【文献】
chapter 1 Cell Biology & Imaging, Invitrogen 2004-2005年版カタログ, 2004, pages 1-44&1-49
【文献】
The Journal of Histochemistry and Cytochemistry,1995年,Vol.43,No.9,pp.907-915
【文献】
村上徹、外2名, 新しい蛍光プローブの使い方, 顕微鏡, 2007, 第42巻, 第1号, pages 65-68
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
リンパ節組織、血球又は骨髄が、ヒト、類人猿、サル、イヌ、ネコ、ウマ、ウシ、ブタ、ヒツジ、ヤギ、ロバ、ラクダ、ラマ、アルパカ、トナカイ、スイギュウ、ヤク、モルモット、ウサギ、ミンク、マウス、ラット、スナネズミ、ハムスター、ゴールデンハムスター、アルメニアンハムスター、フェレット、ミニブタ、アライグマ、フクロネズミ、スンクス、カンガルー、イルカ、ニワトリ、ウズラ又はダチョウ由来である請求項1〜15のいずれかに記載の方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記のように末梢血やリンパ節より形質細胞及び形質芽細胞を同定・単離するには、数段階のポジティブ・ネガティブ選別操作が必要であるため、形質細胞及び形質芽細胞の同定・単離には時間と手間がかかる。
【0008】
更に、細胞表面マーカーに対する抗体を用いた形質細胞及び形質芽細胞の分離法は、現在のところヒト及びマウスで確立されただけである(非特許文献1,2)。そのため、現在、遺伝子クローニング法を用いたモノクローナル抗体作製にはヒト及びマウス由来の形質細胞及び形質芽細胞のみが用いられている。
【0009】
しかし、抗体医薬の標的となるヒトタンパク質の機能的抗原エピトープの多くは、ヒトーマウス間での相同性が高いため、これをマウスに免疫しても免疫寛容のために特異性の高い抗体を得ることが困難な場合が多い。そこで、免疫寛容の制限を回避するために、マウス以外の動物種を用いた免疫により得られるモノクローナル抗体が新たな抗体医薬品開発の標的として重要性を帯びてくる。しかし、ウサギ、ラット、ヒツジ、ヤギ、ニワトリなどの動物から抗体産生細胞である形質細胞及び形質芽細胞を同定・分離する方法は、これらの動物における抗体産生細胞表面マーカーに対する抗体が作製されていないため、未だ確立されていない。
【0010】
そこで本発明は、ヒト及びマウスを含む哺乳類から鳥類に至る様々な動物から、細胞表面マーカーを利用することなく形質細胞及び形質芽細胞を効率よく高純度で単離することができる手段を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
形質細胞及び形質芽細胞は、他の細胞には認められない以下の特徴的な形態を有する。
(1)タンパク質の翻訳・折りたたみ・成熟に関与する細胞内小器官である小胞体が異常に発達し、細胞質の大部分を占有する。
(2)細胞核は、小型で細胞の一方に偏在化し、核内には染色体が凝集化し車輻状化したヘテロクロマチンの構造が認められる。
【0012】
本発明者らは、これらの特徴が、形質細胞及び形質芽細胞が多量の抗体の産生に特化したことが原因で現れた形態であり、よって本形態を利用することで動物種の如何を問わず形質細胞及び形質芽細胞を単離できる可能性があると考えた。
【0013】
上記考えに基づいて、本発明者らは多くの蛍光プローブについて、形質細胞及び形質芽細胞に対する選択的な染色についてスクリーニングを行った。その結果、形質細胞及び形質芽細胞を強染するのに対して、形質細胞及び形質芽細胞と共存する可能性がある他の細胞に対する染色の度合いが低く、両者間で得られる蛍光強度比に識別可能な程度の差を示す蛍光プローブ(蛍光プローブ1)があることを見いだした。さらに、形質細胞及び形質芽細胞と共存する可能性がある他の細胞の核を強染するが形質細胞及び形質芽細胞の核に対しては親和性の低い蛍光プローブ(蛍光プローブ2)があることを見いだした。その上で、これらの蛍光プローブを用いることでリンパ節組織や血球試料から、細胞表面マーカーに対する抗体を用いることなしに、形質細胞及び形質芽細胞を効率よく同定すること、さらには同定した形質細胞及び形質芽細胞を単離することが可能であることを見出して、本発明を完成させた。
【0014】
本発明は以下の通りである。
[1]
細胞の小胞体に対する染色選択性が、小胞体以外の細胞小器官に対する染色選択性に比べて高い蛍光プローブであって、該蛍光プローブによる染色により、形質細胞及び形質芽細胞と形質細胞及び形質芽細胞以外の細胞とを識別可能な、形質細胞及び/又は形質芽細胞の同定又は単離に用いるための蛍光プローブ。
[2]
(1)両親媒でカチオニックであり、かつ中程度の脂溶性を有する物質、および(2)小胞体局在を示すタンパク質に対して一定以上の親和性を有する物質から成る群から選ばれる[1]に記載の蛍光プローブ。
[3]
前記両親媒は、両親媒性インデックス(AI)が、+6>AI>0であり、中程度の脂溶性は、疎水性インデックス(logP)が、+6>logP>0であり、一定以上の親和性は、解離定数が0.1μM〜0.1nMの範囲である[2]に記載の蛍光プローブ。
[4]
前記小胞体以外の細胞小器官が、形質膜、ミトコンドリア、ゴルジ体、リソソーム、パーオキソーム、核、中心体、細胞質基質、ファゴソーム、エンドソーム、又はアグリソームである[1]〜[3]のいずれかに記載の蛍光プローブ。
[5]
前記蛍光プローブが、蛍光標識glibenclamide、蛍光標識Brefeldin A、蛍光プローブ、および蛍光タンパク質から成る群から選ばれる[1]〜[4]のいずれかに記載の蛍光プローブ。
[6]
細胞核に対する染色選択性が、細胞核以外の細胞小器官に対する染色選択性に比べて高い蛍光プローブであって、該蛍光プローブによる染色により、形質細胞及び形質芽細胞と形質細胞及び形質芽細胞以外の細胞とを識別可能な、形質細胞及び/又は形質芽細胞の同定又は単離に用いるための蛍光プローブ。
[7]
蛍光プローブはDNAに対して結合性を有する物質である、[6]に記載の蛍光プローブ。
[8]
前記DNAに対して結合性を有する物質が、2個の窒素がポリメチレン鎖により連結されており、個々の窒素は独立に芳香環を形成し、窒素の少なくとも一つは4級アンモニウム基として陽電荷を有する物質である、[7]に記載の蛍光プローブ。
