(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第1のカバーと前記ハウジングとの間で係合することにより、前記ハウジングに対する前記第1のカバーの相対回転を抑制する回転防止構造を更に備えることを特徴とする請求項1に記載のフィールドデバイス組立体。
【発明を実施するための形態】
【0008】
添付図面の図は、本発明のいくつかの実施形態を示すものであるが、以下にも述べているとおり、別の実施形態も可能である。いずれの場合も、その開示内容は、代表的なものを用いて本発明を示すものであり、本発明を限定するものではない。様々な別の変形や実施の形態は、当業者がなし得るものであり、本発明の本質的な範囲及び趣旨に含まれるものである。各図は正確な縮尺とはなっていない場合がある。同じ参照番号は、ぞれぞれの図面において同様の部材を示すものである。
【0009】
産業用プロセス用の伝送器やコントローラなどのフィールドデバイスは、腐食、火災、爆発、振動、及びその他の過激な状態に晒されるような環境で使用されることが多い。このため、産業プロセス施設で用いられるフィールドデバイスは、特に、予測される作動環境に適切に耐えることができるように構成される。そこで、フィールドデバイスは、耐久性のある鋳造物からなり機械加工された金属製の頑強なハウジングを備え、螺合して装着される(即ちねじ山付きの)カバーを有しているのが一般的である。このカバーには、ローカルインタフェイス部を覆うように配置された透明部材が設けられる。防爆要件を満たすため、この透明部材として比較的厚い(例えば約9mmまたはそれ以上の)ガラス片を設けることが多い。
【0010】
フィールドデバイスは、カバーを外してフィールドデバイスの内部を外部環境に晒すことなくフィールドデバイスを作動させることが可能な入力を有しているのが望ましい。1以上の導電性パッド(またはボタン)を有するタッチ回路を用いた容量性信号の検知は、カバーの透明部材を形成するガラスまたはプラスチックなどの絶縁素材を間に介して行うことが可能である。タッチ回路の導電性パッドと人間の指(または別の部位)とが、カバーの透明部材を形成する絶縁素材を間に挟んでキャパシタを形成する。容量性計測信号の大きさは絶縁性と関係があり、高い絶縁性を有した素材であるほど良好な検出信号を得ることができる。このため、カバーの比較的厚のある透明部材は、信号強度の点で好ましくない。また、キャパシタ内に何らかの空隙があると信号強度が低下するため、許容可能な信号レベルを確保するには、この空隙を最小化する必要がある。従って、タッチ回路とカバーのガラスとの間の空隙を低減または除去するのが望ましく、空隙がある場合には空隙を適度に正確に調整するのが望ましい。しかしながら、フィールドデバイスは、防爆要件を満たす上で望ましいねじ込み式のカバーを有するのが一般的であるため、カバーが電子回路に接触すると、カバーを伝送器のハウジングに取り付ける際(またはハウジングから取り外す際)に作用するトルクにより、繊細なディスプレイ回路、タッチ回路、或いは別の電子回路に、破断、損傷、或いは破壊が生じるおそれがある。電子回路がカバーと物理的に接触した状態にある場合、振動によっても同様の損傷が生じる可能性がある。更に、従来のねじ込み式のカバーを取り付ける場合には、タッチ回路とカバーの透明部材との間の空隙を調整することが困難である。カバーとハウジングに取り付けられたタッチ回路との間の取付誤差を規制することは困難であり、ハウジングに対して相対回転するねじ込み式のカバーに電子回路を取り付ける場合は、その電子回路と、ハウジング内にあって回転しない部品との電気的接続を得る上で問題が生じる。なお、容量性の形式以外のタッチ式インタフェイスを使用することは可能であるが、他の形式のタッチ式インタフェイスは一般的な産業プロセスの環境における使用に適していない。例えば、変形可能なタッチ層を用いたタッチスクリーンは、防爆型のフィールドデバイスの密閉性を維持する上で不適切である。
【0011】
