【氏名又は名称原語表記】SHANGHAI INSTITUTES FOR BIOLOGICAL SCIENCES CHINESE ACADEMY OF SCIENCES
【文献】
" Arabidopsis thaliana mRNA for cytochrome P450 like protein, complete cds, clone: RAFL09-95-E07 ", AK227205, [online], National Center for Biotechnology Information, 2006年7月27日掲載, 2012年8月29日,URL,http://www.ncbi.nlm.nih.gov/nuccore/AK227205
【文献】
" At5g24900 (Cytochrome P450 like protein) ",Q6NKZ8_ARATH, [online], National Center for Biotechnology Information, 2006年11月28日掲載, 2012年8月,URL,http://www.ncbi.nlm.nih.gov/protein/Q6NKZ8
【文献】
" Arabidopsis thaliana At5g24900 gene, complete cds ",BT012545, [online], National Center for Biotechnology Information, 2004年4月23日掲載, 2012年8月29日,URL,http://www.ncbi.nlm.nih.gov/nuccore/BT012545
【文献】
"Arabidopsis thaliana At5g24900 gene, complete cds",BT011240, [online], National Center for Biotechnology Information, 2004年1月14日掲載, 2012年8月29日,URL,http://www.ncbi.nlm.nih.gov/nuccore/BT011240
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、草高調節遺伝子およびその使用を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の態様では、本発明は、(a)配列番号3に記載のアミノ酸配列を有するポリペプチド、および(b)配列番号3に記載のアミノ酸配列中に1つまたは複数のアミノ酸残基の置換、欠失または付加を含み、かつ草高調節機能を有する、(a)に由来するポリペプチドからなる群から選択される、単離された草高調節ポリペプチドを提供する。
【0007】
好ましい実施形態では、前記ポリペプチドは、配列番号3に記載のアミノ酸配列を有するポリペプチドである。
【0008】
第2の態様では、本発明は、それぞれが、(a)上述のポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、および(b)(a)に記載のポリヌクレオチドに相補的なポリヌクレオチドからなる群から選択されるヌクレオチド配列を有する、単離されたポリヌクレオチドを提供する。
【0009】
好ましい実施形態では、ポリヌクレオチドは、配列番号3に記載のアミノ酸配列有するポリペプチドをコードする。
【0010】
別の好ましい実施形態では、ポリヌクレオチドの配列は、配列番号2に記載のヌクレオチド配列、または配列番号1に記載のヌクレオチド配列を有する。
【0011】
第3の態様では、本発明は、それぞれが上述のポリヌクレオチドを含むベクターを提供する。
【0012】
第4の態様では、本発明は、それぞれが上述のベクターを含む遺伝子操作された宿主細胞を提供する。
【0013】
第5の態様では、本発明は、それぞれが上述のポリヌクレオチドを含む植物を提供する。
【0014】
第6の態様では、本発明は、上述の植物を生産する方法であって、上述のポリヌクレオチドを植物に導入するステップを含む方法を提供する。
【0015】
好ましい実施形態では、上述の方法は、(1)上述のポリヌクレオチドを含有する発現ベクターを保有するアグロバクテリウム(Agrobacterium)細胞を用意するステップと、(2)植物の細胞、組織または器官をステップ(1)に記載のアグロバクテリウム(Agrobacterium)細胞と接触させて、前記ポリヌクレオチドを植物細胞に導入し、ポリヌクレオチドが植物細胞の染色体に組み込まれることを可能にするステップと、(3)前記ポリヌクレオチドを含有する植物細胞、組織または器官を選択するステップと、(4)ステップ(3)に記載の植物細胞、組織または器官が新規な植物を再生することを可能にするステップとを含む。
【0016】
第7の態様では、本発明は、植物を生産する方法を提供する。それぞれの方法は、導入されたポリヌクレオチドを有する植物を非トランスジェニック植物と交雑し、それによって、前記ポリヌクレオチドを含有するハイブリッド子孫を得るステップを含む。
【0017】
第8の態様では、本発明は、上述のポリペプチドを生産する方法を提供する。1つの方法は、(a)発現に適した条件下で前記ポリヌクレオチドを含有する宿主細胞を培養するステップと、(b)培養物から前記ポリペプチドを単離するステップとを含む。
【0018】
第9の態様では、本発明は、作物の草高、容積、分げつ、収量、花器サイズもしくは種子サイズの調節、または 作物の草高、容積、分げつ、収量、花器サイズもしくは種子サイズを調節する物質の調製における、上述のポリペプチドまたはそれをコードするポリヌクレオチドの使用を提供する。
【0019】
第10の態様では、本発明は、作物の草高、容積、分げつ、収量、花器サイズまたは種子サイズを調節する方法を提供する。1つの方法は、作物における草高調節遺伝子の発現または活性を調節するステップを含む。
【0020】
別の好ましい実施形態では、作物における、草高調節遺伝子の活性または発現の亢進によって、草高および容積の低減ならびに分げつおよび収量の増大を実現でき、作物における、草高調節遺伝子の発現または活性の阻害によって、花器サイズ、種子サイズ、草高または容積の増大を実現できる。
【0021】
第11の態様では、本発明は、上述の草高調節ポリペプチドまたはそれをコードする遺伝子のアゴニストもしくはアンタゴニストを提供する。
【0022】
第12の態様では、本発明は、植物の茎または葉における特異的発現のためのプロモーターを提供する。1つのプロモーターは、(1)配列番号13に記載のヌクレオチド配列を有するポリヌクレオチド、(2)(1)に記載のポリヌクレオチド配列にストリンジェントな条件下でハイブリダイズでき、かつ植物の茎または葉における標的遺伝子の特異的発現を誘導できるポリヌクレオチド、(3)配列番号13に記載のヌクレオチド配列と70%超(好ましくは80%超、より好ましくは90%超、最も好ましくは98%、99%など95%超)の同一性を有し、かつ植物の茎または葉における標的遺伝子の特異的発現を誘導できるポリヌクレオチドからなる群から選択される。
【0023】
第13の態様では、本発明は、植物の茎または葉における標的遺伝子の特異的発現を誘導するための前記プロモーターの使用に関する。
【0024】
第14の態様では、本発明は、それぞれが、植物の茎または葉における特異的発現のための上述のプロモーターを含む構築物を提供する。
【0025】
別の好ましい実施形態では、上述の構築物が、植物の茎または葉における特異的発現のためのプロモーターの下流にあり、かつそれに作動可能に連結している、標的遺伝子を挿入するための少なくとも1箇所のポリクローナルな部位(制限部位など)を含む。
【0026】
別の好ましい実施形態では、前記構築物が発現ベクターである。
【0027】
別の好ましい実施形態では、前記構築物が、相互に作動可能に連結している以下のエレメント:前記プロモーターと標的遺伝子とを含む。
【0028】
別の好ましい実施形態では、前記標的遺伝子が外因性遺伝子である。
【0029】
別の好ましい実施形態では、前記標的遺伝子が構造遺伝子である。
【0030】
別の好ましい実施形態では、前記標的遺伝子が、特定の機能を有するタンパク質をコードしうる。
【0031】
別の好ましい実施形態では、前記標的遺伝子が、前記プロモーターの下流2000bp未満(好ましくは1000bp未満、より好ましくは500bp未満、最も好ましくは300bp未満)に位置している。
【0032】
例えば、本発明は、以下の態様であってよい。
[態様1]
(a)配列番号3に記載のアミノ酸配列を有するポリペプチド、および
(b)配列番号3に記載のアミノ酸配列中の1つまたは複数のアミノ酸残基の置換、欠失または付加を含み、かつ草高調節機能を有する、(a)に由来するポリペプチド
からなる群から選択される、単離された草高調節ポリペプチド。
[態様2]
配列番号3に記載のアミノ酸配列を有するポリペプチドである、態様1に記載のポリペプチド。
[態様3]