[9]
前記物質は、両親媒性インデックス(AI)が<8であり、疎水性インデックス(logP)が、-5<log P(cation)<0である、[8]に記載の蛍光プローブ。
[10]
前記蛍光プローブがSYTO (登録商標)59又はSYTO(登録商標)24である[6]〜[9]のいずれかに記載の蛍光プローブ。
[11]
形質細胞及び形質芽細胞以外の細胞が、赤血球、血小板、単球、好塩基球、好酸球、好中球、Bリンパ球、Tリンパ球及びマクロファージから成る群から選ばれる少なくとも1種の細胞である[1]〜[5]のいずれかに記載の蛍光プローブ。
[12]
形質細胞及び形質芽細胞以外の細胞が、単球、好塩基球、好酸球、好中球、Bリンパ球、Tリンパ球及びマクロファージから成る群から選ばれる少なくとも1種の細胞である[6]〜[10]のいずれかに記載の蛍光プローブ。
[13]
リンパ節組織、血球試料又は骨髄からの形質細胞及び形質芽細胞の単離に用いるための[1]〜[12]のいずれかに記載の蛍光プローブ。
[14]
[1]〜[5]のいずれかに記載の蛍光プローブ又はその組合せを用いてリンパ節組織、血球試料又は骨髄由来の細胞に染色を施し、次いで染色した細胞からの蛍光強度に基づいて形質細胞及び/若しくは形質芽細胞又は形質細胞及び/若しくは形質芽細胞の候補を同定することを含む、リンパ節組織、血球試料又は骨髄中の形質細胞及び形質芽細胞を同定する方法。
[15]
[14]に記載の方法で同定された形質細胞及び/若しくは形質芽細胞又は形質細胞及び/若しくは形質芽細胞の候補を採取することを含む、形質細胞及び形質芽細胞の調製方法。
[16]
同定された形質細胞及び/若しくは形質芽細胞又は形質細胞及び/若しくは形質芽細胞の候補の採取を、セルソーターによる分取により行う[15]に記載の方法。
[17]
[6]〜[10]のいずれかに記載の蛍光プローブ又はその組合せを用いてリンパ節組織、血球試料又は骨髄由来の細胞に染色を施し、次いで染色した細胞からの蛍光強度に基づいて形質細胞及び/若しくは形質芽細胞又は形質細胞及び/若しくは形質芽細胞の候補を同定することを含む、リンパ節組織、血球試料又は骨髄中の形質細胞及び形質芽細胞を同定する方法。
[18]
[17]に記載の方法で同定された形質細胞及び/若しくは形質芽細胞又は形質細胞及び/若しくは形質芽細胞の候補を採取することを含む、形質細胞及び/又は形質芽細胞の調製方法。
[19]
同定された形質細胞及び/若しくは形質芽細胞又は形質細胞及び/若しくは形質芽細胞の候補の採取を、セルソーターによる分取により行う[17]に記載の方法。
[20]
[15]又は[16]で採取された細胞に[6]〜[10]のいずれかに記載の蛍光プローブ又はその組合せを用いて染色を施し、次いで細胞からの蛍光強度に基づいて形質細胞及び形質芽細胞以外の細胞又は形質細胞及び形質芽細胞以外の細胞の候補を同定し、同定された細胞を採取し、残りの細胞を形質細胞及び/若しくは形質芽細胞又は形質細胞及び/若しくは形質芽細胞の候補として採取することを含む、形質細胞及び/又は形質芽細胞の調製方法。
[21]
同定された形質細胞及び形質芽細胞以外の細胞又は形質細胞及び形質芽細胞以外の細胞の候補の採取、および残りの細胞の採取を、セルソーターによる分取により行う[20]に記載の方法。
[22]
リンパ節組織、血球又は骨髄が、ヒト、類人猿、サル、イヌ、ネコ、ウマ、ウシ、ブタ、ヒツジ、ヤギ、ロバ、ラクダ、ラマ、アルパカ、トナカイ、スイギュウ、ヤク、モルモット、ウサギ、ミンク、マウス、ラット、スナネズミ、ハムスター、ゴールデンハムスター、アルメニアンハムスター、フェレット、ミニブタ、アライグマ、フクロネズミ、スンクス、カンガルー、イルカ、ニワトリ、ウズラ又はダチョウ由来である[13]〜[21]のいずれかに記載の方法。
【発明の効果】
【0015】
本発明においては、細胞表面マーカーに対する抗体を用いることなく、蛍光プローブの細胞小器官等に対する染色選択性に注目して形質細胞及び形質芽細胞を同定することができる。そのため、形質細胞及び形質芽細胞の同定のための細胞表面マーカーに対する抗体自体が不要であり、特定の動物種に限ることなく形質細胞及び形質芽細胞を同定し、かつ分離することが可能である。そのため、本発明によれば、特定の動物種に依らないモノクローナル抗体の作成が可能である。現在、ヒト及びマウス抗体のみが抗体医薬品開発に用いられているが、本発明を用いることで多くの動物種から得られたモノクローナル抗体を抗体医薬品開発に利用することが可能となる。よって本発明は新薬開発の主流を占める抗体医薬品開発に新たな有力な技術を提供するものである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
<蛍光プローブ1>
本発明の第一の態様の蛍光プローブ(蛍光プローブ1)は、形質細胞及び形質芽細胞の同定又は単離に用いるための蛍光プローブであって、細胞の小胞体に対する親和性が、他の小器官に対する親和性に比べて高い、換言すると、細胞の小胞体を選択的に染色する蛍光プローブである。形質細胞及び形質芽細胞は、形質細胞及び形質芽細胞以外の細胞に比べて、小胞体が異常に発達しており、その結果、蛍光プローブ1での染色により得られる蛍光強度は、形質細胞及び形質芽細胞以外の細胞が蛍光プローブ1で染色された場合の蛍光強度に比べて、形質細胞及び形質芽細胞と形質細胞及び形質芽細胞以外の細胞とを識別可能な程度の差を示す。蛍光プローブ1が示す、上記蛍光強度比(形質細胞及び形質芽細胞の蛍光強度/形質細胞及び形質芽細胞以外の細胞の蛍光強度)は、例えば、3倍以上である。
【0018】
形質細胞及び形質芽細胞の小胞体と形質細胞及び形質芽細胞以外の細胞の小胞体とでは、蛍光プローブ1に対する親和性に大きな違いはないが、小胞体の発達の程度の違いにより上記蛍光強度の相違を生じる。その結果、上記蛍光強度比に基づいて、蛍光プローブ1による染色により、形質細胞及び形質芽細胞と形質細胞及び形質芽細胞以外の細胞とを識別することができる。
【0019】
蛍光プローブ1で染色することで、形質細胞及び形質芽細胞以外の細胞が共存する形質細胞及び形質芽細胞を、形質細胞及び形質芽細胞以外の細胞からの蛍光強度と形質細胞及び形質芽細胞からの蛍光強度の強弱の違いで両者を識別可能である。そのため、蛍光プローブ1で染色することで、形質細胞及び形質芽細胞以外の細胞が共存する細胞群の中から、形質細胞及び形質芽細胞を容易に同定でき、かつ同定した形質細胞及び形質芽細胞を採取することで、形質細胞及び形質芽細胞を多く含む細胞群を得ることかできる。
