【文献】
内田 裕士 Y Uchida,“LED照明設計における多項式曲線を用いた配光特性”,第48回応用物理学関係連合講演会講演予稿集,(社)応用物理学会,2001年 3月28日,第3分冊,Page 1411,Article 29a-W-12
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0009】
<第1の実施形態>
以下、本発明の第1の実施形態を、
図1を用いて詳細に説明する。
図1は、本発明の第1の実施形態におけるLED101の発光状況の説明図である。
【0010】
図1の(a)に記載されているように、LED(Light Emitting Diode)101は発光面1011から光を発光する。このLED101の発光面1011の法線を発光中心軸LCAという。また、発光面1011を含む平面上の、一方向を基準軸(X軸)とした場合に、この平面上のX軸からの反時計回りの角度をφとする。
また、φを固定した場合における、発光中心軸となす角度をθと定義する。
LED101の発光面1011から放射される光の強度は、発光中心軸からの角度θ等によって異なる(
図2も参照のこと)。
【0011】
ところで、LED101の全発光量をより高速で取得するというニーズが存在する。ここで、全発光量とは、φの値が0°から360°について、θの値が0°〜90°までの光の強度を全て加算し、LED101の裏側についても行い、両者を加算したものである。
この全発光量を知ることによって、そのLED101が各種の使用に適切であるか否かを判断することが可能となる。
LED101の光の強度は、θ及びφ毎に異なる値となる。
そのような、光の強度を視覚的に表わすために、
図1(b)のような図が用いられる。
この
図1の(b)において、X軸とY軸との交点部分がθ=0°を表わしている。
そして、円上の各点がθ=90°の各φの位置をそれぞれ表わしている。
なお、
図1の(c)は、φの値が一定の位置における断面図である。
このような、
図1において、LED101からの同一の距離、かつ、発光中心軸LCAからの角度θの位置における、光の強度を配光強度E(θ)と定義する。
そして、この配光強度E(θ)を各θに応じて図示したものが配光強度分布Eである。配光強度分布Eの具体例は
図2のところで説明する。
【0012】
なお、以上の説明は、LED101から十分に遠い位置で測定したことによって、LED101がほぼ点として考えることができるとして記載している。
以後の説明も、特に記載のない限り、LED101がほぼ点であると仮定して記載している。なぜなら、LED101は通常フォトディテクタ105等(
図6参照)と比較すると極めて小さいことから、このように仮定することができるからである。
【0013】
図2は、配光強度分布Eについての説明図である。
【0014】
図2の(a)は、
図1の(c)と同じ図である。
図2の(a)のように、配光強度分布Eとは、LED101からの距離rが一定の位置において、一定のφの角度での、各θにおける光の強度のことである。
なお、LED101は通常、その製造工程の誤差等によってLED101毎に異なる配光強度分布Eを有する。
この異なるLED101は、
図2の(b)のcos型のLED101及び
図2の(c)のドーナツ型のLED101が存在しうる。
cos型及びドーナツ型のLED101は、あくまで例であり、この2つの特性を有するLED101を測定の対象に限定する趣旨ではない。もっとも、通常のLED101は、光のピークがcos型のLED101とθ=30°に光の強度のピークをもつドーナツ型のLED101の間の特性を持つことが多い。つまり、検査対象の通常のLED101は、θが0°〜30°の範囲に光の強度のピークがあることが多い。
次に、配光強度E(θ)(配光強度分布E)から全光量を求める方法について説明する。
【0015】
図3は、配光強度E(θ)(配光強度分布E)から全発光量を求める方法の第1の説明図である。
図4は、配光強度E(θ)(配光強度分布E)から全発光量を求める方法の第2の説明図である。
図5は、配光強度E(θ)(配光強度分布E)から全発光量を求める方法の第3の説明図である。
【0016】
図3の(a)のような配光強度分布Eを有するLED101の場合を想定して以下説明する
このような配光強度分布Eの角度θにおける配光強度E(θ)を、発光中心軸LCA軸の周りの円周を積分したものを、周配光強度L(θ)と定義する(
図4の(b)参照のこと)。
この周配光強度Lを各θに関してあらわした、
図4の(a)のような図表を、周配光強度分布Lと定義する。周配光強度L(θ)は、L(θ)=E(θ)×2sinθ×πで表される。
なお、