(a)態様1に記載のポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、および
(b)(a)に記載のポリヌクレオチドに相補的なポリヌクレオチド
からなる群から選択されるヌクレオチド配列を含む、単離されたポリヌクレオチド。
[態様4]
配列番号3に記載のアミノ酸配列を有するポリペプチドをコードする、態様3に記載のポリヌクレオチド。
[態様5]
(i)配列番号2に記載のヌクレオチド配列、または
(ii)配列番号1に記載のヌクレオチド配列
を含む、態様3に記載のポリヌクレオチド。
[態様6]
態様3から5のいずれか一項に記載のポリヌクレオチドを含むベクター。
[態様7]
態様6に記載のベクターを含む遺伝子操作された宿主細胞。
[態様8]
態様3から5のいずれか一項に記載のポリヌクレオチドを含む植物。
[態様9]
植物を生産する方法であって、態様3から5のいずれか一項に記載のポリヌクレオチドを植物内に導入するステップを含む方法。
[態様10]
(1)態様3から5のいずれか一項に記載のポリヌクレオチドを含有する発現ベクターを保有するアグロバクテリウム(Agrobacterium)を用意するステップと、
(2)前記植物の細胞、組織または器官を、ステップ(1)に記載のアグロバクテリウム(Agrobacterium)と接触させて、態様3から5のいずれか一項に記載のポリヌクレオチドを前記植物細胞に導入し、それらが前記植物細胞の染色体に組み込まれることを可能にするステップと、
(3)態様3から5のいずれか一項に記載のポリヌクレオチドを含有する植物の細胞、組織または器官を選択するステップと、
(4)ステップ(3)に記載の植物の細胞、組織または器官が新規な植物を再生することを可能にするステップと
を含む、態様9に記載の方法。
[態様11]
植物を生産する方法であって、態様3から5のいずれか一項に記載のポリヌクレオチドを有する植物を非トランスジェニック植物と交雑し、それによって、態様3から5のいずれか一項に記載のポリヌクレオチドを含有するハイブリッド子孫を得るステップを含む方法。
[態様12]
態様1に記載の単離されたポリペプチドを生産する方法であって、
(1)発現に適した条件下で態様7に記載の宿主細胞を培養するステップと、
(2)培養物から態様1に記載のポリペプチドを単離するステップと
を含む方法。
[態様13]
作物の草高、容積、分げつ、収量、花器サイズもしくは種子サイズの調節、または
作物の草高、容積、分げつ、収量、花器サイズ、もしくは種子サイズを調節する物質の調製
における、態様1または2に記載のポリペプチドまたはそれをコードするポリヌクレオチドの使用。
[態様14]
作物の草高、容積、分げつ、収量、花器サイズまたは種子サイズを調節する方法であって、作物における草高調節遺伝子の発現または活性を調節するステップを含む方法。
[態様15]
態様1に記載の草高調節ポリペプチドまたはそれをコードする遺伝子のアゴニストもしくはアンタゴニスト。
[態様16]
植物の茎および葉における特異的発現のためのプロモーターであって、
(1)配列番号13に記載のヌクレオチド配列を有するポリヌクレオチド、
(2)(1)に記載のポリヌクレオチドにストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ植物の茎または葉における標的遺伝子の特異的発現を誘導するポリヌクレオチド、および
(3)配列番号13に記載のヌクレオチド配列と70%超の同一性を有し、かつ植物の茎または葉における標的遺伝子の特異的発現を誘導するポリヌクレオチド
からなる群から選択されるプロモーター。
[態様17]
植物の茎または葉における標的遺伝子の特異的発現の誘導における、態様16に記載のプロモーターの使用。
[態様18]
態様16に記載の、植物の茎または葉における特異的発現のためのプロモーターを含む構築物。
[態様19]
相互に作動可能に連結した以下のエレメント:
態様16に記載のプロモーターと
標的遺伝子と
を含む、態様18に記載の構築物。
【0033】
本明細書に示す記述に照らして、本発明の他の態様は、当業者には明らかであろう。
【発明を実施するための形態】
【0035】
広範な研究によって、本発明者らは、作物の草高、容積、分げつ、収量、花器サイズおよび種子サイズを調節するのに有用なELb遺伝子を発見した。この遺伝子の発現を亢進することによって、作物の草高および容積を低減し、かつ有効分げつ数および収量を増大させることが可能である。この遺伝子の発現を低減することによって、花器サイズおよび種子サイズを増大させることも可能である。本発明はこれらの新知見に基づいている。
【0036】
本明細書で使用される場合、「作物(単数)」または「作物(複数)」という用語には、イネ科(Gramineae)、アブラナ科(Cruciferae)および木本植物(xylophyta)などが含まれるが、これらに限定されない。限定されるものではないが、イネ科(Gramineae)にイネ、コムギ、オオムギ、トウモロコシおよびソルガムなどが含まれるか、限定されるものではないが、アブラナ科(Cruciferae)にシロイヌナズナ(Arabidopsis)が含まれることがより好ましい。
【0037】
本明細書で使用される場合、「単離された」とは、その元の環境から単離されている物質を指す(元の環境とは天然物質の天然の環境である)。例えば、生細胞内の天然のポリヌクレオチドおよびポリペプチドは、単離されても、精製されてもいないが、ポリヌクレオチドおよびポリペプチドが、天然の状態で通常それらに随伴している他の物質から分離されている場合には、それらは単離または精製されている。
【0038】
本明細書で使用される場合、「単離された草高調節ポリペプチド」、「単離されたELbタンパク質」または「単離されたELbポリペプチド」とは、天然な状態でELbタンパク質に随伴する他のタンパク質、脂質、糖またはその他の物質を実質的に伴わないELbタンパク質を指す。当業者ならば、標準的なタンパク質精製技術を用いて、ELbタンパク質を精製することができる。実質的に純粋なポリペプチドは、非還元ポリアクリルアミドゲル中で単一の主要バンドを形成する。
【0039】
本明細書で使用される場合、「含有する」、「有する」または「含む」という用語には、「含まれる」、「から主に構成される」、「から実質的に構成される」および「から構成される」の意味が含まれ、「から主に構成される」、「から実質的に構成される」および「から構成される」は、「含有する」、「有すること」または「含む」の特定的用語である。
【0040】
ELbポリペプチドおよびその使用
本発明のポリペプチドは、組換えポリペプチド、天然ポリペプチドまたは合成ポリペプチドでありえ、組換えポリペプチドであることが好ましい。本発明のポリペプチドは、精製された天然産物、もしくは化学合成産物、または原核細胞宿主もしくは真核細胞宿主(細菌、酵母、高等植物、昆虫および哺乳動物細胞など)から組換え技術を用いて得られる産物でありうる。本発明のポリペプチドは、組換え産生に使用される宿主細胞に応じて、グリコシル化されている可能性も、グリコシル化されていない可能性もある。本発明のポリペプチドは、開始部位にメチオニン残基を含むものでもよく、含まないものでもよい。
【0041】
本発明は、ELbタンパク質の断片、誘導体および類似体をさらに含む。本明細書で使用される場合、「断片」、「誘導体」および「類似体」という用語は、本発明のELbポリペプチドと実質的に同じ生物学的機能または活性を保持するポリペプチドを指す。本発明の断片、誘導体および類似体は、(i)1つもしくは複数の保存もしくは非保存アミノ酸残基(好ましくは保存残基)の置換を有するポリペプチドであって、前記置換されている残基が遺伝暗号によってコードされるものでもよく、コードされないものでもよいポリペプチド、または(ii)1つもしくは複数のアミノ酸残基内に置換基(単数または複数)を有するポリペプチド、または(iii)別の化合物(ポリペプチドの半減期を延長できる化合物など、例えばポリエチレングリコール)に結合した成熟ポリペプチド由来のポリペプチド、または(iv)追加のアミノ酸配列(例えば、先導配列、分泌配列、前記ポリペプチドを精製するのに使用される配列、タンパク新生(proteinogen)配列または融合タンパク質)に結合した前記ポリペプチド由来のポリペプチドでありうる。本明細書における定義では、これらの断片、誘導体および類似体は当業者によく知られている。
【0042】
本発明において、「ELbタンパク質」という用語は、ELbタンパク質の活性を有する、配列番号3に記載のポリペプチドを意味する。この用語には、ELbタンパク質と同じ機能を有する、配列番号3のポリペプチドの変異体も含まれる。これらの変異体には、数アミノ酸(通常1〜50、好ましくは1〜30、より好ましくは1〜20、最も好ましくは1〜10、さらにより好ましくは1〜8または1〜5アミノ酸)の欠失、挿入および/または置換、ならびにC末端および/またはN末端への1または複数のアミノ酸(通常20未満、好ましくは10未満、より好ましくは5未満のアミノ酸)の付加が含まれる(但しこれらに限定されない)。例えば、タンパク質の機能は通常、同じ特性または類似の特性を有する別のアミノ酸で1アミノ酸を置換することによって変化しない。別の例として、タンパク質の機能は通常、C末端および/またはN末端への1または数アミノ酸の付加によっても変化しない。この用語ELbタンパク質には、ELbタンパク質の活性な断片および誘導体も含まれる。
