(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
請求項1又は2に記載の水性インクジェット記録用インク組成物、又は、請求項3に記載の水性インクジェット記録用インク組成物の製造方法により製造された水性インクジェット記録用インク組成物を用いてインクジェット法により印刷する、インクジェット記録方法。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明に係るインクジェット記録用インク組成物、及びその製造方法、並びに、インクジェット記録方法について順に詳細に説明する。
なお、本発明において(メタ)アクリルとは、アクリル又はメタアクリルの各々を表し、(メタ)アクリレートとは、アクリレート又はメタクリレートの各々を表す。
【0015】
[インクジェット記録用インク組成物]
本発明に係る第一態様のインクジェット記録用インク組成物は、酸価が10mgKOH/g未満の樹脂と、沸点が100℃以上300℃以下のアミノアルコールと、顔料と、溶剤とを含有し、前記樹脂がエマルジョン状態であることを特徴とする。
【0016】
また、本発明に係る第二態様のインクジェット記録用インク組成物は、酸価が10mgKOH/g未満の樹脂と、沸点が100℃以上300℃以下のアミノアルコールと、顔料と、溶剤とを含有し、前記樹脂が有する酸性基の少なくとも一部が、前記アミノアルコールにより中和され、前記樹脂がエマルジョン状態であることを特徴とする。
なお、上記第二態様のインクジェット記録用インク組成物における酸価が10mgKOH/g未満の樹脂は、アミノアルコールにより中和される前の樹脂の酸価が10mgKOH/g未満である樹脂を表し、上記第一態様のインクジェット記録用インク組成物における酸価が10mgKOH/g未満の樹脂と同様である。
【0017】
本発明に係るインクジェット記録用インク組成物は、特定のアミノアルコールと、インク組成物中でエマルジョン状態である低酸価の樹脂とを組み合わせて用いることにより、耐水性及び耐溶剤性に優れ、保存安定性や吐出安定性にも優れている。
【0018】
上記特定の組み合わせにより、上記のような効果を発揮する作用としては、未解明であるが以下のように推定される。
従来は非塗工紙等への印刷を目的とし、分散安定性向上のためにインクに含まれる樹脂成分として極性の高い樹脂が用いられていたが、塗工紙に対して印刷した場合には、このような極性の高い樹脂であることにより、印刷物の耐水性等が低いものとなる。本発明者らは、酸価の低い樹脂を用いることにより耐水性および耐溶剤性に優れた印刷物を作成できることを見出した。しかし、このような酸価の低い樹脂を用いた場合には、分散安定性の問題があり、インクジェット方式においては連続吐出性や間欠吐出性が低下するなど、吐出安定性の問題もあった。
酸価を有する樹脂エマルジョンの分散安定性を向上する手法として、従来、水酸化ナトリウム等の無機塩や、アンモニアやエチルアミン等の中和剤を組み合わせる手法が知られていた。しかしながら、無機塩を使用した場合には、インクジェットプリンターの部材が腐食する恐れがあり、また、無機塩が顔料や添加剤等のインク中成分と相互作用して安定性が悪くなるという問題があった。
一方、アンモニアやエチルアミン等の中和剤を酸価が10mgKOH/g未満という低酸価の樹脂に組み合わせて用いた場合には、樹脂中の酸性基の数が少ないため、少しの中和剤を失うだけでpHが変化しやすく不安定であった。例えば、保存時において、アンモニア等中和剤の揮発等に伴い、樹脂の凝集、沈降や、分散液の増粘等が生じ、インクジェット方式に用いると、連続吐出性や間欠吐出性の低下が見られ、吐出安定性が悪化するという問題が生じた。
本発明者らは、鋭意検討の結果、上記低酸価の樹脂に、沸点が100℃以上300℃以下のアミノアルコールを組み合わせて用いることにより、インクの保存安定性や吐出安定性にも優れるとの知見を得た。沸点が100℃以上のアミノアルコールを用いることにより、揮発等によるアミノアルコール濃度の低下の問題が抑制され、インクのpHが安定化するものと推定される。また、pHの低下を抑制することにより、インクジェットプリンターの部材が腐食するリスクを低減することができるというメリットもある。
また、アミノアルコールは水酸基を有することから、樹脂の中和剤として機能するとともに、当該樹脂と、水や水性溶剤との親和性を向上するものと推定される。その結果、インク組成物中の樹脂エマルジョンの分散状態がより安定化され、凝集等の問題がなく、吐出安定性にも優れるようになるものと推定される。また、300℃以下のアミノアルコールを選択することにより、インクの分散安定性及び吐出安定性が向上するだけでなく、インクの乾燥性、耐水性、耐溶剤性も良好に保つことができる。アミノアルコールの沸点が300℃以上の場合は、印刷物に印刷されたインク中に残留して乾燥が遅くなったり、耐水性や耐溶剤性が悪くなる場合がある。更に、本発明のインク組成物においては、例えば、低酸価の樹脂を中和できるだけのアミノアルコールを添加すればよいので、アミノアルコールの添加量を少量とすることができ、水溶性が高い塩基性物質を過剰に含むことを抑制できるため、印刷物の耐水性や耐溶剤性をより優れたものとすることができる。
以上のことから、本発明のインクジェット記録用インク組成物は、耐水性及び耐溶剤性に優れ、保存安定性及び吐出安定性にも優れており、連続吐出や間欠吐出の際も吐出不良が生じにくいため、インクジェット記録用途に好適に用いることができるものである。
【0019】
上記第二態様のインクジェット記録用インク組成物は、沸点が100℃以上300℃以下のアミノアルコールにより、酸価が10mgKOH/g未満の樹脂の少なくとも一部の酸性基を予め中和して、インク組成物を調製するため、保存安定性の効果がより向上し、耐水性及び耐溶剤性に優れている。
本発明者らは、鋭意検討の結果、沸点が100℃以上300℃以下のアミノアルコールにより、少なくとも一部の酸性基が中和された、酸価が10mgKOH/g未満の樹脂を用いることにより、インクの保存安定性や吐出安定性にも優れるとの知見を得た。沸点が100℃以上のアミノアルコールで中和することにより、例えばアンモニアのような揮発性の中和剤を使用せずに樹脂を中和でき、上記樹脂の中和剤が揮発しにくくなり、インクのpHの変化を抑制できるため、樹脂エマルジョンの分散安定性およびインクの保存安定性や吐出安定性が良好になるものと推定される。
更に、上記第二態様のインクジェット記録用インク組成物は、例えば、低酸価の樹脂を中和できるだけのアミノアルコールを添加すればよいので、アミノアルコールの添加量を少量とすることができ、水溶性が高い塩基性物質を過剰に含むことを抑制できるため、印刷物の耐水性や耐溶剤性をより優れたものとすることができる。
以上のことから、本発明のインクジェット記録用インク組成物は、耐水性及び耐溶剤性に優れ、保存安定性及び吐出安定性にも優れており、連続吐出や間欠吐出の際も吐出不良が生じにくいため、インクジェット記録用途に好適に用いることができるものである。
【0020】
本発明のインクジェット記録用インク組成物は、樹脂と、アミノアルコールと、顔料と、溶剤とを含有するものであり、本発明の効果を損なわない範囲で、必要に応じて更に他の成分を含有してもよいものである。以下、このような本発明のインクジェット記録用インク組成物の各成分について、順に説明する。
【0021】
[酸価が10mgKOH/g未満の樹脂]
本発明に用いられる樹脂は、酸価が10mgKOH/g未満であって、インク組成物中でエマルジョン状態であるものである。
本発明においてエマルジョン状態とは、樹脂が樹脂微粒子としてインク中に分散している状態をいう。以下、当該樹脂微粒子を樹脂エマルジョンということがある。
インク中の樹脂エマルジョンは、溶剤が蒸発や浸透等により減少し、相対的に濃度が上昇すると、増粘・凝集する性質をもつため、記録媒体上でインクの浸透を抑制して、顔料の記録媒体への定着を促進する。
本発明においては、酸価が10mgKOH/g未満の樹脂を用いることにより、印刷物の耐水性及び耐溶剤性を向上することができ、塗工紙を用いても耐水性及び耐溶剤性に優れた印刷物を提供することができる。
【0022】
このような樹脂としては、例えば、アクリル樹脂、スチレン−アクリル樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリエステル樹脂、塩化ビニル樹脂、酢酸ビニル樹脂、塩化ビニル酢酸ビニル共重合樹脂、ポリエチレン樹脂、ウレタン樹脂、シリコーン(シリコン)樹脂、アクリルアミド樹脂、エポキシ樹脂、あるいはこれらの共重合樹脂の中から、酸価が10mgKOH/g未満の樹脂を適宜選択して用いることができる。これらの樹脂は、1種単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
本発明においては、分散安定性、耐水性及び耐溶剤性に優れるという、物性の観点からも、また、製造時の収率が高く、残留モノマーが少なく安全性に優れる点からも、中でも、アクリル樹脂を用いることが好ましい。
【0023】
上記アクリル樹脂を構成するモノマーは、公知の(メタ)アクリル酸エステルモノマーの中から適宜選択して用いることができる。本発明においては、酸価が10mgKOH/g未満となる範囲で、酸性基を有しない(メタ)アクリル酸エステルモノマーを主成分とし、適宜、酸性基を有するモノマーを組み合わせて用いることが好ましい。
なお、本発明において酸性基とは、水中で酸性を示す基をいい、例えば、カルボキシル基、スルホ基、リン酸基、及びこれらの酸無水物、酸ハロゲン化物等が挙げられる。
【0024】
酸性基を有しないモノマーとしては、公知のものの中から適宜選択して用いることができる。
酸性基を有しないモノマーとしては、単官能の(メタ)アクリル酸エステルモノマーを主成分として用いることが好ましい。中でも、酸性基、アミド基、イミド基、及び水酸基をいずれも有しないモノマーを主成分として用いることが好ましい。単官能の(メタ)アクリル酸エステルモノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、(メタ)アクリル酸アラルキルエステル、(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステル等が好適に用いられる。