(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
(熱伝導性シート)
本発明の熱伝導性シートは、バインダーと、炭素繊維と、無機物フィラーとを少なくとも含有し、更に必要に応じて、その他の成分を含有する。
前記熱伝導性シートは、半導体装置の熱源と放熱部材との間に挟持され使用される。
【0012】
<バインダー>
前記バインダーとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、バインダー樹脂などが挙げられる。前記バインダー樹脂としては、例えば、熱可塑性ポリマー、熱硬化性ポリマーの硬化物などが挙げられる。
【0013】
前記熱可塑性ポリマーとしては、例えば、熱可塑性樹脂、熱可塑性エラストマー、又はこれらのポリマーアロイなどが挙げられる。
【0014】
前記熱可塑性樹脂としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−α−オレフィン共重合体、ポリメチルペンテン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリ酢酸ビニル、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリビニルアルコール、ポリアセタール、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリスチレン、ポリアクリロニトリル、スチレン−アクリロニトリル共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS)樹脂、ポリフェニレンエーテル、変性ポリフェニレンエーテル、脂肪族ポリアミド類、芳香族ポリアミド類、ポリアミドイミド、ポリメタクリル酸又はそのエステル、ポリアクリル酸又はそのエステル、ポリカーボネート、ポリフェニレンスルフィド、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルニトリル、ポリエーテルケトン、ポリケトン、液晶ポリマー、シリコーン樹脂、アイオノマーなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記熱可塑性エラストマーとしては、例えば、スチレン系熱可塑性エラストマー、オレフィン系熱可塑性エラストマー、塩化ビニル系熱可塑性エラストマー、ポリエステル系熱可塑性エラストマー、ポリウレタン系熱可塑性エラストマー、ポリアミド系熱可塑性エラストマーなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0015】
前記熱硬化性ポリマーとしては、例えば、架橋ゴム、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、ビスマレイミド樹脂、ベンゾシクロブテン樹脂、フェノール樹脂、不飽和ポリエステル、ジアリルフタレート樹脂、シリコーン樹脂、ポリウレタン、ポリイミドシリコーン、熱硬化型ポリフェニレンエーテル、熱硬化型変性ポリフェニレンエーテルなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0016】
前記架橋ゴムとしては、例えば、天然ゴム、ブタジエンゴム、イソプレンゴム、ニトリルゴム、水添ニトリルゴム、クロロプレンゴム、エチレンプロピレンゴム、塩素化ポリエチレン、クロロスルホン化ポリエチレン、ブチルゴム、ハロゲン化ブチルゴム、フッ素ゴム、ウレタンゴム、アクリルゴム、ポリイソブチレンゴム、シリコーンゴムなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0017】
これらの中でも、成形加工性、耐候性に優れると共に、電子部品に対する密着性及び追従性の点から、前記熱硬化性ポリマーは、シリコーン樹脂であることが特に好ましい。
【0018】
前記シリコーン樹脂としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、付加反応型液状シリコーン樹脂、過酸化物を加硫に用いる熱加硫型ミラブルタイプのシリコーン樹脂などが挙げられる。これらの中でも、電子機器の放熱部材としては、電子部品の発熱面とヒートシンク面との密着性が要求されるため、付加反応型液状シリコーン樹脂が特に好ましい。