【0043】
ポリペプチドの変異体には、相同配列、保存的変異体、対立遺伝子変異体、自然変異体、誘発変異体、高ストリンジェントまたは低ストリンジェント条件下でELbタンパク質コードDNA配列とハイブリダイズするDNA配列によってコードされているタンパク質、およびELbタンパク質に対する抗体を用いて得られるポリペプチドまたはタンパク質が含まれる。本発明は、ELbタンパク質またはその断片を含む融合タンパク質などの他のポリペプチドも提供する。ほぼ完全長のポリペプチドに加えて、本発明は、ELbタンパク質の可溶性断片をさらに含む。これらの断片は、ELbタンパク質配列における、通常少なくとも約20の連続したアミノ酸、典型的には少なくとも約30の連続したアミノ酸、好ましくは少なくとも約50の連続したアミノ酸、より好ましくは少なくとも約80の連続したアミノ酸、最も好ましくは少なくとも約100の連続したアミノ酸を含む。
【0044】
本発明は、ELbタンパク質またはポリペプチドの類似体をさらに提供する。これらの類似体と天然ELbタンパク質との相違は、アミノ酸配列の相違、いかなる配列変化ももたらさない修飾パターンの相違、またはこれらの両方でありうる。これらのポリペプチドには、天然の変異体も、誘発された遺伝変異体も含まれる。誘発変異体は、放射線照射または変異原への曝露によるランダム変異導入に加えて、部位特異的変異導入または他の知られている分子生物学技術などの様々な技術によって得ることができる。これらの類似体には、天然のL−アミノ酸残基とは異なる残基(例えばD−アミノ酸)を含有する類似体、および天然には存在しないアミノ酸または合成アミノ酸(例えばβ、γ−アミノ酸)を含有する類似体が含まれる。本発明のポリペプチドは上述の代表的ポリペプチドに限定されないことを理解するべきである。
【0045】
修飾(通常は一次構造変化をもたらさない)形態には、アセチル化またはカルボキシ化形態など、in vivoまたはin vitroにおけるペプチドの化学的に誘導された形態が含まれる。修飾にはグリコシル化も含まれる。修飾形態には、リン酸化アミノ酸(例えば、ホスホチロシン、ホスホセリン、ホスホトレオニン)を含有する配列、またはタンパク質分解に対する耐性を亢進するか、溶解性を最適化するように修飾されているポリペプチドも含まれる。
【0046】
本発明では、「ELbタンパク質の保存的変異ポリペプチド」とは、配列番号3に記載のアミノ酸配列と比較して、類似または匹敵する特性を有する他のアミノ酸によって置換されている最大20アミノ酸まで、好ましくは最大でも10、より好ましくは最大でも5、最も好ましくは最大でも3アミノ酸を含有するポリペプチドを指す。これらの保存的変異ペプチドは、表1に記載のアミノ酸の置換によって生成されることが好ましい。
【0048】
本発明は、本発明のELbタンパク質またはその保存的変異ポリペプチドとコードするポリヌクレオチド配列をさらに提供する。
【0049】
本発明のポリヌクレオチドは、DNAでもよく、RNAでもよい。DNAには、cDNA、ゲノムDNAまたは人工的合成DNAが含まれる。DNAは、一本鎖でもよく、2本鎖でもよい。DNAは、コード鎖でもよく、非コード鎖でもよい。成熟ポリペプチドをコードするコード領域配列は、配列番号2に記載のコード領域配列と同じものでもよく、その縮重変異体でもよい。本明細書で使用される場合、「縮重変異体」とは、配列番号3に記載の配列を有するタンパク質をコードしているが、配列番号2に記載のコード領域配列とは異なっているポリヌクレオチド配列を意味する。
【0050】
配列番号3に記載の成熟ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドには、成熟ポリペプチドのみをコードするコード配列、成熟ポリペプチドと様々な追加コード配列とをコードする配列、成熟ポリペプチドをコードする配列(および任意の追加コード配列)および非コード配列が含まれる。
【0051】
「ポリペプチドをコードしているポリヌクレオチド」という用語は、そのポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、または追加のコード配列および/もしくは非コード配列をさらに含有するポリヌクレオチドを指す。
【0052】
本発明は、本明細書に記載のものと同じアミノ酸配列を有するポリペプチドまたはその断片、類似体および誘導体をコードする、上記ポリヌクレオチドの変異体にも関する。このポリヌクレオチドの変異体は、天然に存在する対立遺伝子変異体でもよく、天然に存在しない変異体でもよい。これらのヌクレオチド変異体には、置換変異体、欠失変異体および挿入変異体が含まれる。当技術分野で知られている通り、対立遺伝子変異体は、あるポリヌクレオチドの代替物であり、それは、この変異体によってコードされているポリペプチドにおいて実質的な機能変化をもたらさない1つまたは複数の、置換、欠失または挿入されたヌクレオチドを含有しうる。
【0053】
本発明は、上述の配列にハイブリダイズするポリヌクレオチドであって、上述の配列と少なくとも50%、好ましくは少なくとも70%、より好ましくは少なくとも80%の同一性を有するポリヌクレオチドにも関する。本発明はとりわけ、本明細書に記載のポリヌクレオチドにストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチドに関する。本発明では、「ストリンジェントな条件」とは、(1)0.2×SSC、0.1%SDS、60℃など、より低イオン強度かつ高温下でのハイブリダイゼーションおよび洗浄、または(2)50%(v/v)ホルムアミド、0.1%ウシ血清/0.1%フィコール、42℃など、変成剤存在下でのハイブリダイゼーション、または(3)少なくとも80%、好ましくは少なくとも90%、より好ましくは95%超の同一性を有する2つの配列間のみで起こるハイブリダイゼーションを指す。さらに、ハイブリダイズ可能なポリヌクレオチドによってコードされているポリペプチドの生物学的機能および活性は、配列番号3に記載の成熟ポリペプチドのものと同じである。
【0054】
本発明は、上述の配列にハイブリダイズするポリヌクレオチド断片にも関する。本明細書で使用される場合、「ポリヌクレオチド断片」は、長さが少なくとも15ヌクレオチド、好ましくは少なくとも30ヌクレオチド、より好ましくは少なくとも50ヌクレオチド、最も好ましくは少なくとも100ヌクレオチド超を含む。ポリヌクレオチド断片は、ELbタンパク質をコードするポリヌクレオチドを決定および/または単離するための核酸増幅技術(例えばPCR)で使用できる。
【0055】
本発明の実施形態によれば、ELb遺伝子はシロイヌナズナ(Arabidopsis)由来のものが好ましいと理解するべきである。しかし、本発明の実施形態には、シロイヌナズナ(Arabidopsis)のELb遺伝子と高い相同性(例えば、70%、80%、85%、90%、95%、さらには98%など60%超の配列同一性)を有し、かつ他の植物に由来する他の遺伝子も含まれる。配列の同一性または相同性を決定するアラインメント方法および手段(BLASTなど)は当技術分野でよく知られている。
【0056】
本発明のELbタンパク質をコードする完全長ヌクレオチド配列またはその断片は、PCR増幅、組換え技術または化学合成を用いて生成できる。PCR増幅には、関連のヌクレオチド配列、詳細には、開示されているオープンリーディングフレームの配列に従ってプライマーを設計することができ、市販のcDNAライブラリーまたは当業者に知られている日常的方法で作製されたcDNAライブラリーを鋳型として用いることができる。これらのプライマーおよびライブラリーを用いて、PCR増幅を行って、所望の配列を得ることができる。配列が長い場合には、通常、2回または複数回のPCRを行って、その後増幅された断片を正しい順序に連結する必要がある。
【0057】
ひとたび所望の配列が得られたならば、組換え技術によって、多量の所望の配列を得ることができる。通常、所望の配列をベクター内にクローニングし、そのベクターを細胞内に導入し、その後、増殖した宿主細胞から日常的方法によって所望の配列を単離する。
【0058】
加えて、所望の配列、とりわけ短い断片を化学合成で生成させることができる。一般的には、複数の小断片が最初に合成され、その後、一緒に連結されて、長い断片を生成する。
【0059】
現在では、本発明のタンパク質をコードするDNA配列(またはその断片もしくは誘導体)を専ら化学合成のみで得ることが可能である。その後、このDNAを様々な既存のDNA分子(例えばベクター)および当技術分野で知られている細胞に導入できる。加えて、化学合成によっても、本発明のタンパク質になんらかの変異を導入することができる。