具体的には、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸ネオペンチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸−2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸トリデシル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸シクロペンチル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸−2−メチルシクロヘキシル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンタニル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンテニル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンタニルオキシエチル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンテニルオキシエチル、(メタ)アクリル酸ジシクロヘキシル、(メタ)アクリル酸イソボルニル、(メタ)アクリル酸アダマンチル、(メタ)アクリル酸アリル、(メタ)アクリル酸プロパギル、(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸ナフチル、(メタ)アクリル酸アントラセニル、(メタ)アクリル酸アントラニノニル、(メタ)アクリル酸ピペロニル、(メタ)アクリル酸フリル、(メタ)アクリル酸フルフリル、(メタ)アクリル酸テトラヒドロフリル、(メタ)アクリル酸テトラヒドロフルフリル、(メタ)アクリル酸ピラニル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸フェネチル、(メタ)アクリル酸クレジル、(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸−3,4−エポキシシクロヘキシルメチル、(メタ)アクリル酸−3,4−エポキシシクロヘキシルエチル、(メタ)アクリル酸−1,1,1−トリフルオロエチル、(メタ)アクリル酸パーフルオルエチル、(メタ)アクリル酸パーフルオロプロピル、(メタ)アクリル酸ヘプタデカフルオロデシル、(メタ)アクリル酸トリフェニルメチル、(メタ)アクリル酸クミル、(メタ)アクリル酸−3−(N,N−ジメチルアミノ)プロピル、(メタ)アクリル酸メトキシエチル、(メタ)アクリル酸エトキシエチル、(メタ)アクリル酸ブトキシエチル、(メタ)アクリル酸−2−シアノエチル、(メタ)アクリル酸トリメトキシシリルプロピル、(メタ)アクリル酸トリエトキシシリルプロピル、3−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシランなどのモノ(メタ)アクリル酸エステル類等が挙げられる。これらのモノマーは、三菱レイヨン(株)、日本油脂(株)、三菱化学(株)、日立化成工業(株)等から入手することができる。
上記モノマーは、合成時の反応性が良好で分散安定性が良好な低酸価樹脂エマルジョンの合成に適しているため、好ましい。
【0025】
上記アクリル樹脂を構成する、酸性基を有しないモノマーとしては、上記単官能の(メタ)アクリル酸エステルモノマー以外に、必要に応じてその他のモノマーを有していてもよい。
このようなその他のモノマーとしては、所望の耐水性および耐溶剤性を有するものとすることができるものであれば特に限定されるものではなく、エチレン性不飽和二重結合の数が1つである単官能モノマーであっても、2以上である多官能モノマーであっても良い。
例えば、酢酸ビニル、塩化ビニル、塩化ビニリデン、フッ化ビニル、フッ化ビニリデン、N−ビニルピロリドン、ビニルピリジン、N−ビニルカルバゾール、ビニルイミダゾール、ビニルエーテル、ビニルケトン、ビニルピロリドン等のビニルモノマー;スチレン、スチレンのα−、o−、m−、p−アルキル、ニトロ、シアノ、アミド、エステル誘導体、ビニルトルエン、クロルスチレン等の芳香族ビニルモノマー;エチレン、プロピレン、イソプロピレン等のオレフィンモノマー;ブタジエン、クロロプレン等のジエンモノマー;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のビニルシアン化合物モノマー等を用いることができる。
また、ポリエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、1,3−ブチレングリコールジアクリレート等のジアクリレート化合物;トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールエタントリアクリレート、テトラメチロールメタントリアクリレート等のトリアクリレート化合物;エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート等のジメタクリレート化合物;トリメチロールプロパントリメタクリレート、トリメチロールエタントリメタクリレート等のトリメタクリレート化合物;ジビニルベンゼン等を用いることができる。これらのモノマーは、1種単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
上記モノマーは、アクリル樹脂に所望の性能を付与したり、合成時の反応性を調整することが可能となるため、適宜選定することが好ましい。
【0026】
また、酸性基を有しないモノマーとして、本発明の効果を損なわない範囲で、アミド基又はイミド基を有するモノマーや、水酸基を有するモノマーを用いてもよい。
アミド基又はイミド基を有するモノマーとしては、例えば、アクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド等のアクリルアミドモノマー、(メタ)アクリル酸アニリド、N−ベンジルマレイミド、N−フェニルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド、N−ラウリンマレイミド、N−(4−ヒドキシフェニル)マレイミドなどのモノマレイミド、N−(メタ)アクリロイルフタルイミドなどのフタルイミド等が挙げられる。
また、水酸基を有するモノマーとしては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートおよびメチルα−(ヒドロキシメチル)(メタ)アクリレート、エチルα−(ヒドロキシメチル)(メタ)アクリレート、n−ブチルα−(ヒドロキシメチル)(メタ)アクリレート、1,4−シクロヘキサンジメタノールモノ(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0027】
酸価が10mgKOH/g未満の範囲で併用して用いられる、酸性基を有するモノマーとしては、例えば、カルボキシル基、スルホ基、リン酸基、及びこれらの酸無水物、酸ハロゲン化物等を含有するモノマーが挙げられる。中でも、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸等のエチレン性不飽和二重結合およびカルボキシル基を有するカルボキシル基含有モノマーが好適なものとして挙げられ、中でも、アクリル酸又はメタクリル酸がより好ましい。酸性基を有するモノマーは1種単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0028】
上記アクリル樹脂中の酸性基を有するモノマーの含有割合は、アクリル樹脂全量100質量部に対して3質量部以下であることが好ましく、2質量部以下であることがより好ましく、1.5質量部以下であることが更により好ましい。一方、酸性基を有するモノマーは、アクリル樹脂全量100質量部に対して0.005質量部以上であることが好ましく、0.01質量部以上であることがより好ましく、0.02質量部以上であることが更により好ましい。酸性基を有するモノマーの含有割合が上記下限値以上であれば、分散安定性に優れている。また酸性基を有するモノマーの含有割合が上記上限値以下であれば、耐水性や耐溶剤性に優れている。
酸性基を有しないモノマーの含有割合は、アクリル樹脂全量100質量部に対して、97質量部以上であることが好ましく、98質量部以上であることがより好ましく、98.5質量部以上であることが更により好ましい。酸性基を有しないモノマーは、アクリル樹脂全量100質量部に対して99.995質量部以下であることが好ましく、99.99質量部以下であることがより好ましく、99.98質量部以下であることが更により好ましい。中でも、酸性基、アミド基、イミド基及び水酸基をいずれも有しないモノマーの含有割合がアクリル樹脂全量100質量部に対して、97質量部以上であることが好ましく、98質量部以上であることがより好ましく、98.5質量部以上であることが更により好ましい。また、中でも、酸性基、アミド基、イミド基及び水酸基をいずれも有しないモノマーの含有割合がアクリル樹脂全量100質量部に対して、99.995質量部以下であることが好ましく、99.99質量部以下であることがより好ましく、99.98質量部以下であることが更により好ましい。酸性基、アミド基、イミド基及び水酸基をいずれも有しないモノマーの含有割合が上記範囲内であれば、分散安定性に優れ、且つ耐水性及び耐溶剤性に優れている。
アミド基又はイミド基を有するモノマーを用いる場合、その含有割合は、耐水性、耐溶剤性及び保存安定性を確保し、樹脂の黄変を抑制する点から、アクリル樹脂全量100質量部に対して、1質量部以下であることが好ましく、0.5質量部以下であることがより好ましい。
また、水酸基を有するモノマーの含有割合は、耐水性及び耐溶剤性を確保する点から、アクリル樹脂全量100質量部に対して、3質量部以下であることが好ましく、1質量部以下であることが好ましく、0.5質量%以下であることが更により好ましい。
【0029】
本発明において上記アクリル樹脂は、これらのモノマーを公知の方法により共重合することにより得ることができる。例えば、懸濁重合法、乳化重合法、溶液重合法などが挙げられる。また、例えば、水、モノマー、乳化剤および重合開始剤を混合して乳化重合反応させ、反応後に中和させて製造する方法を用いることができる。当該中和させる際に用いられる中和剤としては、後述する本発明の製造方法のように上記特定の沸点を有するアミノアルコールを用いることが、保存安定性及び吐出安定性の点から特に好ましいが、アンモニア等の中和剤で中和して樹脂を得てもよい。この場合であっても、アンモニアが揮発した際に、本発明のインク組成物中に含まれるアミノアルコールが樹脂を中和するため、保存安定性や吐出安定性は良好になる。
なお、乳化剤等については、乳化重合に一般的に用いられるものを使用することができ、具体的には、特開2012−51357号公報等に示されるものとすることができる。
当該アクリル樹脂は、ブロックコポリマー、ランダムコポリマー、グラフトコポリマーのいずれであってもよい。
【0030】
本発明において、上記樹脂の酸価は、10mgKOH/g未満である。酸価が10mgKOH/g未満の樹脂を用いることにより、印刷物の耐水性、耐溶剤性や耐油性等、優れた耐性が得られ、中でも、8mgKOH/g以下であることが好ましく、5mgKOH/g以下であることがより好ましい。また、酸価が10mgKOH/g未満の樹脂を用いることにより分散剤や顔料との相互作用を小さくし、表面張力や粘度等の物性変化を抑えてインクの保存安定性を向上することができる。さらに、樹脂エマルジョン同士の凝集を抑制する点から、上記樹脂の酸価は0.01mgKOH/g以上であることが好ましく、0.1mgKOH/g以上であることがより好ましい。
なお、本発明において酸価とは、試料(樹脂の固形分)1g中に含まれる酸性成分を中和するために要する水酸化カリウムの質量(mg)を表し、JIS K 0070に記載の方法に準ずる方法により測定される値である。本発明において樹脂の酸価は、樹脂をベンゼンのような難水溶性溶剤に抽出して、樹脂に含まれるアミノアルコール等の中和剤を除き、樹脂を溶解した状態で測定する。樹脂の酸価は、樹脂を構成するモノマー中の酸性基を有するモノマーの種類や含有割合によって決定されるものであり、中和剤の影響を受けないものである。つまり、中和前に樹脂の酸価を測定しても、酸性基の一部を中和した状態で測定しても、中和後に樹脂の酸価を測定しても、同じ酸価が得られる。そのため、本発明においてはこれらの状態での酸価測定値を同等に扱う。
【0031】
本発明において、上記樹脂のアミン価は、特に限定されないが、耐水性及び耐溶剤性に優れ、保存安定性、耐黄変性にも優れる点から、10mgKOH/g以下であることが好ましく、5mgKOH/g以下であることがより好ましく、2mgKOH/g以下であることが更により好ましい。