【0019】
前記付加反応型液状シリコーン樹脂としては、ビニル基を有するポリオルガノシロキサンをA液、Si−H基を有するポリオルガノシロキサンをB液とした、2液性の付加反応型シリコーン樹脂が好ましい。A液とB液との混合比率は所望とする熱伝導性シートの柔軟性によって適宜選択される。
【0020】
前記熱伝導性シートにおける前記バインダーの含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、25体積%〜50体積%が好ましい。
【0021】
<炭素繊維>
前記炭素繊維としては、平均繊維長(平均長軸長さ)が、50μm〜250μmであれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ピッチ系、PAN系、アーク放電法、レーザー蒸発法、CVD法(化学気相成長法)、CCVD法(触媒化学気相成長法)等で合成されたものを用いることができる。これらの中でも、熱伝導性の点からピッチ系炭素繊維が特に好ましい。
前記炭素繊維は、必要に応じて、その一部又は全部を表面処理して用いることができる。前記表面処理としては、例えば、酸化処理、窒化処理、ニトロ化、スルホン化、あるいはこれらの処理によって表面に導入された官能基若しくは炭素繊維の表面に、金属、金属化合物、有機化合物等を付着あるいは結合させる処理などが挙げられる。前記官能基としては、例えば、水酸基、カルボキシル基、カルボニル基、ニトロ基、アミノ基などが挙げられる。
【0022】
炭素繊維の一部が、熱伝導性シートの表面に、前記炭素繊維の長軸が前記熱伝導性シートの面方向に沿って、配されていることが、熱抵抗を低下させる点で好ましい。
【0023】
前記炭素繊維の平均繊維長(平均長軸長さ)は、50μm〜250μmであり、75μm〜200μmが好ましく、100μm〜150μmがより好ましい。前記平均繊維長が、50μm未満であると、異方性熱伝導性が十分に得られず、熱抵抗が高くなってしまう。前記平均繊維長が、250μmを超えると、前記熱伝導性シートの圧縮性が低下して、使用時に十分に低い熱抵抗が得られなくなる。
【0024】
前記炭素繊維の平均短軸長さとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、6μm〜15μmが好ましく、8μm〜13μmがより好ましい。
【0025】
前記炭素繊維のアスペクト比(平均長軸長さ/平均短軸長さ)としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、8以上が好ましく、12〜30がより好ましい。前記アスペクト比が、8未満であると、炭素繊維の繊維長(長軸長さ)が短いため、熱伝導率が低下してしまうことがある。
ここで、前記炭素繊維の平均長軸長さ、及び平均短軸長さは、例えばマイクロスコープ、走査型電子顕微鏡(SEM)などにより測定することができる。
【0026】
前記熱伝導性シートにおける前記炭素繊維の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、20体積%〜40体積%が好ましく、22体積%〜36体積%がより好ましく、28体積%〜36体積%が特に好ましい。前記含有量が、20体積%未満であると、十分に低い熱抵抗を得ることが困難になることがあり、40体積%を超えると、前記熱伝導性シートの成形性及び前記炭素繊維の配向性に影響を与えてしまうことがある。
【0027】
<無機物フィラー>
前記無機物フィラーとしては、その形状、材質、平均粒径などについては特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。前記形状としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、球状、楕円球状、塊状、粒状、扁平状、針状などが挙げられる。これらの中でも、球状、楕円形状が充填性の点から好ましく、球状が特に好ましい。
なお、本明細書において、前記無機物フィラーは、前記炭素繊維とは異なる。
【0028】