【0060】
本発明は、本発明のポリヌクレオチドを含有するベクター、これらのベクターを用いた遺伝子操作の結果から生じた宿主細胞、またはELbタンパク質コード配列、ならびに組換え技術によって本発明のポリペプチドを調製する方法に関する。
【0061】
従来のDNA組換え技術(Science、1984;224:1431ページ)を用いて、本発明のポリヌクレオチド配列を使用して、組換えELbタンパク質を発現または生成することができる。これは通常、
(1)ELbタンパク質をコードしているポリヌクレオチド(もしくはその変異体)または前記ポリヌクレオチドを含有する組換え発現ベクターで、適した宿主細胞を形質転換または形質導入するステップと、
(2)適切な培地中で宿主細胞を培養するステップと、
(3)培地または細胞からタンパク質を単離および精製するステップと
を含む。
【0062】
本発明では、ELbタンパク質をコードするポリヌクレオチド配列を組換え発現ベクター内に挿入できる。「組換え発現ベクター」という用語は、細菌プラスミド、ファージ、酵母プラスミド、植物細胞ウイルス、哺乳類細胞ウイルスまたは他のベクターを意味する。併せて、いかなるプラスミドおよびベクターも、それらが宿主内で複製および安定化できるという条件で使用できる。発現ベクターの重要な特徴は、複製開始点、プロモーター、マーカー遺伝子および翻訳制御エレメントを有することである。
【0063】
ELbタンパク質コードDNA配列および適切な転写/翻訳制御シグナルを含有する発現ベクターは、当業者によく知られている方法を用いて構築できる。これらの方法には、in vitro組換えDNA技術、DNA合成技術およびin vivo組換え技術などが含まれる。mRNA合成を誘導するために、前記DNA配列を発現ベクター内の適切なプロモーターに効果的に連結することができる。発現ベクターは、翻訳開始部位であるリボソーム結合部位、および転写ターミネーターも含みうる。
【0064】
加えて、発現ベクターは、形質転換宿主細胞を選択するのに有用な表現型を与えるために、真核細胞培養で有用なジヒドロ葉酸リダクターゼ、ネオマイシン耐性もしくは緑色蛍光タンパク質(GFP)、または大腸菌(E.coli)培養で有用なカナマイシン耐性もしくはアンピシリン耐性など、1つまたは複数の選択マーカー遺伝子を含むことが好ましい。
【0065】
上述の適切なDNA配列および上述の適切なプロモーターまたは制御配列を含有するベクターを使用して、そのタンパク質の発現に適した宿主細胞を形質転換することができる。
【0066】
宿主細胞は、細菌細胞などの原核細胞、または酵母細胞などの下等真核細胞、または植物細胞などの高等真核細胞でありうる。代表例は、大腸菌(E.coli)、ストレプトマイセス属(Streptomyces)およびアグロバクテリウム属(Agrobacterium)、ならびに真菌細胞、例えば酵母、ならびに植物細胞などである。
【0067】
ベクター内に挿入されるエンハンサー配列は、本発明のポリヌクレオチドが高等真核細胞内で発現される場合に、転写を亢進する。DNAシス作用因子であるエンハンサーは、通常約10〜300塩基対を含み、遺伝子転写を亢進するようにプロモーターに作用する。
【0068】
当業者ならば、適切なベクター、プロモーター、エンハンサーおよび宿主細胞をどのようにして選択するか理解しているであろう。
【0069】
組換えDNAによる宿主細胞の形質転換は、当業者によく知られている日常的技術を用いて実施できる。大腸菌(E.coli)などの原核細胞宿主については、指数増殖期の後に細胞を採取し、それらの細胞をCaCl
2で処理することによって、DNAを吸収できるコンピテント細胞を得ることができる。これらの調製方法は当技術分野でよく知られている。別の方法はMgCl
2処理を用いる。形質転換は、必要に応じて、エレクトロポレーションによって行うこともできる。真核細胞宿主については、任意の適したDNA形質移入法、例えば、リン酸カルシウム共沈、微量注入などの日常的な機械的方法、エレクトロポレーションおよびリポソーム封入などを使用できる。植物細胞は、アグロバクテリウム(Agrobacterium)形質転換または遺伝子銃形質転換などの方法、ならびにリーフディッシュ(leaf dish)法およびイネ未熟胚の変換などの他の技術を用いて形質転換できる。従来の方法によって、形質転換された植物細胞、組織または器官が新規植物を再生することを可能にして、改変された形質を有する植物を得る。
【0070】
この結果得られた形質転換体を通常通りに成長させて、本発明の遺伝子によってコードされているポリペプチドを発現させることができる。培養培地は、使用される宿主細胞に応じて、様々な従来培地から選択できる。培養は、宿主細胞の増殖に適した条件下で行う。宿主細胞が適切な密度まで増殖し、その後さらに追加の期間、細胞が培養されているときに、選択されたプロモーターを、適切な方法(例えば温度変化または化学誘導)を用いて誘導できる。
【0071】
上述の組換えポリペプチドは、細胞内または細胞膜上に発現されるものでもよく、細胞によって分泌されるものでもよい。必要に応じて、組換えタンパク質の物理的特性、化学的特性および他の特性を利用して、それらを様々な単離法によって単離および精製することができる。これら方法は当業者にはよく知られている。そのような方法の例には、従来の再生処理、タンパク質沈殿剤(塩析)での処理、遠心分離、浸透圧による細菌の破壊、超処理(ultratreatment)、超遠心分離、分子ふるいクロマトグラフィー(ゲル濾過)、吸着クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)および他の液体クロマトグラフィー、ならびにこれらの組合せが含まれるが、これらに限定されない。
【0072】
組換えELbタンパク質を使用して、例えば、ELbタンパク質機能を亢進または阻害できる抗体、ポリペプチドまたは他のリガンドを得るためのスクリーニングを行うことができる。発現された組換えELbタンパク質を用いたポリペプチドライブラリーのスクリーニングを使用して、ELbタンパク質機能を阻害または刺激する、価値あるポリペプチド分子を探索することができる。
【0073】
本発明のポリヌクレオチドの一部または全体は、組織における示差的遺伝子発現を分析するプローブとして、マイクロアレイまたはDNAチップ(「遺伝子チップ」)上に固定することができる。ELbタンパク質の転写産物は、RNAポリメラーゼ連鎖反応(RT−PCR)およびELbタンパク質に特異的なプライマーを用いたin vitro増幅によって検出できる。
【0074】
本発明は、作物改良の方法であって、植物におけるELb遺伝子またはその相同遺伝子の発現または活性の調節を含む方法にも関する。ELbの発現または活性を亢進するか、または阻害するかは、改良される植物形質に依存するであろう。草高および容積の低減、または植物の分げつおよび収量の増大の必要は、作物におけるELbの発現または活性を増大させることによって満たされ、一方、花器サイズ、種子サイズ、草高または容積の増大の必要は、作物における草高調節遺伝子の発現または活性を阻害することによって満たされる。
【0075】
ELb遺伝子またはその相同遺伝子の発現を増大させる方法は当技術分野でよく知られている。例えば、ELbコード遺伝子を含有する発現構築物を植物内に導入して、ELbを過剰発現させることができ、または強力なプロモーターによって、ELb遺伝子またはその相同遺伝子の発現の亢進を引き起こすことができ、またはエンハンサー(例えばイネwaxy遺伝子の第一イントロン、アクチン遺伝子の第一イントロンなど)によって、ELb遺伝子の発現を亢進することができる。これらの方法に適した強力なプロモーターには、35sプロモーター、イネおよびトウモロコシのUbiプロモーターなどが含まれるが、これらに限定されない。
【0076】
ELb遺伝子またはその相同遺伝子の発現を阻害する方法は当技術分野でよく知られている。例えば、RNA干渉(RNAi)または遺伝子サイレンシング(ノックアウト)技術によって、阻害を実現できる。
【0077】
本発明の好ましい実施形態として、ELbの高発現を有する植物を得る方法は、
(1)ELbタンパク質の配列をコードするDNAを含有する発現ベクターを保有するアグロバクテリウム(Agrobacterium)細胞を用意するステップと、
(2)植物の細胞、組織または器官を、ステップ(1)に記載のアグロバクテリウム(Agrobacterium)細胞と接触させて、ELbタンパク質の配列をコードする前記DNAを植物細胞、組織または器官に導入し、それらが植物細胞の染色体に組み込まれることを可能にするステップと、
(3)ELbタンパク質の配列をコードする前記DNAを含有する植物細胞、組織または器官を選択するステップと、
(4)ステップ(3)に記載の植物細胞、組織または器官が新規な植物を再生することを可能にするステップと
を含む。
【0078】
試薬、温度、圧力などを含めた、任意の適切な日常的手段を、この方法を実施するのに使用できる。