【0020】
蛍光プローブ1は、染色された形質細胞及び形質芽細胞からの蛍光強度が、染色された形質細胞及び形質芽細胞以外の細胞からの蛍光強度の3倍以上であれば、両者の識別が可能であり、識別を容易にするという観点からは、好ましくは4倍以上、さらに好ましくは5倍以上のものである。但し、この蛍光強度比は、形質細胞及び形質芽細胞以外の細胞の種類によって小胞体の発達の程度が異なるので、形質細胞及び形質芽細胞以外の細胞の種類が異なると変化する。前記蛍光強度比が高いほど、形質細胞及び形質芽細胞以外の細胞を含む細胞群の中から形質細胞及び形質芽細胞をより効率よく同定できる。形質細胞及び形質芽細胞以外の細胞としては、例えば、赤血球、血小板、Tリンパ球、Bリンパ球、顆粒球、マクロファージ、好酸球、好塩基球、好酸球、マクロファージ等を挙げることができる。
【0021】
本発明において、本発明の蛍光プローブ1を用いた形質細胞及び形質芽細胞と形質細胞及び形質芽細胞以外の細胞との判別は以下のように行うことができる。蛍光プローブ1を細胞懸濁液に加え37℃にて30分間染色を行う。染色に適した蛍光プローブ1の濃度は、蛍光プローブ1の種類により異なるが、例えば、100nM〜1μMである。染色後、細胞をPBSにて洗浄する。洗浄した細胞は、例えば、(1)蛍光顕微鏡を用いて細胞における蛍光プローブの局在を観察すること、又は(2)細胞から発せられる蛍光の強度に基づいて、形質細胞及び形質芽細胞であるか、又は形質細胞及び形質芽細胞以外の細胞であるかを判別できる。形質細胞及び形質芽細胞と形質細胞及び形質芽細胞以外の細胞との判別方法については、形質細胞及び形質芽細胞の同定・分離方法において詳述する。
【0022】
さらに上記形質細胞及び形質芽細胞と形質細胞及び形質芽細胞以外の細胞との判別方法を応用して、形質細胞及び形質芽細胞の小胞体及び形質細胞及び形質芽細胞以外の細胞の小胞体に対する染色選択性が未知の物質から蛍光プローブ1として利用可能な物質をスクリーニングすることもできる。細胞の小胞体に対する染色選択性が高い、本発明の蛍光プローブ1として適した蛍光プローブのスクリーニングは、後述する、小胞体に局在するタンパク質の免疫染色(形質細胞及び形質芽細胞では免疫グロブリン)や、小胞体移行性の組換え蛍光タンパク質を培養細胞で発現させることで、細胞の小胞体を同定する方法を利用した、細胞全体の蛍光強度Aと小胞体からの蛍光強度Bの割合(B/A)を求める方法を利用して行うことができる。
【0023】
蛍光プローブ1として利用可能な物質をスクリーニングする方法においては、形質細胞及び形質芽細胞のみを用いても、形質細胞及び形質芽細胞以外の細胞のみを用いても実施できる。但し、形質細胞及び形質芽細胞は小胞体が発達しており、染色により高い蛍光強度が得られることから、形質細胞及び形質芽細胞を用いる方が、細胞の小胞体に対する物質の染色選択性の評価はより容易である。しかし、形質細胞及び形質芽細胞の入手は容易でないことから、形質細胞及び形質芽細胞以外の細胞を用いて小胞体への染色性(染色力)を評価して、蛍光プローブ1として利用可能な物質をスクリーニングすることもできる。例えば、一般的な培養細胞(例えばHela細胞)を用いた染色実験において、上記細胞全体の蛍光強度Aと小胞体からの蛍光強度Bの割合(B/A)を求めることで、蛍光プローブ1として利用可能な物質をスクリーニングすることができる。但し、細胞として形質細胞及び形質芽細胞以外の細胞を用いる場合には、閾値とすべきB/Aの値を、細胞における小胞体の発達の程度に応じて、形質細胞及び形質芽細胞を用いるスクリーニング法で採用する閾値としてのB/Aの値よりは、低い値、例えば、50%程度に適宜設定することが適当である。
【0024】
形質細胞及び形質芽細胞以外の細胞の例としては、赤血球、血小板、Tリンパ球、Bリンパ球、マクロファージ、好中球、好酸球、好塩基球等を他の細胞として挙げることができる。さらに、上記方法でのスクリーニングには、形質細胞及び形質芽細胞の代わりに、ハイブリドーマ細胞、形質細胞腫、又は多発性骨髄腫細胞を用いることもできる。これは、ハイブリドーマ細胞、形質細胞腫、および多発性骨髄腫細胞も、免疫グロブリンを産生するため小胞体が発達しており、このため染色により高い蛍光強度が得られ、細胞の小胞体に対する物質の染色選択性の評価がより容易であるためである。
【0025】
形質細胞及び形質芽細胞並びに形質細胞及び形質芽細胞以外の細胞の小胞体に対する染色選択性が高い蛍光プローブ1は、物質の例としては、(1)両親媒でカチオニックであり、かつ中程度の脂溶性を有する物質、および(2)小胞体局在を示すタンパク質に対して一定以上の親和性を有する物質を挙げることができる。このような(1)又は(2)の性質を有する物質は、形質細胞及び形質芽細胞の小胞体に対する染色性および形質細胞及び形質芽細胞以外の細胞の小胞体に対する染色性の両方が、細胞のその他の小器官に対する染色性に比べて高くなる。
【0026】
上記(1)における「両親媒でカチオニックである」とは、具体的には、両親媒性インデックス(AI)が、例えば、+6>AI>0であることを意味する。ただし両親媒性インデックスは分子の脂溶性ドメインの見かけ上のlogP値を算出することで得られた値である。具体的には、Hansch らのフラグメント値に基づき、炭素鎖の長さとその位置関係と陽イオン性の4級アンモニウム基の極性効果を考慮し、Morrallらのモデルに従って算出された値である。[Hansch C, Leo AJ. Exploring QSAR: Fundamentals and Applications in Chemistry and Biology, p.160, American Chemical Society: Washington, DC, 1995.,Morrall SW, Herzog RR, Kloepper-Sams P, Rosen MJ. Octanol/water partitioning of surfactants and its relevance to toxicity and environmental behavior. Proc 4th World Surfactants Congress,vol. 3. AEPSAT: Barcelona, 1996; 220-227.