本発明は全般的に、電子回路に悪影響を及ぼす可能性を抑制しつつ、ハウジングに固定されて防爆性及び耐炎性を有した容器を形成するカバーに繊細な電子回路を取り付け可能とするような、フィールドデバイスシステム、及びその製造方法を提供するものである。相手側の電気コネクタに直線的に差し込まれるように構成された1以上の非回転式の電気コネクタを用い、カバーに保持されて取り付けられている電子回路と、ハウジングに保持されて取り付けられている電子回路とを適切に接続することが可能である。カバーは、適切な回転防止機構により、ハウジングに対して回転しないように固定することが可能である。カラーをハウジングに組み付ける(例えば螺合させる)と共に、カバーに組み付けることにより、ハウジングにカバーを保持することが可能である。ハウジングにカバーを保持する力をカラーが付与するように、カラーに当接する肩部をカバーに設けることが可能である。ハウジングに対してカバーが回転しないように固定しつつ、カラーをハウジング及びカバーのそれぞれに対して回転させることが可能である。鋸歯状部のような互いに組み合わさる火炎伝播規制構造をカバー及びハウジングの相互の接合面に配設し、これら両部材間に適切な防爆火炎伝播経路が設けられる。いくつかの実施形態として、本発明に係る複数のカバー組立体を所定のフィールドデバイスに設けることにより、所定の伝送器ハウジングの両端のカバーに電子回路を設けるようなことが可能となる。本発明の様々な特徴及び効果は、添付の図面に基づく説明によって理解されるであろう。
【0012】
図2A〜
図2Cは、本発明のいくつかの選択可能な実施形態を概略的に示すものであるが、更に別の実施形態も可能であると理解すべきである。
図2A〜
図2Cの実施形態に関する本発明の更なる詳細は、
図3〜
図7に示されており、以下において適宜説明する。
【0013】
図2Aは、フィールドデバイス42を含むフィールドデバイスシステム40を、第1実施形態として示すブロック図であり、フィールドデバイス42は、当該フィールドデバイス42と通信可能な産業プロセス44及びコントロールルーム46との間で相互にやりとりを行えるように設定されている。フィールドデバイス42は、ハウジング48、カバー50A、カバー50B、カラー52A、カラー52B、コントロール回路54、センサ/アクチュエータ56、付属電子回路部58A、付属電子回路部58B、電気コネクタ60A、電気コネクタ60B、電気コネクタ62A、及び電気コネクタ62Bを備える。
【0014】
コントロールルーム46は、ディスプレイ、演算処理装置、メモリ、資産管理ソフトウエア(例えば、ミネソタ州チャンハッセンのエマーソンプロセスマネージメント社から入手可能なソフトウエアのAMS Suite and PlantWeb(登録商標))、並びに産業プロセス44を監督及び管理し、フィールドデバイス42からのデータを収集及び分析する様々な機器を備えることが可能である。
【0015】
コントロール回路54は、少なくとも一部がハウジング48内に配置され固定されている。また、コントロール回路54は、付属電子回路部58A及び付属電子回路部58Bのそれぞれと電気的に接続されており、標準的に構成された1以上のプロセッサを有していてもよい。なお、これに代わる実施形態として、具体的な適用目的に応じ、複数の別個の電子回路でコントロール回路54を構成することも可能である。例えば、コントロールルーム46やセンサ/アクチュエータ56との通信を行うためのターミナルブロック回路(図示せず)とは別個にコントロール回路54を設けるようにしてもよい。
【0016】
センサ/アクチュエータ56は、産業プロセス44との間で相互にやりとりを行うように設定されている。様々な実施形態においてセンサ及びアクチュエータ56は、産業プロセス44に関わる圧力、温度、振動、流量、またはその他のほとんどのパラメータを検出するように構成することが可能であり、また産業プロセス44を監督または管理し、或いはその他の方法で相互に関わり合うアクチュエータやその他の機器を含むことが可能である。コントロール回路54は、センサ/アクチュエータ56と電気的に接続されており、センサ/アクチュエータ56の作動制御、データ収集、データ処理などを行うのに適した任意の構成とすることができる。
【0017】
フィールドデバイス42はコントロールルーム46と通信可能であり、フィールドデバイス42とコントロールルーム46との間の通信は、任意の適切な無線または有線接続を介して行うことが可能である。また、コントロールルーム46との通信は、直接行ってもよいし、任意の数の中間媒体装置(図示せず)によるネットワークを介して行うようにしてもよい。コントロール回路54は、フィールドデバイス42が行う通信の監督及び管理を支援することが可能である。
【0018】
図示した実施形態において、付属電子回路部58Aはカバー50Aに、また付属電子回路部58Bはカバー50Bに、それぞれ適切な留め具を用いるなどして取り付けられ保持されている。付属電子回路部58A及び付属電子回路部58Bは、それぞれ基本的に任意の必要な機能を提供可能である。例えば、一実施形態において付属電子回路部58Aは、ディスプレイ及びタッチインタフェイス機能を有したローカルオペレータインタフェイス(LOI)を提供可能であり、付属電子回路部58Bは、接続される電子回路のための過渡現象保護機能を提供可能である。これに代わる実施形態として、付属電子回路部58A及び付属電子回路部58Bのいずれにおいても、ほとんどのタイプの所望の電子回路を設けることが可能である。
