(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
本体内に設けられたインク容器から供給されたインクを加振して噴出するノズルと、前記ノズルから噴出したインク粒子を帯電する帯電電極と、帯電したインク粒子を偏向させる電界を形成する偏向電極と、が備えられた印字ヘッドを有するインクジェット記録装置において、
前記ノズルは、インクに振動を与えるインク室と、このインク室と連通してインク室にインクを供給する第1のインク流路と、前記インク室と連通しインクを噴出する噴出口を含む第2のインク流路とを有し、
また、前記インク室の一部に前記インク室内のインクを加振する加振壁と、この加振壁に振動を与える加振部とを有し、前記加振壁に前記インク室の流入口を設け、
前記ノズルを弾性体によって保持する構造を有し、
前記弾性体は前記ノズルの外周と、前記加振部の端部とに配置されていることを特徴とするインクジェット記録装置。
【発明を実施するための形態】
【0039】
以下に、本発明の実施の形態を説明する。以下において、本発明の実施例につき図面を用いて説明する。なお、本発明は、図示例に限定されるものではない。
【実施例1】
【0040】
以下、実施例1を
図1及び
図2及び
図3を用いて説明する。
図2に、実施例1にかかるインクジェット記録装置の外観図を示す。
本実施例におけるインクジェット記録装置は、ノズルからインクを噴出して印字して、印字しないときには噴出したインクを回収する、いわゆるコンティニュアス型のインクジェット記録装置である。
図2には、制御系・循環系を収納した本体600、インクを噴出し粒子を作成するノズルを有する印字ヘッド610、及び本体600と印字ヘッド610の循環系と制御系を結ぶ印字ヘッドケーブル620を備えて構成されている。
【0041】
本体600には、ユーザが印字内容や印字仕様等の入力及び、制御内容や装置運転状況等の表示が可能なタッチパネル式の液晶パネル630が設けられている。印字ヘッド610はステンレス製のカバーで覆われている。このカバーの内部には、後述する、インクを噴出するノズルと、他にインク粒子の飛翔を制御する電極類が収められている。カバーの一端面に設けられた孔615は、印字に使用するインク粒子が通るためのものである。
【0042】
図3に、本発明の一実施例におけるインクジェット記録装置のインク循環経路の簡略図である。
【0043】
インク循環経路としては、ケーブル620の内部に設けられた配管を通じて印字ヘッド610にインクや溶剤を供給するインク供給流路21と、印字ヘッド610からインクや溶剤を本体下部680の循環系制御部品に戻すインク回収流路22と、装置停止時にノズル4の中からインクを吸引してインク容器1に戻すインク吸引流路23と、装置停止時にノズル4の内部を洗浄する溶剤を供給する溶剤供給流路24とがある。
【0044】
本体600の下部(本体下部680)に設けられ、各流路に配置された循環系制御部品について次に説明する。
【0045】
まず、本体下部680に配置されている循環系制御部品として、インクをノズル4に供給するためのインク供給流路21に配されるものは、インクを貯めておくインク容器1、インクをインク容器1から吸出し圧送するインク供給ポンプ2、インク圧力を調整する調圧弁3、そしてインク供給流路の開閉切替えを行うインク供給電磁弁81がある。
【0046】
次に、インクを印字ヘッド610内に設けられたガター11から回収するためのインク回収流路22に関するものは、本体下部680に配置したフィルタ12、インク回収流路の開閉切り替えを行う回収電磁弁85、及び印字に関与しないインク粒子8をインク容器1へ戻す回収ポンプ14がある。
【0047】
インクをノズル4から吸引するためのインク吸引流路23に関するものは、装置停止時にノズル4内に溜まっているインクを吸引するための吸引ポンプ83、及びインク吸引流路の開閉切替えを行うインク吸引電磁弁84がある。
【0048】
溶剤をノズル4に供給するための溶剤供給流路24に関するものは、装置停止時ノズル洗浄を行う溶剤を溶剤容器89からノズル4に圧送する溶剤供給ポンプ86、溶剤供給流路の開閉切替えを行う溶剤電磁弁87がある。
【0049】
次に本実施例のインクジェット記録装置における循環系の動作について説明する。
【0050】
印字を行うときは、インク供給流路とインク回収流路をインクが循環する。ポンプ2が運転開始しインク供給電磁弁81が開となると、インク容器1から吸い出されたインクは、ポンプ2、調圧弁3、インク供給電磁弁81、の順に経由して、印字ヘッドケーブル620を介し印字ヘッド610に供給される。
【0051】
印字ヘッド610に供給されたインクは、供給されたインクもしくは溶剤を切替えるための三方弁82を経由しノズル4に供給され、ノズル4から噴出す。
【0052】
インクは、ノズル4から噴出し滴状になる。このインク粒子8は帯電電極7で印加された電荷量に応じて、上偏向電極9と下偏向電極10との間に形成される電界中で飛翔方向を変える。飛翔方向が偏向されたインク粒子8は印字ヘッド610の孔615から被印字物(図示せず)に向かって飛んでいく。
【0053】
帯電電極7には、記録信号源が接続されており、帯電電極7に記録信号電圧を印加することによって、噴出口40より規則的に噴射するインク粒子8を帯電する。上部偏向電極9には高圧電源が接続され、下部偏向電極10は接地されている。それにより、上部偏向電極9と下部偏向電極10との間に電界を形成し、帯電したインク粒子8はその帯電量に応じて偏向されて飛翔し、被記録体に付着し印字を行う。
【0054】
偏向するのに必要な電荷を与えられなかったインク粒子8はガター11に飛び込む。電磁弁85は開となっていて、回収ポンプ14の作用により、インク回収流路22内のインクをフィルタ22を経由してインク容器1に戻す。このようにインクをインク容器1に戻して、再利用することで、必要なインクを偏向させて印字ヘッド610から被記録体に向けて飛ばし、それ以外は装置内をインクが循環するようにインクジェット記録装置は構成されている。