なお、本発明においてアミン価とは、樹脂の固形分1gを中和するのに必要な塩酸量に対して当量となる水酸化カリウムの質量(mg)を表し、JIS K 7237に記載の方法に準ずる方法により測定される値である。
【0032】
また、本発明において、上記樹脂の水酸基価は、特に限定されないが、耐水性及び耐溶剤性に優れ、保存安定性にも優れる点から、10mgKOH/g以下であることが好ましく、5mgKOH/g以下であることがより好ましく、2mgKOH/g以下であることが更により好ましい。
なお、本発明において水酸基価とは、樹脂の固形分1g中に含まれるOH基をアセチル化するために要する水酸化カリウムのmg数であり、JIS K 0070に記載の方法に準じて、無水酢酸を用いて試料中のOH基をアセチル化し、使われなかった酢酸を水酸化カリウム溶液で滴定することにより測定される。
なお、酸価、アミン価及び水酸基価は、樹脂を構成するモノマーの種類や含有割合によって適宜調整することができる。
【0033】
上記樹脂エマルジョンのpHは、保存安定性や吐出安定性の向上、及びインクジェットノズル等における金属の腐食を抑制する点から、7〜12であることが好ましく、7〜10であることがより好ましい。
なお、樹脂エマルジョンのpHは、JIS Z 8802に準拠したガラス電極を用いるpHメーターによって測定することができる。本発明においては、東亜ディーケーケー社製pHメーター HM−30Rで25℃にて樹脂エマルジョンのpHを測定した。
【0034】
本発明に用いられる樹脂の分子量は、適宜選択すればよく、特に限定されないが、樹脂エマルジョンの分散安定性及び、印刷物の耐水性及び耐溶剤性の点から、重量平均分子量が、10000以上であることが好ましく、10000〜1000000の範囲内であることがより好ましく、中でも、10000〜500000であることが更により好ましい。
なお、重量平均分子量Mwは、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)により測定された値であり(東ソー(株)製、HLC−8120GPC)、溶出溶媒を0.01モル/リットルの臭化リチウムを添加したN−メチルピロリドンとし、校正曲線用ポリスチレンスタンダードをMw377400、210500、96000、50400、206500、10850、5460、2930、1300、580(以上、Polymer Laboratories社製 Easi PS−2シリーズ)及びMw1090000(東ソー(株)製)とし、測定カラムをTSK−GEL ALPHA−M×2本(東ソー(株)製)として測定したものである。
【0035】
本発明において樹脂エマルジョンのガラス転移温度(Tg)は、適宜選択すればよいが、中でも、10℃〜90℃の範囲内であることが好ましく、15〜80℃の範囲内であることがより好ましく、20〜70℃であることが更により好ましい。Tgが上記下限値以上であることにより、印刷面を乾燥した後のベタツキが少なく、印刷物の耐性に優れたものとすることができる。ベタツキが少ないことにより、例えば印刷物を重ねた場合に、印刷物の印刷面が他の部材に接着する不具合であるブロッキングの発生を抑制することができる。また、Tgが上記上限値以下であることにより、印刷物を形成するために高い温度をかけることを回避でき、エネルギーコストを削減する事ことや、印刷基材が熱による損傷を受けないものとすることができる。
なお、このようなTgは、樹脂を構成するモノマーの種類や含有量等によって調整することができる。
本発明においてガラス転移温度(Tg)は、示差走査熱量測定(DSC)によって測定することができる。なお、本発明においてガラス転移温度(Tg)は、島津製作所(株)製の示差走査熱量計「DSC−50」にて測定されたものである。
【0036】
また、樹脂エマルジョンの導電率は、適宜調整すればよいものであり、特に限定されないが、300μS/cm以下であることが好ましく、中でも200μS/cm以下であることが好ましく、特に、150μS/cm以下であることが好ましい。上記導電率が上述の範囲内であることにより、樹脂中のイオン性基およびその対イオンあるいはイオン性不純物が少なく、樹脂酸価が低く、極性の低いものとすることができるからである。また、イオン性基等が少ないことにより、顔料の分散安定性への影響の少ないものとすることができるからである。
特に顔料として、顔料表面に親水性基等の官能基が導入された自己分散型顔料を使用する場合には、樹脂の導電率が上述の範囲内であることで、樹脂と自己分散型顔料との反応性を低くし、インクの保存安定性を向上することができるからである。上記導電率が高すぎる場合には、静電反発力によって分散安定性を保っている顔料分散体の分散状態を不安定化する可能性があり、特に、顔料表面に直接親水性基を修飾した自己分散型顔料分散体を含有する場合に、インクの安定性が悪くなる恐れがある。
また、このようなことから、上記樹脂の導電率の下限については低いほど好ましいが、通常は、20μS/cm以上である。20μS/cm以上であれば、樹脂の分散安定性に優れ、安定した品質の樹脂の製造が容易だからである。
なお、上記導電率は、上記樹脂の固形分1質量%水溶液の導電率を示すものである。
また、上記導電率の測定方法としては、まず樹脂をイオン交換水で希釈して固形分1質量%に調整した後、導電率計を用いて樹脂固形分1質量%水溶液の導電率を測定する方法を採用することができる。また、導電率計としては、Eutech Instruments製、型式:EC Testr 11+を使用することができる。
このような樹脂の固形分1質量%水溶液の導電率は、例えば、樹脂の種類、モノマー種、反応機構、乳化剤の種類、乳化剤の添加の有無、中和剤の種類等によって調整することができる。樹脂の酸価、アミン価、水酸基価が上述の範囲内であれば、上記導電率が高くなることを防ぐことができる。 樹脂の酸価、アミン価、水酸基価が上述の範囲より高い場合は、樹脂の極性が高いため、導電率も高くなる。
【0037】
本発明のインクジェット記録用インク組成物において、上記樹脂の含有割合は、特に限定されないが、インク中での樹脂エマルジョンの安定性及び、耐水性、耐溶剤性の点から、インク組成物全量100質量部に対して、0.05〜20質量部であることが好ましく、0.1〜15質量部であることがより好ましく、1〜10質量部であることが更により好ましい。
【0038】
本発明のインクジェット記録用インク組成物において、上記樹脂はエマルジョン状態で存在する。当該樹脂のインク中での平均粒子径(平均分散粒径)は、特に限定されないが、樹脂エマルジョンの分散安定性、インクジェット法におけるインクの吐出性及び印刷物の光沢性に優れる点から、500nm以下が好ましく、200nm以下がより好ましく、更に150nm以下がより好ましい。なお、平均粒子径の下限については小さい程好ましいため、特に限定されるものではないが、通常、30nm以上である。
樹脂の平均粒子径(平均分散粒径)は、動的光散乱法によって求めることができる。動的光散乱法とは、粒子に対してレーザー光を当てたときに粒子サイズによって回折散乱光の光強度分布が異なることを利用して粒子サイズを測定する方法であり、例えば、日機装株式会社製マイクロトラック粒度分布測定装置UPAや、大塚電子製濃厚系粒径アナライザーFPAR−1000を用いて測定を行うことができる。また、測定は、測定温度25℃、積算時間3分間、測定に用いたレーザーの波長660nmの条件で行い、得られたデータを、CONTIN法で解析することで散乱強度分布を得、最も頻度の高い粒径を平均粒子径とすることができる。なお、ここでの平均粒子径は、体積平均粒径である。なお、本願の測定は、大塚電子製濃厚系粒径アナライザーFPAR−1000で行ったものである。
【0039】
[アミノアルコール]
本発明のインクジェット記録用インク組成物は、沸点が100℃以上300℃以下のアミノアルコールを含有する。このような特定の沸点を有し、且つ水酸基を有するアミノアルコールを前記樹脂と組み合わせて用いることにより、保存安定性及び吐出安定性に優れながら、印刷物が耐水性及び耐溶剤性に優れるインクジェット記録用インク組成物が得られる。アミノアルコールは水酸基を有することから、樹脂の中和剤として機能しながら、樹脂と水や水性溶剤との親和性の向上に寄与していると推定される。
本発明においてアミノアルコールは沸点が100℃以上のものを用いるため揮発が抑制されて、pH安定性に優れている。そのため、pHの変化により分散安定性が低下しやすい自己分散型顔料を用いた場合であっても、当該自己分散型顔料の分散安定性を良好なものとすることができる。また、アミノアルコールは水酸基を有することから、樹脂の中和剤として機能するとともに、当該樹脂と、水や水性溶剤との親和性を向上するものと推定される。その結果、インク組成物中の樹脂エマルジョンの分散状態が安定化され、凝集等の問題がなく、吐出安定性にも優れるようになるものと推定される。
【0040】
本発明においてアミノアルコールは、少なくとも1個の水酸基で置換されたアルキル基と、少なくとも1個のアミノ基を有する化合物であり、アミノ基は、1級、2級、3級のいずれであってもよい。本発明において用いられるアミノアルコールは、前記樹脂の分散安定性の点から、下記一般式(I)で表される構造を有することが好ましい。
【0041】
【化1】
(一般式(I)中、R
1〜R
3はそれぞれ独立に、水素原子、又は、置換基を有していてもよく、オキシ基を含んでいてもよいアルキル基、又は、置換基を有していてもよいアリール基であり、R
1〜R
3のうち少なくとも一つは、少なくとも水酸基を有するアルキル基である。R
1〜R
3は、それらが結合して環状構造を形成してもよく、ヘテロ原子の結合を含んでいてもよい。)
【0042】
R
1〜R
3におけるアルキル基は、直鎖、分岐鎖、又は環状のアルキル基であって、オキシ基を含むアルキレンオキシド基であってもよい。当該アルキル基の炭素原子数は特に限定されないが、樹脂との相互作用の点から炭素原子数が1〜4個であることが好ましい。
アルキル基が有していてもよい置換基としては、樹脂エマルジョンの分散安定性の点から、水酸基、アミノ基、又はアリール基であることが好ましい。なお、R
1〜R
3のうち少なくとも一つは、水酸基を有する。
【0043】
R
1〜R
3におけるアリール基は、フェニル基、ベンジル基、ナフチル基等が挙げられ、フェニル基であることが好ましい。アリール基が有していてもよい置換基としては、炭素原子数が1〜4のアルキル基、ハロゲン原子等が挙げられる。前記樹脂と、アミノ基との相互作用の点から、嵩高くないことが好ましく、一般式(I)中のアリール基の数は2個以下であることが好ましく、1個以下であることがより好ましい。
【0044】
R
1〜R
3が互いに結合して形成してもよい環状構造としては、ピロリジン環構造やピペリジン環構造等が挙げられ、環状構造中に含まれるヘテロ原子として酸素原子や窒素原子を有し、モルホリン環構造やピペラジン環構造を形成していてもよい。
【0045】
一般式(I)において、水酸基の数は1個以上であればよく、特に限定されないが、インク組成物中の水、溶剤や、樹脂との親和性の点、及び、沸点を100℃以上300℃以下としやすい点から、水酸基の数が1〜3個であることが好ましく、1〜2個であることがより好ましく、1個であることが更により好ましい。
【0046】
本発明に用いられるアミノアルコールの沸点は、100℃以上300℃以下であり、100〜250℃であることが好ましく、100〜200℃であることがより好ましい。沸点が高すぎるとインク組成物の乾燥が遅くなったり、印刷物の耐性が劣る恐れがある。一方、沸点が低すぎると、揮発性が高くなり、保存安定性や吐出安定性に問題が生じる恐れがある。