【0019】
図示した実施形態において、付属電子回路部58Aは電気コネクタ60Aを備え、付属電子回路部58Bは電気コネクタ62Aを備える。電気コネクタ60Aには電気コネクタ60Bが選択的に接続可能に設けられ、付属電子回路部58Aとコントロール回路54との適切な電気的接続が得られるようになっている。また、電気コネクタ62Aには電気コネクタ62Bが選択的に接続可能に設けられ、付属電子回路部58Bとコントロール回路54との適切な電気的接続が得られるようになっている。図示した実施形態においては、ハウジング48内に配置され、コントロール回路54から分離されて当該コントロール回路54と機能的に接続される別個の部品として、電気コネクタ60B及び電気コネクタ62Bが示されているが、別の実施形態として、電気コネクタ60B及び電気コネクタ62Bは、コントロール回路54と一体化されてもよいし、その他の任意の適切な構成としてもよい。一実施形態として、電気コネクタ60A、電気コネクタ60B、電気コネクタ62A及び電気コネクタ62Bは、それぞれ、一方(例えば電気コネクタ60A)を相手側となる他方(例えば電気コネクタ60B)にほぼ直線的に差し込むことにより、1以上の独立した電気的接続を可能とする一般的なピン形式の電気コネクタ(例えば10ピンタイプのコネクタ等)とすることができる。それぞれの電気コネクタによって行われる独立した電気的接続の数は、具体的な適用目的に応じて変更することが可能である。別の実施形態として、別の形式の差し込み式電気コネクタのほか、直線的な移動以外の操作により電気的接続がなされるような別の形式の電気コネクタを用いることも可能である。
【0020】
カラー52Aはカバー50Aをハウジング48に、またカラー52Bはカバー50Bをハウジング48に、それぞれ着脱可能に固定するねじ山付きのカラーとして構成することができる。カバー50A及びカバー50Bは、例えばハウジング48の別々の開口部に対向して設けられ、カラー52Aをカバー50A及びハウジング48に組み付けることにより、カバー50Aをハウジング48に保持することができ、またカラー52Bをカバー50B及びハウジング48に組み付けることにより、カバー50Bをハウジング48に保持することができる。カバー50Aとハウジング48との間、及びカバー50Bとハウジング48との間に、それぞれ防爆火炎伝播経路及び密封シール(簡略化のため、
図2Aには密封シールが示されていない)を設けることにより、フィールドデバイス42は密封された防爆型容器を形成することが可能となる。いくつかの実施形態として、カバー50Aとハウジング48との間、及びカバー50Bとハウジング48との間で、それぞれ適切な回転防止機構を係合させ、ハウジング48に対するカバー50A及びカバー50Bの相対回転を抑制または防止することが可能である。これにより、付属電子回路部58Aがカバー50Aに、また付属電子回路部58Bがカバー50Bにそれぞれ固定され、且つコントロール回路54がハウジング48に固定される場合に、コントロール回路54に対する付属電子回路部58A及び付属電子回路部58Bの相対回転を抑制または防止する一助とすることができる。様々な実施形態として、電気コネクタ60A、電気コネクタ60B、電気コネクタ62A及び電気コネクタ62B、または火炎伝播規制構造を回転防止構造にしてもよいし、スプライン、キー、ピン、ダブテール(dovetail)、ボス、テザー(tether)などのような付加的な構造を回転防止構造とすることもできる。
【0021】
更なる実施形態として、カバー50Aに対しカラー52Aを、またカバー50Bに対しカラー52Bを、それぞれ保持するための適切な保持構造(図示せず)を設けることが可能である。例えば、カバー50Aに対するカラー52Aの相対回転やその他の適切な動きを許容しつつ、カバー50Aのストッパと肩部との間にカラー52Aを保持し、カバー50Bに対するカラー52Bの相対回転やその他の適切な動きを許容しつつ、カバー50Bのストッパと肩部との間にカラー52Bを保持するようにしてもよい。このような構造とすることにより、作業者がハウジング48からカバー50Aやカバー50Bを取り外した後で再び装着する場合に、カラー52Aやカラー52Bをなくしたり置き忘れたりする可能性を、より一層低減することができる。
【0022】
フィールドデバイス42には、