【0027】
上記(1)における「中程度の脂溶性」とは、疎水性インデックス(logP)が、例えば、+6>logP>0であることを意味する。疎水性インデックスは、Hansch らのフラグメント推算法により算出された分子全体の疎水性値である。具体的には、AIで示された疎水基にこれに付随した構造の影響を加算したものである。
【0028】
上記(2)における「小胞体局在を示すタンパク質に対して一定以上の親和性を有する」とは、具体的には解離定数が0.1μMから0.1nMの親和性を有することを意味する。小胞体局在を示すタンパク質に対して一定以上の親和性を有する物質も、細胞の小胞体を選択的に染色する蛍光プローブである。
【0029】
(1)両親媒でカチオニックであり、かつ中程度の脂溶性を有する物質の例としては、下記A、B又はCで示される化合物を挙げられる。
【0030】
式Aで示される化合物は、DiOC6(3) (3、3'-dihexyloxacarbocyanine iodide)であり、低濃度ではミトコンドリアに集積するが、高濃度では小胞体に集積する。式Bで示される化合物は、rhodamine B hexyl esterであり、低濃度ではミトコンドリアに集積するが、高濃度では小胞体に集積する。式Cで示される化合物は、 ER-Tracker Blue white DPXであり、主に小胞体に集積し、高濃度ではゴルジ体も染色する。実施例で使用した蛍光プローブである。これらA、B又はCで示される化合物はいずれも両親媒でカチオニック、中程度の脂溶性を有する(参考文献、Why fluorescent probes for endoplasmic reticulumare selective: an experimental and QSAR-modeling studyを参照)。
【0031】
Aで示される化合物の両親媒性インデックス(AI)および疎水性インデックスは、それぞれ4.5と4.4であり、1価の陽イオンを有する。Bで示される化合物の両親媒性インデックス(AI)および疎水性インデックスは、それぞれ4.8と5.9であり、1価の陽イオンを有する。Cで示される化合物の両親媒性インデックス(AI)および疎水性インデックスは、それぞれ5.1と0.7であり、1価の陽イオンを有する。Cで示される化合物は、実施例で示すように、形質細胞及び形質芽細胞を染色した場合の蛍光強度が、形質細胞及び形質芽細胞以外の細胞を染色した場合の蛍光強度の4倍以上である。
【0033】
色素(Dye)1、5、7及び10は、両親媒でカチオニックであり、かつ中程度の脂溶性を有する物質であり、蛍光プローブ1の例である。これらの色素は、米国出願公開US2010/0068752A1(その全記載は、ここに特に開示として援用される)に記載の色素である。これらの色素は、上記米国出願公開の記載に基づいて合成できる他、一部は市販されている。色素(Dye)1の両親媒性インデックス(AI)および疎水性インデックスは、それぞれ4.95と3.77であり、1価の陽イオンを有する。色素(Dye)5の両親媒性インデックス(AI)および疎水性インデックスは、それぞれ5.11と4.32であり、1価の陽イオンを有する。色素(Dye)7の両親媒性インデックス(AI)および疎水性インデックスは、それぞれ4.19と3.29であり、1価の陽イオンを有する。色素(Dye)10の両親媒性インデックス(AI)および疎水性インデックスは、それぞれ4.25と5.71であり、1価の陽イオンを有する。色素(Dye)1、5、7及び10の疎水性インデックスは、CompuDrug社の計算ソフトPallasを用い、2種の独立したlogP算出指標( logP(annlogp) 、logP(atomic6) )に、実測値との一致性を高めるための係数を掛けた数値の和であるlogP(combined) = 0.863 × logP(annlogp) + 0.137 × logP(atomic6)の値として算出した。両親媒性インデックスは、logP(annlogp)の値からリン酸基 (P-0)を除いたものとして算出した。
【0035】
(2)小胞体局在を示すタンパク質に対して一定以上の親和性を有する物質の例としては、例えば、蛍光標識glibenclamide、および蛍光標識Brefeldin Aを挙げることができる。
【0036】
glibenclamideは、下記式で示される化合物であり、商品名:ER-Tracker(登録商標) Green (BODIPY(R) FL glibenclamide、ER-Tracker(登録商標) Red、(BODIPY(R) TR glibenclamideは、glibenclamideに蛍光色素(BODIPY)を結合させた化合物として市販されている。glibenclamide化合物は、小胞体に多いsulphonylurea receptors of ATP-sensitive K+ channelsに結合し、その作用を阻害することか知られており、糖尿病治療薬として用いられている。glibenclamideのATP-感受性 K+ channelへの解離定数は0.1〜3.6nMである。
【0038】
Brefeldin Aは、下記式で示される化合物であり、商品名:BODIPY-brefeldin AはBrefeldin Aに蛍光色素(BODIPY)が結合された化合物として市販されている。Brefeldin Aは、小胞体からゴルジ体への小胞輸送に働くGTP-exchanging factorであるArf1タンパク質の機能阻害を示す。
【0040】
<蛍光プローブ2>
本発明の第二の態様の蛍光プローブ(蛍光プローブ2)は、形質細胞及び形質芽細胞の同定又は単離に用いるための蛍光プローブであって、形質細胞及び形質芽細胞以外の細胞の核に対する親和性が、形質細胞及び形質芽細胞の核に対する親和性に比べて2倍以上高い蛍光プローブであって、該蛍光プローブによる染色により、形質細胞及び形質芽細胞並びに形質細胞及び形質芽細胞以外の細胞とを識別可能な蛍光プローブである。この蛍光プローブは、共存する可能性がある他の細胞の核を強染するが形質細胞及び形質芽細胞の核に対しては親和性の低い蛍光プローブである。そのため、蛍光プローブ2によりより強く染色された細胞を採取(除去)することで、試料中の形質細胞及び形質芽細胞の濃度を挙げることができる。形質細胞及び形質芽細胞以外の細胞の核内の染色体は凝集が緩やかであるのに対して、形質細胞及び形質芽細胞の核内の染色体はきつく凝集したヘテロクロマチン構造を呈している。その結果、染色体を選択的に染色する蛍光プローブは、形質細胞及び形質芽細胞以外の細胞の核に対してはより強い染色を示すのに対して、形質細胞及び形質芽細胞の核に対する染色は弱く、両者に差がでる。
【0041】
蛍光プローブ2は、形質細胞及び形質芽細胞以外の細胞核を染色した場合に得られる蛍光強度が、形質細胞及び形質芽細胞の核を染色した場合に得られる蛍光強度に比べて、好ましくは3倍以上、より好ましくは4倍以上高いものである。この蛍光強度比が高いほど、形質細胞及び形質芽細胞以外の細胞を含む細胞群の中から形質細胞及び形質芽細胞以外の細胞を効率よく同定でき、その結果、形質細胞及び形質芽細胞以外の細胞を効率よく分離除去することができる。形質細胞及び形質芽細胞以外の細胞としては、例えば、Tリンパ球、Bリンパ球、マクロファージ、好中球、好酸球、好塩基球等を挙げることができる。尚、赤血球及び血小板は無核のため蛍光プローブ2では染色されず、従って、蛍光プローブ2での染色を受けにくい形質細胞及び形質芽細胞との識別が困難である。