【0055】
次に、装置停止時、すなわちノズル4からインクの噴出しを停止するときの動作について説明する。前記したようにインクは印刷品質の向上の面から、速乾性の高い多種多様なインクが使用されており、界面活性剤を含めて多くの添加剤が混入している。そのため、後述するオリフィスプレート41を含めてノズル4にインクが残存したままにしておくと、インクの乾燥固着が進行し、目詰まり状態となり印字することができなくなる。
【0056】
そのため、インク供給電磁弁81を閉に切替え、インク吸引電磁弁84を開にして、ノズル4内に残っているインクを吸引ポンプ83でインク容器1に吸い取る。ノズル4からインクを吸引した後、溶剤電磁弁87を開にして溶剤供給ポンプ86を運転させ、印字ヘッド610内の三方弁82の溶剤供給流路24側を開にしてノズル4に溶剤を供給する。 溶剤の供給によりノズル4内は溶剤により洗浄される。洗浄時、ノズル4から噴出した溶剤は、回収電磁弁85を開にして回収ポンプ14を運転させることにより、インク容器1に回収される。
【0057】
ノズル4の洗浄を所定時間行い、洗浄が完了したとみなされたら、溶剤電磁弁87を閉にして溶剤供給ポンプ86を停止する。また、三方弁82を切替えてインク吸引電磁弁84を開にして吸引ポンプ83を運転することにより、ノズル4内の溶剤をインク容器1に回収する。
【0058】
以上のように、装置を停止する際に、ノズル4に溶剤を供給してノズル内部を洗浄することで、ノズル4におけるインクの固着を防ぐことにより、再び印字を開始するにあたり所定の性能を発揮することが可能となる。
【0059】
しかし、この様にノズル4のインク固着を防ぐために、装置の停止時に洗浄工程を設けても、ノズル4内のインク流路の構造やインクの付着性によるノズル4内にインクが残存することが考えられる。一般的にこのように残存するインクを無くすためにとられる手段として洗浄時間を増やす、洗浄に用いる溶剤の量を増やすことが考えられてはいるが、いずれもインク容器1に戻る溶剤の量が増加する結果を招き、インク容器1内のインクの粘度や濃度を変える要因となり、再び印字を行う際にはインクの粘度や濃度の調整を行う必要が生じ、装置の使い勝手が悪化する。
【0060】
そこで、上述の洗浄工程において最小限の溶剤の使用でノズル4の性能低下や、インク容器1内のインクの性能低下を起こさないためのノズルを検討した。本実施例におけるノズルを、
図1を用いて説明する。
【0061】
図1に示すノズル4は、中心軸上にインクを噴出す噴出口40を含むインク流路42を備えたオリフィス39と、このオリフィス39とインク流路42の外周部に設けられたネジ部41で螺合するノズルヘッド49を有するノズルボデー31とを有する。
【0062】
ノズルボデー31は、電力供給端子46により電力が供給される円筒状の振動源45が複数挿入され、ナット47により止め部51に固定された振動源取付軸36と、この振動源取付軸36の振動をノズルヘッド49の加振壁34に伝える振動伝達部50と、振動源取付軸36の振動伝達部50と反対側に接続するノズル継ぎ手37とを、更に有している。ナット47は、振動源取付軸36に設けられた雄ねじ35と螺合し、ナット47により振動源45の取り付け具合を調整できる。
【0063】
ノズルボデー31のインク流路33は、三方弁82と連通する管路と接続するノズル継ぎ手37と、振動源取付軸36と振動伝達部50の内部に設けられている。このインク流路33の長さは、振動源45の振動により、液体共鳴を起こさない長さとなっている。
【0064】
ノズルヘッド49は、オリフィス39が結合することにより、加振壁34と、オリフィス39の噴出孔40が設けられた面と反対側の端面39aとの間にインク室32を形成する。インク室32には、オリフィス39のインク流路42の開口部とノズルボデー31のインク流路33の開口部とが開口する。その他の部分にインクが流れ出ないように、オリフィス39の端面39aと加振壁34の外周部には、例えば0リングのようなシール部43が密着するように設けられている。
【0065】
以上の構成によりノズル4内のインクの流れを説明する。ノズル4に供給されたインクは、インクボデー31のインク流路33により液体共鳴を起こさずにインク室32に導入される。振動伝達部50を介して伝えられた振動源45の振動により振動壁34が振動することで、インク室32内に溜まったインクに振動が与えられて、オリフィス39のインク流路39aを通過して噴出し口40から噴出す。噴出したインクは、振動壁34による機械共振の作用により、噴出し口40から少し離れた位置で滴化してインク粒子8となる。
尚、本実施例におけるノズルボデー31は、加振壁34と振動源取付け軸36とノズル継手37は、一直線上に一体で構成されている。その中心軸上をインク流路33が貫く構造を有している。
【0066】
円筒状の振動源45および、振動源45の駆動源となる電力を供給する電力供給端子46の組み付けは、まず、振動源45と電力供給端子46を順に止め部51に向かって振動源取付け軸36に通す。次に振動源固定用ナット47で、振動源固定用ナット取付け用おねじ35に螺合して固定する。
【0067】
オリフィス39の組み付けは、シール43を加振壁34に接触するように配し、ノズルボデー31のノズルヘッド49の内壁に設けたオリフィス取付け用メネジ(図示せず)に、オリフィス39に設けたねじ部41を螺合し、ノズルヘッド49にオリフィス39を組み付ける。
【0068】