【0047】
このようなアミノアルコールの具体例としては、1−(ジメチルアミノ)−2−プロパノール(沸点:126℃)、N,N−ジメチル−2−アミノエタノール(沸点:135℃)、N−ベンジルエタノールアミン(沸点:153℃)、N,N−ジメチルイソプロパノールアミン(沸点:159℃)、1−アミノ−2−プロパノール(沸点:159℃)、N−メチルエタノールアミン(沸点160℃)、N,N−ジエチル−2−アミノエタノール(沸点:162℃)、2−(ジメチルアミノ)−2−メチル−1−プロパノール(沸点:163℃)、3−(ジメチルアミノ)−1−プロパノール(沸点:164℃)、2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール(沸点:166℃)、3−(メチルアミノ)−1−プロパノール(沸点:169℃)、N−エチルエタノールアミン(沸点:169℃)、2−アミノエタノール(沸点:170℃)、N−tブチルエタノールアミン(沸点:175℃)、3−アミノ−1−プロパノール(沸点:188℃)、N−nブチルエタノールアミン(沸点:199℃)、ジエタノールアミン(沸点:217℃)、3−(ジメチルアミノ)−1,2−プロパンジオール(沸点:217℃)、2−(2−アミノエトキシ)エタノール(沸点:220℃)、N,N−ジブチルエタノールアミン(沸点:229℃)、2−(2−アミノエチルアミノ)エタノール(沸点:244℃)、N−メチルジエタノールアミン(沸点:247℃)、ヒドロキシエチルピペラジン(沸点:246℃)、3−メチルアミノ−1,2−プロパンジオール(沸点:247℃)、N−エチルジエタノールアミン(沸点:250℃)、2−フェニル−2−アミノエタノール(沸点:261℃)、N−nブチルジエタノールアミン(沸点:265℃)、N−フェニルジエタノールアミン(沸点:270℃)、N−tブチルジエタノールアミン(沸点:270℃)、2−アミノ−1,3−プロパンジオール(沸点:277℃)等が挙げられる。アミノアルコールは、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0048】
インク組成物中のアミノアルコールの含有割合は、適宜調整すればよく特に限定されないが、樹脂エマルジョンの分散安定性を向上し、インク組成物の保存安定性及び吐出安定性を向上する点から、インク組成物全量100質量部に対して、0.001質量部以上であることが好ましく、0.01質量部以上であることがより好ましい。一方、インク組成物中のアミノアルコールの含有割合は、印刷物の耐水性や耐溶剤性を向上する点から、インク組成物全量100質量部に対して、1.0質量部以下であることが好ましく、0.5質量部以下であることがより好ましく、更に0.1質量部未満であることがより好ましい。インク組成物中のアミノアルコールの含有割合が1質量部を超える場合には、印刷物の乾燥が遅くなる恐れがある。
アミノアルコールの含有割合が0.001質量部以上であれば、インク組成物のpH安定性に優れている。そのため、樹脂エマルジョンの安定性のみならず、顔料の分散安定性にも優れている。特にpHの変化により分散性が低下しやすい自己分散型顔料を用いる場合においても、顔料分散安定性に優れている。アミノアルコールの含有量が上記範囲であると、樹脂エマルジョンと自己分散型顔料の両方の分散安定性を良好に保つ事ができ、且つ、印刷物の乾燥性も良好であるため、好ましい。
【0049】
[顔料]
本発明において顔料は、水性インクに用いられる公知の顔料の中から適宜選択して用いることができ、有機顔料であっても無機顔料であってもよい。
【0050】
有機顔料としては、例えば、不溶性アゾ顔料、溶性アゾ顔料、染料からの誘導体、フタロシアニン系有機顔料、キナクリドン系有機顔料、ペリレン系有機顔料、ジオキサジン系有機顔料、ニッケルアゾ系顔料、イソインドリノン系有機顔料、ピランスロン系有機顔料、チオインジゴ系有機顔料、縮合アゾ系有機顔料、ベンズイミダゾロン系有機顔料、キノフタロン系有機顔料、イソインドリン系有機顔料、キナクリドン系固溶体顔料、ペリレン系固溶体顔料等の有機固溶体顔料、その他の顔料として、カーボンブラック等が挙げられる。
有機顔料をカラーインデックス(C.I.)ナンバーで例示すると、C.I.ピグメントイエロー1、2、3、12、13、14、16、17、20、24、73、74、75、83、93、95、97、98、109、110、114、117、120、125、128、129、130、137、138、139、147、148、150、151、153、154、155、166、168、180、185、213、214;C.I.ピグメントレッド5、7、9、12、48、49、52、53、57、97、112、122、123、147、149、168、177、180、184、192、202、206、209、215、216、217、220、223、224、226、227、228、238、240、254;C.I.ピグメントオレンジ16、36、43、51、55、59、61、64、71;C.I.ピグメントバイオレット19、23、29、30、37、40、50;C.I.ピグメントブルー15、15:1、15:3、15:4、15:6、16、22、60、64;C.I.ピグメントグリーン7、36、58;C.I.ピグメントブラウン23、25、26等が挙げられる。
【0051】
上記無機顔料の具体例としては、硫酸バリウム、酸化鉄、酸化亜鉛、炭酸バリウム、硫酸バリウム、シリカ、クレー、タルク、酸化チタン、炭酸カルシウム、合成マイカ、アルミナ、亜鉛華、硫酸鉛、黄色鉛、亜鉛黄、べんがら(赤色酸化鉄(III))、カドミウム赤、群青、紺青、酸化クロム緑、コバルト緑、アンバー、チタンブラック、合成鉄黒、無機固溶体顔料等を挙げることができる。
【0052】
上記顔料の平均分散粒径は、所望の発色が可能なものであれば特に限定されるものではなく、用いる顔料の種類によっても異なるが、顔料の分散安定性が良好で、充分な着色力を得る点から、5nm〜200nmの範囲内であることが好ましく、30nm〜150nmの範囲内であることがより好ましい。上記平均分散粒径が上記上限値以下であれば、インクジェットヘッドのノズル目詰まりを起こしにくく、再現性の高い均質な画像を得ることができ、得られる印刷物を高品質のものとすることができるからである。上記の下限値以下の場合には耐光性が低下する場合があるからである。
【0053】
上記顔料の含有量としては、所望の画像を形成可能であれば特に限定されるものではなく、適宜調整されるものである。具体的には、顔料の種類によっても異なるが、インク組成物全量100質量部に対して、0.05質量部〜20質量部の範囲内であることが好ましく、0.1質量部〜10質量部の範囲内であることがより好ましい。上記含有量が上述の範囲内であることにより、顔料の分散安定性と着色力のバランスに優れたものとすることができるからである。
【0054】
また、本発明における顔料は、上記顔料を顔料分散用の上記界面活性剤や分散剤等によって水性溶媒中に分散させた顔料分散体であってもよく、上記顔料表面に、親水性基を修飾した自己分散型顔料分散体として含まれるものであってもよい。本発明においては、耐水性の点から自己分散型顔料を用いることが好ましい。従来、顔料分散安定性の点から、pHが不安定な樹脂エマルジョンと、自己分散型顔料とを組み合わせることが困難であったが、本発明のインク組成物はpH安定性に優れているため、自己分散型顔料を、樹脂エマルジョンと組み合わせても分散安定性に優れたものとすることができる。
【0055】
このような自己分散型顔料としては、例えば、親水性基として、特開2012−51357号公報等に記載のカルボニル基、カルボキシル基、ヒドロキシル基、スルホン酸基、および、少なくとも1つのP−OまたはP=O結合を有するリン含有基等で修飾されたものを挙げることができる。また、市販品としては、例えば、キャボット・スペシャルティ・ケミカルズ社製の「CAB−O−JET(登録商標)200」、「CAB−O−JET(登録商標)250C」、「CAB−O−JET(登録商標)260M」、「CAB−O−JET(登録商標)270Y」、「CAB−O−JET(登録商標)740Y」、「CAB−O−JET(登録商標)300」、「CAB−O−JET(登録商標)400」、「CAB−O−JET(登録商標)450C」、「CAB−O−JET(登録商標)465M」、「CAB−O−JET(登録商標)470Y」、「CAB−O−JET(登録商標)480V」、CAB−O−JET(登録商標)740Y」;オリエント化学工業(株)製の「Microjet black 162、Aqua−Black 001」、「BONJET(登録商標)BLACK CW−1」「BONJET(登録商標)BLACK CW−2」及び「BONJET(登録商標)BLACK CW−3」;東洋インキ製造(株)製の「LIOJET(登録商標)WD BLACK 002C」等が挙げられる。中でも、少なくとも1つのP−OまたはP=O結合を有するリン含有基によって修飾された自己分散型顔料が、インクの定着性や耐水性に優れるため、好ましい。自己分散型顔料は1種単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。自己分散型顔料は、顔料に修飾された官能基の効果により、吸収性基材に印刷された場合でも、顔料成分が表面に留まりやすく、鮮明な画像を得る事ができる。
【0056】
一方、上記分散剤としては、インクに一般的に用いられるものを使用することができる。具体的には、特開2012−51357号公報等に記載のカチオン系、アニオン系、ノニオン系、両性等の界面活性剤を使用できる。なかでも高分子界面活性剤(高分子分散剤)を好ましく用いることができる。高分子分散剤によって分散された顔料は、顔料表面が高分子分散剤と、樹脂によって覆われた状態で、インク被膜を形成する事ができるため、高光沢な画像を得る事ができる。市販品としては、SARTOMER社製「SMA1440」(スチレン−マレイン酸−マレイン酸エステル系高分子分散剤 重量平均分子量7,000、酸価185mgKOH/g)、BASFジャパン社製「ジョンクリル682」(スチレン−アクリル酸系高分子分散剤 重量平均分子量 1,700、酸価238mgKOH/g)、岐阜セラック社製「RY72」(スチレン−アクリル酸−アクリル酸エステル系高分子分散剤 重量平均分子量14,800、酸価170mgKOH/g)等を挙げることができる。上記分散剤と顔料の質量比率は、10:1〜10:3が好ましく、上記分散剤のインク組成物中の含有量はインク組成物全量100質量部に対して、1質量部以下が好ましい。上記分散剤の含有量が上記範囲内であれば、印刷物の耐水性や耐溶剤性に優れている。
【0057】
[溶剤]
本発明のインクジェット記録用インク組成物は、溶剤を含有する。当該溶剤は、インク組成物中の各成分とは反応せず、当該各成分を溶解乃至分散可能な溶剤の中から適宜選択して用いることができる。本発明においては、中でも、水性溶剤、及び水から選択される1種以上の溶剤を含むことが好ましい。本発明において水性溶剤とは、25℃の水100質量部中に、1気圧下で3質量部以上溶解する溶剤のことをいう。
本発明においては、樹脂の分散安定性の点から、水性溶剤、及び水から選択される1種以上の溶剤を、全溶剤中に50質量%以上含むものであることが好ましく、70質量%以上含むものがより好ましく、80質量%以上含むものであることが更により好ましく、95質量%以上含むものであることが更により好ましい。