図4の(a)においてθ=0°の場合には、sin0°=0となることから、L(0°)=0となっている。
この周配光強度L(θ)を、θ=0°〜θまで積分したものを、全受光量S(θ)という(
図5の(b)参照のこと)。そして、この全受光量Sを各θに関してあらわした、
図5の(a)のような図を、全受光量分布Sと定義する。
なおここで、θ値における全受光量Sは、
図5の(b)における点線A上にフォトディテクタ105を配置すれば、B位置であってもC位置であってもフォトディテクタ105から出力される出力値は一緒である(この場合、フォトディテクタ105を位置に応じて、点線Aに一致させるために面積を変化させる必要はある。)。
さらになお、全受光量Sは全発光量とは異なる概念である。具体的には、LED101の表側の全受光量S(90°)を算出(検出)できれば、これに一定の係数αをかけたものが裏側の全受光量S(90°)となる。
そうすると、全発光量=S(90°)+α×S(90°)となる。
ここで、αの値は1つのLED101を測定して、α値を得れば、同じ工程にて製造されるLED101は、ほぼすべて同じ値となる(誤差2%程度)。
そのため、LED101の表側の全受光量S(90°)を算出(検出)できれば全発光量を2%の誤差の程度で、全発光量を得ることができる。
したがって、本実施形態では、全受光量S(90°)を得ることを目的とする。
【0017】
しかし、全受光量S(90°)を得るためには、フォトディテクタ105をLED101にゼロ距離まで近接させるか、若しくは、フォトディテクタ105を無限の面積にする必要がある。
フォトディテクタ105をLED101にゼロ距離まで近接させることは、プローブ針109が必要とされることから不可能である。また、フォトディテクタ105を無限の面積とすることも同じく不可能である。
そこで、本実施形態では、一定地点の測定値により、S(90°)を高速かつ精度よく測定するための装置(方法)を以下に示す。
【0018】
図6は、第1の実施形態においてLED101の検査を行うための発光素子用の発光量推定装置3の受光モジュール1の説明図である。
【0019】
図6の受光モジュール1は、LED101の検査を行うためのデータを得るために用いられている。
以下、
図6の受光モジュール1の構成を説明する。
図6のように、受光モジュール1は、本実施形態では、テーブル102b(試料設置台)、フォトディテクタ105、ホルダ107、信号線111、アンプ113、通信線115、プローブ針109を有している。もっとも、この全てが受光モジュール1の必須の構成ではなく、少なくとも、フォトディテクタ105を有していれば足りる。
【0020】
また、導光部117及びこの導光部117によって導光された光を通過させる光ファイバ119も配置されている。
【0021】
LED101は水平に設置されているテーブル102b上に複数個配置されている。
このテーブル102bと対向する位置に、ホルダ107が、空間を隔てて配置されている。
ホルダ107の内部には、フォトディテクタ105が配置されている。
LED101、テーブル102b及びフォトディテクタ105は互いに平行となる様に配置されている。
プローブ針109は、受光状況の測定及び電気特性測定時にはLED101の電極に接触して、電圧をLED101に印加する。
テーブル102b及びLED101が固定されている状態でプローブ針109が移動して、プローブ針109とLED101とが接触してもよい。逆に、プローブ針109が固定されている状態でテーブル102b及びLED101が移動して、プローブ針109とLED101とが接触してもよい。
また、プローブ針109は、電気特性計測部125と接続されている。
プローブ針109は、LED101の発光面1011とほぼ平行に、LED101の法線と直角方向に放射状に延在している。
【0022】
ホルダ107は、円筒形状の側面部107bを有している。
側面部107bは円筒形状を有し、θ=0°の方向に延在した形状を有している。
遮蔽部107a及び側面部107bの中心はθ=0°の方向を有しており、LED101の発光面1011の発光中心軸と同一である。
側面部107bの内周面が形成する中空空間に、フォトディテクタ105が配置されている。
遮蔽部107aの中心部には、円柱形状の中空部を形成する円形開口部107cが形成されている。この円形開口部107cがあることによって、LED101から放射された光をフォトディテクタ105が受光可能となっている。
テーブル102b上に配置されたシート102cに複数のLED101が配設されている。
なお、本実施形態では、このシート102c上に配置された複数のLED101のそれぞれの全発光量を、高速にかつ精度よく得ることを目的としている。
【0023】