前記無機物フィラーとしては、例えば、窒化アルミニウム(窒化アルミ:AlN)、シリカ、アルミナ(酸化アルミニウム)、窒化ホウ素、チタニア、ガラス、酸化亜鉛、炭化ケイ素、ケイ素(シリコン)、酸化珪素、酸化アルミニウム、金属粒子などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、アルミナ、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、酸化亜鉛、シリカが好ましく、熱伝導率の点から、アルミナ、窒化アルミニウムが特に好ましい。
【0029】
なお、前記無機物フィラーは、表面処理が施されていてもよい。前記表面処理としてカップリング剤で前記無機物フィラーを処理すると、前記無機物フィラーの分散性が向上し、熱伝導性シートの柔軟性が向上する。
【0030】
前記無機物フィラーの平均粒径としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
前記無機物フィラーがアルミナの場合、その平均粒径は、1μm〜10μmが好ましく、1μm〜5μmがより好ましく、4μm〜5μmが特に好ましい。前記平均粒径が、1μm未満であると、粘度が大きくなり、混合しにくくなることがあり、10μmを超えると、前記熱伝導性シートの熱抵抗が大きくなることがある。
前記無機物フィラーが窒化アルミニウムの場合、その平均粒径は、0.3μm〜6.0μmが好ましく、0.3μm〜2.0μmがより好ましく、0.5μm〜1.5μmが特に好ましい。前記平均粒径が、0.3μm未満であると、粘度が大きくなり、混合しにくくなることがあり、6.0μmを超えると、前記熱伝導性シートの熱抵抗が大きくなることがある。
前記無機物フィラーの平均粒径は、例えば、粒度分布計、走査型電子顕微鏡(SEM)により測定することができる。
【0031】
前記無機物フィラーの比表面積としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
前記無機物フィラーがアルミナの場合、その比表面積は、0.3m
2/g〜0.9m
2/gが好ましい。
前記無機物フィラーが窒化アルミニウムの場合、その比表面積は、1m
2/g〜3m
2/gが好ましい。
前記無機物フィラーの比表面積は、例えば、BET法により測定できる。
【0032】
前記熱伝導性シートにおける前記無機物フィラーの含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、30体積%〜55体積%が好ましく、35体積%〜50体積%がより好ましい。前記含有量が、30体積%未満であると、前記熱伝導性シートの熱抵抗が大きくなることがあり、55体積%を超えると、前記熱伝導性シートの柔軟性が低下することがある。
【0033】
<その他の成分>
前記その他の成分としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、チキソトロピー性付与剤、分散剤、硬化促進剤、遅延剤、微粘着付与剤、可塑剤、難燃剤、酸化防止剤、安定剤、着色剤などが挙げられる。
【0034】
前記熱伝導性シートの平均厚みは、500μm以下であり、100μm〜400μmが好ましく、200μm〜350μmがより好ましい。前記平均厚みは、荷重をかけていない時の平均厚みである。
【0035】
前記熱伝導性シートの平均厚み(μm)は、前記炭素繊維の平均繊維長(μm)よりも大きいことが好ましい。そうすることにより、使用時に、圧縮しやすく、十分に低い熱抵抗が得られる。
【0036】
前記熱伝導性シートは、荷重7.5kgf/cm
2をかけた時の圧縮率が、5%以上であることが好ましく、10%〜70%であることがより好ましい。前記圧縮率が、5%未満であると、圧縮時に熱抵抗が小さくならないことがある。
前記圧縮率は、以下の式により求めることができる。
圧縮率(%)=100×(X−Y)/X
X:荷重をかける前の熱伝導性シートの平均厚み(μm)
Y:荷重7.5kgf/cm
2をかけた後の熱伝導性シートの平均厚み(μm)
【0037】
前記熱伝導性シートは、ASTM−D5470に従って測定される、荷重7.5kgf/cm
2条件下での熱抵抗が、0.17K・cm
2/W未満である。前記熱抵抗の下限値としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、0.04K・cm
2/Wが好ましい。
