抽出した外乱信号成分の零相電流izに直流バイアスが重畳される可能性がある。しかし、その場合においても、
図2の乗算器401によって外乱信号との積を求めることにより、直流バイアスは外乱信号と同じ周波数の交流信号に変換され、その後の比例制御積分器403および積分器406によって積分されるため、直流バイアスの影響は取り除くことができる。直流電圧源100の中点接地において、実際上はノイズなどの影響から零相電位の直流成分を完全にゼロにすることはできないが、直流バイアスが発生した場合であっても、その影響は抑制可能となる。直流バイアスの影響の抑制は、直流電圧源100、直流電圧源200において、両者で共に実施する必要はなく、直流バイアスの影響の大小によって、一方で実施してもよい。
理想的には、第1の電力変換装置の零相電流iz1と第2の電力変換装置の零相電流iz2の和を求めるとゼロになる(iz1+iz2=0)はずであり、たとえば第1の電力変換装置が位相を遅らせるように動作している場合、第2の電力変換装置は位相を進ませるように動作しなくてはならない。ところが、零相電流の振幅そのものが小さい場合においては、出力電流センサ103やローパスフィルタ600、あるいはA/D変換器601などの誤差によって、2台の電力変換装置ともに位相を進ませる、あるいは位相を遅らせるように動作することも有り得る。この場合、出力周波数が徐々に高くなる、あるいは逆に低くなってしまい、定周波数・定電圧の交流電力源という役割を果たせない。このため、本実施例では、他群起動判別手段431を用いることにより、他群よりも早く起動した電力変換装置は位相同期制御を行わず、出力周波数を初期値(定格周波数)のまま一定とする。他群起動判別手段431は、自群の起動時に出力電圧を参照し他群が既に起動しているのか判別を行う。このとき、出力電圧が基準値以上であれば他群が既に起動しているものと判断し、基準値以下であれば起動していないと判断して出力周波数を固定する。なお、一般的な電圧源は出力電圧に定格変動範囲(たとえば±10%)を設けており、本発明においても定格出力電圧に上限値と下限値を設けているものとする。他群の起動判別に用いる基準値は、定格出力電圧の下限値とするのが合理的である。本実施例の電力変換システムでは、直流電圧源100と直流電圧源200との2つの直流電圧源を用いる場合について説明したが、3つ以上の電力変換装置を用いる場合は、電力変換装置108、電力変換装置208と同様に並列接続すればよい。
図6は、本実施例の動作波形を示す。
第1および第2の電力変換装置の直流電圧源(中点を接地した直流電圧源)が理想電圧源とみなせる程度に安定した電源を用いている。具体的には
図1における交流リアクトルのインダクタンスをL、
図3における分圧コンデンサ504、505の静電容量をCとおくと、LC共振周波数が外乱信号の周波数より小さい場合には、安定した電源とみなすことができる。
図6は、第1の電力変換装置の基本波位相および搬送波位相が第2の電力変換装置に比べて進み位相のとき、第1の電力変換装置から見た(出力方向を正とした)場合の電圧・電流波形を基本波一周期分を描いたものである。外乱信号として基本波周波数の3倍の三角波を与えており、外乱信号である三角波にキャリア周波数付近の高調波が重畳した形の零相電流が流れる。
図7は、LC共振周波数が外乱信号の周波数より大きい場合であり、その他の条件は
図6と同じである。
図6と
図7を比べて、出力電圧vzuvおよび出力電流iuの波形はほとんど変わらないが、零相電流izにおいて外乱信号の位相が反転していることが分かる。これは、分圧コンデンサ504、505の静電容量が小さいと、流入した零相電流によってコンデンサの電圧が変動してしまうためである。
以上より、零相電流を用いて位相同期を行うために、LC共振周波数は外乱信号の周波数よりも小さくする。分圧コンデンサ504、505の静電容量を大きくするか、あるいは外乱信号の周波数をLC共振周波数より高くすれば良い。