図7は、半導体発光素子用の発光量推定装置3の概要の説明図である。
【0024】
半導体発光素子用の発光量推定装置3は、受光モジュール1に加え、電気特性計測部125、記憶部161、出力部163及び演算部151を有している。
なお、受光モジュール1は、本実施形態では、テーブル102b(試料設置台)、フォトディテクタ105、ホルダ107、信号線111、AMP113、通信線115、を有している(
図6も参照のこと)。
もっとも、この全てが半導体発光素子用の発光量推定装置3の必須の構成ではなく、少なくとも、フォトディテクタ105、演算部151を有していれば足りる。
電気特性計測部125は、HVユニット153、ESDユニット155、切替えユニット157及び位置決めユニット159を有している。
【0025】
フォトディテクタ105は、LED101から放射された光を受光する。
そして、フォトディテクタ105が受光した光の全ての強度を足した量に応じて出力された電気信号(受光光量情報)をアナログ信号として、AMP113に出力する。
このフォトディテクタ105が出力する受光光量情報は、
図5の(b)で表された全受光量S(θ)の値と比例する。
AMP113は、この受光光量情報を増幅して、後述する演算部151が検出可能な電圧値に変換する。
【0026】
また、光ファイバ119は、導光された光の周波数及び光の強度(配光強度E(θ))を測定可能な分光器121に接続されている。
そして、分光器121は、周波数及び配光強度E(θ)の情報を、演算部151に出力する。
【0027】
プローブ針109は、LED101の表面に物理的に接触してLED101を発光させるための電圧を印加する機能を有している。
また、プローブ針109は位置決めユニット159によって位置決め固定されている。
この位置決めユニット159は、テーブル102bが移動する形式のものであれば、プローブ針109の先端位置を一定の位置に保持する機能を有する。逆に、この位置決めユニット159は、プローブ針109が移動する形式のものであれば、プローブ針109の先端位置をLED101が載置されるテーブル102b上の所定の位置に移動させ、その後その位置に保持する機能を有する。
【0028】
HVユニット153は、定格電圧を印加して、定格電圧に対するLED101での各種特性を検出する役割を有している。
通常、このHVユニット153からの電圧の印加状態で、LED101が発光する光をフォトディテクタ105が測定を行う。
HVユニット153が検出した各種特性情報は演算部151に出力される。
【0029】
ESDユニット155は、LED101に一瞬の間大きな電圧をかけて静電気放電させ静電気破壊されないか等の検査を行うユニットである。
ESDユニット155が検出した静電破壊情報は演算部151に出力される。
【0030】
切替えユニット157は、HVユニット153とESDユニット155との切替えを行う。
つまり、この切替えユニット157によって、プローブ針109を介してLED101に印加される電圧が変更される。そして、この変更によって、LED101の検査項目が、定格電圧での各種特性を検出、又は、静電破壊の有無を検出にそれぞれ変更される。
【0031】
記憶部161は、通信線115から演算部151に入力されるAMP113によって出力された電圧を全受光量S(θ)に換算するための、比例係数等を記憶している。
さらに、記憶部161は、裏側の全受光量S(90°)を算出するためのα値も記憶している。
【0032】
演算部151は、AMP113によって出力された電圧、分光器121からの配光強度及び周波数の情報、HVユニット153が検出した各種電気特性情報、ESDユニット155が検出した静電破壊情報の入力を受ける。
そして、演算部151は、これらの入力からLED101の特性を分析・分別を行う。
特に、本実施形態において、演算部151はAMP113によって出力された電圧、及び、記憶部161が記憶している情報から、後述する
図9〜
図16に記載された各種の処理を行い、全発光量を算出する。
そして、必要に応じて出力部163から画像出力、情報出力等する。
なお、演算部151が行う具体的な処理は、後述する。
【0033】
<全受光量S(θ)を推測する第1の方法>
図8は、全受光量S(θ)を推測する元となる測定値を測定する方法の説明図である。
図9は、3つの測定点からS(90°)を求めるための方法の説明図である。
【0034】
図8の(a)のように、テーブル102b上のシート102cに配置されたLED101を、フォトディテクタ105とLED101との距離がLAとなる位置に配置している。
この場合に、フォトディテクタ105の端部とLED101とを結んだ直線と、発光中心軸LCAとの角度がθAとなる位置にLED101を配置する。