ここで、荷重をかけて熱抵抗を測定するのは、使用時には、通常、半導体装置の熱源と放熱部材との間に挟持されることで熱伝導性シートに荷重がかかるためである。そして、熱伝導性シートに荷重がかかっている場合と、荷重がかかっていない場合とでは、前記熱伝導性シートの厚み、前記熱伝導性シート内の前記炭素繊維の密度、及び配向、並びに前記熱伝導性シート内の前記無機物フィラーの密度などが異なるため、熱抵抗が変化する。
【0038】
前記熱伝導性シートは、ASTM−D5470に従って熱抵抗を測定する際の荷重2.0kgf/cm
2〜荷重7.5kgf/cm
2の範囲において、熱抵抗が、0.20K・cm
2/W以下であることが好ましい。そうすることにより、使用環境に左右されず、非常に優れた熱抵抗を有する熱伝導性シートが得られる点で有利である。前記熱抵抗の下限値としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、0.04K・cm
2/Wが好ましい。
【0039】
前記熱伝導性シートの製造方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、以下で説明する本発明の熱伝導性シートの製造方法が好ましい。
【0040】
(熱伝導性シートの製造方法)
本発明の熱伝導性シートの製造方法は、押出成形工程と、硬化工程と、切断工程とを少なくとも含み、更に必要に応じてその他の工程を含んでなる。
【0041】
<押出成形工程>
前記押出成形工程は、熱伝導性組成物を押出機で押出して、押出成形物を得る工程であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0042】
−熱伝導性組成物−
前記熱伝導性組成物は、バインダー前駆体と、炭素繊維と、無機物フィラーとを含有し、更に必要に応じて、その他の成分を含有する。
【0043】
前記バインダー前駆体は、後述する硬化工程によって硬化して前記熱伝導性シートのバインダーになる、前記バインダーの前駆体であって、例えば、本発明の前記熱伝導性シートの説明において例示した前記熱硬化性ポリマーなどが挙げられる。
前記炭素繊維は、本発明の前記熱伝導性シートの説明において例示した前記炭素繊維である。
前記無機物フィラーは、本発明の前記熱伝導性シートの説明において例示した前記無機物フィラーである。
【0044】
前記熱伝導性組成物は、前記バインダー前駆体、前記炭素繊維、前記無機物フィラー、及び更に必要に応じてその他の成分を、ミキサー等を用いて混合することにより調製することができる。
【0045】
押出機を用いて、前記熱伝導性組成物を型内に押出成形することにより、押出成形物を得ることができる。
【0046】
前記押出機としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
前記押出機の押出口には、通常、複数のスリットが設けられており、これにより、炭素繊維が押出し方向に配向される。
前記スリットの形状、大きさとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記スリットの形状としては、例えば、平板状、格子状、ハニカム状などが挙げられる。前記スリットの大きさ(幅)としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、0.5mm〜10mmが好ましい。
前記熱伝導性組成物の押出し速度としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、0.001L/min以上が好ましい。
【0047】
前記型の形状、大きさ、材質などについては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、前記形状としては、中空円柱状、中空角柱状などが挙げられる。前記大きさとしては、作製する熱伝導性シートの大きさに応じて適宜選定することができる。前記材質としては、例えば、ステンレスなどが挙げられる。
【0048】
前記熱伝導性組成物が押出機等を通過する過程において、前記炭素繊維、前記無機物フィラーなどは熱伝導性組成物の中心方向に集められ、押出成形物の表面と中心とでは、前記炭素繊維、及び前記無機物フィラーの密度が異なる。即ち、押出機を通過した熱伝導性組成物(成形体)の表面には、前記炭素繊維、及び前記無機物フィラーが表面に突出していないので、熱伝導性組成物(成形体)を硬化した硬化物の表面部(熱伝導性シートにおける外周部)が良好な微粘着性を備え、被着体(半導体装置等)への接着性が良好となる。