本実施例のノズル4において、インクが供給される部分にインクをはじく表面処理層を設けた。具体的には、ノズルボデー31内およびオリフィス39内のインクが供給される部分である、インク流路33の内周面と、インク室32の内周面を形成する加振壁34とシール43とオリフィス39の端面39aと、噴出口40を含むインク流路42の内周面に、インクが付着しにくい高撥水、撥油性のフッ素系化合物からなる表面処理層(膜)48を設けた。この表面処理層48はインクをはじく性質を有していればよく、少なくとも撥水性があるだけでもよい。表面処理層48は化学反応により形成される。
【0069】
なおかかる表面処理層が設けられていないSUSで構成されたオリフィス表面にインクを滴下したところ、オリフィス表面とインク滴の接触角度は約5度であった。これに対して、同様のオフィスにインクを滴下したところ、オリフィス表面とオリフィス表面に形成されたインク滴の接触角度は約35〜39度となった。このことからも、かかる表面処理層を備えることで、インクのはがれ性が向上することは明らかである。
【0070】
シール43の表面が表面処理層48と同様の作用が得られる樹脂であれば、この表面処理層48をあえてシール43設ける必要はない。また、表面処理層48は、インクの性質に応じて撥水性若しくは撥油性のいずれかの性質が強い膜であってもよく、そのどちらかの性質を有するものでもよい。
【0071】
本実施例のノズル4を有するインクジェット記録装置が運転を停止する際に、ノズル4へのインクの供給を停止するためにインク供給流路21におけるインク供給電磁弁81を閉とし、インク吸引電磁弁84を開にし、ノズル4内に残存しているインクをインク容器1へ回収し、ノズルボデー31及びオリフィス39の流路内を空にする。このとき、上述のフッ素系化合物である撥水性や撥油性を備えた撥インク層48を設けたことにより、インク流路内のインクはがれ性が向上し、効率良くインク容器1へ回収する事が可能になる。
次に、溶剤電磁弁87を開および三方弁82の溶剤側を開にし、ノズルボデー31に溶剤を供給し、ノズル内部を洗浄する。洗浄時、噴出口40から出た溶剤は、回収電磁弁85を開および回収ポンプ14を運転状態にすることで、インク容器1へ回収される。
【0072】
また、本実施例におけるノズル4の構造としては、少なくとも流路が狭くなる噴出口40と、流路が広くなるインク室32を構成する面に、表面処理層48を設けるのが良い。インクが固着して流路を狭める現象としては、噴出口40は元々狭く、インクの乾燥固着により目詰まりを起こし易い。また、他のインク流路に比べて断面積が大きなインク室32においては、洗浄液である溶媒がまわりづらい。したがって、少なくとも噴出口40と、インク室32を構成する面に表面処理層48を設けることにより、インク洗浄工程におけるノズル4内のインクを吸引する際に、効率良くノズル4内に残存しているインクをインク容器1へ回収することができ、洗浄に使用する溶剤量を減らすことが可能になる。
【0073】
また、更に本実施例におけるノズル4において、少なくとも流路が広くなるインク室32を構成する面に、表面処理層48を設けるようにしても良い。噴出口40は、溶剤が高い圧力で通過するため、洗浄されやすが、他のインク流路に比べて断面積が大きくなるインク室32では、洗浄液である溶媒がまわりづらい。したがって、少なくともインク室32を構成する面に表面処理層48を設けることにより、インク洗浄工程におけるノズル4内のインクを吸引する際に、効率良くノズル4内に残存しているインクをインク容器1へ回収することができ、洗浄に使用する溶剤量を減らすことが可能になる。
【0074】
以上のように、装置を停止する際ノズルボデー31に溶剤を供給し、ノズル内部を洗浄する前に、効率良くノズル内に残存しているインクをインク容器1へ回収すれば、洗浄に使用する溶剤量を減らすことが可能になり、少ない溶剤でもノズルの洗浄が可能なインクジェット記録装置を実現できる。
【0075】
また、洗浄に使用する溶剤量を減らせれば、インク容器1へ回収される溶剤量が減ることになりインクの物性の変化を小さくすることができ、印字品質の安定性が向上する。また、低ランニングコスト化を可能にしたインクジェット記録装置を提供することが可能になる。
【実施例2】
【0076】
以下において、実施例2について図面に基づいて説明する。まず、
図11にインクジェット記録装置の外観図を示す。
【0077】
インクジェット記録装置は、本体600と、インクを吐出する印字ヘッド610と、印字ヘッドケーブル620とを有する。
【0078】
本体600には、インクジェット記録装置の制御を行う制御系の構成と、ポンプや、インクが流れる管路を開閉する電磁弁とを有する駆動部を備えた循環系の構成とを収納する。後述するが、ポンプは、格納するインクを印字ヘッド610に送るためにインクを加圧するポンプや、使用しなかったインクを回収するためにインクを吸引するポンプが設けられている。
【0079】
印字ヘッドケーブル620は、本体600と印字ヘッド610とを接続し、本体600と印字ヘッド610の循環系と制御系の構成を接続するものであり、必要な液体流路や制御線や電力線を内蔵する。
【0080】
本体600の前面上部には、ユーザが印字内容や印字仕様等が入力でき、制御内容や装置運転状況等の表示が可能なタッチパネル式の液晶パネル630が取付けられている。
【0081】
印字ヘッド610はステンレス製のカバーで覆われており、その内部にはインク滴を噴出するノズルと、インク滴の飛翔を制御するための電極類が収められている。印字ヘッド610の端面に設けられた孔615は、印字に使用するインク滴が通る開口部である。
次に本実施例にかかる
図11で説明したインクジェット記録装置の構成について
図12を用いて説明する。
図12はインク循環経路の簡略図である。
【0082】