そうすると、θ=θAでの全受光量S(θA)をフォトディテクタ105によって検出することができる。
また、テーブル102bを移動させることによって、LED101をフォトディテクタ105との距離を移動させることができる。
例えば、
図8の(b)のようにテーブル102bを移動させて、LED101とフォトディテクタ105との距離をLBの距離に移動させる。
その結果、フォトディテクタ105の端部とLED101とを結んだ直線と、発光中心軸LCAとの角度がθBとなる位置にLED101を配置することになる。
そうすると今度は、θ=θBでの全受光量S(θB)をフォトディテクタ105によって検出することができる。
【0035】
そして、θAとθBとを近接させる。
具体的にはθA=θ1+Δθとし、θB=θ1−Δθとして、Δθを微小にする。
そうすると、S(θA)―S(θB)を計算することによって、θ=θ1における周配光強度L(θ1)を計算することが可能となる(
図4の(b)を参照のこと)。
数式によってあらわすと、
L(θ1)=S(θ1+Δθ)―S(θ1―Δθ)と表すことができる。
【0036】
以上の計測及び計算を、θ=θ1のみならず、θ=θ2及びθ=θ3の2点にも行う。
そして、θ1、θ2及びθ3の3点での、それぞれの周配光強度分布L(θ)である、L(θ1)、L(θ2)及びL(θ3)を得る。
そして、この3点を、
図4の(a)にプロットした図が、
図9である。そして、θ=0°ではL(0°)=0である。
このθ=0°、θ1、θ2及びθ3を通過する4次関数で近似する。なお、このθ=0°でL(0°)=0は、誤差があっても必ず成立する値なので、4次関数のゼロ次の係数はゼロとしても良いし、単なる4次関数で近似しても良い。
【0037】
そうすると、近似式Lcを算出することが可能となる。
そして、この近似式Lcをθ=0°からθ=90°まで積分すると、推定全受光量Sc(90°)が計算できる。
なおここで、実際に多数点測定して周配光強度分布Lを測定した真の値がLtで表される。
このLtから真値全受光量St(90°)を算出することが可能である。
この真値全受光量St(90°)と推定全受光量Sc(90°)との誤差は、
図9のようにθ=90°付近のLcとLtとで存在するが、その差はわずかであることが分かる。
その結果、かなり高い精度で全受光量S(90°)を算出することができたことが分かる。
また、6点の測定(θ1について2点、θ2について2点、θ3について2点)しか必要としないため、極めて短時間で測定することも可能となる。
以上より、高速でかつ高精度の測定が可能となっている。
【0038】
なお、θ1=20°、θ2=50°、θ3=70°、Δθ=1°で実際に測定し、多数点を測定して求められた真値全受光量St(90°)と以上の方法による推定全受光量Sc(90°)とを比較したところ、その偏差は1.85%程度であった。十分に高精度で測定できたことが分かる。
【0039】
図10は、推定全受光量Sc(90°)を算出する方法のフローチャートである。
【0040】
[ステップST101]
ステップST101において、所定の角度θ=θ1の角度よりΔθだけ小さい位置にLED101が位置するようにテーブル102bを移動する。
そして、この位置における全受光量S(θ1―Δθ)をフォトディテクタ105によって測定する。
【0041】
[ステップST103]
ステップST103において、所定の角度θ=θ1の角度よりΔθだけ大きい位置にLED101が位置するようにテーブル102bを移動する。
そして、この位置における全受光量S(θ1+Δθ)をフォトディテクタ105によって測定する。
【0042】
[ステップST105]
ステップST105において、全受光量S(θ1+Δθ)―全受光量S(θ1―Δθ)を計算することによって、L(θ1)の値を得る。
【0043】
[ステップST107]
ステップST107において、所定の角度θ=θ2の角度よりΔθだけ小さい位置にLED101が位置するようにテーブル102bを移動する。
そして、この位置における全受光量S(θ2―Δθ)をフォトディテクタ105によって測定する。
【0044】
[ステップST109]
ステップST109において、所定の角度θ=θ2の角度よりΔθだけ大きい位置にLED101が位置するようにテーブル102bを移動する。
そして、この位置における全受光量S(θ2+Δθ)をフォトディテクタ105によって測定する。
【0045】
[ステップST111]
ステップST111において、全受光量S(θ2+Δθ)―全受光量S(θ2―Δθ)を計算することによって、L(θ2)の値を得る。
【0046】
[ステップST113]
ステップST113において、所定の角度θ=θ3の角度よりΔθだけ小さい位置にLED101が位置するようにテーブル102bを移動する。