また、
図1に示すように、前記炭素繊維、及び前記無機物フィラーを含む熱伝導性組成物を押出成形することで、炭素繊維を押出し方向に配向させることができる。
ここで、前記微粘着性とは、経時及び湿熱による接着力上昇が少ない再剥離性を持ち、被着体に貼った場合に簡単に位置がずれない程度の粘着性を有することを意味する。
【0049】
<硬化工程>
前記硬化工程は、前記押出成形物を硬化させて硬化物とする工程である。
前記押出成形工程で成形された押出成形物は、用いるバインダー前駆体に応じた適切な硬化反応により硬化物となる。
前記押出成形物の硬化方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記バインダー前駆体としてシリコーン樹脂等の熱硬化性ポリマーを用いる場合には、加熱により硬化させることが好ましい。
前記加熱に用いる装置としては、例えば、遠赤外炉、熱風炉などが挙げられる。
前記加熱温度としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、40℃〜150℃で行うことが好ましい
前記シリコーン樹脂が硬化したシリコーン硬化物の柔軟性は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、シリコーン硬化物の架橋密度、炭素繊維の充填量、無機物フィラーの充填量などによって調整することができる。
【0050】
<切断工程>
前記切断工程としては、前記硬化物を、前記押出しの方向に対し垂直方向に平均厚み500μm以下に切断する工程であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0051】
前記切断は、例えば、超音波カッター、かんな(鉋)などを用いて行われる。前記超音波カッターでは、発信周波数と振幅を調節することができ、発信周波数は10kHz〜100kHz、振幅は10μm〜100μmの範囲で調節することが好ましい。前記切断を超音波カッターではなく、カッターナイフ、ミートスライサー(回転刃)で行うと、切断面の表面粗さRaが大きくなり、熱抵抗が大きくなってしまう。
【0052】
前記切断工程によると、硬化反応が完了した硬化物を、前記押出しの方向に対し垂直方向に所定の厚みに切断することにより、前記炭素繊維が熱伝導性シートの厚み方向に配向(垂直配向)した熱伝導性シートを得ることができる。
また、前記付加反応型液状シリコーン樹脂における、前記A液と前記B液との混合比率(質量比)がA液:B液=5:5〜6:4の範囲にある場合には、切断時に炭素繊維の一部が、熱伝導性シートの表面に、前記炭素繊維の長軸が前記熱伝導性シートの面方向に沿って、付着することで、前記熱伝導性シートの面方向に沿って配された炭素繊維を熱伝導性シートの表面に有する熱伝導性シートを得ることができる。
【0053】
また、前記熱伝導性シートの面方向に沿って配された炭素繊維を熱伝導性シートの表面に有する熱伝導性シートを得るには、前記付加反応型液状シリコーン樹脂における、前記A液と前記B液との混合比率(質量比)は、A液:B液=5:5〜6:4が特に好ましい。混合比率において、A液が少なくなると炭素繊維は熱伝導性シート表面に付着せず、多くなると熱伝導性シートの柔軟性が高くなり過ぎ、製造が困難となることがある。
【0054】
ここで、本発明の熱伝導性シートの製造方法の一例を図を用いて説明する。
図2に示すように、押出し、成形、硬化、切断(スライス)などの一連の工程を経て熱伝導性シートが製造される。
図2に示すように、まず、バインダー前駆体、炭素繊維、及び無機物フィラーを配合及び撹拌して熱伝導性組成物を調製する。次に、調製した熱伝導性組成物を押出成形する際に、複数のスリットを通過させることで熱伝導性組成物中に配合された炭素繊維を熱伝導性シートの厚み方向に配向させる。次に、得られた成形体を硬化させた後、硬化物を前記押出し方向に対し垂直方向に超音波カッターで所定の厚みに切断(スライス)することにより、熱伝導性シートが作製できる。
【0055】
(半導体装置)
本発明の半導体装置は、放熱部材と、熱源と、熱伝導性シートとを有し、更に必要に応じて、その他の部材を有する。