【0079】
本発明は、ELbタンパク質またはそれをコードする遺伝子のアゴニストもしくはアンタゴニストにさらに関する。アゴニストまたはアンタゴニストは、ELbの活性または発現を調節でき、それゆえ、形質改良の目標を実現するために、ELb機能へのそれらの影響によって作物の草高、容積、分げつ、収量、花器サイズまたは種子サイズなどを調節するのに使用できる。
【0080】
ELbアンタゴニストとは、ELbの活性および安定性の低減、ELb発現の下方制御、ELbの有効作用時間の低減、またはELbの転写もしくは翻訳の阻害ができる薬剤を指す。本発明によれば、これらの薬剤は、作物の花器サイズ、種子サイズ、草高または容積を増大させるのに有用な薬剤として使用できる。
【0081】
ELbアゴニストとは、ELb活性の増大、ELb安定性の維持、ELb発現の亢進、ELbの有効作用時間の増大またはELbの転写もしくは翻訳の増大ができる薬剤を指す。本発明によれば、これらの薬剤は、作物の草高および容積の低減、ならびに分げつおよび収量の増大に有用な薬剤として使用できる。
【0082】
一実施形態では、本発明は、配列番号1に記載のゲノム配列を有するELb遺伝子に関し、配列中、オープンリーディングフレーム(ORF)は61〜353、1363〜1585、1690〜1943、2028〜2414および2559〜2979の領域に位置し、完全長cDNA(配列番号1)は、525アミノ酸(配列番号3)を含むタンパク質をコードする1578bpを有する。ELb遺伝子は、作物の草高、容積、収量および分げつなどを改良する新規手段を提供し、それゆえ、有望な見通しを有する。
【0083】
植物の茎または葉における特異的発現のためのプロモーターおよび遺伝子発現の誘導
本明細書で使用される場合、「プロモーター」または「プロモーター領域」とは、通常、標的遺伝子のコード配列の上流(5’側)に見出され、mRNAへのポリヌクレオチド配列の転写を開始するヌクレオチド配列を意味する。通常、プロモーターまたはプロモーター領域は、RNAポリメラーゼ、および転写の正しい開始に必要な他の因子の認識部位を提供できる。本明細書では、プロモーターまたはプロモーター領域は、置換変異体、欠失変異体および挿入変異体を含めたプロモーター変異体、すなわち、天然に存在する対立遺伝子変異体または天然に存在しない変異体が含まれる。
【0084】
本明細書で使用される場合、「組織特異的プロモーター」または「器官特異的プロモーター」とは、これらのプロモーターの制御下において、通常は遺伝子発現が特定の指定された器官または組織のみで起こることを意味する。
【0085】
本明細書で使用される場合、「作動可能に連結している」とは、2つ以上の核酸領域または核酸配列の機能的空間配置を意味する。例えば、プロモーター領域は、標的遺伝子の核酸配列の転写がプロモーター領域の制御下に入るように、この核酸配列と比較して特定の位置にあり、したがって、プロモーター領域はこの核酸配列に「作動可能に連結し」うる。
【0086】
通常、プロモーターは、ある組織または器官のmRNA発現が他の組織または器官より少なくとも2倍、好ましくは少なくとも5倍、より好ましくは少なくとも10倍、より好ましくは少なくとも25倍、より好ましくは少なくとも50倍、さらにより好ましくは少なくとも100倍、最も好ましくは少なくとも1000倍高い場合に、組織特異的または器官特異的であると考えられる。
【0087】
本発明は、
(1)配列番号13に記載のヌクレオチド配列を有するポリヌクレオチド、または
(2)ストリンジェントな条件下で(1)に記載のポリヌクレオチド配列にハイブリダイズし、かつ植物の茎もしくは葉における標的遺伝子の特異的発現を誘導するポリヌクレオチド
からなる群から選択されるプロモーターに関する。
【0088】
本発明では、「ストリンジェントな条件」とは、(1)0.2×SSC、0.1%SDSおよび60℃など、より低イオン強度かつ高温下でのハイブリダイゼーションおよび洗浄、または(2)50%(v/v)ホルムアミド、0.1%ウシ血清/0.1%フィコールおよび42℃など、変成剤存在下でのハイブリダイゼーション、または(3)少なくとも80%、好ましくは少なくとも90%、より好ましくは95%超の同一性を有する2つの配列間のみで起こるハイブリダイゼーションを指す。さらに、ハイブリダイズ可能なポリヌクレオチドは、植物の茎または葉における、標的遺伝子の特異的発現を誘導できる。
【0089】
ポリヌクレオチドハイブリダイゼーションは、当業者によく知られている技術であり、1対の特定のポリヌクレオチドのハイブリダイゼーションプロファイルは、それらの類似性または同一性を示す。したがって、本発明は、配列番号13に記載のヌクレオチド配列にハイブリダイズし、かつ配列番号13に記載のヌクレオチド配列と少なくとも50%、好ましくは少なくとも60%、より好ましくは少なくとも70%、さらにより好ましくは少なくとも80%、さらにより好ましくは少なくとも85%、より好ましくは少なくとも90%(例えば、95%、96%、97%、98%または99%)の同一性を有するポリヌクレオチドにさらに関する。
【0090】
本発明のプロモーターは、植物の組織または器官に特異的であり、とりわけ植物の茎または葉に特異的である。本発明の一部の実施形態において、本発明者らは、本発明のプロモーターの制御下で、ELb遺伝子またはGUS遺伝子が植物の茎および葉では特異的に発現されうるが、他の組織または器官では実質的に発現されないことを発見した。
【0091】
本発明のプロモーターは、標的遺伝子に作動可能に連結でき、この標的遺伝子は、そのプロモーターにとって外因性(異質性)でありうる。本発明の実施形態によれば、標的遺伝子は通常、ヌクレオチド配列(好ましくは構造ヌクレオチド配列)であり、好ましくは、植物の茎および葉の成長を調節する特定のタンパク質など、特定の機能を有するタンパク質、とりわけ草高に関連するタンパク質をコードする。
【0092】
本発明のプロモーターは、そのプロモーターにとって外因性(異質性)である改良された標的遺伝子にも作動可能に連結できる。亢進された発現、改変された翻訳後修飾(例えばリン酸化部位)、細胞からの翻訳産物の送出、改良された安定性および細胞シグナルの挿入または欠失など、様々な望ましい特性を有するように標的遺伝子を改良できる。
【0093】
加えて、特定の遺伝子を下方制御するように、プロモーターおよび標的遺伝子を設計することができ、これは通常、逆方向かつアンチセンス様式で、標的遺伝子配列にプロモーターを連結し、配列を開始させることによって実現される。アンチセンス技術は当業者によく知られている。いかなるヌクレオチド配列も、この方法で調節できる。
【0094】
上述したいかなるプロモーターおよび標的遺伝子配列も、構築物、とりわけ組換えベクター内に含有させることができる。
【0095】
組換えベクターは通常、標的遺伝子の転写を開始させるための、作動可能に連結している(通常5’→3’)プロモーターと、標的遺伝子とを含む。必要に応じて、組換えベクターは、3’転写ターミネーター、3’ポリアデニル化シグナル、他の非翻訳ヌクレオチド配列、輸送配列もしくはターゲッティングヌクレオチド配列、耐性選択マーカー、エンハンサーまたはオペロンをさらに含みうる。
【0096】
通常、標的遺伝子は、植物の茎または葉における特異的発現のためのプロモーターの下流2000bp未満(好ましくは1000bp未満、より好ましくは500bp未満、最も好ましくは300bp未満)にある。
【0097】
本発明のプロモーターに加えて、組換えベクターは、組織特異的、構成的または誘導性プロモーターなど、他の1つまたは複数のプロモーターをさらに含みうる。
【0098】
上述の適切なプロモーターおよび標的遺伝子を含有するベクターを使用して、タンパク質発現に適した宿主細胞を形質転換することができる。
【0099】
本発明の利点は以下の通りである。
(1)作物の草高、容積、分げつ、収量、花器サイズまたは種子サイズを調節できる新規な単離された草高調節遺伝子を提供する。したがって、それらを使用して、作物栽培品種を改良することができる。
(2)草高を低減させるために、本発明の調節遺伝子で作物を形質転換させることができ、草高の中程度な低減および有効な分げつ数の増加は高収量育種の理想型であるので、これは、矮小植物型を得るための育種に有用でありうる。例えば、イネ科(Gramineae)作物における様々な発現レベルを使用して、様々な程度まで草高を低減させて、有効分げつ数および収量を増大させることができる。
(3)草高調節遺伝子のプロモーターは、初めて単離されたものであり、植物の茎または葉における特異的発現を誘導し、これを使用して、植物の茎または葉における標的遺伝子の特異的発現を調節することができる。
【0100】