【0042】
蛍光プローブ2は、細胞核に対して、その他の細胞小器官等に比べて高い染色選択性を示す物質であればよい。細胞核に対して選択的に染色する物質であれば、形質細胞及び形質芽細胞の細胞核中のヘテロクロマチン構造に起因する染色体の低い染色性と、形質細胞及び形質芽細胞以外の細胞核中の染色体の染色性との違いにより生じる蛍光強度の違いが得られるからである。
【0043】
本発明において、本発明の蛍光プローブ2を用いて形質細胞及び形質芽細胞並びに形質細胞及び形質芽細胞以外の細胞との判別は以下のように行うことができる。蛍光プローブ2を細胞懸濁液に加え37℃にて30分間染色を行う。染色に適した蛍光プローブ2の濃度は、蛍光プローブの種類により異なるが、例えば、100nM〜1μMである。染色後、細胞をPBSにて洗浄する。洗浄した細胞は、例えば、(1)蛍光顕微鏡を用いて細胞における蛍光プローブの局在を観察すること、又は(2)細胞から発せられる蛍光の強度に基づいて、形質細胞及び形質芽細胞であるか、又は形質細胞及び形質芽細胞以外の細胞であるかを判別できる。形質細胞及び形質芽細胞並びに形質細胞及び形質芽細胞以外の細胞との判別方法については、形質細胞及び形質芽細胞の同定・分離方法において詳述する。
【0044】
さらに上記核に対する染色選択性決定方法を利用して、形質細胞及び形質芽細胞の核及び形質細胞及び形質芽細胞以外の細胞の核に対する親和性が未知の物質から蛍光プローブ2として利用可能な物質をスクリーニングすることもできる。蛍光プローブ2として利用可能な物質をスクリーニングする方法において用いる形質細胞及び形質芽細胞並びに形質細胞及び形質芽細胞以外の細胞の例としては、形質細胞及び形質芽細胞並びにTリンパ球、Bリンパ球、マクロファージ、好中球、好酸球、好塩基球等を挙げることができる。これらの細胞を用いることで、蛍光プローブ2として利用可能な物質のスクリーニングを容易にかつ簡便に実施することができる。尚、前述のように赤血球及び血小板は無核のため、核に対する染色選択性決定方法に用いる細胞としては適さない。
【0045】
最終分化し特定の遺伝子のみが多量に発現し、他の遺伝子の発現が抑制されているため、核内にヘテロクロマチン構造が顕著な細胞である形質細胞及び形質芽細胞と、増殖可能な細胞、又は最終分化をしても様々な遺伝子発現を行っているため核内にヘテロクロマチン構造が顕著に観察されない通常の細胞を用いて、蛍光プローブ2として利用可能な物質をスクリーニングすることができる。
【0046】
蛍光プローブ2の例としては、例えば、SYTO 59、SYTO 24等を挙げることができる。SYTO 59は、Cyanine 色素でありDNAと結合した際の最大吸収波長615nm,最大放出波長650nmの蛍光色素である。SYTO 24は、Cyanine 色素でありDNAと結合した際の最大吸収波長490nm,最大放出波長515nmの蛍光色素である。いずれも染色体を構成するDNAに対して選択的に結合する物質である。従って、蛍光プローブ2は、DNAに対して選択的に結合する物質の中から選択することができる。
【0047】
上記SYTO 59およびSYTO 24は、物質の特徴として、2個の窒素がポリメチレン鎖により連結されており、個々の窒素は独立に芳香環を形成する。窒素の少なくとも一つは4級アンモニウム基として陽電荷を有する。AI<8で-5<log P(cation)<0である。DNAに対して選択的に結合する物質としては、この性質を指標として選択することができる。
【0048】
本発明において、形質細胞及び形質芽細胞の同定又は単離の際に、形質細胞及び形質芽細胞と共存する可能性がある形質細胞及び形質芽細胞以外の細胞としては、例えば、Tリンパ球、Bリンパ球、マクロファージ、好中球、好酸球、好塩基球等を挙げることができる。これらの細胞の小胞体は、形質細胞及び形質芽細胞の小胞体に比べて発達しておらず、そのため、蛍光プローブ1で染色した場合、形質細胞及び形質芽細胞で得られる蛍光強度に比べて、両者の違いを識別できる程度に低い。逆に、これらの細胞の核は、ヘテロクロマチン構造を形成しておらず、そのため、蛍光プローブ2で染色した場合、形質細胞及び形質芽細胞で得られる蛍光強度に比べて、両者の違いを識別できる程度に高い。
【0049】
本発明の蛍光プローブ1および2は、いずれも、例えば、リンパ節組織、血球試料又は骨髄からの形質細胞及び形質芽細胞の同定及び単離に用いることができる。具体的には、動物より採取したリンパ節組織、血球試料又は骨髄より、常法により細胞懸濁液を調製し、調製された細胞懸濁液に蛍光プローブ1又は蛍光プローブ2を加え細胞染色を行い、これを、例えば、蛍光顕微鏡又はフローサイトメーターを用いて解析することで、蛍光プローブ1で染色した場合に高い蛍光強度が得られる細胞を形質細胞及び形質芽細胞の候補として挙げることができ、蛍光プローブ2で染色した場合に高い蛍光強度が得られる細胞を形質細胞及び形質芽細胞以外の細胞の候補として挙げることができる。また同様の方法によりセルソーターや蛍光顕微鏡に設置されたマイクロマニピュレーターを用いることで、形質細胞及び形質芽細胞又はその候補を細胞懸濁液から単離又は分離することも可能である。
【0050】
<形質細胞及び形質芽細胞の同定・分離方法1>
本発明は、リンパ節組織、血球試料又は骨髄中の形質細胞及び形質芽細胞を同定する方法、およびこの方法で同定された細胞を採取して、形質細胞及び形質芽細胞を得る方法を包含する。リンパ節組織、血球試料又は骨髄中の形質細胞及び形質芽細胞を同定する方法においては、蛍光プローブ1を用いる。
【0051】
具体的には、リンパ節組織、血球試料又は骨髄由来の細胞に蛍光プローブ1を添加して染色する。リンパ節組織、血球試料又は骨髄は、例えば、ヒト、類人猿、サル、イヌ、ネコ、ウマ、ウシ、ブタ、ヒツジ、ヤギ、ロバ、ラクダ、ラマ、アルパカ、トナカイ、スイギュウ、ヤク、モルモット、ウサギ、ミンク、マウス、ラット、スナネズミ、ハムスター、ゴールデンハムスター、アルメニアンハムスター、フェレット、ミニブタ、アライグマ、フクロネズミ、スンクス、カンガルー、イルカ、ニワトリ、ウズラ、又はダチョウ由来であることができる。
【0052】
リンパ節組織、血球試料又は骨髄は、例えば、以下のように調製することができる。皮下又はフットパッドに抗原を注射し約1ヶ月以上経過したマウスより、腫脹したリンパ節組織を外科的に取り出す。リンパ節に付随した組織を実体顕微鏡下で取り除いた後、ピンセットを用いリンパ節の皮膜を破ることでリンパ節内部の細胞をPBS溶液(10mM phosphate buffer、120mM NaCl、2.7mM KCl、pH 7.6)中に分散させる。血球試料は、免疫動物からヘパリン採血によって得られた血液を密度勾配遠心法により分離された単核球を用いる。骨髄は、免疫動物より取り出された大腿骨の両骨末端を切断し、一方の骨末端に挿入した注射針からPBS溶液を骨髄に流入させることで、他方の骨末端から流出させた骨髄細胞を用いる。