そして、この位置における全受光量S(θ3―Δθ)をフォトディテクタ105によって測定する。
【0047】
[ステップST115]
ステップST115において、所定の角度θ=θ3の角度よりΔθだけ大きい位置にLED101が位置するようにテーブル102bを移動する。
そして、この位置における全受光量S(θ3+Δθ)をフォトディテクタ105によって測定する。
【0048】
[ステップST117]
ステップST117において、全受光量S(θ3+Δθ)―全受光量S(θ3―Δθ)を計算することによって、L(θ3)の値を得る。
【0049】
[ステップST119]
θ=0°におけるL(0°)=0となることが分かっているので、この点と、上記ステップST105で求めたθ=θ1におけるL(θ1)値、ステップST111で求めたθ=θ2におけるL(θ2)値、及び、ステップST117で求めたθ=θ3におけるL(θ3)値、を用いて4次関数で近似し、近似式Lcを算出する。
【0050】
[ステップST121]
近似式Lcをθ=0°からθ=90°まで積分することによって、推定全受光量Sc(90°)を算出することが可能となる。
【0051】
図11は、以上の方法を用いた場合の誤差の説明図である。
【0052】
以上の方法は、4次の近似式を用いるため、配光強度分布Eが異なる場合に精度が十分であるか問題となる。
図11の(a)、
図11の(b)及び
図11の(c)に表されたような異なる配光強度分布Eを有するLED101を用いて、以上の方法の正確性について検討を行った。
図11の(a)では偏差は−0.06%となり、
図11の(b)では偏差は−0.45%となり、
図11の(c)では偏差は0.98%となった。
以上より、この方法においては、高速で、かつ、精密な全受光量S(90°)の推定が可能となっていることが実験的にも裏付けられた。
【0053】
<隣接したLED101の影響の除去>
図12は、隣接したLED101の影響の除去についての説明図である。
【0054】
図2及び
図3の(a)のように、配光強度E(θ)がθ=90°においてE(90°=0となっているのは、以下の理由による。
図12の(a)のように、複数のLED101が配列されている場合には、θが90°の近傍では、発光しているLED101に隣接しているLED101によって、光が遮られてしまう。そのため、配光強度E(θ)の値がθ=90°においてE(90°)=0となってしまうし、θが90°に近づくに従い、配光強度E(θ)の値が徐々に低下する。
この隣接するLED101の影響を除去した場合、つまり
図12の(b)のような状況においては、配光強度分布Eは、
図12の(c)のようになる。
つまり、θ=90°においてE(90°)≠0となる。
【0055】
このように、隣接しているLED101による影響の無い配光強度分布Eを求めることが本来のLED101の特性を得るために必要である。
その方法として、LED101を一個毎に取出して、隣接するLED101の無い状態で、上記の<全受光量S(θ)を推測する第1の方法>によって配光強度分布Eを求めることも考えられる。
しかし、それでは、シート102c上に複数配置されたLED101の配光強度分布を求めるには、時間がかかりすぎ、本実施形態の目的である高速での測定・推定できなくなってしまう。
そこで、以下のような方法によって、隣接したLED101の影響を除去している。
【0056】
図13は、隣接したLED101の影響の除去のフローチャートである。
【0057】
[ステップST201]
ステップST201において、隣接したLED101がある状態における、測定対象の複数のLED101のS(90°)の値を測定する。
例えば、26個のLED101を想定して、一番目のLED101を第1LED101aとし、以下順に第2LED101b、・・、第26LED101zとする。
この第1LED101a〜第26LED101zのSa(90°)〜Sz(90°)を上記<全受光量S(θ)を推測する第1の方法>によって推定する。
【0058】
[ステップST203]
ステップST203において、複数のLED101のうち1個を任意に選択し、隣接したLED101が無い状態にして、S(90°)(隣接したLED101の無い状態におけるS(90°)をSR(90°)と表現する)を<全受光量S(θ)を推測する第1の方法>によって推定する。
例えば、第7LED101gを抽出して、上記<全受光量S(θ)を推測する第1の方法>によって、SRg(90°)を算出(推定)する。
【0059】
[ステップST205]
ステップST205において、補正係数Mを、SR(90°)/S(90°)によって算出する。