本体600内の本体下部680には、循環系の構成要素である循環ユニット(一点鎖線で囲まれた部分)が配置されている。この循環ユニットを構成する流体制御部品は、インクを貯めておくインク容器101、このインク容器101からノズル131までのインク供給流路を開閉するインク供給電磁弁181、インクをインク容器101から吸い出してインク供給流路内を圧送するインクポンプ102、インク圧力を調整する調圧弁103、装置停止時に後述するノズル131の液室132内に溜まっているインクを吸引する吸引ポンプ183、ノズル131からインク容器101までのインク吸引流路を開閉するインク吸引電磁弁184、記録に関与しないインク滴108をインク容器101へ戻すための回収ポンプ114、記録に関与しないインク滴108を捉えるガター111からインク容器101までのインク回収流路122を開閉する回収電磁弁185、装置停止時にノズル洗浄を行う溶剤を収納する溶剤容器188からノズル131に溶剤を圧送する溶剤供給ポンプ186、溶剤容器188からノズル131までの溶剤供給流路を開閉する溶剤電磁弁187を有する。
【0083】
印字を行うときは、本体600ないではインク容器101、インク供給電磁弁181、インクを圧送するインクポンプ102、調圧弁103の順にインクが流れる。そして本体600から送出したインクは、印字ヘッドケーブル620内のインク流路を介して印字ヘッド610に到達する。
【0084】
印字ヘッド610内に供給されたインクは、ノズル131に対してインク若しくは溶剤の供給を切替える三方弁182を経由し、ノズル131に供給される。加圧されているインクは、ノズル131から噴き出すと振動と表面張力とにより、規則的に滴状のインク滴108となる。滴状になったインク滴108は帯電電極107で帯電する。帯電電極107には、図示しない記録信号源が接続している。帯電電極107に記録信号電圧を印加することによって、ノズル131から吐出して規則的に形成されたインク滴108に必要な電荷を帯電する。
【0085】
帯電したインク滴108は、上部偏向電極109と下部偏向電極110とにより飛翔方向が偏向する。上部偏向電極109には高圧電源が接続され、下部偏向電極110は接地されている。それにより、上部偏向電極109と下部偏向電極110との間に静電界を形成し、帯電したインク滴108はその帯電量に応じて偏向されて飛翔し、記録体に付着し印字を行う。
【0086】
インク回収流路122は、印字ヘッド610内に配置したガター111、本体下部680に配置したフィルタ112、回収ポンプ114、及びそれらを接続する管路からなる。帯電電極107で帯電しなかったインク滴108、つまり印字に関与しないインク滴108をインク容器101に回収する。インク容器101に戻ってきたインクはインク容器101内のインクと混ざり、再び印字に使用される。
【0087】
装置を停止するときは、インク供給電磁弁181を閉に切替え、インクの供給を停止する。一方、溶剤電磁弁187を開および三方弁182の溶剤側を開にし、ノズル131に溶剤を供給し、ノズル内部を洗浄する。この洗浄時、回収電磁弁185を開および回収ポンプ114を運転状態にすることにより、ノズル131から出た溶剤はインク容器101へ回収される。
【0088】
以上の洗浄動作を所定の時間行い洗浄が完了したら、次に溶剤電磁弁187を閉に切替え溶剤の供給を止め、インク吸引電磁弁184を開及び三方弁182のインク側を開にし、ノズル内に残った溶剤をインク容器101へ回収する。
【0089】
従来の構成ではノズルへの供給用流路とインク吸引用流路の2つの流路を有していた。そのため、ノズル自体の小型化の妨げとなっていた。本実施例におけるノズル131は、ノズル131における液体の流路は1つにし、ノズル131の外部に、ノズル131へのインク供給用管路とインク吸引用管路を接続する継ぎ手144を設けることで、ノズルを従来よりも小型にすることができる。また、ノズルが小型になることで、印字ヘッド620の小型化へも寄与するものである。
【0090】
本実施例におけるノズル131の構成について説明する。まず
図4及び
図5を用いてノズル131の外観から説明する。
【0091】
ノズル131では、インクが噴出する噴出孔40を有するオリフィス139がノズルヘッド150にネジ込み式に固定される。ノズルヘッド150は、加振壁134を底部にして他端が開口する筒状の部品である。ノズルヘッド150の底部に設けられた加振壁134は、ノズルヘッド150の他の肉厚に比べて薄くなるように設けられている。ノズルヘッド150の内側壁にはオリフィス取付け用雌ネジ138が、オリフィス139の外周には雄ネジ141が設けられている。オリフィス139はノズルヘッド150に捩じ込まれて固定される。
【0092】
ノズルヘッド150の加振壁134の端部とオリフィス139の加振壁134側端部との間にインクをシールするためシール部品143が設けられている。ノズルヘッド150は、後述する液室132(インクが一時的に滞留する空間)を、オリフィス139とシール部143とで形成する。
【0093】
ノズルヘッド150は、オリフィス139とは反対側に、振動源取付け軸136が接続している。この振動源取付け軸136には、ノズルヘッド150側から順に、くびれ部55、止め部152、振動源145、電力供給用端子146、振動源145、電力供給用端子146とが設けられている。この振動源取付け軸136に取付けられた部品は、振動源固定部147でそれらを固定する。振動源固定部147の振動源145から見て反対方向には、インク導入路137が突出した構造である。
【0094】
本体600から移送されたインクや溶媒等の液体は、ノズル131に設けられたインク導入路137と三方弁182とが、パイプやホース等の流路で接続することにより、ノズル131内に導入される。
【0095】
次に、
図6、
図7及び
図8を用いて、ノズル131の断面を示しながら、各構成要素について更に説明する。
【0096】
図6に示したノズル131は、