前記熱伝導性シートは、前記熱源と前記放熱部材との間に挟持されている。
【0056】
<熱源>
前記熱源としての半導体素子としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、CPU、MPU、グラフィック演算素子などが挙げられる。
【0057】
<放熱部材>
前記放熱部材としては、半導体素子から発生する熱を伝導して外部に放散させるものであれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、放熱器、冷却器、ヒートシンク、ヒートスプレッダー、ダイパッド、プリント基板、冷却ファン、ペルチェ素子、ヒートパイプ、筐体などが挙げられる。
【0058】
<熱伝導性シート>
前記熱伝導性シートは、本発明の前記熱伝導性シートである。
【0059】
ここで、
図3は、半導体装置10の一例を示す概略図であり、基板1上に半導体素子2が配設されており、放熱部材4との間に、熱伝導性シート3が挟持されている。
【実施例】
【0060】
以下、本発明の実施例を説明するが、本発明は、これらの実施例に何ら限定されるものではない。
なお、本実施例において、実施例14は参考例14と読み替える。
【0061】
以下の実施例及び比較例において、アルミナ粒子及び窒化アルミニウムの平均粒径は粒度分布計により測定した値である。また、ピッチ系炭素繊維の平均長軸長さ及び平均短軸長さは、マイクロスコープ(HiROX Co Ltd製、KH7700)で測定した値である。
【0062】
(実施例1)
−熱伝導性シートの作製−
シリコーンA液(ビニル基を有するオルガノポリシロキサン)と、シリコーンB液(H−Si基を有するオルガノポリシロキサン)とを3:7(A液:B液)の質量比で混合した二液性の付加反応型液状シリコーン樹脂に、分級して比表面積を調整したアルミナ(平均粒径4μm、球状、比表面積0.3m
2/g、新日鉄住金マテリアルズ株式会社マイクロン社製)18体積%と、窒化アルミニウム(平均粒径1μm、球状、比表面積3m
2/g、Hグレード、株式会社トクヤマ製)21体積%と、ピッチ系炭素繊維(平均繊維長100μm、平均短軸長さ9.2μm、XN100−10M、日本グラファイトファイバー株式会社製)31体積%とを分散させて、シリコーン樹脂組成物を調製した。なお、上記配合における体積%は、得られる熱伝導性シートにおける体積%である。
また、アルミナ及び窒化アルミニウムは、シランカップリング剤でカップリング処理したものを用いた。
得られたシリコーン樹脂組成物を押出機で型(中空円柱状)の中に押出成形し、シリコーン成形体を作製した。押出機の押出口にはスリット(吐出口形状:平板)が形成されている。
得られたシリコーン成形体をオーブンにて100℃で6時間加熱して、シリコーン硬化物とした。
得られたシリコーン硬化物を、平均厚みが100μmとなるように超音波カッターで押出しの方向に対し垂直方向にスライス切断した(発信周波数20.5kHz、振幅50μm〜70μm)。以上により、平均厚み100μm、縦30mm、横30mmの正方形状の実施例1の熱伝導性シートを作製した。
得られた熱伝導性シートは、その断面をマイクロスコープ(HiROX Co Ltd製、KH7700)で観察したところ、ピッチ系炭素繊維が熱伝導性シートの厚み方向に対し0度〜5度に配向していた。
図4に、熱伝導性シートの表面のSEM写真を示した。
また、得られた熱伝導性シートの圧縮率を測定した。その結果を表5−1に示した。
【0063】
〔評価〕
<熱抵抗>
ASTM−D5470に従って熱抵抗を測定した。結果を表1、表4、及び
図5に示した。
熱抵抗は、荷重0.5kgf/cm
2、1.0kgf/cm
2、1.5kgf/cm
2、2.0kgf/cm
2、3.0kgf/cm
2、4.0kgf/cm
2、5.3kgf/cm
2、6.0kgf/cm
2、7.5kgf/cm
2の条件下でそれぞれ測定した。
【0064】
<柔軟性>
柔軟性は熱伝導性シートの圧縮率で評価した。具体的には、熱伝導性シートに荷重7.5kgf/cm
2をかけた時の圧縮率を測定し、以下の評価基準で評価した。
〔評価基準〕
○:圧縮率が5%以上
×:圧縮率が5%未満
【0065】
<炭素繊維の一部が、熱伝導性シートの表面に、前記炭素繊維の長軸が前記熱伝導性シートの面方向に沿って、配されているか(熱伝導性シートの表面における炭素繊維の有無)>