例えば、M=SRg(90°)/Sg(90°)によって、Mを算出する。
なお、より正確を期すために、複数個抽出し、平均値を得る等することも可能である。
【0060】
[ステップST207]
ステップST207において、ステップST201で推定しておいた各LED101にステップST205において算出した補正係数Mをかけ合わせる。
例えば、第1LED101aについてM×Sa(90°)、・・、第26LED101zについてのM×Sz(90°)を算出することが可能である。
【0061】
そして、これを基に、全発光量=S(90°)+α×S(90°)を計算することによって、全発光量を推定することができる。
【0062】
図14は、以上の隣接したLED101の影響の除去の方法を用いた場合の誤差の説明図である。
【0063】
以上の隣接したLED101の影響の除去の方法を用いて、補正した場合に真値との誤差が問題となる。
図14の(a)、
図14の(b)及び
図14の(c)に表されたような異なる配光強度分布Eを有するLED101を用いて、以上の方法の正確性について検討を行った。
図14の(a)では偏差は−1.44%となり、
図14の(b)では偏差は−2.74%となり、
図14の(c)では偏差は0.32%となった。
以上より、この方法においては、高速で、かつ、精密な全受光量S(90°)の推定が可能となっていることが実験的にも裏付けられた。
【0064】
<全受光量S(θ)を推測する第2の方法>
図15は、全受光量S(θ)を推測する第2の方法の説明図である。
【0065】
以下、
図15の(a)のような配光強度分布Eを有する場合(以下、第1のケースという)、及び、
図15の(b)のような配光強度分布Eを有する場合(以下、第2のケースという)を例に全受光量S(θ)を推測する第2の方法を説明する。
なお、
図15の(c)に示された図において、実線は第1のケース(
図15(a))であり、理想的な配光強度Eを有する場合の全受光量分布Sである。第2のケース(
図15(b))は理想的な配光強度と異なっているが、全受光量S(90°)は第1のケースと同じである。第2のケースの全受光量分布Sは
図15の(c)に示していない。
【0066】
図15の(c)において、第1のケースにおける、θ=θ11での全受光量S(θ11)を表したのがS1である。
図15の(c)において、第1のケースにおける、θ=θ12での全受光量S(θ12)を表したのがS2である。
同様に、
図15の(c)において、第2のケースにおける、θ=θ11での全受光量S(θ11)を表したのがS3である。
図15の(c)において、第2のケースにおける、θ=θ12での全受光量S(θ12)を表したのがS4である。
S1とS2を結ぶ直線を求め、θ=90°と交わる点を求めることができる。そして、
図15の(c)を参照すると、理想的な配光強度Eを有する場合のS(90°)とほぼ同一であることが分かる。
したがって、
図15の(a)のような配光強度Eを有する場合であっても、単に、θ=θ11におけるS(θ11)の値、及び、θ=θ12におけるS(θ12)の値、を測定し、この2点を通過する1次関数Nを求め、この1次関数においてθ=90°での値を求めることによって、S(90°)を推定することができる。そして、その誤差はわずかである。
同様に、
図15の(b)のような配光強度Eを有する場合であっても、θ=90°での値はほぼ同一になることも、
図15の(c)から分かる。
以上から、ほぼどのような形状の配光強度分布Eを有するLED101であっても、θ=θ11でのS(θ11)及びθ=θ12でのS(θ12)を測定することのみによって、S(90°)を推定することが可能となることが分かる。
【0067】
なお、θ11=39.34°、θ12=61.04°の2点で実測したところ、偏差は−0.390%となっていた。このことから、全受光量S(θ)を推測する第2の方法は精度が高いことが分かる。また、測定点が2点のみなので、高速での推定が可能である。
【0068】
図16は、全受光量S(θ)を推測する第2の方法のフローチャートである。
【0069】
[ステップST301]
ステップST301において、所定の角度θ=θ11にLED101が位置するようにテーブル102bを移動する。
そして、この位置における全受光量S(θ11)をフォトディテクタ105によって測定する。
【0070】
[ステップST303]
ステップST303において、所定の角度θ=θ12にLED101が位置するようにテーブル102bを移動する。
そして、この位置における全受光量S(θ12)をフォトディテクタ105によって測定する。
【0071】
[ステップST305]
ステップST305において、S(θ11)及びS(θ12)を通過する1次関数Nを算出する。