図2Aに示されない付加的な部材を設けることが可能である。例えば、適切な密封シールを設けてもよいし、必要に応じて追加の電子回路を設けてもよい。更に、具体的な適用目的に応じ、フィールドデバイス42の具体的な構成を変更可能であると理解できるであろう。
【0023】
図2Bは、第2実施形態のフィールドデバイスシステム40’を示すブロック図である(具体的には
図3も参照)。フィールドデバイスシステム40’の構成は、
図2Aに基づき説明したフィールドデバイスシステム40の構成と概ね同様である。但し、フィールドデバイスシステム40’は、付属電子回路部58Aを保持するカバー50Aのほか、従来と同様のねじ山付きタイプであって電気回路を何も保持していないカバー50Cを備えている。カバー50Aは透明カバー部材66を備え、フィールドデバイス42’の外側の位置から透明カバー部材66を通し、付属電子回路部58Aの少なくとも一部を見ることができるようになっている。カバー50Aとハウジング48との間には、防爆火炎伝播規制構造が設けることが可能である。カバー50Cをハウジング48に螺合することにより、公知の方法で防爆火炎伝播経路が形成されるようにすることが可能であり、これに併せ、或いはこれに代えて、カバー50Aに設けるものと同様の火炎伝播規制構造を設けることもできる。
【0024】
図2Bの実施形態では、付属電子回路部58Aがローカルオペレータインタフェイス(LOI)を構成し、電気コネクタ60A、デジタルディスプレイ回路68、及びタッチ回路70を備えている。デジタルディスプレイ回路68及びタッチ回路70のそれぞれの一部は透明カバー部材66に隣接して配置され、透明カバー部材66を通して視認できるようになっている。タッチ回路70は、オペレータによるタッチ操作を可能とする任意の適切な構成とすることが可能であり、デジタルディスプレイ回路68は、光学的なバックライト機能を有した1以上の液晶ディスプレイ(LCD)、または可視出力を生成可能な任意形式のデジタルディスプレイ(或いは、アナログディスプレイでもよい)により構成することができる。一実施形態として、タッチ回路70は、導電性パッド(またはボタン)によって形成される1以上のタッチ操作可能領域を備えており、タッチ回路70の当該領域の近くにおかれたオペレータの体の一部(例えば指)と共にキャパシタを選択的に形成するようになっている。このように、タッチ回路70は公知の方法によって容量性タッチ操作が可能となっている。なお、タッチ回路70のタッチ操作可能領域を形成する導電性パッドまたはボタンは、具体的な適用目的に応じ、任意の適切な構成とすることが可能であると認識することができるであろう。一実施形態として、タッチ回路70は、ガラス層に支持された実質的に透明な導電性のトレース層(例えば、インジウムスズ酸化物からなる)を有しており、タッチ回路70の少なくとも一部は、タッチ回路70を通してデジタルディスプレイ回路68を視認できるよう、デジタルディスプレイ回路68を覆うように(即ち上方に)配設されている。これにより、デジタルディスプレイ回路68が実質的に任意の情報を表示可能となり、タッチ回路70のボタンに表示される情報に関連した様々な入力を、タッチ回路70のタッチ操作可能領域で受け取ることが可能となる。このようにして、付属電子回路部58Aは、様々な情報を表示可能であると共に、比較的小さな領域内で様々な入力を行うことが可能な機能的なオペレータインタフェイスを提供する。なお、具体的な適用目的に応じ、任意の適切なメニュー及び表示レイアウトが付属電子回路部58Aにより提供可能であることを、当業者は認識できるであろう。いくつかの実施形態として、タッチ回路70及びデジタルディスプレイ回路68は、チップオングラス(COG)構造を有していてもよい。なお、これに代わる実施形態として、タッチ回路70とデジタルディスプレイ回路68とを互いに隣接して配置してもよいし、一方の上に他方を直接配置する代わりに別の配置を採用してもよい。
【0025】
デジタルディスプレイ回路68及びタッチ回路70は、他の物体との接触で傷つきやすい場合があるため、相対移動(例えば回転)を抑制または防止するように、カバー50Aに付属電子回路部58Aを取り付けて固定してもよい。
【0026】
フィールドデバイス42’には、
図2Bに具体的に示されないような追加の部材を設けることが可能である。また、具体的な適用目的に応じ、フィールドデバイス42’の具体的な構成を変更可能であると認識することができるであろう。
【0027】
図2Cは、第3実施形態としてフィールドデバイスシステム40”を示すブロック図である。フィールドデバイスシステム40”の構成は、