【0053】
リンパ節組織、血球試料又は骨髄に対する蛍光プローブ1の添加量は、検出器の感度、細胞懸濁液の組成、染色時間等を考慮して適宜決定できるが、例えば、ER-Tracker Blue white DPXの場合 100nM〜1μMの範囲であることができる。但し、この範囲に限定される意図ではない。
【0054】
蛍光プローブ1を用いて染色を施したリンパ節組織、血球試料又は骨髄は、蛍光に基づいて形質細胞及び形質芽細胞(又は形質細胞及び形質芽細胞の可能性が高い細胞)を同定する。形質細胞及び形質芽細胞を同定する方法には、前述のように、(1)染色を施した細胞における蛍光プローブの局在を蛍光顕微鏡下で観察する方法と、(2) 染色を施した細胞から発せられる蛍光強度に基づく方法がある。
【0055】
(1)蛍光顕微鏡を用いて細胞における蛍光プローブの局在を観察する方法は、細胞に含まれる小胞体の領域が強染色されている(即ち、強い蛍光を発している)が、観察対象である1つの細胞について、強染色されている小胞体の領域の面積的な割合が約65%以上である細胞を形質細胞及び形質芽細胞と同定できる。また、面積的な割合ではなく、その1つの細胞について、その細胞全体の蛍光強度を100%としたときに、小胞体からの蛍光強度の割合が約65%以上である細胞を形質細胞及び形質芽細胞と同定することもできる。形質細胞及び形質芽細胞の場合、一つの細胞全体からの蛍光強度のうち小胞体の占める蛍光強度が約65%であり、他の細胞小器官(ミトコンドリア、ゴルジ体、形質膜等)に35%蛍光色素が移行する。
【0056】
細胞全体の蛍光強度と小胞体からの蛍光強度の割合は、小胞体に局在するタンパク質の免疫染色(形質細胞及び形質芽細胞では免疫グロブリン)や、小胞体移行性の組換え蛍光タンパク質を培養細胞で発現させることで、細胞の小胞体を同定する方法を利用して、以下のように求めることができる。
【0057】
例えば293細胞を用い組換え蛍光タンパク質(赤)を培養細胞で発現させ、この細胞を蛍光プローブ1(例えばER-Tracker Blue White)で染色する。蛍光顕微鏡の画像解析装置を用い、細胞全体に占める蛍光プローブ1の蛍光強度を計測してAと表示し、及び組換え蛍光タンパク質(赤)で染色されている領域内(小胞体)の蛍光プローブ1の蛍光強度を計測してBと表示する。蛍光強度Bは小胞体に局在する蛍光プローブ1の量に相当する。そのため、1つの細胞全体からの蛍光強度Aに対するその細胞の小胞体からの蛍光強度Bの割合は、B/A x 100(%)として表示できる。実施例における結果では、形質細胞及び形質芽細胞では、1つの細胞全体に占めるER-tracker Blue/whiteの強度A、及び免疫グロブリン(緑)で染色されている領域内(小胞体)のER-tracker Blue/whiteの蛍光強度Bを計測したところ、B/A x 100の値が65%以上となった。
【0058】
(2)蛍光強度に基づく形質細胞及び形質芽細胞の同定は、例えば、蛍光スキャナー、蛍光顕微鏡、フローサイトメーター、セルソーター等により実施できる。蛍光プローブ1は、前述のように形質細胞及び形質芽細胞で得られる蛍光強度が形質細胞及び形質芽細胞以外の細胞で得られる蛍光強度に比べ、例えば、3倍以上、好ましくは4倍以上、さらに好ましくは5倍以上高い。そのため、蛍光プローブ1に染色された細胞から形質細胞及び形質芽細胞の候補を、上記蛍光スキャナー等を用いて蛍光強度に基づいて容易に同定できる。
【0059】
形質細胞及び形質芽細胞の候補として選択する基準としての蛍光強度比(形質細胞及び形質芽細胞/形質細胞及び形質芽細胞以外の細胞)を高く設定すればそれだけ、形質細胞及び形質芽細胞の候補に含まれる真の形質細胞及び形質芽細胞の比率は高まる。しかし、形質細胞及び形質芽細胞以外の細胞に比べれば高い蛍光強度を示すが、基準としての蛍光強度比未満の比較的低い蛍光強度しか示さない形質細胞及び形質芽細胞について、排除される可能性がある。従って、試料とするリンパ節組織又は血球試料に含まれる形質細胞及び形質芽細胞の特質、特に小胞体の発達の程度を考慮して、形質細胞及び形質芽細胞の候補として選択する基準としての蛍光強度比を選択することが好ましい。
【0060】
本発明の方法は、上記方法で同定された形質細胞及び形質芽細胞の候補をさらに採取(分取)することが好ましい。同定された細胞の採取は、例えば、セルソーターによる分取により行うことができる。蛍光に基づく形質細胞及び形質芽細胞の同定と蛍光に基づいて形質細胞及び形質芽細胞(又は形質細胞及び形質芽細胞の可能性が高い)と同定又は判断された形質細胞及び形質芽細胞の候補は、セルソーターにより分取される。
【0061】
<形質細胞及び形質芽細胞の同定・分離方法2>
本発明は、リンパ節組織、血球試料又は骨髄中の形質細胞及び形質芽細胞を同定する方法、およびこの方法で同定された細胞を採取して、形質細胞及び形質芽細胞を得る方法を包含する。リンパ節組織、血球試料又は骨髄中の形質細胞及び形質芽細胞を同定する方法においては、蛍光プローブ2を用いる。
【0062】
さらに本発明は、上記形質細胞及び形質芽細胞の同定・分離方法1で採取された細胞に蛍光プローブ2を用いて染色を施し、次いで試料中の蛍光強度に基づいて形質細胞及び形質芽細胞以外の細胞を同定し、同定された細胞を排除し、残りの細胞を形質細胞及び形質芽細胞として採取することを含む、形質細胞及び形質芽細胞の調製方法を包含する。但し、リンパ節組織、血球試料又は骨髄から調製された試料に対して蛍光プローブ2用いる本発明の形質細胞及び形質芽細胞の同定・分離方法を適用し、その上で、蛍光プローブ1用いる本発明の形質細胞及び形質芽細胞の同定・分離方法を適用することもできる。
【0063】
形質細胞及び形質芽細胞を同定する方法には、上記形質細胞及び形質芽細胞同定・分離方法1と同様に、(1)染色を施した細胞における蛍光プローブの局在を蛍光顕微鏡下で観察する方法と、(2) 染色を施した細胞から発せられる蛍光強度に基づく方法がある。
【0064】
細胞の蛍光プローブによる染色の条件や、蛍光プローブ局在の観察や蛍光強度の計測は、上記形質細胞及び形質芽細胞の同定・分離方法1と同様である。但し、蛍光プローブ2は、細胞核を選択的に染色し、形質細胞及び形質芽細胞以外のリンパ球例えばT細胞においては、蛍光顕微鏡を用いて細胞における蛍光プローブの局在を観察した際、細胞全体の蛍光強度を100%とした場合、細胞核の占める蛍光強度の割合が約70%以上である。
【0065】
蛍光プローブ2の場合も、蛍光プローブ1の場合と同様に培養細胞を用いて核の同定を行うことができる。即ち、核に局在するタンパク質の免疫染色、核移行性の組換え蛍光タンパク質の培養細胞での発現、既知の核染色性の蛍光色素(Hoechst 33342等)による染色等を用いることで、培養細胞の核を同定することができる。例えば293細胞を、Hoechst 33342(青)と蛍光プローブ2で細胞を共染色し、蛍光顕微鏡の画像解析装置を用いて、細胞全体に占める蛍光プローブ2の強度A、及びHoechst 33342で染色されている領域内(核)の蛍光プローブ2の蛍光強度Bを計測する。蛍光強度Bは核に局在する蛍光プローブ2の量を表す。そのため、B/A x 100 から、細胞核を染色した蛍光プローブ2の割合(%)が求まる。