これよりさらに、以下の実施例と併せて、本発明をさらに詳細に記載する。これらの実施例は、本発明の範囲を限定するものではなく、例示のためのみに提供されることを理解するべきである。以下の実施例で特に記載されていないアッセイは、Sambrookら、「Molecular Cloning:Laboratory Manual」(Cold Spring Harbor Laboratory Press、New York、2001)または「PCR primer:Laboratory Manual」(Carl W.DieffenbachおよびGabriela S.Devksler編集、Cold Spring Harbor Laboratory Press、1995)に記載の通り、または製造業者の推奨の通りに、従来の手順で実施できる。
【実施例】
【0101】
物質
1.1植物物質
シロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana)、生態型はコロンビア(Columbia)(Col−0)。
T−DNA挿入変異体:ELa(SALK_016089)
イネ栽培品種:台北309(Taipei 309)(イネ(Oryza sativa L.)ジャポニカ種(ssp Japonica)栽培品種台北309(cv Taipei309)、TP309)。
【0102】
1.2細菌株およびプラスミドベクター
アグロバクテリウム−ツメファシエンス(Agrobacterium tumefaciens):GV3101(Narasimhulu、S.Bら、Gelvin、1996、「Early transcription of Agrobacterium t−DNA genes in tobacco and maize.」、Plant Cell 8:873〜86ページ参照)、EHA105(Hood,E.E.ら、1993、「New Agrobacterium helper plasmids for gene transfer to plants.」、Transgen.Res.2:208〜218ページ参照)。
プラスミドベクター:
pBluescript SK(pSK):Invitrogen Inc.から購入。
pCambia1300S:pCambia1300RS、CAMBIAから購入。
pBI101.1:Invitrogen Inc.から購入。
pGEM−T Easyベクター:Promega Inc.から購入。
RNAiベクター1300RS:Arkansas State University,USAから入手可能。
【0103】
1.3試薬および酵素
T4DNAリガーゼ、様々な制限エンドヌクレアーゼおよびTaqDNAポリメラーゼは、MBI Ferment、TaKaRa、New England BiolabsまたはPromegaから購入する。ゲル中DNA断片の回収キットはOmega Inc.から購入した。逆転写システムはGIBCOBRLから購入した。核酸の分子量マーカーはMBI製品である。pGEM−Teasyベクターは、Promega Inc.(Madison、USA)から購入した。(α−
32P)dCTPは、YaHui Bioengineering Inc.(Beijing、China)から購入した。RT−PCR用SuperScript第1鎖合成システムを使用する逆転写キット(#11904−018、Invitrogen)を用いた。他の従来の化学試薬は、輸入されたか、中国で製造された分析用純度の製品である。様々なデオキシヌクレオチドプライマーは、Sangon Inc(Shanghai、China)によって合成された。DNA配列の決定は、JiKang Inc.、ShanghaiまたはInvitrogen Inc.、Shanghaiが行った。配列分析は、GenedocおよびDNAStarソフトウェアなどを用いて完成させた。
【0104】
方法
1.シロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana)の培養および形質転換
シロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana)の無菌培養には、種子の表面殺菌(70%エタノール30秒間、その後滅菌水で4回の洗浄による)および内部殺菌(7%次亜塩素酸ナトリウム10分間、その後滅菌水で3回の洗浄による)を行い、その後、1/2MS(1/2Murashige&Skoog基本培地、0.8%寒天、pH5.8)固体培地上に播種し、4℃で72時間置き、続いて22℃に移した。1週間後に、栄養溶液(HuaWuQue 3g/10L、YongTong Chemical Ltd、Shanghai、China)に浸漬した人工土壌(バーミキュライト:黒色土壌:パーライト=3:1:0.5)中に実生を移植し、続いて、14/10(明/暗)の概日周期を有する人工気候室に移した。
【0105】
シロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana)の形質転換には、好ましい成長状態にある4〜5週齢の植物(より多くの側花茎およびより多くの花の発生を促進し、それによって形質転換効率を増大させるために、形質転換の1週間前に、主花茎を切り取る)を散布(sprinkle)によって処理した。トランスジェニックベクターを含有するアグロバクテリウム−ツメファシエンス(Agrobacterium tumefaciens)細胞を28℃でOD
600約2.0まで増殖させ、その後、4,000rpmで10分間遠心処理し、新たに調製した形質転換溶液(5%ショ糖および0.02%Silwet L−77を含有する1/2MS液体培地)中にペレットを再懸濁し、OD
600約0.6〜0.8の最終濃度まで増殖させた。形質転換の前に、受粉している花および果実を除去し、次に、土壌に十分な水を吸収させた。形質転換中、数滴の懸濁液が葉から落ちるまで、細菌懸濁液をシロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana)植物表面に散布した。これらの植物を黒い袋で被覆し、暗中で終夜、高湿度に維持した。24時間後に、植物を標準条件に移した。7日後に、上述の手順に従って、形質転換を1回反復した。種子が成熟した後に、それらの植物を紙袋内に収集し、混合した。収集した植物を7日間デシケーター内に配置し、その後脱穀した。T1世代の滅菌種子を、50μg/ml Kanまたはハイグロマイシンを含有する1/2×MS培地上に播種し、4℃に72時間置き、その後、通常光条件下に置いた。
【0106】
2.アグロバクテリウム−ツメファシエンス(Agrobacterium tumefaciens)によって媒介された成熟イネ胚カルスの遺伝子形質転換
(1)成熟イネ胚カルスの誘導
イネ307Tの種子から籾殻を取り除き、その後、70%エタノール中に1分間浸漬し、20%(v/v)次亜塩素酸ナトリウム中に持続的に振盪しながら20〜30分間浸漬した。これらの種子を5〜6回、滅菌水ですすいだ。滅菌濾紙による吸引乾燥後、イネの種子をMSD培地上に播種し、暗中26℃で増殖させ、カルスを誘導した。1週間後に、胚乳、幼芽、および小根を除去してカルスを得、この結果得られたカルスを暗中、MSD上で継代培養した。それらは、2〜3週間毎に継代した。TP309種子のカルスについては、使用された培地がNBDであった。
【0107】
(2)形質変換に有用な細菌懸濁液の調製
1日目の朝に:−70℃に保存された細菌の小部分を5mlのYEB(Rif 20mg/L+Kan 50mg/L)液体培地中に接種し、28℃で終夜、振盪培養した。
【0108】
2日目の朝に:細菌を含有する1〜2mlのYEB培地を収集し、25〜50mlのAB(20mg/L Rif+50mg/L Kan)液体培地中に移し、その後約4時間28℃で、OD
600約0.5まで増殖させた。
【0109】
(3)共培養
2日目の午後に:OD
600値の検出後、細菌懸濁液を5,000rpmで15分間遠心分離し、ペレットをAAM(AS100含有)中に再懸濁し、OD
600=0.4〜0.6まで培養した。この細菌懸濁液を、イネカルスを含有する三角フラスコ中に注ぎ、時々振盪しながら20分間カルスを浸漬させ、滅菌濾紙(またはピペット)によって細菌懸濁液を吸引乾燥させた後に、その上に1層の滅菌濾紙を有する2.5%Phytagel含有NBD(AS100)培地上に浸漬されたカルスを移し、2〜3日間共培養し、その後、滅菌濾紙を十分に濡らすために、それぞれのディッシュに1mlのAAM(+AS100)培地を添加した。
【0110】
(4)スクリーニング
滅菌濾紙(別の濾紙)による吸引乾燥の後、耐性を有するカルスをスクリーニングするためにハイグロマイシン(Hyg)を含有するスクリーニング培地中にカルスを移した。暗中で約30日間、カルスを培養し、その間、1回スクリーニング培地を交換した。
【0111】
使用されるスクリーニング培地は以下の通りである。
0.26%Phytagel MS+チメンチン100mg/L+Hyg30mg/Lを含有する、第1スクリーニング用の培地
0.26%Phytagel NBD+チメンチン100mg/L+Hyg50mg/Lを含有する、第2スクリーニング用の培地
0.26%Phytagel MS+チメンチン100mg/L+Hyg50mg/Lを含有する、第3スクリーニング用の培地