図2Bに基づき説明したフィールドデバイスシステム40’の構成と概ね同様である(また、フィールドデバイスシステム40’の構成は
図2Aに基づき説明したフィールドデバイスシステム40の構成と概ね同様である)。但し、フィールドデバイスシステム40”ではフィールドデバイス42”が、(フィールドデバイスシステム40’におけるLOIではなく)電気的な過渡現象保護機能を提供する付属電子回路部58Bを保持したカバー50Bを備えている。電気的な過渡現象保護機能によって、雷、溶接、重電設備、電気開閉器などで回路内に生じる過渡現象によりフィールドデバイス42”がダメージを受けるのを防止する。
図2Cに示す実施形態では、付属電子回路部58Bが過渡現象保護回路74及び電気コネクタ62Aを備えている。コントロールルーム46から送られる電力は、コントロール回路54等に供給される前に、過渡現象保護回路74を通過させることができる。付属電子回路部58Bは、相対移動(例えば回転)を抑制または防止するように、カバー50Bに取り付けて固定することが可能である。
図2Cに示すように、フィールドデバイス42”には追加のカバー50Cが設けられる。なお、これに代わる実施形態として、任意の所望構成の1以上の追加のカバーを設けることが可能であり、或いはカバー50Cを省略することも可能である。
【0028】
過渡現象保護回路74は、任意の所望構成とすることが可能である。例えば、過渡現象保護回路74には、接地された避雷管、回路中のダイオードにおける電荷蓄積を抑制する1対の抵抗素子、帯電電荷を排除する低静電容量ダイオード、1以上の過渡電圧吸収素子(例えば、コネチカット州シェルトンのビシェイアメリカ社から入手可能な、相互に逆方向に組み合わせたツェナーダイオードによるTransorb(登録商標))、及びその他の公知の過渡現象保護素子のうちの1以上を任意に構成して設けることが可能である。いくつかの実施形態において過渡現象保護回路74は、ローズマウント(登録商標)470(商標)過渡現象保護装置(ミネソタ州チャンハッセンのエマーソンプロセスマネージメント社から入手可能)や、米国特許出願公開2010/0123591号に開示されているものなど、公知の構成とすることが可能である。
【0029】
過渡現象保護回路に用いられる部品は、少なくとも代表的なフィールドデバイスのハウジングに比べて相対的に大きい場合があるため、そのような回路をハウジング内の限られたスペースに収容するのが難しい。カバー50Bに過渡現象保護回路74を取り付けようにして、ハウジング48内の部品と干渉したり、ハウジング48の拡大または再設計が必要となったりすることなく、若しくは過渡現象保護回路用の別個の容器を必要とすることなく、過渡現象保護回路74を収容するように、カバー50Bを拡大したり拡大以外の手法で構成したりすることが可能である。
【0030】
フィールドデバイス42”には、
図2Cに具体的に示されないような追加の部材を設けることが可能である。また、具体的な適用目的に応じ、フィールドデバイス42”の具体的な構成を変更可能であると認識することができるであろう。
【0031】
図3は、
図2Bに基づき前述した形式のフィールドデバイス42’の一部を示す分解斜視図である。但し、当業者は、
図3に示す特徴が他の実施形態(
図2Aや
図2Cに示すような実施形態等)にも容易に適用可能であることを認識できるであろう。簡略化のため、カバー50A及びハウジング48内の電子回路や他の内装部品は
図3に示していない。
【0032】
図3に示すように、フィールドデバイス42’は、ハウジング48、カバー50A、カバー50C、カラー52A、シール80A及びシール80Cを備える。図示した実施形態において、ハウジング48はほぼ円筒形状をなし、中間部分の径が小さくなっている。ハウジング48の両端部は、2つの内部区画室に向けて開口しており(
図3には一方の開口及び一方の内部区画室のみが示される)、これら内部区画室は内部壁82によって分離されている(内部壁82には、内部壁82を貫通する適切な電気接続用フィードスルーを設けることが可能である)。産業プロセス44とのやりとり(
図2B参照)のため、適合する導管を接続したり、フィールドデバイス42’を取り付けたりできるように、ハウジング48の内部区画室の少なくとも一方に開口する1以上の突出部84を設けることが可能である。ハウジング48にはねじ山85を設けることができる。ハウジング48は、金属材料や、その他の適切な素材を用いて形成することができる。
【0033】