【0058】
水性溶剤の具体例としては、メチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、sec−ブチルアルコール、tert−ブチルアルコール、イソブチルアルコール、n−ペンタノール等の炭素数1〜5のアルキルアルコール類;3−メトキシ−3−メチル−1−ブタノール、3−メトキシ−1−プロパノール、1−メトキシ−2−プロパノール、3−メトキシ−n−ブタノール等の1価のアルコール類;1−ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、3−メトキシプロパンアミド、3−ブトキシプロパンアミド、N,N−ジメチル−3−メトキシプロパンアミド、N,N−ジブチル−3−メトキシプロパンアミド、N,N−ジブチル−3−ブトキシプロパンアミド、N,N−ジメチル−3−ブトキシプロパンアミド等のアミド類;アセトン、ジアセトンアルコール等のケトンまたはケトアルコール類;テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類;ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等のオキシエチレンまたはオキシプロピレン共重合体;エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、イソブチレングリコール、トリエチレングリコール、トリプロピレングリコール、テトラエチレングリコール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,2−ペンタンジオール、1,2−ヘキサンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、2−メチル−2,4−ペンタンジオール、3−メチル−1,3−ブタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール等のジオール類;グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、1,2,6−ヘキサントリオール等のトリオール類:メソエリスリトール、ペンタエリスリトール等の4価アルコール類;エチレングリコールモノメチル(またはエチル、プロピル、n−ブチル、イソブチル、)エーテル、ジエチレングリコールモノメチル(またはエチル、プロピル、n−ブチル、イソブチル、)エーテル、トリエチレングリコールモノメチル(またはエチル、プロピル、n−ブチル、イソブチル)エーテル、プロピレングリコールモノメチル(またはエチル、プロピル、n−ブチル、)エーテル、ジプロピレングリコールモノメチル(またはエチル、プロピル、n−ブチル,)エーテル等のモノアルキルエーテル類;ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールエチルメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジエチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールジエチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールジエチルエーテル等の多価アルコールのジアルキルエーテル類;モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、N−メチルエタノールアミン、N−エチルエタノールアミン、N−ブチルエタノールアミン、N−メチルジエタノールアミン、N−エチルジエタノールアミン、N−ブチルジエタノールアミン等のアルカノールアミン類;N−メチル−2−ピロリドン、2−ピロリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン等の含窒素複素環化合物;γ−ブチロラクトン、スルホラン等の環状化合物等が挙げられる。
本発明において用いられる水性溶剤は、25℃の水100質量部中に、1気圧下で5質量部以上溶解する溶剤が好ましい。例えば、モノアルキルエーテル類を含有する場合は、具体的には、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、が好ましい。
【0059】
また、本発明においては、水性溶剤として、当該水性溶剤の50質量%水溶液の粘度(V50)と、20質量%水溶液の粘度(V20)との比(V50/V20)が、2.0〜3.6の範囲内である水性溶剤、中でも、2.0〜3.2の範囲内である水性溶剤を含み、当該水性溶剤が、全水性溶剤の50質量%以上含むことが好ましい。粘度比が上述の範囲内の水性溶剤を全水性溶剤の50質量%以上含むことにより、インクジェットノズルに付着したインク中の水が揮発した後のインク粘度が急激に上昇することを抑制することが可能となり、流動性が良好で、連続吐出性や放置後吐出性が良好なインクとすることができるからである。上記粘度比が上述の範囲内の水性溶剤が、水性溶剤全量の70質量%以上であることが好ましく、80質量%以上であることがより好ましい。
【0060】
なお、粘度の測定方法については、粘度を精度良く測定できる方法であれば特に限定されるものではないが、例えば、レオメーター、B型粘度計、キャピラリー式粘度計等の粘度測定装置を用いる方法が挙げられる。上記キャピラリー式粘度測定法は、DIN 53015又はISO/DIS 12058に記載されている方法に準じて行うことができる。より具体的には、測定装置として、キャピラリー式粘度計Anton Paar製「AMVn」を用い、測定温度25℃にて測定を行うことができる。
【0061】
上記V50/V20が、2.0〜3.6の範囲内を満たす水溶性有機溶剤としては、1価のアルコール類、ジオール類、トリオール類、モノアルキルエーテル類、ジアルキルエーテル類が好ましく、中でも、1価のアルコール類、ジオール類、トリオール類がより好ましく、さらに、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、1,2−ブタンジオール、1,2−ヘキサンジオール、1,2−ペンタンジオール、1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、3−メトキシ−3−メチル−1−ブタノール、3−メトキシ−1−ブタノール、グリセリンであることがより好ましい。
【0062】
上記溶剤に含まれる水としては、種々のイオンを含有するものではなく、脱イオン水を使用することが好ましい。
溶剤中の水の含有量としては、上記各成分を分散または溶解可能であればよく、適宜調整すればよい。中でも、溶剤全量に対して、10質量%〜95質量%の範囲内であることが好ましく、20質量%〜95質量%の範囲内であることがより好ましく、30質量%〜90質量%の範囲内であることがさらにより好ましい。
また、溶剤中の水性溶剤の含有量としては、溶剤全量に対して、5質量%〜90質量%の範囲内であることが好ましく、5質量%〜80質量%の範囲内であることがより好ましく、10質量%〜70質量%の範囲内であることが更により好ましい。
上記水および水性溶剤の含有量が上述の範囲内であることにより、保湿性が十分でありノズル詰まり等の少ないものとすることができるからである。また、インクジェットヘッドによる吐出が容易なものとすることができるからである。
【0063】
上記溶剤の含有量は、インク組成物の分散性や、吐出性等の点から、適宜調整すればよい。中でも、インクの固形分濃度が0.1質量%〜30質量%となるように溶剤を含有することが好ましく、1質量%〜20質量%となるように含有することがより好ましく、1質量%〜15質量%となるように含有することが更により好ましい。上記含有量が上述の範囲内であることにより、吐出性に優れたものとすることができるからである。
なお、本発明において固形分とは、インク中の溶剤以外の全ての成分を示すものである。
【0064】
[他の成分]
本発明のインクジェット記録用インク組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、更に他の成分を含有してもよい。他の成分としては、界面活性剤、浸透剤、湿潤剤、防腐剤、酸化防止剤、導電率調整剤、pH調整剤、粘度調整剤、消泡剤、脱酸素剤などが挙げられる。
【0065】
本発明においては、インクジェット記録用インク組成物の吐出安定性を向上するとともに、当該インク組成物の表面張力を調整する点から、界面活性剤を含有することが好ましい。
界面活性剤は、従来公知のものの中から適宜選択して用いることができる。中でも、表面張力の調整性が優れる点から、アニオン系界面活性剤、非イオン性界面活性剤、シリコーン(シリコン)系界面活性剤、フッ素系界面活性剤、アセチレングリコール系界面活性剤、等が好ましく用いられる。具体例としては、エマール、ラテムル、ペレックス、ネオペレックス、デモール(いずれも、アニオン系界面活性剤;花王株式会社製)、サンノール、リポラン、ライポン、リパール(いずれも、アニオン系界面活性剤;ライオン株式会社製)、ニューコール290−A、290−KS、ニューコール291−M、ニューコール291−PG、ニューコール291−GL、ニューコール292−PG、ニューコール293、ニューコール297(いずれも、アニオン系界面活性剤;日本乳化剤(株)製)、ノイゲン、エパン、ソルゲン(いずれも非イオン性界面活性剤;第一工業製薬株式会社製)エマルゲン、アミート、エマゾール(いずれも非イオン性界面活性剤;花王株式会社製)、ナロアクティー、エマルミン、サンノニック(いずれも非イオン性界面活性剤;三洋化成工業株式会社製)、サーフィノール104、82、465、485、TG、2502、ダイノール604、ダイノール607(いずれも、アセチレングリコール系界面活性剤;エアープロダクツ社製)、オルフィンE1004、E1010、PD−004、PD−501、PD−502、SPC、EXP4300、サーフィノールMD−20(いずれも、アセチレングリコール系界面活性剤;日信化学工業株式会社製)、アセチレノールEH、E40、E60、E81、E100、E200(いずれも、川研ファインケミカル(株)製)、メガファック(フッ素系界面活性剤;DIC株式会社製)、サーフロン(フッ素系界面活性剤;AGCセイミケミカル社製)、BYK−330、BBYK−333、BYK−348、BYK−381、BYK−3455、BYK−3410、BYK−3411、BYK−DYNWET800、BYK−3440(いずれもノニオン系界面活性剤;ビックケミー社製)、シルフェイスSAG503A、シルフェイスSJM−002、シルフェイスSJM−003(いずれもシリコーン(シリコン)系界面活性剤;日信化学工業(株)製)、FZ−2122、FZ−2110、FZ−7006、FZ−2166、FZ−2164、FZ−7001、FZ−2120、SH 8400、FZ−7002、FZ−2104、8029 ADDITIVE、8032 ADDITIVE、57 ADDITIVE、67 ADDITIVE、8616 ADDITIVE(いずれもシリコーン(シリコン)系界面活性剤;東レ・ダウコーニング社製)、KF−6012、KF−6015、KF−6004、KF−6013、KF−6011、KF−6043、KP−104、110、112、323、341、(いずれもシリコーン(シリコン)系界面活性剤;信越化学(株)製)、などが挙げられる。界面活性剤の含有量は、溶剤や他の成分に応じて適宜調整される。界面活性剤の含有量は、インクジェット記録用インク組成物全量に対して、0.01〜10.0質量%程度とすることが好ましく、0.1〜5.0質量%の範囲内であることがより好ましい。
