【発明が解決しようとする課題】
【0006】
既知のPROPELLER概念の1つの問題は、動きにより劣化したk空間ブレードを完全に排除しようとすると、周辺のk空間領域のアンダーサンプリング、ひいては、潜在的に劣化した画質をもたらすことである。
【0007】
マルチスライス式PROPELLER撮像に伴う別の1つの問題は、マルチスライス式PROPELLER収集からの個々のスライスに位置不整合(ミスアライメント)が生じ得ることである。これの原因は、PROPELLERは、動き補正の基準として中央のk空間の測定MR信号に対して繰り返し相互相関をとるためである。一般的に、その他のブレード群の中央k空間データに対して最も大きい類似性を示す基準が選択される。PROPELLERに従って選択された基準データは、故に、絶対的な基準ではなく相対的な基準であり、個々のスライスに位置不整合を生じさせ得る。マルチスライス式MRスキャンのスライス群の遡及的アライメントは、隣接し合うスライスが実質的な類似性を示すと仮定すると、原理的に可能である。しかしながら、この事前要件は一般的に疑わしいものである。
【0008】
正確なMR画像再構成のため、既知のPROPELLER撮像法は、収集されたk空間サンプルの重み付けを必要とする。これは通常、サンプリング密度補償と呼ばれている。重み係数を計算するため、一般的に反復法が採用されている。重み付けはまた、上述の動き誘起画像アーチファクトの抑制を達成するために、例えば相互に相関付けられたk空間ブレードの相関量などの様々な基準に従ったMR信号の優先順位付けを可能にする。この優先順位付けは、選択された視野をまかなうために実際に必要な密度より高い密度でサンプリングされたk空間領域に適用され得る。既知の技術の欠点は、重み係数を計算するために通常用いられる反復法は低速であり、且つ、特に強いコントラスト加重が適用される場合に、散発的に不安定になることである。
【0009】
故に、容易に認識されるように、既知のPROPELLER撮像コンセプトの改善が望まれる。従って、本発明は、画像アーチファクトの抑制及びPROPELLER撮像の効率改善を可能にし得るMR装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に従って、検査ボリューム内に配置された身体のMRI用のMR装置であって、検査ボリューム内に実質的に均一な主磁場を構築する手段、主磁場に重ね合わされる切替え磁場傾斜を生成する手段、身体に向けてRFパルスを放射する手段、磁場傾斜及びRFパルスの生成を制御する制御手段、MR信号の受信及びサンプリングを行う手段、及び信号サンプルからMR画像を形成する再構成手段を有するMR装置が開示される。本発明は、当該MR装置を、
a)身体の少なくとも一部を、少なくとも1つのRFパルス及び切替え磁場傾斜のMR撮像シーケンスに曝すことによって、一連のMR信号を生成し、
b)PROPELLER法に従って、k空間の中心の周りで回転された複数のk空間ブレードを収集し、MR信号収集中に、k空間ブレードの回転角は、収集されるk空間ブレードの総数をNとして、180°/Nより大きい角度ずつ増大され、且つ
c)収集されたMR信号からMR画像を再構成する、
ように構成することを提案する。
【0011】
本発明は、規則的な角度のアンダーサンプリングは最小限の画像アーチファクトを生成するのみであるとの事実認識に基づく。故に、動きにより劣化されたk空間ブレード群が、本発明に従って、回転されたk空間ブレード群によって及ばれる円全体に可能な限り均一に分布される場合、最小のアーチファクトが期待される。上記角度は、本発明によれば、180°/Nより大きい角度ずつ増大されるので、連続的に収集されるk空間ブレード群の挟み込み(インターリーブ)配置が達成される。本発明によって提案される規則的な角度のアンダーサンプリングは、従来の線形順のブレード群の特徴である隣接する幾つかの動き劣化k空間ブレードを排除することと比較して、画像再構成に関して堅牢である。
【0012】
好ましくは、本発明に係るMR装置は更に、k空間ブレードの回転角を、137.51°の黄金角又は68.75°の半黄金角ずつ増大させるように構成される。本発明のこの実施形態によれば、インターリーブされたk空間ブレードの時空系列の生成のために、PROPELLER式MRIに、いわゆる黄金角の法則が適用される。黄金角は、円の円周cを2つの区画a及びbに、c=a+b且つc/a=a/bとなるように分割することによって作り出される角度である。本発明に従ってPROPELLER式MRIに黄金角の法則を適用することは、劣化されたk空間ブレード群を、回転されたブレード群によって及ばれる円全体にとりわけ等方的に分布させること、ひいては、最終的な再構成MR画像における動き誘起アーチファクトの最小化を可能にする。黄金角ずつ回転角度を増大させていくことにより、等方的でますます緻密な、円の角度的な被覆(カバレッジ)が達成される。直径方向のPROPELLERブレードでは、半円部分のみを考慮すればよく、それにより、半黄金角の回転増分がもたらされる。
【0013】