炭素繊維の一部が、熱伝導性シートの表面に、前記炭素繊維の長軸が前記熱伝導性シートの面方向に沿って、配されているか否かを
図4のようなSEM写真により確認した。以下の評価基準で評価した。結果を表1に示した。
〔評価基準〕
A:配されている
B:配されていない
【0066】
(実施例2〜15、比較例1〜4)
実施例1において、炭素繊維の種類及び量(体積%)、アルミナの種類及び量(体積%)、窒化アルミニウムの種類及び量(体積%)、並びに熱伝導性シートの平均厚みを、表1〜3に記載の炭素繊維の種類及び量(体積%)、アルミナの種類及び量(体積%)、窒化アルミニウムの種類及び量(体積%)、並びに熱伝導性シートの平均厚みに変更した以外は、実施例1と同様にして、熱伝導性シートを作製した。
得られた熱伝導性シートについて、実施例1と同様にして評価を行った。結果を表1〜4及び
図5に示した。
【0067】
(実施例16)
実施例1において、シリコーンA液とシリコーンB液との配合比率(質量比)を5:5に変更した以外は、実施例1と同様にして、熱伝導性シートを作製した。
得られた熱伝導性シートについて、実施例1と同様にして評価を行った。結果を表3及び
図5に示した。また、各荷重における圧縮率を測定した。測定結果を表5−1に示した。更に、熱伝導性シートのSEM写真を
図6に示した。ここで、SEM写真上の矢印よりも上の部分は熱伝導性シートの表面を示し、下の部分は熱伝導性シートの断面を示す。
【0068】
(実施例17)
実施例7において、シリコーンA液とシリコーンB液との配合比率(質量比)を5:5に変更した以外は、実施例7と同様にして、熱伝導性シートを作製した。
得られた熱伝導性シートについて、実施例1と同様にして評価を行った。結果を表3に示した。また、各荷重における圧縮率を測定した。測定結果を表5−2に示した。
【0069】
(比較例X、Y、Z)
市販品の熱伝導性シートについて、荷重と熱抵抗との関係を実施例1と同様にして測定した。結果を表4及び
図5に示した。
なお、比較例Xの熱伝導性シートは、親和産業株式会社製SS−HCTα50−302(厚み0.2mm)であり、比較例Yの熱伝導性シートは、アクシス社製のインジウムシートであり、比較例Zの熱伝導性シートは、Nilaco社製のインジウムシートである。
【0070】
【表1】
【0071】
【表2】
【0072】
【表3】
*炭素繊維(平均繊維長:50μm):XN100−05M(日本グラファイトファイバー株式会社製)
*炭素繊維(平均繊維長:100μm):XN100−10M(日本グラファイトファイバー株式会社製)
*炭素繊維(平均繊維長:150μm):XN100−15M(日本グラファイトファイバー株式会社製)
*炭素繊維(平均繊維長:250μm):XN100−25M(日本グラファイトファイバー株式会社製)
*アルミナ:新日鉄住金マテリアルズ株式会社製
*AlN(比表面積:1m
2/g):JC(東洋アルミ株式会社製)
*AlN(比表面積:3m
2/g):Hグレード(トクヤマ株式会社製)
【0073】
【表4】
【0074】
【表5-1】
【表5-2】
【0075】
実施例1〜15の熱伝導性シートは、平均厚みが500μm以下と薄くても、ASTM−D5470に従って測定される、荷重7.5kgf/cm
2条件下での熱抵抗が、0.17K・cm
2/W未満であり、優れた熱抵抗を有しており、かつ柔軟性にも優れていた。
実施例1において、シリコーンA液とシリコーンB液との配合比率(質量比)をA液:B液=5:5に変えた実施例16の熱伝導性シートは、炭素繊維の一部が、熱伝導性シートの表面に、前記炭素繊維の長軸が前記熱伝導性シートの面方向に沿って、配されることで、発熱体もしくは放熱部材と炭素繊維の接触面積が増加して、熱抵抗の低下をもたらした。また、シリコーンA液とシリコーンB液の配合比率(質量比)をA液:B液=5:5とすることで柔軟性が向上し、炭素繊維の一部が熱伝導性シート表面方向に沿って付着し、低荷重の場合における熱抵抗の低下につながった。
実施例7において、シリコーンA液とシリコーンB液との配合比率(質量比)をA液:B液=5:5に変えた実施例17の熱伝導性シートも上記と同様の傾向が得られた。
一方、比較例1〜3では、優れた熱抵抗と、優れた柔軟性とを両立できていなかった。比較例4では、シート形成性が悪く、評価ができなかった。