【0066】
本発明においては、インクの保存安定性及び吐出安定性に優れ、樹脂の分散安定性にも優れ、印刷物の耐水性及び耐溶剤性にも優れ画像鮮明性も向上する点から、界面活性剤として、下記一般式(II)で表される化合物、及びポリシロキサン化合物から選択される1種以上を含むことが好ましい。塗工紙に対する浸透性及び濡れ広がり性のバランスに優れたものにすることができる点から、中でも、下記一般式(II)で表される化合物を用いることが好ましく、下記一般式(II)で表される化合物及びポリシロキサン化合物を含むことが、より好ましい。
【0067】
【化2】
(一般式(II)中、R
4およびR
5はそれぞれ独立に、水素原子または炭素原子数1〜20の直鎖または分岐鎖のアルキル基である。mおよびnはそれぞれ0〜20の整数である。Mは一価の陽イオンである。)
【0068】
R
4およびR
5はそれぞれ独立に、水素原子または炭素原子数1〜20の直鎖または分岐鎖のアルキル基であり、上記樹脂の分散安定性を向上する点から、中でも、炭素原子数4〜20の直鎖または分岐鎖のアルキル基であることが好ましく、炭素原子数4〜12の直鎖または分岐鎖のアルキル基であることがより好ましい。インクの浸透性が良好で、更に樹脂との親和性が高く樹脂の分散性向上効果が高いからである。
【0069】
m及びnの値は、エチレンオキサイドの繰り返し数を表し、前記樹脂や溶剤の種類に応じて適宜選択すればよい。
【0070】
Mは、公知の一価の陽イオンの中から適宜選択すればよく、例えば、リチウム(Li
+)、ナトリウム(Na
+)、カリウム(K
+)、アンモニア(NH
4+)、トリエタノールアミン((HOCH
2CH
2C)
3NH
+)等を挙げることができ、なかでも、インクの長期保管時の粘度や表面張力の変化等を抑えるといった、保存安定性の観点から、ナトリウム(Na
+)、カリウム(K
+)が好ましい。
【0071】
上記一般式(II)で表される化合物の具体例としては、日本サイテック・インダストリーズ(株)製 AEROSOL TR−70(ジトリデシルスルフォサクシネートナトリウム)、TR−70HG(ジトリデシルスルフォサクシネートナトリウム)、OT−75(ジオクチルスルフォサクシネートナトリウム)、OT−N(ジオクチルスルフォサクシネートナトリウム)、MA−80(ジヘキシルスルフォサクシネートナトリウム)、IB−45(ジイソブチルスルフォサクシネートナトリウム)、EF−800(スルフォサクシネートナトリウムエチレンオキサイド変性ハーフエステル)、A−102(スルフォサクシネートナトリウムエチレンオキサイド変性ハーフエステル)、花王(株)製 ペレックスOT−P(ジアルキルスルフォサクシネートナトリウム)、ペレックスCS(ジアルキルスルフォサクシネートナトリウム)、ペレックスTR(ジアルキルスルフォサクシネートナトリウム)、ペレックスTA(ジアルキルスルフォサクシネートナトリウム)、日本乳化剤(株)製 ニューコール290−A(ジアルキルスルフォサクシネートナトリウム)、ニューコール290−KS(ジアルキルスルフォサクシネートナトリウム)、ニューコール291−M(ジ−2−エチルヘキシルスルフォサクシネートナトリウム)、ニューコール291−PG(ジ−2−エチルヘキシルスルフォサクシネートナトリウム)、ニューコール291−GL(ジ−2−エチルヘキシルスルフォサクシネートナトリウム)、ニューコール292−PG(ジポリオキシエチレン−2−エチルヘキシルスルフォサクシネートナトリウム)、ニューコール293(モノアルキルスルフォサクシネートジナトリウム)、ニューコール297(モノアルキルスルフォサクシネートジナトリウム)等が挙げられ、なかでも、ジアルキルスルフォサクシネート塩、ジポリオキシエチレンアルキルスルフォサクシネート塩を好ましく用いることができ、特に、ジ−2−エチルヘキシルスルフォサクシネート塩、ジヘキシルスルフォサクシネート塩、ジトリデシルスルフォサクシネート塩、ジブチルスルフォサクシネート塩、ジポリオキシエチレン−2−エチルヘキシルスルフォサクシネート塩を好ましく用いることができる。上記一般式(II)で表される化合物であることにより、上記樹脂の分散安定性により優れたものとすることができるからである。
【0072】
界面活性剤として、上記一般式(II)で表される化合物を用いる場合、その含有量としては、特に限定されるものではないが、インクの浸透性と樹脂の分散安定性の点から、インク組成物全量100質量部に対して、0.005質量部以上であることが好ましく、0.01質量部以上であることがより好ましく、更に0.03質量部以上であることがより好ましい。また、上記一般式(II)で表される化合物の含有量の上限は、特に限定されないが、インク組成物全量100質量部に対して、5.0質量部以下であることが好ましく、更に3.0質量%以下であることがより好ましく、1.0質量%以下であることがさらに好ましい。上記含有量が上述の範囲内であることにより、インクの浸透性と樹脂の分散安定性に優れたものとすることができるからである。
【0073】
界面活性剤として用いられるポリシロキサン化合物としては、ポリシロキサン結合(−Si−O−Si−)を主骨格として有するもの、具体的には、下記一般式(III)で表されるシロキサン構成単位を有するものであれば特に限定されるものではない
【0074】
【化3】
(一般式(III)中、R
6およびR
7は、それぞれ独立に水素原子、炭素原子数が1〜4のアルキル基、又はフェニル基であり、複数あるR
6および複数あるR
7は互いに同一であっても異なっていてもよい。また、pは2以上の整数である。)
【0075】
R
6およびR
7は、表面張力低減効果に優れ、インク組成物の濡れ広がりを向上する点から、炭素原子数が1〜4のアルキル基であることが好ましく、中でも、メチル基であること、即ち、ポリジメチルシロキサン化合物であることがより好ましい。
また、pは2以上の整数であれば特に限定されるものではないが、2〜10000の範囲内であることが好ましく、なかでも、2〜2000の範囲内であることが好ましい。上記繰り返し数の構造を有することにより、優れた表面張力低減効果を有するものとすることができるからである。
【0076】
上記ポリシロキサン化合物としては、上記シロキサン構成単位を有するものであれば特に限定されるものではないが、ポリエーテル基を有するもの、すなわち、ポリエーテル基変性ポリシロキサン化合物であることが好ましい。上記ポリエーテル基を有することにより、ポリシロキサン化合物を水溶性を有するものとすることが容易だからである。
【0077】
上記ポリエーテル基としては、アルキレンオキサイド含有基を挙げることができ、なかでも、エチレンオキサイド含有基、プロピレンオキサイド含有基であることが好ましく、特に、エチレンオキサイド含有基であることが好ましい。上記アルキレンオキサイド基であることにより、水溶性を有するものとすることが容易だからである。
【0078】
上記ポリエーテル基変性ポリシロキサン化合物としては、上記ポリエーテル基を有するものであれば特に限定されるものではないが、例えば、ポリシロキサン構造の片末端または両末端のケイ素原子や、ポリシロキサン構造の側鎖、すなわち、上記シロキサン構成単位中のR
6およびR
7のいずれかがポリエーテル基に置換されたポリエーテル基含有構成単位を有するものとすることができる。
より具体的には、R
6およびR
7がメチル基であるジメチルシロキサン構成単位と、R
6およびR
7の一方がメチル基であり、他方がポリエーテル基であるポリエーテル基含有構成単位とを有するポリエーテル基変性ポリジメチルシロキサン化合物や、R
6およびR
7がメチル基であるジメチルシロキサン構成単位と、末端にポリエーテル基を含有する末端変性型のポリエーテル基変性ポリジメチルシロキサン化合物等を挙げることができる。
【0079】
上記ポリシロキサン化合物の重量平均分子量としては、所望の濡れ広がり性を有するものとすることができるものであれば特に限定されるものではないが、300〜60000の範囲内であることが好ましく、なかでも500〜30000の範囲内であることが好ましく、特に、1000〜15000の範囲内であることが好ましい。上記分子量が上述の範囲内であることにより、濡れ広がり性に優れたものとすることができるからである。
【0080】
上記ポリシロキサン化合物は、水溶性であることが好ましい。水溶性であることにより、ポリシロキサン化合物がインク表面に析出したり、インクジェットヘッドの部材表面に析出して、インクジェッドヘッドがインクをはじいて吐出性が悪化することを抑制できるからである。
ここで、水溶性であるとは、25℃の水100質量部中に、1気圧下で0.1質量部以上溶解することを示すものである。
なお、ポリシロキサン化合物の水溶性の程度の調整方法としては、上記ポリエーテル基の種類や数、上記ポリシロキサン化合物の分子量等により調整することができる。
【0081】
本発明においては、上記ポリシロキサン化合物としては、ポリエーテル基を有するポリエーテル基変性ポリシロキサン化合物を好ましく用いることができ、中でも水溶性を有するポリエーテル基変性ポリシロキサン化合物をより好ましく用いることができる。
上記水溶性を有するポリエーテル基変性ポリシロキサン化合物は、市販品としては、例えば、FZ−2122、FZ−2110、FZ−7006、FZ−2166、FZ−2164、FZ−7001、FZ−2120、SH 8400、FZ−7002、FZ−2104、8029 ADDITIVE、8032 ADDITIVE、57 ADDITIVE、67 ADDITIVE、8616 ADDITIVE(いずれも、東レ・ダウコーニング社製)、KF−6012、KF−6015、KF−6004、KF−6013、KF−6011、KF−6043、KP−104、110、112、323、341、(いずれも、信越化学(株)製)、BYK−300/302、BYK−301、BYK−306、BYK−307、BYK−320、BYK−325、BYK−330、BYK−331、BYK−333、BYK−337、BYK−341、BYK−342、BYK−344、BYK−345/346、BYK−347、BYK−348、BYK−349、BYK−375、BYK−377、BYK−378、BYK−UV3500、BYK−UV3510、BYK−310、BYK−315、BYK−370、BYK−UV3570、BYK−322、BYK−323、BYK−3455、BYK−Silclean3700、(いずれも、ビックケミー社製)、シルフェイスSAG503A、シルフェイスSJM−002、シルフェイスSJM−003(いずれも、日信化学工業(株)製)等を挙げることができる。
【0082】
上記ポリシロキサン化合物の含有量は、特に限定されないが、濡れ広がり性を良好なものとする点から、インク組成物全量100質量部に対して、0.001質量部以上であることが好ましく、0.01質量部以上であることがより好ましく、更に0.05質量%以上であることがより好ましい。また、上記ポリシロキサン化合物の含有量の上限は特に限定されないが、インク組成物全量100質量部に対して、5.0質量部以下であることが好ましく、更に3.0質量%以下であることがより好ましく、1.0質量%以下であることがさらに好ましい。上記含有量が上述の範囲内であることにより、インクの濡れ広がりが良好になり、インクが基材に着弾するときのドット径を広げることができるからである。
【0083】