【0066】
具体的には、リンパ節組織、血球試料若しくは骨髄から調製された試料又は上記形質細胞及び形質芽細胞同定・分離方法1で採取された形質細胞及び形質芽細胞の候補に蛍光プローブ2を添加して染色する。細胞に対する蛍光プローブ2の添加量は、検出機の感度、細胞懸濁液の組成、染色時間等を考慮して適宜決定できるが、例えば、10nM〜5μMの範囲であることができる。但し、この範囲に限定される意図ではない。
【0067】
蛍光プローブ2は、前述のように、形質細胞及び形質芽細胞以外の細胞の核に対する染色により得られる蛍光強度が、形質細胞及び形質芽細胞の核に対する染色により得られる蛍光強度に比べて、両者を識別可能な程度に高く、例えば、2倍以上高い。そのため、形質細胞及び形質芽細胞に加えて、形質細胞及び形質芽細胞以外の細胞を含む細胞群の中から形質細胞及び形質芽細胞以外の細胞を効率よく同定できる。
【0068】
形質細胞及び形質芽細胞に加えて、形質細胞及び形質芽細胞以外の細胞を含む細胞群の中から形質細胞及び形質芽細胞を候補として選択する基準としての蛍光強度比(形質細胞及び形質芽細胞以外の細胞/形質細胞及び形質芽細胞)を高く設定すればそれだけ、形質細胞及び形質芽細胞に含まれる形質細胞及び形質芽細胞以外の細胞の混入比率は低くなる。しかし形質細胞及び形質芽細胞以外の細胞に比べれば低い蛍光強度を示すが、基準としての蛍光強度比を超える比較的高い蛍光強度を示す形質細胞及び形質芽細胞について、排除される可能性がある。しかし、上記基準としての蛍光強度比を低く設定しすぎると形質細胞及び形質芽細胞に含まれる形質細胞及び形質芽細胞以外の細胞の混入比率が高まる。従って、試料とするリンパ節組織又は血球試料に含まれる形質細胞及び形質芽細胞の特質、特に車輻状核の発達の程度を考慮して、形質細胞及び形質芽細胞の候補として選択する基準としての蛍光強度比を選択することが好ましい。基準としての蛍光強度比を例えば、2倍に設定して、細胞を識別する場合と、4倍に設定して、細胞を識別する場合とでは、4倍に設定した場合の方が、形質細胞及び形質芽細胞に混在する形質細胞及び形質芽細胞以外の細胞を排除できる可能性は高くなる。しかし、基準としての蛍光強度比を高くすればするほど、形質細胞及び形質芽細胞に混在する形質細胞及び形質芽細胞を排除してしまう可能性も高くなることを考慮すべきである。
【0069】
蛍光プローブ2を用いて染色を施した細胞は、蛍光に基づいて形質細胞及び形質芽細胞以外(又は形質細胞及び形質芽細胞の可能性が低い細胞)を同定する。蛍光に基づく形質細胞及び形質芽細胞以外の同定は、例えば、前記蛍光プローブ1の場合と同様に実施できる。
【0070】
本発明の方法は、上記方法で同定された細胞をさらに採取(分取)して、形質細胞及び形質芽細胞(又は形質細胞及び形質芽細胞の可能性が高い細胞)と形質細胞及び形質芽細胞以外の細胞(又は形質細胞及び形質芽細胞の可能性が低い細胞)に分けることが好ましい。同定された細胞の分取は、セルソーターによる分取により行うことができる。
【0071】
上記蛍光プローブを用いる本発明の形質細胞及び形質芽細胞の同定・分離方法1及び2は、既知の細胞表面抗原に対する抗体を用いる方法と組み合わせることもできる。既知の細胞表面抗原に対する抗体を用いる方法と組み合わせることにより、用いる抗体の種類や特性によっては、形質細胞及び形質芽細胞の同定・分離をより高精度で行うことができる場合がある。
【0072】
既知の細胞表面抗原に対する抗体を用いる方法としては、例えば、以下の方法を挙げることができる。皮下又はフットパッドに抗原を注射し約1ヶ月以上経過したマウスの腫脹したリンパ節から得られた細胞を、形質細胞及び形質芽細胞の表面抗原の一つであるCD138をアロフィコシアニン標識抗CD138抗体によって染色し、更に細胞を前記蛍光プローブ1にて小胞体を染色することで、CD138陽性細胞の中から形質細胞及び形質芽細胞を選別することが可能となる。
【実施例】
【0073】
以下本発明を実施例によりさらに詳細に説明する。但し、本発明は以下の実施例に限定される意図はない。
【0074】
実験方法
1.マウスリンパ節からの形質細胞及び形質芽細胞の濃縮
6週齢のICRメスマウスのフットパッドに、同容量のアジュバント(Titer Max Gold)を加え乳化させたオワンクラゲ由来緑色蛍光タンパク質(GFP)50μgを注射した。免疫4週間後に膝下リンパ節を取り出し、これより細胞懸濁液を調製した。細胞懸濁液からの形質細胞及び形質芽細胞の濃縮は、細胞表面マーカーに対する抗体を用いた磁気ビーズ細胞分離法(ミルテニーバイオテク社、Plasma Cell アイソレーションキット)を用い、CD49b陰性、CD45R陰性、CD138陽性の細胞群を得た。
【0075】
2.蛍光プローブを用いた形質細胞及び形質芽細胞の同定
2-1.小胞体染色
小胞体親和性蛍光プローブとして、Invitrogen社のER-Tracker(登録商標) Blue-White DPX/lipidを用いた細胞染色を行った。すなわち細胞をRPMI1640培地1mlに懸濁した後、ER-Tracker(登録商標) Blue-White DPX/lipid溶液1μlを加え遮光下37℃にて15分間保温することで蛍光プローブの取り込みを行った。次に細胞を1,000rpm 5分の遠心分離により回収し、これをPBS溶液(10mM phosphate buffer、120mM NaCl、2.7mM KCl、pH 7.6)にて懸濁した。蛍光顕微鏡観察を行う場合、本細胞懸濁液の適量をポリリジンがコートされた培養皿にプレーティングし、細胞が培養皿底部に接着後4%ホルマリンPBS溶液にて室温で5分間固定し、オリンパスBX51蛍光顕微鏡にて染色画像の取り込みを行った。励起および蛍光検出は、WUフィルターを用いて実施した。
【0076】
2-2.核染色
ユウクロマチン親和性蛍光プローブとして、Invitrogen社のSYTO(登録商標) 59を用いた細胞染色を行った。すなわち細胞をRPMI1640培地1mlに懸濁した後、SYTO(登録商標) 59溶液1μlを加え遮光下37℃にて15分間保温することで蛍光プローブの取り込みを行った。次に細胞を1,000rpm 5分の遠心分離により回収し、これをPBSにて懸濁した。顕微鏡観察は上記と同様の方法で行った。励起および蛍光検出は、WIGフィルターを用いて実施した。
【0077】
2-3.小胞体並びに核染色
細胞の小胞体及び核の二重染色は、始めに2-2の方法に従ってSYTO(登録商標) 59による核染色を行った後、2-1の方法に従ってER-Tracker(登録商標) Blue-White DPX/lipidによる染色を行った。
【0078】
3.セルソーターを用いた形質細胞及び形質芽細胞の分取
GFP免疫マウスより調製した細胞懸濁液を上記の方法に従いSYTO(登録商標) 59並びにER-Tracker(登録商標) Blue-White DPX/lipidを用いて染色し、最終細胞濃度が約1〜5 x 10