図3に示すように、シール80Aはハウジング48とカバー50Aとの間に、またシール80Cはハウジング48とカバー50Cとの間に、それぞれ配設される。図示した実施形態において、シール80A及びシール80Cは、ハウジング48とカバー50Aとの間及びハウジング48とカバー50Cとの間に、流体環境における密封状態を生成可能な一般的なOリング型のシールとして構成される。シール80A及びシール80Cを受容するため、ハウジング48とカバー50A及びカバー50Bとの少なくとも一方に溝86を設けることができる。
【0034】
図示した実施形態において、カラー52Aは概ね環状をなし、カラー52Aにはねじ山88及び肩部90(即ち係合構造)を設けることが可能であって、これらねじ山88及び肩部90のそれぞれは、カラー52Aの内周面または中心方向に向く面に配設することが可能である。また、カラー52Aには、カラー52Aを回転させるためのレンチなど、適合する工具を係止させることが可能な適切は構造を備えていてもよい。カラー52Aは、金属材料や、その他の適切な素材を用いて形成することができる。図示した実施形態においてカラー52Aは、ハウジング48のねじ山85にカラー52Aのねじ山88を螺合させることにより、カバー50Aの外周に嵌合するように構成される。更に別の実施形態として、カバー50Aに対するカラー52Aの相対回転を許容しつつ、カバー50Aの周囲におけるカラー52Aの(軸線方向での)保持を補助するストッパのような、適切な規制部材(図示せず)を設けてもよい。
【0035】
図3に示すようにカバー50Aは、枠部材92と、当該枠部材92に保持された透明カバー部材66とを備える。図示した実施形態において透明カバー部材66は、枠部材92の中央部分に配設されている。防爆要件を満たすため、枠部材92は金属材料を用いて形成し、透明カバー部材66は9mm以上の厚みのガラスで形成することが可能である。付属電子回路部58A(簡略化のため
図3には示さず)は、枠部材92に固定して、少なくとも一部が透明カバー部材66を通して視認できるように配置することができる。これに代わる実施形態として、透明カバー部材66を省略し、カバー50A全体を枠部材92として形成することも可能である。
【0036】
枠部材92には肩部94を設けることが可能であり、この肩部94は、カバー50Aの周縁部において外側、即ち外方に向く面に配設することができる。カバー50Aの肩部94とカラー52Aの肩部90とは、カラー52Aがハウジング48に組み付けられたときに、互いに物理的に当接して合わさることにより、カラー52Aから肩部90及び肩部94を介してカバー50Aに押し付け力が伝達され、ハウジング48に対するカバー50Aの押し付けを助長するように構成されている。カラー52Aを回転させているときには、肩部90と肩部94とが互いに摺動する。
【0037】
図3に示すように、カバー50Cにはねじ山96が設けられており、このねじ山96がハウジング48のねじ山85に螺合可能となっている。カバー50Cは金属材料により形成することが可能である。図示する実施形態では、カバー50Cに透明部材が設けられておらず、付属電子回路部が保持されていない。
【0038】
カバー50A及びカバー50Cは、ハウジング48の両端に配置され、ハウジング48の内部部品に対する開口部に設けられる。カバー50A及びカバー50C、並びにハウジング48には、それぞれ火炎伝播規制構造96A〜96Dを設けることが可能である(
図3において、カバー50Aの火炎伝播規制構造96A、及びハウジング48の火炎伝播規制構造96Dは視認できない)。カバー50Aの火炎伝播規制構造96A、及びハウジング48の火炎伝播規制構造96Bは、相互に組み合わさることにより、両者間に防爆火炎伝播経路が形成されるようになっている。同様に、カバー50Cの火炎伝播規制構造96C、及びハウジング48の火炎伝播規制構造96Dは、相互に組み合わさることにより、両者間にもう1つの防爆火炎伝播経路が形成されるようになっている。
【0039】
一実施形態として、火炎伝播規制構造96A〜96Dは、複数の同心円からなる環状の鋸歯状部として構成することが可能である。
図4は、
図3の4−4線に沿うフィールドデバイス42’の一部の拡大断面図であって、シール80Aより径方向内側に位置して軸線方向で対向した鋸歯状部を、火炎伝播規制構造96A及び火炎伝播規制構造96Bの一実施形態として示している。火炎伝播規制構造96Aは、全体的に肩部94寄りに(肩部94が向く方向とは反対方向に向けて)設けられ、火炎伝播規制構造96Bは、全体的にねじ山85及びシール80A寄りに設けられている。