【0112】
(5)前分化
スクリーニングされたイネカルスを前分化培地に移し、10日間増殖させた。
【0113】
前分化培地:0.45%Phytagel MS+BAP 2mg/L+NAA 1mg/L+ABA 5mg/L+Hyg 50mg/L、pH5.7を含有し、2,4−ジクロロフェノキシ酢酸(2,4−D)を含有しない。
【0114】
(6)分化
前分化しているイネカルスを分化培地に移し、培養して幼植物に分化させた(明条件、15〜30日間)。
【0115】
分化培地:0.45%Phytagel NB+BAP 3mg/L+NAA 0.5mg/L、pH5.7を含有し、2,4−Dを含有しない。
【0116】
(7)発根
緑色の幼植物を発根用の発根培地に移した。
【0117】
発根培地:0.45%Phytagel 1/2MS+Hyg 50mg/L、pH5.7を含有し、2,4−Dを含有しない。
【0118】
3.ベクター構築
p35S::ELbベクター構築
ELbタンパク質のcDNAコード領域配列をRT−PCRによって増幅させた。ステップは以下の通り。シロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana)植物の全RNAを、RNeasy Plant Miniキット(Qiagen)によって、製造業者提供の説明書に従って抽出し、その結果得られた全RNAを次にM−MLV逆転写酵素(Promega)で逆転写させて、ELb cDNAを生成させた。Takara Perobest DNAポリメラーゼと、鋳型として用いられる上記cDNAとを使用するPCR反応によって、ELbタンパク質のcDNAコード領域配列を増幅させた。使用したプライマーは以下の通りである。
上流プライマー(配列番号7):5’−TGA
GGATCCAAATAAAATAAAAAG−3’(下線部:BamHI部位)、
下流プライマー(配列番号8):5’−AAA
GTCGACCACACACAAAGCAAA−3’(下線部:ClaI部位)。
PCR条件:94℃3分間;94℃30秒間、58℃30秒間および72℃2分間を35サイクル;72℃10分間。産物は16℃で保存した。
【0119】
PCR産物を回収し、BamH1およびClaIの両方によって消化した。産物を回収し、次に、同じく上述の通りに消化および回収されたpSKベクターに連結した。この結果得られたベクターを用いて、DH5α細胞を形質転換させた。制限切断によって確認された正しいクローンを配列決定用に選択した。配列決定によって確認された正しい配列を有するクローンについて、ELb cDNAコード領域をBamHI/ClaIによって切断し、BamHI/ClaIで切断された二重発現ベクターpCambia1300Sに連結し、DH5αを形質転換させて、トランスジェニッククローンを得た。抽出の後、制限切断によって確認された正しいプラスミドで、アグロバクテリウム−ツメファシエンス(Agrobacterium tumefaciens)GV3101細胞およびEHA105細胞を形質転換させた。アグロバクテリウム−ツメファシエンス(Agrobacterium tumefaciens)細胞からプラスミドを抽出し、DH5α細胞を再形質転換させた。このプラスミドをDH5αから抽出し、制限酵素によって切断して、アグロバクテリウム−ツメファシエンス(Agrobacterium tumefaciens)細胞が正しいプラスミドで形質転換されていることを確認した。散布法(sprinkle method)によるシロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana)細胞の形質転換によって、トランスジェニックシロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana)植物を得、成熟イネ胚カルスのアグロバクテリウム−ツメファシエンス(Agrobacterium tumefaciens)媒介遺伝的形質転換によって、トランスジェニックイネ植物を得た。
【0120】
pELbプロモーター::GUSベクター構築
GenBankから利用可能な配列(GeneID:832559)に基づいて、上流および下流プライマーを設計した。これらのプライマーは、ELb遺伝子の翻訳開始部位の1.4kb上流の領域内にあった。野生型シロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana)コロンビアの幼植物(7日齢)から抽出されたゲノムDNAを鋳型として用いてPCRを行った。前記プライマーは以下の通りである。
上流プライマー(配列番号9):5’−CTG
CTGCAGACTCTATTTCCA−3’(下線部:PstI部位);
下流プライマー(配列番号10):5’−TTCA
GGATCCTTTACTTTTTATTTT−3’(下線部:BamHI部位)。
増幅条件:94℃3分間;94℃30秒間、58℃30秒間および72℃2分間を35サイクル;72℃10分間。産物は16℃で保存した。
【0121】
PCR産物をPstI/BamHI酵素によって切断し、次に、pSKベクター内の対応するPstI/BamHI部位に連結した。制限切断によって確認された正しいクローンを配列決定用に選択した。配列決定によって確認された正しい配列を有するクローンについて、ELbプロモーター領域(配列番号13に記載の通り)をPstI/BamHIによって切断し、PstI/BamHIによって切断された二重発現ベクターpBI101.1に連結し、大腸菌(E.coli)DH5α細胞を形質転換させた。抽出の後、制限切断によって確認された正しいプラスミドで、アグロバクテリウム−ツメファシエンス(Agrobacterium tumefaciens)GV3101細胞を形質転換させた。アグロバクテリウム−ツメファシエンス(Agrobacterium tumefaciens)細胞からプラスミドを抽出し、DH5α細胞を再形質転換させた。このプラスミドをDH5αから抽出し、制限酵素によって切断して、アグロバクテリウム−ツメファシエンス(Agrobacterium tumefaciens)細胞が正しいプラスミドで形質転換されていることを確認した。その間にpBI101.1ベクターでGV3101細胞を形質転換させ、それぞれ陰性対照および陽性対照とした。
【0122】
ELa T−DNA挿入突然変異株をバックグラウンドとしたELbトランスジェニックRNAi植物の構築
下記の通りのRNAiベクター1300RSを用いてトランスジェニッククローンを構築した。ELb遺伝子の第4エキソン内にある約500bpの配列を増幅するために、野生型シロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana)コロンビアの幼植物(7日齢)のゲノムDNAを鋳型として用いてPCRを行った。前記プライマーは以下の通り。
上流プライマー(配列番号11):5’−AAT
GGTACCACAAGAAACAA−3’(下線部:KpnI部位);
下流プライマー(配列番号12):5’−
TCTAGATTTGAGCTGAAAAAA−3’(下線部:XbaI部位)。
増幅条件:94℃3分間;94℃30秒間、50℃30秒間および72℃30秒間を35サイクル;72℃10分間。産物は16℃で保存した。
【0123】
PCR産物をKpnI/XbaI酵素によって切断し、次にpSKベクター内の対応するKpnI/XbaI部位に連結した。制限切断によって確認された正しいクローンを配列決定用に選択した。配列決定によって確認された正しい配列を有するクローンについて、ELbの部分断片をKpnI/XbaIによって切断し、KpnI/XbaIによって切断された二重発現ベクター1300RSに連結させ、大腸菌(E.coli)DH5α細胞を形質転換させた。抽出の後、制限切断によって確認された正しいプラスミドで、アグロバクテリウム−ツメファシエンス(Agrobacterium tumefaciens)GV3101細胞を形質転換させた。アグロバクテリウム−ツメファシエンス(Agrobacterium tumefaciens)細胞からプラスミドを抽出し、DH5α細胞を再形質転換させた。このプラスミドをDH5αから抽出し、制限酵素によって切断して、アグロバクテリウム−ツメファシエンス(Agrobacterium tumefaciens)細胞が正しいプラスミドで形質転換されていることを確認した。
【0124】
散布法によって、ELa T−DNA挿入突然変異株を形質転換して、ELa T−DNA挿入突然変異株をバックグラウンドとした、シロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana)のELb RNAiトランスジェニック植物(ELb RNAi/eLa)を得た。
【0125】
(実施例1)
ELb遺伝子のクローニング