【0072】
[ステップST307]
ステップST307において、ステップST305において算出された1次関数Nにθ=90°を代入することによって、S(90°)を推定する。
【0073】
<他の実施形態>
以上の実施形態では、LED101からの光を受光するのはフォトディテクタ105であったが、CCDを用いても良い。
CCDを用いた場合には、1回の測定にて複数の全受光量S(θ)を求めることができるという利点があり、測定の速度を高めることができる。
ただし、CCDの場合には、光の波長等に対する感度の差異がある上、受光量と出力に必ずしも比例関係が無く、正確に全発光量を求めるには最適とは言えない。もっとも、このことは、本実施形態においてCCDを用いることを排除する趣旨ではない。
【0074】
また、以上の実施形態においては、テーブル102bの位置を変化させることによって、フォトディテクタ105が受光する光の範囲(θの値、S(θ))を変化させたが、これ以外の方法であってよい。
具体的には、フォトディテクタ105を移動させても良いし、遮蔽部107aの円形開口部107cの大きさを増減させても良い。遮蔽部107aとは別に、遮断する部材を設けてもよい。
さらに、CCDを用いる場合には、所望のθ値以外の測定データを単に無視すれば足りる。
【0075】
本実施形態のLED101用の発光量推定装置3は、LED101が放射する
拡散光を受光するフォトディテクタ105と、LED101が放射した
拡散光をフォトディテクタ105が受光する
拡散光中の範囲を変更することが可能な受光範囲変更手段と、演算部151と、を有し、演算部151は、受光範囲変更手段によって、1つのLED101に対して異なる複数の
範囲において測定を行って、LED101の
拡散光が発光される全ての方向の発光量を推定する。
このような構成を有することから、高速で半導体発光素子の全発光量を推定することが可能な半導体発光素子用の発光量推定装置を提供することができる。
【0076】
演算部151が推定する発光量は、受光範囲変更手段が移動することによっては測定不能な範囲での発光量である。
このような構成を有することから、測定範囲外までの全発光量を推定することが可能となる。
【0077】
受光範囲変更手段は、フォトディテクタ105の垂直方向に移動可能に形成されたテーブル102bであり、LED101はシート102c上に複数個配置されており、シート102cはテーブル102bに対して固定されている。
このような構成を有することから、容易に、受光範囲を変更することが可能となる。
【0078】
複数のLED101の一部を抽出し、隣接するLED101の無い状態において発光量を推定した結果に基づいて、複数のLED101の発光量を補正する。
このような構成を有することから、真の全発光量を推定することが可能となる。
【0079】
演算部151が推定するのは、発光中心軸LCAに対して90度の角度までの全発光量である。
このような構成を有することから、全発光量を推定することが可能となる。
【0080】
発光量推定装置3はフォトディテクタ105を用いている。
このような構成を有することから、高い精度で全発光量を測定することができる。
【0081】
本実施形態のLED101の発光量推定方法は、LED101が放射する
拡散光を受光し、第1の全受光量を測定する第1のステップ(ステップST101)と、LED101が放射した
前記拡散光を受光する
拡散光中の範囲を変更して第2の全受光量を測定する第2のステップ(ステップST103)と、第1のステップ及び第2のステップとを繰返し行う第3のステップ(ステップST107、ステップST109、ステップST113及びステップST115)と、第3のステップによって測定した複数の異なる
範囲での全受光量から半導体発光素子の
拡散光が発光される全ての方向の発光量を推定する第4のステップ(ステップST119及びステップST121)と、を有する。
このような構成を有することから、高速で半導体発光素子の全発光量を推定することが可能な半導体発光素子用の発光量推定装置を提供することができる。
【0082】
<定義等>
また、実施形態のフォトディテクタ105は、本発明における受光部の一例である。つまり、本発明における受光部は、光の強度を測定可能なものであればどのようなものであっても良い。
また、LED101は、本発明における半導体発光素子の一例である。つまり、半導体発光素子とは、光を発光する素子であればどのようなものであっても良い。ここで、光は可視光に限定されるものではなく、例えば、赤外線、紫外線等であってよい。
本発明において発光中心軸LCAは、半導体発光素子が光を発する際に光の中心となる軸をいう。
本発明において演算部の一例が、実施形態の演算部151である。