図4に示すように、火炎伝播規制構造96Aと火炎伝播規制構造96Bとは、完全に組み合わさる5つの鋸歯状部を備える。これに代わる実施形態として、鋸歯状部の数を増減することも可能であるが、適切な防爆性が得られるように適用するには、少なくとも5つ以上の鋸歯状部が好ましい。火炎伝播規制構造96A及び火炎伝播規制構造96Bの鋸歯状部は、間隔がT、挟角がαとなっている。いくつかの実施形態として、火炎伝播規制構造96A及び火炎伝播規制構造96Bのそれぞれにおける鋸歯状部の径方向の合計幅を約8.255mm(0.325インチ)とした場合、間隔Tは1.25mm(0.05インチ)以上、挟角αは概ね60度(±5度)とすることができる。
【0040】
火炎伝播規制構造96A及び火炎伝播規制構造96Bによって防爆火炎伝播経路が形成されるため、ねじ山85及びねじ山88で防爆火炎伝播経路を形成する必要がなくなり、比較的少ない数のねじ山を設ければよくなる。ねじ山85及びねじ山88のねじ山数の低減により、ハウジング48へのカラー52Aの組み付けは、これら両部材のより少ない回数の回転で行うことが可能となり、更に迅速に組み付けを行うことができる。
【0041】
なお、更に別の実施形態として、鋸歯状部以外の形式の火炎伝播規制構造を本発明に組み入れて用いてもよい。例えば、IEC規格60079−1(2007)に適合する任意の火炎伝播規制構造を用いてもよい。
図3及び
図4に示すような鋸歯状部による火炎伝播規制構造96A及び火炎伝播規制構造96Bは、一例を示すものに過ぎず、これに限定されるものではない。
【0042】
図5は、回転防止構造の実施形態を示す、フィールドデバイス42’の一部の断面図である。
図5に示すように、カバー50A(例えば、カバー50Aの枠部材92)は第1回転防止構造100を備え、ハウジング48は第2回転防止構造102を備えている。第1回転防止構造100と第2回転防止構造102とは互いに係合可能となっており、カバー50Aとハウジング48との間の相対的な回転を抑制または防止することができる。第1回転防止構造100及び第2回転防止構造102は、カバー50A及びハウジング48の互いに対向する面、若しくは当該面の近傍に配設することができる。図示した実施形態において、第1回転防止構造100はスプラインで構成され、第2回転防止構造102は当該スプラインを受容する溝で構成される。これに代わる実施形態として、スプラインをハウジング48に設け、溝をカバー50Aに設けてもよい。また、別の実施形態として、第1回転防止構造100及び第2回転防止構造102は、スプライン、キー、ピン、ダブテール、ボス、テザー、またはその他の回転防止構造など、任意の適切なもので構成することが可能である。
【0043】
図6は、フィールドデバイス42’のカバー50Aの一部の断面図である。
図6に示すように、付属電子回路部58Aはシュラウド110によって保持されており、透明カバー部材66に隣接して配置されている。図示した実施形態において、付属電子回路部58Aと透明カバー部材66の内側の面との間には間隙Gが設けられている。シュラウド110は透明カバー部材66に当接可能となっており、間隙Gの大きさを設定する上での一助となる。一実施形態において、間隙Gは約0.254mm(0.01インチ)であるが、これに代わる実施形態として、これよりも間隙Gを増減させることが可能である。シュラウド110はポリマ或いはその他の適切な材料からなる。付属電子回路部58Aは、適切な留め具を用いるなどしてシュラウド110に固定されており、更にシュラウド110は、枠部材92(
図6には示されない)に固定することができる。このようにして、枠部材92、透明カバー部材66、付属電子回路部58A及びシュラウド110は、相互に回転しないように固定可能となっている。図示した実施形態において、電気コネクタ60Aは、概ね直線的な動きにより相手側の電気コネクタ(図示せず)に接続可能なピン形式の雄型コネクタである。
図6において、電気コネクタ60Aと付属電子回路部58Aにおける電気コネクタ60A以外の部分との機能的な接続は概略的にしか示していない。当業者は、この機能的な接続に、電線やフレキシブル回路など、任意の適切な電気的接続が適用可能であることを理解できるであろう。
【0044】
図7は、フィールドデバイスのカバー及びハウジングの組立方法を示すフローチャートである。
図7に示す方法は、
図2Aに示す形式のフィールドデバイスを組み立てるのに適するものであるが、別の実施形態のフィールドデバイスにも容易に適用可能である。
図7に示す方法は、フィールドデバイスの新規の組立、既存のフィールドデバイスの改造、及び現場で使用中のフィールドデバイスのメンテナンスの際に適用することが可能である。
【0045】