図4に示したノズル131においてオリフィス139と振動源固定部147とが未装着の状態を示している。この断面図を見て分かるように、インク導入路137内の液体流路、振動源取付け軸136内の流路133、及びノズルヘッド150の加振壁134に設けられ液室132の液体流入口である開口部151までが直線状に設けられている。本実施例では、ノズルヘッド150と振動源取付け軸136とインク導入路137を一つの部品とした。この場合、上記のように直線状にインク導入路137内の液体流路、流路133、及び開口部151を設けると加工が容易となる。また、少なくともノズルヘッド150と振動源取付け軸136とを一つの部品とした場合にも、同様である。
【0097】
インク導入路137と接続する振動源取付け軸136は、インクや溶媒が流れる流路133を内部に有する。この流路133の周囲を囲むように振動源145と、振動源145へ電力を与える電力供給用端子146とが交互に配置している。複数の振動源145のうちノズルヘッド150に近い振動源145は止め部152に突き当てられて保持される。振動源145と振動源取付け軸136とは接着剤層148を介して固定した。
【0098】
接着剤層148で振動源145及び電力供給用端子146とを固定する他の例を
図9に示す。
図9に示した例は、樹脂層153を設けてこの樹脂層により振動源145及び電力供給用端子146とをモールドしたものである。この樹脂層153は接着剤により形成しても良い。
【0099】
図7に示した例のノズル131は、振動源固定部147を装着した状態である。本実施例では、振動源固定部取付け用雄ネジ135を振動源取付け軸136の外周部に設けて振動源固定部147を振動源取付け軸136に固定する。振動源固定部147を振動源取付け軸136に固定することにより、振動源145の駆動力となる電力を伝える電力供給用端子146を介して振動源145を固定する。
【0100】
振動源145の振動源取付け軸136への固定は、振動源固定部147を用いず、接着剤を用いて固定してもよい。一方、振動源固定部147は、振動源145、電力供給用端子146、止め部152及び振動源取付け軸136とからなる加振部におけるカウンタウェイトの役目を担う。加振壁134の振動に対して調整手段が必要な場合は
図6の接着剤層38に加えて振動源固定部147を設けるようにしてもよい。
【0101】
図7に示した振動源固定部147の他の施例を、
図10に示す。
図10に示した振動源固定部147は、
図7に示した振動源固定部147に、振動源145及び電力供給用端子146と振動源取付け軸136との間に回り込む筒状部が付加された形状を有する。この
図10における振動源固定部147は、振動源取付け軸136に対向する部分に雌ネジと、その雌ネジに対向して振動源取付け軸136に雄ネジとからなる結合部154により、振動源145及び電力供給用端子146を止め部152押し付けて固定する。この構造によれば、振動源固定部147の重量がカウンタウェイトとして足りない場合に有効である。
【0102】
図8に示した本実施例のノズル131は、振動源固定部147を装着して、更にオリフィス139を取付けた状態である。
図8に示したものは、振動源固定部147で振動源145及び電力供給用端子146を固定したものを示す。
【0103】
ノズル131の液室132に設けたオリフィス取付け用雌ネジ138と、この雌ネジ138に勘合する、オリフィス139に設けた雄ネジ141とにより、ノズル131とオリフィス139は結合している。オリフィス139は、中心軸上に噴出口140を含むインク流路142を有している。ノズル131とオリフィス139の勘合部はシール43で密着し、インク漏れを防ぐ構造を有している。
【0104】
インク導入路137とこのインク導入路137が一端に設けられた振動源取付け軸136の内部設けられた流路133を通ったインク又は溶媒等の液体は、振動源取付け軸136と接続する加振壁134に設けられた加振壁開口部49から液室132に入る。
【0105】
この液室132は、加振壁134と、加振壁134が設けられたノズルヘッド150の内壁と、ノズルヘッド150に取付けたオリフィス139の加振壁134対向面とで、できた空間である。この対向面にはインク流出口56が設けられインク流路142と連通し、このインク流路142を介して噴出口140と接続する。
【0106】
この液室132内に圧送された液体、例えば装置が印字を実行中の場合は圧送されたインクが、後述する振動源145で生じた振動が伝達する加振壁134の振動を受けながら、オリフィス139の噴出口140から噴き出してインク滴108となる。加振壁134により振動が加えられる範囲を考慮すると、オリフィス139内で噴出口140までの空間も液室132に含めてもよい。
【0107】
加振壁134は、ノズルヘッド150の一部をなすと共にインクの流路となる振動源取付け軸136と接続する。振動は、止め部152と加振壁134との間の振動源取付け軸136を介して振動源145からの振動が加振壁134に伝わる。止め部152は加振壁134と振動源145との間隔を開けるために設ける。
【0108】
このような構造において、本体600から印字ヘッド610に供給されたインクは、インク導入路137から振動源取付け軸136の内部に設けられた流路133を経由して、ノズルヘッド150内に形成された液室132内に、加振壁134に設けられた開口部を通じて供給される。
【0109】
インクや溶媒が流れる液体供給流路である流路133が振動を振動源145からの振動を加振壁134に伝える振動源取付け軸136の内部に設けられており、液室132に振動を伝える部品が液体を供給する流路を兼ねるため、ノズルの構造が簡素化され部品数を減らすことができた。
【0110】