本発明者は、シロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana)のゲノム配列を探索し、バイオインフォマティクス研究を行うことによって、2つのp450モノオキシゲナーゼ遺伝子、すなわち714A1および714A2を発見した。それらは当初、植物成長およびジベレリンの制御下における発生に関与すると予測され、本発明者によって、ELa(またはAtEuila)およびELb(またはAtEuilb)と命名された。
【0126】
ELb遺伝子コード領域のゲノムDNA配列を配列番号1に記載し、ELb遺伝子のコード領域のcDNA配列を配列番号2に記載し、ELbタンパク質配列を配列番号3に記載した。ELa遺伝子コード領域のゲノム配列を配列番号4に記載し、ELa遺伝子のコード領域のcDNA配列を配列番号5に記載し、ELaタンパク質配列を配列番号6に記載した。
【0127】
(実施例2)
ELb遺伝子を過剰発現するトランスジェニックシロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana)植物における草高および容積の低減
この実施例において、本発明者は、それぞれELb、ELaまたはOsEuiを過剰発現するトランスジェニックシロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana)植物を調製した。野生型(WT)植物、シロイヌナズナ(Arabidopsis)ELaを過剰発現するトランスジェニック植物(ELa−OE)、イネOsEuiを過剰発現するトランスジェニック植物を対照として用いた。
【0128】
4週間の成長の後に成長プロファイルを観察した。これらの結果を
図1に示す。図に示す通り、野生型シロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana)植物が最も大きく、ELb過剰発現植物は野生型植物より実質的に小さく、ELa過剰発現植物およびOsEui過剰発現植物が最も小さかった。
【0129】
7週間の成長の後に、本発明者は、野生型植物、ならびにELb、ELaおよびイネOsEuiの過剰発現植物の草高を決定した。平均草高値はそれぞれ、26.2cm、14.2cm、9.63cmおよび3.7cmであった。したがって、ELbを過剰発現するトランスジェニックシロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana)植物の草高は、野生型植物より劇的に低かった。
【0130】
(実施例3)
ELb RNAiまたはノックアウト変異は草高および容積を増大させる
この実施例において、本発明者らは、ELa T−DNA挿入突然変異株である植物変異体から開始して、ELb RNAiトランスジェニックシロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana)植物(ELb RNAi/eLa)およびELb遺伝子ノックアウトを有するシロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana)変異植物を調製した。両植物の成長10日後に、草高および容積へのELb RNAiまたはノックアウト変異の影響を観察し、対照として同一条件下で培養された野生型植物と比較した。
【0131】
ELb RNAi/eLa植物および野生型植物の成長プロファイルを
図2に示した。野生型植物と比較して、ELb RNAi/eLa植物の葉面積、草高および容積は劇的に増大した。
【0132】
さらに、野生型植物と比較して、ELbノックアウト変異体(ELa T−DNA挿入をバックグラウンドとしたもの)の葉領域、草高および容積も劇的に増大した。
【0133】
したがって、ELb発現の低減またはサイレンシングは草高および容積の増大をもたらすこと、すなわち、ELbは草高および容積の低減に関連する遺伝子であることが結論できる。
【0134】
(実施例4)
ELb RNAi/elaまたはノックアウト変異は花器サイズおよび種子サイズを増大させる。
この実施例において、本発明者は、ELb RNAi/eLaシロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana)植物またはELbノックアウトシロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana)植物(実施例3で産出したもの)の花器および種子の成長プロファイルを観察した。対照として、野生型シロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana)植物の花器および種子と比較する。
【0135】
ELb RNAi/eLaシロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana)植物および野生型シロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana)植物の花器および種子の成長プロファイルを
図3に示した。ELb RNAi/eLaシロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana)植物の花器および種子は、野生型植物のものより実質的に大きかった。
【0136】
さらに、ELbノックアウト変異体の花器および種子も野生型植物のものより実質的に大きかった。
【0137】
したがって、ELb発現の低減またはサイレンシングは植物の花器サイズおよび種子サイズの増大をもたらすこと、すなわち、ELbは花器サイズおよび種子サイズの低減に関連する遺伝子であることが結論できる。
【0138】
(実施例5)
ELbプロモーターによって開始されたGUSレポーター遺伝子の組織特異的発現
この実施例において、本発明者は、pELbプロモーター::GUSベクターを構築した。このベクターは、トランスジェニックシロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana)植物を調製するためのアグロバクテリウム−ツメファシエンス(Agrobacterium tumefaciens)細胞を形質転換することができた。GUSレポーター遺伝子を検出する従来のアッセイによって、植物におけるGUSレポーター遺伝子の発現が観察された。
【0139】
結果を
図4に示した。GUSレポーター遺伝子は、植物の茎および葉の発育良好部位で発現されたが、本質的に根では発現されなかった。したがって、ELb遺伝子は組織特異的遺伝子である。
【0140】
(実施例6)
ELb過剰発現トランスジェニックイネの草高の低減
この実施例において、本発明者は、ELb過剰発現トランスジェニックイネ植物(ELb−OE)を調製し、イネ植物へのELb過剰発現の影響を観察した。同一生育条件で培養された野生型イネTP309を対照として用いた。
【0141】
110日間の成長の後における、植物の成長プロファイルを
図5に示した。ELb過剰発現トランスジェニックイネ植物の草高は、野生型植物より劇的に低かったことを認めることができた。
図6は、ELb過剰発現植物および野生型植物の草高を示す統計的ヒストグラムである。
【0142】
(実施例7)
ELb過剰発現トランスジェニックイネの有効分げつ数および収量の増大
この実施例において、本発明者は、イネ植物の分げつおよび収量へのELb過剰発現の影響を実証するために、ELb過剰発現トランスジェニックイネ植物(ELb−OE)および野生型イネ植物TP309の分げつ数および収量を検出した。
【0143】
培養した植物が穂を付けた後に有効分げつを計数し、統計的結果を
図7に示した。野生型植物の分げつ数は約10であったが、ELb過剰発現植物の分げつ数は約20〜22であった。ELb過剰発現は植物の有効分げつ数を劇的に増大できると結論できる。
【0144】
植物が成熟した後に、ELb過剰発現植物および野生型植物の収量を分析した。結果を
図8に示した。ELb過剰発現トランスジェニックイネ植物における単一植物の粒重は劇的に増大したと結論できる。
【0145】
(実施例8)
ELb変異体の機能
配列番号3に類似した配列を有するタンパク質をコードするコード配列で、p35S::ELbベクター内のELb cDNAコード領域を置換した。唯一の相違は、この配列の位置522はLeuであるが、それに対して、野生型ELbタンパク質の同一の位置はIleであることである。このベクターでアグロバクテリウム−ツメファシエンス(Agrobacterium tumefaciens)細胞を上述の通りに形質転換して、トランスジェニック植物を調製した。結果は、トランスジェニック植物の草高が野生型植物より低いことを示した。
【0146】
本明細書に引用したすべての刊行物、特許および特許出願を、個々の刊行物、特許または特許出願のそれぞれを参照により本明細書に組み込むと個別に示したのと同じように、参照によりその全体を本明細書に組み込む。加えて、当業者ならば、本明細書に記載の内容に照らして、様々な修正または改変を加えることができ、これらの等価物も、本出願に添付されている特許請求の範囲によって定義される範囲に包含されるべきであると理解される。