また、インク中に含まれる上記一般式(II)で表される化合物と上記一般式(III)で表されるポリシロキサン化合物の比率は、1:100〜100:1が好ましく、1:50〜50:1がより好ましく、1:30〜30:1がさらに好ましい。界面活性剤として、上記一般式(II)で表される化合物と共にポリシロキサン化合物をこのような比率で含むことにより、塗工紙に対する浸透性および濡れ広がり性のバランスに優れたものとすることができ、画像鮮明性に優れたものとすることができるからである。
また、このような上記一般式(II)で表される化合物と上記ポリシロキサン化合物の合計量としては、インク組成物全量100質量部に対して、0.005質量部以上であることが好ましく、0.01質量部以上であることがより好ましく、更に0.05質量%以上であることがより好ましい。また、上記一般式(II)で表される化合物と上記ポリシロキサン化合物の合計量の上限は、インク組成物全量100質量部に対して、15.0質量部以下であることが好ましく、10.0質量部以下であることがより好ましく、更に、5.0質量%以下であることがより好ましい。上記浸透性および濡れ広がり性の両者に優れたものとすることができるからである。
【0084】
本発明のインクジェット記録用インク組成物のpHは、樹脂エマルジョンの凝集や沈降を抑制し、樹脂の分散安定性及び吐出安定性に優れる点や、インクジェットノズル等の金属の腐食を抑制する点から、pH値が7〜12であることが好ましく、7〜10であることがより好ましい。
なお、本発明においてpH値は、JIS Z 8802−2011「pH測定方法」に準拠して測定された値を用いる。
【0085】
本発明のインクの表面張力としては、インクジェットヘッドから吐出可能なものであれば特に限定されるものではなく、用いられる記録媒体の種類や、インクジェットヘッドの種類によって異なるものである。例えば、記録媒体が非塗工紙である場合には、紙の吸収性が高いことから、20mN/m〜50mN/mの範囲内であれば、好適に印刷することが可能であり、好ましい。
一方、記録媒体が塗工紙等の吸収性が低いものである場合には、20mN/m〜35mN/mの範囲内であることが好ましく、20mN/m〜32mN/mの範囲内であることが好ましく、20mN/m〜30mN/mの範囲内であることがより好ましく、20mN/m〜28mN/mの範囲内であることが更に好ましい。
上記上限値以下であることにより、インクを吸収しにくく、表面ではじくことから、ドットが広がりにくい塗工紙を使用した場合でも、塗工紙表面で濡れ広がり、ドットを広げて、鮮明な画像を形成することが可能となるからである。また、上記下限値以上であることにより、インクジェットヘッドからのインクの吐出安定性を良好なものとすることができるからである。
なお、本発明における表面張力は、測定温度25℃にてWilhelmy法(協和界面科学製 型式:CBVP−Z)で測定された値である。
【0086】
[インクジェット記録用インク組成物の製造方法]
上記第一態様のインクジェット記録用インク組成物の製造方法は、特に限定されず、従来公知の方法の中から適宜選択して用いることができる。例えば、溶剤に、顔料に官能基を修飾して分散性を付与した自己分散型顔料、樹脂、アミノアルコール、界面活性剤及び必要に応じてその他の成分を添加して調製する方法、溶剤に、顔料および分散剤を加えて分散した後、樹脂、アミノアルコール、界面活性剤及び必要に応じてその他の成分を添加して調製する方法、等を挙げることができる。
【0087】
樹脂とアミノアルコールとを混合するタイミングは特に限定されない、上記特定の樹脂のエマルジョン中に、上記特定のアミノアルコールを予め添加し、前記樹脂が有する酸性基の少なくとも一部を中和したものを用いてもよく、樹脂エマルジョンと、アミノアルコールとを別々に準備し、上記インクジェット記録用インク組成物の調製時に、樹脂エマルジョンとアミノアルコールとを混合してもよい。
【0088】
また、上記第二態様のインクジェット記録用インク組成物の製造方法としては、特に限定されないが、中でも、以下の本発明に係る製造方法を用いることが好ましい。
即ち、本発明のインクジェット記録用インク組成物の製造方法は、酸価が10mgKOH/g未満の樹脂と、沸点が100℃以上300℃以下のアミノアルコールと、顔料と、溶剤とを含有し、前記樹脂がエマルジョン状態である、インクジェット記録用インク組成物の製造方法であって、前記樹脂が有する酸性基の少なくとも一部を前記アミノアルコールで中和して、樹脂エマルジョンを調製する工程と、前記樹脂エマルジョンと、顔料と、溶剤とを混合する工程とを有することを特徴とする。
【0089】
上記本発明の製造方法は、溶剤中で樹脂を製造する際に、当該溶剤中にアミノアルコールを添加することにより、前記樹脂が有する酸性基が前記アミノアルコールで中和された樹脂エマルジョン溶液とする。次いで、該樹脂エマルジョン溶液に、顔料、溶剤、界面活性剤及び必要に応じてその他の成分を添加することにより、インクジェット記録用インク組成物を製造することができる。なお顔料は、予め溶剤中に分散させた顔料分散体の状態で添加することが好ましい。顔料に官能基を修飾して分散性を付与した自己分散顔料と、分散剤によって分散した顔料のどちらも使用することができる。
本発明の製造方法によれば、樹脂エマルジョンを調製する際に、酸性基を上記特定のアミノアルコールで中和することにより、アンモニア等の揮発成分を中和剤として使用した場合より、樹脂エマルジョンの安定性がより高くなり、保存安定性、連続吐出安定性、間欠吐出安定性もより向上する。アミノアルコールの水酸基によって樹脂の分散安定性が向上し、インクの安定性を良好なものとすることができる。
【0090】
[インクジェット記録方法]
本発明に係るインクジェット記録方法は、前記本発明に係るインクジェット記録用インク組成物、又は、前記本発明に係るインクジェット記録用インク組成物の製造方法により製造されたインクジェット記録用インク組成物を用いてインクジェット法により印刷することを特徴とする。
【0091】
本発明のインクジェット記録方法は、前記本発明に係るインクジェット記録用インク組成物、又は、前記本発明に係るインクジェット記録用インク組成物の製造方法により製造されたインクジェット記録用インク組成物を用いることにより、耐水性や耐溶剤性に優れた印刷物を製造することができ、インクジェットインク組成物の吐出安定性に優れているため高品質の印刷物を得ることができる。
【0092】
本発明のインクジェット記録方法に用いられる記録媒体としては、上記インクジェットインク組成物を用いて印刷可能なものであれば特に限定されるものではなく、吸収体、非吸収体のいずれも使用することができる。吸収体としては、更紙、中質紙、上質紙などの非塗工紙、コート紙、アート紙、キャスト紙などの塗工紙、綿、化繊織物、絹、麻、布帛、不織布、皮革等が例示でき、また非吸収体である非吸収性基材としては、ポリエステル系樹脂、ポリプロピレン系合成紙、塩化ビニル樹脂、ポリイミド樹脂、金属、金属箔コート紙、ガラス、合成ゴム、天然ゴム等が例示できるがこれらに限定されるものではない。
本発明においては、中でも塗工紙を使用することが好ましい。上記本発明に係るインク組成物を用いることにより、本発明の効果をより効果的に発揮できるからである。
【0093】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は、例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
【0094】
(製造例1:顔料分散体P−1の調製)
Kieczykowski等,J.Org.Chem.,1995,Vol.60,P.8310-8312、および米国特許第4922007号明細書に示された手順と同様の手順を用いて、[2−(4−アミノフェニル)−1−ヒドロキシエタン−1,1−ジイル]ビスホスホン酸−ナトリウム塩を製造した。まず、500mL三つ口フラスコに、凝縮器の頂部にガス出口を備えた凝縮器、温度計および乾燥窒素入口、および100mL均圧添加漏斗を取り付けた。このフラスコに、最初に、32gの亜リン酸(380mmol)および160mLのメタンスルホン酸(溶媒)を添加した。この撹拌混合物に、57.4gのアミノフェニル酢酸(380mmol)を少しずつ添加した。この撹拌混合物を65℃に1〜2時間加熱して、固体分を完全に溶解させた。この系全体を乾燥窒素でフラッシュし、固体分のすべてが溶解した後に、温度を40℃に減じた。この加熱溶液に、添加漏斗を通じて70mLのPCl
3(800mmol)をゆっくり添加した。反応により生じたHClガスは、ガス出口を通じて排出した。添加が完了した後、反応混合物を2時間撹拌かつ40℃にて加熱した。次いで、温度を65〜70℃に上げ、この混合物を一晩撹拌した。生じた清澄な茶色溶液を室温に冷却し、600gの氷/水混合物中への添加により急冷した。
この水性混合物を1Lビーカー中に入れ、90〜95℃に4時間加熱した(ビーカーの頂部をガラス板で覆った)。次いで、この混合物を室温に冷却し、この混合物のpHを50%NaOH溶液で4〜5に調整した。この混合物を氷浴で5℃に2時間冷却し、次いで生じた固体分を吸引濾過により集め、1Lの冷脱イオン水で洗浄し、60℃にて一晩乾燥して、白色またはオフホワイト色の固体生成物(収量は48g、収率は39%であった。)を得た。得られた固体生成物の
1H−NMRデータ(D
2O/NaOH)は、次のとおりであった。すなわち、7.3(2H,d)、6.76(2H,d)、3.2(2H,t)。得られた固体生成物の
13C−NMRデータ(D
2O/NaOH)は、それぞれ、141、130、128、112、73であった。
【0095】
C.I.ピグメントレッド122(PR122)20g、上記固体生成物20mmol、硝酸20mmol、及び脱イオン水200mLを、室温にてシルヴァーソン(Silverson)混合機(6000rpm)で混合した。30分後、この混合物中に少量の水中に溶解させた亜硝酸ナトリウム(20mmol)をゆっくり添加した。温度は混合によって60℃に達し、これを1時間進行させた。これにより、PR122に上記固体生成物が修飾した自己分散型の顔料(少なくとも2つのホスホン酸基またはその塩が結合されている顔料を含む。)が生成された。pHをNaOH溶液で8〜9に調整し、30分後、自己分散型の顔料の生じた分散液を、20容量部の脱イオン水を用いてスペクトラム(Spectrum)メンブランでダイアフィルトレーションし、固体分15質量%に濃縮し、赤色顔料分散体P−1を得た。
【0096】
(製造例2〜5:顔料分散体P−2〜P−5の調製)
製造例1において、PR122の代わりに、C.I.ピグメントイエロー74(PY74)、C.I.ピグメントブルー15:4(PB15:4)、カーボンブラック(Black Pearls(登録商標)700カーボンブラック(Cabot社製))をそれぞれ用いた以外は、製造例1と同様にして、黄色顔料分散体P−2、青色顔料分散体P−3、及び黒色顔料分散体P−4をそれぞれ得た。
また、顔料分散体P−5として、スルホ基処理自己分散型顔料「CAB−O−JET(登録商標)740Y」を使用した。
【0097】
(製造例6:顔料分散体P−6の調製)
イオン交換水80.1gに、スチレン−アクリル酸系高分子分散剤(BASFジャパン社製「ジョンクリル682」重量平均分子量1,700、酸価238mgKOH/g)3.0gと、N,N−ジメチル−2−アミノエタノール 1.1gを溶解させ、PR122を15gと消泡剤(エアープロダクツ社製「サーフィノール104E」)を0.1g加え、ジルコニアビースを用いてペイントシェーカーにて分散し、赤色顔料分散体P−6を得た。なお、このスチレン−アクリル酸系高分子分散剤はエマルジョンではなく、本発明における低酸価の樹脂とは性質が異なるものである。