液室132に供給されたインクは加振壁134によって加振され、ノズル131に組み付けたオリフィス139に設けたインク流路142を経由し、噴出口140から噴出する。噴出口140から噴出したインクは、加振壁134から受けた振動により、規則的なインク滴108となる。流路133は周囲に振動源が設けられているため、振動源取付け軸136の振動により、流路133の内部で流体共鳴が生じる可能性がある。本実施例においては、この流体共鳴を生じることを防ぐために、振動源取付け軸136及びインク導入路137の長さを流体共鳴が生じない長さに設定した。
【0111】
上述のノズル131は、いずれも加振壁134と振動源取付け軸136とインク導入路137が、直線上に一体に、一つの部材として設けられている。そして、その中心軸上を流路133が貫く構成である。このように、振動源取付け軸136と加振壁134とノズルヘッド150を一体で設けたことにより、組み立てによる個体差が減少し、加振壁134の振幅がばらつく問題も減少する。
【0112】
また、振動源取付け軸136の反加振壁134側の端部に、インク導入路137を一体に設けることでノズル131が印字ヘッド610に占める体積を小さくすることができる。
【0113】
尚、本発明の各実施例において、インク導入路137と接続する管路は、少なくとも柔軟な素材からなる管路である。加振壁134に接続する振動源取付け軸136が振動を加振壁134に伝えるためには、振動源取付け軸136即ち加振壁134と接続する流路が固定されていては必要な振動が得られない。少なくとも加振壁134と接続する流路と一体で設けられたインク導入路137が振動可能に管路と接続する必要がある。
【0114】
上記のように、振動源145から生じた振動が、振動源取付け軸136に伝達できるように固定されていれば、振動源145および電力供給用端子146の振動源取付け軸136への固定方法は
図6、
図7、
図9および
図10の固定方法に限らなくても良い。
【0115】
ノズル毎の個体差が大きい場合の影響を、
図13を用いて説明する。
図13は、ノズルに設けられた加振壁を加振する加振源の振幅特性を説明する図である。
【0116】
ノズルの駆動源が電気的エネルギーから機械的エネルギーへ変換する際の振動特性は、ノズルの固有振動数である共振点faに近づくほど振幅が大きくなる特性を持っている。 インク滴を帯電してそのインク滴の飛翔方向を制御するインクジェット記録装置では、ある一定の周波数を使用しインクの滴化(粒子化)を行っている。その際、周波数は電気的エネルギーを機械的エネルギーへ変換する効率が高い共振点faを使用することが望ましい。
【0117】
しかし、通常は組み立てによる個体差が生じ、ノズルの共振点faがノズルの固体毎にばらつき易い。例えば共振点がfbの特性を持ったノズルが出来た際、供給電源の周波数がfaのままだと、加振壁の振幅はW0からW0’へ変化しΔW0だけ減少することになり、インクを粒子化させるために必要な加振壁の振動量を得られなくなる問題が生じる。 また、共振点faに近づくほど振幅の供給電源周波数変化に対する振幅変化量がΔW多くなるため、共振点faに近い周波数を使用すると同様の問題を生ずることになる。
【0118】
この問題を回避するため、使用する周波数を共振点から大きく遠ざけた周波数F1に設定すれば共振点がfbの特性を持ったノズルが出来た際も、加振壁の振幅はW1’からW1への変化となりΔW1の小さな変化量で押さえることが可能になる。しかし、W1’の振幅量はW0に対し少ないため、振動エネルギーを大きくするために、加振壁の面積を大きく取ることが必要であった。
【0119】
このように、複雑なインク流路を備えることで加工や組み立てによるノズルの個体差が多くなると、結果的にエネルギーの変換効率が悪くなる傾向があった。
【0120】
本実施例で説明したノズルでは、従来あった部品の加工や組み立てによるノズルの個体差を少なくできる。その結果、
図13で説明したノズル組み立て品毎の個体差により生じる共振周波数の差Δf1を小さく押さえるΔf2とすることが可能となる。そして、従来共振点から大きく遠ざけた使用周波数F1に設定していたものを、共振点により近づけた周波数F2に設定しても振幅変化量ΔW2はΔW1と同等することが可能になる。これにより、従来は振幅W1までしか振幅量がとれなかったが、本実施例では振幅W2まで振幅量を増すことが可能になるので、加振壁134の面積を流路133の面積分小さくなっても必要な振動を得ることが可能になる。
【0121】
本実施例によれば、ノズル内の流路を簡素化して、ノズルの部品数を低減することができる。これにより、ノズルの個体差を低減できる。またノズルの小型化を図ることもできる。さらに、ノズルが小型化することにより、印字ヘッドが小型化したインクジェット記録装置を提供することも可能となる。
【実施例3】
【0122】
以下において実施例3につき図面に基づいて説明する。
図17にインクジェット記録装置の外観図を示す。インクジェット記録装置は制御系・循環系を収納した本体600、インクを噴出し粒子を作成するノズルを有する印字ヘッド610、及び本体600と印字ヘッド610の循環系と制御系を結ぶ印字ヘッドケーブル620を備えて構成されている。本体600には、ユーザーが印字内容や印字仕様等の入力及び、制御内容や装置運転状況等の表示が可能な液晶パネル630がある。印字ヘッド610の内部にはインク粒子を作成するノズルと、他にインク粒子の飛翔を制御する電極類が収められている。カバー底面に設けられた穴615は、印字に使用するインク粒子が通るためのものである。
【0123】
図18はインクジェット記録装置のインク循環経路の簡略図であり、