図7に示すように、最初に第1のカバーを、標準的にはハウジングと物理的に接した状態とし、ハウジングの開口に対応させて配置する(ステップ200)。次に、第1のカバーとハウジングとの間で、第1の回転防止構造を係合させ(ステップ202)、第1のカバーに保持した電子回路とハウジングに保持した電子回路との間に第1の電気的接続を形成する(ステップ204)。この第1の電気的接続(ステップ204)は、電気コネクタ同士の実質的に直線的な動きなどにより、ハウジング(及びこれに保持された電子回路)に対して第1のカバー(及びこれに保持された電子回路)を回転させることなく行うことが可能である。次に、ハウジングに第1のカラーを組み付ける(ステップ206)。この第1のカラーの組み付けは、螺合によって行うことができる。そして、第1のカバーとハウジングとの間に、防爆火炎伝播経路が形成される(ステップ208)。また、第1のカラーによって第1のカバーに力が加わり、第1のカバーがハウジングに対して押し付けられる(ステップ210)。
【0046】
更に第2のカバーを、標準的にはハウジングと物理的に接した状態とし、ハウジングの開口に対応させて配置する(ステップ300)。次に、第2のカバーとハウジングとの間で、第2の回転防止構造を係合させ(ステップ302)、第2のカバーに保持した電子回路とハウジングに保持した電子回路との間に第2の電気的接続を形成する(ステップ304)。この第2の電気的接続(ステップ304)は、電気コネクタ同士の実質的に直線的な動きなどにより、ハウジング(及びこれに保持された電子回路)に対して第2のカバー(及びこれに保持された電子回路)を回転させることなく行うことが可能である。次に、ハウジングに第2のカラーを組み付ける(ステップ306)。この第2のカラーの組み付けは、螺合によって行うことができる。そして、第2のカバーとハウジングとの間に、防爆火炎伝播経路が形成される(ステップ308)。また、第2のカラーによって第2のカバーに力が加わり、第2のカバーがハウジングに対して押し付けられる(ステップ310)。
【0047】
なお、
図7に示す方法における各ステップは、具体的な適用目的に応じ、任意の適切な順番で実行可能である。例えば、第2のカバーに関するステップは、第1のカバーに関するステップより前もしくは後、または第1のカバーに関するステップと同時に実行することが可能である。また、これに代わる実施形態として、第2のカバーを当該第2のカバーに関わるステップと共に省略することも可能である。更に、追加のカバーを同様の方法で組み付けることもできる。具体的に示していない追加のステップを、例示した上記の方法に組み入れて実行することも可能である。
【0048】
当業者は、本発明によって様々な効果や利点が得られることを認識できるであろう。例えば、本発明により、電子回路を保持するハウジングに対して着脱可能に組み付けられるカバーに、別の電子回路を保持することが可能となる。本発明により、フレキシブル回路やその他の複雑な電気接続の必要性をより一層低減することができるような、比較的単純で、信頼性があり、使いやすいインターフェイスを構成部品間に設けることができる。また、本発明により、様々な電子回路を保持し、必要に応じて特定のハウジングに選択的に組み付けることができて、ハウジング内の電子回路を変更することなく後で交換または置き換えが可能な様々なカバーについてのモジュール化が可能となる。これにより、所定のフィールドデバイスによって得られる機能の拡大または変更が、単純且つ容易に実現可能となる。また、ハウジングに複数の開口を設けることが可能であれば、所定のカバー及び電子回路をハウジングの任意の開口に装着できる。従って、カバーにローカルオペレータインタフェイス(LOI)が保持されている場合、内蔵する所定の伝送器に対するアクセスが最適となる開口の部分に、このローカルオペレータインタフェイス(LOI)を配設することができる。本発明の更なる効果及び利点は、本明細書における開示内容から当業者が認識可能であろう。
【0049】
具体的な実施形態に基づき本発明を説明したが、当業者は、各要素について、本発明の範囲から外れることなく、様々な変更を行うことが可能であると共に、均等物に置き換えることが可能であることを理解できるであろう。また、特定の状況や材料を本発明の教示に適合させるべく、本発明の本質的な範囲から外れることなく様々な変更を行うことが可能である。従って、本発明は、開示した特定の実施形態に限定されるものではなく、添付の特許請求の範囲内の全ての形態を含むものである。例えば、本発明によるカラーは、カラーとハウジングとを差し込み接合するなど、任意の適切な方法で相手の部材に組み付けることが可能である。