6/mlとなるようにPBS溶液にて調製した。形質細胞及び形質芽細胞の分離は、ベイバイオサイエンス社のJSAN セルソーターを用い、SYTO(登録商標) 59シグナルをFL3、ER-Tracker(登録商標) Blue-White DPX/lipidシグナルをFL7チャンネルにて検出した。形質細胞及び形質芽細胞を他の細胞と分離するためのゲート設定は、FL7チャンネルゲートが平均シグナル値の4倍、FL3チャンネルゲートを平均シグナル値の0.5倍とした。
【0079】
4.細胞内免疫グロブリンの染色
磁気ビーズ細胞分離法により得られた細胞群又はセルソーターによる分取を行った後の細胞を2-1に記載の方法に従って培養皿底面に固定化し、染色画像の取り込みを行った。次に細胞膜を0.1%TritonX-100を含むPBS溶液にて可溶化後、InvitrogenのAlexafluor488標識抗マウス免疫グロブリン抗体を用いて細胞染色を行い、染色画像の取り込みを行った。
【0080】
実験結果
実施例1
小胞体を染色する蛍光プローブを用いた形質細胞及び形質芽細胞の同定
GFP免疫マウスリンパ節より、実験方法1に記載の手法に従いCD49b陰性、CD45R陰性、CD138陽性の細胞群を得た。これら細胞をER-Tracker(登録商標) Blue-White DPX/lipidにて染色し、蛍光顕微鏡にて観察を行った。結果を
図1に示す。本プローブにより約20%の細胞が強い蛍光を発しており、これらの細胞では細胞質全体に発達した小胞体領域が濃染されていた。残りの細胞の多くは弱い蛍光を発しており、これらの細胞では細胞膜領域と小型の小胞体が弱染されていた。強い蛍光を発している細胞と残りの弱い蛍光を発している細胞の蛍光強度の比率は、約5:1であった。そこで本プローブで強染された細胞が形質細胞及び形質芽細胞であるか否かを明らかにするため、実験方法4に記載の細胞内部に存在する免疫グロブリンの検出を行った。その結果本プローブ強陽性の細胞のほとんどが、マウスIgGを発現する形質細胞及び形質芽細胞であることが明らかになった。以上の結果より、小胞体を染色する蛍光プローブを用いることで、形質細胞及び形質芽細胞を簡便に同定することが可能であることが判明した。
【0081】
実施例2
小胞体親和性蛍光プローブとユウクロマチン親和性蛍光プローブを用いた形質細胞及び形質芽細胞の同定
実験方法1に記載の手法に従い得られたCD49b陰性、CD45R陰性、CD138陽性の細胞群を用い実験方法2-2及び2-3に記載の方法に従って、SYTO(登録商標) 59並びにER-Tracker(登録商標) Blue-White DPX/lipidを用いた細胞染色を行った。結果を
図2に示す。ER-Tracker(登録商標) Blue-White DPX/lipidに強染される細胞のほとんどが、SYTO(登録商標) 59では弱く染色されていることが明らかになった。細胞核が濃染されている細胞と細胞核が弱く染色されている細胞のSYTO58の蛍光強度の比率は、約4:1であった。
【0082】
以上の細胞染色結果は、形質細胞及び形質芽細胞のもつ特異的な形態(発達した小胞体とヘテロクロマチンに富む車輻状核)とよく合致するものであり、よって小胞体親和性蛍光プローブとユウクロマチン親和性蛍光プローブの2種類を組み合わせることで、より精度の高い形質細胞及び形質芽細胞の同定が可能であることが判明した。
【0083】
実施例3
リンパ節細胞集団中の形質細胞及び形質芽細胞の割合は約0.1%以下である。この細胞集団から細胞表面抗体を用いず高純度の形質細胞及び形質芽細胞を得るために、上記の蛍光プローブとセルソーターを用いた形質細胞及び形質芽細胞の分取を試みた。GFP免疫マウスリンパ節より調製した細胞懸濁液を用い、実験方法2-3に従って小胞体及び核の二重染色を行い、実験方法3に記載のセルソーターを用いた形質細胞及び形質芽細胞の分取法に従って実験を行った。
【0084】
セルソーターによりBlue-White DPX/lipid強陽性且つSYTO(登録商標) 59弱陽性の細胞群を分取した。分取されたBlue-White DPX/lipid強陽性且つSYTO(登録商標) 59弱陽性の細胞について、形質細胞及び形質芽細胞が占める割合を明らかにするため、実験方法4に記載の手法に従って細胞内部に存在する免疫グロブリンの検出を行った。結果を
図3に示す。その結果、得られた細胞の約75%が形質細胞及び形質芽細胞であることが判明した(
図3 矢印は免疫グロブリン陰性細胞を示す)。以上の結果より、形質細胞及び形質芽細胞のもつ特異的な形態を利用した蛍光プローブ染色を行うことで、従来の細胞表面抗体に依存した形質細胞及び形質芽細胞の分離法と比べ遙かに優れた形質細胞及び形質芽細胞の分離が可能であることが判明した。
【0085】
実施例4 ラット形質細胞の同定
実験方法
免疫動物はウイスター系ラット♀6週齢を用いた。抗原としては卵白アルブミンを用いた。免疫は、ラット尾根部の両側に卵白アルブミン50μgを一ヶ月おきに3回筋肉注射した。免疫成立後、ラットより腸骨リンパ節を採取した。細胞を0.5%牛血清アルブミン含有PBSにて懸濁後、DMEM培地に懸濁させ、ER-Tracker (1μM)を加え5分間室温で放置することで小胞体を染色した。細胞をPBSで洗浄後、形質細胞画分をER-tracker強陽性細胞としてセルソーターにて分離した。
【0086】
結果
ER-trackerを用いて分離したラット形質細胞において、形質細胞及び形質芽細胞が占める割合を明らかにするため、実験方法4に記載の手法に従って細胞内部に存在する免疫グロブリンの検出を行った。結果を
図4に示す。左はヘキスト33342で細胞核を染色したもの。右は細胞内免疫グロブリンを、FITC標識抗ラット抗体で染色したもの。ほとんどの細胞が細胞内に免疫グロブリンを有することから、分収された細胞が形質細胞であることが明らかである。
【0087】
実施例5 モルモット形質細胞の同定
実験方法
免疫動物はHartleyモルモット♀6週齢を用いた。抗原としては卵白アルブミンを用いた。免疫は、モルモット尾根部の両側に卵白アルブミン50μgを一ヶ月おきに3回筋肉注射した。免疫成立後、モルモットより腸骨リンパ節を採取した。細胞を0.5%牛血清アルブミン含有PBSにて懸濁後、DMEM培地に懸濁させ、ER-Tracker (1μM)を加え5分間室温で放置することで小胞体を染色した。細胞をPBSで洗浄後、形質細胞画分をER-tracker強陽性細胞としてセルソーターにて分離した。
【0088】
結果
ER-trackerを用いて分離したモルモット形質細胞において、形質細胞及び形質芽細胞が占める割合を明らかにするため、実験方法4に記載の手法に従って細胞内部に存在する免疫グロブリンの検出を行った。結果を
図5に示す。左は小胞体親和性蛍光色素(ER-ID
TM, ENZO Life Sciences社)を用い小胞体を染色したもの。右は細胞内免疫グロブリンを、FITC標識抗モルモット抗体で染色したもの。ほとんどの細胞が発達した小胞体と細胞内に免疫グロブリンを有することから、分収された細胞が形質細胞であることが明らかである。
【0089】
以上の結果より、本発明を用いることで高純度の形質細胞及び形質芽細胞を動物種の如何を問わず分離できることが明らかになった。