図16はノズルの断面図である。本体下部680には、循環系制御部品が配置されており、インクを貯めておくインク容器201、インク供給流路開閉切り替えを行うインク供給電磁弁281、インクを圧送するポンプ202、インク圧力を調整する調圧弁203、ノズル230に設けられインクや溶剤が充填される液室となるインク室232内に溜まっているインクを装置停止時に吸引するための吸引ポンプ283、吸引流路の開閉切り替えを行うインク吸引電磁弁284、記録に関与しないインク粒子208をインク容器201へ戻すための回収ポンプ214、回収流路の開閉切り替えを行う回収電磁弁285、装置停止時ノズル洗浄を行う溶剤をノズルに圧送する溶剤供給ポンプ286、溶剤供給流路開閉切り替えを行う溶剤電磁弁287から成る。
【0124】
印字を行う時、インクはインク容器201、インク供給電磁弁281、インクを圧送するポンプ202、調圧弁203の順に経由し、印字ヘッドケーブル620を介し印字ヘッド610に供給される。印字ヘッド610内に供給されたインクは、インクと溶剤を切り替るための三方弁282を経由し、ノズル230に供給される。
【0125】
ノズル230は、噴出口240を有するノズルヘッド部241と、加振部249を有する。ノズル230は、振動源245および電力供給用端子246を固定用振動源固定用ナット247で軸236に取り付けており、その軸236内部に流路233を形成している。ノズル230のくびれ部248から振動源245を含む固定用振動源固定用ナット247側は全体が加振部249となっており、振動をノズルヘッド部241の加振壁234に伝達している。
【0126】
ノズル230に供給されたインクは、軸236の流路233内を通過し加振壁234を壁の一つとするインク室232からノズルボディ231に組み付けたオリフィス239に形成したインク流路242を経由し、噴出口240から噴出される。噴出口240から噴出されたインクは、加振壁234の振動により、規則的にインク粒子208となる。
【0127】
帯電電極207には、記録信号源が接続されており、帯電電極207に記録信号電圧を印加することによって、噴出口240より規則的に噴出されるインク粒子208は個々に所望の帯電量に帯電される。上部偏向電極209には高圧電源が接続され、下部偏向電極210は接地されている。上部偏向電極209に電圧を印加することにより、上部偏向電極209と下部偏向電極210との間に静電界を形成し、帯電されたインク粒子208はその帯電量に応じた力により偏向されながら飛翔し、記録媒体に付着する。このように各々のインク粒子208を所望の位置へ付着させることで文字を形成する。
【0128】
連続的に噴出されるインク粒子208のうち記録に関与しないものは、印字ヘッド610内に配置したガター211にて捕集し、本体下部680に配置した回収ポンプ214によって吸引され、フィルタ212を有するインク回収経路222を通して、インク容器201へ戻し再利用する。
【0129】
装置を停止するときは、インク供給電磁弁281を閉に切り替え、インクの供給を停止し、溶剤電磁弁287を開、および三方弁282を溶剤側に切り替え、ノズル230に溶剤を供給し内部を洗浄する。洗浄時、噴出口240から噴出された溶剤は、ガター211にて捕集し、インク回収経路222を通してインク容器201へ回収する。以上の洗浄動作を所定の時間行いった後、溶剤電磁弁287を閉に切り替え溶剤の供給を停止し、インク吸引電磁弁284を開に、三方弁282をインク側に切り替え、洗浄でノズル内に残った溶剤を吸引ポンプ283にてインク容器201へ戻す。
【0130】
図14は、本発明の実施の形態を表すノズルおよびその保持構造とインクビーム調整機構をあらわす断面図である。
図15は調整ネジ256中心の断面側面図である。
【0131】
ノズル230はインク室構成部外周を弾性体A250で、固定用振動源固定用ナット247端部を弾性体B251で保持されて、ハウジング252に収納されている。ノズル230の流路233の中心軸は弾性体A250の弾性力でハウジングの中心軸に位置される。噴出方向位置は弾性体A250と弾性体B251の弾性力でバランスし決定される。弾性体A250と弾性体B251には例えばゴムのようなシール性を持った部材を使用すれば外部からの液の侵入も防止できる。
【0132】
ノズル30の軸236のインク供給側外周には弾性体C253とノズル中心軸調整部材254を備える。弾性体C253は、インク漏れ防止のシール性能も併せ持つ。ノズル中心軸調整部材254はノズル中心軸に対し垂直方向にスライド移動可能となっており、その外周とハウジング内面間には弾性体D255を配置し、常にハウジング内面側からノズル中心軸に向かってノズル中心軸調整部材254に外力を与え続ける。その外力に反する方向からは、調整ネジ256がハウジング252と噛み合ってねじ込まれており、ノズル中心軸調整部材に押し当てられている。
【0133】
調整ネジ256を押し込むとノズル中心軸調整部材は弾性体D255側にスライド移動され、同時に内部に備える弾性体C253をスライド移動させる。この弾性体C253の弾性力によりノズル30の軸236は動かされ、弾性体C253の中心にバランスされる。この時、ノズル230のインク室構成部外周は弾性体A250の接触部が支点となり移動しない。これによりインクの噴出方向つまり噴出角度の調整が可能となる。調整ネジ256を引き戻せば弾性体D255の反力によりノズル中心軸調整部材は調整ネジ256側にスライド移動し、反対方向へ噴出方向(角度)を調整できることになる。
【0134】
また、調整ネジ256のネジ頭とハウジング252間にはスプリングワッシャなどの弾性体E257を設けることでネジゆるみを防止することも出来る。この1軸上の調整ネジ256と弾性体D255をさらにもう1軸設けて、例えば
図15に示すように、2軸を90度の角度を持って設置すれば、両方を使用することでノズル中心軸を任意の方向に調整可能となる。インクは、継手262により、上流の部品またはチューブなどからノズル230へ供給する。
【0135】