本発明の有用な一実施形態において、k空間ブレードの回転角は、公式ψ(i)=f(i)・180°/N又はψ(i)=f(i)・180°・(1+1/N)に従って選択される。ただし、i=1,2,・・・,Nは、連続して収集されるk空間ブレードのインデックスを表し、f(i)は、回転角の増分ψ(i+1)−ψ(i)が180°/Nより大きくなるようにインデックスiを0とN−1との間の整数にマッピングする関数を表す。黄金角の増分から得られる無限のシーケンス周期の結果として、k空間ブレード群により及ばれる円内のブレード配置は僅かに非対称になる。しかしながら、典型的なPROPELLER収集においては、k空間ブレードの数は固定であり、対称なブレード配置とすることが好ましい。これは、上記公式によって達成することができる。公式f(i)は、角度ψ(i)が黄金角(又は、半黄金角)を可能な限り近似して上述のインターリーブ配置が得られるように選択される。公式ψ(i)=f(i)・180°/Nが適用される場合、読み出し傾斜は一度の収集中に約180°回転する。回転角が公式ψ(i)=f(i)・180°・(1+1/N)によって決定される場合、読み出し傾斜は各収集中に約360°回転する。
【0014】
本発明の更なる一態様に従って、検査ボリューム内に配置された身体のMRI用の装置であって、検査ボリューム内に実質的に均一な主磁場を構築する手段、主磁場に重ね合わされる切替え磁場傾斜を生成する手段、身体に向けてRFパルスを放射する手段、磁場傾斜及びRFパルスの生成を制御する制御手段、MR信号の受信及びサンプリングを行う手段、及び信号サンプルからMR画像を形成する再構成手段を有する装置が開示される。本発明は、当該装置を、
a)身体の少なくとも一部を、少なくとも1つのRFパルス及び切替え磁場傾斜のMR撮像シーケンスに曝すことによって、一連のMR信号を生成し、
b)k空間の中央部分からMR基準データセットを収集し、
c)PROPELLER法に従って、k空間の中心の周りで回転された複数のk空間ブレードを収集し、k空間の中央部分の少なくとも一部が各k空間ブレードで収集され、
d)段階c)にて収集されたMRデータを、k空間ブレードごとに、k空間の中央部分のMR基準データセットと比較し、動き誘起の変位及び位相誤差の見積もり及び補正を行い、且つ
e)収集され且つ補正されたMR信号からMR画像を再構成する、
ように構成することを提案する。
【0015】
本発明のこの第2態様の特徴は、本発明の上述の第1態様の特徴と、有利に組み合わされ得る。
【0016】
本発明の第2態様の要点は、各k空間ブレードで収集される(近似的に)k空間の円形中央部分からの、別個のMR基準データセットの収集である。中央のk空間部分のみからの収集は、MR基準データセットが低解像度画像を形成することを意味する。この基準データセットの収集は、総スキャン時間の有意な増大を伴わずに実行することが可能である。本発明によれば、k空間ブレード群に共通の中央部分からのデータは、動き誘起の変位及び位相誤差を推定して補正するために、基準データセットと比較される。この手法の背後にある考えは、動きの推定及び補正を目的として、全てのk空間ブレードに共通の基準を構築することである。MR基準データセットが3次元容積(ボリューム)データセットである場合、本発明に係る技術は、マルチスライスPROPELLER測定の全てのスライスの適切なアライメントを確実にする。この場合、k空間ブレードは、k空間ブレードの回転面に垂直な方向に隔てられた2つ以上の平行画像スライスで収集される。本発明に従って提供される共通の基準により、マルチスライス収集の隣接し合うスライス間に有意な類似性が存在しない場合であっても、画像スライスのミスアライメントが防止される。
【0017】
本発明の更なる一態様に従って、検査ボリューム内に配置された身体のMRI用の装置であって、検査ボリューム内に実質的に均一な主磁場を構築する手段、主磁場に重ね合わされる切替え磁場傾斜を生成する手段、身体に向けてRFパルスを放射する手段、磁場傾斜及びRFパルスの生成を制御する制御手段、MR信号の受信及びサンプリングを行う手段、及び信号サンプルからMR画像を形成する再構成手段を有する装置が開示される。本発明は、当該装置を、
a)身体の少なくとも一部を、少なくとも1つのRFパルス及び切替え磁場傾斜のMR撮像シーケンスに曝すことによって、一連のMR信号を生成し、
b)PROPELLER法に従って、k空間の中心の周りで回転された複数のk空間ブレードを収集し、
c)収集されたMRデータを重み付け、このとき、重み係数は、コントラスト操作に関する収集時間、動き補償に関する相関量、及び複数のk空間ブレードの重なり領域の幾何学配置に基づいて直接的に計算され、且つ
d)収集され且つ重み付けられたMR信号からMR画像を再構成する、
ように構成することを提案する。
【0018】
本発明のこの第3態様の特徴は、本発明の上述の第1及び/又は第2の態様の特徴と、有利に組み合わされ得る。
【0019】
本発明の第3態様の基本的特徴は、サンプリング密度補償に用いる重み係数が、従来のPROPELLER概念における反復法によって計算されないことである。その代わりに、重み係数は、例えば、特定のエコー時間において収集されたMR信号の優先順位付けを目的とした選択MR撮像パルスシーケンス(例えば、TSEシーケンス)に依存する収集時間、収集されたk空間ブレードの優先順位付けを目的とした相関量、及びサンプリング密度補償を目的としたk空間ブレードの重なり領域の幾何学配置などの、様々な基準に基づいて直接的に計算される。好ましくは、重み係数は更に、最終的な画像再構成段階に先立って正規化される。
【0020】
本発明は、装置に関するだけでなく、MR装置の検査ボリューム内に配置された身体の少なくとも一部のMRI方法にも関する。
【0021】
本発明に係る撮像手順を実行するように適応されたコンピュータプログラムは、磁気共鳴スキャナの制御に現在臨床的に使用されている如何なる一般的なコンピュータハードウェア上にも、有利に実装されることが可能である。コンピュータプログラムは、例えばCD−ROM又はディスケットなどの好適なデータキャリアで提供され得る。代替的に、コンピュータプログラムは、ユーザによってインターネットサーバからダウンロードされることも可能である。