【0098】
(製造例7:樹脂エマルジョンEM−1の調製)
機械式攪拌機、温度計、窒素ガス導入管、還流管および滴下ロートを備えたフラスコ内を十分に窒素ガスで置換した後、反応性界面活性剤(花王(株)製、商品名:ラテムルPD−104)0.75g、過硫酸カリウム0.04g、メタクリル酸0.15gと純水150gを仕込み、25℃にて攪拌し混合した。これに、アクリル酸ブチル20.8g、メタクリル酸メチル129g、の混合物を滴下してプレエマルジョンを調製した。また、機械式攪拌機、温度計、窒素ガス導入管、還流管および滴下ロートを備えたフラスコ内を十分に窒素ガスで置換した後、反応性界面活性剤(花王(株)製、商品名:ラテムルPD−104)3g、過硫酸カリウム0.01gと純水200gを70℃にて攪拌し混合した。その後、調製した前記プレエマルジョンを3時間かけてフラスコ内に滴下した。70℃でさらに3時間加熱熟成した後冷却し、N,N−ジメチル−2−アミノエタノール0.75gを加えた後、#150メッシュ(日本織物製)にて濾過し、500gの樹脂エマルジョンEM−1(固形分30質量%)を得た。
【0099】
(製造例8〜14:樹脂エマルジョンEM−2〜EM−8の調製)
製造例7において、樹脂を構成するモノマーの組成、及びアミノアルコールをそれぞれ下記表1−1のように変更した以外は、製造例7と同様にして樹脂エマルジョンEM−2〜EM−8(それぞれ固形分30質量%)を得た。
【0100】
(製造例15:樹脂エマルジョンEM−9の調製)
製造例7において、樹脂を構成するモノマーの組成を、表1−2のように変更し、アミノアルコールを沸点が300℃以上のトリエタノールアミンに変更した以外は、製造例7と同様にして樹脂エマルジョンEM−9(固形分30質量%)を得た。
【0101】
(製造例16〜17:樹脂エマルジョンEM−10〜EM−11の調製)
製造例7において、樹脂を構成するモノマーの組成をそれぞれ表1−2のように変更し、アミノアルコールの代わりにアンモニアを用いた以外は、製造例7と同様にして樹脂エマルジョンEM−10〜EM−11(それぞれ固形分30質量%)を得た。
【0102】
[樹脂エマルジョンの物性]
上記樹脂エマルジョンEM−1〜EM−11及び、市販の樹脂エマルジョン(スチレンアクリル系樹脂のアンモニア中和物、BASF社製ジョンクリル775(以下、EM−12とする))、及び、市販の樹脂エマルジョン(スチレンアクリル系樹脂のアンモニア中和物、BASF社製ジョンクリル537(以下、EM−13とする))について、各種物性を測定した。結果を表1−1〜表1−2に示す。
なお表1−1〜1−2中の樹脂成分の数値は質量部を表し、中和アミンの含有割合(%)は、樹脂全量(質量部)に対する、添加した中和アミンの量(質量部)を表す。
【0104】
なお表1−1、及び表1−2中の略号は、以下のとおりである。
・MMA:メタクリル酸メチル
・BMA:メタクリル酸ブチル
・BA:アクリル酸ブチル
・2EHA:アクリル酸−2−エチルヘキシル
・MAA:メタクリル酸
・DMAA:ジメチルアクリルアミド
・DMAE:N,N−ジメチル−2−アミノエタノール
・AP:1−アミノ−2−プロパノール
・AMP:2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール
・TEA:トリエタノールアミン
・NH
4:アンモニア
【0105】
(実施例1〜
2、4〜7、9〜25、及び参考例
3、8:インク組成物1〜25の調製)
下記表2の組成に従い、それぞれ各成分を混合し、更に水(イオン交換水)を加えて全量を100質量部とし、インク組成物1〜25を得た。
表2中の各成分の数値は質量部を表し、顔料分散体、及び樹脂エマルジョンの数値は、固形分の質量部を表すものある。
また、表2中のアミノアルコールの含有量(%)は、溶剤も含めたインク組成物全体に対するアミノアルコールの含有割合を示す。
【0106】
(比較例1〜8:比較インク組成物1〜8の調製)
下記表2の組成に従い、実施例と同様にして、全量を100質量部として比較インク組成物1〜8のを得た。
【0108】
なお表2で初出の略号は、以下のとおりである。
・OHPIZ:ヒドロキシエチルピペラジン
・S−1:プロピレングリコール
・S−2:1,3−プロパンジオール
・S−3:ジエチレングリコール
・S−4:グリセリン
・F−1:ポリアルコキシポリジメチルポリシロキサン系:一般式(III)で表されるポリシロキサン系化合物(シルフェイスSAG503A(日信化学工業(株)製))
・F−2:2,5,8,11−テトラメチル−6−ドデシン−5,8−ジオールエトキシレート(ダイノール604(エアープロダクツジャパン(株)製))
・F−3:ジ−2−エチルヘキシルスルフォサクシネートナトリウム;一般式(II)で表される化合物(ニューコール291PG(日本乳化剤(株)製))
【0109】
[評価]
<pH安定性評価>
実施例
、参考例及び比較例の各インクジェット記録用インク組成物を、それぞれガラス瓶に密閉して60℃下2週間保管し、保管前後のpHを測定し、評価した。
(pH安定性評価基準)
A:保管後のpH値の低下が、初期値から1.0未満であった。
B:保管後のpH値が、初期値から1.0以上低下していたが、保管後のpH値が7.0以上であった。
C:保管後のpH値が、初期値から1.0以上低下し、保管後のpH値が7未満であった。
上記pH安定性評価結果がAであれば、pH安定性に優れていると評価される。また、上記pH安定性評価がBであれば、実用上問題なく使用が可能である。
【0110】
<分散安定性評価>
上記pH安定性評価と同様に、実施例
、参考例及び比較例の各インクジェット記録用インク組成物を、それぞれガラス瓶に密閉して60℃下2週間保管し、保管後の状態を評価した。
(分散安定性評価基準)
AA:保管後においても、凝集物や沈降がみられず、粘度の変化が5%以内であった。A:保管後においても、凝集物や沈降がみられなかった。
B:保管後に、1μm以下の凝集物や沈降がわずかにみられたが、実使用上問題ない程度であった。
C:保管後に、1μmを越える凝集物や沈降が著しくみられた。
分散安定性評価がAA、A又はBであれば、分散安定性に優れ、実用上問題なく使用可能と評価される。
【0111】
<吐出安定性評価>
実施例
、参考例及び比較例の各インクジェット記録用インク組成物を、それぞれ720dpiのインクジェットヘッドを搭載したプリンターで、1時間連続して吐出を行い、評価した。
(吐出安定性評価基準)
A:不吐出、吐出曲がり又はインクの飛び散りの発生が10回未満であった。
B:不吐出、吐出曲がり又はインクの飛び散りの発生が10回以上20回未満であった。
C:不吐出、吐出曲がり又はインクの飛び散りの発生が20回以上であった。
吐出安定性評価がA又はBであれば、吐出安定性に優れ、実用上問題なく使用可能と評価される。
【0112】
<間欠吐出性評価>
実施例
、参考例及び比較例の各インクジェット記録用インク組成物を、それぞれ720dpiのインクジェットヘッドを搭載したプリンターで、全ノズルから吐出させた後、25℃下1時間放置後に再び吐出を行い、放置後の吐出の状態を評価した。
(間欠吐出性評価基準)
A:全てのノズルから吐出が確認された。
B:不吐出、又は、吐出曲がりの発生したノズルが確認されたが、1〜5回のクリーニングにより回復した。
C:不吐出、又は、吐出曲がりの発生したノズルが確認され、回復するまでに6回以上のクリーニングを要した。
間欠吐出性評価がA又はBであれば、間欠吐出性に優れ、実用上問題なく使用可能と評価される。
なお、上記クリーニングとしては、1回につき、10kPa・sの圧力で3秒間、ノズルからインクを押し出し、ノズル面を拭くという操作を行った。
【0113】
<耐水性評価>
実施例
、参考例及び比較例の各インクジェット記録用インク組成物を、それぞれ720dpiのインクジェットヘッドを用いて、塗工紙(王子製紙製、ミラーコートプラチナ)にベタ印字し、100℃で3分間乾燥した試験片を準備した。当該試験片の一部をイオン交換水中に5分間浸し、浸漬前後の印字物を目視で観察し、耐水性を評価した。
(耐水性評価基準)
A:浸漬前後で、印字物に変化が見られなかった。
B:印字物のつやの変化、又は変色がわずかに見られたが、実用上問題のない範囲であった。
C:印字物の色が明らかに薄くなっていた。
耐水性評価がA又はBであれば、耐水性に優れ、実用上問題なく使用可能と評価される。
【0114】
<耐溶剤性評価>
前記耐水性評価と同様にして実施例
、参考例及び比較例の試験片をそれぞれ準備した。当該試験片を30%メタノール水溶液で拭き、拭取り前後の印字物を目視で観察し、耐溶剤性を評価した。
(耐溶剤性評価基準)
A:拭取り前後で、印字物に変化が見られなかった。
B:印字物のつやの変化、又は変色がわずかに見られたが、実用上問題のない範囲であった。
C:印字物の色が明らかに薄くなっていた。
耐溶剤性評価がA又はBであれば、耐溶剤性に優れ、実用上問題なく使用可能と評価される。
【0115】
[結果のまとめ]
酸価が10mgKOH/g以上の樹脂であるEM−12又はEM−13を用いた比較例4及び5のインク組成物は、pH安定性以外の評価項目が悪かった。pH安定性がA評価であるのは酸価が高いため、アミンの量に変動があってもpHが大きく変動しないものと推定される。EM−12又はEM−13とアミノアルコールを組み合わせた比較例6及び7のインク組成物であっても、各評価項目の改善が見られなかった。
樹脂エマルジョンの中和アミンとしてアンモニアを含む樹脂エマルジョンEM−10又はEM−11を含有する比較例2及び3のインク組成物は、pH安定性が悪かった。これは、保管時においてアンモニアが揮発しているためと推定される。このような比較例2及び3のインク組成物は、pHの変化により自己分散型の顔料の分散安定性が低下し、分散安定性や、吐出安定性、間欠安定性が悪化するものと推定される。
一方、樹脂エマルジョンの中和アミンとして、沸点が300℃を超えるトリエタノールアミンを用いた樹脂エマルジョンEM−9を含有する比較例1のインク組成物は、揮発の問題がないためpH安定性に優れているが、比較例1のインク組成物を用いた印字物は、耐水性や耐溶剤性が悪かった。
アンモニアを含む樹脂エマルジョンEM−10にトリエタノールアミンを組み合わせて用いた比較例8は、比較例2と比較してpH安定性が改善しているが、耐水性及び耐溶剤性は悪化した。この結果から、樹脂エマルジョン中に含まれるアンモニアが揮発すると、インク組成物中に存在するアミノアルコールが当該樹脂エマルジョン中に取り込まれて安定化しているものと推定される。
【0116】
酸価が10mgKOH/g未満の樹脂と、沸点が100℃以上300℃以下のアミノアルコールを組み合わせて用いた、実施例1〜
2、4〜7、9〜25、及び参考例
3、8のインク組成物は、いずれも分散安定性、吐出安定性、間欠吐出性に優れ、当該インク組成物を用いて作製された印刷物は耐水性及び耐溶剤性に優れていることが明らかとなった。
実施例16や17のように、アンモニアを含む樹脂エマルジョンEM−10又はEM−11を用いた場合であっても、沸点が100℃以上300℃以下のアミノアルコールを組み合わせて用いることにより、各評価項目が改善されることが明らかとなった。
実施例1及び9〜12と、実施例13との比較から、本発明においては自己分散型の顔料を用いることにより、特に耐水性や耐溶剤性に優れていることが明らかとなった。
実施例20〜25の結果から、本発明のインク組成物においては、一般式(II)で表される界面活性剤を用いることにより、更に分散安定性が向上することが明らかとなった。