継手262はハウジング252に固定され、内部にはシール部材258を有しノズル中心軸調整部材254の端面259と継手内面260のインク漏れを防止する。継手262のインク流路261と、ノズル230の流路233は非接触であり、ノズル中心軸調整部材254によって中心軸を移動させられるのは流路233だけである。これにより継手57にはリジッドに相手部品やチューブを接続することが出来る。
【実施例4】
【0136】
以下において、実施例4について図面を参照して説明する。
【0137】
図22は本発明の実施例のノズルボデー組の断面図、
図23は従来のノズルボデー組の断面図、
図24はインクジェット記録装置の概略配管図、
図25は本発明と従来のノズルボデーの機械的振動の周波数特性の比較、
図26と
図27はその他の実施例のノズルボデー組の断面図を示す。
【0138】
インクジェット記録装置の構成について説明する。
図24に示すように、メインインク容器401内にインク402aが充填されており、インク402aと供給弁403、供給ポンプ404、メインフィルタ405、調圧弁406、三方弁407のインク入口、ノズルボデー408aは、それぞれインク供給管409で接続されており、またインク粒子410を回収するためのガター411と回収ポンプ412、メインインク容器401は、インク回収管413で接続されている。
【0139】
また、メインインク容器401と三方弁407は、インク流路450で接続されており、インク流路450上には、循環弁415及び循環ポンプ414が配置されている。補力液容器420内に補力液416が充填されており、補力液416と補力液ポンプ417、洗浄弁418、三方弁407の補力液入口は、それぞれ補力液補給管419で接続されている。
【0140】
図22に示すように、ノズルボデー408aは、振動源423と電力供給端子422を振動源取付け軸424aと振動源固定用ナット421aで挟み込み、その先端にオリフィス426がねじで取付けられている、振動源取付け軸424aの中心とオリフィス426の中心にはそれぞれインクの流路428,429が設けられている。
【0141】
振動源固定用ナット421aの内径は段付形状になっていて、内径の小さい方にねじが切られている、内径の大きい方は振動源取付け軸424dとの間に空隙427がある。また振動源固定用ナット421aの外径は段付形状になっていて、段付部の一部は溝部421bになっている。
【0142】
次に動作について説明する。
【0143】
メインインク容器401内に充填されたインク402aは、三方弁407のインク側を開くことにより、供給ポンプ404によりインク供給管409を通りメインフィルタ405で不純物が除去され、調圧弁406により任意の圧力に調圧され、ノズルボデー408に供給される。この供給されたインクは、ノズルボデー408a内の振動源423の振動により液柱に腹と節を作り、ノズルボデー408に取付けられたオリフィス426先端より噴出し、インクの表面張力によりインク粒子410になる。このインク粒子410は、帯電電極(図示せず)により文字情報に合った電荷量が帯電されて、偏向電極(図示せず)により偏向し、被印字物(図示せず)に印字する。また印字に使用されないインク粒子410は、ガター411に入り、回収ポンプ412によりメインインク容器401に回収される。
【0144】
図23に示す、従来のノズルボデー408bのダイヤフラム部424bの機械的振動周波数特性432では、共振点foが実使用供給電源周波数faより遠く離れており、ダイヤフラム部424bの振動振幅Yoが小さくインクの液柱に腹と節を作るためのエネルギーが小さく、インク粒子410になり難い。インク粒子410になり易くするためには共振点foを低くし実使用供給電源周波数faに近くする必要がある、そのためには振動源固定ナット441の外径を大きく、または全長を長くしなければならない、これではノズルボデー408bが大きくなる問題がある。
【0145】
本実施例では、振動源固定用ナット421aを大きくすることなく、振動源固定ナット421aの内径を段付にし内径の小さい方にねじを切り、大きい方には振動源取付け軸424dとの間に空隙427を設ける、また振動源固定用ナット421aの外径は段付形状にし、段付部の一部を溝部421bにする。そのことにより
図25に示すようにノズルボデー408のダイヤフラム部424bの機械的振動周波数特性431の共振点f1が実使用供給電源周波数faに近くなりダイヤフラム部424bの振動振幅Y1が大きくなりインクの液柱に腹と節を作るためのエネルギーも大きくインク粒子410になり易い。
【0146】
以上の振動源固定ナット421a形状にすることにより、ノズルボデー408aが小形で、また供給電源電圧が小さく出来る効果がある。
【0147】
図26は、ノズルボデー408aの変形例であるノズルボデー408cの断面図である。ノズルボデー408cにおいては、振動源固定ナット442の内径を段付にし内径の小さい方にねじを切り、大きい方には振動源取付け軸424dとの間に空隙427を設ける、また振動源固定用ナット442の外径は段付としない形状となっている。
【0148】
図27は、ノズルボデー408aの変形例であるノズルボデー408dの断面図である。ノズルボデー408dにおいては、振動源固定ナット443の内径を段付にし内径の小さい方にねじを切り、大きい方には振動源取付け軸424dとの間に空隙427を設ける、また振動源固定用ナット443の外径は段付にし、段付部の一部を溝部421bにしない形状となっている。
【0149】
図26及び
図27に示す変形例でも振動源固定ナットを大きくすることなく、ノズルボデー408のダイヤフラム部424bの機械的振動周波数特性432の共振点foが実使用供給電源周波数faに近くなりダイヤフラム部424bの振動振幅Yoが大きくなりインクの液柱に腹と節を作るためのエネルギーも大きくインク粒子410になり易い効果がある。